JP2004018350A - カーボンナノチューブの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒を必要とせず、アーク放電法より低温状態で、欠陥の少ないカーボンナノチューブを大量合成し、製造効率の良いカーボンナノチューブの製造方法を提供すること。
【解決手段】反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間にプラズマを発生させることによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、異常グロー放電によって、プラズマを発生させ、陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間にプラズマを発生させることによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、異常グロー放電によって、プラズマを発生させ、陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、異常グロー放電によるプラズマでカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、中空構造をもつ炭素物質であるフラーレンのうち、チューブ状フラーレンであるカーボンナノチューブは、六角形の炭素原子が螺旋状に連なって中空の細い筒を形成しており、直径1〜数10nm、長さ数μmの炭素繊維である。カーボンナノチューブには、その構造により単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブがある。また、カーボンナノチューブは特異な電気化学的特性、機械的特性、ガス吸蔵特性、および光学的特性により今後の幅広い応用が期待されている材料である。
【0003】
カーボンナノチューブの合成法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、および化学気相成長法(CVD法)が知られている。アーク放電法においては、欠陥の少ない高品質なカーボンナノチューブが得られるが、大量合成するための手法が確立されていない合成法である。また、レーザー蒸発法は比較的純度の高い単層カーボンナノチューブが得られるが、大量合成が難しい合成法である。また、CVD法は得られるカーボンナノチューブに欠陥が多いが、大量合成に向いている合成法である。このように、各合成法において一長一短があると言われている。
【0004】
従来より知られている、アーク放電法によるカーボンナノチューブの合成法は、高温状態の反応ガスの雰囲気中において炭素棒間に電圧20V,電流50A程度のアーク放電を行うことによって、陰極電極のプラズマが発生した面にカーボンナノチューブが合成されるという方法である。また、アーク放電法と同装置を使用して、アーク放電より放電電流の低いグロー放電において、触媒を用いることによりカーボンナノチューブを合成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アーク放電法においては、放電によって発生するプラズマの面積が狭いので、合成されるカーボンナノチューブの量が少ないという問題があった。また、反応ガスを高温状態にしなければならず、合成後の冷却作業が困難であるという問題があった。また、グロー放電を用いた合成においては、放電電流が低いためプラズマ密度が低く、カーボンナノチューブの合成が遅いという問題があった。また、触媒が必要となるので合成されたカーボンナノチューブ中に触媒が残留してしまい、純度の高いカーボンナノチューブを得るためには触媒の除去作業が必要になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであって、触媒を必要とせず、アーク放電法より低温状態で、欠陥の少ないカーボンナノチューブを大量合成し、製造効率の良いカーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、異常グロー放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【0008】
この発明に係るカーボンナノチューブの製造方法によれば、陽極部と陰極部との間に異常グロー放電によってプラズマが発生させられるので、アーク放電よりも陰極部の広い面積にプラズマが発生させられる。つまり、陰極部のプラズマが発生する面においてカーボンナノチューブが合成されるので、カーボンナノチューブが合成される面積が広いということは、カーボンナノチューブを大量に合成することができるということである。また、アーク放電よりも低温度の反応ガスにおいてカーボンナノチューブが合成されるので、合成後の冷却作業が容易に行われる。
【0009】
