JP2004002634A - ホットメルト接着剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるホットメルト接着剤を提供する。
【解決手段】少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなるホットメルト接着剤であって、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることを特徴とするホットメルト接着剤、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、コロイド粒子の直径が100nm〜5μmであることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、コロイド粒子の含有量が0.1〜7.5重量%であることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、および、固化状態において、ベース樹脂に対する非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることを特徴とする上記ホットメルト接着剤。
【選択図】 なし
【解決手段】少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなるホットメルト接着剤であって、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることを特徴とするホットメルト接着剤、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、コロイド粒子の直径が100nm〜5μmであることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、コロイド粒子の含有量が0.1〜7.5重量%であることを特徴とする上記ホットメルト接着剤、および、固化状態において、ベース樹脂に対する非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることを特徴とする上記ホットメルト接着剤。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホットメルト接着剤は、無溶剤であり、瞬間接着、高速接着が可能であるという接着工程および経済面での利点を備えているため、包装、製本、木工等の分野を主体として大量に使用されている。上記ホットメルト接着剤のベース樹脂(主成分)としては、接着性、柔軟性、加熱安定性、価格等のバランスに優れることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン系共重合体が汎用されている。また、一般的に、ホットメルト接着剤は、これらのベース樹脂に対して、粘接着性向上剤としての粘着性付与樹脂や機能改質剤としてのワックス等が添加されてなる。
【0003】
上記各成分のうち、ベース樹脂は、ホットメルト接着剤にバルク特性を付与するための凝集力を発現するものであり、強靱で引張応力や圧縮応力に対して強い性質を有している。また、粘着性付与樹脂は、ホットメルト接着剤に被着体に対する濡れ、浸透、タック(粘着性)等を付与して、粘接着性を向上させる機能を有する。上記粘着性付与樹脂は、一般に無定形でベース樹脂よりも高いガラス転移温度(Tg)を有しているため、ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させる機能を有するものでもある。さらに、ワックスは、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させて、塗布性を向上させたり、ホットメルト接着剤に速固化性を付与して、高速接着を可能にする機能を有する。
【0004】
上記ホットメルト接着剤は高温で塗布する必要があるため、塗布時にはホットメルトアプリケーターと言われる専用の塗布装置が用いられる。このホットメルトアプリケーターは、通常、ホットメルト接着剤を120〜190℃程度まで加熱して、圧縮空気やギヤポンプを用いることにより、ノズルの先端から間欠的に吐出(ショット)して、被着体に対する塗布を行う。その際、一般的に、ホットメルト接着剤を吐出するノズルの先端から被着体の間で吐出毎にホットメルト接着剤が有する曳糸性に起因する糸状物が発生する。この糸状物が発生すると、様々な使用過程において、周辺装置や被着体を汚染したり、センサーの誤作動や印字ミス等を引き起こすという問題点が発生する。
【0005】
ホットメルト接着剤の上記曳糸性を抑制する旧来の方法としては、例えば、ホットメルト接着剤の溶融粘度を下げる方法が挙げられる。この方法によれば、確かにホットメルト接着剤の曳糸性をある程度抑制することはできるが、溶融粘度を下げるがために、ホットメルト接着剤の強度低下を同時に引き起こし、十分な耐熱クリープ力や耐寒接着性を得られないという問題点がある。
【0006】
これに対して、一定の制約条件を設けてホットメルト接着剤の溶融粘度を下げる方法が開示されている。
【0007】
この方法によれば、確かに発生する糸状物の量を減らし、十分な接着性能を発現させることができる。しかしながら、発生する糸状物の形状を細かくすることはできても、糸状物を短くしたり、糸状物の発生を無くしたりすることはできないという問題点がある。
【0008】
また、エチレン−不飽和エステル共重合体、粘着性付与樹脂およびワックスからなるホットメルト接着剤において、上記ホットメルトマトリックス中に低密度ポリエチレン(高圧法ポリエチレン)を微粒化分散状態で存在させることにより、ホットメルト接着剤の曳糸性を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この方法は、ホットメルト接着剤中に低密度ポリエチレンを微粒化分散状態で存在させることにより、発生する糸状物の長さを短くして曳糸性に起因する問題点の発生を抑制しようとするものであるが、低密度ポリエチレンの微粒化分散の程度がはっきりしないため、ホットメルト接着剤の配合組成によっては曳糸性に大きなばらつきを生じる恐れがあり、従来の製造設備を用いて曳糸性の小さいホットメルト接着剤を効率的かつ安定的に製造することは困難であるという問題点がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−236543号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるホットメルト接着剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)によるホットメルト接着剤は、少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなるホットメルト接着剤であって、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1に記載のホットメルト接着剤において、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤において、コロイド粒子の直径が100nm〜5μmであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤において、コロイド粒子の含有量が0.1〜7.5重量%であることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項5に記載のホットメルト接着剤は、上記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤において、固化状態において、ベース樹脂に対する非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることを特徴とする。
【0017】
