JP2004014406A - 電子源装置とその製造方法および表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子放出能力が高く、安価で寿命の長い電子源装置を提供する。
【解決手段】本発明の電子源装置は、垂直方向に配置された多数の微細孔(ナノホール)を有する多孔質絶縁体層(例えば多孔質アルミナ層)と、そのナノホールの開口部側の面に配設された第1の導電体層と、ナノホール内に形成された導体または半導体から成る導通層と、第2の導電体層とを備え、ナノホールの底部側端部と第2の導電体層とが誘電体から成るバリア層により隔てられている。そして、第1の導電体層と第2の導電体層との間に電圧が印加され、この電圧により第2の導電体層からバリア層に向う方向と反対方向に電子が放出されるように構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明の電子源装置は、垂直方向に配置された多数の微細孔(ナノホール)を有する多孔質絶縁体層(例えば多孔質アルミナ層)と、そのナノホールの開口部側の面に配設された第1の導電体層と、ナノホール内に形成された導体または半導体から成る導通層と、第2の導電体層とを備え、ナノホールの底部側端部と第2の導電体層とが誘電体から成るバリア層により隔てられている。そして、第1の導電体層と第2の導電体層との間に電圧が印加され、この電圧により第2の導電体層からバリア層に向う方向と反対方向に電子が放出されるように構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子源装置とその製造方法、および電子源装置を備えた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面型の画像表示装置として、フィールドエミッションディスプレイ(以下、FEDと示す。)の開発が進められている。このFEDは、所定の隙間をおいて対向配置されたフェースプレートとリアプレートとを有し、フェースプレートの内面には3色の蛍光体層が形成され、リアプレートの内面には、これらの蛍光体を励起する電子を放出する電子放出源が設けられている。
【0003】
従来、FEDの電子放出源として、スピンドル型と称する構造が提案されている。この電子放出源は、Moから形成された電子放出部の先鋭部に電界を集中させ、蛍光体層との間にかけた電圧により電子放出部から電子を放出させて蛍光体を発光させる構造を有している。この方式により、薄型の平面表示装置が実現される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した電子放出源は非常に精細な構造を有し、均一にかつ簡便に多数形成することが極めて難しかった。したがって、このような電子放出源を用いて大型の平面表示装置を作ることが困難であるとともに、小型画面の平面表示装置であっても製造コストが高くなってしまうという問題があった。また、電子放出源の僅かな形状の相違により電子放出能力に違いが生じるため、安定した画像を得ることが難しかった。
【0005】
最近、アルミニウム(Al)の陽極酸化により得られる、直径が数nm〜数100nmの極めて微細な細孔(ナノホール)に、カーボンナノチューブ(CN)を形成して電子放出源とした構造が提案されている(Displays21(2000)P99−104参照)。
【0006】
しかしながら、このような構造の電子放出源においては、CNが高価格であるばかりでなく、管内の真空度が低いと管内ガスがCNを汚染するため寿命が短くなるなど、実用化面で多くの問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、電子放出能力が高く、安価で低真空度でも長寿命の電子源装置とその製造方法、およびそのような電子源装置を備え、発光効率が高く安価で信頼性の高い表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子源装置は、少なくとも一方の主面側に開口部を持つように垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層の前記微細孔の開口部側の主面に配設された第1の導電体層と、前記微細孔の底部側端部を閉塞するように形成された、誘電体から成るバリア層と、前記多孔質絶縁体層の前記微細孔内に形成された、前記第1の導電体層と電気的に接する導体または半導体層と、前記バリア層の上に形成された第2の導電体層とを備え、前記微細孔の底部側端部と前記第2の導電体層とが、前記バリア層により隔てられ、かつ前記第1の導電体層と前記第2の導電体層との間に印加される電圧により、前記第2の導電体層から前記バリア層に向う方向と反対方向に電子が放出されることを特徴とする。
【0009】
本発明の電子源装置においては、微細孔を有する多孔質絶縁体層が、多孔質アルミナ層であることができる。そして、多孔質アルミナ層としては、アルミニウムを主成分とする層の陽極酸化により得られた酸化アルミニウム層が好適に用いられる。また、本発明の電子源装置においては、バリア層として、多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と同じ絶縁体から成る層を有することができる。また、バリア層として、多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と別の誘電体から成る層を有することができる。さらに、第2の導電体層を間に挟んで第1の導電体層と反対側に、第3の電極を設けることができる。
【0010】
本発明の電子源装置の製造方法は、アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化することにより、一方の主面に開口部を有し該主面に対して垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質アルミナ層を形成する陽極酸化工程と、前記多孔質アルミナ層を前記導電性基板から分離する工程と、分離された前記多孔質アルミナ層における前記微細孔の開口部側の主面に、第1の導電体層を形成する工程と、前記多孔質アルミナ層の前記微細孔内に、一端が前記第1の導電体層に電気的に接し、他端が前記微細孔の底端部に達する導体または半導体層を形成する工程と、前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、直接あるいは誘電体層を介して第2の導電体層を形成する工程とを備え、前記陽極酸化工程において、前記微細孔の底端部と前記導電性基板との間に、前記アルミナから成るバリア層を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の電子源装置の製造方法においては、多孔質アルミナ層の微細孔の底端部側の主面に、陽極酸化により形成される誘電体とは別の誘電体から成る層を形成する工程と、この誘電体層の上に第2の導電体層を形成する工程とを備えることができる。
【0012】
また、本発明の電子源装置の別の製造方法は、基板上にアルミニウムを主成分とする導電層を形成する工程と、前記導電層の前記基板側を導電層のままで残しながら陽極酸化することにより、該基板上に残した前記導電層である第1の導電体層、および該第1の導電体層上に主面に開口部を有し垂直方向に配置された微細孔を有する多孔質アルミナ層を同時に形成する陽極酸化工程と、前記多孔質アルミナ層において前記微細孔の底端部側のアルミナ層を除去し、前記微細孔を前記第1の導電体層に接続する工程と、前記多孔質アルミナ層の微細孔内に、一端が前記第1の導電体層と電気的に接続し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する埋め込み層工程と、前記微細孔内に導体または半導体の埋め込み層が形成された前記アルミナ層の表面に、前記微細孔の開口部を閉塞するように誘電体からなるバリア層を形成する工程と、前記バリア層の表面に第2の導電体層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の表示装置は、互いに対向して配置された第1の基板および第2の基板と、前記第1の基板の内面に設けられた蛍光体層と、前記第2の基板の内面側に設けられ、前記蛍光体層を励起する電子を放出する電子源とを備えた表示装置であり、前記電子源は、前記した電子源装置であることができる。
【0014】
本発明の電子源装置によれば、多孔質絶縁体層の有する微細孔の内部に、第1の導電体層と電気的に接するように導体または半導体層が形成されるとともに、この微細孔の底部側端部と第2の導電層体層との間に、誘電体によるバリア層が設けられているので、第1の導電体層を基準電極とするとともに第2の導電体層をゲート電極とし、これらの電極間に電圧(正電圧)を印加することにより、バリア層に電界が集中し、電子が放出される。電子の移動方向は、第1の導電体層から第2の導電体層に向う方向であり、第2の導電体層から外部の例えば蛍光体層に向けて電子が放出される。
【0015】
こうして、均一で電子の放出能力が高い電子源装置が得られる。また、電子放出部と雰囲気ガスとの直接接触が回避されているので、電子放出部の汚染による劣化がほとんど生じず、長寿命が達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明の第1の実施形態である電子源装置は、図1に示すように、主面に対してほぼ垂直方向に延びた、直径が数nm〜数100nmの多数の微細孔(ナノホール)1aを含む多孔質絶縁体層1を有する。多数のナノホール1aは、多孔質絶縁体層1の一方の主面側、例えば下面側に開口部を有するが、上下両面側に開口部を有し、透孔(貫通孔)となっていても良い。
【0018】
ここで、多孔質絶縁体としては、多孔質アルミナ(酸化アルミニウム)を挙げることができる。アルミニウムを主成分とする層を陽極酸化することにより、多数のナノホールが微小間隔をおいて規則的に配列された多孔質アルミナ層を得ることができる。多孔質アルミナ層は、陽極酸化以外の方法でも形成することができる。さらに、多孔質絶縁体層としては、チタン(Ti)層の陽極酸化により形成された、多数のナノホールを有する酸化チタン層を用いることも可能である。アルミニウムやチタンの他に、タンタル、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タングステンなどを、例えば陽極酸化することにより形成された酸化層を挙げることもできる。
【0019】
このような多孔質絶縁体層1のナノホール1aの開口部側である下面には、基準電極となる第1の導電体層2が配設されている。第1の導電体層2を構成する導電体としては、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどの金属やカーボンなどを挙げることができる。
【0020】
多孔質絶縁体層1のナノホール1a内には、導体または半導体から成る導通層3が形成されている。この導体または半導体層3は、ナノホール1aの開口部で第1の導電体層2と電気的に接し、かつ後述するバリア層までナノホール1a内の導通を確保することができるものであれば良い。ナノホール1aの内壁面に付着・形成されていても、あるいはナノホール1a内に埋め込み・充填されていても良い。
【0021】
この導通層3を構成する材料としては、ある程度の導電性を有するものであれば、種類を問わず使用することができる。例えば、カーボン、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどの導電性材料を使用することができる。また、Ni酸化物、ATO、ITOなどの半導体材料も使用することができる。これらの導通層3の形成は、例えば、電気化学的方法やCVD法あるいは蒸着法などにより行うことができる。