また、異常グロー放電はグロー放電よりも放電電流が高くプラズマが高密度で発生するので、カーボンナノチューブの合成速度が速くなると共に、触媒を用いずにカーボンナノチューブが合成される。これにより、触媒を用いずに低温度の反応ガスにおいて、大量にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、放電電流が0.5から50Aの電流値、かつ印加電圧が350V以上の電圧値の放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【0011】
この発明に係るカーボンナノチューブの製造方法によれば、プラズマを発生させる放電の放電電流を0.5から50A、より好ましくは1から10Aとし、かつ印加電圧を350V以上とするので、アーク放電よりも陰極部の広い面積にプラズマが発生すると共に、グロー放電よりも高密度なプラズマが発生する。これにより、大量にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
まず、図1を用いて異常グロー放電について説明する。反応室内での陽極部と陰極部との間に直流の電圧を印加した場合の電流と電圧との関係は、概念的に図中の曲線のように示される。横軸に示された電流値を制御することにより、縦軸に示された電圧値が変化すると共に、各電流値および電圧値において異なった状態で放電が行われる。放電状態の領域はD〜Hの破線によって区分され、破線Fから破線Hまでの領域が異常グロー放電領域とされている。
【0013】
異常グロー放電領域において、陰極部全面から放電が行われ、放電電流の増加に伴い電流密度が増加すると共に、放電電圧が上昇することになる。たとえば、異常グロー放電領域において、放電電圧は350V以上で放電電流は0.5〜50A、より好ましくは1〜10Aとされ、反応ガス温度は1000〜10000℃とされている。
【0014】
また、破線Eから破線Fまでの領域は正規グロー放電領域とされ、放電電流を増加しても放電電圧が一定に保たれる領域で、放電面積が広く電流密度が低い放電状態である。たとえば、正規グロー放電領域において、放電電圧は100V〜500Vで放電電流は0.5A以下とされ、反応ガス温度は室温程度とされている。
【0015】
また、破線H以降の領域はアーク放電領域とされ、放電電流を増加することにより陰極部の温度が上昇することで大量の熱電子が放出され、これにより放電電圧が低下する領域で、放電面積が狭く電流密度が高い放電状態である。たとえば、アーク放電領域において、放電電圧は10V〜100Vで放電電流は50A以上とされ、反応ガス温度は3000℃〜20000℃とされている。
【0016】
上述したように、異常グロー放電においては、正規グロー放電よりも電流密度が高いので高密度なプラズマが発生し、アーク放電よりも陰極部の広範囲でプラズマが発生する。つまり、異常グロー放電は高密度なプラズマを広範囲で発生させるということである。
【0017】
つぎに、図2を用いて本実施の形態のカーボンナノチューブの製造方法が用いられるカーボンナノチューブ製造装置について説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1は、反応室2の内部に設置された陽極部3と陰極部4との間に電圧を印加する電源部5を備えて構成されている。反応室2には、反応ガスを導入するための反応ガス導入部6と、内部のガスを排気するための排気部7とが設けられている。反応室2の内部は、反応ガス導入部6から水素、メタンなどの反応ガスが導入されることにより反応ガスの雰囲気とされる。また、排気部7には真空ポンプ(図示せず)などの排気手段が接続されており、反応室2の内部を減圧雰囲気とすることが可能となっている。陽極部3は平板状に構成されており、電源部5の正極側に接続されている。
【0018】
陰極部4は、電源部5の負極側に接続される端子部4aと、端子部4aに隣接する棒状の放電部4bとを備えて構成されており、その長手方向が陽極部3の電極面に対してほぼ垂直方向に一致するように配置されている。また、放電部4bは、高融点金属であるW(タングステン)、Ta(タンタル)、およびMo(モリブデン)などにより形成されている。
【0019】
上述したようなカーボンナノチューブ製造装置1を用いてカーボンナノチューブを製造する方法について説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1の反応室2の内部を反応ガスの雰囲気とし、0.5〜500Torrの圧力とし、異常グロー放電領域である0.5〜50A、より好ましくは1〜10Aの放電電流とする。このような条件で放電を開始すると、イオンの衝突により電極温度が1800℃以上に上昇し、電極から熱電子が放出される。そして、放出された熱電子が反応ガスに衝突してプラズマが形成され、カーボンナノチューブが合成される。
【0020】
上述したように、異常グロー放電で放電を行うことで、陰極部4を中心として高密度なプラズマを発生させることができる。このように、高密度なプラズマが発生するので、正規グロー放電によるカーボンナノチューブの合成方法よりカーボンナノチューブの合成速度を速くすることができると共に、触媒を必要とせずにカーボンナノチューブを合成することができる。
