JP2003508086A - ワクチンとして有用な弱毒化インフルエンザウイルス - Google Patents

ワクチンとして有用な弱毒化インフルエンザウイルス

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ブラウンリー,ジョージ,ゴウ
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Abstract

(57)【要約】 ゲノム核酸内のポリUトラックを該核酸から転写されるmRNAに対してポリUテールを提供するためにコピー可能なポリAトラックで置換することにより弱毒化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルスに関する。該ウイルスは典型的にはインフルエンザウイルスである。該ウイルスは、ワクチンに組込むことができ、また、ヘルパーウイルスとして使用することも可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、ワクチンに使用可能な改変ウイルスに関する。特に、このウイルス
は、インフルエンザウイルスである。本発明の改変ウイルスはまた、標的細胞で
異種配列を発現させるためのウイルスベクターとしての使用に適する組換え弱毒
化ウイルスを含む。
【0002】 弱毒化ウイルスは、対応する野生型ウイルスによって起こる疾患に対する免疫
に用いることができる。弱毒化ウイルスから製造されるワクチンは、死滅ウイル
スまたは組換え技術によって作製されたウイルスタンパク質を含むワクチンより
優れていることが多い。例えば、インフルエンザの場合、現在の不活化インフル
エンザウイルスワクチンは、限定的な予防のみ提供する。安全性を得るためにこ
れまで労が払われてきたが、弱毒化インフルエンザ生ワクチンは、主に、低温適
応型インフルエンザウイルスに注目してきた。したがって、弱毒化インフルエン
ザウイルスは以前はインフルエンザウイルスを低温で大規模に継代することによ
り得ていた。低温での増殖に適応した結果、高温(約39℃)における複製能力を
喪失したインフルエンザウイルスが得られた。このような低温適応型(CA) ウイ
ルス の複製は、気道上部の低温部位ではやや制限されるだけであるが、疾患に
関連する症状の主要部位である、気道下部の温度のさらに高い部位ではかなり制
限される。
【0003】 野生とCA型のインフルエンザウイルスとの配列の比較から、サイレント突然変
異とアミノ酸の変化をもたらす非サイレント突然変異の両方が、遺伝子断片のコ
ード領域に大部分に存在することが判明した。ほとんどのアミノ酸の変化は、点
突然変異の結果であることが分かった。点突然変異の遺伝子の不安定さ、および
CA型インフルエンザウイルスの免疫原性のレベルが、CA型インフルエンザウイル
スがワクチンとして世界中で一般的に使用されるためには、潜在的な問題として
認知されたままである。
【0004】 遺伝子工学を用いて、ウイルスを弱毒化するために改変することができる。こ
の改変は、宿主細胞への感染を不可能にすること無く、ウイルスを弱毒化しなく
てはならない。本発明者らは、宿主細胞でのmRNAのプロセシングの過程に作用し
、したがって同様のポリアデニル化過程を利用するあらゆるマイナスセンスの一
本鎖RNAウイルス、特にインフルエンザウイルスに用いることができる改変を特
定した。本発明者らは、ウイルス遺伝子のポリUトラックがポリAトラックで置
換された場合でも機能的mRNAが遺伝子から転写されることを見出した。このよう
な改変を有するウイルスは弱毒化されていることが判明した。ポリAトラックに
おける点突然変異は遺伝子からの転写を破壊するので、該改変はまた安定である
【0005】 Poon ら (1) は、インフルエンザvRNA断片のポリAトラックは、コピーするこ
とができ、該断片から転写されるmRNAにポリUテールを提供することができると
いうことを開示している。しかし、この論文には、係るmRNAの特徴は記載されて
おらず、また、ウイルスのゲノム核酸内のポリUトラックの置換を用いて機能的
弱毒化ウイルスを作製できるという提案もされていない。
【0006】 本発明は、コピーが可能でありその断片から転写されたmRNAにポリUテールを
提供するポリAトラックで、ゲノム核酸内のポリUテールを置換することにより
弱毒化されたマイナスセンス一本鎖RNA ウイルスを提供する。
【0007】 該ウイルスは、典型的にはオルソミクソウイルス(Orthomyxoviridae科 (例えば
、インフルエンザウイルス),パラミクソウイルス(Paramyxoviridae)科(例えば、
パラインフルエンザウイルス, 流行性耳下腺炎ウイルス, 麻疹ウイルスもしくは
RSウイルス)、ラブドウイルス(Rhabdoviridae)科(例えば、狂犬病ウイルスもし
くは水疱性口内炎ウイルス)、フィロウイルス(Filoviridae)科(例えば、マルブ
ルクウイルもしくはエボラウイルス)、ブンヤウイルス(Bunyaviridae)科または
アレナウイルス(Arenaviridae)科のものである。
【0008】 該ウイルス1つ以上のゲノム断片を有する。複数のゲノム断片を有するマイナ
ス鎖RNAウイルスは、インフルエンザウイルスに代表される(1)。インフルエンザ
ウイルスは、A型、B型またはC型のインフルエンザウイルスであってよい。
【0009】 ある実施形態では、該ウイルスはポリAトラックが反復的機構によりコピーさ
れる。一般的には、この機構では、ポリAトラックを転写するとポリメラーゼが
繰り返して「退歩(slips back)」して、mRNA中にポリAトラックより長いポリ
Uテールの形成を可能となる。かかる反復的機構を利用する好ましいウイルスは
、インフルエンザウイルスであり、その中でもA型インフルエンザウイルスウイ
ルスが特に好ましい。
【0010】 ウイルスを弱毒化すると、宿主に投与された場合の疾患症状が(野生型ウイル
スを投与された場合と比較して)軽減される。従って、弱毒化を調べる方法の1
