JP2004018754A - ナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】ナノ炭素材料を高度に分散させてなるナノ炭素材料含有組成物、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料及びナノ炭素材料含有成形体並びにこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】ナノ炭素材料を重合性材料に添加して放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有組成物を形成する。この組成物を、成形体を構成する基材に担持又は付着させて、放射線照射を行い、基材上にナノ炭素材料含有高分子化合物を形成させる。基材上に形成されたナノ炭素材料含有高分子化合物を熱処理して、ナノ炭素材料含有成形体を形成する。
【選択図】 なし
【解決手段】ナノ炭素材料を重合性材料に添加して放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有組成物を形成する。この組成物を、成形体を構成する基材に担持又は付着させて、放射線照射を行い、基材上にナノ炭素材料含有高分子化合物を形成させる。基材上に形成されたナノ炭素材料含有高分子化合物を熱処理して、ナノ炭素材料含有成形体を形成する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノ炭素材料含有分散液、ナノ炭素材料含有組成物、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料、ナノ炭素材料含有成形体及びそれらの製造方法に関し、特に、ナノ炭素材料を所望部位に緻密に且つ均一に分散させてなるナノ炭素含有分散液、ナノ炭素材料含有組成物、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料及びナノ炭素材料含有成形体並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナノ炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが知られている。
【0003】
カーボンナノチューブは、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフェンシート)を丸めた円筒状の物質で、ナノメートル単位の構造を持ち、高強度(炭素繊維の約40倍)で、導電性(構造により半導体〜金属の導電性に制御可能)、電子放出能モリブデンの約100倍)、ガス吸蔵特性(水素吸蔵合金の約5倍)など、多くの機能で金属やセラミックスなどの従来材料を大きく上回る特性を持ち、エネルギー分野のほか、情報通信、航空・宇宙、生体・医療などの幅広い分野での応用が期待されている。
【0004】
カーボンナノチューブなどのナノ炭素材料は、その特異な特性から、多くの分野での応用が期待されている。特に、ナノ直径の利用として、走査型プローブ顕微鏡の探針、ナノ電子デバイス、電子放出材などへの応用の可能性の検討がよく知られている。最近では、優れた伝導性の利用としてリチウム電池や燃料電池などの電気化学材料としての検討及び優れた水素吸蔵能力の利用として水素吸蔵材料への応用の可能性の検討も行われている。さらに、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミドなどの樹脂に代表される有機材料や、ガラス、セラミックス等の無機材料との複合体を形成して、導電性、熱伝導性、電磁波シールド性などの機能を付与する構造材料用複合材としての応用も検討され始めている。
【0005】
しかし、これら種々の用途への応用が期待されるナノ炭素材料は、非常に高価な材料である。ゆえに、ナノ炭素材料を多量に用いることは、製品自体のコスト増につながり、実用化を検討する上で好ましくない。また、ナノ炭素材料単体で自立材として成形することは非常に困難である。そのため、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を付与できれば、所望の効果を得ることができると予想される。例えば、電気化学材料としての応用の場面では、電極表面のみにナノ炭素材料が分散して形成されていれば足りる。また、導電性特性の応用である帯電防止樹脂形成の場面では、樹脂中にナノ炭素材料を均一に分散できれば、少量で所望の効果を得ることができると予想される。
【0006】
しかし、これまで、このように所望の部分のみに少量のナノ炭素材料を含む成形体や、樹脂中に均一に分散された少量のナノ炭素材料を含む成形体及びこれらの製造方法は、提案されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を分布させることで、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ナノ炭素材料を樹脂中に均一に分散させることにより、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、ナノ炭素材料同士の凝集を回避し、基材にナノ炭素材料を高度に均一に分散させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
またさらに、本発明は、ナノ炭素材料の遊離飛散を回避し、ナノ炭素材料を基材の必要な部分にのみ分布させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究した結果、ナノ炭素材料を重合性材料と共存させた状態で、放射線照射を施すことにより、重合性材料由来の高分子鎖中にナノ炭素材料を結合させて、ナノ炭素材料が高度に分散した材料を得ることができることを知見した。そして、放射線照射量を制御して所望の重合性材料の重合度を達成することができ、未重合の重合性単量体及び/又は重合性オリゴマーが残存する組成物を得ることができることも知見した。
【0012】
なお、本明細書において「重合性材料」とは、ナノ炭素材料を分散させようとする材料の重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを少なくとも含む状態であればよく、さらにポリマーが混在していてもよい状態を意味するものとする。また、「ナノ炭素材料含有高分子化合物材料」とは、少なくとも一部のナノ炭素材料が重合性材料由来の高分子鎖に結合してなる材料を意味する。さらに、「ナノ炭素材料含有成形体」とは、少なくとも一部のナノ炭素材料が成形体を構成する基材に結合してなる成形体を意味する。また、「ナノ炭素材料含有組成物」とは、未重合の重合性単量体を含み、さらにナノ炭素材料が高分子鎖の間に分散しているオリゴマー及びポリマーを含む組成物を意味する。
【0013】
まず、本発明を重合性材料としての重合性単量体との共存下に放射線照射を行う場合の反応機構について説明する。すなわち、ナノ炭素材料と重合性単量体とが共存する溶液に、放射線を照射することにより、単量体が活性化されると同時に、ナノ炭素材料を構成するC−C結合の部分的解離が起こり、ナノ炭素材料の表面に活性炭素が形成され、ナノ炭素材料の表面が化学修飾されることになる。すると、単量体同士が重合することに加えて、単量体が化学修飾されたナノ炭素材料と化学結合するようになる。その結果、単量体と結合したナノ炭素材料を含む繰り返し単位鎖が形成され、この繰り返し単位鎖の重合反応の進行に伴い、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したオリゴマーが得られ、さらに重合反応が進むことにより、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したポリマーが得られることになる。
【0014】
次に、重合性材料として、重合性単量体を一部に含むオリゴマー又はポリマーが混在する場合について説明すると、オリゴマー又はポリマーと混在する重合性単量体が上述の重合性単量体と同様の機構で反応することにより、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したポリマーが得られることになる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行うことを特徴とするナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法が提供される。
【0016】
本発明において用いることができるナノ炭素材料としては、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフェンシート)からなる単層グラフェンからなる単層ナノチューブ、二層のグラフェン層からなる二層ナノチューブ、多層のグラフェン層からなる多層ナノチューブ、直径が数十mm〜数μmであるカーボンナノファイバーでキャップスタック型カーボンナノファイバー、ヘリンボーン型カーボンナノファイバー、ブレートレット型カーボンナノファイバーなどを好ましく挙げることができる。これらのナノ炭素材料は、レーザー蒸発法、アーク放電法、化学蒸着法(CVD)により製造することができる他、Aldrich社や株式会社サイエンスラボラトリーズなどから市販品としても入手することができる。また、ナノ炭素材料の使用量は、用途や利用方法により異なるが、共存させる重合性単量体の重量に対して0.1〜100重量%程度であることが好ましく、例えば電磁遮蔽シートとして用いる場合には共存させる重合性単量体の重量に対して0.1〜5重量%程度が好ましい。