【0022】
多孔質絶縁体層1のナノホール1aの開口部と反対側の面である上面には、ナノホール1aの底部側の端部を閉塞するように、誘電体から成るバリア層4が形成されている。
【0023】
バリア層4を構成する誘電体としては、特に種類は限定されないが、誘電率が高く耐電圧特性が良好なものが好ましい。例えば、酸化タンタル、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ等が挙げられる。また、前記したナノホール1aを有する絶縁体と同一の材料を使用しても良い。例えば、アルミニウムの陽極酸化により形成されたアルミナ層を、バリア層4として使用することができる。
【0024】
さらに、図2に示すように、2層以上の誘電体層を積層することにより、バリア層4を形成しても良い。例えば、アルミニウムの陽極酸化により形成されたアルミナ層4aの上に、1層あるいは2層以上の別の誘電体層4bを積層して形成し、多層構造のバリア層4を形成することができる。
【0025】
このようなバリア層4の上に、ゲート電極となる第2の導電体層5が形成されている。第2の導電体層5を構成する導電体としては、前記した第1の導電体層1を構成する導電体と同様に、カーボン、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどを挙げることができる。第2の導電体層5の形成は、蒸着、スパッタリング、電界析出など、種々の方法で行うことが可能である。例えば、Au層の形成は、蒸着、スパッタリングなどの方法で行うことができる。また、Al層は蒸着法により、Ag層は電界析出法により、それぞれ形成することができる。
【0026】
この電子源装置によれば、基準電極である第1の導電体層2とゲート電極である第2の導電体層5との間に電圧(正電圧)を印加することにより、この電圧が、第1の導電体層2と電気的に接続された導通層3を介して第2の導電体層5との間に印加され、誘電体から成るバリア層4に電界が集中する。そして、この電界集中の結果、電子の放出がなされる。そして、放出された電子は、第2の導電体層5を突きぬけ、この層から外部に向けて発せられる。
【0027】
このような構造を有する電子源装置において、バリア層4の厚さは、2nm〜50nmとすることが望ましい。バリア層4の厚さが2nm未満では、電子の放出(エミッション)が生じにくい。また、バリア層4の厚さが50nmを超えても、安定した良好なエミッションが生じにくくなる。
【0028】
ナノホール1aの深さに相当する多孔質絶縁体層1の厚さは、50nm〜30μmとすることが望ましい。多孔質絶縁体層1の厚さが50nm未満では、エミッションは良好であるが、耐電圧特性が悪化して好ましくない。また、多孔質絶縁体層1の厚さが30μmを超えた場合には、ナノホール1aの底端部に達する導通層3を形成し、バリア層4までの導通を確保することが困難になる。したがって、バリア層4に電界を集中させることが難しく、良好なエミッションを得ることが難しい。
【0029】
ナノホール1aの孔径は、2nm〜1000nmとすることが望ましく、より好ましくは10〜500nmとする。孔径が大きすぎると電界集中が起こりにくくなり、電子放出特性が低下する。反対に孔径が小さすぎると、ナノホール1aの形成が難しくなる。多孔質絶縁体層1の厚さすなわちナノホール1aの深さとナノホール1aの孔径は、ともにバリア層4にかかる電界強度に影響を及ぼす。
【0030】
ナノホール1a内に形成される導体または半導体から成る導通層3の厚さは、第1の導電体層2からバリア層4までの導通を確保することができれば、特に限定されない。
【0031】
第1の導電体層の厚さは、導通を確保することができれば特に限定されるものではないが、安定した良好な導通を確保するには10nm以上とすることが望ましい。
【0032】
第2の導電体層5の厚さは、5nm〜300nmとすることが望ましい。第2の導電層5の厚さが5nm未満では、安定した良好な導通を確保することが難しい。反対に、300nmを超えると、電子が突きぬけて放出されにくくなり、好ましくない。
【0033】
さらに、本発明の電子源装置では、導電性金属薄膜15と導電性基板11との間に印加された電圧により、バリア層16に電界を集中し電子を放出させるために、陽極である導電性金属薄膜15と陰極である導電性基板11との間の抵抗値を、5Ω〜2MΩの範囲とすることが望ましい。
【0034】
本発明の第1の実施形態の電子源装置は、例えば以下に示す方法で製造することができる。
【0035】
まず、アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化する。陽極酸化により、導電性基板本体の上に、ナノホールを有する所定厚の多孔質アルミナ層が形成される。
【0036】
次に、こうして形成された多孔質アルミナ層を、酸化されずに残った導電性基板本体から分離する。分離には、HgCl2の飽和水溶液中に浸漬することにより、多孔質アルミナ層とアルミニウム基板との境界に、アルミニウムと水銀とのアマルガムを形成するなどの方法を採ることができる。なお、この分離工程は、ナノホール内へのNi等の埋め込み層形成後に行うこともできる。
【0037】
次いで、分離された多孔質アルミナ層のナノホール内に、Alやカーボン等の導体から成る導通層を形成する。Ni等からなる導通層(埋め込み層)の形成は、電解析出法により行うこともできる。
【0038】
また、多孔質アルミナ層において、ナノホールの開口部側の面に、第1の導電体層を形成する。導通層の形成と第1の導電体層の形成は、同じ導電性材料を用いて蒸着を行うことにより、同一工程で行うことも可能である。さらに、第1の導電体層を多層構造とし、導通層とともに蒸着により形成された下層導電体層の上に、さらに別の導電体から成る上層を形成することもできる。
【0039】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホールの開口部と反対側の面に、Auをスパッタリングするなどの方法で第2の導電体層を形成し、ナノホール内に形成された導通層とこの第2の導電体層とが、アルミナから成るバリア層により隔てられているようにする。
【0040】
また、以下に示す方法で製造することもできる。まず、ガラスなどの基板上にアルミニウム等を主成分とする導電層を形成する。次いで、この導電層を陽極酸化する。このとき、基板側の所定厚の導電層を酸化しないで残すように、陽極酸化の時間をコントロールし、基板と反対側の導電層を酸化する。こうして、酸化されないで残った導電層(第1の導電体層)と、その上に微細孔を有する多孔質絶縁体層(例えば、アルミナ層)が形成される。
【0041】
次に、この多孔質絶縁体層の微細孔の底端部に存在する絶縁層を、溶解などの方法で除去し、この微細孔の底部が第1の導電体層に直接接するようにする。なお、陽極酸化に用いる電解液などに電圧を印加せずに浸漬することにより、微細孔の底端部の絶縁層を溶解することができる。
【0042】
その後、多孔質絶縁体層にNiなどの金属埋め込み層を、電気化学的な方法などで形成し、一端が第1の導電体層に電気的に接続し、他端が微細孔上部の開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する。
【0043】
次いで、この微細孔の開口部分を閉塞させるように、誘電体層をスパッタリング、蒸着、または封孔処理などの方法で形成する。
【0044】
次いで、Auをスパッタリングするなどの方法で、この誘電体層の上に第2の導電体層を形成し、微細孔内に形成された導体または半導体層とこの第2の導電体層とが、誘電体層により隔てられているようにする。
【0045】
本発明の第1の実施形態によれば、電子放出能力が高く長寿命で信頼性の高い電子放出源を、簡便でかつ安価に得ることができる。
【0046】
また、多孔質絶縁体層1のナノホール1aの一方の端部である開口部を塞いで第1の導電体層2が配設され、かつナノホール1aの他方の端部である底端部がバリア層4により閉塞されているので、ナノホール1a内に形成された導体または半導体から成る導通層3が、孔内に完全に封止され保護されている。したがって、導通層3として、カーボンのように安定性に劣る材料を使用しても、長期に亘って安定した電子放出特性が発揮される。
【0047】
なお、本発明の電子源装置においては、基準電極となる第1の導電体層2とゲート電極となる第2の導電体層5の少なくとも一方を、所定のパターンに形成することができる。第1の導電体層2および/または第2の導電体層5をパターンに形成した場合には、電子発生部位の調整ならびに電子発生量の制御が可能である。これらの導電体層のパターンとしては、例えば単純マトリックス型のパターンが挙げられる。すなわち、第1および第2の導電体層2,5をそれぞれX軸およびY軸方向に平行なストライプ状に形成し、かつ互いにクロスするように配置することができる。
【0048】
次に、このような第1の実施形態の電子源装置を備えたFEDについて、図面に基づいて説明する。
【0049】
このFEDは、図3に示すように、それぞれ矩形状のガラス基板からなるリアプレート6およびフェースプレート7を備え、これらのプレートは所定の間隔をおいて対向配置されている。そして、リアプレート6とフェースプレート7は、それぞれ周端部がガラスからなる矩形枠状の側壁8を介して接合され、真空外囲器9を形成している。
【0050】
フェースプレート7の内面には、蛍光体スクリーン10が形成されている。蛍光体スクリーン10は、ストライプ状あるいはドット状に形成された赤(R)、青(B)、緑(G)の3色の蛍光体層と黒色顔料から成る光吸収層が、並べられて構成されている。また、蛍光体スクリーン10の上には、第3の電極(アノード電極)としてメタルバック層11が形成されている。なお、蛍光体スクリーン10とフェースプレート7との間に、第3の電極として対向電極(図示を省略。)を形成し、これをアノード電極とすることができる。対向電極としては、例えばITOからなる透明電極が用いられる。
【0051】
ここで、光吸収層はフォトリソグラフィなどにより形成することができる。また、赤(R)、青(B)、緑(G)の3色の蛍光体層の形成は、ZnS系、Y2O3系、Y2O2S系などの蛍光体液を用いたスラリー法で行うことができる。なお、各色の蛍光体層の形成は、スプレー法や印刷法で行うこともでき、これらの方法においても、必要に応じてフォトリソグラフィによるパターニングを併用することができる。
【0052】
リアプレート6の内面には、第1の実施形態の電子源装置12が設けられている。電子源装置12は、電子源装置外に電子ビーム(矢印で示す。)を放出する第2の導電体層5を内側(蛍光体スクリーン10側)にして、配設されている。
【0053】
側壁8は、例えばフリットガラスにより、リアプレート6の周縁部とフェースプレート7の周縁部に封着され、これらリアプレート6とフェースプレート2および側壁8から構成された真空外囲器9の内部は、ほぼ真空に保持されている。さらに、リアプレート6とフェースプレート7の間には、これらのプレート間の間隙を維持するため、多数のスペーサ(図示を省略。)が所定の間隔をおいて配置されている。スペーサはそれぞれ板状あるいは柱状に形成されている。
【0054】
このようなFEDによれば、電子源装置において、基準電極である第1の導電体層2とゲート電極である第2の導電体層5との間の電圧印加により、第2の導電体層5を突きぬけて放出された電子が、蛍光体スクリーン10側に設けられた第3の電極(メタルバック層11)に印加された電圧(アノード電圧)により加速され、蛍光体層に衝突する。そして、電子の衝突の結果、蛍光体が励起されて発光し、所望の画像が表示される。
