JP2004042789A - ウエビング巻取装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】回転力を伝達する際に生じる衝撃に充分に耐え得る強度を確保でき、しかも、軽量化が可能なクラッチ機構を有するウエビング巻取装置を得る。
【解決手段】本ウエビング巻取装置のクラッチ350は、連結ローラ354を案内するためのロックピース356を、ベースプレート92とは別体で構成したうえでベースプレート92に一体的に固定している。このため、回転力伝達の際に連結ローラ354から受ける衝撃に耐え得る機械的強度は、ロックピース356だけが有していればよく、ベースプレート92等の他の部材の強度を低く設定でき、その結果、クラッチ350、ひいては、ウエビング巻取装置の軽量化を図ることができる。
【選択図】 図4
【解決手段】本ウエビング巻取装置のクラッチ350は、連結ローラ354を案内するためのロックピース356を、ベースプレート92とは別体で構成したうえでベースプレート92に一体的に固定している。このため、回転力伝達の際に連結ローラ354から受ける衝撃に耐え得る機械的強度は、ロックピース356だけが有していればよく、ベースプレート92等の他の部材の強度を低く設定でき、その結果、クラッチ350、ひいては、ウエビング巻取装置の軽量化を図ることができる。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するためのシートベルト装置を構成するウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するシートベルト装置は、座席の側方で車体に固定されたウエビング巻取装置を備えている。ウエビング巻取装置は、例えば、軸方向が略車両前後方向に沿ったスプール(巻取軸)を備えており、このスプールにウエビングベルトの長手方向基端側が係止されている。スプールはその外周部にウエビングベルトを層状に巻き取ることができ、シートベルト装置を使用しない場合には、スプールの外周部にウエビングベルトを巻き取らせて収容することができるようになっている。
【0003】
また、ウエビング巻取装置には、ウエビングベルトを巻き取る巻取方向へスプールを付勢する渦巻きばね等の付勢部材が設けられており、この付勢部材の付勢力でウエビングベルトを巻き取って収容すると共に、乗員の身体にウエビングベルトを装着した状態では、付勢部材の付勢力でウエビングベルトの弛み等を除去している。
【0004】
一方で、車両急減速状態等に一定量ウエビングベルトをスプールに巻き取らせることで、「スラック」等と称される僅かな緩みを解消すると共に、ウエビングベルトによる乗員の身体の拘束力を増加させ、より一層確実に乗員の身体を保持する機構も考えられている。この種の機構は、車両の急減速状態を加速度センサで検知し、加速度センサからの電気信号に基づいてスプールを強制的に巻取方向に回転させる構成が一般的である。
【0005】
これに対して、前方の他の車両や障害物までの距離を距離センサ等で検出し、前方の車両や障害物までの距離が一定値未満になると、モータを作動させ、モータの回転力でスプールを巻取方向に回転させる構成も考えられている。
【0006】
このように、モータの回転力でスプールを巻取方向に回転させる構成の場合、、モータの出力軸とスプールとの間に所謂「ワンウエイクラッチ」を介在させている。このワンウエイクラッチは、通常、スプールへウエビングベルトを巻き取らせる方向にモータの出力軸が回転した場合にのみ出力軸とスプールとを連結する構造となっている。これにより、通常のスプールへのウエビングベルトの巻取時やスプールからのウエビングベルトの引出時におけるスプールの回転をモータの出力軸に伝達しないようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本ウエビング巻取装置は車両に搭載されるために常に軽量化が要求される。しかしながら、上記のようなワンウエイクラッチを別に設けることは、基本的に重量が増加してしまう。
【0008】
ワンウエイクラッチの構成部品を形成する材質の機械的強度を低く設定すれば、ワンウエイクラッチの軽量化を図ることは可能である。しかしながら、ワンウエイクラッチは連結状態で急激なモータの回転力をスプールへ伝えるという構造上、機械的強度を低く設定してしまうと、急激なモータの回転力に起因した連結時における衝撃に構成部品が耐えきれなくなる可能性がある。
【0009】
本発明は、回転力を伝達する際に生じる衝撃に充分に耐え得る強度を確保でき、しかも、軽量化が可能なクラッチ機構を有するウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のウエビング巻取装置は、装着状態で乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトの基端部が係止され、巻取方向への回転により前記ウエビングベルトをに基端側から巻取状態で収納すると共に、前記ウエビングベルトを先端側へ引っ張ることで前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転しつつ前記ウエビングベルトの引き出す巻取軸と、前記巻取軸に対して同軸的に配置され、前記巻取軸の軸心周りに前記巻取軸に対して相対回転可能で駆動手段からの駆動力を受けて回転する原動側回転体と、前記原動側回転体の内側に設けられ、前記巻取軸へ同軸的且つ一体的に連結された従動軸と、軸方向が前記従動軸の軸方向と略同方向の円柱形状若しくは円筒形状に形成されて、前記従動軸の外周部の側方で前記従動軸の外周部に対して接離移動可能に設けられた連結ローラと、少なくとも前記原動側回転体よりも機械的強度が高い材質により前記原動側回転体とは別体で形成され、前記連結ローラを介して前記従動軸の外周部とは反対側で前記原動側回転体に一体的に連結されると共に、前記連結ローラ側の面における前記巻取方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法よりも大きく、前記連結ローラ側の面における前記引出方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法未満に設定され、前記巻取方向側の端部から前記引出方向側の端部へ向けて前記従動軸の外周部までの間隔が減少する斜面若しくは曲面とされたガイド部材と、を備えている。
【0011】
上記構成のウエビング巻取装置によれば、巻取軸にウエビングベルトの基端側が係止されており、例えば、ウエビングベルトを使用しない場合には、ウエビングベルトがその基端側から巻取軸の周囲に略層状に巻き取られて収納される。
【0012】
この状態で、ウエビングベルトをその先端側へ引っ張ると、巻取軸が引出方向側へ回転しつつ、巻取軸に巻き取られたウエビングベルトが引き出される。
【0013】
さらに、このようなウエビングベルトの引出状態で巻取軸を巻取方向へ回転させると、ウエビングベルトが基端側から巻取軸に巻き取られ、再びウエビングベルトが収納される。
【0014】
一方、本ウエビング巻取装置では駆動手段に原動側回転体が機械的に接続されており、駆動手段が作動すると駆動手段の駆動力によって原動側回転体が巻取方向側へ回転し、原動側回転体と一体のガイド部材が従動軸周りに巻取方向へ回転する。
【0015】
ここで、ガイド部材の連結ローラ側の面は、巻取方向側の端部から従動軸の外周部までの距離が連結ローラの外径寸法よりも大きい。したがって、この巻取方向側の端部近傍に連結ローラが位置していれば、ガイド部材と従動軸との間で従動軸の外周部に対して接離移動可能であるため、ガイド部材及び連結ローラを介して原動側回転体と従動軸とが機械的に連結されることはない。
【0016】
これに対して、上記のように、原動側回転体が巻取方向へ回転することで、ガイド部材が巻取方向に回転すると、連結ローラがガイド部材の引出方向側の端部近傍に位置する。ここで、ガイド部材の連結ローラ側の面は、引出方向側の端部から従動軸の外周部までの距離が連結ローラの外径寸法未満である。このため、この引出方向側の端部近傍に連結ローラが位置すると、連結ローラがガイド部材と従動軸の外周部との間に挟み込まれる。この状態では、原動側回転体の巻取方向への回転が、ガイド部材及び連結ローラを介して従動軸に伝えられ、従動軸、ひいては巻取軸が巻取方向に回転する。この巻取軸の巻取方向への回転により、ウエビングベルトが巻取軸に巻き取られる。
【0017】
したがって、例えば、車両急減速状態を検出する加速度センサ等に基づいて駆動手段を作動させる構成とすることで、車両急減速状態におウエビングベルトを一定量巻き取り、車両が急減速する際にその完成で車両前方側へ移動しようとする乗員の身体を確実に保持、拘束できる。
【0018】
ここで、本ウエビング巻取装置では、上記のガイド部材が原動側回転体とは別体で構成されたうえで原動側回転体に一体的に連結されている。しかも、ガイド部材が原動側回転体とは別の材料で形成され、機械的強度が原動側回転体に比べて高い。このため、軽量化や製造コストを下げるために原動側回転体を比較的強度が小さな材料で形成しても、連結ローラが接するガイド部材の強度を高くできる。
【0019】
請求項2記載のウエビング巻取装置は、請求項1記載の本発明において、前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記引出方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記原動側回転体に対して前記連結ローラを強制的に引出方向側へ移動させる強制連結手段を備える、ことを特徴としている。
【0020】
上記構成のウエビング巻取装置では、従動軸及び原動側回転体の双方に対して相対回転可能に強制連結手段が設けられている。このため、駆動手段の駆動力により原動側回転体が回転し、これにより、原動側回転体が強制連結手段に対して巻取方向側へ相対回転すると(すなわち、原動側回転体を基準に見た場合、強制連結手段が原動側回転体に対して引出方向へ相対回転すると)、強制連結手段が連結ローラに干渉する。
【0021】
このように強制連結手段が連結ローラに干渉することで巻取方向へ回転する原動側回転体に追従した連結ローラの回転が規制される。したがって、この状態で更に原動側回転体が巻取方向へ回転すれば、相対的に連結ローラが原動側回転体に対して引出方向側へ移動し、ガイド部材の引出方向側の端部近傍へ確実に移動して従動軸に接する。
【0022】
請求項3記載のウエビング巻取装置は、請求項1又は請求項2記載の本発明において、前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記巻取方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記連結ローラを前記従動軸の外周部から強制的に離間させる強制解除手段を備える、ことを特徴としている。
【0023】
上記構成のウエビング巻取装置では、従動軸及び原動側回転体の双方に対して相対回転可能に強制解除手段が設けられている。このため、原動側回転体が強制解除手段に対して引出方向側へ相対回転すると(すなわち、原動側回転体を基準に見た場合、強制解除手段が原動側回転体に対して巻取方向へ相対回転すると)、強制解除手段が連結ローラに干渉する。