本発明のホットメルト接着剤に用いられるベース樹脂(主成分)としては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種ベース樹脂で良く、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体(EnBA)などのエチレン系共重合体;アモルファスポリα−オレフィン(APAO)、アタクチックポリプロピレン(APP)、変性ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;飽和ポリエステル系樹脂;ウレタン系樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などの熱可塑性ブロック共重合体等が挙げられ、なかでも、塗布性、接着性、柔軟性、加熱安定性、価格等のバランスに優れるホットメルト接着剤を得られやすいことから、上記エチレン系共重合体が好適に用いられる。これらのベース樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0018】
上記変性ポリエチレンとは、APAOやAPPのような従来の製造方法で製造されたポリオレフィン系樹脂ではなく、例えば特開平10−72574号公報に記載されているような、シングルサイトメタロセン触媒を用いて製造された、エチレンと炭素原子数が3〜12個の少なくとも1種類の他のα−オレフィンとからなる直鎖状共重合体(メタロセン触媒変性ポリエチレン)のことである。この変性ポリエチレンは、EVAと類似の性能を発現することができるとされているが、EVAとは異なり、非極性の樹脂である。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤に用いられるベース樹脂に対する非相溶性成分(以下、単に「非相溶性成分」と略記する)としては、上記ベース樹脂に対して非相溶性であって、120〜190℃での溶融状態において、ホットメルト接着剤中にコロイド粒子として分散しうる成分であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン;SBS、SIS、SEBS、SEPSなどの熱可塑性ブロック共重合体;ヒュームドシリカ等が挙げられる。これらの非相溶性成分は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、上記低密度ポリエチレンとは、メルトインデックスが3〜100、融点が100〜115℃、密度が0.91〜0.93の物性を有するポリエチレンのことである。
【0020】
上記非相溶性成分は、ホットメルト接着剤中に少量含有され、120〜190℃での溶融状態において、コロイド粒子として分散することにより、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を効果的に低減させる機能を発現する。もし上記成分がベース樹脂に対して相溶性であると、ホットメルト接着剤中に均一に溶融してしまうので、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を低減させることができなくなる。また、もし上記成分がベース樹脂に対して完全非相溶性であって、コロイド粒子として分散できないと、溶融状態で相分離してしまうので、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を低減させることができなくなる。
【0021】
前記ベース樹脂と上記非相溶性成分との組み合わせの具体例を挙げると、特に限定されるものではないが、例えば、ベース樹脂がエチレン系共重合体である場合には、非相溶性成分として低密度ポリエチレンや熱可塑性ブロック共重合体を用いることが好ましく、ベース樹脂が変性ポリエチレン(メタロセン触媒変性ポリエチレン)である場合には、非相溶性成分としてEVAを用いることが好ましく、ベース樹脂がエチレン系共重合体および熱可塑性ブロック共重合体以外の樹脂である場合には、非相溶性成分としてヒュームドシリカを用いることが好ましい。また、これらの非相溶性成分すなわち低密度ポリエチレン、熱可塑性ブロック共重合体、ヒュームドシリカ等の種類は、ベース樹脂の分子量やベース樹脂を構成する共重合モノマーの含有量等に対応して適宜選定されることが好ましい。
【0022】
本発明のホットメルト接着剤においては、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが必要である。このことにより、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を効果的に低減させることができる。
【0023】
上記コロイド粒子は、特に限定されるものではないが、直径が100nm〜5μmであることが好ましい。コロイド粒子の直径が100nm未満であるか、5μmを超えると、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがある。なお、上記コロイド粒子の直径は透過型電子顕微鏡による分析によって確認することができる。
【0024】
上記コロイド粒子は、特に限定されるものではないが、ホットメルト接着剤中における含有量が0.1〜7.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5.0重量%である。ホットメルト接着剤中におけるコロイド粒子の含有量が0.1重量%未満であると、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがあり、逆にホットメルト接着剤中におけるコロイド粒子の含有量が7.5重量%を超えると、ドメインとマトリクスとの逆転が一部で起こり始めて、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果が損なわれたり、ホットメルト接着剤全体の相溶性低下を来して、熱安定性の低下が顕著になることがある。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることが好ましい。このことにより、溶融状態にあるホットメルト接着剤中で前記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが裏付けられ、かつ、ホットメルト接着剤は塗布時の曳糸性がより小さくなる。
【0026】
通常、可視光線透過率は常温で測定されるものであるが、ホットメルト接着剤には後述するワックスが高結晶性成分として一般的に配合されているので、結晶化したワックスによる濁りの影響で常温では可視光線透過率を測定することが困難である。したがって、本発明の好ましい態様においては、120〜190℃での溶融状態にあるホットメルト接着剤の可視光線透過率を測定し、その値を1〜20%の範囲とする。
【0027】
上記可視光線の波長が600nm未満であると、ホットメルト接着剤には後述する粘着性付与樹脂が一般的に配合されているので、粘着性付与樹脂の色調に影響されて透過できなくなる。したがって、本発明の好ましい態様においては、可視光線の波長を600〜780nmの範囲とする。
【0028】