【0017】
本発明において用いることができる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができ、C=C結合を解離するために必要なエネルギー以上のエネルギーを与えることができるものであればよい。特に、物質透過性の観点から、γ線や電子線が好ましい。また、放射線の照射量は、線源からの距離、照射時間により異なるが、吸収線量としては10〜1000kGy程度であり、50〜300kGy程度が好ましい。
【0018】
本発明において用いることができる重合性材料のうち重合性単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸、メタクリル酸、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル酸グリシジル、スチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、クロロメチルスチレン、アクリル酸メチル、などを挙げることができる。これら重合性単量体は、単独で用いても、任意の組合せで用いてもよく、後述する基材表面の親疎水性や、ナノ炭素材料を溶媒に分散させる場合には溶媒と重合性単量体との相溶性や、成形体の適用分野などによって適宜決定することができる。例えば、基材としてポリエチレン(疎水性)を使用する場合には、疎水性又は弱親水性の重合性単量体を用いる。疎水性の重合性単量体としては、スチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)、クロロメチルスチレン(CMS)、アクリル酸メチルなどのエステル系モノマーを用いることができる。また弱親水性の重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などを用いることができる。あるいは、基材としてポリビニルアルコール系を用いる場合には、親水性の重合性単量体を用いることができ、スチレンスルホン酸ナトリウムや、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどを用いることができる。
【0019】
本発明のナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法においては、例えば、ナノ炭素材料1重量%を重合性単量体の溶液であるアクリル酸水溶液99重量%に添加して、撹拌しながら不活性雰囲気下で脱酸素を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を調製し、次いで、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液に、例えば50kGyのγ線や電子線などの放射線を照射して、アクリル酸の重合反応を進行させ、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を高粘性流体とすることができる。
【0020】
また、本発明においては、ナノ炭素材料を重合性材料との共存下で放射線照射を行う前に、ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させ、放射線照射を行うことが好ましい。ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させた状態で放射線照射を行うことにより、ナノ炭素材料を構成するC−C結合の部分的解離が起こり、ナノ炭素材料の表面に活性炭素が形成される。この活性炭素が溶媒中分子と反応して、ナノ炭素材料表面に化学修飾が形成され、溶媒中にナノ炭素材料が高度に分散されたナノ炭素材料含有溶液が得られる。すなわち、ナノ炭素材料を予め溶媒に分散又は懸濁させた状態で放射線照射を行うことにより、ナノ炭素材料表面を活性化させ、重合性材料との結合をより生じさせやすくすることができるという利点が得られる。
【0021】
ここで用いることができる溶媒としては、極性溶媒が好ましく、たとえば、TCE(1,1,2,2−テトラクロロエタン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、ジメチルアセタミド、THF(テトラヒドロフラン)などを挙げることができる。
【0022】
溶媒に分散させたナノ炭素材料を用いる場合には、共存させる重合性単量体は、極性が大きいものであることが好ましく、イオン交換基などの親水基を有する重合性単量体を用いることができる。この場合には、基材との反応性を考慮して、例えばポリエチレン基材に対してはアクリル酸やヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などの補助モノマーを用いて重合と基材への反応を促進することができる。
【0023】
本発明のナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法により得られるナノ炭素材料含有高分子化合物材料は、ナノ炭素材料と重合性材料とを共存させた状態で放射線照射を行い、一緒に重合して得られるので、ナノ炭素材料が得られた高分子化合物材料中に均一に分散しており、高分子化合物材料全体にわたって均一な導電性を示し、コーティング材や電磁遮蔽材として利用することができる。
【0024】
また、本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行い、重合性材料の一部を重合させて、オリゴマー及び未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物を形成し、得られたナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着させ、次いで、基材に担持又は付着させたナノ炭素材料含有組成物を放射線照射によりさらに重合させることを特徴とするナノ炭素材料含有成形体の製造方法が提供される。
【0025】
ここで用いることができるナノ炭素材料、重合性材料及び放射線は、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料に関して上述した通りである。
本発明において用いられるオリゴマー及び未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物としては、粘度計(山一電気工業株式会社製「ビスコメイトVM−1」)で測定した粘度が0.001〜30Pa・s、好ましくは0.1〜10Pa・sの範囲にある高粘性物質を挙げることができる。本発明において、ナノ炭素材料含有組成物を用いることにより、ナノ炭素材料の凝集を抑制し、基材への保持性を向上させることができる。
【0026】
本発明において用いることができる基材としては、成形体を構成する基材となり得るものであれば有機材料及び無機材料からいかなる形状や表面状態のものも挙げることができるが、ナノ炭素材料が結合した大きな比表面積を得たい場合には、多孔性基材を好ましく挙げることができる。多孔性基材としては、天然又は人工の繊維、織布、不織布、スポンジ、中空糸、軽石、海綿などを好ましく挙げることができ、その形状は特に制限されず、所望の用途に応じて、板状、シート状などでもよい。多孔性基材を構成する物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの高分子物質;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、イットリア、コージェライト、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物及びこれらの混合物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、リチウムアルミネートなど;イットリウム−バリウム−銅酸化物などの複合酸化物;及びこれらのハイブリッド材料などを挙げることができる。これら基材は、公知の方法で製造することができ、あるいは市販品を入手することもできる。
【0027】
本発明において、多孔性基材にナノ炭素材料含有組成物を担持又は付着させる工程は、多孔性基材にナノ炭素材料含有組成物を塗布、含浸、噴霧などすることにより行うことができ、通常のコーティング法、例えばスピンコート法、ディップ法、スプレイ法などを用いて行うことができる。
【0028】
多孔性基材に担持させるナノ炭素材料含有組成物の量は、所望の成形体としての機能に応じて異なるが、例えば、得られるナノ炭素材料含有成形体を電極材料として利用する場合には、基材単位面積に対して0.01〜10mg/cm2であることが好ましい。
【0029】
また、このとき、基材として多孔性基材を用いると、ナノ炭素材料含有組成物が基材の気孔中に侵入して、多孔性基材中に含浸される。ここで「含浸」とは、多孔性基材中にナノ炭素材料含有組成物が物理的に侵入又は浸透すればよく、多孔性基材構成分子とナノ炭素材料含有組成物構成分子とが化学的に結合しているか否かを問わない。
【0030】