【0024】
このように強制解除手段が連結ローラに干渉することで連結ローラは強制解除手段により従動軸の外周部から離間する方向へ押圧される。これにより、ガイド部材及び連結ローラを介した原動側回転体と従動軸との機械的連結が確実に解除される。
【0025】
【発明の実施の形態】
<本実施の形態の構成>
(ウエビング巻取装置10の全体構成)
図1には、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成を示す正面図が示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚板16、18が互いに平行に延出されており、これらの脚板16、18間にダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。
【0026】
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
【0027】
スプール本体22はフランジ部24、26間には、長尺帯状に形成されたウエビングベルト28の基端部が固定されており、スプール20をその軸周り一方へ回転させると、ウエビングベルト28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウエビングベルト28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウエビングベルト28が引き出され、これに伴い、ウエビングベルト28を巻き取る際の回転方向(以下、この方向を便宜上「巻取方向」と称する)とは反対にスプール20が回転する(以下、ウエビングベルト28を引き出す際のスプール20の回転方向を便宜上「引出方向」と称する)。
【0028】
フランジ部24のフランジ部26とは反対側でスプール20の一端側は、脚板16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸方向に沿って脚板16と対向して配置されて脚板16に固定されている。また、ケース32は全体的に脚板16側へ向けて開口しており、円孔30を貫通したスプール20の一端側はケース32の内側に入り込み、ケース32によって回転自在に軸支されている。
【0029】
さらに、ケース32の内部には渦巻きばね34が配置されている。渦巻きばね34は渦巻き方向外側の端部がケース32に係止されており、渦巻き方向内側の端部がスプール20に係止されている。渦巻きばね34は特別に負荷をかけない中立状態からスプール20を引出方向へ回転させると、巻取方向の付勢力が生じてスプール20を巻取方向へ付勢する。したがって、基本的には、スプール20から引き出すためにウエビングベルト28に付与した引っ張り力を解除すると、渦巻きばね34の付勢力がスプール20を巻取方向へ回転させ、スプール20にウエビングベルト28を巻き取らせる構造になっている。
【0030】
一方、フランジ部26のフランジ部24とは反対側でスプール20の他端側は、脚板18に形成された内歯のラチェット孔36を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板18側のフレーム12の外側には、ロック機構38が配置されている。ロック機構38はケース40を備えている。ケース40はスプール20の軸方向に沿って脚板18と対向して配置されて脚板18に固定されている。
【0031】
ケース40の内側には、ロック機構38を構成する図示しないイナーシャルプレートや外歯ギヤ、加速度センサ等の各部材が収容されており、急激に巻取方向へスプール20が回転することで、ケース40内のイナーシャルプレートがスプール20に対して相対回転したり、加速度センサが車両の急減速状態を検出して強制的にスプール20に対してケース40内のイナーシャルプレートがスプール20に対して相対回転させられる構造となっている。
【0032】
また、上述したラチェット孔36の内側には一対のロックプレート42が設けられている。これらのロックプレート42は、ケース40内に設けられてスプール20と共に一体的に回転するロックベースに支持されており、ロックベースに対してケース40内のイナーシャプレートが引出方向側へ相対回転すると、ロックベースに形成されたガイド部に案内されてラチェット孔36の内周部に接近し、ロックプレート42に形成された外歯がラチェット孔36の内周部に形成された内歯に噛み合う構造となっている。
【0033】
このように、ロックプレート42に形成された外歯がラチェット孔36の内周部に形成された内歯に噛み合うことで、引出方向へのロックベースの回転が規制され、ひいては、スプール20の回転が規制される構成となっている。
【0034】
一方、スプール20の下方で脚板16と脚板18との間には、駆動手段としてのモータ44が配置されている。モータ44は、ドライバ46を介して車両に搭載されたバッテリー48に電気的に接続されており、バッテリー48からの電流がドライバ46を介してモータ44に流れることで、モータ44は出力軸50を正方向又は逆方向へ回転させる構成となっている。ドライバ46は、マイコン等で構成されたECU52に接続されており、更に、ECU52は前方監視センサ54に接続されている。
【0035】
前方監視センサ54は、車両前端部近傍に設けられており、車両前方へ向けて赤外線を発光すると共に、車両の前方で走行若しくは停止している他の車両や障害物(以下、走行若しくは停止している車両も含めて便宜上「障害物」と称する)にて反射した赤外線を受光する。ECU52では、前方監視センサ54が赤外線を発光してから受光するまでに要する時間に基づいて、前方の障害物までの距離を算出する。
【0036】
ECU52は、前方監視センサ54から出力された電気信号に基づいてドライバ46を操作し、モータ44を制御している。
【0037】
(ブレーキ機構300の構成)
一方、図1に示されるように、モータ44の出力軸50の先端部にはギヤ56が同軸的且つ一体的に設けられている。図2及び図3に示されるように、ギヤ56はブレーキ機構300を構成する外歯のギヤ302に噛み合っている。ギヤ302は、歯数がギヤ56よりも充分に多く、更に、その軸方向両端がフレーム12の脚板16とブレーキ機構300のフレーム301に回転自在に軸支されている。
【0038】
ギヤ302の脚板16側には、ギヤ302よりも充分に歯数が少ないギヤ304がギヤ302に対して同軸的且つ一体的に設けられている。ギヤ304の上方では、ギヤ304よりも歯数が多いギヤ306がギヤ304に噛み合った状態で脚板16とフレーム301に回転自在に軸支されている。さらに、このギヤ306の上方では、後述するクラッチ350を構成する原動側回転体としての外歯の外歯ギヤ102がギヤ306に噛み合っており、出力軸50の回転がギヤ56、302、304、306を介して外歯ギヤ102に減速されて伝えられる。
【0039】
一方、ギヤ304の脚板16側には、アーム308が設けられている。アーム308はギヤ302の回転半径方向に沿って長手方向とされ、且つ、ギヤ302の軸方向に沿って厚さ方向とされた板状部材で、その長手方向基端側には、略円形のスプリング収容部310が形成されている。
【0040】
このスプリング収容部310にはフリクションスプリング312が収容されている。フリクションスプリング312は全体的に略リング状に形成されており、その内周部はギヤ304と一体の軸部314に摺接している。また、フリクションスプリング312の周方向両端は半径方向外側へ屈曲している。
【0041】
この屈曲したフリクションスプリング312の両端の間に対応してスプリング収容部310には壁部316が形成されており、アーム308に対してフリクションスプリング312が軸部314周りに回転しようとすると、フリクションスプリング312の両端の何れかが壁部316に干渉し、フリクションスプリング312が壁部316をその回転方向へ押圧する。
【0042】
一方、アーム308の先端側からはギヤ302側へ向けて軸部318が突出形成されている。この軸部318にはレバー320の基端部が軸部318周りに回動自在に軸支されている。レバー320は軸部318の半径方向に沿って長手方向とされ、且つ、ギヤ302の軸方向に沿って厚さ方向とされた板状部材で、その長手方向先端側には厚さ方向に貫通した透孔322が形成されており、略リング状に形成されたブレーキスプリング324の引出方向側の端部が嵌合している。
【0043】
(クラッチ350の構成)
一方、図4に示されるように、上述した外歯ギヤ102を備えるクラッチ350はベースプレート92を備えている。ベースプレート92は円盤状のベース部94の外周部に沿って略リング状の周壁96が形成された軸方向寸法が極めて短い有底円筒状(若しくは浅底の盆状)に形成されている。ベースプレート92の軸方向一端側(図4の矢印C方向側)の開口端には、薄厚円盤状のカバー98が取り付けられており、基本的にベースプレート92の開口端が閉止されている。
【0044】
周壁96の外周部にはその周方向に沿って一定間隔毎に係合凹部100が形成されている。また、周壁96の外側には、ギヤ302よりも充分に歯数が多い略リング形状の外歯ギヤ102がベースプレート92に対して同軸的に配置されている。外歯ギヤ102の内径寸法は、周壁96の外径寸法よりも充分に大きく、外歯ギヤ102の内周部と周壁96の外周部との間には環状の隙間が形成されており、この環状の隙間に複数のトルクリミッタ104が周方向に断続的に配置されている。
【0045】
トルクリミッタ104は、ばね性を有する細幅の板状の金属片で、その長手方向量端部には上記の係合凹部100に入り込み可能な係合部106が形成されている。また、トルクリミッタ104の長手方向略中央には、係合部106の突出方向とは略反対方向に突出する如く屈曲した係合突起108が形成されている。
【0046】
この係合突起108に対応して外歯ギヤ102の内周部には係合凹部110が形成されており、係合凹部110に係合突起108が入り込んだ状態で係合部106が係合凹部100に入り込むことによりトルクリミッタ104を介してベースプレート92と外歯ギヤ102とが略一体的に連結されている。
【0047】
これにより、ベースプレート92に対して外歯ギヤ102がベースプレート92の軸心周りに相対回転しようとすると、当然、トルクリミッタ104も外歯ギヤ102と共に一体的に回転しようとする。しかしながら、トルクリミッタ104の各係合部106が係合凹部100に入り込んでいることで、周壁96の周方向に沿って係合部106が回転しようとすると係合凹部100が係合部106に干渉し、係合部106の回転を規制する。
【0048】
これにより、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転が規制され、基本的には、外歯ギヤ102とベースプレート92とが一体的に連結される構成となっている。
【0049】