つは、マウスモデルにおいて病原性を判定することである(例として、実施例7
に記載)。一般的に、本発明のウイルスは、天然の宿主細胞のいずれか、もしく
はその一部のものまたはその全てにおいて、あるいはウイルスが感染可能な細胞
系において、複製能が減少している。これを測定する方法の1つは、該ウイルス
を用いてかかる細胞へ感染させた時のウイルス力価の低減である。典型的には、
該ウイルスは、少なくとも、0.3 log、例えば、0.5 log、0.8 log、1 log、2 lo
g、5 log、10 log、またはそれ以上の力価の低下を示す。一般的には、該ウイル
スは、宿主細胞内である程度の複製が可能であり、即ち、感染性娘ウイルスを産
生することが可能である。
【0011】 ウイルスがインフルエンザウイルスである場合は、Madin-Darbyウシ腎(MDBK)
細胞, Madin-Darbyイヌ腎細胞またはVero細胞を用いてウイルスの複製能の低下
を測定できる。
【0012】 一般的には、核酸内で、ポリAテールからコピーされ得るポリUトラック内の全
ウリジンを、同数、またはより少数もしくはより多数(例えば、1個、2個、3個
、またはこれより少数もしくは多数)のアデノシンに置換する。インフルエンザ
ウイルスの場合、一般的には、U6トラック全体は、A5、A6、A7、A8、A9、A10
ラックまたは11〜15個もしくはそれ以上のアデノシンなどの10個以上のアデノシ
ンを含むトラックで置換される。
【0013】 典型的には、核酸は、4、5、6、7〜10、10〜20またはそれ以上の突然変異(挿
入、欠失または置換であり得る)によって、対応する野生型核酸とは異なってい
る。このような突然変異は、典型的には、5’末端および/または3’末端に存在
し得る。典型的には、核酸は、対応する野生型ゲノム断片に相同的であるかまた
はこれにハイブリダイズ可能である。ある実施形態では、核酸は異なるウイルス
由来の断片のキメラ体である。インフルエンザの場合、核酸は、A型および/また
はB型および/またはC型のインフルエンザウイルスに由来する断片のキメラ体で
あってよい。
【0014】 該核酸は、宿主で発現されて、ポリUトラックを有する少なくとも1つのmRNA
を産生し得る。一般的に、該核酸(およびそのmRNA)によりコードされるタン
パク質の細胞内での発現レベルは(ポリAトラックを有する対応するmRNAに比較
して)低下している。このようなタンパク質の少なくとも1つは、野生型ウイル
スによって発現されるレベルを下回るレベルで発現されると弱毒化をもたらすも
のである。
【0015】 該タンパク質は典型的には、野生型タンパク質であるか、または野生型タンパ
ク質の活性を少なくともある程度は有している機能的等価物である。該タンパク
質は、典型的には構造タンパク質(例えば、コートタンパク質)、非構造タンパク
質または酵素 (例えば、ポリメラーゼ)である。
【0016】 該ウイルスは、ポリUトラックがポリAトラックにより置換された1、2、3、4
個またはそれ以上の核酸を含有する。ウイルスがインフルエンザウイルスである
場合、核酸は典型的には突然変異した天然のインフルエンザウイルスゲノム 断
片である。この断片は、インフルエンザタンパク質:PB1、PB2もしくはPA ポリメ
ラーゼタンパク質、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質M1もしくはM2
、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、NS1もしくはNS2、またはこれら
のタンパク質の機能的等価物をコードし得る。好ましくは、該断片はNAをコード
する。
【0017】 本発明のウイルスはさらに、宿主細胞内で発現可能な異種コード配列を含んで
よい。かかる異種コード配列は、病原物質に対する免疫応答(抗体応答または細
胞性免疫応答のいずれか)を刺激し得る抗原ペプチドまたは抗原リペプチドをコ
ードし得る。このような病原物質の代表的な例は、ウイルス(例えば、他のイン
フルエンザウイルスまたはHIV等の非インフルエンザウイルス)、細菌、真菌、
寄生虫(例えば、マラリア寄生虫)および癌細胞などの病原細胞である。
【0018】 ワクチンの目的には、病原物質の抗原または免疫応答を刺激し得るその改変物
をコードする異種コード配列を、本発明の弱毒化ウイルス中に提供することもで
きる。該異種コード配列を、ウイルス遺伝子に挿入して、元のウイルスタンパク
質の機能を維持した融合タンパク質を提供することもできる。インフルエンザウ
イルスの場合、異種抗原の挿入(エピトープ移植)に耐えることが予め判ってい
る部位の1つは、HAの抗原性のあるB部位である。この表面タンパク質の抗原性
のあるB部位は、該タンパク質の先端にある露出したループ構造で構成されてお
り、免疫原性が高いことが知られている。HAタンパク質B部位にウイルスエピト
ープを挿入するインフルエンザウイルスのHA遺伝子操作は、すでに報告されてい
る(上述の参考文献2のMusterらの報告、および参考文献3のLiらの報告を参照の
こと)。また、すでに、Rodriguesらは、マラリア寄生虫に由来するB細胞エピト
ープの発現に同様の手法を用いた(4)。抗原ポリペプチドに対する異種コード
配列はまた、例えば、インフルエンザウイルスNA遺伝子に好ましく挿入され得る
。インフルエンザウイルスタンパク質にエピトープを移植する手法もまた、例え
ばWO91/03552などにすでに開示されている。
【0019】 インフルエンザウイルスタンパク質への外来配列のエピトープ移植は、非機能
的なキメラウイルスタンパク質をもたらし、生存可能なトランスフェクタントウ
イルスのレスキューを不可能にする。組換えインフルエンザウイルスによる外来
配列を発現する別の手法は、本発明の弱毒化ウイルスに適用可能であり、これは
、さらに他のオープンリーディングフレームを含む遺伝子断片の操作を包含する
。異種コード配列にIRES(内在リボゾーム開始部位)を提供する組換えゲノム断