ホットメルト接着剤の上記可視光線透過率が1%未満であると、ホットメルト接着剤を構成する各成分相互の相溶性が悪すぎて、溶融状態においてホットメルト接着剤が完全に濁っていることになり、実用性に欠けるものとなることがあり、逆にホットメルト接着剤の上記可視光線透過率が20%を超えると、前記非相溶性成分の種類が不適切であるか、非相溶性成分の配合量が少なすぎることになって、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがある。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤は、固化状態において、前記非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることが好ましい。このことにより、本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、非相溶性成分がより容易にコロイド粒子として分散しうるものとなる。その結果、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性をさらに小さくする効果が増し、発生した糸状物を瞬時に短くしたり粒状にしたりすることができ、糸状物を全く発生させないようにすることもできる。これは、溶融状態にある本発明のホットメルト接着剤に対し、エアー圧等による強い剪断力が加えられると、引き延ばされたコロイド粒子に元に戻ろうとする力が発生するのに加えて、引き延ばされたコロイド粒子が元に戻ろうとする際に、コロイド粒子表面上の襞および/または尾が周りの成分をも同時に引き寄せることによるものと考えられる。なお、上記非相溶性成分からなる襞および/または尾の有無は透過型電子顕微鏡による写真によって確認することができる。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分に加えるに、粘接着性を向上させるために、粘着性付与樹脂が配合されていることが好ましい。
【0031】
上記粘着性付与樹脂としては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種粘着性付与樹脂で良く、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂等が挙げられ、なかでも、前記ベース樹脂に対して優れた相溶性を有する粘着性付与樹脂が好適に用いられる。これらの粘着性付与樹脂は、例えば無水マレイン酸やマレイン酸エステル等でグラフト変性されたものであっても良い。また、これらの粘着性付与樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
脂肪族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、ピペリジンなどのC4もしくはC5のモノオレフィンまたはジオレフィンを主成分とする重合体等が挙げられる。これらの脂肪族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
脂環族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スペントC4留分中もしくはスペントC5留分中のジエン成分を環化二量体化後、重合させた樹脂、シクロペンタジエンなどの環化モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂等が挙げられる。これらの脂環族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
芳香族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC9もしくはC10のビニル芳香族系炭化水素を主成分とする重合体等が挙げられる。これらの芳香族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
ポリテルペン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール共重合体、α−ピネン−フェノール共重合体等が挙げられる。これらのポリテルペン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジンや、水添ロジン、不均化ロジン、二量化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジン等が挙げられる。上記ロジンエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジンとエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどとのエステル等が挙げられる。これらのロジン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
スチレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンなどの重合体等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分、および、好ましく配合される粘着性付与樹脂に加えるに、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させて、塗布性を向上させたり、ホットメルト接着剤に速固化性を付与して、高速接着を可能にさせたり等の諸機能を付与するために、ワックスが配合されていることが好ましい。
【0039】
上記ワックスとしては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種ワックスで良く、特に限定されるものではないが、例えば、フィッシャートロプシュワックスやポリエチレンワックスなどの合成系ワックスや、パラフィンワックス、精製パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然系ワックス等が挙げられ、なかでも、上記諸機能の付与効果に優れることから、融点が60〜120℃の範囲にあるワックスが好適に用いられる。これらのワックスは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分、ならびに、好ましく配合される粘着性付与樹脂およびワックスに加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が配合されていても良い。なお、軟化剤(可塑剤)やプロセスオイルは、前記非相溶性成分のコロイド粒子としての分散をより容易にするためにも用いられる。
【0041】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は、特別なものではなく、従来からホットメルト接着剤の製造に一般的に用いられている各種攪拌混練機を用いて、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分の各所定量、好ましく配合される粘着性付与樹脂および/またはワックスの各所定量、および、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類もしくは2種類以上の各所定量を、120〜190℃で加熱溶融し、均一に攪拌混練することにより、所望のホットメルト接着剤を得ることができる。
【0042】
【作用】
本発明のホットメルト接着剤は、少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなり、かつ、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散しているので、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるものである。
【0043】
また、本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態とすることにより、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが裏付けられ、かつ、塗布時の曳糸性がより小さいものとなる。
【0044】
さらに、本発明のホットメルト接着剤は、固化状態において、上記非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有しているものとすることにより、120〜190℃での溶融状態における非相溶性成分のコロイド粒子としての分散がより容易となり、かつ、塗布時の曳糸性がさらに小さいものとなる。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0046】
本実施例および比較例においては以下に示す原材料を用いた。
1.ベース樹脂
(1)メタロセン触媒変性ポリエチレン(メルトインデックス:700)
(2)EVA(商品名「ウルトラセン726」、酢酸ビニル含有量:33重量%、メルトインデックス:700、東ソー社製)
