JP2003513751A - 経皮ルートによって心臓弁を交換するためのデバイス - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 心停止及び心臓切開を行わずに、心臓弁の交換を可能にする。 【解決手段】この発明は、細長い支持部材（２）と、この細長い部材（２）の周辺に配置された細長いブレード（３０）の二つのシリーズとを有するデバイス（１）に関する。前記ブレード（３０）は対向する切断エッジ（３０ａ，３０ｂ）を有しており、花冠形状に開くことができ、それらの切断エッジが相互に連続して円形の切断エッジを形成するような形に設置されている。前記ブレード（３０）は相互に近づけることが可能であり、それによって、それらの円形切断エッジが生体弁（５５，５６）を切断し、それを導管（５０）から分離できる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 この発明は経皮ルートによって心臓弁を交換するためのデバイスに関する。

【０００２】 今日、欠陥のある心臓弁の交換は、通常は、胸部を開き、患者を体外循環の状
態にして、一時的に心停止させ、心臓を開いてその弁を切除して交換することに
よって行われている。 手術におけるこうした一連の段階は患者を比較的長期間にわたって入院させる
ことになったり、複雑で費用が掛かるといった欠点がある。

【０００３】 この欠点を克服するために、あまり浸襲的でないルートによって心臓弁を交換
することが考えられてきた。国際(PCT)出願パンフレット第WO93/01768及びWO97/
28807、及び米国特許第5,814,097号、第5,370,685号、第5,545,214号には、いく
つかの周知のかなり非浸襲的な方法及びこれらの方法を実行するための装置が開
示されている。

【０００４】 しかしながら、既存の方法は必ずしも満足すべきものではなく、改良の余地が
あると考えられる。特に、これらの方法は患者を常に体外循環の状態において心
臓を一時的に停止させるという欠点を有している。また、それらは実施が困難で
ある。それらにおいては、引き続いて人工弁の口径を測定する(calibrate)ため
に、切断する生体(native)弁の直径を精密に制御することができない。それらは
、生体弁の破片（多くは石灰化した破片）が器官の中に分散し、それが塞栓症に
つながる危険性を有するとともに、大動脈あるいは心臓の壁に穴を開ける危険性
を有している。また、それらは生体弁の切除のときに激しい血液の逆流の危険性
を伴う。

【０００５】 この発明によるデバイスはこうした方法の欠点を克服するように設計されてい
る。 特に、この発明の目的は、胸部切開、心停止及び／又は心切開することなく介
入(intervention)を実行できるようにすることによって、また、除去した弁の破
片が循環系へ分散しないようにすることによって、弁の切除及び交換に関して満
足すべきデバイスを提供することである。

【０００６】 この発明を説明するために以下で使用されている「末端」及び「基端」という
用語は血液が流れる方向に関して定義されている。

【０００７】 この発明によるデバイスは、 −細長い支持部材と、 −この細長い部材の周囲に配置された細長いブレードの第１のシリーズと、 −前記第１のブレードシリーズの末端方向の後方に配置されたブレードの第２
のシリーズと、 −前記第１及び第２のブレードシリーズのブレードをそれらが折り畳まれた状
態からそれらが拡げられた状態へと変位させるための手段と、 −前記ブレードシリーズを一つの位置と当接した位置との間で相互に軸方向へ
移動させるための手段と、 −生体弁に対するデバイスの軸方向の位置を経皮ルートによって識別して、前
記二つのブレードシリーズの各々をこの弁の一方のサイドへ位置決めする手段と
、 を有し、第１のブレードシリーズのブレードはそれらの長手方向の基端におい
て前記細長い部材へ旋回可能な状態で連結され、それぞれがそれらの長手方向末
端に切断エッジを有し、これらのブレードは、前記細長い部材に対して、折り畳
まれた状態と拡げられた状態との間で旋回可能であり、折り畳まれた状態とは、
ブレードが細長い部材の壁に近接し、それらが、生体弁が位置する人体導管、特
に、大動脈の中へのデバイスの導入やその中での摺動を妨害しないような状態で
あり、一方、拡げられた状態とは、これらのブレードが花冠の形に展開され、そ
れらの切断エッジが相互に連続するように配置され、円形の切断エッジを構成す
る状態であり、 第２のブレードシリーズのブレードは、この第２のブレードシリーズのこれら
のブレードがそれらの長手方向末端によって前記細長い部材へ連結されていて各
々がそれらの長手方向基端に切断エッジを有していることを除いて、前記第１の
ブレードシリーズのブレードと同一の構造を有し、 ブレードシリーズの一つの位置とは、これらのブレードシリーズが相互に離間
されていて、一方のブレードシリーズが生体弁の軸方向の一方のサイドへ配置可
能であり、他方のブレードシリーズがこの弁の軸方向の他方のサイドへ配置され
た位置であり、当接した位置とは、これら二つのブレードシリーズの円形の切断
エッジが相互に接触した状態になり、生体弁を切断してそれを人体導管から取り
外すことができるような位置であるデバイス。