また、ナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着させた後に行う重合は、放射線照射により行い、用いることができる放射線としては、γ線又は電子線が好ましい。放射線照射量は、ナノ炭素材料含有成形体の用途に応じて異なり、所望の重合度を達成することができる照射量であればよく、例えば、電極材料として利用する場合に、基材単位面積あたり0.01〜10mg/cm2のナノ炭素材料含有組成物を担持させた場合には、10〜1000kGy、好ましくは10〜100kGyであることが好ましい。
【0031】
また、ナノ炭素材料含有組成物を担持又は付着させた基材に対して行う放射線照射は、空気中で行うと空気中の酸素がラジカルとなり基材を劣化させることや、酸素自身がモノマーやナノ炭素材料のC−C開裂部にアタックすることから真空下又はN2、Arなどの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0032】
本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法においては、例えば、ナノ炭素材料含有成形体を電磁遮蔽材として利用する場合には、ナノ炭素材料1重量%を重合性単量体の溶液であるアクリル酸水溶液99重量%に添加して、撹拌しながら不活性雰囲気下で脱酸素を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を調製し、次いで、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液に、例えば50kGyのγ線や電子線などの放射線を照射して、アクリル酸の重合反応を進行させ、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を高粘性流体とする。次いで、得られた高粘性流体のナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を、アクリル繊維や不織布又はジルコニア板などの基材に浸漬塗布するなどして担持させた後に、放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液をさらに重合させて、基材上にナノ炭素材料含有ポリアクリル酸を形成させる。次いで、得られたナノ炭素材料含有ポリアクリル酸担持基材を熱処理して、ナノ炭素材料含有成形体を形成することができる。
【0033】
ナノ炭素材料含有高分子化合物材料担持基材の熱処理条件としては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性雰囲気中で、500℃〜1000℃の温度、好ましくは600℃〜800℃の温度範囲で、担持されているナノ炭素材料含有高分子化合物材料が炭化するまで行うことが好ましい。
【0034】
このようにして本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法により得られるナノ炭素材料含有成形体は、比表面積が大きく、ナノ炭素材料が有する高い電子授受能力を備え、燃料電池の電極材料、電解質材料やリチウムイオン電池などの電極材料として利用することができる。
【0035】
またさらに本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有組成物を形成し、得られたナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着又は含浸させることを特徴とするナノ炭素材料含有成形体の製造方法が提供される。
【0036】
ここで用いることができるナノ炭素材料、重合性材料及び放射線は、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料に関して上述した通りである。また、ナノ炭素材料含有組成物、用いることができる基材及び基材へのナノ炭素材料含有組成物の担持又は付着又は含浸の態様及びその量も上述した通りである。
【0037】
このようにして本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法により得られる成形体は、成形体表面に炭化されたナノ炭素材料含有高分子化合物材料が存在するので導電性を示し、帯電せず優れた粒子除去或いは有害物除去特性を有するフィルターとして利用することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【実施例1】
カーボンナノチューブ(株式会社サイエンスラボラトリーズ)1gを溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)100mLに入れて、線量率10kGy/hのγ線を液体窒素で冷却しながら、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブ含有THF溶液が得られた。
【0040】
このカーボンナノチューブ含有THF溶液を図1に示すように、三角フラスコ12に入れ、アクリル酸THF溶液50gを加えて、撹拌しながら、窒素11をガラス管15を用いて送気し、室温で、1時間、脱酸素を行い、カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13を調製した。このカーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13に対して、液体窒素で冷却しながら、10kGy/hのγ線14を5時間、照射したところ、カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13の粘度が増加した様子が観察された。これは、放射線照射によりカーボンナノチューブを含むアクリル酸の重合が進行し、カーボンナノチューブポリアクリル酸水溶液が形成されたことを示す。このときのカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸溶液の粘度は、粘度計(山一電気工業株式会社製「ビスコメイトVM−1」)で測定して10Pa・sであった。
【0041】
【実施例2】
実施例1と同様の手順であるが、カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液の粘度が1Pa・sになった時点で反応を中止して得たカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液42に、繊維径15μmのポリエチレン繊維からなる目付50g/m2の不織布10cm2を10分間浸漬させた後、引き上げ、余分なカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を拭き取り、カーボンナノチューブ含有アクリル酸含浸不織布22を得た。
【0042】
【実施例3】
実施例2で得られたカーボンナノチューブ含有アクリル酸含浸不織布22を、図2に示すように、ガラスアンプル21に入れて、ガラスアンプル21内部を真空ポンプ(図示せず)で減圧して封管した後、10kGy/hのγ線23を液体窒素で冷却しながら、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブが表面に付着したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布が得られた。次に、この不織布を水に浸漬して1時間撹拌したが、脱落するカーボンナノチューブはほとんど観察されなかった。
【0043】
【実施例4】
図3に示すように、不織布を繊維径25μmのアクリル繊維からなる目付50g/m2の不織布10cm2とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を得た。得られたカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布31を、窒素雰囲気の800℃の焼成炉32に入れ、30分間、熱処理した。アクリル酸部分のみが燃焼し、不織布形状のカーボンナノチューブ含有成形体を得た。
【0044】
【実施例5】
図4に示すように、実施例2と同様の手順で調製したカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液42を、セリア板(酸化セリウム粉末を圧縮成形したもの;直径20mm、厚み3mm)41上にディップ法により塗布し、窒素雰囲気の600℃の焼成炉43に入れ、30分間、熱処理した。熱処理後のセリア板41を電界放射走査型電子顕微鏡(JSM−6400F:日本電子(株)製)で観察したところ、セリア板表面にカーボンナノチューブが形成されており、カーボンナノチューブ担持セリア板が形成されたことが確認された。
【0045】
【実施例6】