但し、上記のように、トルクリミッタ104がばね性を有する金属片であるため、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転で生じる回転力が、トルクリミッタ104のばね力(付勢力)に抗して係合部106を係合凹部100から抜け出させるのに充分な大きさであれば、係合凹部100による係合部106への干渉が解除されるため、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転が可能となる構成である。
【0050】
一方、上述したベースプレート92の内側には、従動軸としての略円筒形状のアダプタ352がベースプレート92に対して略同軸的に配置されている。アダプタ352は全体的にベースプレート92の軸方向に沿って厚さ方向(軸方向)とされた厚肉のリング状に形成されており、上述したスプール20が一体的且つ同軸的に嵌め込まれている。アダプタ352のベース部94側の端部には、合成樹脂材によってリング状に形成されたスペーサ118が嵌め込まれており、その軸方向一方の端面(図4の矢印Cとは反対方向側)はベース部94に当接している。
【0051】
また、アダプタ352の半径方向外方には、複数(本実施の形態では3個)の連結ローラ354が配置されている。連結ローラ354は全体的に略円柱形状に形成されており、その軸方向はアダプタ352の軸方向、すなわち、スプール20の軸方向と略同方向とされている。さらに、連結ローラ354をベースプレート92の周壁96の間にはガイド部材としてのロックピース356が設けられている。
【0052】
ロックピース356は比較的強度が高い(一例としては、ベースプレート92を形成する材質よりも充分に機械的強度が高い)材質で形成されており、周壁96の内周部に形成されたピース取付部358に嵌め込まれた状態で周壁96に一体的に固定されている。
【0053】
アダプタ352及びベースプレート92の半径方向に沿ってロックピース356の連結ローラ354と対向する側の面はガイド面360とされている。ガイド面360は、アダプタ352の軸心周りの引出方向へ向けて漸次アダプタ352の外周面との距離が短くなる斜面若しくは湾曲面とされており、連結ローラ354がガイド面360に倣って引出方向側へ回動若しくは移動することにより、強制的にアダプタ352の外周面へ接近させられる構造となっている。
【0054】
さらに、ガイド面360の引出方向側の端部近傍では、アダプタ352の外周面との間隔(距離)が連結ローラ354の外径寸法と同じか極僅かに短くなるように設定されている。このため、ガイド面360の引出方向側の端部近傍まで連結ローラ354が移動すると、連結ローラ354はアダプタ352の外周部に接触する。
【0055】
また、連結ローラ354を介してベースプレート92のベース部94とは反対側には、回転盤362が設けられている。回転盤362はスプール20が貫通する円孔364が形成された板状のベース部366を備えており、基本的には、スプール20及びベースプレート92に対してスプール20の軸心周りに相対回転自在とされている。
【0056】
ベース部366の円孔364の周囲には複数の周壁368が形成されいる。周壁368は円孔364と同心の仮想円周上に一定間隔毎に連結ローラ354と同じ数だけ形成されており、これらの周壁368の間に上述した連結ローラ354が配置される。アダプタ352の軸心周りに周壁368の引出方向(図4乃至図6の矢印B方向)側の端部には強制連結手段としての規制壁370が形成されている。アダプタ352の軸心周りに巻取方向へ連結ローラ354が所定量以上移動しようとした際には、連結ローラ354の外周部に規制壁370が干渉して連結ローラ354の移動を制限する。
【0057】
これに対して、アダプタ352の軸心周りに周壁368の巻取方向(図4乃至図6の矢印A方向)側の端部には強制解除手段としての楔状部372が形成されている。楔状部372は巻取方向へ向けて漸次肉厚が薄くなるテーパ状に形成されており、回転盤362が連結ローラ354に対して巻取方向側へ回動することで楔状部372がアダプタ352の外周部近傍で連結ローラ354の外周部に干渉し、連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させる方向へ押圧する構造となっている。
【0058】
また、複数の周壁368のうちの1つには、スプリング取付部374が形成されており、圧縮コイルスプリング150が取り付けられている。圧縮コイルスプリング150は、軸方向が概ね周壁96の内周形状に沿うように湾曲し、その巻取方向側の端部はスプリング取付部374の壁部374Aに当接し、引出方向側の端部は周壁96の内周部に形成された当接壁376に当接している。
【0059】
上記のように、回転盤362は基本的にアダプタ352及びベースプレート92に対してアダプタ352の軸心周りに相対回転自在である。しかしながら、回転盤362に対してベースプレート92が相対的に巻取方向へ回転しようとした場合には、当接壁376が圧縮コイルスプリング150の他端部を巻取方向側へ押圧し、これにより、増加する圧縮コイルスプリング150の付勢力が壁部374Aを巻取方向へ押圧し、回転盤362を巻取方向へ回動させる。
【0060】
したがって、回転盤362に対してベースプレート92が相対的に巻取方向へ回転しようとした場合には、圧縮コイルスプリング150の付勢力によって回転盤362がベースプレート92の回動に追従しようとする。
【0061】
一方、カバー98を介して回転盤362とは反対側(すなわち、カバー98の外側)には、摩擦リング378がアダプタ352に対して同軸的に配置されている。摩擦リング378は全体的に略リング状に形成されていると共に、その外周部には上述したブレーキスプリング324を収容する環状の収容溝380が形成されている。収容溝380の底部における収容溝380の外径寸法はブレーキスプリング324の内径寸法に略等しく、収容溝380の底部にブレーキスプリング324の内周部が摺接している。
【0062】
また、摩擦リング378の内周部からは舌片状の複数(本実施の形態では3つ)の取付片382が延出されており、カバー98に形成された開口384を貫通したネジ等の締結手段によって回転盤362のベース部366へ一体的に連結されており、これにより、回転盤362と摩擦リング378とが一体となっている。
【0063】
以上の構成のクラッチ350は、上述した外歯ギヤ102がギヤ306に噛み合っている。
【0064】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0065】
(ウエビング巻取装置10の基本動作)
先ず、本ウエビング巻取装置10の基本動作について説明する。
【0066】
本ウエビング巻取装置10では、スプール20にウエビングベルト28が層状に巻き取られた収納状態で、図示しないタングプレートを引っ張りつつウエビングベルト28を引っ張ると、スプール20を巻取方向に付勢する渦巻きばね34の付勢力に抗してスプール20を引出方向へ回転させながらウエビングベルト28が引き出される。
【0067】
このように、ウエビングベルト28が引き出された状態で、ウエビングベルト28を座席に着座した乗員の身体の前方に掛け回しつつタングプレートを図示しないバックル装置に差し込み、バックル装置にタングプレートを保持させることで乗員の身体に対するウエビングベルト28の装着状態(以下、単に「装着状態」と称する)となる。
【0068】
また、ウエビングベルト28を装着するためにウエビングベルト28を引き出してスプール20を引出方向へ回転させると、渦巻きばね34が巻き締められてスプール20を巻取方向側へ付勢する渦巻きばね34の付勢力が増加する。したがって、上記装着状態では、渦巻きばね34の付勢力がウエビングベルト28をスプール20に巻き取らせるように作用するため、基本的には、この付勢力で乗員の身体にウエビングベルト28がフィットし、このときの付勢力に応じた力でウエビングベルト28が乗員の身体を拘束、保持する。
【0069】
一方、バックル装置によるタングプレートの保持が解除され、バックル装置からタングプレートが抜け出ると、渦巻きばね34の付勢力に抗して引出状態のままウエビングベルト28を維持する力が解除されるため、渦巻きばね34は付勢力でスプール20を巻取方向に回転させる。この巻取方向へのスプール20の回転により引き出されたウエビングベルト28がスプール20の外周部に層状に巻き取られ、これにより、ウエビングベルト28が収納される。
【0070】
ここで、スプール20はクラッチ350のアダプタ352に嵌合しているため、ウエビングベルト28の引き出しや巻き取りのためにスプール20を回転させると、アダプタ352が回転する。しかしながら、この状態では、単にアダプタ352が回転するだけで、ベースプレート92や回転盤362は回転しないため、連結ローラ324が移動することはなく、したがって、外歯ギヤ102が回転することはない。したがって、スプール20の回転が外歯ギヤ102、ギヤ306、304、302、56を介してモータ44の出力軸50に伝達されることはない。
【0071】
(前方障害物接近時におけるウエビング巻取装置10の動作)
一方、車両の走行状態では、前方監視センサ54が車両の前方の障害物(車両前方で走行若しくは停止している他の車両も含む)までの距離を検出している。さらに、前方監視センサ54からは、障害物までの距離に対応した信号レベルを有する電気信号が出力される。
【0072】
前方監視センサ54から出力された電気信号はECU52に入力され、ECU52では前方監視センサ54からの電気信号に基づいて障害物までの距離が所定値未満であるか否かが判定される。
【0073】
次いで、障害物までの距離が所定値未満であるとECU52で判定されると、ECU52はドライバ46に対して制御信号を出力し、ドライバ46を介してモータ44に電流を流す。これにより、モータ44は所定値以上の速度で正転駆動し、出力軸50を正転させる。出力軸50の回転は、ギヤ56、302、304、306を介して減速されつつクラッチ350の外歯ギヤ102に伝達され、外歯ギヤ102を所定値以上の回転速度で巻取方向に回転させる。
【0074】
外歯ギヤ102は、トルクリミッタ104を介してベースプレート92に機械的に連結されているため、外歯ギヤ102が巻取方向に回転することでベースプレート92が巻取方向へ一体的に回転する。
【0075】
ベースプレート92が巻取方向に回転すると、当接壁376が圧縮コイルスプリング150の引出方向側の端部を押圧し、更に、圧縮コイルスプリング150が付勢力でスプリング収容部148の壁部148Aを押圧することで、回転盤362がベースプレート92に追従回転しようとする。
【0076】
一方、上記のように、出力軸50の回転がギヤ56の回転がギヤ302に伝えられてギヤ302が回転すると軸部314が回転し、軸部314が回転することでフリクションスプリング312の内周部との間に生じた摩擦力がフリクションスプリング312を回転させようとする。フリクションスプリング312は伝えられた回転力によって壁部316を押圧し、アーム308を軸部314周りに回動させる。
【0077】