片を構築することができる。この手法は以前から用いられており、例えば、Garc
ia-Sastreらは、HIVとNAの双方のgp41の末端切断型をコードするインフルエンザ
ウイルスvRNA 断片を得るためにこの手法を用いた(5)。あるいはまた、異種コ
ード配列を、ウイルスタンパク質のコード配列にインフレームで融合させて、自
己分解性プロテアーゼ切断によりウイルスタンパク質と所望の第2のポリペプチ
ド(例えば、ウイルス抗原)を取得可能なキメラポリタンパク質をコードさせる
こともできる。Percyらは、この手法が長さが200アミノ酸までの非インフルエン
ザタンパク質の発現に適切であることを示している(6)。
【0020】 本発明の組換え弱毒化ウイルスは、異種コード配列の標的細胞内での発現用の
ビヒクルとして、ワクチン接種の他にも様々な治療目的で利用できることがわか
るであろう。かかる組換えウイルスは、例えば、以下の; インターフェロンまたはインターロイキンなどのサイトカイン、 毒素、 病原物質の機能を直接的または間接的に阻害可能な緩和物質(例えば、ウイル
スプロテアーゼ阻害剤)、 細胞傷害性がわずかしかないかまたはは全く無い化合物を細胞傷害性化合物に
変換可能な酵素(例えば、プリンおよびピリミジン類似体を活性な毒性のある形
態にリン酸化可能な単純ヘルペスチミジンキナーゼなどのウイルス性酵素)、 アンチセンス配列、 リボザイム、 のいずれかをコードするゲノム断片を有し得る。
【0021】 このような物質をコードする配列は、外来エピトープを発現する本発明の弱毒
化ウイルスと組み合わせて上記にすでに引用したいずれかの技術を用いることに
より、本発明の弱毒化ウイルスに組込むことができる。本発明の組換えウイルス
は、遺伝子治療に用いることもできる。
【0022】 ポリUトラックがポリAトラックによって置換された上記の核酸および、転写さ
れることによりこのような核酸を提供し得るDNAもまた、本発明の更なる態様を
構成する。原核または真核細胞の発現系で、またはウイルスが感染可能な任意の
細胞(本明細書に記載のいずれかの細胞など)において、転写されて該DNAは本
発明の核酸を提供し得る。該DNAは、細胞またはウイルスのゲノムもしくはその
一部であってよい。
【0023】 該DNAはベクターでもよく、典型的には発現ベクターであってよい。該DNAは、
ウイルスベクターまたはプラスミドの形態であってよい。インフルエンザの場合
、天然のインフルエンザウイルスvRNA断片のcDNAは、プラスミドの適切なプロモ
ーターおよび制限エンドヌクレアーゼ部位の間に挿入可能である。該cDNAはその
後、部位特異的突然変異誘発(例えば、適切な突然変異プライマーを用いてPCR
による突然変異誘発などにより)に供して、転写のための所望の突然変異された
vRNA断片をコードする配列を提供することができる。
【0024】 ウイルスがインフルエンザウイルスである場合、本発明の核酸は、in vitroで
はインフルエンザウイルスポリメラーゼタンパク質および核タンパク質と複合体
を形成し、転写および複製に必要な要素の全てを含むRNP複合体を形成し得る。
かかるRNP複合体は、やはり本発明の態様を構成するものであるが、これは、細
胞内においてウイルスをレスキューするためにRNA複合体に遺伝子操作したイン
フルエンザウイルRNAゲノム断片を組込むためにすでに用いられている通常の方
法で調製することができる(7,8,9)。本発明のRNP複合体は、例えばMDBK細胞、
MDCK細胞またはVero細胞などの培養細胞にトランスフェクトされていてもよく、
これにはやはり通常の技法を用いる。この目的のために一般的に用いられる方法
には、DEAE−デキストラントランスフェクションおよびエレクトロポレーション
が含まれる(10、11)。
【0025】 本発明はまた、本発明のウイルスにより感染した生体外(ex vivo)の細胞を提
供する。このような細胞は、通常のインフルエンザウイルスに感染したヒトおよ
び/または動物細胞を含む。該細胞は単一の細胞型でもよく、1種以上の細胞型、
例えば、1種以上の細胞型の培養ヒト細胞または非ヒト細胞でもよい。該細胞は
、例えば、in vivoの細胞(例えば、動物モデルの細胞)でもよい。該細胞には、
選択系に関する下記の細胞型のいずれかを用いてもよい。これらの細胞型を、後
述するウイルスを作製する方法に用いることもできる。
【0026】 本発明のウイルスは、宿主細胞において本発明の核酸、および核酸がウイルス
粒子にパッケージングされる条件下で、(ウイルスが生存するために)必要な他
のあらゆるゲノム核酸を提供することを含む方法により作製され得る。かかる条
件は、ウイルス粒子を形成するために必要なタンパク質の存在を包含する。該ゲ
ノム核酸は、プラスミドによって宿主細胞に提供され得る。
【0027】 インフルエンザの場合、本発明のRNP複合体を、上述のように、予めインフル
エンザヘルパーウイルスに感染させておいた宿主細胞にトランスフェクトしても
よく、所望の弱毒化ウイルス粒子を選択することが可能となる。特定のインフル
エンザウイルス遺伝子に対するヘルパーウイルスに基づく細胞レスキュー系が多
くすでに報告されており、MusterおよびGarcia-Sastreによって概説されている(
12)。かかる遺伝子に特異的なレスキュー系は、下記に簡略に説明する。
【0028】ヘルパーウイルスに基づくインフルエンザ遺伝子のレスキュー系 NAおよびHA表面抗原、非構造タンパク質、NP、PB2ポリメラーゼタンパク質、
およびMタンパク質についてのA型インフルエンザvRNAの遺伝子操作を可能にする
ヘルパーウイルスに基づくレスキュー系が報告されている。
【0029】NA遺伝子特異的レスキュー系 一般的に用いられるヘルパーウイルスに基づくインフルエンザ遺伝子のレスキ
ュー系を使用方法のほとんどは、インフルエンザA/WSN/33 ウイルスのNAに限定
される(7, 8)。該方法は、インフルエンザA/WSN/33由来のNA遺伝子を有するイン
フルエンザウイルスのみが、トリプシン非存在下でMDBK細胞において増殖できる