La1−xSrxMnO3(LSM)板(共沈法で作製したLSM粉末を圧縮成形し、1150℃で焼結して作製したもの;直径20mm、厚み1.4mm)上に、イットリア安定ジルコニア(YSZ)をゾルゲル法により作製したゾルをスピンコート法により厚み0.1mmで積層させた。この積層板の上に、実施例2の手順に従って調製したカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液をディップコーティング法により塗布させた。塗布後の積層板を、実施例2の手順に従ってガラスアンプルに入れて、ガラスアンプル内部を真空ポンプ(図示せず)で減圧して封管した後、10kGy/hのγ線を室温で、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブが表面に付着したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持積層板が得られた。このカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持積層板の上に、Ni−YSZ(固相法で作製したYSZ粉末に、粒径7μmの酸化ニッケル粉末を混合し、テレピン油を加え、塗布後、焼き付けたもの)を積層させて、カーボンナノチューブ担持単セルを作製した。
【0046】
対照として、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸を担持させないLSM−YSZ−NiYSZ単セルを作製した。
両者について、電気炉内部において、セラミック管で両側から挟み、LSM板側に酸素を供給し、Ni−YSZ側にアルゴンで希釈した4.5%メタンを供給して、80℃での動作特性を評価したところ、最大出力密度はカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持単セルで12mW/cm2であり、LSM−YSZ−NiYSZ単セルで10mW/cm2であった。このことから、本発明の方法により得られたカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持単セルが、約20%の出力向上を示すことがわかる。
【0047】
【実施例7】
カーボンナノチューブの添加量を下記表
【0048】
【表1】
【0049】
に示すように変えた以外は、実施例2の手順に従って、カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を調製した。次に、このカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を表面が平坦なガラス板(300mm×300mm、厚さ10mm)上に伸展させ、放射線を照射して、ガラス板上に導電性樹脂を形成させ、その後、導電性樹脂をガラス板から取り外した。
【0050】
対照として、従来の方法により、上記表に示す添加量でカーボンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」(粉末))をポリアクリル酸樹脂に混練させて導電性樹脂を得た。
【0051】
両者について、100Ωcmの体積抵抗率を得るために必要なカーボンナノチューブ及びカーボンブラックの添加量を比較したところ、カーボンナノチューブは全樹脂重量に対して約3wt%であったのに対して、カーボンブラックでは全樹脂重量に対して20wt%を要した。このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有樹脂は、より少量のカーボンナノチューブ含有量で良好な導電性を示し、ナノ炭素材料が樹脂中に均一に高度に分散していることがわかる。
【0052】
また、JIS B9923「クリーンルーム用衣服の汚染粒子測定方法」におけるシェーキング法により、両者からの発塵量を測定し、粒径0.5μm以上の粒子数を比較したところ、カーボンナノチューブ含有樹脂では約1.7×104個/m3であったのに対して、カーボンブラック含有樹脂では約1.7×105個/m3であった。
このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有樹脂は、樹脂からのナノ炭素材料の飛散量が少ないことがわかる。
【0053】
【実施例8】
放射線グラフト重合法及びイオン交換法により酸化マンガン微粒子を担持させたポリエチレン繊維を基材としたオゾン除去用不織布20cm2を用いて、実施例2に記載した手順に従って、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を調製した。
【0054】
ガス吸着能力を図5に示す装置を用いて測定した。図5において、被処理ガス吸着チャンバ53は、閉塞端部と、ガス流入端部と、を有する。ガス流入端部には、オゾン発生装置51及びベンゼン発生装置57からオゾン及びベンゼンを流通させるガス流入ラインが接続されており、ガス流入ラインにはガス流量を制御する流量計52が設けられている。被処理ガス吸着チャンバ53内部には、ほぼ中央に被検体設置部分56が設けられ、被検体設置部分56とガス流入端部との間に、入口サンプリングライン54が設けられ、被検体設置部分56と閉塞端部との間に出口サンプリングライン55が設けられている。入口サンプリングライン54及び出口サンプリングライン55は、別個のパーティクルカウンター58と接続可能になされている。
【0055】
被検体として、本発明により調製したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布56を被検体設置部分56に挿入し、オゾン8ppm及びベンゼン1ppmを含む空気を毎分5リットルの流量で流入させた。入口サンプリングライン54をパーティクルカウンター58に接続させて、被処理ガス吸着チャンバ53内への流入空気中の粒子濃度を測定したところ、粒径0.5μm以上の粒子の数は3.5×104個/m3であった。
【0056】
24時間経過後、出口サンプリングライン55から被処理ガス吸着チャンバ53内部の空気を採取して、検知管を用いてオゾン濃度を測定し、ガスクロマトグラフィを用いてベンゼン濃度を測定した。また、入口サンプリングライン54及び出口サンプリングライン55をパーティクルカウンター58に接続させて、被処理ガス吸着チャンバ53内の空気中の粒子濃度を測定した。
【0057】
本発明により調製したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を通過した出口サンプリングライン55から採取した空気では、オゾン濃度が3ppm、ベンゼン濃度が0.5ppm、粒径0.5μm以上の粒子の数が3.5×104個/m3であった。
【0058】
一方、ナノ炭素材料を担持させていないオゾン除去用不織布を挿入して行った対照実験では、不織布を通過した出口サンプリングライン55から採取した空気中オゾン濃度が3ppm、ベンゼン濃度が1ppm、粒径0.5μm以上の粒子の数が3.5×104個/m3であった。
【0059】
このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布は、優れたオゾン除去能及びベンゼン除去能を示し、不織布に担持されたカーボンナノチューブの飛散を示さないので、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布は、フィルターとして有用であることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高度に分散したナノ炭素材料を含有する高分子化合物材料及びその製造方法が提供される。
【0061】
また、本発明によれば、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を分布させることで、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法が提供される。
【0062】
また、ナノ炭素材料を樹脂中に均一に分散させることにより、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法も提供される。
【0063】
さらに、ナノ炭素材料同士の凝集を回避し、基材にナノ炭素材料を高度に均一に分散させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法が提供される。
またさらに、ナノ炭素材料の遊離飛散を回避し、ナノ炭素材料を基材の必要な部分にのみ分布させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1でのカーボンナノチューブ含有高分子化合物材料調製の概略説明図である。
【図2】図2は、実施例3でのカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布調製の概略説明図である。
【図3】図3は、実施例4でのカーボンナノチューブ担持不織布調製の概略説明図である。
【図4】図4は、実施例5でのカーボンナノチューブ担持無機材料調製の概略説明図である。
【図5】図5は、実施例8におけるガス吸着能力測定の概略説明図である。
【符号の説明】
13:カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液
14;23:γ線照射
22:カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸含浸不織布
31:カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布
41:セリア板(無機基材)
42:カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノ炭素材料含有分散液、ナノ炭素材料含有組成物、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料、ナノ炭素材料含有成形体及びそれらの製造方法に関し、特に、ナノ炭素材料を所望部位に緻密に且つ均一に分散させてなるナノ炭素含有分散液、ナノ炭素材料含有組成物、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料及びナノ炭素材料含有成形体並びにそれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナノ炭素材料としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが知られている。
【0003】
カーボンナノチューブは、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフェンシート)を丸めた円筒状の物質で、ナノメートル単位の構造を持ち、高強度(炭素繊維の約40倍)で、導電性(構造により半導体〜金属の導電性に制御可能)、電子放出能モリブデンの約100倍)、ガス吸蔵特性(水素吸蔵合金の約5倍)など、多くの機能で金属やセラミックスなどの従来材料を大きく上回る特性を持ち、エネルギー分野のほか、情報通信、航空・宇宙、生体・医療などの幅広い分野での応用が期待されている。
【0004】
カーボンナノチューブなどのナノ炭素材料は、その特異な特性から、多くの分野での応用が期待されている。特に、ナノ直径の利用として、走査型プローブ顕微鏡の探針、ナノ電子デバイス、電子放出材などへの応用の可能性の検討がよく知られている。最近では、優れた伝導性の利用としてリチウム電池や燃料電池などの電気化学材料としての検討及び優れた水素吸蔵能力の利用として水素吸蔵材料への応用の可能性の検討も行われている。さらに、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリイミドなどの樹脂に代表される有機材料や、ガラス、セラミックス等の無機材料との複合体を形成して、導電性、熱伝導性、電磁波シールド性などの機能を付与する構造材料用複合材としての応用も検討され始めている。
【0005】
しかし、これら種々の用途への応用が期待されるナノ炭素材料は、非常に高価な材料である。ゆえに、ナノ炭素材料を多量に用いることは、製品自体のコスト増につながり、実用化を検討する上で好ましくない。また、ナノ炭素材料単体で自立材として成形することは非常に困難である。そのため、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を付与できれば、所望の効果を得ることができると予想される。例えば、電気化学材料としての応用の場面では、電極表面のみにナノ炭素材料が分散して形成されていれば足りる。また、導電性特性の応用である帯電防止樹脂形成の場面では、樹脂中にナノ炭素材料を均一に分散できれば、少量で所望の効果を得ることができると予想される。
【0006】
しかし、これまで、このように所望の部分のみに少量のナノ炭素材料を含む成形体や、樹脂中に均一に分散された少量のナノ炭素材料を含む成形体及びこれらの製造方法は、提案されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を分布させることで、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ナノ炭素材料を樹脂中に均一に分散させることにより、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、ナノ炭素材料同士の凝集を回避し、基材にナノ炭素材料を高度に均一に分散させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
またさらに、本発明は、ナノ炭素材料の遊離飛散を回避し、ナノ炭素材料を基材の必要な部分にのみ分布させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究した結果、ナノ炭素材料を重合性材料と共存させた状態で、放射線照射を施すことにより、重合性材料由来の高分子鎖中にナノ炭素材料を結合させて、ナノ炭素材料が高度に分散した材料を得ることができることを知見した。そして、放射線照射量を制御して所望の重合性材料の重合度を達成することができ、未重合の重合性単量体及び/又は重合性オリゴマーが残存する組成物を得ることができることも知見した。
【0012】
なお、本明細書において「重合性材料」とは、ナノ炭素材料を分散させようとする材料の重合可能なモノマー及び/又はオリゴマーを少なくとも含む状態であればよく、さらにポリマーが混在していてもよい状態を意味するものとする。また、「ナノ炭素材料含有高分子化合物材料」とは、少なくとも一部のナノ炭素材料が重合性材料由来の高分子鎖に結合してなる材料を意味する。さらに、「ナノ炭素材料含有成形体」とは、少なくとも一部のナノ炭素材料が成形体を構成する基材に結合してなる成形体を意味する。また、「ナノ炭素材料含有組成物」とは、未重合の重合性単量体を含み、さらにナノ炭素材料が高分子鎖の間に分散しているオリゴマー及びポリマーを含む組成物を意味する。
【0013】
まず、本発明を重合性材料としての重合性単量体との共存下に放射線照射を行う場合の反応機構について説明する。すなわち、ナノ炭素材料と重合性単量体とが共存する溶液に、放射線を照射することにより、単量体が活性化されると同時に、ナノ炭素材料を構成するC−C結合の部分的解離が起こり、ナノ炭素材料の表面に活性炭素が形成され、ナノ炭素材料の表面が化学修飾されることになる。すると、単量体同士が重合することに加えて、単量体が化学修飾されたナノ炭素材料と化学結合するようになる。その結果、単量体と結合したナノ炭素材料を含む繰り返し単位鎖が形成され、この繰り返し単位鎖の重合反応の進行に伴い、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したオリゴマーが得られ、さらに重合反応が進むことにより、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したポリマーが得られることになる。
【0014】
次に、重合性材料として、重合性単量体を一部に含むオリゴマー又はポリマーが混在する場合について説明すると、オリゴマー又はポリマーと混在する重合性単量体が上述の重合性単量体と同様の機構で反応することにより、ナノ炭素材料が化学結合して高度に分散したポリマーが得られることになる。
【0015】
すなわち、本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行うことを特徴とするナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法が提供される。
【0016】
本発明において用いることができるナノ炭素材料としては、炭素6員環が連なったグラファイトの1層(グラフェンシート)からなる単層グラフェンからなる単層ナノチューブ、二層のグラフェン層からなる二層ナノチューブ、多層のグラフェン層からなる多層ナノチューブ、直径が数十mm〜数μmであるカーボンナノファイバーでキャップスタック型カーボンナノファイバー、ヘリンボーン型カーボンナノファイバー、ブレートレット型カーボンナノファイバーなどを好ましく挙げることができる。これらのナノ炭素材料は、レーザー蒸発法、アーク放電法、化学蒸着法(CVD)により製造することができる他、Aldrich社や株式会社サイエンスラボラトリーズなどから市販品としても入手することができる。また、ナノ炭素材料の使用量は、用途や利用方法により異なるが、共存させる重合性単量体の重量に対して0.1〜100重量%程度であることが好ましく、例えば電磁遮蔽シートとして用いる場合には共存させる重合性単量体の重量に対して0.1〜5重量%程度が好ましい。
【0017】
本発明において用いることができる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などを挙げることができ、C=C結合を解離するために必要なエネルギー以上のエネルギーを与えることができるものであればよい。特に、物質透過性の観点から、γ線や電子線が好ましい。また、放射線の照射量は、線源からの距離、照射時間により異なるが、吸収線量としては10〜1000kGy程度であり、50〜300kGy程度が好ましい。
【0018】
本発明において用いることができる重合性材料のうち重合性単量体としては、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸、メタクリル酸、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクリルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリル酸グリシジル、スチレン、アクリロニトリル、アクロレイン、クロロメチルスチレン、アクリル酸メチル、などを挙げることができる。これら重合性単量体は、単独で用いても、任意の組合せで用いてもよく、後述する基材表面の親疎水性や、ナノ炭素材料を溶媒に分散させる場合には溶媒と重合性単量体との相溶性や、成形体の適用分野などによって適宜決定することができる。例えば、基材としてポリエチレン(疎水性)を使用する場合には、疎水性又は弱親水性の重合性単量体を用いる。疎水性の重合性単量体としては、スチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)、クロロメチルスチレン(CMS)、アクリル酸メチルなどのエステル系モノマーを用いることができる。また弱親水性の重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸などを用いることができる。あるいは、基材としてポリビニルアルコール系を用いる場合には、親水性の重合性単量体を用いることができ、スチレンスルホン酸ナトリウムや、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどを用いることができる。
