JP2004043285A - 有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法 - Google Patents
有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】この製造方法は、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として結晶性の金属酸化物粒子を生成させる方法であって、下記(a)〜(d)から選ばれる少なくとも1種の有機基含有化合物の存在下で前記生成を行うことを特徴とする。
(a)下記一般式(1)で表される有機基含有化合物
Y1 iM1X1 j (1)
(b)一般式(1)の有機基含有化合物の加水分解縮合物
(c)下記一般式(2)で表される金属アルコキシドの部分加水分解縮合物
M2(OR)k (2)
(d)チタネート系カップリング剤
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶性であり有機基を複合してなる有機基複合金属酸化物微粒子およびその製造方法に関する。詳しくは、結晶性の金属酸化物微粒子の表面が有機基含有化合物により表面処理・改質されてなる有機基複合金属酸化物微粒子およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属酸化物微粒子は、従来、ゴム用加硫促進助剤、各種塗料、印刷インキ、絵の具、ガラス、触媒、医薬品、顔料、フェライト等の原料として用いられている。
このような金属酸化物微粒子については、例えば、樹脂や塗料などに含有させて成形用組成物とした場合に、微粒子と有機樹脂との密着性や微粒子自体の分散性を向上させるため、微粒子表面を有効な有機基含有化合物で処理して改質することがよくなされている。そういった表面処理および改質の方法としては、例えば、微粒子を溶媒中に分散させておいたところに、有機基含有化合物としてシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミネート系カップリング剤等の各種カップリング剤を添加・混合し、水分の存在下で各種カップリング剤の反応性基を加水分解して、微粒子表面に反応させる等の方法が一般的であり従来からよく知られている(例えば、特許文献1〜4参照。)。
【0003】
しかしながら、通常、粒子が微細であればあるほどその凝集性は高いため、そのような状態のところにカップリング剤等の表面処理剤を添加した場合、2次粒子化したものが表面処理された粒子が多く生成されてしまうという問題があり、また、この2次粒子化においては、もともとの粒子が微細であるため、非常に多くの微粒子が集まったものが多量にできやすい。よって、表面処理後においては、必然的に、もともとの微粒子から見るとかなり巨大といえる粒子が多数混在することとなっていた。このように、多数の巨大な粒子が存在してしまうと、本来有する各種優れた微粒子特性はほとんど発揮されず、逆に、前述のように樹脂や塗料などに含有させて成形用組成物とした場合には、全体の物性を低下させてしまうこともあった。そして、個々の微粒子の表面処理という面では、上述のような巨大粒子の生成のため、一律にすべての微粒子が表面処理されるということは極めて考えにくい。そもそも表面処理剤を添加する時点において多くの微粒子は凝集しているため、結果的に巨大粒子等には含まれない微粒子であっても、全く処理されていないものが多数あると考えられる。さらに同様の理由から、たとえ個々の状態で表面処理されたものであっても、十分量処理されていなかったり、粒子表面全体にわたって均一に処理されていないものがほとんどであろうと考えられる。特に、金属酸化物微粒子においては、もとより微細であることは言うまでもなく、近年の技術開発の成果および新規用途分野での要請もあり、ナノサイズレベルのなかでもさらに微細な粒子が求められ、実際に調製も試みられているため、上述のごとき表面処理・改質は益々困難を極めたものとなる。
【0004】
一方、金属酸化物微粒子は、通常、結晶性の金属酸化物からなるものであるが、そもそも結晶性の物質は化学的活性が低いと考えられている。実際、金属酸化物微粒子と上記各種カップリング剤との反応性も低いものであった(例えば、特許文献1、5および6参照。)。このようなことも、十分量かつ均一な表面処理が行われず、満足な改質の効果が得られない原因となっていた。
さらに、上述したように十分な表面処理がなされない場合、二次的弊害として、表面処理剤である有機基含有化合物のうち未反応のものが反応系中に多量に残存し、かえって金属酸化物微粒子の分散性を悪化させているという現状もあった(例えば、特許文献6参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開昭54−7310号公報
【0006】
【特許文献2】
特開昭58−185405号公報
【0007】
【特許文献3】
特開昭60−127965号公報
【0008】
【特許文献4】
特開昭60−240769号公報
【0009】
【特許文献5】
特開平6−24730号公報
【0010】
【特許文献6】
特開平8−59238号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、個々の金属酸化物粒子の表面が有機基含有化合物により十分に表面処理され改質されてなる、有機基複合金属酸化物微粒子およびその製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、個々の粒子が十分量表面処理され改質されるためには、金属酸化物微粒子と有機基含有化合物との反応性を高めるだけでなく、金属酸化物微粒子に有機基含有化合物を反応させるタイミングが重要であり、新たにそのような製法を見出すことこそが直接的な解決に繋がると考えた。従来から行われていた製法、すなわち、すでに粒子形状を有している金属酸化物微粒子に有機基含有化合物を加えて表面処理を施すという製法等において、諸条件の検討や改良を行うことのみでは、現状の反応性のレベルを飛躍的に高めることは期待できず、かつ、二次粒子化したものに表面処理を施す結果になるので、今までにない新たな発想や着眼により見出した製法でなければそのような飛躍は望めないと考えたのである。
【0013】
そこで、本発明者は、金属酸化物微粒子および有機基含有化合物それぞれの物性と反応性と反応タイミング等について、あらためて検討し、種々実験・研究を重ねた。
その結果、金属酸化物微粒子については、その金属酸化物の結晶生成時において特異的に極めて表面活性の高い段階があるということに気づいた。また、有機基含有化合物については、シランカップリング剤等の有機基含有化合物が水分存在下で加水分解する時に非常に高い反応活性となるということから推測して、やはり表面処理剤としての有機基含有化合物は水分の存在下で用いるようにすることが必須であり重要ではないかと考えた。そして、いかにすればこれら両知見を組み合わせた形での表面処理反応を行うことができるかを検討したところ、金属酸化物結晶の生成過程において副生成する水に着目し、これを反応に利用すればよいという方向を見出したのである。金属酸化物結晶の生成過程で表面処理反応を行えば、結晶粒子に対して二次粒子化が起きる前に表面処理を施すことも出来る。そして、以上のことは、表面処理剤となる有機基含有化合物として特定の化合物を用いるようにすれば、より優れた効果を得ることができることも見出した。
【0014】
そこで、種々実験することにより、表面処理の反応系としては、金属酸化物微粒子を調製するに際し、金属酸化物結晶の生成反応時に特定の有機基含有化合物を共存させておくことが重要であり、具体的には、従来に無い特定の組み合わせの出発原料(具体的には、アルコールと金属カルボン酸塩、あるいは、カルボキシル基含有化合物と金属アルコキシ基含有化合物)を用い、これらから結晶性の金属酸化物粒子を調製する方法に着目し、この製法において、上記金属酸化物の生成反応を、特定の有機基含有化合物の存在下で行うようにすれば、上記課題を一挙に解決でき、前述した所望の有機基複合金属酸化物微粒子を容易に得ることができることを確かめて、本発明を完成した。
【0015】
さらに、驚くべきことに、上述の製造方法によれば、金属酸化物結晶生成時における有機基含有化合物の共存効果により、これまで以上に結晶子サイズの小さい粒子が得られるということが判った。また、得られる粒子は、有機基が十分かつ均一に表面に複合されたものであって、結晶子が非常に微細な1次粒子であるということもあり、溶媒や塗料、樹脂などに含有させた場合に非常に透明性に優れた組成物が得られることも判った。さらには、効率的な表面改質により、金属酸化物に由来する触媒活性に基づく劣化を顕著に抑制できることも判った。具体的には、金属酸化物が、酸化亜鉛、チタニア、ヘマタイトおよび酸化セリウム等の光触媒活性の極めて高い酸化物であっても、かなり耐久性の高い塗膜や樹脂成形体とすることができたのである。同様に、耐薬品性についても、上述の効率的な表面改質によって大きく向上させることが可能となる。例えば、酸化亜鉛のように塩基性化合物に対する耐性の非常に低いものであっても、優れた金属酸化物微粒子またはそれを含む組成物を得ることができるのである。
【0016】
すなわち、本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法は、
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として結晶性の金属酸化物粒子を生成させる方法であって、下記(a)、(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1種の化合物の存在下で前記生成を行うことを特徴とする。
(a)下記一般式(1):
Y1 iM1X1 j (1)
(但し、Y1は有機官能基、M1は金属原子、X1は加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはM1の原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物
(b)前記一般式(1)の有機基含有化合物の加水分解縮合物
(c)下記一般式(2):
M2(OR)k (2)
(但し、M2は金属原子、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基、kは1からtまでの整数(tはM2の原子価)である。)
で表される金属アルコキシドの部分加水分解縮合物
(d)チタネート系カップリング剤
また、本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子は、
下記一般式(3):
Y3 iSiX3 j (3)
(但し、Y3は反応性官能基を有する有機基、Siはケイ素原子、X3は加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはSiの原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物が複合されてなる金属酸化物の微粒子であって、前記微粒子の1次粒子径が100nm未満であり、前記微粒子中の金属原子に対するケイ素原子の割合が1モル%以上であることを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法、および、有機基複合金属酸化物微粒子について具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に何ら拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法(以下、本発明の製造方法と称することがある。)は、前述したように、金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として生成する金属酸化物を粒子として得る方法であるが、この生成を、特定の有機基含有化合物、すなわち、前述した(a)、(b)、(c)および(d)の化合物から選ばれる少なくとも1種の存在下で行うようにしている。好ましくは、上記出発原料を混合すると同時かまたはその後に該混合系を高温状態にする方法であり、このような過程を経て生成する金属酸化物を粒子として得るようにする。
【0018】
本発明の製造方法においては、出発原料となる特定の組み合わせとして、金属カルボン酸塩とアルコール(以下、組み合わせAと称することがある。)、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物(以下、組み合わせBと称することがある。)を用いるようにしている。
組み合わせAにおける金属カルボン酸塩としては、具体的には、分子内にカルボキシル基の水素原子が金属原子で置換された結合を少なくとも1つ有する化合物であり、カルボキシル基としては、例えば、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸、不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸、芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物などの金属塩;などを好ましく用いることができるが、特にこれらに限定はされるわけではない。なかでも、下記一般式(I):
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR1)x(OH)y(OR2)z (I)
(但し、Mはm価の金属原子;R1は、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;R2は、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で表される化合物のように上記した金属カルボン酸塩またはカルボン酸残基の一部が水酸基やアルコキシ基で置換されたものや、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩や、塩基性酢酸塩などを好ましく挙げることができる。なかでも、後述のカルボキシル基含有化合物の金属塩の中の金属飽和カルボン酸塩や金属不飽和カルボン酸塩がより好ましく、さらに好ましくは上記一般式(I)で表される金属カルボン酸塩であり、最も好ましくは金属酢酸塩や金属プロピオン酸塩であり、金属(M)がZnである場合は金属酢酸塩が特に好ましい。なお、上記金属カルボン酸塩は、結晶水を含む金属カルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0019】
上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)としては(一般式(I)中の金属元素(M)も含む)、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1A族、2A族、3A族、4A族、5A族、6A族、7A族、8族、ランタノイド元素、アクチノイド元素、1B族、2B族、3B族、4B族、5B族、6B族に含まれる金属元素を挙げることができ、これらの中でも、例えば、Sr、Ce、Y、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mn、Re、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Ge、Sn、SbおよびLa等の金属元素が、本発明においては好適である。これらは1種のみでも2種以上併存していてもよい。金属カルボン酸塩としては、上記列挙した以外に、シュウ酸バリウムチタニル等の複合金属カルボン酸塩等も好適である。なお、本明細書においては、周期表は、改訂5版「化学便覧(日本化学会編)」(丸善株式会社より出版)に掲載されている「元素の周期表(1993年)」を用い、族番号は亜族方式により表記する。
【0020】
組み合わせAにおけるアルコールとしては、特に限定はないが、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。
【0021】
上記アルコールとしては、例えば、後述する金属錯体モノマーやその誘導体をより低い温度状態で得やすく且つ金属カルボン酸塩と反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物を生成し易いアルコールが挙げられる。また、アルコール性水酸基に関しては、より低い温度状態で金属酸化物を得るために、3級、さらには2級、特に1級の水酸基を有するアルコールが好ましい場合がある。同様の理由で、脂肪族アルコールも好ましい場合がある。