【０００８】 この発明によるデバイスは経皮的に前記人体導管の中へ挿入され、前述したブ
レードシリーズの各々が弁の一方のサイドへ配置されるまでこの導管に沿って摺
動される。この位置は前記識別手段を用いて識別される。

【０００９】 心臓に血液が貯まるのを防ぐために、周辺灌流システムあるいは体外循環シス
テムを設置して血液の流れを容易にしてもよい。

【００１０】 上述したデバイスの位置決め後に、二つのブレードシリーズのブレードが展開
され、次いで、これらのブレードシリーズはそれらが弁を切断するまで相互に近
づけられる。これらのブレードの形状は単一の操作で切断が行えるようになって
おり、従って、循環系の中へ分散しやすい破片を発生することがないように、あ
るいは、そうした破片の発生が非常に少なくなるようになっている。このような
形状は、また、その後の人工弁の口径測定を考慮して、切断する弁の直径の精密
な制御を可能にしている。

【００１１】 次に、ブレードが折り畳まれた状態に戻される。 次に、人工弁が所定の位置へ配置される。 この弁はデバイスから分離することができる。その場合には、デバイスが取り
外され、人工弁が別のデバイスを用いて前記人体導管の中へ挿入され、位置決め
される。しかしながら、必要に応じて、この発明によるデバイスは半径方向に展
開可能な構造を備えた基端人工弁を有していてもよい。この人工弁は、折り畳ま
れた状態及び拡げられた状態を占有することが可能である。その場合において、
折り畳まれた状態とは、それが前記細長い部材の壁に近接し、前記人体導管の中
へのデバイスの挿入やその中での摺動を妨害しないような状態であり、一方、拡
げられた状態とは、それがこの導管の壁に当接し、生体心臓弁に置き換わること
ができるような状態である。

【００１２】 このように、このデバイスによれば、生体弁の切断を可能にするのと同じ操作
によって、人工弁を人体導管の中の適当な箇所へ挿入して設置することが可能で
ある。生体弁が切断され後、デバイスが末端方向へ軸方向に摺動され、人工弁が
この導管の中の適当な箇所へ位置決めされる。その後、この人工弁が展開させら
れる。次いで、デバイスが引き抜かれ、切断された生体弁が修復させられる。

【００１３】 必要に応じて、前記細長い部材は管状のカテーテルである。 このカテーテルは、生体弁が切断されているときに、その中に血液を流すこと
が可能である。

【００１４】 このカテーテルの中を通る通路の断面はこの通路の中を血液が流れるのに十分
な大きさを有している。従って、患者を体外循環にする必要性を制限したり回避
したりすることができる。カテーテルはもっと小さい直径にして、デバイスを人
体導管の中へ挿入したりそれに沿って摺動させやすくしてもよいが、その場合に
は、体外循環システムなどの外部補助システムによる周辺循環を行う必要性が生
じる。