【0019】
本発明のナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法においては、例えば、ナノ炭素材料1重量%を重合性単量体の溶液であるアクリル酸水溶液99重量%に添加して、撹拌しながら不活性雰囲気下で脱酸素を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を調製し、次いで、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液に、例えば50kGyのγ線や電子線などの放射線を照射して、アクリル酸の重合反応を進行させ、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を高粘性流体とすることができる。
【0020】
また、本発明においては、ナノ炭素材料を重合性材料との共存下で放射線照射を行う前に、ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させ、放射線照射を行うことが好ましい。ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させた状態で放射線照射を行うことにより、ナノ炭素材料を構成するC−C結合の部分的解離が起こり、ナノ炭素材料の表面に活性炭素が形成される。この活性炭素が溶媒中分子と反応して、ナノ炭素材料表面に化学修飾が形成され、溶媒中にナノ炭素材料が高度に分散されたナノ炭素材料含有溶液が得られる。すなわち、ナノ炭素材料を予め溶媒に分散又は懸濁させた状態で放射線照射を行うことにより、ナノ炭素材料表面を活性化させ、重合性材料との結合をより生じさせやすくすることができるという利点が得られる。
【0021】
ここで用いることができる溶媒としては、極性溶媒が好ましく、たとえば、TCE(1,1,2,2−テトラクロロエタン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(ジメチルホルムアミド)、ジメチルアセタミド、THF(テトラヒドロフラン)などを挙げることができる。
【0022】
溶媒に分散させたナノ炭素材料を用いる場合には、共存させる重合性単量体は、極性が大きいものであることが好ましく、イオン交換基などの親水基を有する重合性単量体を用いることができる。この場合には、基材との反応性を考慮して、例えばポリエチレン基材に対してはアクリル酸やヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)などの補助モノマーを用いて重合と基材への反応を促進することができる。
【0023】
本発明のナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法により得られるナノ炭素材料含有高分子化合物材料は、ナノ炭素材料と重合性材料とを共存させた状態で放射線照射を行い、一緒に重合して得られるので、ナノ炭素材料が得られた高分子化合物材料中に均一に分散しており、高分子化合物材料全体にわたって均一な導電性を示し、コーティング材や電磁遮蔽材として利用することができる。
【0024】
また、本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行い、重合性材料の一部を重合させて、オリゴマー及び未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物を形成し、得られたナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着させ、次いで、基材に担持又は付着させたナノ炭素材料含有組成物を放射線照射によりさらに重合させることを特徴とするナノ炭素材料含有成形体の製造方法が提供される。
【0025】
ここで用いることができるナノ炭素材料、重合性材料及び放射線は、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料に関して上述した通りである。
本発明において用いられるオリゴマー及び未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物としては、粘度計(山一電気工業株式会社製「ビスコメイトVM−1」)で測定した粘度が0.001〜30Pa・s、好ましくは0.1〜10Pa・sの範囲にある高粘性物質を挙げることができる。本発明において、ナノ炭素材料含有組成物を用いることにより、ナノ炭素材料の凝集を抑制し、基材への保持性を向上させることができる。
【0026】
本発明において用いることができる基材としては、成形体を構成する基材となり得るものであれば有機材料及び無機材料からいかなる形状や表面状態のものも挙げることができるが、ナノ炭素材料が結合した大きな比表面積を得たい場合には、多孔性基材を好ましく挙げることができる。多孔性基材としては、天然又は人工の繊維、織布、不織布、スポンジ、中空糸、軽石、海綿などを好ましく挙げることができ、その形状は特に制限されず、所望の用途に応じて、板状、シート状などでもよい。多孔性基材を構成する物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどの高分子物質;シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、セリア、イットリア、コージェライト、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物及びこれらの混合物;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、リチウムアルミネートなど;イットリウム−バリウム−銅酸化物などの複合酸化物;及びこれらのハイブリッド材料などを挙げることができる。これら基材は、公知の方法で製造することができ、あるいは市販品を入手することもできる。
【0027】
本発明において、多孔性基材にナノ炭素材料含有組成物を担持又は付着させる工程は、多孔性基材にナノ炭素材料含有組成物を塗布、含浸、噴霧などすることにより行うことができ、通常のコーティング法、例えばスピンコート法、ディップ法、スプレイ法などを用いて行うことができる。
【0028】
多孔性基材に担持させるナノ炭素材料含有組成物の量は、所望の成形体としての機能に応じて異なるが、例えば、得られるナノ炭素材料含有成形体を電極材料として利用する場合には、基材単位面積に対して0.01〜10mg/cm2であることが好ましい。
【0029】
また、このとき、基材として多孔性基材を用いると、ナノ炭素材料含有組成物が基材の気孔中に侵入して、多孔性基材中に含浸される。ここで「含浸」とは、多孔性基材中にナノ炭素材料含有組成物が物理的に侵入又は浸透すればよく、多孔性基材構成分子とナノ炭素材料含有組成物構成分子とが化学的に結合しているか否かを問わない。
【0030】
また、ナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着させた後に行う重合は、放射線照射により行い、用いることができる放射線としては、γ線又は電子線が好ましい。放射線照射量は、ナノ炭素材料含有成形体の用途に応じて異なり、所望の重合度を達成することができる照射量であればよく、例えば、電極材料として利用する場合に、基材単位面積あたり0.01〜10mg/cm2のナノ炭素材料含有組成物を担持させた場合には、10〜1000kGy、好ましくは10〜100kGyであることが好ましい。
【0031】
また、ナノ炭素材料含有組成物を担持又は付着させた基材に対して行う放射線照射は、空気中で行うと空気中の酸素がラジカルとなり基材を劣化させることや、酸素自身がモノマーやナノ炭素材料のC−C開裂部にアタックすることから真空下又はN2、Arなどの不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
【0032】