本発明の製造方法においては、上記出発原料となる金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系とは、該金属カルボン酸塩およびアルコールをそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属カルボン酸塩およびアルコールのいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属カルボン酸塩およびアルコールの少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属カルボン酸塩とアルコールとがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0022】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物aと称することがある。)は、金属カルボン酸塩とアルコールとから得られるものであって、金属カルボン酸塩とアルコールとの反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Aと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Aに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物aは、出発原料としての金属カルボン酸塩でもアルコールでもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Aでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Aが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属カルボン酸塩のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Aの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0023】
また、上記予備反応物aは、例えば、アルコールまたはアルコールを含む溶媒に金属カルボン酸塩を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Aが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下の加熱とにより得られる。予備反応物aは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物aとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属カルボン酸塩の金属原子に、アルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、カルボキシル基の一部がアルコールのアルコキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属カルボン酸塩が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のカルボン酸基(−COO基)以外にさらにアルコールまたはアルコキシ基が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーを上記混合系にさらに加えて高温状態にすることにより金属酸化物を得ることもできる。
【0024】
出発原料となる上記金属カルボン酸塩とアルコールとの使用量に関しては、特に限定はないが、金属カルボン酸塩の金属換算原子数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000となるようにすることが好ましい。また、上記使用量に関しては、金属カルボン酸塩の有するカルボキシル基の総数に対するアルコール中の(アルコール由来の)水酸基の総数の比が、0.8〜100となるようにすることも好ましく、より好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。
上記金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系は、例えば、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属カルボン酸塩は、特に限定はされないが、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0025】
組み合わせBにおける金属アルコキシ基含有化合物としては、特に限定はないが、例えば、下記一般式(II)で示される化合物、または該化合物が(部分)加水分解・縮合してなる縮合物を挙げることができる。
M’(OR3)n (II)
(但し、M’は、金属原子;R3は、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アシル基、アラルキル基、アリール基から選ばれた少なくとも1種;nは金属原子M’の価数)
一般式(II)中、R3としては、水素原子および/またはアルコキシアルキル基の如く置換されていてもよいアルキル基が好ましい。
【0026】
一般式(II)中、金属(M’)としては、上記金属カルボン酸塩に含まれる金属(M)を挙げることができ、好ましいものについても同様である。
金属アルコキシ基含有化合物は、上記で説明したもの以外であってもよく、例えば、ヘテロ金属アルコキシド(ヘテロ金属オキソアルコキシ基含有化合物も含む)であってもよい。なお、ヘテロ金属アルコキシドとは、2個以上の異なる金属原子を有し、アルコキシ基や酸素原子を介したり、金属−金属結合等によって結ばれた金属アルコキシドのことである。ヘテロ金属アルコキシ基含有化合物を用いた場合は、複合酸化物からなる金属酸化物粒子を得ることができる。
【0027】
組み合わせBにおけるカルボキシル基含有化合物としては、分子内にカルボキシル基を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定はなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪酸(飽和モノカルボン酸)、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸(不飽和モノカルボン酸)、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、β,β−ジメチルグルタル酸等の飽和多価カルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和多価カルボン酸等の鎖式カルボン酸類、シクロヘキサンカルボン酸等の環式飽和カルボン酸類、安息香酸、フェニル酢酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等の不飽和多価カルボン酸等の芳香族カルボン酸類、無水酢酸、無水マレイン酸、ピロメリット酸無水物等のカルボン酸無水物、トリフルオロ酢酸、o−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、 アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、アニス酸(p−メトキシ安息香酸)、トルイル酸、乳酸、サリチル酸(o−ヒドロキシ安息香酸)等の分子内にカルボキシル基以外のヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン酸基、シアノ基、ハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等、重合体原料として上記不飽和カルボン酸を少なくとも1つ有する重合体を挙げることができる。これらのカルボキシル基含有化合物のなかでも、後述する金属錯体モノマーやその誘導体を得やすく且つより低い温度状態で金属酸化物が得られ易いという点でアルコールと反応して後述する予備反応物さらには金属酸化物の形成をより低い温度で起こし易い化合物が好ましく、水中(25℃、0.1モル/リットル)での酸解離定数pKaが4.5〜5であるものがより好ましく、具体的には、飽和カルボン酸が好ましく、さらに、立体的にも反応性が高い点で酢酸が最も好ましい。また、カルボキシル基含有化合物が液体の場合は、後述の反応溶媒としても用いることもできる。
【0028】
本発明の製造方法においては、上記出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系とは、該金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物をそれぞれ少なくとも一部ずつ混ぜ合わせた段階以降の系を意味する。この混合系の内部状態としては、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物のいずれもが原料状態の化学構造を変化させずに存在している状態であることに限らず、例えば、金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物の少なくとも1つが溶解状態下で特有の化学構造に変化して存在している状態であってもよいし、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とがこれらの予備反応物となって存在している状態であってもよく、すなわち、出発原料そのままの状態から何れの状態に変化して存在していてもよい。
【0029】
ここでいう予備反応物(以下、予備反応物bと称することがある。)は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とから得られるものであって、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との反応による反応物として金属酸化物(以下、金属酸化物Bと称することがある。)が生成されるまでの任意の段階の状態の反応中間体であり、生成される金属酸化物Bに対する前駆体(金属酸化物前駆体)である。すなわち、予備反応物bは、出発原料としての金属アルコキシ基含有化合物でもカルボキシル基含有化合物でもなく、両者の反応物ではあるが、生成される金属酸化物Bでもない金属酸化物前駆体である。なお、上述の金属酸化物Bが生成されるまでの任意の段階の状態とは、用いた金属アルコキシ基含有化合物のうちの50重量%以上が粒径5nm以上の粒子状の金属酸化物Bの生成が認められる前の状態をいうとする。
【0030】
また、上記予備反応物bは、例えば、カルボキシル基含有化合物またはカルボキシル基含有化合物を含む溶媒に金属アルコキシ基含有化合物を溶解させるだけで直ちに得られる場合もあるが、好ましくは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合と、緩やかな昇温(金属酸化物Bが得られる高温状態にするよりも緩やかな条件下での昇温)と、好ましくは加圧下での加熱とにより得られる。予備反応物bは溶液状態であることが好ましい。
予備反応物bとしては、特に限定はされないが、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物の金属原子に、カルボキシル基含有化合物が−COOH基または−COO基を介して配位(吸着による配位も含む。)してなる金属錯体モノマー(この場合、アルコキシ基の一部がカルボキシ基で置換された錯体も含まれる。)、2)金属アルコキシ基含有化合物が酸素原子を介して「金属−酸素−金属」の結合が形成されてなる縮合物に原料のアルコキシ基以外にさらにカルボキシル基含有化合物が配位(吸着による配位も含む。)してなる化合物(金属錯体モノマー誘導体)、などが好ましく挙げられる。なかでも、1)でいう金属錯体モノマーがより好ましく挙げられる。また、上記金属錯体モノマーは、上述のような方法以外の方法によっても得ることができる。上述の方法以外によって得られた金属錯体モノマーをさらに加熱することにより金属酸化物を得ることもできる。
【0031】
出発原料となる金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との使用量に関しては、それらの配合割合(カルボキシル基含有化合物/金属アルコキシ基含有化合物)が、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物に含有されている金属原子Mの平均原子価数Navを用いて、好ましくは下限が0.8Navを超える値であり、さらに好ましくは1.2Navを超える値であり、また、好ましくは上限が10Nav未満である。ここで、平均原子価数Navは、金属アルコキシ基含有化合物として、含有金属元素の異なるp種の金属アルコキシ基含有化合物(含有金属元素がそれぞれM1、M2、M3、・・・、Mpであるp種の金属アルコキシ基含有化合物(2≦p))を併せて用いる場合、下記数式:
【0032】
【数1】
【0033】
(数式中、Niは、金属Miの原子価(価数)を表す。また、Xiは、金属アルコキシ基含有化合物として用いた金属元素Miのモル数を表す。pは2以上の整数である。)
から算出することができる。また、出発原料として用いたカルボキシル基含有化合物の総量に含まれるカルボキシル基の数が、出発原料として用いた金属アルコキシ基含有化合物の総量に含まれるアルコキシ基の数N’に対して、0.8N’を超える数であることが好ましく、1N’〜10N’が特に好ましい。
金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系は、ペースト状、懸濁液状、溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。さらに、必要に応じて、後述する反応溶媒をも混合することによって、上記液状としてもよい。通常、金属アルコキシ基含有化合物は、特に限定はされないが、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、または、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
【0034】
金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料として金属酸化物Aを生成させるか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として金属酸化物Bを生成させるにあたっては、さらに反応溶媒を用いてもよい。具体的には、これら出発原料を混合するにあたり、あるいは、これら出発原料の混合系を高温状態にするにあたり、さらに反応溶媒を加えた上で行うようにすればよい。
反応溶媒をも用いる場合、その使用量については、特に限定はないが、金属酸化物Aを生成させる場合は、出発原料として用いた全ての金属カルボン酸塩およびアルコールと反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属カルボン酸塩の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。同様に、金属酸化物Bを生成させる場合は、出発原料として用いた全ての金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物と反応溶媒との合計使用量に対する、上記全ての金属アルコキシ基含有化合物の合計使用量の割合が0.1〜50重量%となるようにすることが好ましい。これによって、金属酸化物を経済的に得ることができる。
【0035】