【0021】
また、陰極部4のほぼ全面と陽極部3のほぼ全面との間においてプラズマが発生するので、カーボンナノチューブを陰極部4のほぼ全面で合成することができ、アーク放電によるカーボンナノチューブの合成方法より広範囲でカーボンナノチューブを合成することがでる。また、アーク放電より低温の反応ガスでカーボンナノチューブを合成することができるので、合成後の冷却を容易に行うことができる。また、アーク放電より低い放電電流で放電を行うので、アーク放電に用いられる装置構成と比較して小規模な装置構成とすることができる。
【0022】
これより、異常グロー放電を用いてカーボンナノチューブを合成する製造方法は、合成速度が速く、かつ広範囲でカーボンナノチューブを合成することができるので、大量合成に適した製造方法であることが分かる。また、このように製造効率を向上させることによって、カーボンナノチューブの製造コストを低減させることができる。
【0023】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1の反応室2の内部に導入される反応ガスとして水素とメタンの混合ガスを用い、ガスの供給量は水素を300sccm、メタンを9sccmとした。また、反応室2の内部の圧力は60Torr(約8.0kPa)とした。また、陰極部4は直径12mm、長さ100mmのTaよりなる棒状の放電部4bと、放電部4bの基端側に設けられた電源部5に接続するための端子部4aとを備えて構成されている。また、Ni,CO,Al2O3などの触媒を用いずに合成を行った。
【0024】
まず、反応室2の内部を上記反応ガスの雰囲気とした後、電源部5により陽極部3と陰極部4との間に直流の電圧を印加して、放電電流が5Aで一定となるように放電電圧を制御した。たとえば、電圧印加開始時に1000Vで電圧を印加することにより放電が開始され、放電により陰極部4の温度が上昇し1500℃以上となると、熱電子放出特性が上昇することにより、放電電流が流れやすくなる。このとき、電流一定制御を行っているので放電電圧が低下され、さらに放電によって陰極部4の温度が2000℃まで上昇すると、放電電圧は400Vまで低下し、正規グロー放電状態となる。
【0025】
さらに放電を続けると、放電電流の密度が上昇するに伴い放電電圧が上昇し正規グロー放電状態から異常グロー放電状態となり、陰極部4の温度が2300℃で放電電圧が700Vとなった。このとき、反応ガス温度は3000℃とされ、陰極部4のほぼ全面において放電によるプラズマが発生している状態となった。この状態で、陰極部4のほぼ全面においてカーボンナノチューブが合成された。
【0026】
図3に、合成されたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡(TEM)による像を示す。図において、右下に示されている目盛りが20nmで、カーボンナノチューブが棒状に映し出されており、他の炭素同位体が塊状に映し出されている。図より、合成されたカーボンナノチューブに欠陥が少ないことが分かる。
【0027】
なお、本実施の形態において、陰極部4の放電部4bはW、Ta、およびMoなどを用いる構成とされているが、この構成に限らず陽極部3に高融点材料を用い、陰極部4のほぼ全面においてプラズマが発生する構成であればよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、カーボンナノチューブを合成させるためのプラズマを異常グロー放電によって発生させるので、陰極部の広範囲にわたって高密度のプラズマを発生させることができ、欠陥の少ないカーボンナノチューブを大量に合成することができる。また、アーク放電よりも低温度の反応ガスにおいてカーボンナノチューブが合成されるので、冷却作業を容易に行うことができる。また、触媒を用いずにカーボンナノチューブを合成することができるので、合成後の触媒を除去する作業を不要とすることができる。これにより、カーボンナノチューブの製造効率を向上させることができる。
【0029】
また、請求項2に係る発明によれば、プラズマを発生させる放電の放電電流が0.5から50Aの電流値で、印加電圧が500V以上の電圧値であるので、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における異常グロー放電領域を説明する電圧―電流の関係図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるカーボンナノチューブ製造装置の概略構成図である。
【図3】カーボンナノチューブのTEM像である。
【符号の説明】
1 カーボンナノチューブ製造装置
2 反応室
3 陽極部
4 陰極部
【発明の属する技術分野】