【0055】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、使用する材料は上述した実施の形態に限定されることなく、必要に応じて種々選択可能である。
【0056】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【0057】
実施例1
予め脱脂処理が施された厚さ3mmのAl板(第1のAl板)を、20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、図4に示すように、約4μmの厚さの陽極酸化層21を形成した。この陽極酸化層21は、60〜150nmの孔径のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23であり、ナノホール22の底端部には、アルミナから成る厚さ20nmのバリア層24が形成された。なお、符号25は、陽極酸化されずに残ったAl層(第1のAl層)を示す。
【0058】
次に、こうして陽極酸化されたAl板を、HgCl2の飽和水溶液中に浸漬し、図5に示すように、陽極酸化層21(多孔質アルミナ層23)をAl層25から分離した。
【0059】
次いで、図6に示すように、多孔質アルミナ層23のナノホール22が開口した面側からAlを蒸着し、ナノホール22の内部にAl充填層26を形成するとともに、多孔質アルミナ層23の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)27を形成した。
【0060】
その後、図7に示すように、多孔質アルミナ層23のナノホール開口部と反対側(バリア層24側)の面に、Auをスパッタリングすることにより、厚さ約40nmのAu薄膜28を形成した。
【0061】
こうして、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたAl充填層26、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成された第2のAl層27、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成されたAu薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0062】
この電子源装置において、第2のAl層27は、第1の電極(基準電極)であるカソード電極となり、Au薄膜28は第2の電極であるドライブ電極となる。そして、第1の電極と電気的に接続されたAl充填層26と第2の電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0063】
実施例2
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った。その後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面側から、カーボンを蒸着し、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層を形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約50nmの厚さのカーボン層を形成した。そして、このカーボン層の上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0064】
次いで、実施例1と同様にして、多孔質アルミナ層のバリア層側の面に、厚さ40nmの第2電極側Au薄膜を形成した。
【0065】
こうして、図8に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたカーボン導通層29、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成されたカーボン層30、カーボン層30の上に積層して形成された第1電極側Au薄膜31、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成された第2電極側Au薄膜Au薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0066】
この電子源装置において、カーボン層30および第1電極側Au薄膜31は、基準電極であるカソード電極となり、第2電極側Au薄膜28はドライブ電極となる。そして、基準電極と電気的に接続されたカーボン導通層29とドライブ電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0067】
実施例3
実施例1と同様にして、Al板を陽極酸化した後、陽極酸化により形成された多孔質アルミナ層のナノホール内に、電解析出法によりNi埋め込み層を形成した。すなわち、硫酸ニッケル、ホウ酸および硫酸第一スズを含む電解液を使用し、電圧14Vで多孔質アルミナ層に対して電解を行い、ナノホール内にNiを析出させた。
【0068】
次いで、実施例1と同様にして陽極酸化層を分離した後、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)を蒸着により形成した。その後、実施例1と同様にして、多孔質アルミナ層のバリア層側の面に、厚さ40nmのAu薄膜を形成した。
【0069】
こうして、図9に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に充填・形成されたNi埋め込み層32、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成された第2のAl層27、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成されたAu薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0070】
この電子源装置において、第2のAl層27は、第1の電極(基準電極)であるカソード電極となり、Au薄膜28は第2の電極であるドライブ電極となる。そして、第1の電極と電気的に接続されたNi埋め込み層32と第2の電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0071】
実施例4
実施例2と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層を形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面にカーボン層を形成した。さらに、このカーボン層の上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0072】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側の面に、厚さ10nmの酸化タンタル(Ta2O5)層をスパッタリングにより形成した。この酸化タンタル層は、ナノホールの底部に形成された厚さ20nmのアルミナ層の上に積層され、2層構造のバリア層が得られる。
【0073】
次いで、この酸化タンタル層の上に、厚さ約40nmのAu薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0074】
こうして、図10に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたカーボン導通層29、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成されたカーボン層30、カーボン層30の上に積層して形成された第1電極側Au薄膜31、アルミナから成るバリア層24、酸化タンタル層33、およびアルミナバリア層24と酸化タンタル層33との2層構造のバリア層34上に形成された第2電極側Au薄膜Au薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0075】
この電子源装置において、カーボン層30および第1電極側Au薄膜31は、基準電極であるカソード電極となり、第2電極側Au薄膜28はドライブ電極となる。そして、基準電極と電気的に接続されたカーボン導通層29とドライブ電極との間に挟まれた2層構造のバリア層34が、電子放出部位となると考えられる。
【0076】
実施例5
縦10cm×横10cmのガラス板を使用し、その片面を界面活性剤とアセトンを用いて十分に洗浄した後、その上にアルミニウムを蒸着し、厚さ5μmのアルミニウム層を形成した。
【0077】
次に、こうして形成されたアルミニウム層を、20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、図11に示すように、約4μmの厚さの陽極酸化層(多孔質アルミナ層)35を形成した。なお、陽極酸化時間は、得られる陽極酸化膜に十分な導電性が認められる範囲で、すなわちアルミニウム層が全厚に亘って酸化されることなく、ガラス基板上にアルミニウム層が残る条件で決定した。図11中、符号36はガラス基板、37は陽極酸化後残留したアルミニウム層、38は陽極酸化層35中に形成されたナノホールを示す。
【0078】
次に、得られた陽極酸化層35を、陽極酸化に使用したリン酸水溶液中に電圧を印加せずに20分間浸漬し、アルミナ層を溶解することにより、ナノホール38の底端部に存在するアルミナ層を除去した。こうして得られた陽極酸化層は、図12に示すように、孔径が80〜180nmのナノホール38を有する多孔質アルミナ層であり、ナノホール38の底端部のアルミナ層が除去され、ナノホール38はアルミニウム層37まで貫通していた。
【0079】
次に、多孔質アルミナ層のナノホール内に、電解析出法によりNi埋め込み層を形成した。すなわち、硫酸ニッケル、ホウ酸および硫酸第一スズを含む電解液を使用し、電圧14Vで多孔質アルミナ層に対して電解を行い、ナノホール内にNiを析出させた。電解時間は、Niが、ナノホールのアルミニウム層と接する側の端部より析出しはじめてから、Ni埋め込み層がナノホールの開口部の近傍に到達する時間にコントロールした。
【0080】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部の面に、厚さ30nmのシリカ(SiO2)層をスパッタリングにより形成し、誘電体のバリア層とした。その後、実施例1と同様にして、このバリア層の上に、厚さ40nmのAu薄膜を形成した。
【0081】
こうして、図13に示すように、多数のナノホール38を有する多孔質アルミナ層35、そのナノホール38内に充填・形成されたNi埋め込み層39、多孔質アルミナ層35のナノホール38開口部側の面に形成されたバリア層であるシリカ層40、このシリカ層40上に形成されたAu薄膜41から構成される電子源装置が得られた。
【0082】
実施例6
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してAlを蒸着した。そして、幅150μm、100μmの間隔で、ナノホールの内部にAl充填層のパターンを形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)パターンを形成した。
【0083】
その後、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側(バリア層側)の面に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0084】
実施例7