(3)EVA(商品名「エバフレックス210」、酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトインデックス:400、三井デュポンポリケミカル社製)
2.非相溶性成分
(1)EVA(商品名「スミテートMB−11」、住友化学工業社製)
(2)SIS系ホットメルト接着剤(商品名「エスダイン9189G」、積水化学工業社製)
(3)低密度ポリエチレン(商品名「ミラソン68」、三井化学社製)
3.粘着性付与樹脂
(1)水添ジシクロペンタジエン樹脂(商品名「エスコレッツ5320HC」、軟化点:125℃、トーネックス社製)
(2)非水添C9系石油樹脂(商品名「ハイレジンRS−21」、軟化点:120℃、東邦化学社製)
(3)ロジンエステル樹脂(商品名「スーパーエステルA−125」、軟化点:125℃、荒川化学工業社製)
4.ワックス
(1)フィッシャートロプシュワックス(商品名「FT−100」、融点:100℃、シェルマレーシア社製)
(2)精製パラフィンワックス(商品名「パラフィンワックスHNP−9」、融点:75℃、日本精蝋社製)
(3)パラフィンワックス(商品名「パラフィンワックス155F」、融点:68℃、日本精蝋社製)
5.酸化防止剤
商品名「イルガノックス1010」(チバスペシャリティケミカルズ社製)
【0047】
(実施例1)
メタロセン触媒変性ポリエチレン100部、水添ジシクロペンタジエン樹脂(商品名「エスコレッツ5320HC」100部、フィッシャートロプシュワックス「FT−100」42部、EVA「スミテートMB−11」4部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部を、160℃に温度設定した万能攪拌混練機(型式「25AM型」、攪拌具:フック、ダルトン社製)に順次投入し、完全に加熱溶融した後、回転数60rpmで1時間攪拌混練して、ホットメルト接着剤を製造した。
【0048】
(実施例2)
EVA(商品名「ウルトラセン726」100部、非水添C9系石油樹脂「ハイレジンRS−21」87部、精製パラフィンワックス「パラフィンワックスHNP−9」50部、SIS系ホットメルト接着剤「エスダイン9189G」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部を、160℃に温度設定したビーカーに順次投入し、完全に加熱溶融した後、ホモジナイザー用攪拌機を用いて回転数60rpmで1時間攪拌混練して、ホットメルト接着剤を製造した。
【0049】
(実施例3)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例2の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0050】
(実施例4)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0051】
(実施例5)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部とし、かつ、万能攪拌混練機「25AM型」による攪拌混練時間を2時間としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0052】
(比較例1)
ホットメルト接着剤の配合組成をメタロセン触媒変性ポリエチレン100部、水添ジシクロペンタジエン樹脂「エスコレッツ5320HC」100部、フィッシャートロプシュワックス「FT−100」42部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0053】
(比較例2)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0054】
実施例および比較例で得られた各ホットメルト接着剤の性能(▲1▼溶融状態における可視光線透過率、▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状、▲3▼塗布時の曳糸性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。なお、▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状の評価は実施例3〜実施例5のホットメルト接着剤についてのみ行った。
【0055】
▲1▼溶融状態における可視光線透過率の測定方法
160℃で加熱溶融したホットメルト接着剤を160℃に加熱したガラスセル(10mm×10mm×50mm)に入れ、透過率測定器(島津社製)を用いて、波長600nmの可視光線の透過率および波長780nmの可視光線の透過率を測定した。なお、リファレンスとしては空の上記ガラスセルを用いた。
【0056】
▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状
先ず、固化状態のホットメルト接着剤を濃度2重量%の四酸化オスミウムにより24時間染色した後、水洗した。次に、四酸化ルテニウムガスにより2時間染色した後、水洗し、カッター(商品名「REICHERT ULTRACUT S」、Leica社製)を用いて、厚み70nmの超薄切片とした。次に、この超薄切片を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−1200EXII」(JEOL社製)を用いて、加速電圧120kVの条件で観察し、倍率10200倍で写真を撮影した。次いで、撮影した写真を観察し、コロイド粒子の形状を確認した。なお、実施例3のホットメルト接着剤の写真を図1に、実施例4のホットメルト接着剤の写真を図2に、実施例5のホットメルト接着剤の写真を図3にそれぞれ示す。
【0057】
▲3▼塗布時の曳糸性
図4に示すように、ホットメルトガンの先端から距離20cmの所に被着体を垂直に配置し、その間に落下物を捕獲するための板状の受け皿を敷いておく。20℃の無風雰囲気下、下記条件で、交流電源シーケンサーを用いて、ホットメルト接着剤を600ショット/10分の条件で間欠塗布し、受け皿上に溜まった落下物の重量を測定するとともに、落下物の形状を目視で観察した。落下物の重量が重く、落下物が糸状であれば塗布時の曳糸性が大きく、落下物の重量が軽く、落下物が瞬時に粒状になれば塗布時の曳糸性が小さいと判定した。
ホットメルトアプリケーター:商品名「ノードソン3400」(ピストンポンプ式、ノードソン社製)
ホットメルトガン:H−200ガン(ノズル径:18/1000インチ、ノズル:3オリフィスノズル)
吐出エアー圧力:294kPa
タンク、ホースおよびガンの温度:175℃
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例5のホットメルト接着剤は、いずれも塗布時に発生する落下物の重量が軽く、かつ、落下物は瞬時に粒状となっており、塗布時の曳糸性が小さかった。これに対し、非相溶性成分を含有させなかった比較例1および比較例2のホットメルト接着剤は、いずれも塗布時に発生する落下物の重量が重く、かつ、落下物は容易に粒状にならず糸状のままであり、塗布時の曳糸性が大きかった。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のホットメルト接着剤は、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるとともに、様々な使用過程において、周辺装置や被着体を汚染したり、センサーの誤作動や印字ミス等を引き起こすことが殆どない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図2】実施例4で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図3】実施例5で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図4】塗布時の曳糸性の評価方法を示す断面図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホットメルト接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホットメルト接着剤は、無溶剤であり、瞬間接着、高速接着が可能であるという接着工程および経済面での利点を備えているため、包装、製本、木工等の分野を主体として大量に使用されている。上記ホットメルト接着剤のベース樹脂(主成分)としては、接着性、柔軟性、加熱安定性、価格等のバランスに優れることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エチル共重合体などのエチレン系共重合体が汎用されている。また、一般的に、ホットメルト接着剤は、これらのベース樹脂に対して、粘接着性向上剤としての粘着性付与樹脂や機能改質剤としてのワックス等が添加されてなる。