この発明は、異常グロー放電によるプラズマでカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、中空構造をもつ炭素物質であるフラーレンのうち、チューブ状フラーレンであるカーボンナノチューブは、六角形の炭素原子が螺旋状に連なって中空の細い筒を形成しており、直径1〜数10nm、長さ数μmの炭素繊維である。カーボンナノチューブには、その構造により単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブがある。また、カーボンナノチューブは特異な電気化学的特性、機械的特性、ガス吸蔵特性、および光学的特性により今後の幅広い応用が期待されている材料である。
【0003】
カーボンナノチューブの合成法としては、アーク放電法、レーザー蒸発法、および化学気相成長法(CVD法)が知られている。アーク放電法においては、欠陥の少ない高品質なカーボンナノチューブが得られるが、大量合成するための手法が確立されていない合成法である。また、レーザー蒸発法は比較的純度の高い単層カーボンナノチューブが得られるが、大量合成が難しい合成法である。また、CVD法は得られるカーボンナノチューブに欠陥が多いが、大量合成に向いている合成法である。このように、各合成法において一長一短があると言われている。
【0004】
従来より知られている、アーク放電法によるカーボンナノチューブの合成法は、高温状態の反応ガスの雰囲気中において炭素棒間に電圧20V,電流50A程度のアーク放電を行うことによって、陰極電極のプラズマが発生した面にカーボンナノチューブが合成されるという方法である。また、アーク放電法と同装置を使用して、アーク放電より放電電流の低いグロー放電において、触媒を用いることによりカーボンナノチューブを合成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記アーク放電法においては、放電によって発生するプラズマの面積が狭いので、合成されるカーボンナノチューブの量が少ないという問題があった。また、反応ガスを高温状態にしなければならず、合成後の冷却作業が困難であるという問題があった。また、グロー放電を用いた合成においては、放電電流が低いためプラズマ密度が低く、カーボンナノチューブの合成が遅いという問題があった。また、触媒が必要となるので合成されたカーボンナノチューブ中に触媒が残留してしまい、純度の高いカーボンナノチューブを得るためには触媒の除去作業が必要になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたものであって、触媒を必要とせず、アーク放電法より低温状態で、欠陥の少ないカーボンナノチューブを大量合成し、製造効率の良いカーボンナノチューブの製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に係る発明は、反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、異常グロー放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【0008】
この発明に係るカーボンナノチューブの製造方法によれば、陽極部と陰極部との間に異常グロー放電によってプラズマが発生させられるので、アーク放電よりも陰極部の広い面積にプラズマが発生させられる。つまり、陰極部のプラズマが発生する面においてカーボンナノチューブが合成されるので、カーボンナノチューブが合成される面積が広いということは、カーボンナノチューブを大量に合成することができるということである。また、アーク放電よりも低温度の反応ガスにおいてカーボンナノチューブが合成されるので、合成後の冷却作業が容易に行われる。
【0009】
また、異常グロー放電はグロー放電よりも放電電流が高くプラズマが高密度で発生するので、カーボンナノチューブの合成速度が速くなると共に、触媒を用いずにカーボンナノチューブが合成される。これにより、触媒を用いずに低温度の反応ガスにおいて、大量にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、放電電流が0.5から50Aの電流値、かつ印加電圧が350V以上の電圧値の放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とする。
【0011】
この発明に係るカーボンナノチューブの製造方法によれば、プラズマを発生させる放電の放電電流を0.5から50A、より好ましくは1から10Aとし、かつ印加電圧を350V以上とするので、アーク放電よりも陰極部の広い面積にプラズマが発生すると共に、グロー放電よりも高密度なプラズマが発生する。これにより、大量にカーボンナノチューブを製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