という知見に基づいている。該レスキュー系では、ヘルパーウイルスは、インフ
ルエンザA/WSN/33由来の7つの遺伝子断片とインフルエンザA/WSN/33以外のウイ
ルス由来のNA遺伝子を含有する遺伝子交雑性構築物である。一般的には、インフ
ルエンザA/HK/8/68由来のNA遺伝子を有するA/WSN-HKをヘルパーウイルスとして
用いる。この系では、インフルエンザA/WSN/33のNA遺伝子をヘルパーウイルスを
感染させた細胞にトランスフェクトする。その後、該ウイルスを、外因性プロテ
アーゼの非存在下でMDBK細胞において増殖させることによって選択する。
【0030】 NA欠失突然変異ウイルスをヘルパーウイルスとして用いることにより、NA遺伝
子をレスキューすることもできる。このようなヘルパーウイルスは、組織培養物
中で増殖するためには外因性ノイラミニダーゼを必要とする。該ヘルパーウイル
スに感染した細胞にNA遺伝子をトランスフェクトする。その後、該ウイルスはノ
イラミニダーゼの非存在下で増殖させることによって選択する(13)。
【0031】NS遺伝子特異的レスキュー系 NS1タンパク質を欠失した温度感受性インフルエンザウイルスを、NS遺伝子特
異的レスキュー系のヘルパーウイルスとして用いる。NS遺伝子断片は、NS1タン
パク質とNS2タンパク質とをコードする2つの重複遺伝子を有している。該レス
キュー系は、非許容温度にて活性を有するNS1タンパク質をコードするNS遺伝子
断片のレスキューを可能にする。このシステムでは、レスキューされるべきNS遺
伝子断片は、温度感受性ウイルスで感染した細胞にトランスフェクトされる。ト
ランスフェクトされたNS遺伝子断片を含むウイルスは、Enamiら(14)およびEgo
rov(26)らにより記載されているとおり、非許容温度にてウイルスを増殖させ
ることにより選択される。
【0032】PB2 遺伝子特異的レスキュー系 トリA型インフルエンザウイルスPB2遺伝子を、PB2遺伝子特異的レスキュー系
におけるヘルパーウイルスとして用いることができる。該トリA型インフルエン
ザウイルスPB2遺伝子は、哺乳動物細胞内でのヘルパーウイルスの複製を制限す
る。従って、該レスキュー系は、哺乳動物細胞でのインフルエンザウイルスの複
製を可能にするPB2遺伝子をレスキューできる。レスキューされるべきPB2遺伝子
は、ヘルパーウイルスに感染した細胞にトランスフェクトされる。トランスフェ
クトされたPB2遺伝子を含むウイルスは、哺乳動物細胞内でのウイルスの増殖に
より選択される。Subbaraoら(15)は、このようなトリA型インフルエンザウイ
ルスPB2遺伝子に基づく系を用いて、野生型のA/Ann Arbor/6/60型インフルエン
ザウイルスのPB2遺伝子をレスキューした。
【0033】M遺伝子特異的レスキュー系 A/equine/Miami/1/63型インフルエンザウイルスのM遺伝子を有するアマンチジ
ン(amantidine)感受性インフルエンザウイルスを、M遺伝子特異的レスキュー
系のヘルパーウイルスとして用いることができる。レスキュー系は、ウイルスに
アマンチジン耐性を付与するM遺伝子のレスキューを可能にする。この系では、
レスキューされるべきM遺伝子を、ヘルパーウイルスに感染した細胞にトランス
フェクトする。トランスフェクトされたM遺伝子を有するウイルスは、アマンチ
ジンの存在下でウイルスを増殖させることにより選択される。CastrucciおよびK
awaoka(16)は、このようなアマンチジン感受性M遺伝子に基づく系を用いて、A/P
R/8/34型インフルエンザウイルスのM遺伝子をレスキューした。
【0034】抗体に基づくレスキュー系 かかる系は、特定の抗体にトランスフェクタントウイルスが結合すること、ま
たは結合しないことに基づく(8, 17)。このような抗体は、インフルエンザウイ
ルスに結合する中和抗体であり、組織培養においてインフルエンザウイルスの増
殖を阻害する。該ヘルパーウイルスは、例えば、抗体のエピトープを呈示するイ
ンフルエンザ表面タンパク質をコードする遺伝子を含む。該システムは、従って
、このようなウイルスを含まないが生存可能ではあるトランスフェクタントウイ
ルスの選択に用いることができる。このことより、インフルエンザ表明タンパク
質をコードする遺伝子のレスキューを可能にする。この種のレスキュー系は、レ
スキューされるべき遺伝子は、ヘルパーウイルスに感染した細胞にトランスフェ
クトされる。トランスフェクトされた該遺伝子を含むウイルスは、抗体の存在下
でウイルスを増殖されることにより選択される。このような系を用いて、Enami
およびPalese (8)は、トランスフェクトされた合成HA断片をレスキューした。
【0035】NP遺伝子特異的レスキュー系 Liら (11)は、A型 インフルエンザウイルス核タンパク質遺伝子をレスキュー
するための逆遺伝学的システムを報告している。このシステムでは、温度感受性
(ts)突然変異体ts56をヘルパーウイルスとして用いる。RNA複合体を(8)にす
でに記載されている通りにin vivoで再構築し、これをts56ヘルパーウイルスに
感染した細胞にエレクトロポレーションにより導入する。レスキューされたNPを
コードするvRNA断片を有するトランスフェクトされたウイルスを非許容温度にて
MDBK細胞上でプラーク形成することにより選択する。
【0036】B型インフルエンザウイルスレスキュー系 BarclayおよびPalese (18)は、さらにB型インフルエンザウイルスにおけるHA
遺伝子のレスキューについて記載している。
【0037】 本発明の弱毒化インフルエンザウイルスの調製は、Pleschka ら(19)により開
発された、発現ベクターに基づくインフルエンザ遺伝子のレスキュー法を用いて
も達成することができる。上記に引用するRNPトランスフェクション系とは対照
的に、この方法は、in vitroでのRNP複合体の再構築に必要なウイルスNPおよび
ポリメラーゼタンパク質の精製を要しない。発現ベクターを、本発明の核酸と共