【0003】
上記各成分のうち、ベース樹脂は、ホットメルト接着剤にバルク特性を付与するための凝集力を発現するものであり、強靱で引張応力や圧縮応力に対して強い性質を有している。また、粘着性付与樹脂は、ホットメルト接着剤に被着体に対する濡れ、浸透、タック(粘着性)等を付与して、粘接着性を向上させる機能を有する。上記粘着性付与樹脂は、一般に無定形でベース樹脂よりも高いガラス転移温度(Tg)を有しているため、ホットメルト接着剤の耐熱性を向上させる機能を有するものでもある。さらに、ワックスは、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させて、塗布性を向上させたり、ホットメルト接着剤に速固化性を付与して、高速接着を可能にする機能を有する。
【0004】
上記ホットメルト接着剤は高温で塗布する必要があるため、塗布時にはホットメルトアプリケーターと言われる専用の塗布装置が用いられる。このホットメルトアプリケーターは、通常、ホットメルト接着剤を120〜190℃程度まで加熱して、圧縮空気やギヤポンプを用いることにより、ノズルの先端から間欠的に吐出(ショット)して、被着体に対する塗布を行う。その際、一般的に、ホットメルト接着剤を吐出するノズルの先端から被着体の間で吐出毎にホットメルト接着剤が有する曳糸性に起因する糸状物が発生する。この糸状物が発生すると、様々な使用過程において、周辺装置や被着体を汚染したり、センサーの誤作動や印字ミス等を引き起こすという問題点が発生する。
【0005】
ホットメルト接着剤の上記曳糸性を抑制する旧来の方法としては、例えば、ホットメルト接着剤の溶融粘度を下げる方法が挙げられる。この方法によれば、確かにホットメルト接着剤の曳糸性をある程度抑制することはできるが、溶融粘度を下げるがために、ホットメルト接着剤の強度低下を同時に引き起こし、十分な耐熱クリープ力や耐寒接着性を得られないという問題点がある。
【0006】
これに対して、一定の制約条件を設けてホットメルト接着剤の溶融粘度を下げる方法が開示されている。
【0007】
この方法によれば、確かに発生する糸状物の量を減らし、十分な接着性能を発現させることができる。しかしながら、発生する糸状物の形状を細かくすることはできても、糸状物を短くしたり、糸状物の発生を無くしたりすることはできないという問題点がある。
【0008】
また、エチレン−不飽和エステル共重合体、粘着性付与樹脂およびワックスからなるホットメルト接着剤において、上記ホットメルトマトリックス中に低密度ポリエチレン(高圧法ポリエチレン)を微粒化分散状態で存在させることにより、ホットメルト接着剤の曳糸性を抑制する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この方法は、ホットメルト接着剤中に低密度ポリエチレンを微粒化分散状態で存在させることにより、発生する糸状物の長さを短くして曳糸性に起因する問題点の発生を抑制しようとするものであるが、低密度ポリエチレンの微粒化分散の程度がはっきりしないため、ホットメルト接着剤の配合組成によっては曳糸性に大きなばらつきを生じる恐れがあり、従来の製造設備を用いて曳糸性の小さいホットメルト接着剤を効率的かつ安定的に製造することは困難であるという問題点がある。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−236543号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるホットメルト接着剤を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明(本発明)によるホットメルト接着剤は、少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなるホットメルト接着剤であって、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1に記載のホットメルト接着剤において、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤において、コロイド粒子の直径が100nm〜5μmであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によるホットメルト接着剤は、上記請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤において、コロイド粒子の含有量が0.1〜7.5重量%であることを特徴とする。
【0016】
さらに、請求項5に記載のホットメルト接着剤は、上記請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤において、固化状態において、ベース樹脂に対する非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることを特徴とする。
【0017】
本発明のホットメルト接着剤に用いられるベース樹脂(主成分)としては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種ベース樹脂で良く、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体(EnBA)などのエチレン系共重合体;アモルファスポリα−オレフィン(APAO)、アタクチックポリプロピレン(APP)、変性ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系樹脂;飽和ポリエステル系樹脂;ウレタン系樹脂;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)などの熱可塑性ブロック共重合体等が挙げられ、なかでも、塗布性、接着性、柔軟性、加熱安定性、価格等のバランスに優れるホットメルト接着剤を得られやすいことから、上記エチレン系共重合体が好適に用いられる。これらのベース樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0018】
上記変性ポリエチレンとは、APAOやAPPのような従来の製造方法で製造されたポリオレフィン系樹脂ではなく、例えば特開平10−72574号公報に記載されているような、シングルサイトメタロセン触媒を用いて製造された、エチレンと炭素原子数が3〜12個の少なくとも1種類の他のα−オレフィンとからなる直鎖状共重合体(メタロセン触媒変性ポリエチレン)のことである。この変性ポリエチレンは、EVAと類似の性能を発現することができるとされているが、EVAとは異なり、非極性の樹脂である。
【0019】
本発明のホットメルト接着剤に用いられるベース樹脂に対する非相溶性成分(以下、単に「非相溶性成分」と略記する)としては、上記ベース樹脂に対して非相溶性であって、120〜190℃での溶融状態において、ホットメルト接着剤中にコロイド粒子として分散しうる成分であれば良く、特に限定されるものではないが、例えば、低密度ポリエチレン;SBS、SIS、SEBS、SEPSなどの熱可塑性ブロック共重合体;ヒュームドシリカ等が挙げられる。これらの非相溶性成分は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。なお、上記低密度ポリエチレンとは、メルトインデックスが3〜100、融点が100〜115℃、密度が0.91〜0.93の物性を有するポリエチレンのことである。