【００１５】 カテーテルは血液の人体導管、例えば、上行大動脈への到達を許容する横方向
の末端開口部を有している。この開口部は血液を流すカテーテルの長さができる
限り短くなるように形成されている。

【００１６】 必要に応じて、デバイスは前記細長い部材の外側表面に設置された末端の膨張
可能なバルーンを有している。このバルーンは折り畳まれた状態及び拡げられた
状態を占有することができるように形成されている。その場合において、折り畳
まれた状態とは、それが前記人体導管の中へのデバイスの挿入やその中での摺動
を妨害しないような断面を有する状態であり、拡げられた状態とは、それが前記
細長い部材の外側表面と前記人体導管の壁との間のスペースをすべて占有して、
それが有する周辺エッジを介してこの壁に当接するような状態である。

【００１７】 バルーンはブレードシリーズが生体弁の各サイドへ設置された後に膨張されて
、生体弁の切除のときの血液の逆流を防止する。前記細長い部材がカテーテルで
あるときは、このバルーンはこの血液がカテーテルの中だけを流れるようにもで
きる。 いったん人工弁が所定の位置へ設置されたら、バルーンがその折り畳まれた状
態へ戻され、人体導管の中の血液の流れが再開される。

【００１８】 必要に応じて、デバイスは前記細長い部材の外側表面に設置された可撓性材料
で形成された末端フィルタを有している。このフィルタは折り畳まれた状態及び
拡げられた状態を占有することができるように形成されている。その場合におい
て、折り畳まれた状態とは、それが前記人体導管の中へのデバイスの挿入やその
中での摺動を妨害しないような断面を有する状態であり、拡げられた状態とは、
それが前記細長い部材の外側表面と前記導管の壁との間のスペースをすべて占有
し、それが有する周辺エッジを介してこの壁に当接するような状態である。

【００１９】 このフィルタによって、弁を切断することによって発生した破片が集め、それ
らを保持し、それらを血液循環から除去することを可能にしている。 デバイスは、また、前記ブレードシリーズを前記バルーン及び／又は前記フィ
ルタとは独立に軸方向に移動させる手段を有していてもよい。いったん展開され
ると、これ又はこれらは、前述したブレードシリーズが軸方向に移動させられる
際に人体導管の中で軸方向にシフトされる必要がない。

【００２０】 前記バルーン及び／又は前記フィルタはデバイスから分離されていて、それら
に特有の細長い支持部材の上に取り付けられていてもよい。 僧帽弁に対する手術の場合には、このバルーン及び／又はこのフィルタは末梢
動脈ルートを介して大動脈の中へ挿入される。そして、デバイスはその一部が末
梢静脈システムを介して心臓内へ右心房まで挿入され、次に、心房中隔を介して
左心房内へ僧帽弁まで挿入される。

【００２１】 人工弁は形状記憶材料、特に、「NITINOL」の名称で知られるニッケル−チタ
ン合金で形成されたアーマチュアを有していてもよい。 その弁は生物材料（保存されている動物又は人間の弁リーフレット）で形成さ
れた弁リーフレット又はポリマなどの合成材料で形成された弁リーフレットを有
していてもよい。

【００２２】 この発明をよく理解するために、添付されている図面を参照して、以下でこの
発明をもう一度説明する。図面は関係するこのデバイスの実施の形態を示してい
るが、発明を制限するものではない。

【００２３】 図１〜図３は経皮ルートによって心臓弁を交換するためのデバイス１を示して
いる。 このデバイスは入れ子式に係合された三つのチューブ５，６，７から形成され
た管状カテーテル２を有している。このカテーテル上には、基端から末端へ（血
液の流れに対して、すなわち、図１において右から左へ）向かって、人工弁１０
と、二つのブレードシリーズ１１，１２と、バルーン１３と、フィルタ１４とが
配置されている。