上記反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、エチルベンゼン、オクタン、キシレン類、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、ジメチルナフタレン、スチレン、ソルベントナフサ、デカリン、デカン、テトラリン、ドデシルベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、流動パラフィン等の炭化水素;各種ハロゲン化炭化水素;アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む);アニソール、エピクロロヒドリン、エポキシブタン、クラウンエーテル類、ジイソアミルエーテル、ジエチルアセタート、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテルおよびアセタール;アセチルアセトン、アセトアルデヒド、アセトフェノン、アセトン、イソホロン、エチル−n−ブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−n−プロピルケトン、ホロン、メシチルオキシド、メチル−n−アミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサノン、メチル−n−ヘプチルケトン等のケトンおよびアルデヒド;アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセト酢酸エチル、アビエチン酸メチル、安息香酸ベンジル、安息香酸メチル、イソ吉草酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、ギ酸プロピル、クエン酸トリブチル、ケイ皮酸メチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸n−ブチル、酢酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸メチルシクロヘキシル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチル、乳酸ブチル、乳酸メチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、γ−ブチロラクトン、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、プロピオン酸メチル、ホウ酸エステル類、マレイン酸ジオクチル、マロン酸ジメチル、酪酸イソアミル、酪酸メチル、リン酸エステル類等のエステル;エチレンカーボナート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジアセタート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジアセタート、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチラート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸ジエステル、両末端に水酸基を有しないポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)誘導体等の多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。反応溶媒としては、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。
【0036】
上記アルコール(フェノールや、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物を含む。以下、アルコールと示す場合は同様とする。)としては、金属酸化物Aを生成させる場合に用いるアルコールとして列挙したものと同様のものを好ましく挙げることができる。
金属酸化物Bを生成させる場合は、反応溶媒としては、特に、非水溶媒のうちでも、アルコール性またはフェノール性水酸基を有しない非水溶媒である非アルコール性有機溶媒が好ましく、これを用いた際の反応収率が高い。非アルコール性有機溶媒としては、例えば、炭化水素;ハロゲン化炭化水素; エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物;カルボン酸およびその無水物や、シリコーン油、鉱物油等を挙げることができる。これらの非アルコール性有機溶媒のなかでも、エーテルおよびアセタール;ケトンおよびアルデヒド;エステル;多価アルコール類のすべての水酸基の活性水素がアルキル基やアセトキシ基で置換された誘導体化合物等が好ましい。
【0037】
金属酸化物Aは、前述したように、出発原料を金属カルボン酸塩とアルコールとし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られることが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Aが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Aが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃の範囲がより好ましく、さらに100〜200℃の範囲が好ましく、特に100〜150℃の範囲であるのが好ましいが、例えば、一般式(1)で表される有機基含有化合物(後に詳述する)の存在下で上記高温状態にする場合であって、該有機基含有化合物中の有機官能基Y1が、アクリル基、メタクリル基、ビニル基およびエポキシ基などの反応性官能基を有する有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である場合は、これらの基が分解したり、重合性反応基間で重合反応したり、反応溶媒と反応(例えば、エポキシ基など)したりするのを防ぐため、上記高温状態の温度は、その上限が150℃であることが好ましく、より好ましくは120℃である。
【0038】
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物aを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)としては、ヒーター、温風や熱風による加熱が一般的であるが、これに制限されるものではなく、例えば、紫外線照射などの手段を採用することもできる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Aの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒となる成分の臨界点以下で行うが、超臨界条件で行うこともできる。
【0039】
なお、例えば、一般式(1)で表される有機基含有化合物(後に詳述する)の存在下で上記高温状態にする場合であって、該有機基含有化合物中の有機官能基Y1が、アクリル基、メタクリル基およびビニル基などの重合反応性官能基を有する有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である場合は、反応時の気相部が酸素を含有する条件下で行うようにすることが好ましい。無酸素条件下では重合性反応基どうしの重合反応が起こりやすいからである。具体的に、上記酸素を含有する条件下で反応を行う方法としては、例えば、a)酸素を1〜10体積%含有するガス(窒素ガスや不活性ガス)を気相部にフローしながら反応を行う方法、b)酸素を1〜10体積%含有するガス(窒素ガスや不活性ガス)を反応液にバブリングしながら反応を行う方法、および、c)酸素を1〜10体積%含有するガス(窒素ガスや不活性ガス)で気相部を置換した後に反応を行う方法などが挙げられる。
【0040】
金属酸化物Aを生成させる場合においては、金属酸化物結晶の生成時に副生する水分以外には、金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系に含まれる水分が少ない方が、生成する金属酸化物結晶表面に有機基含有化合物が高効率で導入されるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、上記副生する水分以外に、出発原料として使用した金属カルボン酸塩中の金属原子に対してモル比で4未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で1未満であるとさらに好ましく、0.5未満であると特に好ましく、0.1未満が最も好ましい。従って、出発原料の金属カルボン酸塩としては、結晶水を含むものより無水物のものが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の製造方法では、金属酸化物Aは金属カルボン酸塩とアルコールとの混合系を高温状態にすることにより得ることができるが、該高温状態は、金属カルボン酸塩とアルコールとを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)アルコールを所定温度に加熱等しておき、これに金属カルボン酸塩を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにアルコールを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属カルボン酸塩およびアルコール、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物aを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0042】
なお、予備反応物aを、金属カルボン酸塩とアルコールとの、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Aを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
金属酸化物Bは、上述のように、出発原料を金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とし、これらの混合系を高温状態にすることにより得られるものが好ましいが、上記混合系を高温状態にするとは、上記混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物Bが生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温することである。上記高温状態の温度(金属酸化物Bが生成し得る温度)は、得ようとする金属酸化物の種類等によって異なるが、通常50℃以上であり、結晶性の高い金属酸化物を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃の範囲がより好ましく、さらに100〜200℃の範囲が好ましく、特に100〜150℃の範囲であるのが好ましいが、例えば、一般式(1)で表される有機基含有化合物(後に詳述する)の存在下で上記高温状態にする場合であって、該有機基含有化合物中の有機官能基Y1が、アクリル基、メタクリル基、ビニル基およびエポキシ基などの反応性官能基を有する有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である場合は、これらの基が分解したり、重合性反応基間で重合反応したり、反応溶媒と反応(例えば、エポキシ基など)したりするのを防ぐため、上記高温状態の温度は、その上限が150℃であることが好ましく、より好ましくは120℃である。
【0043】
上記混合系を高温状態にする際の具体的な昇温手段(予備反応物bを得る場合に緩やかな高温状態にする際の昇温手段も含む)としては、前述の金属酸化物Aを得る場合と同様の手段が採用できる。混合系を高温状態にする際は、常圧下、加圧下、減圧下のいずれの圧力下で行ってもよく、特に限定はされないが、加圧下で出発原料を加熱等により高温状態にすることがより好ましい。また、反応溶媒等の沸点が金属酸化物Bの生成される反応温度よりも低い場合は、耐圧反応装置を用いて行うことも好ましい。通常、反応温度、反応時の気相圧は、溶媒の臨界点以下で行うが、超臨界状態で行うこともできる。
【0044】
なお、例えば、一般式(1)で表される有機基含有化合物(後に詳述する)の存在下で上記高温状態にする場合であって、該有機基含有化合物中の有機官能基Y1が、アクリル基、メタクリル基およびビニル基などの重合反応性官能基を有する有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である場合は、反応時の気相部が酸素を含有する条件下で行うようにすることが好ましく、その理由や具体的な実施方法は、金属酸化物Aを得る際に説明した内容と同様である。
金属酸化物Bを生成させる場合においては、金属酸化物結晶の生成時に副生する水分以外には、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系に含まれる水分が少ない方が、生成する金属酸化物結晶表面に有機基含有化合物が高効率で導入されるため好ましい。具体的には、上記混合系中に、上記副生する水分以外に、出発原料として使用した金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子に対してモル比で1未満のわずかな水分しか含有しないことが好ましく、水分がモル比で0.2未満であるとさらに好ましく、0.1未満であると特に好ましい。
【0045】
本発明の製造方法では、金属酸化物Bは金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との混合系を高温状態にすることにより得ることができるが、該高温状態は、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々となるようにしてもよいし、同時(一部同時も含む)となるようにしてもよく、特に限定はされない。より詳しくは、上記混合系の昇温のための具体的手段(例えば加熱等)は、上記出発原料の混合に関わらず任意の方法・タイミングで行うことができ、例えば、混合前の出発原料の少なくとも一方を加熱等しておくことで混合と同時に該混合系を昇温させるようにしてもよいし、混合して得られる混合系に対して、該混合をしながらか又は該混合を終了した後で、加熱等を施し該混合系を昇温させるようにしてもよく、特に限定はされない。したがって、この混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、特に限定はされないが、具体的には、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)カルボキシル基含有化合物を所定温度に加熱等しておき、これに金属アルコキシ基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにカルボキシル基含有化合物を混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属アルコキシ基含有化合物およびカルボキシル基含有化合物、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物bを得ておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0046】
なお、予備反応物bを、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物との、混合、および、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下での加熱等により得る場合、該混合と該昇温のための加熱等とのタイミングとしては、上述した金属酸化物Bを得る際の混合と昇温のための加熱等とのタイミングと同様であることが好ましい。
本発明の製造方法においては、前述のとおり、粒子としての金属酸化物(金属酸化物A、金属酸化物B)を生成させるにあたり、この生成を、特定の有機基含有化合物、すなわち、(a)、(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1種の有機基含有化合物の存在下で行うようにしていることが重要である。
【0047】
具体的には、前記混合系に、さらに、上記特定の有機基含有化合物を添加するようにしていることが重要である。ここで、前記混合系に上記特定の有機基含有化合物を添加するようにするとは、前記混合系を高温状態とする際に該混合系に上記特定の有機基含有化合物が添加されているようにすることであってもよいし、前記混合系を高温状態とすると同時または高温状態とした後に該混合系に上記特定の有機基含有化合物を添加することであってもよく、特に限定はされないが、前者の形態を必須とすることが好ましい。前者の形態に関しては、前記混合系を高温状態にするまでに添加されていればよいため、これを満たす範囲内であれば、例えば、特定の組み合わせの出発原料を混合して混合系を得る前に出発原料の少なくとも一方に予め添加しておいてもよいし、特定の組み合わせの出発原料を混合すると同時または混合した後にこれらの混合系に添加してもよいし、これらを組み合わせた添加のタイミングであってもよい。
【0048】
より具体的に、上記混合と、昇温のための加熱等とのタイミングとしては、以下の形態を例示することができる。なお、本発明の製造方法においては、特定の有機基含有化合物として、上記有機基含有化合物(a)、(b)、(c)および(d)のいずれか1種を用いても2種以上を併用してもよく、特に限定はされない。そこで、以下においては、「有機基含有化合物(a〜d)」と示したときは、上記特定の有機基含有化合物のうちの1種のみの場合と2種以上の場合とを両方含む概念であるとする。また、有機基含有化合物(a〜d)から2種以上用いる場合は、これらの有機基含有化合物を予め混合した状態のものを用いてもよいし、別々で配合する等して用いてもよく、その順序も特に限定はされない。