に、NPおよびPタンパク質(即ち PB1, PB2およびPA)を提供する宿主細胞にコトラ
ンスフェクトする。この場合、本発明のRNP複合体は細胞内で形成される。細胞
をその後、インフルエンザヘルパーウイルスで上述の通り感染させ、所望の弱毒
化インフルエンザウイルスを選択する。
【0038】 本発明のRNA複合体はまた、付加的に補完するRNA複合体を宿主細胞にトランス
フェクトすることによって、宿主細胞内で、生存可能な弱毒化ウイルスへとレス
キューされ、従ってヘルパーウイルスを必要としない。これは、Enami(20)らに
よってより最近になって報告されたインフルエンザウイルス遺伝子に関する一般
的なレスキュー法に従って達成することができる。この方法は、適切なインフル
エンザウイルスからRNPを精製し、そのRNPを、レスキューされるべきインフルエ
ンザウイルス遺伝子にハイブリダイズするcDNAの存在下でRNase Hで処理するこ
とを含む。この方法で、RNase Hによる該遺伝子の特異的な消化が達成される。
この遺伝子を欠失したRNPを、本発明の核酸を含有するRNP複合体を有する細胞に
コトランスフェクトする。そして、該細胞を寒天に重層し、トランスフェクタン
ト弱毒化ウイルスを直接プラーク形成によって得ることができる。この方法は、
上記のヘルパーウイルスに基づく遺伝子レスキュー法と異なり、あらゆるインフ
ルエンザウイルスに由来する任意のインフルエンザ遺伝子に適用できる。したが
って、任意の型のインフルエンザの本発明の弱毒化ウイルスまたは核酸を得るた
めに適応することができる。
【0039】 ウイルスのレスキューのヘルパーウイルスに依存しない方法もまた、利用可能で
ある。一般的に、このような方法は、インフルエンザウイルスの完全なゲノムvR
NA断片またはそれに対応するcRNAを発現することが可能な細胞に基づくものであ
る。典型的には、このような細胞は、核タンパク質およびRNA依存性RNAポリメラ
ーゼの提供が可能であり、これにより、ゲノムvRNA断片を含むRNP複合体を形成
でき、細胞でウイルス粒子が構築され得る。適切な型は(27)および(28)に記載さ
れている。
【0040】 上記の本発明のウイルスの特性に関する記載から、本発明のウイルスは免疫感
作への使用に適していることがわかるであろう。したがって、他の態様において
は、本発明は、本発明のウイルスを含むワクチンを提供する。特に好ましいのは
、例えば、野生型の本発明のウイルスと野生型の本発明のウイルス以外の第2の
病原物質の組み合わせなどの、1種以上の病原物質に対する混合ワクチン剤とし
てウイルスが作用するようなワクチンである。このようなワクチンは、この目的
のための公知の方法に従って製剤し、投与することができる。
【0041】 したがって、さらなる態様では、本発明は、ウイルス(例えば、インフルエン
ザウイルス)に対する免疫応答を、単独でまたは1種以上の他の病原物質に対す
る免疫応答と一緒に刺激する方法を提供する。該方法は、該免疫応答を誘導する
ことが可能な本発明のウイルスを、免疫感作の様式で投与することを含む。イン
フルエンザの場合、例えば、本発明のウイルスによる鼻腔内免疫が好ましい。こ
のような免疫感作は、Muster ら(2)およびFerko ら(21)が報告しているHIVエピ
トープを発現する組換えインフルエンザウイルスを用いる免疫感作研究によって
示されているとおりに実施することができる。免疫感作の適切な容量は、例えば
103〜109 pfuの範囲内であり得る。初回免疫に続いて、同じ機能を有するがサブ
タイプまたは型が異なるウイルスを用いて追加免疫することができる。
【0042】 インフルエンザウイルスに異種コード配列を組み込むための方法は、既に記載
されている(例えば、国際公開WO91/03552 (Palese ら.)および、Textbook of I
nfluenza(1998)中のMuster and Garcia-Sastreの総説(12))。この異種コード
配列は、本発明の核酸上にあってもよく、または他のゲノム断片上にあってもよ
い。さらなる核酸断片によって選択圧を提供するインフルエンザウイルスタンパ
ク質に対する遺伝子を組み込むことも可能である。例えば、少なくとも9種の異
なるvRNA断片を有するインフルエンザウイルスが構築できることは、既に報告さ
れている(14)。
【0043】 ワクチン接種の目的で外来抗原を発現するベクターとしての本発明の弱毒化組
換えインフルエンザウイルスの使用は、魅力のある治療方法である。その理由は
下記の通りである: 1. 異なるサブタイプに対する抗体は、わずかに交差反応性を示す。ウイルスを
ワクチンとして使用する欠点の一つは、免疫応答がウイルスに対して誘起される
ことである。同じ抗原を含む1回以上の追加免疫を、初回免疫後に行う場合が多
い。しかし、ウイルスに対する免疫応答により、同じウイルスでの連続する免疫
感作は、その効率が低下する。異なるサブタイプのインフルエンザに対する抗体
は、わずかしか交差反応性を示さないので、サブタイプは異なるが同じ抗原を発
現するインフルエンザウイルスを用いて後の免疫感作することで、上記の影響は
克服される。
【0044】 2. インフルエンザウイルスは、強い細胞性および体液性応答を誘導することが
示されている。
【0045】 3. インフルエンザウイルスは、強い粘膜性応答を誘導することが示されている
。インフルエンザウイルスを用いる鼻腔免疫は、生殖器および腸の粘膜において
長期持続性の応答を誘導することが示されている。
【0046】 4. インフルエンザウイルスは、非積算的(non-integrating)であり、かつ非
発癌性である。
【0047】 5. 上記に記載のように、本発明の弱毒化インフルエンザウイルスを安定に弱毒
化されることが期待される。
【0048】 本発明の組換えウイルスは、直接投与してもよく、またはこれを用いて生体外
(ex vivo)の細胞に感染させ、その後それを被検体に投与してもよい。
【0049】 したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明の組換えウイルスを、異種