アーム308が回動することにより、レバー320の基端部が軸部314周りに回動し、これにより、レバー320がブレーキスプリング324の一端(レバー320の先端に係合した側の端部)を引出方向(図2及び図3の矢印B方向)側へ回動させる。
【0078】
上記のようにブレーキスプリング324の内周部は摩擦リング378の収容溝380の底部に摺接しているため、ブレーキスプリング324が回動することで、収容溝380の底部との間に摩擦力が生じる。
【0079】
この摩擦力は、ブレーキスプリング324の回動を規制するように作用する。このため、ブレーキスプリング324の他端側では一端側の回動に追従しない。これにより、ブレーキスプリング324は、収容溝380の底部を締め付け、ブレーキスプリング324が摩擦リング378を、ひいては、摩擦リング378と一体の回転盤362を引出方向へ回動させようとする。このような回転盤362自体の引出方向への回転と、外歯ギヤ102で受けた回転力とにより、ベースプレート92は回転盤362に対して巻取方向へ相対回転する。
【0080】
このようにして、回転盤362に対してベースプレート92が巻取方向へ相対回転すると、ベースプレート92のベース部94に固定されたロックピース356のガイド面360が、連結ローラ354を押圧してアダプタ352の軸心周りに連結ローラ354を巻取方向へ回動させる。所定量連結ローラ354が回動すると、規制壁370が連結ローラ354の外周部に干渉し、連結ローラ354の回動が規制される。
【0081】
この状態で更にガイド面360が連結ローラ354を押圧することで連結ローラ354はアダプタ352の外周部へ接近移動させられる。連結ローラ354がアダプタ352の外周部へ接触するまでガイド面360が連結ローラ354を押圧することで、連結ローラ354はアダプタ352の外周部とガイド面360との間に挟み込まれ、アダプタ352の外周部とガイド面360の双方に連結ローラ354が圧接する(図5参照)。
【0082】
これにより、ベースプレート92の回転がロックピース356及び連結ローラ354を介してアダプタ352へ伝えられ、アダプタ352、ひいてはアダプタ352と一体のスプール20が巻取方向へ回転させられる。
【0083】
このスプール20の回転によりウエビングベルト28がスプール20に巻き取られる。これにより、ウエビングベルト28の緩み、所謂「スラック」が解消されて、ウエビングベルト28による乗員身体に対する拘束力が向上し、仮に、その後に乗員が車両急制動(急ブレーキ)の操作を行ない、車両が急減速状態になったとしてもウエビングベルト28が確実に乗員の身体を保持する。
【0084】
また、このように、スラックが解消された状態でモータ44が停止すると、巻取方向へのベースプレート92の回転が停止する。ベースプレート92の回転が停止すると圧縮コイルスプリング150が付勢力で回転盤362を巻取方向に押圧し、回転盤362を巻取方向に回動させる。
【0085】
回転盤362が回動すると、楔状部372が連結ローラ354の外周部を押圧して連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させる。これにより、ベースプレート92とアダプタ352との機械的連結、すなわち、モータ44の出力軸50と圧縮コイルスプリング150との機械的な連結が解除される(図6参照)。
【0086】
このように、本実施の形態では、楔状部372が強制的に連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させるため、連結ローラ354とアダプタ352の外周部との間で生じた摩擦力等に起因して、不要に連結ローラ354とアダプタ352の外周部との圧接状態が維持されることはない。
【0087】
ところで、上記のように、連結ローラ354はロックピース356のガイド面360に押圧されることで移動し、アダプタ352の外周部に圧接する構造であるが、急激なベースプレート92の回動によりアダプタ352の外周部に連結ローラ354が圧接する際には、ロックピース356にも大きな荷重がかかる。
【0088】
ここで、本実施の形態では、ロックピース356はベースプレート92とは基本的に別体で構成されているため、ロックピース356のみの機械的強度を向上させることができる。このため、上記の荷重に充分に耐え得る強度を有する材質でロックピース356を成形することで重量が増加したとしても、この重量増加はロックピース356のみにとどまる。
【0089】
しかも、ロックピース356の機械的強度が向上することでベースプレート92全体の機械的強度を必要以上に増加させることがないため、ロックピース356を除いたベースプレート92全体としては、比較的重量が軽い材料を使用できる。このため、クラッチ350全体の軽量化を図ることができる。
【0090】
また、上記のように、連結ローラ354はガイド面360に押圧されて移動する構成であるため、ガイド面360の傾斜角度や曲率半径により、ベースプレート92が回動を開始してから連結ローラ354がアダプタ352の外周面に圧接するまでの時間等が微妙に異なる。
【0091】
ここで、本実施の形態では、上記のように、ロックピース356がベースプレート92とは別体で構成されて独立している。このため、ガイド面360の傾斜角度や曲率半径が異なる複数種類のロックピース356を車両の仕様や要求等に応じて適宜に選択することで、ベースプレート92をはじめとするロックピース356以外の部品を変更せずとも連結ローラ354がアダプタ352の外周面に圧接するまでの時間等の設定を容易に変更できる。
【0092】
一方、本実施の形態では、上記のようにブレーキ機構300により、ベースプレート92に対する回転盤362の追従回転を強制的に規制し、しかも、回転盤362を強制的に引出方向へ回動させることで、回転盤362に対するベースプレート92の巻取方向への相対回転素早く且つ確実に生じさせることができる。このため、上述した連結ローラ354の移動によるベースプレート92とアダプタ352との機械的な連結を素早く且つ確実に行なうことができる。
【0093】
また、上記のように、モータ44の回転力でスプール20を巻取方向に回転させることで、ウエビングベルト28のよる乗員身体に対する拘束力が向上するが、スラックが解消されるまでスプール20にウエビングベルト28が巻き取られた状態では、乗員の身体が障害となり基本的にはそれ以上スプール20にウエビングベルト28を巻き取ることはできなくなる。
【0094】
この状態でスプール20が更に巻取方向に回転してウエビングベルト28を巻き取ろうとすると、必要以上の力でウエビングベルト28が乗員の身体を締め付けることになり好ましくない。
【0095】
ここで、上記のように、必要以上にスプール20がウエビングベルト28を巻き取ろうとした場合には、乗員の身体がウエビングベルト28の巻き取りの障害となり、スプール20がウエビングベルト28を巻き取るための巻取力に応じた大きさの引張力が、乗員の身体からウエビングベルト28に付与される。この引張力はスプール20がウエビングベルト28を巻き取る方向とは反対に作用するため、引張力がウエビングベルト28に付与されることでスプール20は停止する。
【0096】
この状態では、外歯ギヤ102、ベースプレート92、連結ローラ354、及びアダプタ352を介してモータ44の回転力がスプール20に付与されているため、スプール20が停止した状態では、アダプタ352とガイド面360とに挟み込まれた連結ローラ354がロックピース356を介してベースプレート92の巻取方向への回転を規制する。さらに、ベースプレート92はトルクリミッタ104を介して外歯ギヤ102の巻取方向への回転を規制する。
【0097】
ここで、このようなトルクリミッタ104を介したベースプレート92による外歯ギヤ102の回転制限状態で、外歯ギヤ102が更に巻取方向に回転しようとし、このときの回転力がトルクリミッタ104のばね力を上回ると、トルクリミッタ104の係合部106が係合凹部100から抜け出る。これにより、一時的にベースプレート92と外歯ギヤ102との連結が解除され、隣接する他の係合凹部100に係合部106が入り込むまで外歯ギヤ102だけが巻取方向に回転する。
【0098】
このように、ベースプレート92と外歯ギヤ102との連結が解除されることで、ベースプレート92への外歯ギヤ102の回転力の伝達、すなわち、スプール20へのモータ44の回転力の伝達が遮断されるため、ウエビングベルト28による拘束力の上昇を抑制できる。
【0099】
なお、本実施の形態では、前方障害物までの距離が一定値以下となった場合の前方監視センサ54からの信号に基づいてECU52がドライバ46を介してモータ44を駆動させる構成であった。しかしながら、例えば、加速度センサによって車両の急減速状態を検出した場合に、モータ44を駆動させる構成としてもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、従動軸や原動側回転体等の機械的強度を必要以上に向上させずに、連結ローラが圧接するガイド部材の機械的強度のみを高く設定できるため、全体的な重量を増加させることなく、原動側回転体と従動軸とが機械的に連結する際の衝撃等に耐え得る機械的強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の構成の概略を示す正面図である。
【図2】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置のブレーキ機構の要部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置のブレーキ機構の要部の構成を示す側面図である。
【図4】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の要部(クラッチ)の構成を示す分解斜視図である。
【図5】
連結ローラがガイド部材と従動軸の外周部との間に挟み込まれた状態を示す図である。
【図6】
連結ローラが従動軸の外周部から離間した状態を示す図5に対応した図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
20 スプール(巻取軸)
28 ウエビングベルト
44 モータ(駆動手段)
102 外歯ギヤ(原動側回転体)
352 アダプタ(従動軸)
354 連結ローラ
356 ロックピース(ガイド部材)
370 規制壁(強制連結手段)
372 楔状部(強制解除手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するためのシートベルト装置を構成するウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の座席に着座した乗員の身体を長尺帯状のウエビングベルトで拘束するシートベルト装置は、座席の側方で車体に固定されたウエビング巻取装置を備えている。ウエビング巻取装置は、例えば、軸方向が略車両前後方向に沿ったスプール(巻取軸)を備えており、このスプールにウエビングベルトの長手方向基端側が係止されている。スプールはその外周部にウエビングベルトを層状に巻き取ることができ、シートベルト装置を使用しない場合には、スプールの外周部にウエビングベルトを巻き取らせて収容することができるようになっている。