【００２４】 三つのチューブ５，６，７は相互にその内側で摺動可能なように取り付けられ
る。内側のチューブ５は通路１５の境界を形成しており、その断面はその中に血
液を流すのに十分な大きさを有している。 基端において、中間のチューブ６はベルハウジング６ａを形成しており、この
ベルハウジング６ａが内側のチューブ５といっしょになって環状のキャビティ１
７の境界を形成している。キャビティ１７の中には人工弁１０が折り畳まれた状
態で収容されている。

【００２５】 図４は、この弁１０にはアーマチュア２０及び弁リーフレット２１が取り付け
られていて、弁リーフレットがこのアーマチュア２０の上で機能的に可動である
ことを示している。 アーマチュアは形状記憶材料、特に、「NITINOL」の名称で知られるニッケル
−チタン合金で形成されたワイヤ２２，２３，２４、すなわち、 −基端ワイヤ２２、 −末端ワイヤ２３、 −中間ワイヤ２４、 の集合体から成っている。基端ワイヤ２２は弁１０が展開した状態のときにほ
ぼ円形形状を有する。末端ワイヤ２３は軸方向に三つの波形部分を形成し、これ
らの波形部分が弁１０の周囲に均等に配置される。また、ワイヤ２４はワイヤ２
２，２３の間で長手方向に波形部分を形成する。このワイヤ２４は波形部分の各
々の端部において他のワイヤへ連結されている。

【００２６】 弁リーフレット２１はその一部が生物材料（保存されている人間あるいは動物
の弁リーフレット）又はポリマなどの合成材料で形成されている。 アーマチュア２０は、その材料が冷却されると、半径方向に収縮し、弁１０を
キャビティ１７の中に入れることができるようになる。この材料が体温まで加熱
されると、このアーマチュア２０は図４に示されている元の形状に戻る。その状
態では、アーマチュアは人体導管、特に、治療しようとする生体弁が位置する大
動脈の直径に一致している。アーマチュア２０のこの直径は、弁１０が人体導管
の壁へ当接して、導管に対して軸方向に固定されるように設定されている。

【００２７】 ブレードシリーズ１１，１２のそれぞれは金属製の細長いブレード３０、及び
カテーテル２とこれらのブレード３０との間に配置された膨張可能なバルーン３
１を有している。 ブレード３０は湾曲形状を有しており、カテーテル２の周辺上に配置されてい
る。

【００２８】 基端側のシリーズ１１のブレード３０はそれらの基端によってチューブ６へ旋
回可能な状態で連結されており、末端切断エッジ３０ａを有している。一方、末
端側のシリーズ１２のブレード３０はその末端によって外側のチューブ７へ旋回
可能な状態で連結されており、基端切断エッジ３０ｂを有している。

【００２９】 ブレード３０とそれぞれのチューブ６，７との間の連結はブレード３０の端部
をいっしょに溶接してリングを形成することによって達成されている。このリン
グは、このリングをこのチューブ６，７上へクリンプする(crimping)ことによっ
て、対応するチューブ６，７へ軸方向に固定される。ブレード３０の旋回はこれ
らのブレード３０を単純に弾性変形させることによって実現される。

【００３０】 この旋回は、ブレード３０がカテーテル２に対して半径方向内側に折り畳まれ
た状態、すなわち、図１及び図２に示されているような状態と、これらのブレー
ド３０がこのカテーテル２に対して半径方向外側へ拡げられた状態、すなわち、
図３に示されているような状態との間で行われる。折り畳まれた状態においては
、ブレード３０はチューブ６の壁に近接して相互に部分的に重なっており、治療
すべき生体弁が位置する人体導管の中へのデバイス１の導入やその中での摺動を
それらが妨害しないようになっている。前記の拡げられた状態においては、ブレ
ード３０は花冠の形に展開され、それらの切断エッジ３０ａ，３０ｂが相互に連
続するように配置されて、図３に示されるような円形の切断エッジを構成するよ
うになる。