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してカーボンを蒸着した。そして、幅150μm、100μmの間隔で、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層のパターンを形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約50nmの厚さのカーボン層パターンを形成した。続いて、このマスクをそのまま利用して金(Au)をスパッタリングし、このカーボン層パターンの上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜パターンを形成した。
【0085】
その後、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側(バリア層側)の面に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0086】
実施例8
実施例7と同様にして、幅150μm、100μmの間隔で、多孔質アルミナ層のナノホールの内壁面全体にカーボン導通層のパターンを形成するとともに、ナノホール開口部側の面に約50nmの厚さのカーボン層パターンを形成し、さらにこのカーボン層パターンの上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜パターンを形成した。
【0087】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側の面に、厚さ10nmの酸化タンタル(Ta2O5)層をスパッタリングにより形成した。この酸化タンタル層は、ナノホールの底部に形成された厚さ20nmのアルミナ層の上に積層され、2層構造のバリア層が得られる。
【0088】
次いで、この酸化タンタル層の上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0089】
実施例9
縦10cm×横10cmのガラス板を使用し、その片面を界面活性剤とアセトンを用いて十分に洗浄した後、その上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してアルミニウムを蒸着した。こうしてガラス板上に、幅150μm、厚さ5μmの細線(ストライプ)状のアルミニウム層パターンを100μmの間隔で形成した。
【0090】
次に、こうして形成されたアルミニウム層パターンを20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、約4μmの厚さの陽極酸化層を形成した。なお、陽極酸化時間は、アルミニウム層が全厚に亘って酸化されることなく、ガラス基板上にアルミニウム層が残る条件で決定した。
【0091】
次に、得られた陽極酸化層を、陽極酸化に使用したリン酸水溶液中に電圧を印加せずに20分間浸漬し、アルミナ層を溶解することにより、ナノホールの底端部に存在するアルミナ層を除去した。こうして得られた陽極酸化層は、孔径が80〜180nmのナノホールを有する多孔質アルミナ層であり、ナノホールの底端部のアルミナ層が除去され、ナノホールはアルミニウム層まで貫通していた。
【0092】
次に、陽極酸化により形成された多孔質アルミナ層のナノホール内に、実施例5と同様にしてNi埋め込み層を形成した。次に、多孔質アルミナ層のナノホール開口部の面に、厚さ30nmのシリカ(SiO2)層をスパッタリングにより形成した後、このシリカ層の上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ30〜60nm)パターンを100μmの間隔で形成した。なお、このAu薄膜のパターンは、アルミニウム層および多孔質アルミナ層のパターンと直交する方向に形成した。
【0093】
次に、図14に示すように、実施例1〜9で製造された電子源を備えた基板(リアプレート)42と、蛍光体スクリーン43が形成された基板(フェースプレート)44を、第2の電極であるAu薄膜28と蛍光体スクリーン43とが向き合うように2mmの間隔(ギャップ)をおいて対向配置し、真空雰囲気に保持した。
【0094】
なお、蛍光体スクリーン43は以下の手順で作製した。すなわち、縦10cm×横10cmのガラス基板上に、まず、格子マトリックス状のグラフファイトを主成分とする光吸収層をフォトリソグラフィにより形成した後、光吸収層の間隙部に、規則正しく配列された赤(Y2O2S:Eu)、緑(ZnS:Cu,Al)、青(ZnS:Ag,Al)の蛍光体層45を、フォトリソグラフィにより形成した。次いで、蛍光体層45上にニトロセルロースからなるフィルムを形成し、その上にアルミニウムを蒸着し、メタルバック層46を形成した。このメタルバック層46は、第3の電極であるアノード電極となる。
【0095】
なお、実施例1〜4および実施例6〜8の場合は、電子源をガラス板に固定し、電子源付きのリアプレートを作製した。実施例5および実施例9の場合は、電子源が形成されているガラス板をそのままリアプレートとして使用した。
【0096】
また、リアプレート42とフェースプレート44との組立ては、以下の手順で行った。まず、電子源の画像有効面外の所望位置に穴をあけ、排気管をフリットガラスにより接合した。次いで、電子源に、ギャップ制御のためのスペーサであるガラス枠を配置し、その上にフェースプレートを配置し、電子源の第2の電極と蛍光面の第3の電極とがガラス枠を介して対向するようにした。電子源の個々の電子放出部位が蛍光面画素と対応するように位置合せを行った後、フリットガラスにより接合した。
【0097】
このとき、電子源の第2の電極であるAu薄膜と蛍光面のメタルバック層との間隔(ギャップ)が、全面で2mmとなるようにガラス枠を制御した。次いで、300℃で加熱しながら排気管により排気を行い、1×10−3〜5×10−3Paの真空度になったところで排気管の封止を行った。以上の手順により、10cm×10cmの表示装置を製作した。
【0098】
次に、第3の電極の電圧(アノード電圧:Va)を7kvとし、カソード電極である第1の電極(基準電極)とゲート電極である第2の電極との間に印加する電圧(ドライブ電圧:Vd)を変え、蛍光面の発光状態を観察することにより、電子放出(エミッション)開始電圧および絶縁破壊電圧をそれぞれ測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1〜9の電子源を有する表示装置では、いずれも3〜7Vの低い電圧で電子の放出が開始し、良好な発光状態が得られた。また、絶縁破壊電圧が高く、耐電圧性も十分に満足のゆくものであった。
【0102】
【発明の効果】
以上の記載から明らかなように、本発明によれば、電子放出能力が高く、簡便で低真空度でも長寿命の電子源装置を安価に得ることができる。そして、この電子源装置を備えることで、発光効率が高く安価で信頼性の高い表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子源装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の電子源装置の第2の実施形態を示す断面図。
【図3】第1の実施形態の電子源装置を備えたFEDの構造を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の実施例1において、Al板の陽極酸化工程を説明するための断面図。
【図5】本発明の実施例1において、陽極酸化層の分離工程を説明するための断面図。
【図6】本発明の実施例1において、Alの蒸着工程を説明するための断面図。
【図7】本発明の実施例1において、Au薄膜の形成工程を説明するための断面図。
【図8】本発明の実施例2で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図9】本発明の実施例3で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図10】本発明の実施例4で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図11】本発明の実施例5において、陽極酸化工程を説明するための断面図。
【図12】本発明の実施例5において、アルミナ層の除去工程を説明するための断面図。
【図13】本発明の実施例5で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図14】実施例1〜9で得られた電子源を備えた表示装置において、特性を調べる方法を模式的に示す図。
【符号の説明】
1………多孔質絶縁体層、1a、22………ナノホール、2………第1の導電体層、3………導体または半導体から成る導通層、4………バリア層、5………第2の導電体層、6………リアプレート、7………フェースプレート、10………蛍光体スクリーン、11………メタルバック層、21,35、………陽極酸化層、22,38………ナノホール、23………多孔質アルミナ層、24………アルミナから成るバリア層、26………Al充填層、27………Al層、28,41………Au薄膜、29………カーボン導通層、30………カーボン層、31………第1電極側Au薄膜、32,39………Ni埋め込み層、33………酸化タンタル層、36………ガラス基板、37………陽極酸化後残留したアルミニウム層、40………シリカ層
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子源装置とその製造方法、および電子源装置を備えた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、平面型の画像表示装置として、フィールドエミッションディスプレイ(以下、FEDと示す。)の開発が進められている。このFEDは、所定の隙間をおいて対向配置されたフェースプレートとリアプレートとを有し、フェースプレートの内面には3色の蛍光体層が形成され、リアプレートの内面には、これらの蛍光体を励起する電子を放出する電子放出源が設けられている。
【0003】
従来、FEDの電子放出源として、スピンドル型と称する構造が提案されている。この電子放出源は、Moから形成された電子放出部の先鋭部に電界を集中させ、蛍光体層との間にかけた電圧により電子放出部から電子を放出させて蛍光体を発光させる構造を有している。この方式により、薄型の平面表示装置が実現される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した電子放出源は非常に精細な構造を有し、均一にかつ簡便に多数形成することが極めて難しかった。したがって、このような電子放出源を用いて大型の平面表示装置を作ることが困難であるとともに、小型画面の平面表示装置であっても製造コストが高くなってしまうという問題があった。また、電子放出源の僅かな形状の相違により電子放出能力に違いが生じるため、安定した画像を得ることが難しかった。
【0005】
最近、アルミニウム(Al)の陽極酸化により得られる、直径が数nm〜数100nmの極めて微細な細孔(ナノホール)に、カーボンナノチューブ(CN)を形成して電子放出源とした構造が提案されている(Displays21(2000)P99−104参照)。
【0006】
しかしながら、このような構造の電子放出源においては、CNが高価格であるばかりでなく、管内の真空度が低いと管内ガスがCNを汚染するため寿命が短くなるなど、実用化面で多くの問題があった。