【0003】
また、ウエビング巻取装置には、ウエビングベルトを巻き取る巻取方向へスプールを付勢する渦巻きばね等の付勢部材が設けられており、この付勢部材の付勢力でウエビングベルトを巻き取って収容すると共に、乗員の身体にウエビングベルトを装着した状態では、付勢部材の付勢力でウエビングベルトの弛み等を除去している。
【0004】
一方で、車両急減速状態等に一定量ウエビングベルトをスプールに巻き取らせることで、「スラック」等と称される僅かな緩みを解消すると共に、ウエビングベルトによる乗員の身体の拘束力を増加させ、より一層確実に乗員の身体を保持する機構も考えられている。この種の機構は、車両の急減速状態を加速度センサで検知し、加速度センサからの電気信号に基づいてスプールを強制的に巻取方向に回転させる構成が一般的である。
【0005】
これに対して、前方の他の車両や障害物までの距離を距離センサ等で検出し、前方の車両や障害物までの距離が一定値未満になると、モータを作動させ、モータの回転力でスプールを巻取方向に回転させる構成も考えられている。
【0006】
このように、モータの回転力でスプールを巻取方向に回転させる構成の場合、、モータの出力軸とスプールとの間に所謂「ワンウエイクラッチ」を介在させている。このワンウエイクラッチは、通常、スプールへウエビングベルトを巻き取らせる方向にモータの出力軸が回転した場合にのみ出力軸とスプールとを連結する構造となっている。これにより、通常のスプールへのウエビングベルトの巻取時やスプールからのウエビングベルトの引出時におけるスプールの回転をモータの出力軸に伝達しないようにしている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本ウエビング巻取装置は車両に搭載されるために常に軽量化が要求される。しかしながら、上記のようなワンウエイクラッチを別に設けることは、基本的に重量が増加してしまう。
【0008】
ワンウエイクラッチの構成部品を形成する材質の機械的強度を低く設定すれば、ワンウエイクラッチの軽量化を図ることは可能である。しかしながら、ワンウエイクラッチは連結状態で急激なモータの回転力をスプールへ伝えるという構造上、機械的強度を低く設定してしまうと、急激なモータの回転力に起因した連結時における衝撃に構成部品が耐えきれなくなる可能性がある。
【0009】
本発明は、回転力を伝達する際に生じる衝撃に充分に耐え得る強度を確保でき、しかも、軽量化が可能なクラッチ機構を有するウエビング巻取装置を得ることが目的である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のウエビング巻取装置は、装着状態で乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトの基端部が係止され、巻取方向への回転により前記ウエビングベルトをに基端側から巻取状態で収納すると共に、前記ウエビングベルトを先端側へ引っ張ることで前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転しつつ前記ウエビングベルトの引き出す巻取軸と、前記巻取軸に対して同軸的に配置され、前記巻取軸の軸心周りに前記巻取軸に対して相対回転可能で駆動手段からの駆動力を受けて回転する原動側回転体と、前記原動側回転体の内側に設けられ、前記巻取軸へ同軸的且つ一体的に連結された従動軸と、軸方向が前記従動軸の軸方向と略同方向の円柱形状若しくは円筒形状に形成されて、前記従動軸の外周部の側方で前記従動軸の外周部に対して接離移動可能に設けられた連結ローラと、少なくとも前記原動側回転体よりも機械的強度が高い材質により前記原動側回転体とは別体で形成され、前記連結ローラを介して前記従動軸の外周部とは反対側で前記原動側回転体に一体的に連結されると共に、前記連結ローラ側の面における前記巻取方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法よりも大きく、前記連結ローラ側の面における前記引出方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法未満に設定され、前記巻取方向側の端部から前記引出方向側の端部へ向けて前記従動軸の外周部までの間隔が減少する斜面若しくは曲面とされたガイド部材と、を備えている。
【0011】
上記構成のウエビング巻取装置によれば、巻取軸にウエビングベルトの基端側が係止されており、例えば、ウエビングベルトを使用しない場合には、ウエビングベルトがその基端側から巻取軸の周囲に略層状に巻き取られて収納される。
【0012】
この状態で、ウエビングベルトをその先端側へ引っ張ると、巻取軸が引出方向側へ回転しつつ、巻取軸に巻き取られたウエビングベルトが引き出される。
【0013】
さらに、このようなウエビングベルトの引出状態で巻取軸を巻取方向へ回転させると、ウエビングベルトが基端側から巻取軸に巻き取られ、再びウエビングベルトが収納される。
【0014】
一方、本ウエビング巻取装置では駆動手段に原動側回転体が機械的に接続されており、駆動手段が作動すると駆動手段の駆動力によって原動側回転体が巻取方向側へ回転し、原動側回転体と一体のガイド部材が従動軸周りに巻取方向へ回転する。
【0015】
ここで、ガイド部材の連結ローラ側の面は、巻取方向側の端部から従動軸の外周部までの距離が連結ローラの外径寸法よりも大きい。したがって、この巻取方向側の端部近傍に連結ローラが位置していれば、ガイド部材と従動軸との間で従動軸の外周部に対して接離移動可能であるため、ガイド部材及び連結ローラを介して原動側回転体と従動軸とが機械的に連結されることはない。
【0016】
これに対して、上記のように、原動側回転体が巻取方向へ回転することで、ガイド部材が巻取方向に回転すると、連結ローラがガイド部材の引出方向側の端部近傍に位置する。ここで、ガイド部材の連結ローラ側の面は、引出方向側の端部から従動軸の外周部までの距離が連結ローラの外径寸法未満である。このため、この引出方向側の端部近傍に連結ローラが位置すると、連結ローラがガイド部材と従動軸の外周部との間に挟み込まれる。この状態では、原動側回転体の巻取方向への回転が、ガイド部材及び連結ローラを介して従動軸に伝えられ、従動軸、ひいては巻取軸が巻取方向に回転する。この巻取軸の巻取方向への回転により、ウエビングベルトが巻取軸に巻き取られる。
【0017】
したがって、例えば、車両急減速状態を検出する加速度センサ等に基づいて駆動手段を作動させる構成とすることで、車両急減速状態におウエビングベルトを一定量巻き取り、車両が急減速する際にその完成で車両前方側へ移動しようとする乗員の身体を確実に保持、拘束できる。
【0018】
ここで、本ウエビング巻取装置では、上記のガイド部材が原動側回転体とは別体で構成されたうえで原動側回転体に一体的に連結されている。しかも、ガイド部材が原動側回転体とは別の材料で形成され、機械的強度が原動側回転体に比べて高い。このため、軽量化や製造コストを下げるために原動側回転体を比較的強度が小さな材料で形成しても、連結ローラが接するガイド部材の強度を高くできる。
【0019】
請求項2記載のウエビング巻取装置は、請求項1記載の本発明において、前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記引出方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記原動側回転体に対して前記連結ローラを強制的に引出方向側へ移動させる強制連結手段を備える、ことを特徴としている。
【0020】
上記構成のウエビング巻取装置では、従動軸及び原動側回転体の双方に対して相対回転可能に強制連結手段が設けられている。このため、駆動手段の駆動力により原動側回転体が回転し、これにより、原動側回転体が強制連結手段に対して巻取方向側へ相対回転すると(すなわち、原動側回転体を基準に見た場合、強制連結手段が原動側回転体に対して引出方向へ相対回転すると)、強制連結手段が連結ローラに干渉する。
【0021】
このように強制連結手段が連結ローラに干渉することで巻取方向へ回転する原動側回転体に追従した連結ローラの回転が規制される。したがって、この状態で更に原動側回転体が巻取方向へ回転すれば、相対的に連結ローラが原動側回転体に対して引出方向側へ移動し、ガイド部材の引出方向側の端部近傍へ確実に移動して従動軸に接する。
【0022】
請求項3記載のウエビング巻取装置は、請求項1又は請求項2記載の本発明において、前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記巻取方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記連結ローラを前記従動軸の外周部から強制的に離間させる強制解除手段を備える、ことを特徴としている。
【0023】
上記構成のウエビング巻取装置では、従動軸及び原動側回転体の双方に対して相対回転可能に強制解除手段が設けられている。このため、原動側回転体が強制解除手段に対して引出方向側へ相対回転すると(すなわち、原動側回転体を基準に見た場合、強制解除手段が原動側回転体に対して巻取方向へ相対回転すると)、強制解除手段が連結ローラに干渉する。
【0024】
このように強制解除手段が連結ローラに干渉することで連結ローラは強制解除手段により従動軸の外周部から離間する方向へ押圧される。これにより、ガイド部材及び連結ローラを介した原動側回転体と従動軸との機械的連結が確実に解除される。
【0025】
【発明の実施の形態】
<本実施の形態の構成>
(ウエビング巻取装置10の全体構成)
図1には、本実施の形態に係るウエビング巻取装置10の全体構成を示す正面図が示されている。この図に示されるように、ウエビング巻取装置10はフレーム12を備えている。フレーム12は略板状の背板14を備えており、この背板14がボルト等の図示しない締結手段によって車体に固定されることで、本ウエビング巻取装置10が車体に取り付けられる構成となっている。背板14の幅方向両端からは一対の脚板16、18が互いに平行に延出されており、これらの脚板16、18間にダイカスト等によって製作された巻取軸としてのスプール20が回転可能に配置されている。
【0026】
スプール20は略円筒形状のスプール本体22と、このスプール本体22の両端部に略円盤形状にそれぞれ形成された一対のフランジ部24、26とによって構成されており、全体としては鼓形状をなしている。
【0027】
スプール本体22はフランジ部24、26間には、長尺帯状に形成されたウエビングベルト28の基端部が固定されており、スプール20をその軸周り一方へ回転させると、ウエビングベルト28がその基端側からスプール本体22の外周部に層状に巻き取られる。また、ウエビングベルト28をその先端側から引っ張れば、スプール本体22の外周部に巻き取られたウエビングベルト28が引き出され、これに伴い、ウエビングベルト28を巻き取る際の回転方向(以下、この方向を便宜上「巻取方向」と称する)とは反対にスプール20が回転する(以下、ウエビングベルト28を引き出す際のスプール20の回転方向を便宜上「引出方向」と称する)。