【0020】
上記非相溶性成分は、ホットメルト接着剤中に少量含有され、120〜190℃での溶融状態において、コロイド粒子として分散することにより、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を効果的に低減させる機能を発現する。もし上記成分がベース樹脂に対して相溶性であると、ホットメルト接着剤中に均一に溶融してしまうので、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を低減させることができなくなる。また、もし上記成分がベース樹脂に対して完全非相溶性であって、コロイド粒子として分散できないと、溶融状態で相分離してしまうので、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を低減させることができなくなる。
【0021】
前記ベース樹脂と上記非相溶性成分との組み合わせの具体例を挙げると、特に限定されるものではないが、例えば、ベース樹脂がエチレン系共重合体である場合には、非相溶性成分として低密度ポリエチレンや熱可塑性ブロック共重合体を用いることが好ましく、ベース樹脂が変性ポリエチレン(メタロセン触媒変性ポリエチレン)である場合には、非相溶性成分としてEVAを用いることが好ましく、ベース樹脂がエチレン系共重合体および熱可塑性ブロック共重合体以外の樹脂である場合には、非相溶性成分としてヒュームドシリカを用いることが好ましい。また、これらの非相溶性成分すなわち低密度ポリエチレン、熱可塑性ブロック共重合体、ヒュームドシリカ等の種類は、ベース樹脂の分子量やベース樹脂を構成する共重合モノマーの含有量等に対応して適宜選定されることが好ましい。
【0022】
本発明のホットメルト接着剤においては、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが必要である。このことにより、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性を効果的に低減させることができる。
【0023】
上記コロイド粒子は、特に限定されるものではないが、直径が100nm〜5μmであることが好ましい。コロイド粒子の直径が100nm未満であるか、5μmを超えると、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがある。なお、上記コロイド粒子の直径は透過型電子顕微鏡による分析によって確認することができる。
【0024】
上記コロイド粒子は、特に限定されるものではないが、ホットメルト接着剤中における含有量が0.1〜7.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜5.0重量%である。ホットメルト接着剤中におけるコロイド粒子の含有量が0.1重量%未満であると、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがあり、逆にホットメルト接着剤中におけるコロイド粒子の含有量が7.5重量%を超えると、ドメインとマトリクスとの逆転が一部で起こり始めて、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果が損なわれたり、ホットメルト接着剤全体の相溶性低下を来して、熱安定性の低下が顕著になることがある。
【0025】
本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることが好ましい。このことにより、溶融状態にあるホットメルト接着剤中で前記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが裏付けられ、かつ、ホットメルト接着剤は塗布時の曳糸性がより小さくなる。
【0026】
通常、可視光線透過率は常温で測定されるものであるが、ホットメルト接着剤には後述するワックスが高結晶性成分として一般的に配合されているので、結晶化したワックスによる濁りの影響で常温では可視光線透過率を測定することが困難である。したがって、本発明の好ましい態様においては、120〜190℃での溶融状態にあるホットメルト接着剤の可視光線透過率を測定し、その値を1〜20%の範囲とする。
【0027】
上記可視光線の波長が600nm未満であると、ホットメルト接着剤には後述する粘着性付与樹脂が一般的に配合されているので、粘着性付与樹脂の色調に影響されて透過できなくなる。したがって、本発明の好ましい態様においては、可視光線の波長を600〜780nmの範囲とする。
【0028】
ホットメルト接着剤の上記可視光線透過率が1%未満であると、ホットメルト接着剤を構成する各成分相互の相溶性が悪すぎて、溶融状態においてホットメルト接着剤が完全に濁っていることになり、実用性に欠けるものとなることがあり、逆にホットメルト接着剤の上記可視光線透過率が20%を超えると、前記非相溶性成分の種類が不適切であるか、非相溶性成分の配合量が少なすぎることになって、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性低減効果を十分に得られなくなることがある。
【0029】
本発明のホットメルト接着剤は、固化状態において、前記非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることが好ましい。このことにより、本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、非相溶性成分がより容易にコロイド粒子として分散しうるものとなる。その結果、ホットメルト接着剤の塗布時の曳糸性をさらに小さくする効果が増し、発生した糸状物を瞬時に短くしたり粒状にしたりすることができ、糸状物を全く発生させないようにすることもできる。これは、溶融状態にある本発明のホットメルト接着剤に対し、エアー圧等による強い剪断力が加えられると、引き延ばされたコロイド粒子に元に戻ろうとする力が発生するのに加えて、引き延ばされたコロイド粒子が元に戻ろうとする際に、コロイド粒子表面上の襞および/または尾が周りの成分をも同時に引き寄せることによるものと考えられる。なお、上記非相溶性成分からなる襞および/または尾の有無は透過型電子顕微鏡による写真によって確認することができる。
【0030】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分に加えるに、粘接着性を向上させるために、粘着性付与樹脂が配合されていることが好ましい。
【0031】
上記粘着性付与樹脂としては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種粘着性付与樹脂で良く、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、クマロン・インデン系樹脂等が挙げられ、なかでも、前記ベース樹脂に対して優れた相溶性を有する粘着性付与樹脂が好適に用いられる。これらの粘着性付与樹脂は、例えば無水マレイン酸やマレイン酸エステル等でグラフト変性されたものであっても良い。また、これらの粘着性付与樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0032】
脂肪族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、ピペリジンなどのC4もしくはC5のモノオレフィンまたはジオレフィンを主成分とする重合体等が挙げられる。これらの脂肪族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0033】