まず、図1を用いて異常グロー放電について説明する。反応室内での陽極部と陰極部との間に直流の電圧を印加した場合の電流と電圧との関係は、概念的に図中の曲線のように示される。横軸に示された電流値を制御することにより、縦軸に示された電圧値が変化すると共に、各電流値および電圧値において異なった状態で放電が行われる。放電状態の領域はD〜Hの破線によって区分され、破線Fから破線Hまでの領域が異常グロー放電領域とされている。
【0013】
異常グロー放電領域において、陰極部全面から放電が行われ、放電電流の増加に伴い電流密度が増加すると共に、放電電圧が上昇することになる。たとえば、異常グロー放電領域において、放電電圧は350V以上で放電電流は0.5〜50A、より好ましくは1〜10Aとされ、反応ガス温度は1000〜10000℃とされている。
【0014】
また、破線Eから破線Fまでの領域は正規グロー放電領域とされ、放電電流を増加しても放電電圧が一定に保たれる領域で、放電面積が広く電流密度が低い放電状態である。たとえば、正規グロー放電領域において、放電電圧は100V〜500Vで放電電流は0.5A以下とされ、反応ガス温度は室温程度とされている。
【0015】
また、破線H以降の領域はアーク放電領域とされ、放電電流を増加することにより陰極部の温度が上昇することで大量の熱電子が放出され、これにより放電電圧が低下する領域で、放電面積が狭く電流密度が高い放電状態である。たとえば、アーク放電領域において、放電電圧は10V〜100Vで放電電流は50A以上とされ、反応ガス温度は3000℃〜20000℃とされている。
【0016】
上述したように、異常グロー放電においては、正規グロー放電よりも電流密度が高いので高密度なプラズマが発生し、アーク放電よりも陰極部の広範囲でプラズマが発生する。つまり、異常グロー放電は高密度なプラズマを広範囲で発生させるということである。
【0017】
つぎに、図2を用いて本実施の形態のカーボンナノチューブの製造方法が用いられるカーボンナノチューブ製造装置について説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1は、反応室2の内部に設置された陽極部3と陰極部4との間に電圧を印加する電源部5を備えて構成されている。反応室2には、反応ガスを導入するための反応ガス導入部6と、内部のガスを排気するための排気部7とが設けられている。反応室2の内部は、反応ガス導入部6から水素、メタンなどの反応ガスが導入されることにより反応ガスの雰囲気とされる。また、排気部7には真空ポンプ(図示せず)などの排気手段が接続されており、反応室2の内部を減圧雰囲気とすることが可能となっている。陽極部3は平板状に構成されており、電源部5の正極側に接続されている。
【0018】
陰極部4は、電源部5の負極側に接続される端子部4aと、端子部4aに隣接する棒状の放電部4bとを備えて構成されており、その長手方向が陽極部3の電極面に対してほぼ垂直方向に一致するように配置されている。また、放電部4bは、高融点金属であるW(タングステン)、Ta(タンタル)、およびMo(モリブデン)などにより形成されている。
【0019】
上述したようなカーボンナノチューブ製造装置1を用いてカーボンナノチューブを製造する方法について説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1の反応室2の内部を反応ガスの雰囲気とし、0.5〜500Torrの圧力とし、異常グロー放電領域である0.5〜50A、より好ましくは1〜10Aの放電電流とする。このような条件で放電を開始すると、イオンの衝突により電極温度が1800℃以上に上昇し、電極から熱電子が放出される。そして、放出された熱電子が反応ガスに衝突してプラズマが形成され、カーボンナノチューブが合成される。
【0020】
上述したように、異常グロー放電で放電を行うことで、陰極部4を中心として高密度なプラズマを発生させることができる。このように、高密度なプラズマが発生するので、正規グロー放電によるカーボンナノチューブの合成方法よりカーボンナノチューブの合成速度を速くすることができると共に、触媒を必要とせずにカーボンナノチューブを合成することができる。
【0021】
また、陰極部4のほぼ全面と陽極部3のほぼ全面との間においてプラズマが発生するので、カーボンナノチューブを陰極部4のほぼ全面で合成することができ、アーク放電によるカーボンナノチューブの合成方法より広範囲でカーボンナノチューブを合成することがでる。また、アーク放電より低温の反応ガスでカーボンナノチューブを合成することができるので、合成後の冷却を容易に行うことができる。また、アーク放電より低い放電電流で放電を行うので、アーク放電に用いられる装置構成と比較して小規模な装置構成とすることができる。
【0022】
これより、異常グロー放電を用いてカーボンナノチューブを合成する製造方法は、合成速度が速く、かつ広範囲でカーボンナノチューブを合成することができるので、大量合成に適した製造方法であることが分かる。また、このように製造効率を向上させることによって、カーボンナノチューブの製造コストを低減させることができる。
【0023】
【実施例】