【0028】
フランジ部24のフランジ部26とは反対側でスプール20の一端側は、脚板16に形成された円孔30を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板16側のフレーム12の外側には、ケース32が配置されている。ケース32は、スプール20の軸方向に沿って脚板16と対向して配置されて脚板16に固定されている。また、ケース32は全体的に脚板16側へ向けて開口しており、円孔30を貫通したスプール20の一端側はケース32の内側に入り込み、ケース32によって回転自在に軸支されている。
【0029】
さらに、ケース32の内部には渦巻きばね34が配置されている。渦巻きばね34は渦巻き方向外側の端部がケース32に係止されており、渦巻き方向内側の端部がスプール20に係止されている。渦巻きばね34は特別に負荷をかけない中立状態からスプール20を引出方向へ回転させると、巻取方向の付勢力が生じてスプール20を巻取方向へ付勢する。したがって、基本的には、スプール20から引き出すためにウエビングベルト28に付与した引っ張り力を解除すると、渦巻きばね34の付勢力がスプール20を巻取方向へ回転させ、スプール20にウエビングベルト28を巻き取らせる構造になっている。
【0030】
一方、フランジ部26のフランジ部24とは反対側でスプール20の他端側は、脚板18に形成された内歯のラチェット孔36を略同軸的に貫通してフレーム12の外部に突出している。脚板18側のフレーム12の外側には、ロック機構38が配置されている。ロック機構38はケース40を備えている。ケース40はスプール20の軸方向に沿って脚板18と対向して配置されて脚板18に固定されている。
【0031】
ケース40の内側には、ロック機構38を構成する図示しないイナーシャルプレートや外歯ギヤ、加速度センサ等の各部材が収容されており、急激に巻取方向へスプール20が回転することで、ケース40内のイナーシャルプレートがスプール20に対して相対回転したり、加速度センサが車両の急減速状態を検出して強制的にスプール20に対してケース40内のイナーシャルプレートがスプール20に対して相対回転させられる構造となっている。
【0032】
また、上述したラチェット孔36の内側には一対のロックプレート42が設けられている。これらのロックプレート42は、ケース40内に設けられてスプール20と共に一体的に回転するロックベースに支持されており、ロックベースに対してケース40内のイナーシャプレートが引出方向側へ相対回転すると、ロックベースに形成されたガイド部に案内されてラチェット孔36の内周部に接近し、ロックプレート42に形成された外歯がラチェット孔36の内周部に形成された内歯に噛み合う構造となっている。
【0033】
このように、ロックプレート42に形成された外歯がラチェット孔36の内周部に形成された内歯に噛み合うことで、引出方向へのロックベースの回転が規制され、ひいては、スプール20の回転が規制される構成となっている。
【0034】
一方、スプール20の下方で脚板16と脚板18との間には、駆動手段としてのモータ44が配置されている。モータ44は、ドライバ46を介して車両に搭載されたバッテリー48に電気的に接続されており、バッテリー48からの電流がドライバ46を介してモータ44に流れることで、モータ44は出力軸50を正方向又は逆方向へ回転させる構成となっている。ドライバ46は、マイコン等で構成されたECU52に接続されており、更に、ECU52は前方監視センサ54に接続されている。
【0035】
前方監視センサ54は、車両前端部近傍に設けられており、車両前方へ向けて赤外線を発光すると共に、車両の前方で走行若しくは停止している他の車両や障害物(以下、走行若しくは停止している車両も含めて便宜上「障害物」と称する)にて反射した赤外線を受光する。ECU52では、前方監視センサ54が赤外線を発光してから受光するまでに要する時間に基づいて、前方の障害物までの距離を算出する。
【0036】
ECU52は、前方監視センサ54から出力された電気信号に基づいてドライバ46を操作し、モータ44を制御している。
【0037】
(ブレーキ機構300の構成)
一方、図1に示されるように、モータ44の出力軸50の先端部にはギヤ56が同軸的且つ一体的に設けられている。図2及び図3に示されるように、ギヤ56はブレーキ機構300を構成する外歯のギヤ302に噛み合っている。ギヤ302は、歯数がギヤ56よりも充分に多く、更に、その軸方向両端がフレーム12の脚板16とブレーキ機構300のフレーム301に回転自在に軸支されている。
【0038】
ギヤ302の脚板16側には、ギヤ302よりも充分に歯数が少ないギヤ304がギヤ302に対して同軸的且つ一体的に設けられている。ギヤ304の上方では、ギヤ304よりも歯数が多いギヤ306がギヤ304に噛み合った状態で脚板16とフレーム301に回転自在に軸支されている。さらに、このギヤ306の上方では、後述するクラッチ350を構成する原動側回転体としての外歯の外歯ギヤ102がギヤ306に噛み合っており、出力軸50の回転がギヤ56、302、304、306を介して外歯ギヤ102に減速されて伝えられる。
【0039】
一方、ギヤ304の脚板16側には、アーム308が設けられている。アーム308はギヤ302の回転半径方向に沿って長手方向とされ、且つ、ギヤ302の軸方向に沿って厚さ方向とされた板状部材で、その長手方向基端側には、略円形のスプリング収容部310が形成されている。
【0040】
このスプリング収容部310にはフリクションスプリング312が収容されている。フリクションスプリング312は全体的に略リング状に形成されており、その内周部はギヤ304と一体の軸部314に摺接している。また、フリクションスプリング312の周方向両端は半径方向外側へ屈曲している。
【0041】
この屈曲したフリクションスプリング312の両端の間に対応してスプリング収容部310には壁部316が形成されており、アーム308に対してフリクションスプリング312が軸部314周りに回転しようとすると、フリクションスプリング312の両端の何れかが壁部316に干渉し、フリクションスプリング312が壁部316をその回転方向へ押圧する。
【0042】
一方、アーム308の先端側からはギヤ302側へ向けて軸部318が突出形成されている。この軸部318にはレバー320の基端部が軸部318周りに回動自在に軸支されている。レバー320は軸部318の半径方向に沿って長手方向とされ、且つ、ギヤ302の軸方向に沿って厚さ方向とされた板状部材で、その長手方向先端側には厚さ方向に貫通した透孔322が形成されており、略リング状に形成されたブレーキスプリング324の引出方向側の端部が嵌合している。
【0043】
(クラッチ350の構成)
一方、図4に示されるように、上述した外歯ギヤ102を備えるクラッチ350はベースプレート92を備えている。ベースプレート92は円盤状のベース部94の外周部に沿って略リング状の周壁96が形成された軸方向寸法が極めて短い有底円筒状(若しくは浅底の盆状)に形成されている。ベースプレート92の軸方向一端側(図4の矢印C方向側)の開口端には、薄厚円盤状のカバー98が取り付けられており、基本的にベースプレート92の開口端が閉止されている。
【0044】
周壁96の外周部にはその周方向に沿って一定間隔毎に係合凹部100が形成されている。また、周壁96の外側には、ギヤ302よりも充分に歯数が多い略リング形状の外歯ギヤ102がベースプレート92に対して同軸的に配置されている。外歯ギヤ102の内径寸法は、周壁96の外径寸法よりも充分に大きく、外歯ギヤ102の内周部と周壁96の外周部との間には環状の隙間が形成されており、この環状の隙間に複数のトルクリミッタ104が周方向に断続的に配置されている。
【0045】
トルクリミッタ104は、ばね性を有する細幅の板状の金属片で、その長手方向量端部には上記の係合凹部100に入り込み可能な係合部106が形成されている。また、トルクリミッタ104の長手方向略中央には、係合部106の突出方向とは略反対方向に突出する如く屈曲した係合突起108が形成されている。
【0046】
この係合突起108に対応して外歯ギヤ102の内周部には係合凹部110が形成されており、係合凹部110に係合突起108が入り込んだ状態で係合部106が係合凹部100に入り込むことによりトルクリミッタ104を介してベースプレート92と外歯ギヤ102とが略一体的に連結されている。
【0047】
これにより、ベースプレート92に対して外歯ギヤ102がベースプレート92の軸心周りに相対回転しようとすると、当然、トルクリミッタ104も外歯ギヤ102と共に一体的に回転しようとする。しかしながら、トルクリミッタ104の各係合部106が係合凹部100に入り込んでいることで、周壁96の周方向に沿って係合部106が回転しようとすると係合凹部100が係合部106に干渉し、係合部106の回転を規制する。
【0048】
これにより、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転が規制され、基本的には、外歯ギヤ102とベースプレート92とが一体的に連結される構成となっている。
【0049】
但し、上記のように、トルクリミッタ104がばね性を有する金属片であるため、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転で生じる回転力が、トルクリミッタ104のばね力(付勢力)に抗して係合部106を係合凹部100から抜け出させるのに充分な大きさであれば、係合凹部100による係合部106への干渉が解除されるため、ベースプレート92に対する外歯ギヤ102の相対回転が可能となる構成である。
【0050】
一方、上述したベースプレート92の内側には、従動軸としての略円筒形状のアダプタ352がベースプレート92に対して略同軸的に配置されている。アダプタ352は全体的にベースプレート92の軸方向に沿って厚さ方向(軸方向)とされた厚肉のリング状に形成されており、上述したスプール20が一体的且つ同軸的に嵌め込まれている。アダプタ352のベース部94側の端部には、合成樹脂材によってリング状に形成されたスペーサ118が嵌め込まれており、その軸方向一方の端面(図4の矢印Cとは反対方向側)はベース部94に当接している。
【0051】
また、アダプタ352の半径方向外方には、複数(本実施の形態では3個)の連結ローラ354が配置されている。連結ローラ354は全体的に略円柱形状に形成されており、その軸方向はアダプタ352の軸方向、すなわち、スプール20の軸方向と略同方向とされている。さらに、連結ローラ354をベースプレート92の周壁96の間にはガイド部材としてのロックピース356が設けられている。
【0052】
ロックピース356は比較的強度が高い(一例としては、ベースプレート92を形成する材質よりも充分に機械的強度が高い)材質で形成されており、周壁96の内周部に形成されたピース取付部358に嵌め込まれた状態で周壁96に一体的に固定されている。