【００３１】 チューブ３とブレード３０との間に配置された各バルーン３１は、チューブ６
の中に形成されている通路３２を介して、患者から出ている方のカテーテル２の
端部から膨張可能になる。従って、バルーンは、膨張したときには、ブレード３
０を折り畳まれた状態から拡げられた状態まで変位させることができ、すぼんだ
ときには、その逆のことを実行できる。

【００３２】 チューブ７に対するチューブ６の軸方向の摺動によって、ブレードシリーズ１
１，１２は図１に示されているような離間した位置と当接した位置との間で相互
に軸方向へ移動することが許容される。これらの位置のうち前者の位置において
は、一方のブレードシリーズ１１は生体弁の軸方向の一方のサイドへ配置可能で
あり、他方のブレードシリーズ１２はこの弁の軸方向の他方のサイドへ配置可能
である。一方、これらの位置のうち後者の位置においては、これら二つのブレー
ドシリーズ１１，１２の円形の切断エッジが相互に接触した状態になるため、生
体弁を切断して前記人体導管からそれを取り外すことができる。

【００３３】 チューブ５〜７はさらに硫酸バリウムのマーク（図示されていない）を有して
おり、生体弁に対するデバイス１の軸方向の位置を経皮的に識別して、二つのブ
レードシリーズ１１，１２の各々をこの弁の軸方向の一方のサイドへ設置するこ
とができるようになっている。

【００３４】 これらのチューブ５〜７は血液の人体導管への到達を許容する横方向の末端開
口部（図示されていない）も有している。これらの開口部は血液を流すカテーテ
ル２の長さができる限り短くなるように形成されている。すなわち、開口部は末
端方向に沿ってフィルタ１４の直後に形成されている。

【００３５】 バルーン１３は、シリーズ１２に対する末端側において、チューブ７の外側表
面上に配置されている。このバルーン１３は環状形状を有しており、前記人体導
管へのデバイス１の挿入やその中での摺動をそのバルーンが妨害しないような断
面を有する折り畳まれた状態と、それがチューブ７の外側表面と前記人体導管の
壁との間のスペースをすべて占有して、それが有する周辺エッジ１３ａを介して
この壁に当接する拡げられた状態とをとることができるように形成されている。

【００３６】 フィルタ１４は、チューブ７上において、バルーン１３に対して末端側に設置
されており、このチューブへ軸方向に固定されている。このフィルタ１４は可撓
性材料、例えば、ポリエステルネットで形成されている。また、フィルタは前記
人体導管の中へのデバイス１の挿入及びその中での摺動を妨害しないような断面
を有する折り畳まれた状態と、それがカテーテル２の外側表面と前記導管の壁と
の間のスペースをすべて占有して、それが有する周辺エッジ１４ａを介してこの
壁に当接するような拡げられた状態とをとることができるように形成されている
。

【００３７】 膨張可能なバルーン３５がチューブ７とフィルタ１４との間に配置されており
、それが膨張しているかすぼんでいるかに応じて、フィルタ１４をそれぞれ拡げ
られた状態及び折り畳まれた状態にすることができるようになっている。 実際には、図５〜図９に示されているように、デバイス１は経皮ルートによっ
て前記人体導管５０の中へ挿入され、ブレードシリーズ１１，１２の各々が治療
されるべき生体弁５５の一方のサイドへ配置されるまで、この導管５０の内側に
沿って摺動される（図５）。この位置は前述したマークを利用して識別される。

【００３８】 デバイスがこの位置にあるとき、カテーテル２の基端部分は心臓内、好ましく
は、左心室内に位置しており、一方、前述した横方向の末端開口部は末梢動脈内
、好ましくは、上行大動脈内に位置している。

【００３９】 バルーン１３，３５が膨張すると、血液は通路１５の中のみを流されるため、
弁５５の切除中に血液の逆流が防止される。この流れを容易にするために周辺灌
流システムが所定の位置に設置されている。

