JP2004005049A - クロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法及び軌跡制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶコーナ補間方法において、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力工程と、この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出工程とを備える。これらの指定データを使用すると、コーナ補間を行う設計者がクロソイドスプラインの軌跡を直感的に想像することができる。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、CP(Continuous Path)と呼ばれる途中経過点の軌跡を要求するロボット又は数値制御機械の工具等の軌跡補間制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ロボット又は数値制御機械の工具等の運動には、PTP(Point to Point)と呼ばれる出発点と到着点のみを指定して軌跡を問わない制御と、CP(Continuous Path)と呼ばれる途中経過点の軌跡を要求するものとがある。
【0003】
ロボット又は数値制御機械の工具等の移動軌跡として、例えば図11に示すように90°に折れ曲がる直線軌跡を得たいときに、始点1からコーナ点2に至る直線と、コーナ点2から終点3に至る直線との2つの直線のみを指定したとする(直線補間法)。実際の装置は慣性を持つためコーナ点2で直角に折れ曲がることができずに直線の経路4から離れてしまう。
【0004】
また図12に示すように直線と直線とを点2,2´にて切り離し、この間を半径Rの円弧4で繋ぐ円弧補間法も採用されている。しかし円弧補間法では、直線と円弧4の繋ぎ目で曲率が不連続になり、曲率の不連続は加速度の不連続を招くので、高速化の障害になる。
【0005】
この直線補間法及び円弧補間法で生じる問題を防ぐために、直線と直線とを円弧の代わりにクロソイドスプラインで繋ぐ補間法が知られている。クロソイドスプラインは曲率が曲線の工程(ストローク)に比例して変化する曲線である。クロソイドスプラインを用いることによって、きわめて滑らかでうねりの少ない、高速運動に適した軌跡を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
円弧補間法では、円弧補間部分の半径Rを指定することで直感的に円弧の軌跡を想像することができる。しかしながらクロソイド補間法では、軌跡自体が円弧と異なるため、半径Rを指定するといった、軌跡を直感的に想像できる指定ができない。道路の設計に用いられるクロソイド補間法のR(高速道路にある“R=”といった標識)は、補間区間の曲率半径の平均値を表しており、この曲率半径の平均値Rを指定しても軌跡を直感的に想像するのが難しい。
【0007】
そこで本発明は、クロソイドスプラインを用いたコーナ補間法においても、クロソイド補間を行う設計者が軌跡を直感的に想像することができるコーナ補間方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0009】
請求項1の発明は、プログラムされたコンピュータによって、2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶコーナ補間方法であって、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力工程(S2)と、この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出工程(S3〜S5)とを備えるクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法により、上述した課題を解決する。
【0010】
これらの指定データを使用すると、コーナ補間を行う設計者がクロソイドスプラインの軌跡を直感的に想像することができる。指定データのうちのどれを入力するかは、クロソイドスプラインの軌跡の用途に応じて決められる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法において、あらかじめ直線の始点(LP1)、コーナ点(LP2)及び直線の終点(LP3)の3点の座標データが入力される座標データ入力工程(S1)を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、2本の直線で構成されるコーナを決定することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法において、前記クロソイドスプライン算出工程(S3〜S5)は、前記指定データに基づいて、クロソイドスプラインの開始点(CP1)、2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点である中間点(CP2)、及びクロソイドスプラインの終了点(CP3)の座標データを演算する座標データ演算工程(S4)と、クロソイドスプラインの開始点(CP1)、中間点(CP2)、及び終了点(CP3)の点列を、2つのクロソイドセグメント(20a,20b)を用いて補間する補間工程(S5)と、を有することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、2つのクロソイドセグメントで構成されるクロソイドスプラインを算出することができる。