【0007】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、電子放出能力が高く、安価で低真空度でも長寿命の電子源装置とその製造方法、およびそのような電子源装置を備え、発光効率が高く安価で信頼性の高い表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子源装置は、少なくとも一方の主面側に開口部を持つように垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質絶縁体層と、前記多孔質絶縁体層の前記微細孔の開口部側の主面に配設された第1の導電体層と、前記微細孔の底部側端部を閉塞するように形成された、誘電体から成るバリア層と、前記多孔質絶縁体層の前記微細孔内に形成された、前記第1の導電体層と電気的に接する導体または半導体層と、前記バリア層の上に形成された第2の導電体層とを備え、前記微細孔の底部側端部と前記第2の導電体層とが、前記バリア層により隔てられ、かつ前記第1の導電体層と前記第2の導電体層との間に印加される電圧により、前記第2の導電体層から前記バリア層に向う方向と反対方向に電子が放出されることを特徴とする。
【0009】
本発明の電子源装置においては、微細孔を有する多孔質絶縁体層が、多孔質アルミナ層であることができる。そして、多孔質アルミナ層としては、アルミニウムを主成分とする層の陽極酸化により得られた酸化アルミニウム層が好適に用いられる。また、本発明の電子源装置においては、バリア層として、多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と同じ絶縁体から成る層を有することができる。また、バリア層として、多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と別の誘電体から成る層を有することができる。さらに、第2の導電体層を間に挟んで第1の導電体層と反対側に、第3の電極を設けることができる。
【0010】
本発明の電子源装置の製造方法は、アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化することにより、一方の主面に開口部を有し該主面に対して垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質アルミナ層を形成する陽極酸化工程と、前記多孔質アルミナ層を前記導電性基板から分離する工程と、分離された前記多孔質アルミナ層における前記微細孔の開口部側の主面に、第1の導電体層を形成する工程と、前記多孔質アルミナ層の前記微細孔内に、一端が前記第1の導電体層に電気的に接し、他端が前記微細孔の底端部に達する導体または半導体層を形成する工程と、前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、直接あるいは誘電体層を介して第2の導電体層を形成する工程とを備え、前記陽極酸化工程において、前記微細孔の底端部と前記導電性基板との間に、前記アルミナから成るバリア層を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の電子源装置の製造方法においては、多孔質アルミナ層の微細孔の底端部側の主面に、陽極酸化により形成される誘電体とは別の誘電体から成る層を形成する工程と、この誘電体層の上に第2の導電体層を形成する工程とを備えることができる。
【0012】
また、本発明の電子源装置の別の製造方法は、基板上にアルミニウムを主成分とする導電層を形成する工程と、前記導電層の前記基板側を導電層のままで残しながら陽極酸化することにより、該基板上に残した前記導電層である第1の導電体層、および該第1の導電体層上に主面に開口部を有し垂直方向に配置された微細孔を有する多孔質アルミナ層を同時に形成する陽極酸化工程と、前記多孔質アルミナ層において前記微細孔の底端部側のアルミナ層を除去し、前記微細孔を前記第1の導電体層に接続する工程と、前記多孔質アルミナ層の微細孔内に、一端が前記第1の導電体層と電気的に接続し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する埋め込み層工程と、前記微細孔内に導体または半導体の埋め込み層が形成された前記アルミナ層の表面に、前記微細孔の開口部を閉塞するように誘電体からなるバリア層を形成する工程と、前記バリア層の表面に第2の導電体層を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の表示装置は、互いに対向して配置された第1の基板および第2の基板と、前記第1の基板の内面に設けられた蛍光体層と、前記第2の基板の内面側に設けられ、前記蛍光体層を励起する電子を放出する電子源とを備えた表示装置であり、前記電子源は、前記した電子源装置であることができる。
【0014】
本発明の電子源装置によれば、多孔質絶縁体層の有する微細孔の内部に、第1の導電体層と電気的に接するように導体または半導体層が形成されるとともに、この微細孔の底部側端部と第2の導電層体層との間に、誘電体によるバリア層が設けられているので、第1の導電体層を基準電極とするとともに第2の導電体層をゲート電極とし、これらの電極間に電圧(正電圧)を印加することにより、バリア層に電界が集中し、電子が放出される。電子の移動方向は、第1の導電体層から第2の導電体層に向う方向であり、第2の導電体層から外部の例えば蛍光体層に向けて電子が放出される。
【0015】
こうして、均一で電子の放出能力が高い電子源装置が得られる。また、電子放出部と雰囲気ガスとの直接接触が回避されているので、電子放出部の汚染による劣化がほとんど生じず、長寿命が達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明の第1の実施形態である電子源装置は、図1に示すように、主面に対してほぼ垂直方向に延びた、直径が数nm〜数100nmの多数の微細孔(ナノホール)1aを含む多孔質絶縁体層1を有する。多数のナノホール1aは、多孔質絶縁体層1の一方の主面側、例えば下面側に開口部を有するが、上下両面側に開口部を有し、透孔(貫通孔)となっていても良い。
【0018】
ここで、多孔質絶縁体としては、多孔質アルミナ(酸化アルミニウム)を挙げることができる。アルミニウムを主成分とする層を陽極酸化することにより、多数のナノホールが微小間隔をおいて規則的に配列された多孔質アルミナ層を得ることができる。多孔質アルミナ層は、陽極酸化以外の方法でも形成することができる。さらに、多孔質絶縁体層としては、チタン(Ti)層の陽極酸化により形成された、多数のナノホールを有する酸化チタン層を用いることも可能である。アルミニウムやチタンの他に、タンタル、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、ハフニウム、タングステンなどを、例えば陽極酸化することにより形成された酸化層を挙げることもできる。
【0019】
このような多孔質絶縁体層1のナノホール1aの開口部側である下面には、基準電極となる第1の導電体層2が配設されている。第1の導電体層2を構成する導電体としては、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどの金属やカーボンなどを挙げることができる。
【0020】
多孔質絶縁体層1のナノホール1a内には、導体または半導体から成る導通層3が形成されている。この導体または半導体層3は、ナノホール1aの開口部で第1の導電体層2と電気的に接し、かつ後述するバリア層までナノホール1a内の導通を確保することができるものであれば良い。ナノホール1aの内壁面に付着・形成されていても、あるいはナノホール1a内に埋め込み・充填されていても良い。
【0021】
この導通層3を構成する材料としては、ある程度の導電性を有するものであれば、種類を問わず使用することができる。例えば、カーボン、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどの導電性材料を使用することができる。また、Ni酸化物、ATO、ITOなどの半導体材料も使用することができる。これらの導通層3の形成は、例えば、電気化学的方法やCVD法あるいは蒸着法などにより行うことができる。
【0022】
多孔質絶縁体層1のナノホール1aの開口部と反対側の面である上面には、ナノホール1aの底部側の端部を閉塞するように、誘電体から成るバリア層4が形成されている。
【0023】
バリア層4を構成する誘電体としては、特に種類は限定されないが、誘電率が高く耐電圧特性が良好なものが好ましい。例えば、酸化タンタル、窒化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム(アルミナ)、シリカ等が挙げられる。また、前記したナノホール1aを有する絶縁体と同一の材料を使用しても良い。例えば、アルミニウムの陽極酸化により形成されたアルミナ層を、バリア層4として使用することができる。
【0024】
さらに、図2に示すように、2層以上の誘電体層を積層することにより、バリア層4を形成しても良い。例えば、アルミニウムの陽極酸化により形成されたアルミナ層4aの上に、1層あるいは2層以上の別の誘電体層4bを積層して形成し、多層構造のバリア層4を形成することができる。
【0025】
このようなバリア層4の上に、ゲート電極となる第2の導電体層5が形成されている。第2の導電体層5を構成する導電体としては、前記した第1の導電体層1を構成する導電体と同様に、カーボン、Al、Ag、Cu、Ni、Au、Baなどを挙げることができる。第2の導電体層5の形成は、蒸着、スパッタリング、電界析出など、種々の方法で行うことが可能である。例えば、Au層の形成は、蒸着、スパッタリングなどの方法で行うことができる。また、Al層は蒸着法により、Ag層は電界析出法により、それぞれ形成することができる。
【0026】
この電子源装置によれば、基準電極である第1の導電体層2とゲート電極である第2の導電体層5との間に電圧(正電圧)を印加することにより、この電圧が、第1の導電体層2と電気的に接続された導通層3を介して第2の導電体層5との間に印加され、誘電体から成るバリア層4に電界が集中する。そして、この電界集中の結果、電子の放出がなされる。そして、放出された電子は、第2の導電体層5を突きぬけ、この層から外部に向けて発せられる。
【0027】
このような構造を有する電子源装置において、バリア層4の厚さは、2nm〜50nmとすることが望ましい。バリア層4の厚さが2nm未満では、電子の放出(エミッション)が生じにくい。また、バリア層4の厚さが50nmを超えても、安定した良好なエミッションが生じにくくなる。
【0028】
ナノホール1aの深さに相当する多孔質絶縁体層1の厚さは、50nm〜30μmとすることが望ましい。多孔質絶縁体層1の厚さが50nm未満では、エミッションは良好であるが、耐電圧特性が悪化して好ましくない。また、多孔質絶縁体層1の厚さが30μmを超えた場合には、ナノホール1aの底端部に達する導通層3を形成し、バリア層4までの導通を確保することが困難になる。したがって、バリア層4に電界を集中させることが難しく、良好なエミッションを得ることが難しい。
【0029】
ナノホール1aの孔径は、2nm〜1000nmとすることが望ましく、より好ましくは10〜500nmとする。孔径が大きすぎると電界集中が起こりにくくなり、電子放出特性が低下する。反対に孔径が小さすぎると、ナノホール1aの形成が難しくなる。多孔質絶縁体層1の厚さすなわちナノホール1aの深さとナノホール1aの孔径は、ともにバリア層4にかかる電界強度に影響を及ぼす。
【0030】
ナノホール1a内に形成される導体または半導体から成る導通層3の厚さは、第1の導電体層2からバリア層4までの導通を確保することができれば、特に限定されない。
【0031】
第1の導電体層の厚さは、導通を確保することができれば特に限定されるものではないが、安定した良好な導通を確保するには10nm以上とすることが望ましい。
【0032】
第2の導電体層5の厚さは、5nm〜300nmとすることが望ましい。第2の導電層5の厚さが5nm未満では、安定した良好な導通を確保することが難しい。反対に、300nmを超えると、電子が突きぬけて放出されにくくなり、好ましくない。