本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法においては、例えば、ナノ炭素材料含有成形体を電磁遮蔽材として利用する場合には、ナノ炭素材料1重量%を重合性単量体の溶液であるアクリル酸水溶液99重量%に添加して、撹拌しながら不活性雰囲気下で脱酸素を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を調製し、次いで、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液に、例えば50kGyのγ線や電子線などの放射線を照射して、アクリル酸の重合反応を進行させ、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を高粘性流体とする。次いで、得られた高粘性流体のナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液を、アクリル繊維や不織布又はジルコニア板などの基材に浸漬塗布するなどして担持させた後に、放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有アクリル酸分散液又は懸濁液をさらに重合させて、基材上にナノ炭素材料含有ポリアクリル酸を形成させる。次いで、得られたナノ炭素材料含有ポリアクリル酸担持基材を熱処理して、ナノ炭素材料含有成形体を形成することができる。
【0033】
ナノ炭素材料含有高分子化合物材料担持基材の熱処理条件としては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性雰囲気中で、500℃〜1000℃の温度、好ましくは600℃〜800℃の温度範囲で、担持されているナノ炭素材料含有高分子化合物材料が炭化するまで行うことが好ましい。
【0034】
このようにして本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法により得られるナノ炭素材料含有成形体は、比表面積が大きく、ナノ炭素材料が有する高い電子授受能力を備え、燃料電池の電極材料、電解質材料やリチウムイオン電池などの電極材料として利用することができる。
【0035】
またさらに本発明によれば、ナノ炭素材料と、重合性材料と、の共存下で、放射線照射を行い、ナノ炭素材料含有組成物を形成し、得られたナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着又は含浸させることを特徴とするナノ炭素材料含有成形体の製造方法が提供される。
【0036】
ここで用いることができるナノ炭素材料、重合性材料及び放射線は、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料に関して上述した通りである。また、ナノ炭素材料含有組成物、用いることができる基材及び基材へのナノ炭素材料含有組成物の担持又は付着又は含浸の態様及びその量も上述した通りである。
【0037】
このようにして本発明のナノ炭素材料含有成形体の製造方法により得られる成形体は、成形体表面に炭化されたナノ炭素材料含有高分子化合物材料が存在するので導電性を示し、帯電せず優れた粒子除去或いは有害物除去特性を有するフィルターとして利用することができる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【実施例1】
カーボンナノチューブ(株式会社サイエンスラボラトリーズ)1gを溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)100mLに入れて、線量率10kGy/hのγ線を液体窒素で冷却しながら、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブ含有THF溶液が得られた。
【0040】
このカーボンナノチューブ含有THF溶液を図1に示すように、三角フラスコ12に入れ、アクリル酸THF溶液50gを加えて、撹拌しながら、窒素11をガラス管15を用いて送気し、室温で、1時間、脱酸素を行い、カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13を調製した。このカーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13に対して、液体窒素で冷却しながら、10kGy/hのγ線14を5時間、照射したところ、カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液13の粘度が増加した様子が観察された。これは、放射線照射によりカーボンナノチューブを含むアクリル酸の重合が進行し、カーボンナノチューブポリアクリル酸水溶液が形成されたことを示す。このときのカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸溶液の粘度は、粘度計(山一電気工業株式会社製「ビスコメイトVM−1」)で測定して10Pa・sであった。
【0041】
【実施例2】
実施例1と同様の手順であるが、カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液の粘度が1Pa・sになった時点で反応を中止して得たカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液42に、繊維径15μmのポリエチレン繊維からなる目付50g/m2の不織布10cm2を10分間浸漬させた後、引き上げ、余分なカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を拭き取り、カーボンナノチューブ含有アクリル酸含浸不織布22を得た。
【0042】
【実施例3】
実施例2で得られたカーボンナノチューブ含有アクリル酸含浸不織布22を、図2に示すように、ガラスアンプル21に入れて、ガラスアンプル21内部を真空ポンプ(図示せず)で減圧して封管した後、10kGy/hのγ線23を液体窒素で冷却しながら、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブが表面に付着したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布が得られた。次に、この不織布を水に浸漬して1時間撹拌したが、脱落するカーボンナノチューブはほとんど観察されなかった。
【0043】
【実施例4】
図3に示すように、不織布を繊維径25μmのアクリル繊維からなる目付50g/m2の不織布10cm2とした以外は、実施例2と同様に行い、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を得た。得られたカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布31を、窒素雰囲気の800℃の焼成炉32に入れ、30分間、熱処理した。アクリル酸部分のみが燃焼し、不織布形状のカーボンナノチューブ含有成形体を得た。
【0044】
【実施例5】
図4に示すように、実施例2と同様の手順で調製したカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液42を、セリア板(酸化セリウム粉末を圧縮成形したもの;直径20mm、厚み3mm)41上にディップ法により塗布し、窒素雰囲気の600℃の焼成炉43に入れ、30分間、熱処理した。熱処理後のセリア板41を電界放射走査型電子顕微鏡(JSM−6400F:日本電子(株)製)で観察したところ、セリア板表面にカーボンナノチューブが形成されており、カーボンナノチューブ担持セリア板が形成されたことが確認された。
【0045】
【実施例6】
La1−xSrxMnO3(LSM)板(共沈法で作製したLSM粉末を圧縮成形し、1150℃で焼結して作製したもの;直径20mm、厚み1.4mm)上に、イットリア安定ジルコニア(YSZ)をゾルゲル法により作製したゾルをスピンコート法により厚み0.1mmで積層させた。この積層板の上に、実施例2の手順に従って調製したカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液をディップコーティング法により塗布させた。塗布後の積層板を、実施例2の手順に従ってガラスアンプルに入れて、ガラスアンプル内部を真空ポンプ(図示せず)で減圧して封管した後、10kGy/hのγ線を室温で、5時間、照射したところ、カーボンナノチューブが表面に付着したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持積層板が得られた。このカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持積層板の上に、Ni−YSZ(固相法で作製したYSZ粉末に、粒径7μmの酸化ニッケル粉末を混合し、テレピン油を加え、塗布後、焼き付けたもの)を積層させて、カーボンナノチューブ担持単セルを作製した。
【0046】
対照として、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸を担持させないLSM−YSZ−NiYSZ単セルを作製した。
両者について、電気炉内部において、セラミック管で両側から挟み、LSM板側に酸素を供給し、Ni−YSZ側にアルゴンで希釈した4.5%メタンを供給して、80℃での動作特性を評価したところ、最大出力密度はカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持単セルで12mW/cm2であり、LSM−YSZ−NiYSZ単セルで10mW/cm2であった。このことから、本発明の方法により得られたカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持単セルが、約20%の出力向上を示すことがわかる。