【００４０】 次に、バルーン３１を膨張させることによって、二つのシリーズ１１，１２の
ブレード３０が展開される（図６）。その後、チューブ６をチューブ７に対して
摺動させることによって、二つのシリーズ１１，１２が相互に近づけられ、弁５
５が切断される（図７）。

【００４１】 次に、バルーン３１をすぼませることによって、ブレード３０がその折り畳ま
れた状態へと戻される。このとき、ブレード３０は相互に近づいた位置のままに
維持される。それによって、切り取られた弁５５がそれらの間に保持される。

【００４２】 次に、デバイス１が軸方向の末端方向へ摺動させられ、ベルハウジング６ａが
導管５０内の適当な位置まで移動させられる（図８）。その後、チューブ６をチ
ューブ５に対して摺動させることによって、弁１０が展開させられる（図９）。 バルーン１３，３５がすぼまされた後、デバイス１が引っ込められ、切り取ら
れた弁５５が修復される（図１０）。

【００４３】 図１１はデバイス１の第２の実施の形態を示している。これは僧帽弁５６に対
する手術を可能にする。 上記と同一の部材あるいは部分を表すに当たり、これらの部材あるいは部分が
両方の実施の形態において同一又は類似である限り、同じ参照番号が使用されて
いる。

【００４４】 この場合には、管状のカテーテルは支持ワイヤ２に置き換えられており、この
ワイヤ上にブレードシリーズの一方が取り付けられていて、その上にチューブが
係合していて、このワイヤに沿って摺動可能になっている。このチューブ上には
、他方のブレードシリーズが取り付けられている。バルーン３１を膨張させるた
めの通路がこの支持ワイヤ及びこのチューブに沿って延びている。バルーン１３
及びフィルタ１４はデバイス１から分離されており、支持ワイヤ４０によって、
末梢動脈ルートを介して大動脈の中へ挿入される。バルーン１３，３５を膨張さ
せるための通路が支持ワイヤ４０に沿って延びている。バルーン１３及びフィル
タ１４のないデバイス１の一部が末梢静脈システムを通って心臓内の右心房まで
挿入され、次いで、心房中隔を通して左心房内の弁５６まで挿入される。

【００４５】 その他については、デバイス１は前述したのと同じように動作する。 このように、この発明は、経皮ルートによって心臓弁を交換するためのデバイ
スであって、従来の方法の欠点を克服することのできるデバイスを提供する。実
際、デバイス１は弁５５，５６を切除することに関しては全く満足すべきもので
あり、心臓を停止させずに手術を行うことが可能であり、フィルタ１４が設けら
れているために、弁の破片５５，５６が循環系の中に分散することを防止できる
。

【００４６】 言うまでもないが、この発明は一例としての上記実施の形態に制限されるわけ
ではなく、それに替わるすべての実施の形態を含んでいる。従って、このデバイ
スはチューブ７上に係合されて、それに沿って摺動する第４のチューブを有する
こともできる。その場合、この第４のチューブはその上に取り付けられたバルー
ン及びフィルタを有し、前記ブレードシリーズを前記バルーン及び／又は前記フ
ィルタとは独立に軸方向に動作可能にしている。ブレードは図面に示されている
ようにまっすぐでもよいし、人体導管の壁に損傷を与える危険性をなくすために
、図１２に示されているように切断エッジを有する方のそれらの端部においてデ
バイスの軸の方へ湾曲されていてもよい。また、フィルタ１４としては、自己膨
張タイプのものを使用して、通常はそれを覆う摺動チューブによって収縮した状
態に維持されるようにすれば、バルーン３５を不要にすることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 大動脈の弁を治療するために用いられる第１の実施の形態の縦断面図である。