クロソイドセグメントには曲率0の点が1点しかないので、単一のクロソイドセグメントではコーナを曲率連続に結ぶことができない。そこでクロソイドスプラインをペアで使うことになる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法において、前記指定データ入力工程(S2)では、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちのいずれか一つのみが入力され、前記座標データ演算工程(S4)では、入力された一つの指定データに基づいて、クロソイドスプラインがコーナからはみ出さず、且つクロソイドスプラインの中間点(CP2)がコーナ点(LP2)に最も近くになるように、残りの指定データを演算することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、クロソイドスプラインがコーナからはみ出さず、よりコーナ点(LP2)に近い軌跡を描くので、クロソイドスプラインによるコーナ軌跡制御の長所を最大限に活用することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし4いずれかに記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法において、算出されたクロソイドスプラインを表示装置に表示する表示工程(S6)を備えることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、設計者がクロソイドスプラインの軌跡を認識することができる。
【0019】
また請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし5いずれかに記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法により算出されるクロソイドスプラインの軌跡に基づいて、被制御部材の運動を制御してもよい。
【0020】
本発明のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法は、コンピュータに直接記憶させる他、請求項7に記載したように、フレキシブルディスク(FD)、や光磁気ディスク(MO)あるいはCD−R等の従来知られた種々の記録媒体に記憶させておき、必要に応じてコンピュータに読み込ませて使用することができる。
【0021】
すなわち請求項7の発明は、2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶためにコンピュータを、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力手段と、この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出手段として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を要旨とする。
【0022】
また本発明は、請求項8に記載のように、2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶためにコンピュータを、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力手段と、この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出手段として機能させるためのプログラムとしても構成することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態におけるコーナ補間方法について説明する。本実施形態のコーナ補間方法は、2本の直線で構成されるコーナの間を滑らかなクロソイドスプラインで結ぶものであり、2本の直線のなす角度は例えば90°に設定される。このコーナ補間方法で算出されたクロソイドスプラインの軌跡に基づいて、ロボットのアーム又は数値制御機械の工具等の被制御部材の運動が制御される。
【0024】