【0049】
すなわち、金属酸化物Aを得る場合は、例えば、1)金属カルボン酸塩とアルコールと有機基含有化合物(a〜d)とを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)アルコールを所定温度に加熱等しておき、これに金属カルボン酸塩と有機基含有化合物(a〜d)とを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属カルボン酸塩とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにアルコールと有機基含有化合物(a〜d)とを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属カルボン酸塩、アルコールおよび有機基含有化合物(a〜d)、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属カルボン酸塩とアルコールとを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物aを得ておいて、これに有機基含有化合物(a〜d)を混合し、加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0050】
金属酸化物Bを得る場合は、例えば、1)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物と有機基含有化合物(a〜d)とを混合しておいて、これを加熱等により昇温し高温状態にする、2)カルボキシル基含有化合物を所定温度に加熱等しておき、これに金属アルコキシ基含有化合物と有機基含有化合物(a〜d)とを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、3)反応溶媒と金属アルコキシ基含有化合物とを混合して所定温度に加熱等しておき、これにカルボキシル基含有化合物と有機基含有化合物(a〜d)とを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、4)各成分(金属アルコキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物および有機基含有化合物(a〜d)、および必要に応じて反応溶媒)を別々に加熱等しておいた後、これらを混合することで、混合系を昇温させ高温状態にする、5)金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを混合(および、必要により、上記高温状態にするよりも緩やかな条件下で加熱等)して予備反応物bを得ておいて、これに有機基含有化合物(a〜d)を混合し、加熱等により昇温し高温状態にする、等が好ましく挙げられる。
【0051】
以下、上記特定の有機基含有化合物、すなわち、(a)、(b)、(c)および(d)の有機基含有化合物について、それぞれ具体例を挙げて説明する。
(a)の有機基含有化合物は、下記一般式(1):
Y1 iM1X1 j (1)
(但し、Y1は有機官能基、M1は金属原子、X1は加水分解性基、iおよびjは1〜(s−1)の整数であってi+j=s(sはM1の原子価)を満足する。)で表される有機基含有化合物である。
上記一般式(1)において、有機官能基であるY1としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基などの有機基、並びに、アクリル基、メタクリル基、ビニル基およびエポキシ基などの反応性官能基を有する有機基、からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(1)において、加水分解性基であるX1としては、ハロゲン原子、OR1基(但し、R1は水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基である。)およびNH2基から選ばれる少なくとも1種の置換されていても良い基であることが好ましい。上記OR1基のR1としては、アルキル基が工業的に入手し易く、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。R1にはエトキシエキトシエチル基等の置換されたアルキル基も含まれる。
上記一般式(1)において、金属原子であるM1としては、2価以上の金属原子が化学結合し易い点で好ましく、アルミニウム、ケイ素およびジルコニウムから選ばれる少なくとも1種の金属原子がさらに好ましく、無機系微粒子との反応性が特に高く、取扱い易く、工業的に入手し易い。
【0053】
M1がアルミニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等が例示される。
M1がケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン等のフッ素含有有機基を有するシリコン化合物;イソシアン酸プロピルトリメトキシシラン等のイソシアナト基含有有機基を有するシランカップリング剤;下記式:
R’O(C2H4O)nC3H6Si(OR”)3
(ここで、R’は、水素、または、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。R”は、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である。)
で表されるシランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランやヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤などが例示される。
【0054】
M1がジルコニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド等の各種ジルコニウム化合物等が例示される。
(b)の有機基含有化合物は、上述の(a)の有機基含有化合物の加水分解縮合物であり、具体的には、金属原子M1に結合している加水分解性基X1の一部あるいは全部が加水分解されて該X1がOH基となった化合物や、さらにM1−OH間での脱水縮合等の縮合反応によりM1−O−M1結合を形成してなる化合物等が挙げられる。例えば、上記列挙した(a)の有機基含有化合物を加水分解縮合および/または部分加水分解縮合してなる、線状や環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)や環状の加水分解縮合物が挙げられる。
【0055】
(c)の有機基含有化合物は、下記一般式(2):
M2(OR)k (2)
(但し、M2は金属原子、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基、kはM2の原子価と同一である。)
で表される金属アルコキシドの部分加水分解縮合物である。
一般式(2)において、M2としては、その原子価が2価以上の金属元素が好ましく、Al、TiおよびZrから選ばれる少なくとも1種であると、無機系微粒子との反応性が特に高く、しかも、これらのアルコキシド類は取扱い易く、工業的に入手し易いため、さらに好ましい。
【0056】
一般式(2)において、Rとしては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、なかでもアルキル基が工業的に入手し易く、炭素数1〜20のアルキル基が好ましい。また、これらRは、必要に応じて置換されている基であってもよく、例えば、エトキシエトキシエチル基のような置換されたアルキル基を挙げることができる。
一般式(2)で表される金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ−n−ブトキシド、アルミニウムトリ−sec−ブトキシド、アルミニウムトリ−tert−ブトキシド、モノsecブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリエトキシエトキシエトキシド、アルミニウムフェノキシド等のアルミニウムアルコキシド;チタニウムn−ブトキシド、チタニウムテトラ−tert−ブトキシド、チタニウムテトラ−sec−ブトキシド、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、チタニウムテトライソブトキシド、チタニウムラクテート、チタニウムテトラメトキシド、チタニウムテトラ(メトキシプロポキシド)、チタニウムテトラ(メチルフェノキシド)、チタニウムテトラn−ノニロキシド、チタニウムテトラn−ブトキシド、チタニウムテトラステアリロキシド、チタニウムビス(トリエタノールアミン)−ジイソプロポキシド等のチタニウムアルコキシド;ジルコニウムテトラn−ブトキシド、ジルコニウムテトラtert−ブトキシド、ジルコニウムテトラ2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトライソブトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラn−プロポキシド、ジルコニウムテトラ(2−メチル−2−ブトキシド)等のジルコニウムアルコキシド等が例示される。
【0057】
(c)の有機基含有化合物は、上述の一般式(2)で表される金属アルコキシドの部分加水分解縮合してなるものであり、具体的には、OR基の全部ではない一部が加水分解または加水分解および結合してなり、加水分解されていないM2−OR結合を分子中に有する化合物等が挙げられる。好ましくはM2−O−M2結合を形成してなる化合物(上述の、加水分解および結合してなり、加水分解されていないM2−OR結合を分子中に有する化合物)等が好ましく挙げられる。例えば、線状、環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)環状の加水分解縮合物が挙げられる。通常、金属アルコキシドを酸触媒存在下で金属M2の1モルに対してkモル未満、好ましくはk/2モル未満の水分存在下で加水分解反応または加水分解および結合反応を進めることにより得ることができる。
【0058】
(c)の有機基含有化合物にあたる、金属アルコキシドの部分加水分解縮合物の市販品としては、例えば、M2がTiの場合は、チタン(IV)テトラ−n−ブトキシド、テトラマーC4H9O〔Ti(OC4H9)2O〕4C4H9(和光純薬工業(株)製)、ポリオクチレングリコールチタネート〔OCH2CHEt(CH2)4OTi(CH2CHEt(CH2)4OH)2〕n(但し、EtはC2H5)(Ti含有量7.5〜7.6%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)等を挙げることができ、M2がSiの場合は、ポリジエトキシシロキサン(Si含有量20.5〜21.5%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)、ポリジエトキシシロキサン(Si含有量23.0〜23.5%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)、テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物であるMKCシリケートMS51やMKCシリケートMS56(共に三菱化学(株)製)等を挙げることができ、M2を2種以上含有する場合は、ジエトキシシロキサン−S−ブチルアルミネート共縮合物(Al含有量7.5〜8.5%、Si含有量6.6〜7.6%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)、ジエトキシシロキサン−エチルチタネート共縮合物(Si含有量19.1〜19.6%、Ti含有量2.1〜2.3%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)、ジエトキシシロキサン−エチルフォスフェート共縮合物(Si含有量19.1〜19.6%、P含有量1.4〜1.5%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)等を挙げることができ、その他に、ポリアンチモンエチレングリコシキシド(Sb含有量39.8〜40.4%、チッソ株式会社及びアヅマックス株式会社製)等を挙げることもできる。
【0059】
(d)のチタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、テトラオクニルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート等が例示される。
【0060】
本発明の製造方法において、上記特定の有機基含有化合物(a〜d)の配合量(含有量、添加量)については、出発原料となる金属カルボン酸塩または金属アルコキシ基含有化合物中の金属原子の価数と、製造したい有機基複合金属酸化物微粒子の金属原子の価数とにより好ましい範囲は異なるため、特に限定はされないが、通常、配合した有機基含有化合物(a〜d)中の金属原子の、上記出発原料中の金属原子に対するモル比が、0.01〜0.20となるようにすることが好ましく、より好ましくは0.04〜0.10である。上記モル比が0.01未満の場合は、有機基導入効果が不十分となるおそれがあり、0.20を超える場合は、未反応の有機基含有化合物が遊離して反応液中に残存するおそれがある。
【0061】
本発明の製造方法においては、出発原料を混合する時、出発原料の混合系を高温状態にする時や該高温状態にするための昇温を行う時、および、特定の有機基含有化合物の添加時・配合時などの、前述した全ての過程を撹拌下で行うことが好ましい。常に撹拌下で行うことによって、金属酸化物含有率が高く、金属酸化物の結晶性に優れ、粒子径や粒子形状等が均一な金属酸化物粒子が得られ易いといった効果が得られる。
本発明の製造方法により有機基複合金属酸化物微粒子を調製した後の調製液は、そのまま或いは濃縮して溶媒分散体や可塑剤分散体として使用することができるほか、バインダー成分(樹脂成分)を加えて成膜用組成物(塗料組成物)とし、これを基材に塗布して微粒子分散膜を形成したり、あるいは、同様にバインダー成分(樹脂成分)などに含有させて成形用樹脂組成物などとすることができる。また、濃縮乾固や遠心分離で溶媒を除去した後、加熱や乾燥をして微粒子粉体として取り扱うこともできる。
【0062】
上記バインダー成分としては、例えば、シリコンアルコキシド系バインダー、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂など、熱可塑性または熱硬化性(熱硬化性、紫外線硬化性、電子線硬化性、湿気硬化性、これらの併用等も含む)の各種合成樹脂や天然樹脂等の有機系バインダーや、無機系バインダー等を挙げることができる。合成樹脂としては、たとえば、アルキド樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、熱硬化性不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、フッ素樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂、ケトン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、液状ポリブタジエン、クマロン樹脂等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。天然樹脂としては、たとえば、セラック、ロジン(松脂)、エステルガム、硬化ロジン、脱色セラック、白セラック等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。合成樹脂としては、エチレン−プロピレン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム等の天然または合成のゴム等を用いてもよい。合成樹脂と併用する成分として、硝酸セルロース、セルロースアセテートブチレート、酢酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等を挙げることができる。
【0063】
バインダー成分の形態については、特に限定はなく、溶剤可溶型、水溶性型、エマルション型、分散型(水/有機溶剤等の任意の溶剤)等を挙げることができる。
水溶性型のバインダー成分としては、たとえば、水溶性アルキド樹脂、水溶性アクリル変性アルキド樹脂、水溶性オイルフリーアルキド樹脂(水溶性ポリエステル樹脂)、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシエステル樹脂、水溶性メラミン樹脂等を挙げることができる。