【図２】 図１のII-II線断面図である。

【図３】 図２と同様の図であり、それが有するサブアセンブリが別の位置にある状態を
示す図である。

【図４】 それを用いて取り付けることができる人工弁の斜視図である。

【図５−９】 治療されるべき弁を切除して図４に示されている人工弁を取り付ける一連の手
術に際して、心臓内のその弁の部位へそれが設置される状態を示す図である。

【図１０】 取り付け後における図４に示されている人工弁の図である。

【図１１】 僧帽弁を治療するために使用される別の実施の形態によるデバイスを示す図で
ある。

【符号の説明】

１ デバイス ２ カテーテル ６ チューブ ７ チューブ １０ 人工弁 １１ ブレードシリーズ １２ ブレードシリーズ １３ バルーン １３ａ 周辺エッジ １４ フィルタ １４ａ 周辺エッジ ２１ 弁リーフレット ３０ ブレード ３０ａ 切断エッジ ３０ｂ 切断エッジ ５０ 人体導管 ５５ 生体弁 ５６ 生体弁

───────────────────────────────────────────────────── 【要約の続き】

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 人体導管（５０）の中に位置する心臓弁（５５，５６）を経
   皮ルートを介して交換するためのデバイス（１）であって、 −細長い支持部材（２）と、 −この細長い部材（２）の周囲に配置された細長いブレード（３０）の第１の
   シリーズ（１１）と、 −前記第１のブレードシリーズ（１１）の末端方向の後方に配置されたブレー
   ド（３０）の第２のシリーズ（１２）と、 −前記第１及び第２のブレードシリーズ（１１，１２）のブレード（３０）を
   それらが折り畳まれた状態からそれらが拡げられた状態へと変位させるための手
   段（３１）と、 −前記ブレードシリーズ（１１，１２）を一つの位置と当接した位置との間で
   相互に軸方向へ移動させるための手段（６，７）と、 −生体弁（５５，５６）に対するデバイス（１）の軸方向の位置を経皮ルート
   によって識別して、前記二つのブレードシリーズ（１１，１２）の各々をこの弁
   の一方のサイドへ位置決めする手段と、 を有し、第１のブレードシリーズのブレード（３０）はそれらの長手方向の基
   端において前記細長い部材（２）へ旋回可能な状態で連結され、それぞれがそれ
   らの長手方向末端に切断エッジ（３０ａ）を有し、これらのブレード（３０）は
   、前記細長い部材（２）に対して、折り畳まれた状態と拡げられた状態との間で
   旋回可能であり、折り畳まれた状態とは、ブレードが細長い部材（２）の壁に近
   接し、それらが、生体弁（５５，５６）が位置する人体導管（５０）、特に、大
   動脈の中へのデバイス（１）の導入やその中での摺動を妨害しないような状態で
   あり、一方、拡げられた状態とは、これらのブレード（３０）が花冠の形に展開
   され、それらの切断エッジ（３０ａ）が相互に連続するように配置され、円形の
   切断エッジを構成する状態であり、 第２のブレードシリーズ（１２）のブレード（３０）は、この第２のブレード
   シリーズ（１２）のこれらのブレード（３０）がそれらの長手方向末端によって
   前記細長い部材へ連結されていて各々がそれらの長手方向基端に切断エッジ（３
   ０ｂ）を有していることを除いて、前記第１のブレードシリーズ（１１）のブレ
   ード（３０）と同一の構造を有し、 ブレードシリーズ（１１，１２）の一つの位置とは、これらのブレードシリー
   ズが相互に離間されていて、一方のブレードシリーズ（１１）が生体弁（５５，
   ５６）の軸方向の一方のサイドへ配置可能であり、他方のブレードシリーズ（１
   ２）がこの弁（５５，５６）の軸方向の他方のサイドへ配置された位置であり、
   当接した位置とは、これら二つのブレードシリーズ（１１，１２）の円形の切断
   エッジが相互に接触した状態になり、生体弁（５５，５６）を切断してそれを人