図1は、コーナ補間方法が実行される制御装置のシステム構成図の一例を示す。この制御装置は例えばXYテーブルを動かすのに用いられる。制御装置は、コンピュータとしてのパーソナルコンピュータ5(以下パソコン5という)と、パソコン5にイーサネット(登録商標)、USB等のインタフェース6を介して接続されるコントローラ7と、パソコン5に接続されるキーボードやマウス等の入力装置8とを備える。コントローラ7にはX軸及びY軸サーボアンプ9,10が接続され、X軸及びY軸サーボアンプ9,10にはX軸及びY軸サーボアンプ9,10によって駆動されるX軸及びY軸サーボモータ11,12が接続される。X軸及びY軸サーボモータ11,12はXYテーブルの一部を構成する。
【0025】
パソコン5は、コーナ補間方法の各工程を実行する。具体的にはクロソイドスプラインの軌跡を算出し、クロソイドスプラインの軌跡から時間ごとの各軸の変位データを算出し、時間ごとの各軸の変位データをコントローラ7に送信する。クロソイドスプラインの軌跡を算出するためのプログラムは、Visual Basic言語、C言語、アセンブラ言語等のプログラム言語を用いて作成され、パソコン5にインストールされている。なおコーナ補間方法の各工程は、パソコン5に限られず、マイクロコンピュータ(MPU)等のコンピュータにより実行されてもよい。
【0026】
コントローラ7は、コーナ補間方法により算出されるクロソイドスプラインの軌跡に基づいて、被制御部材の運動を制御する軌跡制御方法の各工程を実行する。具体的には各軸の変位データに基づき、X軸及びY軸サーボモータ11,12を制御するための制御信号を生成し、制御信号をX軸及びY軸サーボアンプ9,10に出力する。X軸及びY軸サーボアンプ9,10は、コントローラ7からの信号に応じてX軸及びY軸サーボモータ11,12を駆動させる。
【0027】
コントローラ7はこの他にも、処理された制御信号を一次的に保管するバッファ機能、エンコーダ等の角度検出装置で検出されたX軸及びY軸サーボモータ11,12の回転角度に基づいてX軸及びY軸サーボモータ11,12をフィードバック制御するフィードバック制御機能、X軸及びY軸サーボモータ11,12をシーケンス的に制御するシーケンス制御機能等を有していてもよい。なお、コントローラ7を設けることなく、インタフェースボードをパソコン5の拡張スロットに挿入し、パソコン5とX軸及びY軸サーボアンプ9,10を直接接続してもよい。
【0028】
XYテーブルには被制御部材として例えば接着剤、シール剤等の塗布装置が取り付けられ、XYテーブルはこの塗布装置を2本の直線で構成されるコーナに沿って移動させる。塗布量を一定にさせるためには塗布装置を一定の速度で移動させなければいけない。上述のように直線補間法では塗布装置が慣性を持つので、塗布装置をコーナ点で直角に折り曲げることができず、また円弧補間法では直線と円弧の繋ぎ目で曲率が不連続になり、振動が発生してしまう。このため、2本の直線で構成されるコーナを、クロソイドスプラインを用いて結ぶコーナ補間法が採用される。被制御部材には、塗布装置以外に、溶接、塗装、加工、作図等の仕事を行う装置を用いることもできる。
【0029】
以下パソコン5で実行されるコーナ補間方法の処理のフローについて詳述する。
【0030】
まず、クロソイド曲線、クロソイドセグメント、及びクロソイドスプラインに関する基本的な理論について簡単に説明する。クロソイド曲線は図2に示すように、らせん上の曲線であり、らせんの始点からの曲線の長さに比例して曲率(曲率半径の逆数)が変化する。
【0031】
クロソイドセグメントは、直線から線分を、円から円弧を切り出すのと同様に、クロソイド曲線の一部を切り出したものである。
【0032】
クロソイドスプラインは、クロソイドセグメントを接線方向と曲率をそれぞれ連続させて滑らかにつなぎ合わせたもので、クロソイドセグメントの集合として定義される。
【0033】
まずクロソイド曲線をはじめ、関連する用語の定義を示す。
【0034】
【数1】
【0035】
クロソイド基本式は上記定義式を順次積分して得られる。
【0036】
【数2】
【0037】
図2は基本クロソイド曲線を示しており、この曲線はコルニューのらせんと呼ばれる。Cs,Snはフレネル積分として知られている。
【0038】
なお数式の表現として、本明細書においては以下のような記載方法を採用する。
【0039】
【数3】
【0040】
次にクロソイドセグメントについて説明する。クロソイドセグメントはクロソイド曲線の一部を切り出したものである。上記基本式で始点P0及び終点P1を確定し、弧長を0からhとして定積分する。また区間を(S=0..1)と無次元化し、角度変化の円弧成分(円弧増分)としての曲角φv=φ´0・hと、同じくクロソイド成分(クロソイド増分)としての縮角φu=φ″/2・h^2とを定義する。クロソイドセグメントの基本式は(1)より
【数4】
と表される。
【0041】
図3はクロソイドセグメントを示す。クロソイドセグメントの形は、曲角φvと縮角φuとのみで決まり、大きさはh、位置はP0(x0,y0)、方向はφ0で決まる。弧長hと曲角φvと縮角φuとを合わせて区間助変数と称する。直線と円とクロソイドとは別々の図形である。直線は無限で方向があり、円は有限で大きさがあり、クロソイドは長さが無限、存在範囲が有限で方向も大きさもある。先のクロソイドセグメントの定義によって、線分は円弧の部分集合、円弧はクロソイドセグメントの部分集合となる。