エマルション型のバインダー成分としては、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキル共重合ディスパージョン;酢酸ビニル樹脂エマルション、酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルション、アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、スチレン−アクリル酸エステル(共)重合樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、アクリル−シリコーンエマルション、フッ素樹脂エマルション等を挙げることができる。
【0064】
最後に、無機系バインダーとしては、シリカゲル、アルカリケイ酸、シリコンアルコキシド等の金属アルコキシド、これらの(加水分解)縮合物、リン酸塩等を挙げることができる。
上記成膜用組成物(塗料組成物)を塗布する場合の基材としては、例えば、ガラス板、アクリル板、ポリカーボネート板、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、ポリオレフィンフィルムなど、公知のシート、フィルムなどを用いることができる。すなわち、塗料組成物は、金属、ガラス、陶器等の無機物や、樹脂等の有機物等の基材の表面に塗布することができるのである。基板の形状については、特に限定はなく、フィルム状、シート状、板状、繊維状等の形状を挙げることができる。
【0065】
上記基材として用いられる樹脂の材質としては、特に限定はなく、たとえば、ポリオレフィン系;EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)系;ポリスチレン系;軟質又は硬質ポリ塩化ビニル;EVOH(エチレン・ビニルアルコール共重合体)系;PVA系(ビニロン系);PVDC系(ポリ塩化ビニリデン);ポリエステル系;ポリカーボネート系;ポリウレタン系;ポリアミド系;ポリイミド系;ポリアクリロニトリル系;ポリサルフォン系;ポリエーテルサルフォン系;ポリフェニレンサルファイド系;ポリアリレート系;ポリエーテルイミド系;アラミド系;(メタ)アクリル系;ポリエーテルエーテルケトン系;テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、フッ素樹脂系等、従来公知の樹脂を挙げることができる。
【0066】
また、前述の、調製液をそのまま或いは濃縮して一旦溶媒分散体としたものは、他の溶媒分散体に加工して使用することもできる。
他の溶媒分散体に加工する方法としては、例えば、調製液中の反応溶媒を、分散させたい別の溶媒に溶媒置換する方法が挙げられる。溶媒置換の方法としては、従来公知の方法が採用でき、例えば、▲1▼遠心分離により溶媒を除去し、分散させたい別の溶媒に再分散させる方法、▲2▼調製液を限外ろ過膜などの分離膜により濃縮した後、分散させたい別の溶媒を混合する方法、▲3▼調製液の溶媒を蒸発除去して得られた粉末を、分散させたい別の溶媒に分散させる方法、▲4▼調製液を加熱して溶媒を蒸発させながら、分散させたい別の溶媒を添加する方法などが挙げられる。なかでも、上記▲4▼の方法が、量産性に優れ、分散性の高い溶媒分散体が容易に得られる点で好ましい。この際、本発明でいう有機基含有化合物として前述した(a)の一般式(1)で表される化合物を用いる場合であって、この一般式(1)における有機官能基であるY1が、アクリル基、メタクリル基およびビニル基などの重合反応性官能基を有する有機基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基である場合は、これらの基が分解したり、重合性反応基間で重合反応したりするのを防ぐため、加熱が必要な場合は出来るだけマイルドな加熱条件下(好ましくは常温〜120℃であり、より好ましくは50〜100℃である。)で行うことが好ましく、また、酸素を含有する条件下で行うことが好ましい。
【0067】
上記分散させたい別の溶媒として、アクリル系モノマーおよびメタクリル系モノマーなどの重合性モノマーや、エポキシ系モノマーなどの樹脂原料モノマーなどのモノマー成分を用いれば、いわゆるモノマー分散体を得ることができる。
本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子は、上記本発明の製造方法によって得られる微粒子であることが好ましく、金属酸化物微粒子の表面に前述した有機基含有化合物(a〜d)が複合されてなる(付着してなる)いわゆる表面改質金属酸化物微粒子であることが好ましい。なお、以下、本発明の有機基複合金属酸化物微粒子とは、上記本発明の製造方法により得られる微粒子も、上記本発明にかかる有機基複合金属酸化物微粒子も、共に含むものとする。
【0068】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子における、金属酸化物微粒子の結晶性はX線回折測定または電子線回折測定により判定される。
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子において、有機基含有化合物の付着量(含有割合)は、金属酸化物微粒子の表面処理に供した有機基含有化合物中の金属原子の、金属酸化物微粒子中の金属原子に対するモル比が0.01以上となる付着量であることが好ましく、より好ましくは上記モル比が0.02以上となる付着量であり、特に上記モル比が0.04以上となる付着量である。上記モル比が0.01未満であると、有機基を複合した効果が不十分となるおそれがある。
【0069】
前記モル比、すなわち、有機基含有化合物の付着量は、有機基複合金属酸化物微粒子の粉末の蛍光X線分析によって求められる。なお、表面処理に供する有機基含有化合物と、表面処理される金属酸化物微粒子の金属成分が同じ場合は、有機基含有化合物を構成する炭素や窒素等の元素の元素分析を表面改質の前後の微粒子で行い、その結果から算出するようにする。有機基含有化合物の付着量は、適宜、得られた有機基複合金属酸化物微粒子の単離操作を行った上で測定すればよい。
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の1次粒子径は、特に限定はされないが、100nm以下が好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは20nm以下、特にこの好ましくは10nm以下である。上記1次粒子径が100nm以下であると、微粒子を含有する膜や樹脂成形体等の透明性が高く、20nm以下であると、透明性を維持しながら高濃度に微粒子を含有させることができ、微粒子添加効果(耐熱性、耐擦傷性等の効果)が格段に高いコンポジット薄膜や成形体を得ることができる。
【0070】
本明細書においては、1次粒子径とは、微粒子が粉末X線回折学的に結晶性である場合は、その結晶子径(Dw:結晶子の大きさ)であり、粉末X線回折測定により回折パターンが得られない場合(X線回折学的に非晶質の場合)は、その比表面積径であるとする。
比表面積径Daは、微粒子に関してB.E.T.法で求めた比表面積Sと、真比重ρとにより、下記式から求まる値と定義される。
Da=6000/(ρ×S)
(式中、Sの単位はg/m2であり、Daの単位はnmである。)
結晶子径Dwは、特に断りがない限り、微粒子の粉末X線回折測定を行い、ウィルソン法解析で求めた値であるとする。
【0071】
結晶子径Dwは、CuKα1線(波長:1.5405620Å)を用い、各回折線における回折線の広がりとして積分幅βを用いるようにして、結晶子の大きさとしてウィルソン法解析によりCauchy関数で近似して求める。通常、解析用回折線としては、走査範囲2θ=5°〜90°において回折強度が高い順に少なくとも3個(3強線)の回折線を選ぶようにするが、必要に応じ、明瞭な回折線があればそれも解析用回折線に含めてよく、3強線を含む3〜6個の回折線を選んで解析を行うようにする。
本発明においては、微粒子の粉末X線回折測定は、例えば、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて行うことができる。
【0072】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の結晶子径Dwは、特に限定はされないが、100nm未満が好ましく、より好ましくは50nm未満、さらに好ましくは20nm未満、特にこの好ましくは10nm未満である。上記1次粒子径が100nm未満であると、微粒子を含有する膜や樹脂成形体等の透明性が高く、20nm未満であると、透明性を維持しながら高濃度に微粒子を含有させることができ、微粒子添加効果(耐熱性、耐擦傷性等の効果)が格段に高いコンポジット薄膜や成形体を得ることができる。
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の、より好ましい態様としては、粉末X線回折測定を行い、得られたX線回折パターンにおける各回折線に関し、シェラー法解析で求めた結晶子径Dhkl(ここで、hklはミラー指数を表す。Dhklはミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)のうち、3強線(すなわち、最強線(最も回折強度の大きい回折線)、2番目に回折強度の大きい回折線および3番自に回折強度の大きい回折線)の各々より求めた結晶子径Dhklのうちのいずれか1つが100nm未満であることであり、好ましくは50nm未満、より好ましくは20nm未満、特に好ましくは10nm未満であるが、さらに好ましい態様としては、残りの2つの結晶子径Dhklも100nm未満であることであり、好ましくは50nm未満、特に好ましくは20nm未満である。上記結晶子径Dhklが100nm未満であると、微粒子を含有する膜や樹脂成形体等の透明性が高く、20nm未満であると、透明性を維持しながら高濃度に微粒子を含有させることができ、微粒子添加効果(耐熱性、耐擦傷性等の効果)が格段に高いコンポジット薄膜や成形体を得ることができる。
【0073】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子は、単分散度が、20以下であることが好ましく、より好ましくは10以下、さらに好ましくは5以下である。上記単分散度が20を超える場合は、有機基含有化合物の共存効果の1つである結晶の微細化効果が微粒子物性に十分に反映されないおそれがある。単分散度とは、分散粒径/1次粒子径で表される値であると定義される。
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の分散粒径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。上記分散粒径が100nm以下であると、微粒子を含有する膜や樹脂成型体等の透明性、機械的特性等が保たれるため、好ましい。
【0074】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子のうち、有機基含有化合物として、デシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン等の如く炭素数6以上の環状または鎖状の脂肪族炭化水素基、ベンジルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の如く芳香環を有する炭化水素基、あるいはジブチルジメトキシシランの如くアルキル基が有機基含有化合物の金属に対し2個以上有するような、有機基からなる有機基含有化合物を用いて得られた微粒子は、キシレンやトルエンなどの極性の低い溶媒、ポリオレフィン樹脂やエチレンテトラエチレン共重合体などのフッ素樹脂のような極性の低い樹脂にも分散するようになる。
【0075】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子のなかでも、下記一般式(3):
Y3 iSiX3 j (3)
(但し、Y3は反応性官能基を有する有機基、Siはケイ素原子、X3は加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはSiの原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物が表面に複合されてなる金属酸化物の微粒子であって、該微粒子の1次粒子径が100nm未満であり、該微粒子中の金属原子に対するケイ素原子の割合が1モル%以上である有機基複合金属酸化物微粒子(以下、金属酸化物微粒子Aと称することがある。)は、各種溶媒、各種有機樹脂(成形体、塗料バインダー)や無機バインダー等のマトリクス成分との親和性に優れた微粒子であり、また、微細粒子であることからマトリクス成分中に微分散できるので、透明性や機能性に優れた薄膜や樹脂成形体が得られるという点で、好ましい。
【0076】
上記一般式(3)において、反応性官能基を有する有機基であるY3としては、例えば、アクリル基、メタクリル基およびビニル基等のエチレン性不飽和二重結合を含む基ならびにエポキシ基などからなる群より選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基であることが好ましく、特に、置換されていてもよいアクリル基が反応性に富むことから好ましい。
上記一般式(3)において、加水分解性基であるX3としては、前述した一般式(1)における加水分解性基であるX1と同様であることが好ましい。
上記一般式(3)において、ケイ素原子Siの原子価sは、通常4である。
【0077】
上記一般式(3)で表される有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、o−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルメチルメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6−エポキシヘキシルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;(3−アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、N−3−(アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリクロロシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、o−(メタクリロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルシラトラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤;等が例示される。これらのなかでも、Y3としてアクリル基、メタクリル基、ビニル基やビニロキシ基、エポキシ基を有する有機基含有化合物、具体的には、アクリロキシ系シランカップリング剤、メタクリロキシ系シランカップリング剤、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤が好ましい。
【0078】
金属酸化物微粒子Aは、前述のウィルソン法により求められる結晶子径が100nm未満であり、好ましくは50nm未満、より好ましくは20nm未満、特に好ましくは10nm未満であるが、最も好ましくは、シェラー法により3強線の各々に関して求められる結晶子径のいずれか1つが上記範囲を満たし、かつ、他の2つも100nm未満であることである。なお、上記結晶子径とは、先に説明した通りである。上記結晶子径が100nm以上であると、微粒子を含有する膜や樹脂成形体の透明感が低下するだけでなく、耐スクラッチ性、耐摩耗性および耐衝撃性等の改質効果が不十分となるおそれがある。
【0079】
金属酸化物微粒子Aは、該微粒子中の金属原子に対するケイ素原子の割合が1モル%以上であるが、好ましくは3モル%以上である。すなわち、金属酸化物微粒子の表面処理に供した上記一般式(3)で表される有機基含有化合物中のケイ素原子の、金属酸化物微粒子中の金属原子に対するモル比が0.01以上であり、好ましくは0.03以上である。上記割合(上記モル比)が、1モル%未満(0.01未満)であると、有機基複合の効果が十分に発揮されず、マトリクス中に分散させた時の分散性や透明性が低下したり、得られる塗膜や樹脂成形体の微粒子による改質効果が不十分となるおそれがある。
【0080】
上記一般式(3)で表される有機基含有化合物として、ビニルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの重合性官能基を含有する有機基含有化合物を用い、その共存下で得られた金属酸化物微粒子は、ビニル系モノマー、アクリル系モノマーなどの重合性モノマーに容易に分散し得るだけでなく、これらのモノマーに微粒子を混合し、重合反応させることにより、ポリマー中に微粒子が高度に分散した、しかも微粒子とマトリクスポリマーの密着性の高い膜、成形体あるいは金属酸化物微粒子分散ポリマー微粒子を得ることができる。