   体導管（５０）から取り外すことができるような位置であるデバイス（１）。
2. 【請求項２】 半径方向に展開可能な構造を備えた基端人工弁（１０）を有
   し、この人工弁が折り畳まれた状態及び拡げられた状態を占有することが可能で
   あり、その場合において、折り畳まれた状態とは、それが前記細長い部材（２）
   の壁に近接し、前記人体導管（５０）の中へのデバイス（１）の挿入やその中で
   の摺動を妨害しないような状態であり、一方、拡げられた状態とは、それがこの
   導管（５０）の壁に当接し、生体心臓弁（５５，５６）に置き換わることができ
   るような状態である請求項１に記載のデバイス（１）。
3. 【請求項３】 前記細長い支持部材が管状のカテーテル（２）である請求項
   １又は請求項２に記載のデバイス（１）。
4. 【請求項４】 前記細長い部材（２）の外側表面に設置された末端の膨張可
   能なバルーン（１３）を有し、このバルーン（１３）が折り畳まれた状態及び拡
   げられた状態を占有することができるように形成され、その場合において、折り
   畳まれた状態とは、それが前記人体導管（５０）の中へのデバイス（１）の挿入
   やその中での摺動を妨害しないような断面を有する状態であり、拡げられた状態
   とは、それが前記細長い部材（２）の外側表面と前記人体導管（５０）の壁との
   間のスペースをすべて占有して、それが有する周辺エッジ（１３ａ）を介してこ
   の壁に当接するような状態である請求項１〜請求項３のいずれか一項に記載のデ
   バイス（１）。
5. 【請求項５】 前記細長い部材（２）の外側表面に設置された可撓性材料で
   形成された末端フィルタ（１４）を有し、このフィルタ（１４）が折り畳まれた
   状態及び拡げられた状態を占有することができるように形成され、その場合にお
   いて、折り畳まれた状態とは、それが前記人体導管（５０）の中へのデバイス（
   １）の挿入やその中での摺動を妨害しないような断面を有する状態であり、拡げ
   られた状態とは、それが前記細長い部材（２）の外側表面と前記導管（５０）の
   壁との間のスペースをすべて占有し、それが有する周辺エッジ（１４ａ）を介し
   てこの壁に当接するような状態である請求項１〜請求項４のいずれか一項に記載
   のデバイス（１）。
6. 【請求項６】 前記ブレードシリーズを前記バルーン及び前記フィルタの少
   なくとも一方とは独立に軸方向に移動させる手段を有している請求項４又は請求
   項５に記載のデバイス（１）。
7. 【請求項７】 前記バルーン（１３）及び前記フィルタ（１４）の少なくと
   も一方がそれらに特有の細長い支持部材上に取り付けられ、デバイス（１）から
   分離されている請求項４又は請求項５に記載のデバイス（１）。
8. 【請求項８】 人工弁（１０）が形状記憶材料、特に、「NITINOL」の名称
   で知られるニッケル−チタン合金で形成されたアーマチュア（２０）を有してい
   る請求項２から請求項７のいずれか一項に記載のデバイス（１）。
9. 【請求項９】 前記人工弁（１０）が生物材料（保存されている動物又は人
   間の弁リーフレット）で形成された弁リーフレット（２１）又はポリマなどの合
   成材料で形成された弁リーフレットを有している請求項２から請求項８のいずれ
   か一項に記載のデバイス（１）。
10. 【請求項１０】 ブレードが切断エッジを有する方のその端部においてデバ
    イスの軸の方へ湾曲されている請求項１から請求項９のいずれか一項に記載のデ
    バイス（１）。
11. 【請求項１１】 カテーテルが血液の人体導管、例えば、上行大動脈への到
    達を許容する横方向の末端開口部を有し、この開口部が血液を流すカテーテルの
    長さができる限り短くなるように形成されるとともに心臓と抹消導管との間への
    血液の流れを許容するように形成されている請求項３から請求項１０のいずれか
    一項に記載のデバイス（１）。