【0042】
図4はパソコンにより実行される処理のフローを示す。
【0043】
まず、オペレータがマウス、キーボード等の入力装置を用いて、直線の始点LP1、コーナ点LP2及び直線の終点LP3の3点の座標データを入力する(S1)。LP1〜LP3の3点の座標データの入力により、図5に示すように2本の直線で構成される補間すべきコーナが特定される。
【0044】
次に、オペレータがマウス、キーボード等の入力装置を用いて、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの一つの指定データを入力する(S2)。具体的には、例えば指定データが入力できるようなウィンドウが表示装置に表示され、オペレータがウィンドウ内に指定データを入力する。
【0045】
図6に示すように、丸め長さd1は、2直線の交点LP2からクロソイドスプラインの開始点CP1あるいは終了点CP3までの距離である。丸め幅d2は、2直線の交点LP2から2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点CP2までの距離である。最小曲率半径rは、クロソイドスプラインの最小曲率であり、交点CP2におけるクロソイドスプラインの曲率の逆数である。
【0046】
次に、入力された一つの指定データに基づいて、クロソイドスプラインがコーナからはみ出さず、且つクロソイドスプラインの中間点CP2がコーナ点LP2に最も近くなるように、残りの指定データを演算する(S3)。
【0047】
コーナをクロソイドスプラインにより補間する場合、コーナの外側にはみださないように補間するためには、クロソイドスプラインの中間点CP2のとりうる範囲は自ずと決まってくる。その範囲を図7に示す。中間点CP2をこの範囲外に設定すると、コーナの外側にはみだしてしまう。
【0048】
その範囲のうち、クロソイドスプラインによるコーナ軌跡制御の長所を最大限に活用するためには円弧より可能な限り外側にある方がよい。そのとき、クロソイドセグメントの区間パラメータである曲角φv=0とする。その結果90°のコーナの場合は、φv+φu=π/2という関係式(φ1=φ0+φv+φuという関係式を使用)があるので、縮角φuは縮角φu=π/2になる。この条件の下のクロソイドスプラインを純クロソイドという。しかし純クロソイドであっても、中間点CP2の計算は煩雑であり、高速演算装置を使用しても繰り返し演算が非常に多い計算になってしまう。
【0049】
一方クロソイドスプラインがコーナからはみ出さず、且つクロソイドスプラインの中間点CP2がコーナ点LP2に最も近くを通るという条件があれば、丸め長さd1と丸め幅d2と最小曲率半径rとの関係式が比で求められることがわかっている。この丸め長さd1と丸め幅d2と最小曲率半径rとの関係式を用いると、例えば丸め長さd1のみが指定されたとき、この丸め長さd1と丸め幅d2と最小曲率半径rとの関係式から、残りの丸め幅d2と最小曲率半径rが演算される。これらの指定データに基づいて、後述するステップS4で中間点の座標データを演算することができる。
【0050】
次に、入力された指定データ及び演算された指定データに基づいて、クロソイドスプラインの開始点CP1、2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点である中間点CP2、及びクロソイドスプラインの終了点CP3の座標データを演算する(S4)。指定データのうち丸め長さd1及び丸め幅d2から、開始点CP1、中間点CP2、及びクロソイドスプラインの終了点CP3を求めることができる。
【0051】
次に図8に示すように、クロソイドスプラインの開始点CP1、中間点CP2、及び終了点CP3の点列を、2つのクロソイドセグメント20a,20bを用いて補間する(S5)。直線との連続性を考慮すると、クロソイドスプラインの開始点CP1での曲率0で、終了点CP3での曲率0である。クロソイドセグメントには曲率0の点が1点しかないので、単一のクロソイドセグメントでは曲率連続に結ぶことができない。そこで2つのクロソイドセグメントをペアで使うことになる。
【0052】
補間することで、2つのクロソイドセグメント20a,20bの区間パラメータである弧長h、曲角φv、縮角φuを求めることができる。(クロソイドセグメントを用いた補間法の発明については、例えば特開平1−50181号公報、特開昭64−1008号公報、特開平6−168022号公報、特開平6−259567号公報、特開2000−82152公報等参照。)クロソイドセグメントを用いた補間法は、与えられた点列の区間ごとに短いクロソイドセグメントを作成し、これらのセグメントを接続部において接線方向が連続になるように接続した補間法である。
【0053】
なお本実施形態では、開始点CP1、中間点CP2、及び終了点CP3の点列を補間することで、2つのクロソイドセグメントの区間パラメータを求めているが、指定データ及びφv+φu=π/2という関係式等から区間パラメータを直接求めてもよい。
【0054】