【0081】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子は、金属酸化物の機能に応じて各種機能分野で用いる機能性塗料、膜および成形体などに用いることができる。それぞれの機能に応じた金属酸化物微粒子の種類を挙げれば、例えば、以下のとおりである。
高屈折率機能:酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、これらの酸化物に異種金属をドープしてなるもの。
紫外線吸収機能:酸化チタン、酸化第1鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム。
赤外線吸収機能:酸化インジウムにTi,Sn等の4価金属元素またはフッ素を固溶した酸化インジウム系固溶体、酸化第2スズにP,Sb等の5価金属元素またはフッ素を固溶した酸化第2スズ系固溶体、酸化亜鉛にAl,In等の3価金属元素を固溶した酸化亜鉛系固溶体。
【0082】
電気伝導機能:上記の酸化インジウム、酸化第1スズ、酸化第2スズ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化銅などのn型、p型半導体として知られる酸化物およびこれらにドーパントまたはアクセプターとなる金属元素を固溶した固溶体、亜酸化銅、チタンブラック等の如く安定な酸化物を還元処理して得られるような低原子価金属の酸化物などの電子伝導性酸化物;酸化ジルコニウム等のイオン伝導性酸化物。
熱伝導機能;アルミナ、酸化亜鉛。
磁気機能:マグネタイト、マンガンフェライト、ニッケルフェライトなどの強磁性酸化物。
【0083】
光触媒機能:酸化チタン、酸化亜鉛。
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子は、その特性を利用して各種用途に用いることができ、種々の作用効果が期待できる。例えば、樹脂組成物、塗料組成物および複合ポリマー微粒子などの分散組成物や、その他、粘度調整剤および表面処理剤などの用途に構成成分として用いることができる。
(樹脂組成物)
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子は、その表面に有機基が複合されている(導入されている)ため、樹脂との親和性が高く、分散性に優れる。従って、樹脂に金属酸化物が有する機能(例えば、紫外線吸収性、着色、導電性、熱線吸収性、所望の屈折率など)を容易かつ効果的に付与することができるとともに、特に1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であり且つ分散粒子径が200nm以下である微粒子は、樹脂の透明性を損なうことなく上記機能を付与できるばかりか、樹脂や樹脂製品の、熱的特性(耐熱性等)、機械的特性、光に対する耐久性および化学的耐久性(薬品等に対する耐久性)等の各種特性を改善することができる。
【0084】
樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などの、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂および電子線硬化性樹脂などの各種樹脂が好ましく用いられる。
特に、本発明の有機基複合金属酸化物微粒子を、得られる樹脂組成物中に10〜80重量%分散配合したものは、耐熱性および耐擦傷性などの表面硬度や衝撃強度などの特性が改良されたコンポジット樹脂として得られる。なかでも、エポキシ基が表面に複合されている金属酸化物微粒子は、エポキシ樹脂の、耐熱性、光に対する耐久性および化学的耐久性(薬品等に対する耐久性)等の各種特性の改善に効果が高く、アクリル基が表面に複合されている金属酸化物微粒子は、アクリル樹脂、特に紫外線硬化性樹脂の、耐熱性の向上や、表面硬度、光に対する耐久性および化学的耐久性(薬品等に対する耐久性)等の各種特性の改善に効果が高い。これらコンポジット樹脂は、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、白色LEDおよび有機LEDなどの光電子材料用樹脂、特に限定はされないが、具体的には、例えば、封止材用の樹脂として有用である。また、自動車用や建物用等の合わせガラスにおける中間膜樹脂のガラスとの粘接着力の調整剤としても好ましく用いることができる。
【0085】
(塗料組成物)
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子は、その表面に有機基が複合されている(導入されている)ため、塗料における分散性に優れる。従って、塗料に配合することによって、得られる塗膜に金属酸化物が有する機能(例えば、紫外線吸収性、着色、導電性、熱線吸収性、所望の屈折率など)を容易かつ効果的に付与することができるとともに、特に1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であり且つ分散粒子径が200nm以下である微粒子は、樹脂の透明性を損なうことなく上記機能を付与できるばかりか、塗料や塗膜の、熱的特性(耐熱性等)、機械的特性、基材との密着性、光に対する耐久性および化学的耐久性(薬品等に対する耐久性)等の各種特性を改善することができる。
【0086】
用いるバインダーとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂およびフッ素樹脂などの従来公知の有機系バインダー、あるいは、アルコキシシラン系バインダー、アルコキシチタン系バインダーおよび水ガラスなどの従来公知の無機系バインダーなどが好ましく用いられる。
塗料、塗膜の各種物性の改善例としては、例えば、以下の▲1▼〜▲6▼が挙げられる。
▲1▼粘着剤および接着剤用の塗料とする場合はその粘着力や接着力を調整することができ、また、粘着剤接着剤用の塗料とする場合はその粘度を調整することができる。特に、アクリル樹脂やエポキシ樹脂などの紫外線硬化型あるいは熱硬化型樹脂を含む粘着剤や接着剤には、アクリル基、エポキシ基およびアミノ基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子が好ましく用いられる。このようにして得られる粘着剤や接着剤は、LCDやPDPなどの表示デバイスを構成する各種フィルムでの粘着剤や接着剤として、あるいは、自動車用、建物用などの窓ガラス用の熱線吸収・反射フィルムなどの粘着剤や接着剤として好ましく用いられる。
【0087】
▲2▼紫外線硬化型のアクリル系樹脂をバインダーとして含む塗料には、アクリル基およびメタクリル基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが、アクリル系樹脂との共重合性に優れるため好ましく、得られる硬化膜は、耐熱性や膜表面の耐擦傷性に優れる膜となり、基材表面にハードコート性が付与することができる。PETやPEN等のポリエステルフィルムやポリカーボネートシートなどの、各種樹脂フィルムやシートのハードコート塗料として好ましく用いられる。
▲3▼紫外線硬化型あるいは熱硬化型のエポキシ樹脂をバインダーとして含む塗料には、エポキシ基およびアミノ基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが、得られる膜の耐熱性や膜表面の耐擦傷性を効果的に改良することができるため好ましい。
【0088】
▲4▼ウレタン系樹脂やアクリル系樹脂(ポリイソシアナートを硬化剤とするアクリル系樹脂)をバインダーとして含む塗料には、ウレイド基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが、得られる膜の耐熱性や膜表面の耐擦傷性を効果的に改良することができるため好ましい。
▲5▼アクリルポリオールやポリエステルポリオールなどのポリオール樹脂をバインダーとして含む塗料には、イソシアナート基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが、バインダーとの架橋構造を形成でき、得られる膜の、表面硬度、基材との密着性、熱に対する耐久性、光に対する耐久性および化学的耐久性(薬品等に対する耐久性)等の各種特性に優れる強靭な膜を形成することができるため好ましい。
【0089】
▲6▼アルコキシシラン系樹脂やアルコキシチタン系樹脂などの無機系バインダーを含む塗料には、メチル基やブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシアルキル基およびヒドロキシアルキル基等の各種アルキル基における水素がアルコキシ基、水酸基およびアミノ基等の親水性の官能基で置換されたアルキル基などの有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが、分散性に優れるため好ましい。
(複合ポリマー微粒子)
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子をアクリルモノマーに分散させ、これを水に乳化または懸濁したものを重合させることにより、有機基複合金属酸化物微粒子が分散したポリマー微粒子を得ることができる。アクリル基やメタクリル基などの重合反応性を有する有機基や、デシル基やフェニル基などの疎水性の高い有機基を有する有機基複合金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。
【0090】
(粘度調整剤)
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子として、1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であり且つ分散粒子径が200nm以下である微粒子を用いれば、膜の透明性を損なうことなく容易に、溶媒や塗料の粘度を高くすることができる。これにより、例えば、塗料中の顔料などの沈降防止剤としても有用である。
(表面処理剤)
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子、特に、1次粒子径(結晶子径)が20nm以下であり且つ分散粒子径が200nm以下である微粒子は、各種微粒子、特に、高分子微粒子や金属微粒子への親和力および密着力に優れるため、分散性改良剤や表面改質剤あるいは本発明の有機基複合金属酸化物微粒子が有する金属酸化物に由来する機能を付与する機能付与剤として好ましく用いることができる。例えば、本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の溶媒分散体に、高分子微粒子や金属微粒子を分散させることにより、改質された微粒子が得られる。この際、必要に応じて加熱したり、溶媒を除去したりすることもできる。また、高分子微粒子や金属微粒子を懸濁させた溶媒分散体の塗料に、本発明の有機基複合金属酸化物微粒子を添加することにより、分散性を改良することができる。
【0091】
本発明の有機基複合金属酸化物微粒子の、溶媒分散体あるいは塗料分散体は、インクジェット式プリンター用のインクとしても用い得るため、該微粒子を含む(好ましくは高濃度に含む)パターンを容易に形成することができ、さらに高温で加熱すれば金属酸化物からなるパターン膜を形成することもできる。特に好ましくは、アクリル酸およびメタクリル酸等のエチレン不飽和二重結合を有する有機基複合金属酸化物微粒子の溶媒分散体、あるいは、該微粒子と紫外線硬化型のアクリル樹脂とからなる塗料を、上記インクとして用いると、インクジェット式のプリンター等でパターンを描画した後、紫外線を照射することにより、本発明の有機基複合金属酸化物微粒子を含む膜からなるパターンを容易に形成することができる。さらに、この得られた膜を、高温(例えば300〜500℃)で加熱することにより、金属酸化物からなるパターンとすることもできる。また、結晶子径が10nm以下の有機基複合金属酸化物微粒子を用いた場合は、極めて微細な細線やドットのパターンを形成することができる。
【0092】
【実施例】
以下においては、実施例によってさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例における調製方法および測定方法を以下に示す。
<粉末試料の調製法>
得られた分散体中の微粒子を遠心分離操作によって分離した後、メタノールによる洗浄、さらにアセトンによる洗浄を充分行った後、30℃で1日真空乾燥し、さらに80℃にて1日真空乾燥し、揮発成分を完全に除去して微粒子の粉末を得て、これを粉末試料とした。
【0093】
<有機基含有化合物の結合量>
粉末試料を蛍光X線分析し、金属酸化物結晶中の金属原子のモル数に対する、有機基含有化合物中の金属原子のモル数の割合(モル%)を、有機基含有化合物の結合量とした。
<有機基含有化合物の反応率>
有機基含有化合物の添加量として、金属酸化物を得るための出発原料中の金属原子のモル数に対する、添加した有機基含有化合物中の金属元素のモル数の割合(モル%)を求め、この添加量と前述の結合量との値から下記式により、有機基含有化合物の反応率(%)を求めた。
【0094】
反応率(%)=(結合量(モル%)/添加量(モル%))×100
<結晶子径Dw>
粉末試料について、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて粉末X線回折測定することにより求めた。具体的な測定条件は以下のとおりである。
すなわち、CuKα1線(波長:1.5405620Å)を用い、各回折線における回折線の広がりとして積分幅βを用いるようにして、結晶子の大きさ(結晶子径Dw)をウィルソン法解析によりCauchy関数で近似して求める。解析用回折線としては、走査範囲2θ=5°〜90°において回折強度が高い順に少なくとも3個(3強線)の回折線を選び、必要に応じてさらに残りの回折線のうち回折強度が高い順に1〜3個選んで解析を行うようにする。
【0095】
<結晶子径Dhkl>
結晶子径Dwと同様に、粉末試料について、理学電気株式会社製の粉末X線回折装置「RINT2400」を用いて粉末X線回折測定することにより求めた。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線に関し、シェラー法解析で求めた結晶子径Dhkl(ここで、hklはミラー指数を表す。Dhklはミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求めた。
<分散体中の微粒子濃度>
分散体の一部をるつぼに秤量し、溶媒の沸点より40℃低い温度で24時間真空乾燥した後、空気中で600℃1時間加熱して得られた灰分量より求めた。
【0096】
<分散安定性>
分散体を20℃で1日静置し、沈降堆積物がみられない場合を「○」、みられる場合を「×」とした。
−実施例1−
撹拌機、添加口、温度計、留出ガス出口、窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器(容量:1リットル)、および、添加口にボールバルブを介して直結する添加槽、留出ガス出口にニードルバルブを介して直結する冷却器および留出液トラップを備えた耐圧回分式反応装置(A)を用意した。
【0097】
反応器内に、1−ブタノール500部、酢酸インジウム無水物88部、酢酸第2スズ5.3部、有機基含有化合物としてのデシルトリメトキシシラン(Si化合物)4部からなる混合物(1)を仕込み、反応装置内の気相部を窒素でパージした。
混合物(1)を撹拌しながら、常温(20℃)より、30分かけて250℃に昇温し、250±2℃で5時間加熱処理した後、冷却することにより、微粒子反応液(1)を得た。
この微粒子反応液(1)は、Si化合物でSi/In=4.6モル%の結合量で表面処理された、
SnがドープしたIn2O3結晶微粒子(1)が、微粒子濃度7wt%で分散してなる分散体であった。
【0098】
Si化合物の反応率は、91%であった。
得られた微粒子反応液(1)を、エバポレータにより、加熱しつつ、該反応液の溶媒成分を留去しながら、キシレンを添加混合し、微粒子反応液(1)の溶媒成分をキシレンに置換した。これにより、キシレンに微粒子(1)が微粒子濃度20wt%で分散してなるキシレン分散体を得た。
このキシレン分散体の分散安定性は良好であった。