つぎに、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
カーボンナノチューブ製造装置1の反応室2の内部に導入される反応ガスとして水素とメタンの混合ガスを用い、ガスの供給量は水素を300sccm、メタンを9sccmとした。また、反応室2の内部の圧力は60Torr(約8.0kPa)とした。また、陰極部4は直径12mm、長さ100mmのTaよりなる棒状の放電部4bと、放電部4bの基端側に設けられた電源部5に接続するための端子部4aとを備えて構成されている。また、Ni,CO,Al2O3などの触媒を用いずに合成を行った。
【0024】
まず、反応室2の内部を上記反応ガスの雰囲気とした後、電源部5により陽極部3と陰極部4との間に直流の電圧を印加して、放電電流が5Aで一定となるように放電電圧を制御した。たとえば、電圧印加開始時に1000Vで電圧を印加することにより放電が開始され、放電により陰極部4の温度が上昇し1500℃以上となると、熱電子放出特性が上昇することにより、放電電流が流れやすくなる。このとき、電流一定制御を行っているので放電電圧が低下され、さらに放電によって陰極部4の温度が2000℃まで上昇すると、放電電圧は400Vまで低下し、正規グロー放電状態となる。
【0025】
さらに放電を続けると、放電電流の密度が上昇するに伴い放電電圧が上昇し正規グロー放電状態から異常グロー放電状態となり、陰極部4の温度が2300℃で放電電圧が700Vとなった。このとき、反応ガス温度は3000℃とされ、陰極部4のほぼ全面において放電によるプラズマが発生している状態となった。この状態で、陰極部4のほぼ全面においてカーボンナノチューブが合成された。
【0026】
図3に、合成されたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡(TEM)による像を示す。図において、右下に示されている目盛りが20nmで、カーボンナノチューブが棒状に映し出されており、他の炭素同位体が塊状に映し出されている。図より、合成されたカーボンナノチューブに欠陥が少ないことが分かる。
【0027】
なお、本実施の形態において、陰極部4の放電部4bはW、Ta、およびMoなどを用いる構成とされているが、この構成に限らず陽極部3に高融点材料を用い、陰極部4のほぼ全面においてプラズマが発生する構成であればよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る発明によれば、カーボンナノチューブを合成させるためのプラズマを異常グロー放電によって発生させるので、陰極部の広範囲にわたって高密度のプラズマを発生させることができ、欠陥の少ないカーボンナノチューブを大量に合成することができる。また、アーク放電よりも低温度の反応ガスにおいてカーボンナノチューブが合成されるので、冷却作業を容易に行うことができる。また、触媒を用いずにカーボンナノチューブを合成することができるので、合成後の触媒を除去する作業を不要とすることができる。これにより、カーボンナノチューブの製造効率を向上させることができる。
【0029】
また、請求項2に係る発明によれば、プラズマを発生させる放電の放電電流が0.5から50Aの電流値で、印加電圧が500V以上の電圧値であるので、請求項1と同じ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における異常グロー放電領域を説明する電圧―電流の関係図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるカーボンナノチューブ製造装置の概略構成図である。
【図3】カーボンナノチューブのTEM像である。
【符号の説明】
1 カーボンナノチューブ製造装置
2 反応室
3 陽極部
4 陰極部
Claims (2)
- 反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、
異常グロー放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。 - 反応ガスの導入される反応室に配置された陽極部と陰極部との間に発生したプラズマによってカーボンナノチューブを合成させるカーボンナノチューブの製造方法であって、
放電電流が0.5から50Aの電流値、かつ印加電圧が350V以上の電圧値の放電でプラズマを発生させることによって、前記陰極部にカーボンナノチューブを合成させることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。
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2002
- 2002-06-19 JP JP2002179021A patent/JP2004018350A/ja active Pending
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