コード配列を標的細胞に送達するための薬学的に許容される担体または希釈剤と
共に含む、医薬組成物を提供する。本発明のウイルスに感染した生体外(ex viv
o)の細胞、および薬学的に許容されうる担体または希釈剤と共に投与するため
に製剤された本発明のウイルスの宿主となる細胞も提供される。他の態様では、
本発明は、異種コード配列を含む本発明のウイルスを細胞に感染させることを含
む、異種コード配列を細胞に送達する方法を提供する。
【0050】 本発明のウイルスはまた、遺伝子をレスキューするためのヘルパーウイルスと
して使用して、弱毒化突然変異により影響された遺伝子を置換することができ、
選択的な細胞型において増殖の増大を示すウイルスを提供できることが判明して
いる。この目的のため、弱毒化ウイルスは、1種以上の細胞型において対応する
野生型ウイルスと比較して、少なくとも約log 3〜log 4、好ましくは約log 5の
増殖の低下を示すウイルスを選択することが好ましい。したがって、他の実施形
態では、本発明は、細胞内でインフルエンザウイルスゲノム核酸断片をレスキュ
ーするためのヘルパーウイルスとしての、本発明のウイルスの使用であって、該
核酸断片を含んで作製されたウイルスが、選択された細胞型において、ヘルパー
ウイルスに比べて増殖が増大していることに基づいて選択される、上記使用を提
供する。例えばNAをコードするvRNA内に弱毒化ポリUトラック置換を有する本発
明のA型インフルエンザウイルスは、NAをコードするvRNAまたは第2のA型インフ
ルエンザウイルス由来のその機能的改変物をレスキューするために有効に用いる
ことができる。この目的のための典型的なプロトコールは、以下のステップ: 1. ヘルパーウイルスの細胞への感染、 2. レスキューされるべき遺伝子を含有するRNP複合体のヘルパーウイルスに
感染した細胞へのトランスフェクション、および、 3. 同じ細胞型またはヘルパーウイルスが弱毒化の増大を示す異なる細胞型の
いずれかでのレスキューされたウイルスの選択、 を含む。
【0051】 第3のステップにおける細胞型は、トランスフェクトされた遺伝子を獲得した
ウイルスのみが、高力価で増殖することが期待されるように選択する。in vitro
での本発明の弱毒化ウイルスの選択に有用であることがわかっている培養細胞は
、MDBK 細胞、 Madin-Darby イヌ腎 (MDCK) 細胞および Vero (アフリカミドリ
ザル腎)細胞の1種以上のものである。
【0052】 A/WSN/33インフルエンザウイルスである本発明のウイルスは、A型以外のイン
フルエンザウイルスに由来するNA遺伝子をレスキューするために使用するヘルパ
ーウイルスとして特に好ましい。この場合、例えば、MDBK 細胞を係るヘルパー
ウイルスに感染させて、Vero細胞を弱毒化突然変異を有していないvRNAを含有す
るNA遺伝子を含むウイルスの選択に用いることが好ましい。
【0053】 A/WSN/33インフルエンザは、マウスにおいて表面抗原NAに関連する神経毒性を
示すことが知られている。このために、該ウイルスの弱毒化改変は、直接ワクチ
ンとして使用するためには不適切であると見なされている。しかし、上述のよう
にヘルパーウイルスとして用いる場合、NA vRNAは、部位特異的突然変異のため
に得ることができ、治療用、例えばワクチンとしての使用にさらに適する代替と
なる本発明の弱毒化A型インフルエンザウイルスを構築することができる。
【0054】 添付の図面により本発明を更に説明するが、それらの図面は以下のとおりであ
る。
【0055】 図1には、野生型の保存末端配列を含むvRNAのモデルを示す。このvRNA鋳型の
提案するRNAフックモデルが示されている。U6トラック(ポリアデニル化部位)
は太字で示す。
【0056】 図2は、CAT発現に及ぼすU6トラックの突然変異の影響を示す。ヒト293腎臓細
胞を、野生型ポリアデニル化シグナル(レーン1〜4)、U6→A6突然変異(A6
レーン5および6)もしくはU6→UCUACG突然変異(RS;レーン7および8)を含
む4種のタンパク質発現プラスミド(pGT-h-PB1、pGT-h-PB2、pGT-h-PAおよびpG
T-h-NP)並びにpPOL-I-CAT-RTでトランスフェクトした。細胞溶解物のCAT活性を
、「材料および方法」の欄に記載されているようにして分析した。細胞溶解物の
希釈倍率は図示のとおりである。レーン9は偽トランスフェクション(C)であ
る。
【0057】 図3には、ポリ(U)テール含有NA mRNAがA6トランスフェクタントウイルスによ
り合成されることを示す。(A)RT-PCRアッセイ。野生型ウイルス(WT;レーン
2、5および8)またはA6突然変異体(A6;レーン3、5および9)に感染させ
た細胞からの全RNAを、vRNA(レーン2および3)、ポリ(U)テール含有NA mRN
A(レーン5および6)並びにポリ(A)テール含有NA mRNA(レーン8および9)
についてのRT-PCR反応により試験した。RT-PCR産物は、8%未変性アクリルアミ
ドゲルで分析した。ウェル近傍にある高分子量のバンドは、非特異的なPCR産物
である。レーン1、4および7はDNAマーカー(M)である。(B)ポリ(U)テー
ル含有NA mRNAから誘導したcDNAクローンのポリ(U)配列(n=84)。インフルエ
ンザウイルスのmRNAの配列が示されている。
【0058】 図4には、A6突然変異体が、NA発現の低下により弱毒化されていることが示さ
れている。(A)MDBK細胞におけるトランスフェクタントウイルスの増殖曲線。
細胞を、野生型ウイルス(WT)またはA6突然変異体(A6)に0.01MOIで感染させ
た。指定の時点で培地に放出された感染粒子を、MDBK細胞におけるプラークアッ
セイにより力価測定した。(B)野生型ウイルス(WT)およびA6突然変異体(A6 )のNA活性。NA活性は、ウイルスタンパク質1マイクログラム当たり1分間に放
出される4-メチルウンベリフェロンの量(ナノモル)で表わした。(C)感染細胞