【0033】
さらに、本発明の電子源装置では、導電性金属薄膜15と導電性基板11との間に印加された電圧により、バリア層16に電界を集中し電子を放出させるために、陽極である導電性金属薄膜15と陰極である導電性基板11との間の抵抗値を、5Ω〜2MΩの範囲とすることが望ましい。
【0034】
本発明の第1の実施形態の電子源装置は、例えば以下に示す方法で製造することができる。
【0035】
まず、アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化する。陽極酸化により、導電性基板本体の上に、ナノホールを有する所定厚の多孔質アルミナ層が形成される。
【0036】
次に、こうして形成された多孔質アルミナ層を、酸化されずに残った導電性基板本体から分離する。分離には、HgCl2の飽和水溶液中に浸漬することにより、多孔質アルミナ層とアルミニウム基板との境界に、アルミニウムと水銀とのアマルガムを形成するなどの方法を採ることができる。なお、この分離工程は、ナノホール内へのNi等の埋め込み層形成後に行うこともできる。
【0037】
次いで、分離された多孔質アルミナ層のナノホール内に、Alやカーボン等の導体から成る導通層を形成する。Ni等からなる導通層(埋め込み層)の形成は、電解析出法により行うこともできる。
【0038】
また、多孔質アルミナ層において、ナノホールの開口部側の面に、第1の導電体層を形成する。導通層の形成と第1の導電体層の形成は、同じ導電性材料を用いて蒸着を行うことにより、同一工程で行うことも可能である。さらに、第1の導電体層を多層構造とし、導通層とともに蒸着により形成された下層導電体層の上に、さらに別の導電体から成る上層を形成することもできる。
【0039】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホールの開口部と反対側の面に、Auをスパッタリングするなどの方法で第2の導電体層を形成し、ナノホール内に形成された導通層とこの第2の導電体層とが、アルミナから成るバリア層により隔てられているようにする。
【0040】
また、以下に示す方法で製造することもできる。まず、ガラスなどの基板上にアルミニウム等を主成分とする導電層を形成する。次いで、この導電層を陽極酸化する。このとき、基板側の所定厚の導電層を酸化しないで残すように、陽極酸化の時間をコントロールし、基板と反対側の導電層を酸化する。こうして、酸化されないで残った導電層(第1の導電体層)と、その上に微細孔を有する多孔質絶縁体層(例えば、アルミナ層)が形成される。
【0041】
次に、この多孔質絶縁体層の微細孔の底端部に存在する絶縁層を、溶解などの方法で除去し、この微細孔の底部が第1の導電体層に直接接するようにする。なお、陽極酸化に用いる電解液などに電圧を印加せずに浸漬することにより、微細孔の底端部の絶縁層を溶解することができる。
【0042】
その後、多孔質絶縁体層にNiなどの金属埋め込み層を、電気化学的な方法などで形成し、一端が第1の導電体層に電気的に接続し、他端が微細孔上部の開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する。
【0043】
次いで、この微細孔の開口部分を閉塞させるように、誘電体層をスパッタリング、蒸着、または封孔処理などの方法で形成する。
【0044】
次いで、Auをスパッタリングするなどの方法で、この誘電体層の上に第2の導電体層を形成し、微細孔内に形成された導体または半導体層とこの第2の導電体層とが、誘電体層により隔てられているようにする。
【0045】
本発明の第1の実施形態によれば、電子放出能力が高く長寿命で信頼性の高い電子放出源を、簡便でかつ安価に得ることができる。
【0046】
また、多孔質絶縁体層1のナノホール1aの一方の端部である開口部を塞いで第1の導電体層2が配設され、かつナノホール1aの他方の端部である底端部がバリア層4により閉塞されているので、ナノホール1a内に形成された導体または半導体から成る導通層3が、孔内に完全に封止され保護されている。したがって、導通層3として、カーボンのように安定性に劣る材料を使用しても、長期に亘って安定した電子放出特性が発揮される。
【0047】
なお、本発明の電子源装置においては、基準電極となる第1の導電体層2とゲート電極となる第2の導電体層5の少なくとも一方を、所定のパターンに形成することができる。第1の導電体層2および/または第2の導電体層5をパターンに形成した場合には、電子発生部位の調整ならびに電子発生量の制御が可能である。これらの導電体層のパターンとしては、例えば単純マトリックス型のパターンが挙げられる。すなわち、第1および第2の導電体層2,5をそれぞれX軸およびY軸方向に平行なストライプ状に形成し、かつ互いにクロスするように配置することができる。
【0048】
次に、このような第1の実施形態の電子源装置を備えたFEDについて、図面に基づいて説明する。
【0049】
このFEDは、図3に示すように、それぞれ矩形状のガラス基板からなるリアプレート6およびフェースプレート7を備え、これらのプレートは所定の間隔をおいて対向配置されている。そして、リアプレート6とフェースプレート7は、それぞれ周端部がガラスからなる矩形枠状の側壁8を介して接合され、真空外囲器9を形成している。
【0050】
フェースプレート7の内面には、蛍光体スクリーン10が形成されている。蛍光体スクリーン10は、ストライプ状あるいはドット状に形成された赤(R)、青(B)、緑(G)の3色の蛍光体層と黒色顔料から成る光吸収層が、並べられて構成されている。また、蛍光体スクリーン10の上には、第3の電極(アノード電極)としてメタルバック層11が形成されている。なお、蛍光体スクリーン10とフェースプレート7との間に、第3の電極として対向電極(図示を省略。)を形成し、これをアノード電極とすることができる。対向電極としては、例えばITOからなる透明電極が用いられる。
【0051】
ここで、光吸収層はフォトリソグラフィなどにより形成することができる。また、赤(R)、青(B)、緑(G)の3色の蛍光体層の形成は、ZnS系、Y2O3系、Y2O2S系などの蛍光体液を用いたスラリー法で行うことができる。なお、各色の蛍光体層の形成は、スプレー法や印刷法で行うこともでき、これらの方法においても、必要に応じてフォトリソグラフィによるパターニングを併用することができる。
【0052】
リアプレート6の内面には、第1の実施形態の電子源装置12が設けられている。電子源装置12は、電子源装置外に電子ビーム(矢印で示す。)を放出する第2の導電体層5を内側(蛍光体スクリーン10側)にして、配設されている。
【0053】
側壁8は、例えばフリットガラスにより、リアプレート6の周縁部とフェースプレート7の周縁部に封着され、これらリアプレート6とフェースプレート2および側壁8から構成された真空外囲器9の内部は、ほぼ真空に保持されている。さらに、リアプレート6とフェースプレート7の間には、これらのプレート間の間隙を維持するため、多数のスペーサ(図示を省略。)が所定の間隔をおいて配置されている。スペーサはそれぞれ板状あるいは柱状に形成されている。
【0054】
このようなFEDによれば、電子源装置において、基準電極である第1の導電体層2とゲート電極である第2の導電体層5との間の電圧印加により、第2の導電体層5を突きぬけて放出された電子が、蛍光体スクリーン10側に設けられた第3の電極(メタルバック層11)に印加された電圧(アノード電圧)により加速され、蛍光体層に衝突する。そして、電子の衝突の結果、蛍光体が励起されて発光し、所望の画像が表示される。
【0055】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、この発明の範囲内で種々変形可能である。例えば、使用する材料は上述した実施の形態に限定されることなく、必要に応じて種々選択可能である。
【0056】
以下、本発明の具体的実施例について説明する。
【0057】
実施例1
予め脱脂処理が施された厚さ3mmのAl板(第1のAl板)を、20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、図4に示すように、約4μmの厚さの陽極酸化層21を形成した。この陽極酸化層21は、60〜150nmの孔径のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23であり、ナノホール22の底端部には、アルミナから成る厚さ20nmのバリア層24が形成された。なお、符号25は、陽極酸化されずに残ったAl層(第1のAl層)を示す。
【0058】
次に、こうして陽極酸化されたAl板を、HgCl2の飽和水溶液中に浸漬し、図5に示すように、陽極酸化層21(多孔質アルミナ層23)をAl層25から分離した。
【0059】
次いで、図6に示すように、多孔質アルミナ層23のナノホール22が開口した面側からAlを蒸着し、ナノホール22の内部にAl充填層26を形成するとともに、多孔質アルミナ層23の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)27を形成した。
【0060】
その後、図7に示すように、多孔質アルミナ層23のナノホール開口部と反対側(バリア層24側)の面に、Auをスパッタリングすることにより、厚さ約40nmのAu薄膜28を形成した。
【0061】
こうして、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたAl充填層26、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成された第2のAl層27、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成されたAu薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0062】
この電子源装置において、第2のAl層27は、第1の電極(基準電極)であるカソード電極となり、Au薄膜28は第2の電極であるドライブ電極となる。そして、第1の電極と電気的に接続されたAl充填層26と第2の電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0063】
実施例2
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った。その後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面側から、カーボンを蒸着し、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層を形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約50nmの厚さのカーボン層を形成した。そして、このカーボン層の上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0064】
次いで、実施例1と同様にして、多孔質アルミナ層のバリア層側の面に、厚さ40nmの第2電極側Au薄膜を形成した。
【0065】
こうして、図8に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたカーボン導通層29、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成されたカーボン層30、カーボン層30の上に積層して形成された第1電極側Au薄膜31、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成された第2電極側Au薄膜Au薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0066】