上記ステップS3〜S5によって、クロソイドスプラインが算出され、算出されたクロソイドスプラインはディスプレイ、プリンタ等の表示装置に表示される(S6)。
【0055】
次に、クロソイドスプラインの軌跡及び速度曲線に基づいて、軌跡上を動く各軸の変位データを時間ごとのデータとして演算する(S7)。
【0056】
最後に、各軸の変位データをコントローラ7に出力する(S8)。
【0057】
コントローラ7は、各軸の変位データを受信し、受信した変位データに基づき、X軸サーボアンプ9及びY軸サーボアンプ10を介してX軸サーボモータ11及びY軸サーボモータ12を作動させる。これにより塗布装置がクロソイドスプラインの軌跡に沿って滑らかに移動する。
【0058】
丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの指定データのいずれか一つを使用すると、コーナ補間を行う設計者がクロソイドスプラインの軌跡を直感的に想像することができる。
【0059】
指定データのうちのどれを入力するかは、クロソイドスプラインの軌跡の用途に応じて決められる。以下この用途について説明する。
【0060】
丸め長さd1、丸め幅d2については円弧補間においても適用できるので、この2つのパラメータを指定したときのクロソイド補間と円弧補間との比較を図9及び図10に示す。最小曲率半径rについて比較がないのは、円弧は曲率半径一定のため、最小曲率半径rが円弧の半径R及び丸め長さd1と同じになるからである。
【0061】
図9に示すように丸め長さd1を等しくすると、円弧より外側をクロソイド曲線が通っていることがわかる。このことから、丸め長さd1を指定するときは、例えば90度のコーナーを裁断加工する際、とりしろが点CP1より内側に入ってはいけないという制約があり、且つ直線と曲線の接合部で振動を抑えたいという用途に向くことがわかる。
【0062】
図10に示すように、丸め幅d2を指定するときは、とりしろは点CP1よりも内側に入ってもいいが、直線と曲線の接合部の振動を可能な限り抑えたいという用途に向く。
【0063】
r(最小曲率半径)を指定するときは、等速で軌跡上をツールヘッド等の工具が動く際、遠心加速度に制限をつけたいという用途に向く。
【0064】
本実施形態のコーナ補間方法は、コンピュータに直接記憶させてもよいが、フレキシブルディスク(いわゆるFD)や光磁気ディスク(いわゆるMO)あるいはCD−ROM等の種々の記録媒体に記憶させてもよい。このようにしておくと、本実施形態のコーナ補間方法を実施すべきコンピュータに読み込ませ、該コンピュータに実施させることが容易になる。
【0065】
また本発明は上記実施形態に限られず、本発明の範囲を逸脱しない範囲で種々変更してもよい。例えば上記実施形態では直線と直線のなす角度が90°に設定されているが、任意の角度に設定されていても本発明のコーナ補間方法を適用することができる。
【0066】
さらに上記実施形態では、パソコン及びコントローラを用いて被制御部材を制御する方法について説明したが、これら以外にも、与えられたデータに基づいて制御対象を移動させることができるNC(数値制御)コントローラのようなものを用いてもよい。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明は、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの一つの指定データが入力される指定データ入力工程と、この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出工程とを備える。これらの指定データを使用すると、コーナ補間を行う設計者がクロソイドスプラインの軌跡を直感的に想像することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態におけるコーナ補間方法が実行される制御装置のシステム構成図。
【図2】基本クロソイド曲線を示す図。
【図3】クロソイドセグメントを示す図。
【図4】パソコンにより実行される処理のフローを示すフローチャート。
【図5】2本の直線で構成される補間前のコーナを示す図。
【図6】丸め長さd1、丸め幅d2、最小曲率半径rの定義を示す図。
【図7】円弧補間とクロソイド補間を示す図。
【図8】クロソイドセグメントを用いてコーナ補間した状態を示す図。
【図9】丸め長さd1を共通とした円弧補間とクロソイド補間の違いを示す図。
【図10】丸め幅d2を共通とした円弧補間とクロソイド補間の違いを示す図。
【図11】直線補間を示す図。
【図12】円弧補間を示す図。
【符号の説明】
d1…丸め長さ
d2…丸め幅
r…最小曲率半径
LP1…直線の始点
LP2…コーナ点
LP3…直線の終点
CP1…クロソイドスプラインの開始点
CP2…2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点である中間点
CP3…クロソイドスプラインの終了点
S1…座標データ入力工程
S2…指定データ入力工程