得られた微粒子(1)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、In2O3結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(222)、(440)、(622)、(211)に帰属される回折線であった(最強線(222))。これら4つの回折線の積分幅よりウィルソン法解析による結晶子径Dwを求めた結果11.8nmであった。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D222が12.5nm、D440が12.5nm、D622が12.6nm、D400が12.1nmであった。
【0099】
−比較例1−
実施例1において、有機基含有化合物としてのデシルトリメトキシシランを使用しない以外は、実施例1と同様にして、微粒子反応液(c1)を得た。さらに実施例1と同様にして、微粒子反応液(c1)の溶媒成分をキシレンに置換し、微粒子濃度20%のキシレン分散体を得た。
このキシレン分散体の分散安定性は悪かった。
−実施例2−
実施例1と同様の反応器内に、プロビレングリコールモノメチルエーテル(PGM)500部、チタンテトラn−ブトキシド102部、酢酸86部を添加、混合し、混合物(2)を得た。
【0100】
一方、添加槽には、添加液として、有機基含有化合物としてのデシルトリメトキシシラン(Si化合物)10wt%を含有するPGM溶液39部を仕込んだ。混合物(2)を撹拌しながら、200℃に昇温し、白濁が開始すると同時に、添加槽より添加液を圧入した。圧入後、200℃で1時間加熱処理することにより、微粒子反応液(2)を得た。
この微粒子反応液(2)は、Si化合物でSi/Ti=4.46モル%の結合量で表面処理された、アナタース型チタニア結晶微粒子(2)が、微粒子濃度3.3wt%で分散してなる分散体であった。
【0101】
Si化合物の反応率は、90%であった。
得られた微粒子(2)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、酸化チタン(アナタース型)結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(101)、(004)、(200)に帰属される回折線であった(最強線(101))。これら3つの回折線の積分幅よりウィルソン法解析による結晶子径Dwを求めた結果6.0nmであった。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D101が6.2nm、D004が5.8nm、D200が5.9nmであった。
【0102】
−実施例3−
実施例1と同様の反応器内に、1−ブタノール500部、酢酸亜鉛無水物55部、有機基含有化合物としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Si化合物)3部からなる混合物(3)を仕込み、反応装置内の気相部を窒素でパージした。
混合物(3)を撹拌しながら、常温(20℃)より、30分かけて170℃に昇温し、170±2℃で5時間加熱処理した後、冷却することにより、微粒子反応液(3)を得た。
【0103】
この微粒子反応液(3)は、Si化合物でSi/Zn=4.1モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(3)が、微粒子濃度4.4wt%で分散してなる分散体であった。
Si化合物の反応率は、97%であった。
得られた微粒子(3)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、ZnO結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(100)、(002)、(101)に帰属される回折線であった(最強線(101))。微粒子(3)の結晶子径Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)のそれぞれに帰属される回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D100が19nm、D002が25nm、D101が19nmであった。以上により、微粒子(3)は、微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0104】
これらの結果を表1に示した。
−実施例4〜9−
実施例3において、酢酸亜鉛無水物55部を用い、有機基含有化合物やアルコールの種類や使用量、および、反応条件等を、表1に示すようにした以外は、実施例3と同様にして、微粒子反応液(4)〜(9)を得た。これら微粒子反応液(4)〜(9)は、それぞれ有機基含有化合物(Si化合物)で表面処理されたZnO結晶微粒子(4)〜(9)が分散してなる分散体であった。また、微粒子反応液(4)〜(9)のうち、微粒子反応液(9)について、透過型電子顕微鏡による観察を行ったところ、結晶子が複数連結した繊維状の形態(太さ5〜10nmで、繊維長は長いもので200nm程度)を有する微粒子が多く含まれていることが確認された。
【0105】
得られた微粒子(4)〜(9)は、すべて、粉末X線回折パターンを測定した結果、ZnO結晶であり、回折線はそれぞれミラー指数(100)、(002)、(101)に帰属される回折線であった(最強線(101))。微粒子(4)〜(9)の結晶子径Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)のそれぞれに帰属される回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた。また、シェラー法により解析した、微粒子(4)〜(9)の結晶子径Dhkl(nm)は、下記表の通りであった。
微粒子 D100 D002 D101
(4) 27 37 28
(5) 10 18 10
(6) 8.7 20 8.8
(7) 7.4 18 7.3
(8) 9.1 22 9.2
(9) 9.4 27 9.9
以上により、微粒子(4)は、微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であり、微粒子(5)〜(9)は、いずれも10nm以下の微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0106】
これらの結果を表1に示した。
−比較例2−
実施例3において、有機基含有化合物としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用しない以外は、実施例3と同様にして、微粒子反応液(c2)を得た。得られた微粒子反応液(c2)中の微粒子の結晶子径Dwは39nmと粗大であった。なお、結晶子径Dwは、実施例3と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
−比較例3−
実施例4において、有機基含有化合物としてのフェニルトリメトキシシランを使用しない以外は、実施例4と同様にして、微粒子反応液(c3)を得た。得られた微粒子反応液(c3)中の微粒子の結晶子径Dwは37nmであり粗大であった。なお、結晶子径Dwは、実施例4と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
【0107】
−比較例4−
実施例5において、有機基含有化合物としてのデシルトリメトキシシランを使用しない以外は、実施例5と同様にして、微粒子反応液(c4)を得た。得られた微粒子反応液(c4)中の微粒子の結晶子径Dwは24nmであった。なお、結晶子径Dwは、実施例5と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
【0108】
【表1】
【0109】
〔溶媒分散体の調製〕
微粒子反応液(3)〜(5)および(7)〜(9)と、比較例4で得られた反応液(c4)それぞれから、遠心分離操作により微粒子を含む沈殿物を得、沈殿物を微粒子濃度20wt%となるように表2に示す分散溶媒に再分散させることにより、上記各種微粒子の溶媒分散体(S3)〜(S5)、(S7)〜(S9)、(cS4)および(cS4(2))を得た。
それぞれの溶媒分散体における微粒子の分散安定性(良好:「○」、不良:「×」)を表2に示す。
【0110】
なお、表2中の略記は以下の通りである。IPA:イソプロピルアルコール(2−プロパノール)、MMA:メチルメタクリレート、MEK:メチルエチルケトン。
【0111】
【表2】
【0112】
〔塗料組成物、樹脂組成物の製造〕
−製造例1−
溶媒分散体(S3)100部を、シリコンアルコキシド系バインダー(シリカ分:20wt%)100部と混合し、塗料組成物を調製した。
この塗料組成物をガラス板に塗付し、乾燥することによって、乾燥膜厚4μmの微粒子分散膜の形成されたガラス板を得た。
得られたガラス板の透明性および耐久性を下記方法および基準により評価した。その結果を表3に示す。
【0113】
自記分光光度計((株)島津製作所製、製品名:UV−3100)により分光透過率曲線を評価した結果、360nm以下の紫外線を吸収するものであることが確認された。
(透明性)
濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH−1001DP)を用いてヘイズを求める。試料そのもののヘイズHと、用いた基材のみのヘイズH0とを測定し、ヘイズHの値から基材のヘイズH0の値を差し引いた値を膜のヘイズHmとして、以下の基準により評価した。
【0114】
A:Hm<3%
B:Hm≧3%
(耐久性)
JIS B 7753−93に記載のサンシャインカーボンアーク灯式耐光性および耐候性試験機を用いて、促進耐候性試験を行った。初期200時間後を基準にしてさらに500時間試験後の塗工品の透明性(ヘイズHm)の変化から、下記の評価基準にしたがって、評価した。
A:ヘイズの値の変化が3%未満
B:ヘイズの値の変化が3%以上5%未満
C:ヘイズの値の変化が5%以上
−製造例2〜4−
製造例1において、溶媒分散体とバインダーを表3に示すようにして塗料組成物を調製し、得られた塗料組成物を表3に示す基材に塗布、乾燥した以外は、製造例1と同様にして、微粒子分散膜の形成された各種フィルムや基板を得た。得られた各種フィルムや基板の透明性および耐久性を、製造例1と同様の方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0115】
−比較製造例1−
製造例1において、溶媒分散体とバインダーを表3に示すようにして塗料を調製し、得られた塗料を表3に示すポリカーボネート板(PC板)に塗布、乾燥した以外は、製造例1と同様にして、微粒子分散膜の形成されたPC板を得た。得られたPC板の透明性および耐久性を、製造例1と同様の方法により評価した。その結果を表3に示す。
【0116】
【表3】
【0117】
−製造例5−
溶媒分散体(S8)1.25部を、MMA(メチルメタクリレート)100部で希釈し、光重合開始剤を添加した後、注型重合することによって、厚さ2mmの微粒子分散PMMAシートを得た。このシートは、前記の濁度計によりヘイズを測定したところ透明性に優れるシートであり、自記分光光度計により、分光透過率曲線を評価した結果、360nm以下の紫外線を吸収するものであることが確認された。
−比較製造例2−
製造例5において、溶媒分散体(S8)1.25部の代わりに、溶媒分散体(cS4(2))1.25部を使用する以外は、製造例5と同様にして、PMMAシートを得た。このシートは白濁したシートであった。
【0118】
−実施例10−
実施例1と同様の反応器内に、酢酸亜鉛無水物55部、有機基含有化合物としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Si化合物)1.4部(Si/Zn=2モル%)、メタノール200部からなる混合物(10)を仕込み、反応装置内の気相部を酸素を5%含有する窒素ガスでパージした。
混合物(10)を撹拌しながら、常温(20℃)より、30分かけて115℃に昇温し、115±1℃で5時間加熱処理した後、冷却することにより、微粒子反応液(10)を得た。
【0119】
この微粒子反応液(10)は、Si化合物でSi/Zn=2.0モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(10)が、10wt%で分散してなる分散体であった。
Si化合物の反応率は、100%であった。
得られた微粒子(10)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、ZnO結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(100)、(002)、(101)に帰属される回折線であった(最強線(101))。微粒子(10)の結晶子径Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)のそれぞれに帰属される回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D100が8.8nm、D002が20nm、D101が9.1nmであった。以上により、微粒子(10)は、10nm以下の微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0120】
これらの結果を表1に示した。
−実施例11−
実施例10において、有機基含有化合物としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシランの使用量を1.4部から3.5部(Si/Zn=5モル%)とする以外は、実施例10と同様にして、微粒子反応液(11)を得た。
この微粒子反応液(11)は、Si化合物でSi/Zn=4.9モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(11)が、10wt%で分散してなる分散体であった。また、微粒子反応液(11)について、透過型電子顕微鏡による観察を行ったところ、結晶子が複数連結した繊維状の形態(太さ5〜10nmで、繊維長は長いもので200nm程度)を有する微粒子が多く含まれていることが確認された。
【0121】
Si化合物の反応率は、98%であった。
得られた微粒子(11)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、ZnO結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(100)、(002)、(101)に帰属される回折線であった(最強線(101))。微粒子(11)の結晶子径Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)のそれぞれに帰属される回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D100が7.2nm、D002が15nm、D101が8.2nmであった。以上により、微粒子(11)は、10nm以下の微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0122】
これらの結果を表1に示した。
−実施例12−
実施例10において、有機基含有化合物としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシランの使用量を1.4部から7.0部(Si/Zn=10モル%)とする以外は、実施例10と同様にして、微粒子反応液(12)を得た。
この微粒子反応液(12)は、Si化合物でSi/Zn=9.5モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(12)が、11wt%で分散してなる分散体であった。また、微粒子反応液(12)について、透過型電子顕微鏡による観察を行ったところ、結晶子が複数連結した繊維状の形態(太さ5〜10nmで、繊維長は長いもので200nm程度)を有する微粒子が多く含まれていることが確認された。
【0123】
Si化合物の反応率は、95%であった。
得られた微粒子(12)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、ZnO結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(100)、(002)、(101)に帰属される回折線であった(最強線(101))。微粒子(12)の結晶子径Dwは、ミラー指数(100)、(002)、(101)、(102)、(110)、(103)のそれぞれに帰属される回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた。また、シェラー法により解析した結晶子径Dhklは、D100が7.5nm、D002が16nm、D101が7.6nmであった。以上により、微粒子(12)は、10nm以下の微細なZnO結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0124】