におけるNAタンパク質発現。A6突然変異体に感染させた細胞(パネルaおよびb
)、野生型ウイルスに感染させた細胞(パネルcおよびd)、並びに偽感染細胞
(パネルeおよびf)を、NAタンパク質発現について試験した。NAタンパク質発
現は、FITC標識化抗体を用いて蛍光顕微鏡により可視化した。細胞を、DNA染色
用の4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を含有する抗退色性培地
中にマウントした。パネルの2番目のカラムは、NAタンパク質発現と細胞核との
合成画像である。細胞の全部がウイルスに感染した訳ではない点に注意されたい
【0059】 図5には、NA特異的vRNAについてのプライマー伸長アッセイを示す。(A)A6 突然変異体(A6)および野生型ウイルス(WT)に感染させた細胞におけるNA特異
的vRNAのレベル。感染細胞からの全RNAを、感染後の指定の時点にて単離した。N
A(259nt)およびNS(196nt)のvRNAについての予想どおりの産物が示される。
(B)精製したA6突然変異体(A6)および野生型ウイルス(WT)におけるNA特異
的vRNAのレベル。NA(259nt)およびNS(196nt)のvRNAについての予想どおりの
産物が示される。(C)A6突然変異体(A6)または野生型ウイルス(WT)に感染
させた細胞におけるNA vRNAとNS vRNAの比。
【0060】 図6には、NA特異的cRNAおよびmRNAについてのプライマー伸長アッセイを示す
。(A)A6突然変異体(A6)および野生型ウイルス(WT)に感染させた細胞にお
けるNA特異的cRNAおよびmRNAのレベル。感染細胞からの全RNAを、感染後の指定
の時点にて単離した。NA cRNA(142nt)、NA mRNA(152〜157nt)、HA cRNA(94
nt)およびHA mRNA(104〜109nt)についての予想どおりの産物が示される。イ
ンフルエンザウイルスのmRNAは(異なる大きさからなる)キャップ化RNAプライ
マーにより開始されるので、このmRNAのプライマー伸長産物は、cRNAの産物より
も10〜15ntだけ長い幅広のバンドを生じると予想される。(B)A6突然変異体(
A6)または野生型ウイルス(WT)に感染させた細胞におけるNA cRNAとHA cRNAの
比。(C)A6突然変異体(A6)または野生型ウイルス(WT)に感染させた細胞に
おけるNA mRNAとHA mRNAの比。
【0061】 図7には、ポリ(U)テール含有NA mRNAが主に核に局在することを示す。A6突然
変異体に感染させた細胞(パネルA〜CおよびJ〜L)、野生型ウイルスに感染
させた細胞(パネルD〜FおよびM〜O)、並びに偽感染細胞(パネルG〜Iお
よびP〜R)を、NA mRNA特異的プローブ(パネルA〜I)またはポリ(U)テール
含有NA mRNA特異的プローブ(パネルJ〜R)とハイブリダイズさせた。細胞の
核をDAPIで染色した(第1のカラム)。対応するプローブの分布を蛍光顕微鏡で
可視化した(FITC、第2のカラム)。第3のカラム(Merge)は第1のカラムと第2
のカラムとの合成画像である。全ての細胞がウイルスに感染した訳ではない点に
注意されたい。
【0062】 以下の実施例も本発明を説明するものである。
【0063】実施例1 発現に対するインフルエンザウイルスのポリUトラックの置換の影響 モデルvRNA鋳型において、インフルエンザウイルスのUトラック(図1)をA
トラックと置き換えることにより、in vitroおよびin vivoの双方においてポリ(
U)テール含有mRNAが合成された。ポリ(U)テール含有mRNAが遺伝子発現に使用可
能か否かを調べるために、プラスミドに基づくクロラムフェニコールアセチルト
ランスフェラーゼ(CAT)レポーター系を用いた。CAT vRNA発現プラスミドであ
るpPOLI-CAT-RT(19)をヒト293腎臓細胞にトランスフェクトして、負の方向にC
AT遺伝子を含み、かつインフルエンザA/WSN/33型ウイルスの第8断片の5’側お
よび3’側の非コード領域に隣接するvRNA様の鋳型を合成した。また、CAT vRNA
鋳型の複製および転写のために、ウイルス性PB1、PB2、PAおよびNPタンパク質を
コードする4種のタンパク質発現プラスミドも上記細胞にコトランスフェクトし
た。ポリ(U)テール含有mRNAを合成するために、CAT vRNA鋳型の5’側非コード領
域内のポリアデニル化部位(U6トラック)をA6トラックに突然変異させた。この
突然変異体鋳型から転写されたmRNAの3’末端にポリ(U)配列が存在することは、
別の論文(1)において厳密に実証済みである。
【0064】 細胞を野生型CAT vRNA発現プラスミドでトランスフェクトした場合、強いCAT
活性が検出された(図2、レーン1〜4)。しかし、U6→A6構築物(上記を参照
)を細胞にトランスフェクトした場合には、低いが(野生型の3±1.5%)有意
なCAT活性が検出された(図2、レーン5および6をレーン1〜4を比較された
い)。これに対して、U6→UCUACG「ランダム」突然変異を含む対照プラスミドで
トランスフェクトした細胞は、検出可能なCAT活性を示さなかった(図2、レー
ン7および8)。これらの結果から、vRNAの5’末端近傍にあるホモポリマート
ラックが、ポリメラーゼの停止、ポリメラーゼスリッページ(slippage)および
ホモポリマーテールの合成に必要であることの確証となる。U6トラックを「ラン
ダム」な配列に突然変異させた場合には遺伝子発現が検出されなかったので(図
2、レーン7および8)、これらの結果からは、更に、ホモポリマートラック(
U6またはA6のいずれか)が遺伝子発現に必要不可欠であることも実証される。
【0065】実施例2 ポリ(U)テールを持つNA特異的mRNAをコードするインフルエンザウイルスのレス
キュー CAT vRNAから転写されたポリ(U)テール含有mRNAは(低効率ではあるが)翻訳
されたので、ポリ(U)テール含有mRNAを合成できるトランスフェクタントインフ