脂環族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スペントC4留分中もしくはスペントC5留分中のジエン成分を環化二量体化後、重合させた樹脂、シクロペンタジエンなどの環化モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂等が挙げられる。これらの脂環族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0034】
芳香族系炭化水素樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC9もしくはC10のビニル芳香族系炭化水素を主成分とする重合体等が挙げられる。これらの芳香族系炭化水素樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0035】
ポリテルペン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール共重合体、α−ピネン−フェノール共重合体等が挙げられる。これらのポリテルペン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0036】
ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジンや、水添ロジン、不均化ロジン、二量化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジン等が挙げられる。上記ロジンエステルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ロジンとエチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトールなどとのエステル等が挙げられる。これらのロジン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0037】
スチレン系樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンなどの重合体等が挙げられる。これらのスチレン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0038】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分、および、好ましく配合される粘着性付与樹脂に加えるに、ホットメルト接着剤の溶融粘度を低下させて、塗布性を向上させたり、ホットメルト接着剤に速固化性を付与して、高速接着を可能にさせたり等の諸機能を付与するために、ワックスが配合されていることが好ましい。
【0039】
上記ワックスとしては、従来からホットメルト接着剤に一般的に用いられている各種ワックスで良く、特に限定されるものではないが、例えば、フィッシャートロプシュワックスやポリエチレンワックスなどの合成系ワックスや、パラフィンワックス、精製パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの天然系ワックス等が挙げられ、なかでも、上記諸機能の付与効果に優れることから、融点が60〜120℃の範囲にあるワックスが好適に用いられる。これらのワックスは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】
本発明のホットメルト接着剤には、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分、ならびに、好ましく配合される粘着性付与樹脂およびワックスに加えるに、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、充填剤、増量剤、粘度調整剤、揺変性付与剤、軟化剤(可塑剤)、プロセスオイル、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等の各種添加剤の1種類もしくは2種類以上が配合されていても良い。なお、軟化剤(可塑剤)やプロセスオイルは、前記非相溶性成分のコロイド粒子としての分散をより容易にするためにも用いられる。
【0041】
本発明のホットメルト接着剤の製造方法は、特別なものではなく、従来からホットメルト接着剤の製造に一般的に用いられている各種攪拌混練機を用いて、必須成分であるベース樹脂および非相溶性成分の各所定量、好ましく配合される粘着性付与樹脂および/またはワックスの各所定量、および、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類もしくは2種類以上の各所定量を、120〜190℃で加熱溶融し、均一に攪拌混練することにより、所望のホットメルト接着剤を得ることができる。
【0042】
【作用】
本発明のホットメルト接着剤は、少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなり、かつ、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散しているので、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるものである。
【0043】
また、本発明のホットメルト接着剤は、120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態とすることにより、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることが裏付けられ、かつ、塗布時の曳糸性がより小さいものとなる。
【0044】
さらに、本発明のホットメルト接着剤は、固化状態において、上記非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有しているものとすることにより、120〜190℃での溶融状態における非相溶性成分のコロイド粒子としての分散がより容易となり、かつ、塗布時の曳糸性がさらに小さいものとなる。
【0045】
【発明の実施の形態】
本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0046】
本実施例および比較例においては以下に示す原材料を用いた。
1.ベース樹脂
(1)メタロセン触媒変性ポリエチレン(メルトインデックス:700)
(2)EVA(商品名「ウルトラセン726」、酢酸ビニル含有量:33重量%、メルトインデックス:700、東ソー社製)
(3)EVA(商品名「エバフレックス210」、酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトインデックス:400、三井デュポンポリケミカル社製)
2.非相溶性成分
(1)EVA(商品名「スミテートMB−11」、住友化学工業社製)
(2)SIS系ホットメルト接着剤(商品名「エスダイン9189G」、積水化学工業社製)
(3)低密度ポリエチレン(商品名「ミラソン68」、三井化学社製)
3.粘着性付与樹脂
(1)水添ジシクロペンタジエン樹脂(商品名「エスコレッツ5320HC」、軟化点:125℃、トーネックス社製)
(2)非水添C9系石油樹脂(商品名「ハイレジンRS−21」、軟化点:120℃、東邦化学社製)
(3)ロジンエステル樹脂(商品名「スーパーエステルA−125」、軟化点:125℃、荒川化学工業社製)
4.ワックス
(1)フィッシャートロプシュワックス(商品名「FT−100」、融点:100℃、シェルマレーシア社製)
(2)精製パラフィンワックス(商品名「パラフィンワックスHNP−9」、融点:75℃、日本精蝋社製)
(3)パラフィンワックス(商品名「パラフィンワックス155F」、融点:68℃、日本精蝋社製)
5.酸化防止剤
商品名「イルガノックス1010」(チバスペシャリティケミカルズ社製)
【0047】
(実施例1)