この電子源装置において、カーボン層30および第1電極側Au薄膜31は、基準電極であるカソード電極となり、第2電極側Au薄膜28はドライブ電極となる。そして、基準電極と電気的に接続されたカーボン導通層29とドライブ電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0067】
実施例3
実施例1と同様にして、Al板を陽極酸化した後、陽極酸化により形成された多孔質アルミナ層のナノホール内に、電解析出法によりNi埋め込み層を形成した。すなわち、硫酸ニッケル、ホウ酸および硫酸第一スズを含む電解液を使用し、電圧14Vで多孔質アルミナ層に対して電解を行い、ナノホール内にNiを析出させた。
【0068】
次いで、実施例1と同様にして陽極酸化層を分離した後、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)を蒸着により形成した。その後、実施例1と同様にして、多孔質アルミナ層のバリア層側の面に、厚さ40nmのAu薄膜を形成した。
【0069】
こうして、図9に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に充填・形成されたNi埋め込み層32、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成された第2のAl層27、アルミナから成るバリア層24、およびバリア層24上に形成されたAu薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0070】
この電子源装置において、第2のAl層27は、第1の電極(基準電極)であるカソード電極となり、Au薄膜28は第2の電極であるドライブ電極となる。そして、第1の電極と電気的に接続されたNi埋め込み層32と第2の電極との間に挟まれたバリア層24が、電子放出部位となると考えられる。
【0071】
実施例4
実施例2と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層を形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面にカーボン層を形成した。さらに、このカーボン層の上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0072】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側の面に、厚さ10nmの酸化タンタル(Ta2O5)層をスパッタリングにより形成した。この酸化タンタル層は、ナノホールの底部に形成された厚さ20nmのアルミナ層の上に積層され、2層構造のバリア層が得られる。
【0073】
次いで、この酸化タンタル層の上に、厚さ約40nmのAu薄膜をスパッタリングにより形成した。
【0074】
こうして、図10に示すように、多数のナノホール22を有する多孔質アルミナ層23、そのナノホール22内に形成されたカーボン導通層29、多孔質アルミナ層23のナノホール22開口部側の面に蒸着・形成されたカーボン層30、カーボン層30の上に積層して形成された第1電極側Au薄膜31、アルミナから成るバリア層24、酸化タンタル層33、およびアルミナバリア層24と酸化タンタル層33との2層構造のバリア層34上に形成された第2電極側Au薄膜Au薄膜28から構成される電子源装置が得られた。
【0075】
この電子源装置において、カーボン層30および第1電極側Au薄膜31は、基準電極であるカソード電極となり、第2電極側Au薄膜28はドライブ電極となる。そして、基準電極と電気的に接続されたカーボン導通層29とドライブ電極との間に挟まれた2層構造のバリア層34が、電子放出部位となると考えられる。
【0076】
実施例5
縦10cm×横10cmのガラス板を使用し、その片面を界面活性剤とアセトンを用いて十分に洗浄した後、その上にアルミニウムを蒸着し、厚さ5μmのアルミニウム層を形成した。
【0077】
次に、こうして形成されたアルミニウム層を、20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、図11に示すように、約4μmの厚さの陽極酸化層(多孔質アルミナ層)35を形成した。なお、陽極酸化時間は、得られる陽極酸化膜に十分な導電性が認められる範囲で、すなわちアルミニウム層が全厚に亘って酸化されることなく、ガラス基板上にアルミニウム層が残る条件で決定した。図11中、符号36はガラス基板、37は陽極酸化後残留したアルミニウム層、38は陽極酸化層35中に形成されたナノホールを示す。
【0078】
次に、得られた陽極酸化層35を、陽極酸化に使用したリン酸水溶液中に電圧を印加せずに20分間浸漬し、アルミナ層を溶解することにより、ナノホール38の底端部に存在するアルミナ層を除去した。こうして得られた陽極酸化層は、図12に示すように、孔径が80〜180nmのナノホール38を有する多孔質アルミナ層であり、ナノホール38の底端部のアルミナ層が除去され、ナノホール38はアルミニウム層37まで貫通していた。
【0079】
次に、多孔質アルミナ層のナノホール内に、電解析出法によりNi埋め込み層を形成した。すなわち、硫酸ニッケル、ホウ酸および硫酸第一スズを含む電解液を使用し、電圧14Vで多孔質アルミナ層に対して電解を行い、ナノホール内にNiを析出させた。電解時間は、Niが、ナノホールのアルミニウム層と接する側の端部より析出しはじめてから、Ni埋め込み層がナノホールの開口部の近傍に到達する時間にコントロールした。
【0080】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部の面に、厚さ30nmのシリカ(SiO2)層をスパッタリングにより形成し、誘電体のバリア層とした。その後、実施例1と同様にして、このバリア層の上に、厚さ40nmのAu薄膜を形成した。
【0081】
こうして、図13に示すように、多数のナノホール38を有する多孔質アルミナ層35、そのナノホール38内に充填・形成されたNi埋め込み層39、多孔質アルミナ層35のナノホール38開口部側の面に形成されたバリア層であるシリカ層40、このシリカ層40上に形成されたAu薄膜41から構成される電子源装置が得られた。
【0082】
実施例6
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してAlを蒸着した。そして、幅150μm、100μmの間隔で、ナノホールの内部にAl充填層のパターンを形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約100nmの厚さのAl層(第2のAl層)パターンを形成した。
【0083】
その後、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側(バリア層側)の面に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0084】
実施例7
実施例1と同様にして、Al板の陽極酸化と陽極酸化層の分離を行った後、多孔質アルミナ層のナノホールが開口した面上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してカーボンを蒸着した。そして、幅150μm、100μmの間隔で、ナノホールの内壁面全体にカーボン導通層のパターンを形成するとともに、多孔質アルミナ層の開口部側の面に、約50nmの厚さのカーボン層パターンを形成した。続いて、このマスクをそのまま利用して金(Au)をスパッタリングし、このカーボン層パターンの上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜パターンを形成した。
【0085】
その後、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側(バリア層側)の面に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0086】
実施例8
実施例7と同様にして、幅150μm、100μmの間隔で、多孔質アルミナ層のナノホールの内壁面全体にカーボン導通層のパターンを形成するとともに、ナノホール開口部側の面に約50nmの厚さのカーボン層パターンを形成し、さらにこのカーボン層パターンの上に、厚さ100nmの第1電極側Au薄膜パターンを形成した。
【0087】
次いで、多孔質アルミナ層のナノホール開口部と反対側の面に、厚さ10nmの酸化タンタル(Ta2O5)層をスパッタリングにより形成した。この酸化タンタル層は、ナノホールの底部に形成された厚さ20nmのアルミナ層の上に積層され、2層構造のバリア層が得られる。
【0088】
次いで、この酸化タンタル層の上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ40nm)パターンを100μmの間隔で形成した。
【0089】
実施例9
縦10cm×横10cmのガラス板を使用し、その片面を界面活性剤とアセトンを用いて十分に洗浄した後、その上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介してアルミニウムを蒸着した。こうしてガラス板上に、幅150μm、厚さ5μmの細線(ストライプ)状のアルミニウム層パターンを100μmの間隔で形成した。
【0090】
次に、こうして形成されたアルミニウム層パターンを20℃に保持されたリン酸水溶液(リン酸濃度4重量%)の浴に浸漬した。そして、対向電極として第2のAl板を使用し、50Vの電圧を45分間印加して陽極酸化を行い、約4μmの厚さの陽極酸化層を形成した。なお、陽極酸化時間は、アルミニウム層が全厚に亘って酸化されることなく、ガラス基板上にアルミニウム層が残る条件で決定した。
【0091】
次に、得られた陽極酸化層を、陽極酸化に使用したリン酸水溶液中に電圧を印加せずに20分間浸漬し、アルミナ層を溶解することにより、ナノホールの底端部に存在するアルミナ層を除去した。こうして得られた陽極酸化層は、孔径が80〜180nmのナノホールを有する多孔質アルミナ層であり、ナノホールの底端部のアルミナ層が除去され、ナノホールはアルミニウム層まで貫通していた。
【0092】
次に、陽極酸化により形成された多孔質アルミナ層のナノホール内に、実施例5と同様にしてNi埋め込み層を形成した。次に、多孔質アルミナ層のナノホール開口部の面に、厚さ30nmのシリカ(SiO2)層をスパッタリングにより形成した後、このシリカ層の上に、幅150μmのスリット状の多数の開口を有するマスクを介して金(Au)をスパッタリングし、幅150μmのストライプ状のAu薄膜(厚さ30〜60nm)パターンを100μmの間隔で形成した。なお、このAu薄膜のパターンは、アルミニウム層および多孔質アルミナ層のパターンと直交する方向に形成した。
【0093】
次に、図14に示すように、実施例1〜9で製造された電子源を備えた基板(リアプレート)42と、蛍光体スクリーン43が形成された基板(フェースプレート)44を、第2の電極であるAu薄膜28と蛍光体スクリーン43とが向き合うように2mmの間隔(ギャップ)をおいて対向配置し、真空雰囲気に保持した。
【0094】