【0047】
【実施例7】
カーボンナノチューブの添加量を下記表
【0048】
【表1】
【0049】
に示すように変えた以外は、実施例2の手順に従って、カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を調製した。次に、このカーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液を表面が平坦なガラス板(300mm×300mm、厚さ10mm)上に伸展させ、放射線を照射して、ガラス板上に導電性樹脂を形成させ、その後、導電性樹脂をガラス板から取り外した。
【0050】
対照として、従来の方法により、上記表に示す添加量でカーボンブラック(電気化学工業株式会社製「デンカブラック」(粉末))をポリアクリル酸樹脂に混練させて導電性樹脂を得た。
【0051】
両者について、100Ωcmの体積抵抗率を得るために必要なカーボンナノチューブ及びカーボンブラックの添加量を比較したところ、カーボンナノチューブは全樹脂重量に対して約3wt%であったのに対して、カーボンブラックでは全樹脂重量に対して20wt%を要した。このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有樹脂は、より少量のカーボンナノチューブ含有量で良好な導電性を示し、ナノ炭素材料が樹脂中に均一に高度に分散していることがわかる。
【0052】
また、JIS B9923「クリーンルーム用衣服の汚染粒子測定方法」におけるシェーキング法により、両者からの発塵量を測定し、粒径0.5μm以上の粒子数を比較したところ、カーボンナノチューブ含有樹脂では約1.7×104個/m3であったのに対して、カーボンブラック含有樹脂では約1.7×105個/m3であった。
このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有樹脂は、樹脂からのナノ炭素材料の飛散量が少ないことがわかる。
【0053】
【実施例8】
放射線グラフト重合法及びイオン交換法により酸化マンガン微粒子を担持させたポリエチレン繊維を基材としたオゾン除去用不織布20cm2を用いて、実施例2に記載した手順に従って、カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を調製した。
【0054】
ガス吸着能力を図5に示す装置を用いて測定した。図5において、被処理ガス吸着チャンバ53は、閉塞端部と、ガス流入端部と、を有する。ガス流入端部には、オゾン発生装置51及びベンゼン発生装置57からオゾン及びベンゼンを流通させるガス流入ラインが接続されており、ガス流入ラインにはガス流量を制御する流量計52が設けられている。被処理ガス吸着チャンバ53内部には、ほぼ中央に被検体設置部分56が設けられ、被検体設置部分56とガス流入端部との間に、入口サンプリングライン54が設けられ、被検体設置部分56と閉塞端部との間に出口サンプリングライン55が設けられている。入口サンプリングライン54及び出口サンプリングライン55は、別個のパーティクルカウンター58と接続可能になされている。
【0055】
被検体として、本発明により調製したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布56を被検体設置部分56に挿入し、オゾン8ppm及びベンゼン1ppmを含む空気を毎分5リットルの流量で流入させた。入口サンプリングライン54をパーティクルカウンター58に接続させて、被処理ガス吸着チャンバ53内への流入空気中の粒子濃度を測定したところ、粒径0.5μm以上の粒子の数は3.5×104個/m3であった。
【0056】
24時間経過後、出口サンプリングライン55から被処理ガス吸着チャンバ53内部の空気を採取して、検知管を用いてオゾン濃度を測定し、ガスクロマトグラフィを用いてベンゼン濃度を測定した。また、入口サンプリングライン54及び出口サンプリングライン55をパーティクルカウンター58に接続させて、被処理ガス吸着チャンバ53内の空気中の粒子濃度を測定した。
【0057】
本発明により調製したカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布を通過した出口サンプリングライン55から採取した空気では、オゾン濃度が3ppm、ベンゼン濃度が0.5ppm、粒径0.5μm以上の粒子の数が3.5×104個/m3であった。
【0058】
一方、ナノ炭素材料を担持させていないオゾン除去用不織布を挿入して行った対照実験では、不織布を通過した出口サンプリングライン55から採取した空気中オゾン濃度が3ppm、ベンゼン濃度が1ppm、粒径0.5μm以上の粒子の数が3.5×104個/m3であった。
【0059】
このことから、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布は、優れたオゾン除去能及びベンゼン除去能を示し、不織布に担持されたカーボンナノチューブの飛散を示さないので、本発明により得られるカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布は、フィルターとして有用であることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、高度に分散したナノ炭素材料を含有する高分子化合物材料及びその製造方法が提供される。
【0061】
また、本発明によれば、必要な部分のみに必要な量のナノ炭素材料を分布させることで、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法が提供される。
【0062】
また、ナノ炭素材料を樹脂中に均一に分散させることにより、従来のナノ炭素材料含有成形体と同等の効果を奏するが、より少量のナノ炭素材料を含有する成形体及びその製造方法も提供される。
【0063】
さらに、ナノ炭素材料同士の凝集を回避し、基材にナノ炭素材料を高度に均一に分散させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法が提供される。
またさらに、ナノ炭素材料の遊離飛散を回避し、ナノ炭素材料を基材の必要な部分にのみ分布させてなるナノ炭素材料含有成形体及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1でのカーボンナノチューブ含有高分子化合物材料調製の概略説明図である。
【図2】図2は、実施例3でのカーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布調製の概略説明図である。
【図3】図3は、実施例4でのカーボンナノチューブ担持不織布調製の概略説明図である。
【図4】図4は、実施例5でのカーボンナノチューブ担持無機材料調製の概略説明図である。
【図5】図5は、実施例8におけるガス吸着能力測定の概略説明図である。
【符号の説明】
13:カーボンナノチューブ含有アクリル酸水溶液
14;23:γ線照射
22:カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸含浸不織布
31:カーボンナノチューブ含有ポリアクリル酸担持不織布
41:セリア板(無機基材)
42:カーボンナノチューブ含有アクリル酸溶液
Claims (6)
- ナノ炭素材料と、重合性材料との共存下で、放射線照射を行うことを特徴とするナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法。
- ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させて、放射線照射を行い、次いで、放射線照射後のナノ炭素材料分散液又は懸濁液に重合性材料を添加して、放射線照射を行う請求項1に記載のナノ炭素材料含有高分子化合物材料の製造方法。
- ナノ炭素材料と、重合性材料との共存下で、放射線照射を行い、未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物を形成させ
得られたナノ炭素材料含有組成物を基材に担持又は付着させ、
次いで、放射線照射により基材に担持又は付着させたナノ炭素材料含有組成物をさらに重合させて、ナノ炭素材料含有高分子化合物材料を基材上に形成させることを特徴とするナノ炭素材料含有成形体の製造方法。 - さらに、放射線照射により基材に担持又は付着させたナノ炭素材料含有組成物をさらに重合させることにより形成させたナノ炭素材料含有高分子化合物材料担持基材を熱処理する
ことを特徴とする請求項3に記載のナノ炭素材料含有成形体の製造方法。 - ナノ炭素材料を溶媒に分散又は懸濁させ、放射線照射を行うことを特徴とするナノ炭素材料が高度に分散してなるナノ炭素材料分散液の製造方法。
- ナノ炭素材料と、重合性材料との共存下で、放射線照射を行うことにより形成される未重合の重合性単量体を含むナノ炭素材料含有組成物。
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2002
- 2002-06-19 JP JP2002178067A patent/JP2004018754A/ja active Pending
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