【0053】
アダプタ352及びベースプレート92の半径方向に沿ってロックピース356の連結ローラ354と対向する側の面はガイド面360とされている。ガイド面360は、アダプタ352の軸心周りの引出方向へ向けて漸次アダプタ352の外周面との距離が短くなる斜面若しくは湾曲面とされており、連結ローラ354がガイド面360に倣って引出方向側へ回動若しくは移動することにより、強制的にアダプタ352の外周面へ接近させられる構造となっている。
【0054】
さらに、ガイド面360の引出方向側の端部近傍では、アダプタ352の外周面との間隔(距離)が連結ローラ354の外径寸法と同じか極僅かに短くなるように設定されている。このため、ガイド面360の引出方向側の端部近傍まで連結ローラ354が移動すると、連結ローラ354はアダプタ352の外周部に接触する。
【0055】
また、連結ローラ354を介してベースプレート92のベース部94とは反対側には、回転盤362が設けられている。回転盤362はスプール20が貫通する円孔364が形成された板状のベース部366を備えており、基本的には、スプール20及びベースプレート92に対してスプール20の軸心周りに相対回転自在とされている。
【0056】
ベース部366の円孔364の周囲には複数の周壁368が形成されいる。周壁368は円孔364と同心の仮想円周上に一定間隔毎に連結ローラ354と同じ数だけ形成されており、これらの周壁368の間に上述した連結ローラ354が配置される。アダプタ352の軸心周りに周壁368の引出方向(図4乃至図6の矢印B方向)側の端部には強制連結手段としての規制壁370が形成されている。アダプタ352の軸心周りに巻取方向へ連結ローラ354が所定量以上移動しようとした際には、連結ローラ354の外周部に規制壁370が干渉して連結ローラ354の移動を制限する。
【0057】
これに対して、アダプタ352の軸心周りに周壁368の巻取方向(図4乃至図6の矢印A方向)側の端部には強制解除手段としての楔状部372が形成されている。楔状部372は巻取方向へ向けて漸次肉厚が薄くなるテーパ状に形成されており、回転盤362が連結ローラ354に対して巻取方向側へ回動することで楔状部372がアダプタ352の外周部近傍で連結ローラ354の外周部に干渉し、連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させる方向へ押圧する構造となっている。
【0058】
また、複数の周壁368のうちの1つには、スプリング取付部374が形成されており、圧縮コイルスプリング150が取り付けられている。圧縮コイルスプリング150は、軸方向が概ね周壁96の内周形状に沿うように湾曲し、その巻取方向側の端部はスプリング取付部374の壁部374Aに当接し、引出方向側の端部は周壁96の内周部に形成された当接壁376に当接している。
【0059】
上記のように、回転盤362は基本的にアダプタ352及びベースプレート92に対してアダプタ352の軸心周りに相対回転自在である。しかしながら、回転盤362に対してベースプレート92が相対的に巻取方向へ回転しようとした場合には、当接壁376が圧縮コイルスプリング150の他端部を巻取方向側へ押圧し、これにより、増加する圧縮コイルスプリング150の付勢力が壁部374Aを巻取方向へ押圧し、回転盤362を巻取方向へ回動させる。
【0060】
したがって、回転盤362に対してベースプレート92が相対的に巻取方向へ回転しようとした場合には、圧縮コイルスプリング150の付勢力によって回転盤362がベースプレート92の回動に追従しようとする。
【0061】
一方、カバー98を介して回転盤362とは反対側(すなわち、カバー98の外側)には、摩擦リング378がアダプタ352に対して同軸的に配置されている。摩擦リング378は全体的に略リング状に形成されていると共に、その外周部には上述したブレーキスプリング324を収容する環状の収容溝380が形成されている。収容溝380の底部における収容溝380の外径寸法はブレーキスプリング324の内径寸法に略等しく、収容溝380の底部にブレーキスプリング324の内周部が摺接している。
【0062】
また、摩擦リング378の内周部からは舌片状の複数(本実施の形態では3つ)の取付片382が延出されており、カバー98に形成された開口384を貫通したネジ等の締結手段によって回転盤362のベース部366へ一体的に連結されており、これにより、回転盤362と摩擦リング378とが一体となっている。
【0063】
以上の構成のクラッチ350は、上述した外歯ギヤ102がギヤ306に噛み合っている。
【0064】
<本実施の形態の作用、効果>
次に、本ウエビング巻取装置10の動作の説明を通して、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0065】
(ウエビング巻取装置10の基本動作)
先ず、本ウエビング巻取装置10の基本動作について説明する。
【0066】
本ウエビング巻取装置10では、スプール20にウエビングベルト28が層状に巻き取られた収納状態で、図示しないタングプレートを引っ張りつつウエビングベルト28を引っ張ると、スプール20を巻取方向に付勢する渦巻きばね34の付勢力に抗してスプール20を引出方向へ回転させながらウエビングベルト28が引き出される。
【0067】
このように、ウエビングベルト28が引き出された状態で、ウエビングベルト28を座席に着座した乗員の身体の前方に掛け回しつつタングプレートを図示しないバックル装置に差し込み、バックル装置にタングプレートを保持させることで乗員の身体に対するウエビングベルト28の装着状態(以下、単に「装着状態」と称する)となる。
【0068】
また、ウエビングベルト28を装着するためにウエビングベルト28を引き出してスプール20を引出方向へ回転させると、渦巻きばね34が巻き締められてスプール20を巻取方向側へ付勢する渦巻きばね34の付勢力が増加する。したがって、上記装着状態では、渦巻きばね34の付勢力がウエビングベルト28をスプール20に巻き取らせるように作用するため、基本的には、この付勢力で乗員の身体にウエビングベルト28がフィットし、このときの付勢力に応じた力でウエビングベルト28が乗員の身体を拘束、保持する。
【0069】
一方、バックル装置によるタングプレートの保持が解除され、バックル装置からタングプレートが抜け出ると、渦巻きばね34の付勢力に抗して引出状態のままウエビングベルト28を維持する力が解除されるため、渦巻きばね34は付勢力でスプール20を巻取方向に回転させる。この巻取方向へのスプール20の回転により引き出されたウエビングベルト28がスプール20の外周部に層状に巻き取られ、これにより、ウエビングベルト28が収納される。
【0070】
ここで、スプール20はクラッチ350のアダプタ352に嵌合しているため、ウエビングベルト28の引き出しや巻き取りのためにスプール20を回転させると、アダプタ352が回転する。しかしながら、この状態では、単にアダプタ352が回転するだけで、ベースプレート92や回転盤362は回転しないため、連結ローラ324が移動することはなく、したがって、外歯ギヤ102が回転することはない。したがって、スプール20の回転が外歯ギヤ102、ギヤ306、304、302、56を介してモータ44の出力軸50に伝達されることはない。
【0071】
(前方障害物接近時におけるウエビング巻取装置10の動作)
一方、車両の走行状態では、前方監視センサ54が車両の前方の障害物(車両前方で走行若しくは停止している他の車両も含む)までの距離を検出している。さらに、前方監視センサ54からは、障害物までの距離に対応した信号レベルを有する電気信号が出力される。
【0072】
前方監視センサ54から出力された電気信号はECU52に入力され、ECU52では前方監視センサ54からの電気信号に基づいて障害物までの距離が所定値未満であるか否かが判定される。
【0073】
次いで、障害物までの距離が所定値未満であるとECU52で判定されると、ECU52はドライバ46に対して制御信号を出力し、ドライバ46を介してモータ44に電流を流す。これにより、モータ44は所定値以上の速度で正転駆動し、出力軸50を正転させる。出力軸50の回転は、ギヤ56、302、304、306を介して減速されつつクラッチ350の外歯ギヤ102に伝達され、外歯ギヤ102を所定値以上の回転速度で巻取方向に回転させる。
【0074】
外歯ギヤ102は、トルクリミッタ104を介してベースプレート92に機械的に連結されているため、外歯ギヤ102が巻取方向に回転することでベースプレート92が巻取方向へ一体的に回転する。
【0075】
ベースプレート92が巻取方向に回転すると、当接壁376が圧縮コイルスプリング150の引出方向側の端部を押圧し、更に、圧縮コイルスプリング150が付勢力でスプリング収容部148の壁部148Aを押圧することで、回転盤362がベースプレート92に追従回転しようとする。
【0076】
一方、上記のように、出力軸50の回転がギヤ56の回転がギヤ302に伝えられてギヤ302が回転すると軸部314が回転し、軸部314が回転することでフリクションスプリング312の内周部との間に生じた摩擦力がフリクションスプリング312を回転させようとする。フリクションスプリング312は伝えられた回転力によって壁部316を押圧し、アーム308を軸部314周りに回動させる。
【0077】
アーム308が回動することにより、レバー320の基端部が軸部314周りに回動し、これにより、レバー320がブレーキスプリング324の一端(レバー320の先端に係合した側の端部)を引出方向(図2及び図3の矢印B方向)側へ回動させる。
【0078】
上記のようにブレーキスプリング324の内周部は摩擦リング378の収容溝380の底部に摺接しているため、ブレーキスプリング324が回動することで、収容溝380の底部との間に摩擦力が生じる。
【0079】
この摩擦力は、ブレーキスプリング324の回動を規制するように作用する。このため、ブレーキスプリング324の他端側では一端側の回動に追従しない。これにより、ブレーキスプリング324は、収容溝380の底部を締め付け、ブレーキスプリング324が摩擦リング378を、ひいては、摩擦リング378と一体の回転盤362を引出方向へ回動させようとする。このような回転盤362自体の引出方向への回転と、外歯ギヤ102で受けた回転力とにより、ベースプレート92は回転盤362に対して巻取方向へ相対回転する。
【0080】
このようにして、回転盤362に対してベースプレート92が巻取方向へ相対回転すると、ベースプレート92のベース部94に固定されたロックピース356のガイド面360が、連結ローラ354を押圧してアダプタ352の軸心周りに連結ローラ354を巻取方向へ回動させる。所定量連結ローラ354が回動すると、規制壁370が連結ローラ354の外周部に干渉し、連結ローラ354の回動が規制される。
【0081】
この状態で更にガイド面360が連結ローラ354を押圧することで連結ローラ354はアダプタ352の外周部へ接近移動させられる。連結ローラ354がアダプタ352の外周部へ接触するまでガイド面360が連結ローラ354を押圧することで、連結ローラ354はアダプタ352の外周部とガイド面360との間に挟み込まれ、アダプタ352の外周部とガイド面360の双方に連結ローラ354が圧接する(図5参照)。