メタロセン触媒変性ポリエチレン100部、水添ジシクロペンタジエン樹脂(商品名「エスコレッツ5320HC」100部、フィッシャートロプシュワックス「FT−100」42部、EVA「スミテートMB−11」4部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部を、160℃に温度設定した万能攪拌混練機(型式「25AM型」、攪拌具:フック、ダルトン社製)に順次投入し、完全に加熱溶融した後、回転数60rpmで1時間攪拌混練して、ホットメルト接着剤を製造した。
【0048】
(実施例2)
EVA(商品名「ウルトラセン726」100部、非水添C9系石油樹脂「ハイレジンRS−21」87部、精製パラフィンワックス「パラフィンワックスHNP−9」50部、SIS系ホットメルト接着剤「エスダイン9189G」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部を、160℃に温度設定したビーカーに順次投入し、完全に加熱溶融した後、ホモジナイザー用攪拌機を用いて回転数60rpmで1時間攪拌混練して、ホットメルト接着剤を製造した。
【0049】
(実施例3)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例2の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0050】
(実施例4)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0051】
(実施例5)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部、低密度ポリエチレン「ミラソン68」3部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部とし、かつ、万能攪拌混練機「25AM型」による攪拌混練時間を2時間としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0052】
(比較例1)
ホットメルト接着剤の配合組成をメタロセン触媒変性ポリエチレン100部、水添ジシクロペンタジエン樹脂「エスコレッツ5320HC」100部、フィッシャートロプシュワックス「FT−100」42部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0053】
(比較例2)
ホットメルト接着剤の配合組成をEVA「エバフレックス210」100部、ロジンエステル樹脂「スーパーエステルA−125」100部、パラフィンワックス「パラフィンワックス155F」50部および酸化防止剤「イルガノックス1010」0.8部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、ホットメルト接着剤を製造した。
【0054】
実施例および比較例で得られた各ホットメルト接着剤の性能(▲1▼溶融状態における可視光線透過率、▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状、▲3▼塗布時の曳糸性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示すとおりであった。なお、▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状の評価は実施例3〜実施例5のホットメルト接着剤についてのみ行った。
【0055】
▲1▼溶融状態における可視光線透過率の測定方法
160℃で加熱溶融したホットメルト接着剤を160℃に加熱したガラスセル(10mm×10mm×50mm)に入れ、透過率測定器(島津社製)を用いて、波長600nmの可視光線の透過率および波長780nmの可視光線の透過率を測定した。なお、リファレンスとしては空の上記ガラスセルを用いた。
【0056】
▲2▼固化状態におけるコロイド粒子の形状
先ず、固化状態のホットメルト接着剤を濃度2重量%の四酸化オスミウムにより24時間染色した後、水洗した。次に、四酸化ルテニウムガスにより2時間染色した後、水洗し、カッター(商品名「REICHERT ULTRACUT S」、Leica社製)を用いて、厚み70nmの超薄切片とした。次に、この超薄切片を透過型電子顕微鏡(商品名「JEM−1200EXII」(JEOL社製)を用いて、加速電圧120kVの条件で観察し、倍率10200倍で写真を撮影した。次いで、撮影した写真を観察し、コロイド粒子の形状を確認した。なお、実施例3のホットメルト接着剤の写真を図1に、実施例4のホットメルト接着剤の写真を図2に、実施例5のホットメルト接着剤の写真を図3にそれぞれ示す。
【0057】
▲3▼塗布時の曳糸性
図4に示すように、ホットメルトガンの先端から距離20cmの所に被着体を垂直に配置し、その間に落下物を捕獲するための板状の受け皿を敷いておく。20℃の無風雰囲気下、下記条件で、交流電源シーケンサーを用いて、ホットメルト接着剤を600ショット/10分の条件で間欠塗布し、受け皿上に溜まった落下物の重量を測定するとともに、落下物の形状を目視で観察した。落下物の重量が重く、落下物が糸状であれば塗布時の曳糸性が大きく、落下物の重量が軽く、落下物が瞬時に粒状になれば塗布時の曳糸性が小さいと判定した。
ホットメルトアプリケーター:商品名「ノードソン3400」(ピストンポンプ式、ノードソン社製)
ホットメルトガン:H−200ガン(ノズル径:18/1000インチ、ノズル:3オリフィスノズル)
吐出エアー圧力:294kPa
タンク、ホースおよびガンの温度:175℃
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、本発明による実施例1〜実施例5のホットメルト接着剤は、いずれも塗布時に発生する落下物の重量が軽く、かつ、落下物は瞬時に粒状となっており、塗布時の曳糸性が小さかった。これに対し、非相溶性成分を含有させなかった比較例1および比較例2のホットメルト接着剤は、いずれも塗布時に発生する落下物の重量が重く、かつ、落下物は容易に粒状にならず糸状のままであり、塗布時の曳糸性が大きかった。
【0060】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のホットメルト接着剤は、塗布時の曳糸性が小さく、したがって高速塗布性に優れるとともに、様々な使用過程において、周辺装置や被着体を汚染したり、センサーの誤作動や印字ミス等を引き起こすことが殆どない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図2】実施例4で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図3】実施例5で製造したホットメルト接着剤を固化状態において透過型電子顕微鏡により撮影した写真(10200倍)である。
【図4】塗布時の曳糸性の評価方法を示す断面図である。
Claims (5)
- 少なくともベース樹脂およびベース樹脂に対する非相溶性成分が含有されてなるホットメルト接着剤であって、120〜190℃での溶融状態において、上記非相溶性成分がコロイド粒子として分散していることを特徴とするホットメルト接着剤。
- 120〜190℃での溶融状態において、波長600〜780nmの可視光線透過率が1〜20%である半透明状態であることを特徴とする請求項1に記載のホットメルト接着剤。
- コロイド粒子の直径が100nm〜5μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホットメルト接着剤。
- コロイド粒子の含有量が0.1〜7.5重量%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
- 固化状態において、ベース樹脂に対する非相溶性成分からなるコロイド粒子が多数の襞および/または尾を有していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のホットメルト接着剤。
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