なお、蛍光体スクリーン43は以下の手順で作製した。すなわち、縦10cm×横10cmのガラス基板上に、まず、格子マトリックス状のグラフファイトを主成分とする光吸収層をフォトリソグラフィにより形成した後、光吸収層の間隙部に、規則正しく配列された赤(Y2O2S:Eu)、緑(ZnS:Cu,Al)、青(ZnS:Ag,Al)の蛍光体層45を、フォトリソグラフィにより形成した。次いで、蛍光体層45上にニトロセルロースからなるフィルムを形成し、その上にアルミニウムを蒸着し、メタルバック層46を形成した。このメタルバック層46は、第3の電極であるアノード電極となる。
【0095】
なお、実施例1〜4および実施例6〜8の場合は、電子源をガラス板に固定し、電子源付きのリアプレートを作製した。実施例5および実施例9の場合は、電子源が形成されているガラス板をそのままリアプレートとして使用した。
【0096】
また、リアプレート42とフェースプレート44との組立ては、以下の手順で行った。まず、電子源の画像有効面外の所望位置に穴をあけ、排気管をフリットガラスにより接合した。次いで、電子源に、ギャップ制御のためのスペーサであるガラス枠を配置し、その上にフェースプレートを配置し、電子源の第2の電極と蛍光面の第3の電極とがガラス枠を介して対向するようにした。電子源の個々の電子放出部位が蛍光面画素と対応するように位置合せを行った後、フリットガラスにより接合した。
【0097】
このとき、電子源の第2の電極であるAu薄膜と蛍光面のメタルバック層との間隔(ギャップ)が、全面で2mmとなるようにガラス枠を制御した。次いで、300℃で加熱しながら排気管により排気を行い、1×10−3〜5×10−3Paの真空度になったところで排気管の封止を行った。以上の手順により、10cm×10cmの表示装置を製作した。
【0098】
次に、第3の電極の電圧(アノード電圧:Va)を7kvとし、カソード電極である第1の電極(基準電極)とゲート電極である第2の電極との間に印加する電圧(ドライブ電圧:Vd)を変え、蛍光面の発光状態を観察することにより、電子放出(エミッション)開始電圧および絶縁破壊電圧をそれぞれ測定した。測定結果を表1および表2に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
実施例1〜9の電子源を有する表示装置では、いずれも3〜7Vの低い電圧で電子の放出が開始し、良好な発光状態が得られた。また、絶縁破壊電圧が高く、耐電圧性も十分に満足のゆくものであった。
【0102】
【発明の効果】
以上の記載から明らかなように、本発明によれば、電子放出能力が高く、簡便で低真空度でも長寿命の電子源装置を安価に得ることができる。そして、この電子源装置を備えることで、発光効率が高く安価で信頼性の高い表示装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電子源装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図2】本発明の電子源装置の第2の実施形態を示す断面図。
【図3】第1の実施形態の電子源装置を備えたFEDの構造を模式的に示す断面図。
【図4】本発明の実施例1において、Al板の陽極酸化工程を説明するための断面図。
【図5】本発明の実施例1において、陽極酸化層の分離工程を説明するための断面図。
【図6】本発明の実施例1において、Alの蒸着工程を説明するための断面図。
【図7】本発明の実施例1において、Au薄膜の形成工程を説明するための断面図。
【図8】本発明の実施例2で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図9】本発明の実施例3で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図10】本発明の実施例4で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図11】本発明の実施例5において、陽極酸化工程を説明するための断面図。
【図12】本発明の実施例5において、アルミナ層の除去工程を説明するための断面図。
【図13】本発明の実施例5で製造された電子源の構造を示す断面図。
【図14】実施例1〜9で得られた電子源を備えた表示装置において、特性を調べる方法を模式的に示す図。
【符号の説明】
1………多孔質絶縁体層、1a、22………ナノホール、2………第1の導電体層、3………導体または半導体から成る導通層、4………バリア層、5………第2の導電体層、6………リアプレート、7………フェースプレート、10………蛍光体スクリーン、11………メタルバック層、21,35、………陽極酸化層、22,38………ナノホール、23………多孔質アルミナ層、24………アルミナから成るバリア層、26………Al充填層、27………Al層、28,41………Au薄膜、29………カーボン導通層、30………カーボン層、31………第1電極側Au薄膜、32,39………Ni埋め込み層、33………酸化タンタル層、36………ガラス基板、37………陽極酸化後残留したアルミニウム層、40………シリカ層
Claims (14)
- 少なくとも一方の主面側に開口部を持つように垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質絶縁体層と、
前記多孔質絶縁体層の前記微細孔の開口部側の主面に配設された第1の導電体層と、
前記微細孔の前記開口部と反対側の端部(以下、底部側端部と示す。)を閉塞するように形成された、誘電体から成るバリア層と、
前記多孔質絶縁体層の前記微細孔内に形成された、前記第1の導電体層と電気的に接する導体または半導体層と、
前記バリア層の上に形成された第2の導電体層とを備え、
前記微細孔の底部側端部と前記第2の導電体層とが、前記バリア層により隔てられ、かつ前記第1の導電体層と前記第2の導電体層との間に印加される電圧により、前記第2の導電体層から前記バリア層に向う方向と反対方向に電子が放出されることを特徴とする電子源装置。 - 前記微細孔を有する多孔質絶縁体層が、多孔質アルミナ層であることを特徴とする請求項1記載の電子源装置。
- 前記多孔質アルミナ層が、アルミニウムを主成分とする層の陽極酸化により得られた酸化アルミニウム層であることを特徴とする請求項2記載の電子源装置。
- 前記バリア層が、前記多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と同じ絶縁体から成る層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子源装置。
- 前記バリア層が、前記多孔質絶縁体層を構成する絶縁体と別の誘電体から成る層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子源装置。
- 前記第2の導電体層を間に挟んで前記第1の導電体層と反対側に、第3の電極が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子源装置。
- 前記第1の導電体層と前記第2の導電体層の少なくとも一方がパターン化されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の電子源装置。
- アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化することにより、一方の主面に開口部を有し該主面に対して垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質アルミナ層を形成する陽極酸化工程と、
前記多孔質アルミナ層の前記微細孔内に、一端が前記微細構の底端部に達し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する工程と、
前記多孔質アルミナ層を前記導電性基板から分離する工程と、
分離された前記多孔質アルミナ層における前記微細孔の開口部側の主面に、前記導体または半導体層と電気的に接する第1の導電体層を形成する工程と、
前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、直接あるいは誘電体層を介して第2の導電体層を形成する工程とを備え、
前記陽極酸化工程において、前記微細孔の底端部と前記導電性基板との間に、前記アルミナから成るバリア層を形成することを特徴とする電子源装置の製造方法。 - 前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、陽極酸化により形成される誘電体とは別の誘電体から成る層を形成する工程と、この誘電体層の上に第2の導電体層を形成する工程とを備えることを特徴とする請求項8記載の電子源装置の製造方法。
- アルミニウムを主成分とする導電性基板を陽極酸化することにより、一方の主面に開口部を有し該主面に対して垂直方向に配置された多数の微細孔を有する多孔質アルミナ層を形成する陽極酸化工程と、
前記多孔質アルミナ層を前記導電性基板から分離する工程と、
分離された前記多孔質アルミナ層の前記微細孔内に、一端が前記微細孔の底端部に達し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する工程と、
前記多孔質アルミナ層における前記微細孔の開口部側の主面に、前記導体または半導体層と電気的に接する第1の導電体層を形成する工程と、
前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、直接あるいは誘電体層を介して第2の導電体層を形成する工程とを備え、
前記陽極酸化工程において、前記微細孔の底端部と前記導電性基板との間に、前記アルミナから成るバリア層を形成することを特徴とする電子源装置の製造方法。 - 前記多孔質アルミナ層の前記微細孔内に、一端が前記微細孔の底端部に達し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する工程と、前記多孔質アルミナ層における前記微細孔の開口部側の主面に、前記導体または半導体層と電気的に接する第1の導電体層を形成する工程とが、同一の工程であることを特徴とする請求項10記載の電子源装置の製造方法。
- 前記多孔質アルミナ層の前記微細孔の底端部側の主面に、陽極酸化により形成される誘電体とは別の第2の誘電体から成る層を形成する工程と、前記第2の誘電体層の上に第2の導電体層を形成する工程とを備えることを特徴とする請求項10記載の電子源装置の製造方法。
- 基板上にアルミニウムを主成分とする導電層を形成する工程と、
前記導電層の前記基板側を導電層のままで残しながら陽極酸化することにより、該基板上に残した前記導電層である第1の導電体層、および該第1の導電体層上に主面に開口部を有し垂直方向に配置された微細孔を有する多孔質アルミナ層を同時に形成する陽極酸化工程と、
前記多孔質アルミナ層において前記微細孔の底端部側のアルミナ層を除去し、前記微細孔を前記第1の導電体層に接続する工程と、
前記多孔質アルミナ層の微細孔内に、一端が前記第1の導電体層と電気的に接続し、他端が前記微細孔の少なくとも開口部近傍に達する導体または半導体層を形成する埋め込み層工程と、
前記微細孔内に導体または半導体の埋め込み層が形成された前記アルミナ層の表面に、前記微細孔の開口部を閉塞するように誘電体からなるバリア層を形成する工程と、
前記バリア層の表面に第2の導電体層を形成する工程とを備えることを特徴とする電子源装置の製造方法。 - 互いに対向して配置された第1の基板および第2の基板と、前記第1の基板の内面に設けられた蛍光体層と、前記第2の基板の内面側に設けられ、前記蛍光体層を励起する電子を放出する電子源とを備えた表示装置であり、
前記電子源は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の電子源装置であることを特徴とする表示装置。
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