これらの結果を表1に示した。
−比較例5−
実施例10において、有機基含有化合物としてのアクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用しない以外は、実施例10と同様にして、微粒子反応液を得た。得られた微粒子反応液を撹拌しながら、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.4部、水10wt%含有メタノール3.2部(H2O/アクリロキシプロピルトリメトキシシラン=3/1(モル比)に相当)を順次、添加および混合し、昇温して、メタノールの沸点温度で1時間、還流状態で加熱処理を行い、微粒子反応液(c5)を得た。
【0125】
この微粒子反応液(c5)中の微粒子は、結晶子径Dwが20nmであり、Si化合物でSi/Zn=0.4モル%の結合量で表面処理されたものであった。Si化合物の反応率は20%であった。なお、結晶子径Dwは、実施例10と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
−実施例13−
実施例11において、メタノール200部の代わりにn−ブタノール200部を用いた以外は、実施例11と同様にして、微粒子反応液(13)を得た。
この微粒子反応液(13)は、結晶子径Dwが18nmであり、Si化合物でSi/Zn=4.8モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(13)が、10wt%で分散してなる分散体であった。Si化合物の反応率は、96%であった。なお、結晶子径Dwは、実施例11と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
【0126】
−実施例14−
実施例11において、メタノール200部の代わりにプロピレングリコールモノメチルエーテル200部を用いた以外は、実施例11と同様にして、微粒子反応液(14)を得た。
この微粒子反応液(14)は、結晶子径Dwが26nmであり、Si化合物でSi/Zn=4.6モル%の結合量で表面処理されたZnO結晶微粒子(14)が、10wt%で分散してなる分散体であった。Si化合物の反応率は、92%であった。なお、結晶子径Dwは、実施例11と同様の回折線の積分幅を用いて求めた。
【0127】
−実施例15−
実施例1と同様の反応器内に、酢酸ニッケル無水物26.5部(市販の4水和物を真空加熱乾燥機により脱水して調製)、塩基性酢酸鉄(III)57.3部、有機基含有化合物としてのメチルトリメトキシシラン(Si化合物)6部(Si/(Ni+Fe)=9.8モル%)、n−ブタノール500部からなる混合物(15)を仕込み、反応装置内の気相部を酸素を5%含有する窒素ガスでパージした。
混合物(15)を撹拌しながら、常温(20℃)より、1時間かけて200℃に昇温し、200±2℃で3時間加熱処理した後、冷却することにより、微粒子反応液(15)を得た。
【0128】
この微粒子反応液(15)は、Si化合物でSi/(Ni+Fe)=9.6モル%の結合量で表面処理されたNiフェライト(NiFe2O4)結晶微粒子(15)が、6wt%で分散してなる分散体であった。
Si化合物の反応率は、98%であった。
得られた微粒子(15)は、粉末X線回折パターンを測定した結果、NiFe2O4結晶であり、回折強度の高いほうから順に、それぞれミラー指数(311)、(440)、(511)、(400)、(220)に帰属される回折線であった(最強線(311))。微粒子(15)の結晶子径Dwは、上記5つの回折線の積分幅からウィルソン法解析により求めた結果、10nm以下であった。以上により、微粒子(15)は、10nm以下の微細なNiFe2O4結晶にSi化合物が結合した超微粒子であることが確認された。
【0129】
これらの結果を表1に示した。
〔加熱溶媒置換による溶媒分散体の調製〕
−製造例6−
滴下口、留出ガスの凝縮・冷却ラインを介して真空排気ポンプに直結した留出出口、温度計、撹拌機を備えたガラス製濃縮機を用意した。
(留出操作1)
このガラス製濃縮機に、実施例10で得られた微粒子反応液(10)を50部仕込み、気相部圧を減圧下で常温より昇温し、微粒子反応液(10)中の溶媒成分の留出を開始させると同時に、この微粒子反応液(10)50部を滴下口よりフィードした。フィード終了後も留出操作を続け、微粒子反応液(10)中の溶媒成分を合計で50部留出させることにより、濃縮反応液(10)50部を得た。
【0130】
以上の留出操作1における気相部圧は700〜650Torr、ボトム(微粒子反応液〜濃縮反応液)の温度は64〜66℃の範囲であった。また、濃縮反応液(10)の微粒子濃度は20wt%であった。
(留出操作2)
次に、引き続き、濃縮反応液(10)を減圧下で加熱しながら、滴下口より、n−ブタノール70部をフィードしながら、濃縮反応液(10)中の残存溶媒成分とn−ブタノールとの留出操作を続けた。n−ブタノールのフィード終了後、さらに留出操作を続けることにより、n−ブタノール分散体(S10)50部を得た。
【0131】
以上の留出操作2における気相部圧は650〜140Torr、ボトム(濃縮反応液〜n−ブタノール分散体)の温度は66〜80℃の範囲であった。また、得られたn−ブタノール分散体(S10)の微粒子濃度は20wt%であり、溶媒成分についてはn−ブタノール以外の溶媒成分は0.1wt%未満であり、含有水分量もカールフィッシャー法により確認したが0.1wt%未満であった。n−ブタノール分散体(S10)は、調製してから一週間後においてもチキソトロピー性を示すものであった。
n−ブタノール分散体(S10)中の微粒子(10)の分散粒子径を、光散乱式粒度分布測定機(堀場製作所社製、製品名:光散乱式粒度分布測定機LB−500)により測定した結果、メジアン径110nmであった。
【0132】
−製造例7〜10−
製造例6において、微粒子反応液および置換する溶媒の種類を、表4に示すように変更した以外は、製造例6と同様にして、溶媒分散体(S11)、(S12)、(S5(2))および(S3(2))を得た。これら各溶媒分散体についての各種測定結果も表4に示す。
【0133】
【表4】
【0134】
−比較製造例3−
製造例6の留出操作1において、微粒子反応液(10)の代わりに比較例5で得られた微粒子反応液(c5)を用いた以外は、製造例6と同様にして、濃縮反応液(c5)を得た。
次に、引き続き、製造例6の留出操作2において、濃縮反応液(10)の代わりに濃縮反応液(c5)を用い、n−ブタノールの代わりにメチルイソブチルケトンを用いた以外は、製造例6と同様にして、メチルイソブチルケトン分散体(cS5)を得た。
【0135】
得られた溶媒分散体(cS5)の微粒子濃度は25wt%であり、該微粒子の分散粒子径を、製造例10と同様の方法により測定した結果、メジアン径210nmであった。
−比較製造例4−
比較例2で得られた微粒子反応液(c2)を、エバポレーターで加熱濃縮することにより、1−ブタノールを主成分とする溶媒に微粒子が25wt%の濃度で分散してなる、溶媒分散体(cS2)を得た。
−製造例11−
製造例6の留出操作1において、微粒子反応液(10)の代わりに実施例13で得られた微粒子反応液(13)を用いた以外は、製造例6と同様に、減圧下、100℃以下で濃縮して、濃縮反応液(13)を得た。
【0136】
次に、引き続き、製造例6の留出操作2において、濃縮反応液(10)の代わりに濃縮反応液(13)を用い、n−ブタノールの代わりに酢酸ブチルを用いた以外は、製造例6と同様に、減圧下、100℃以下で溶媒置換して、酢酸ブチル分散体(S13)を得た。
得られた溶媒分散体(S13)の微粒子濃度は25wt%であり、該微粒子の分散粒子径を、製造例10と同様の方法により測定した結果、メジアン径140nmであった。
−製造例12−
製造例6の留出操作1において、微粒子反応液(10)の代わりに実施例14で得られた微粒子反応液(14)を用いた以外は、製造例6と同様に、減圧下、100℃以下で濃縮して、濃縮反応液(14)を得た。
【0137】
次に、引き続き、製造例6の留出操作2において、濃縮反応液(10)の代わりに濃縮反応液(14)を用い、n−ブタノールの代わりにプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを用いた以外は、製造例6と同様に、減圧下、100℃以下で溶媒置換して、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート分散体(S14)を得た。
得られた溶媒分散体(S14)の微粒子濃度は25wt%であり、該微粒子の分散粒子径を、製造例10と同様の方法により測定した結果、メジアン径140nmであった。
〔ハードコート膜用膜形成剤(UV硬化型塗料)およびハードコート膜塗布フィルムの製造〕
−製造例13−
製造例7で得られたメチルイソブチルケトン分散体(S11)100部、UV硬化樹脂(共栄社化学製、製品名:HIC2000、固形分:50wt%、屈折率1.576)50部(固形分比:微粒子(11)/UV硬化樹脂=50/50)、および、UV硬化触媒(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、製品名:イルガキュア907)1.25部(UV硬化樹脂の固形分量の5wt%)を配合し、さらに全体の固形分量が20wt%となるように希釈溶剤としてのメチルエチルケトンを配合しておいて、分散処理し、膜形成剤(11)を調製した。
【0138】
この膜形成剤(11)を、PETフィルム(東洋紡社製、製品名:A4300、両面コート品、188μm厚)上に、乾燥膜厚が5μmとなるようにバーコーターで塗布し、下記乾燥・硬化条件に基づいて乾燥および紫外線硬化処理することにより、表面にハードコート膜が形成されたPETフィルム(11)を製造した。
(乾燥・硬化条件)
乾燥条件:10分間セッティング後、熱風乾燥炉で100℃×15分間乾燥。
【0139】
硬化条件:高圧水銀灯によるUV照射(照射量:1000mJ/cm2)。得られたPETフィルム(11)の各種物性に関して、下記方法および基準により評価した。その結果、PETフィルム(11)は、透明性が○、耐溶剤性が○、耐スクラッチ性がA、屈折率が1.65であり、360nm以下の波長の紫外線を吸収するものであった。
(透明性)
白化の度合いを目視により観察し、以下の基準で評価した。
○ :濁りは認められず透明である
△ :僅かに白濁している
× :透明感はあるが白濁している
××:白濁し透明感は無い
(耐溶剤性)
形成した膜表面に対して、アセトンでラビング試験(50回)を行い、目視により膜表面を観察し、以下の基準で評価した。
【0140】
○:全く溶解していない
△:僅かに溶解している
×:顕著に溶解している
(耐スクラッチ性)
膜表面に対して、荷重条件250g/cm2の下でスチールウール0000番で10往復した後の傷つきの程度を目視により観察し、以下の基準で評価した。
A:変化無し(キズが認められない)
B:数本のキズが認められる
C:十数本のキズが認められる
D:数十本のキズが認められる
E:無処理と同様に無数にキズが認められる
(膜の屈折率)
反射分光膜厚計(大塚電子株式会社製、製品名:FE−3000)を用いて、波長230nmから760nmまでの範囲で反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてnk_Cauchyの分散式を引用し、未知のパラメーターを絶対反射率のスペクトルの実測値から非線形最小二乗法によって求めて、波長550nmでの屈折率を求めた。
【0141】
−比較製造例5−
製造例13において、メチルイソブチルケトン分散体(S11)の代わりに、比較製造例3で得られた溶媒分散体(cS5)を用いた以外は、製造例13と同様にして、膜形成剤(c5)を調製した。また、膜形成剤(11)の代わりに膜形成剤(c5)を用いた以外は、製造例13と同様にして、PETフィルム(c5)を製造した。
得られたPETフィルム(c5)の各種物性に関して、製造例13と同様の方法および基準により評価した。その結果、PETフィルム(c5)は、透明性が×、耐溶剤性が△、耐スクラッチ性がDであった。
【0142】
−比較製造例6−
製造例13において、メチルイソブチルケトン分散体(S11)の代わりに、比較製造例4で得られた溶媒分散体(cS2)を用いた以外は、製造例13と同様にして、膜形成剤(c2)を調製した。また、膜形成剤(11)の代わりに膜形成剤(c2)を用いた以外は、製造例13と同様にして、PETフィルム(c2)を製造した。
得られたPETフィルム(c2)の各種物性に関して、製造例13と同様の方法および基準により評価した。その結果、PETフィルム(c2)は、透明性が×、耐溶剤性が×、耐スクラッチ性がEであった。
【0143】
−製造例14−
製造例13において、メチルイソブチルケトン分散体(S11)の代わりに、製造例11で得られた酢酸ブチル分散体(S13)を用いた以外は、製造例13と同様にして、膜形成剤(13)を調製した。また、膜形成剤(11)の代わりに膜形成剤(13)を用いた以外は、製造例13と同様にして、PETフィルム(13)を製造した。
得られたPETフィルム(13)の各種物性に関して、製造例13と同様の方法および基準により評価した。その結果、PETフィルム(13)は、透明性が○、耐溶剤性が○、耐スクラッチ性がBであった。
【0144】
−製造例15−
製造例13において、メチルイソブチルケトン分散体(S11)の代わりに、製造例12で得られたプロピレングリコールメチルエーテルアセテート分散体(S14)を用いた以外は、製造例13と同様にして、膜形成剤(14)を調製した。また、膜形成剤(11)の代わりに膜形成剤(14)を用いた以外は、製造例13と同様にして、PETフィルム(14)を製造した。
得られたPETフィルム(14)の各種物性に関して、製造例13と同様の方法および基準により評価した。その結果、PETフィルム(14)は、透明性が△、耐溶剤性が△、耐スクラッチ性がCであった。
〔アクリルモノマー分散体およびPMMAシートの製造〕
−製造例16−
製造例8で得られたメチルメタクリレート分散体(S12)100部、メチルメタクリレート900部、重合開始剤(ベンゾイルパーオキサイド)10部を混合し、シロップを得た。このシロップを、離型剤を塗布した2枚のガラス板で作成したガラス板間の隙間幅2mmの箱(セル)に流し込み、80℃の水浴中で1時間加熱することにより注型重合し、微粒子が2wt%で分散してなるMMAシート(12)を得た。
【0145】
得られたMMAシート(12)は、透明性に優れるものであった。
【0146】
【発明の効果】
本発明によれば、結晶性の金属酸化物粒子の表面が有機基含有化合物により十分かつ均一に表面処理され効率良く表面改質されてなる、有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法を提供することができる。
Claims (2)
- 金属カルボン酸塩とアルコールとを出発原料とするか、または、金属アルコキシ基含有化合物とカルボキシル基含有化合物とを出発原料として結晶性の金属酸化物粒子を生成させる方法であって、
下記(a)、(b)、(c)および(d)から選ばれる少なくとも1種の有機基含有化合物の存在下で前記生成を行う、
ことを特徴とする、有機基複合金属酸化物微粒子の製造方法。
(a)下記一般式(1):
Y1 iM1X1 j (1)
(但し、Y1は有機官能基、M1は金属原子、X1は加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはM1の原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物
(b)前記一般式(1)の有機基含有化合物の加水分解縮合物
(c)下記一般式(2):
M2(OR)k (2)
(但し、M2は金属原子、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基から選ばれる少なくとも1種の置換されていてもよい基、kは1からtまでの整数(tはM2の原子価)である。)
で表される金属アルコキシドの部分加水分解縮合物
(d)チタネート系カップリング剤 - 下記一般式(3):
Y3 iSiX3 j (3)
(但し、Y3は反応性官能基を有する有機基、Siはケイ素原子、X3は加水分解性基、iおよびjは1から(s−1)までの整数であってi+j=s(sはSiの原子価)を満足する。)
で表される有機基含有化合物が複合されてなる金属酸化物の微粒子であって、
前記微粒子の1次粒子径が100nm未満であり、
前記微粒子中の金属原子に対するケイ素原子の割合が1モル%以上である、
ことを特徴とする、有機基複合金属酸化物微粒子。
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