S3〜S5…クロソイドスプライン算出工程
S4…座標データ演算工程
S5…補間工程
S6…表示工程
20a,20b…クロソイドセグメント
Claims (8)
- プログラムされたコンピュータによって、2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶコーナ補間方法であって、
丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力工程と、
この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出工程とを備えるクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法。
ここで、
丸め長さd1:2直線の交点からクロソイドスプラインの開始点あるいは終了点までの距離,
丸め幅d2:2直線の交点から2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点までの距離,
最小曲率半径r:クロソイドスプラインの最小曲率半径。 - 前記クロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法は、
あらかじめ直線の始点(LP1)、コーナ点(LP2)及び直線の終点(LP3)の3点の座標データが入力される座標データ入力工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法。 - 前記クロソイドスプライン算出工程は、
前記指定データに基づいて、クロソイドスプラインの開始点(CP1)、2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点である中間点(CP2)、及びクロソイドスプラインの終了点(CP3)の座標データを演算する座標データ演算工程と、
クロソイドスプラインの開始点(CP1)、中間点(CP2)、及び終了点(CP3)の点列を、2つのクロソイドセグメントを用いて補間する補間工程と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法。 - 前記指定データ入力工程では、丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちのいずれか一つのみが入力され、
前記座標データ演算工程では、入力された一つの指定データに基づいて、クロソイドスプラインがコーナからはみ出さず、且つクロソイドスプラインの中間点(CP2)がコーナ点(LP2)に最も近くになるように、残りの指定データを演算することを特徴とする請求項3に記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法。 - 前記クロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法はさらに、算出されたクロソイドスプラインを表示装置に表示する表示工程を備えることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法。
- 請求項1ないし5いずれかに記載のクロソイドスプラインを用いたコーナ補間方法により算出されるクロソイドスプラインの軌跡に基づいて、被制御部材の運動を制御することを特徴とする軌跡制御方法。
- 2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶためにコンピュータを、
丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力手段と、
この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出手段として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
ここで、
丸め長さd1:2直線の交点からクロソイドスプラインの開始点あるいは終了点までの距離,
丸め幅d2:2直線の交点から2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点までの距離,
最小曲率半径r:クロソイドスプラインの最小曲率半径。 - 2本の直線で構成されるコーナをクロソイドスプラインを用いて結ぶためにコンピュータを、
丸め長さd1、丸め幅d2及び最小曲率半径rの3つの指定データのうちの少なくとも一つの指定データが入力される指定データ入力手段と、
この指定データに基づいて、クロソイドスプラインを算出するクロソイドスプライン算出手段として機能させるためのプログラム。
ここで、
丸め長さd1:2直線の交点からクロソイドスプラインの開始点あるいは終了点までの距離,
丸め幅d2:2直線の交点から2直線の2等分線とクロソイドスプラインとの交点までの距離,
最小曲率半径r:クロソイドスプラインの最小曲率半径。
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