【0082】
これにより、ベースプレート92の回転がロックピース356及び連結ローラ354を介してアダプタ352へ伝えられ、アダプタ352、ひいてはアダプタ352と一体のスプール20が巻取方向へ回転させられる。
【0083】
このスプール20の回転によりウエビングベルト28がスプール20に巻き取られる。これにより、ウエビングベルト28の緩み、所謂「スラック」が解消されて、ウエビングベルト28による乗員身体に対する拘束力が向上し、仮に、その後に乗員が車両急制動(急ブレーキ)の操作を行ない、車両が急減速状態になったとしてもウエビングベルト28が確実に乗員の身体を保持する。
【0084】
また、このように、スラックが解消された状態でモータ44が停止すると、巻取方向へのベースプレート92の回転が停止する。ベースプレート92の回転が停止すると圧縮コイルスプリング150が付勢力で回転盤362を巻取方向に押圧し、回転盤362を巻取方向に回動させる。
【0085】
回転盤362が回動すると、楔状部372が連結ローラ354の外周部を押圧して連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させる。これにより、ベースプレート92とアダプタ352との機械的連結、すなわち、モータ44の出力軸50と圧縮コイルスプリング150との機械的な連結が解除される(図6参照)。
【0086】
このように、本実施の形態では、楔状部372が強制的に連結ローラ354をアダプタ352の外周部から離間させるため、連結ローラ354とアダプタ352の外周部との間で生じた摩擦力等に起因して、不要に連結ローラ354とアダプタ352の外周部との圧接状態が維持されることはない。
【0087】
ところで、上記のように、連結ローラ354はロックピース356のガイド面360に押圧されることで移動し、アダプタ352の外周部に圧接する構造であるが、急激なベースプレート92の回動によりアダプタ352の外周部に連結ローラ354が圧接する際には、ロックピース356にも大きな荷重がかかる。
【0088】
ここで、本実施の形態では、ロックピース356はベースプレート92とは基本的に別体で構成されているため、ロックピース356のみの機械的強度を向上させることができる。このため、上記の荷重に充分に耐え得る強度を有する材質でロックピース356を成形することで重量が増加したとしても、この重量増加はロックピース356のみにとどまる。
【0089】
しかも、ロックピース356の機械的強度が向上することでベースプレート92全体の機械的強度を必要以上に増加させることがないため、ロックピース356を除いたベースプレート92全体としては、比較的重量が軽い材料を使用できる。このため、クラッチ350全体の軽量化を図ることができる。
【0090】
また、上記のように、連結ローラ354はガイド面360に押圧されて移動する構成であるため、ガイド面360の傾斜角度や曲率半径により、ベースプレート92が回動を開始してから連結ローラ354がアダプタ352の外周面に圧接するまでの時間等が微妙に異なる。
【0091】
ここで、本実施の形態では、上記のように、ロックピース356がベースプレート92とは別体で構成されて独立している。このため、ガイド面360の傾斜角度や曲率半径が異なる複数種類のロックピース356を車両の仕様や要求等に応じて適宜に選択することで、ベースプレート92をはじめとするロックピース356以外の部品を変更せずとも連結ローラ354がアダプタ352の外周面に圧接するまでの時間等の設定を容易に変更できる。
【0092】
一方、本実施の形態では、上記のようにブレーキ機構300により、ベースプレート92に対する回転盤362の追従回転を強制的に規制し、しかも、回転盤362を強制的に引出方向へ回動させることで、回転盤362に対するベースプレート92の巻取方向への相対回転素早く且つ確実に生じさせることができる。このため、上述した連結ローラ354の移動によるベースプレート92とアダプタ352との機械的な連結を素早く且つ確実に行なうことができる。
【0093】
また、上記のように、モータ44の回転力でスプール20を巻取方向に回転させることで、ウエビングベルト28のよる乗員身体に対する拘束力が向上するが、スラックが解消されるまでスプール20にウエビングベルト28が巻き取られた状態では、乗員の身体が障害となり基本的にはそれ以上スプール20にウエビングベルト28を巻き取ることはできなくなる。
【0094】
この状態でスプール20が更に巻取方向に回転してウエビングベルト28を巻き取ろうとすると、必要以上の力でウエビングベルト28が乗員の身体を締め付けることになり好ましくない。
【0095】
ここで、上記のように、必要以上にスプール20がウエビングベルト28を巻き取ろうとした場合には、乗員の身体がウエビングベルト28の巻き取りの障害となり、スプール20がウエビングベルト28を巻き取るための巻取力に応じた大きさの引張力が、乗員の身体からウエビングベルト28に付与される。この引張力はスプール20がウエビングベルト28を巻き取る方向とは反対に作用するため、引張力がウエビングベルト28に付与されることでスプール20は停止する。
【0096】
この状態では、外歯ギヤ102、ベースプレート92、連結ローラ354、及びアダプタ352を介してモータ44の回転力がスプール20に付与されているため、スプール20が停止した状態では、アダプタ352とガイド面360とに挟み込まれた連結ローラ354がロックピース356を介してベースプレート92の巻取方向への回転を規制する。さらに、ベースプレート92はトルクリミッタ104を介して外歯ギヤ102の巻取方向への回転を規制する。
【0097】
ここで、このようなトルクリミッタ104を介したベースプレート92による外歯ギヤ102の回転制限状態で、外歯ギヤ102が更に巻取方向に回転しようとし、このときの回転力がトルクリミッタ104のばね力を上回ると、トルクリミッタ104の係合部106が係合凹部100から抜け出る。これにより、一時的にベースプレート92と外歯ギヤ102との連結が解除され、隣接する他の係合凹部100に係合部106が入り込むまで外歯ギヤ102だけが巻取方向に回転する。
【0098】
このように、ベースプレート92と外歯ギヤ102との連結が解除されることで、ベースプレート92への外歯ギヤ102の回転力の伝達、すなわち、スプール20へのモータ44の回転力の伝達が遮断されるため、ウエビングベルト28による拘束力の上昇を抑制できる。
【0099】
なお、本実施の形態では、前方障害物までの距離が一定値以下となった場合の前方監視センサ54からの信号に基づいてECU52がドライバ46を介してモータ44を駆動させる構成であった。しかしながら、例えば、加速度センサによって車両の急減速状態を検出した場合に、モータ44を駆動させる構成としてもよい。
【0100】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、従動軸や原動側回転体等の機械的強度を必要以上に向上させずに、連結ローラが圧接するガイド部材の機械的強度のみを高く設定できるため、全体的な重量を増加させることなく、原動側回転体と従動軸とが機械的に連結する際の衝撃等に耐え得る機械的強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の構成の概略を示す正面図である。
【図2】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置のブレーキ機構の要部の構成を示す分解斜視図である。
【図3】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置のブレーキ機構の要部の構成を示す側面図である。
【図4】
本発明の一実施の形態に係るウエビング巻取装置の要部(クラッチ)の構成を示す分解斜視図である。
【図5】
連結ローラがガイド部材と従動軸の外周部との間に挟み込まれた状態を示す図である。
【図6】
連結ローラが従動軸の外周部から離間した状態を示す図5に対応した図である。
【符号の説明】
10 ウエビング巻取装置
20 スプール(巻取軸)
28 ウエビングベルト
44 モータ(駆動手段)
102 外歯ギヤ(原動側回転体)
352 アダプタ(従動軸)
354 連結ローラ
356 ロックピース(ガイド部材)
370 規制壁(強制連結手段)
372 楔状部(強制解除手段)
Claims (3)
- 装着状態で乗員の身体を拘束する長尺帯状のウエビングベルトの基端部が係止され、巻取方向への回転により前記ウエビングベルトをに基端側から巻取状態で収納すると共に、前記ウエビングベルトを先端側へ引っ張ることで前記巻取方向とは反対の引出方向へ回転しつつ前記ウエビングベルトの引き出す巻取軸と、
前記巻取軸に対して同軸的に配置され、前記巻取軸の軸心周りに前記巻取軸に対して相対回転可能で駆動手段からの駆動力を受けて回転する原動側回転体と、前記原動側回転体の内側に設けられ、前記巻取軸へ同軸的且つ一体的に連結された従動軸と、
軸方向が前記従動軸の軸方向と略同方向の円柱形状若しくは円筒形状に形成されて、前記従動軸の外周部の側方で前記従動軸の外周部に対して接離移動可能に設けられた連結ローラと、
少なくとも前記原動側回転体よりも機械的強度が高い材質により前記原動側回転体とは別体で形成され、前記連結ローラを介して前記従動軸の外周部とは反対側で前記原動側回転体に一体的に連結されると共に、前記連結ローラ側の面における前記巻取方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法よりも大きく、前記連結ローラ側の面における前記引出方向側の端部と前記従動軸との間隔が前記連結ローラの外径寸法未満に設定され、前記巻取方向側の端部から前記引出方向側の端部へ向けて前記従動軸の外周部までの間隔が減少する斜面若しくは曲面とされたガイド部材と、
を備えるウエビング巻取装置。 - 前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記引出方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記原動側回転体に対して前記連結ローラを強制的に引出方向側へ移動させる強制連結手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載のウエビング巻取装置。 - 前記従動軸及び前記原動側回転体の双方に対して同軸的に相対回転可能に設けられ、前記原動側回転体に対する前記巻取方向への相対回転により、前記連結ローラに干渉し、前記連結ローラを前記従動軸の外周部から強制的に離間させる強制解除手段を備える、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のウエビング巻取装置。
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