ルエンザウイルスをレスキューできるか否かを調べることは関心のあることであ
った。NA断片のvRNAにおいてポリアデニル化シグナル(U6)をA6配列で置き換え
ることに決めた。この理由は、一部はこの遺伝子断片のための有効なレスキュー
系の利用可能性によるものであり(7)、一部はインフルエンザウイルスがNAタン
パク質レベルの極度な低下を許容することが知られていることによる。NA断片の
ポリアデニル化部位にAトラックを持つトランスフェクタントウイルス(以後、
A6突然変異体と呼ぶ)を構築するために、まず、その5’側非コード領域にU6→A 6 突然変異を含む合成NA vRNAをリボ核タンパク質(RNP)に再構成した。次に、
この再構成RNPを、A/WSN/HKヘルパーウイルス(8)に感染させた細胞にトランスフ
ェクトした。3種の独立したトランスフェクションにおいて、野生型ウイルスと
A6突然変異型ウイルスの両者がレスキューされた。しかし、Uトラックをランダ
ムな配列(UCUACG)に突然変異させた場合には、トランスフェクタントウイルス
はレスキューできなかった。トランスフェクタントウイルスは3回プラーク精製
し、各ウイルスの1つのプラークを更なる分析に用いた。
【0066】 A6突然変異体のNA vRNA内におけるU6→A6突然変異の存在を確認するために、
精製ウイルスからのvRNAを単離し、RT-PCRにより増幅し、クローニングし、配列
決定した。導入したU6→A6突然変異を除けば、この断片の5’側および3’側の非
コード領域では、残基195におけるG→Cの突然変異(図3Bに示す)以外の他の
突然変異は検出されなかった(データは示さず)。この余分な突然変異は、RNP
の再構成に先立って行ったU6→A6突然変異型NAプラスミドを作製するための突然
変異誘発プロトコールにおいて、不注意にも導入されてしまったものであった。
NA断片の5’側の保存されていない非コード領域におけるこの余分な突然変異は
、先の研究[(29)の構築物NA5Dを参照]において実証されているように、U6
A6突然変異体の特性に寄与しないと予想される。
【0067】 U6→A6突然変異は、MDBK細胞内でA6突然変異体を10回継代させた後であっても
検出でき(データは示さず)、このことは、U6→A6突然変異が少なくとも10回の
継代の間ずっと安定であったことを示している。
【0068】実施例3 ポリ(U)テール含有NA mRNAはA 6 突然変異体に感染させた細胞内で検出される NA vRNAにおいてU6→A6突然変異させれば、ポリ(U)テール含有NA mRNAが合成
されることを確認するために、野生型ウイルスまたはA6突然変異体に感染させた
細胞から全RNAを単離した。次に、全RNAを、ポリ(A)テール含有もしくはポリ(U)
テール含有mRNAのいずれか一方の検出に特異的なRT-PCRアッセイ(22)により試
験した。逆転写反応において、5’-GCクランプT20プライマーおよび5’-GCクラ
ンプA20プライマーを用いて、ポリ(A)テール含有mRNAもしくはポリ(U)テール含
有mRNAをそれぞれ検出した。先(22)に記載されているように、得られる正のシ
グナルは特徴的なスミアとして現れる。図3Aに示すように、ポリ(U)テール含有N
A mRNAは、A6突然変異体に感染させた細胞から単離した全RNAでは検出されたが
(レーン6)、野生型ウイルスに感染させた細胞から単離したものでは検出され
なかった(レーン5)。これに対して、ポリ(A)テール含有NA mRNAは、野生型ウ
イルスに感染させた細胞からのRNAにおいてのみ検出できたが(レーン8)、A6
突然変異体に感染させた細胞からのRNAでは検出されなかった(レーン9)。こ
れらの結果から、ポリ(U)テール含有NA mRNAが、A6突然変異体に感染させた細胞
内で特異的に合成され、ポリアデニル化されないことが示された。図3Aのレーン
2および3は、それぞれ野生型およびA6突然変異体に感染させた細胞から単離し
たNA vRNAの5’末端に対応するRT-PCR産物を示す。134ヌクレオチド(nt)DNAマ
ーカーと共に移動している強いシグナルは、RNA単離に用いた細胞が予想どおり
にウイルスに感染していたことを示している。次に、ポリ(U)テール含有mRNA(
レーン6)からのRT-PCR産物をクローニングし、配列決定した(「材料および方
法」の欄を参照)。9種の独立したクローンが、ポリ(U)配列を40〜127ヌクレオ
チドの範囲で含んでいることが判った。図3Bには、84個のU残基からなるポリ(U
)テールを持つ一例を示す。
【0069】実施例4 A 6 突然変異体はNAタンパク質発現の低下により弱毒化される A6突然変異体は、Madin-Darbyウシ腎臓(MDBK)細胞で増殖させると常に小さ
なプラークを生じたが(データは示さず)、このことは、この突然変異体が弱毒
化されていることを示唆している。A6突然変異体の増殖特性を更に詳細に特徴付
けるために、コンフルエントなMDBK細胞を0.01の感染多重度(moi)で感染させ
、培地に放出された感染ウイルス粒子の数を、MDBK細胞についてのプラークアッ
セイによりアッセイした。プラークの大きさから予想されたように、A6突然変異
体は弱毒化していた。A6突然変異体の最大プラーク力価は、野生型の場合よりも
約1log低下していた(図4A)。また、A6突然変異体はMadin-Darbyイヌ腎臓(MD
CK)細胞についても試験をしたが、この場合にも、最大プラーク力価は野生型ウ
イルスと比較して約1log低下していた(データは示さず)。
【0070】 CATレポーター遺伝子の研究(上記を参照。図2)と照らし合わせると、このA 6 突然変異体の弱毒化についての最も可能性が高い解釈は、NAタンパク質発現の
低下であった。この可能性を調べるために、分光蛍光アッセイ(「材料および方
法」の欄を参照)を用いて、精製ウイルスに関連するNA活性を分析した。A6突然
変異体のNA活性は野生型の約8%であった(図4B)。次に、モノクローナル抗NA
抗体を用いて、ビリオンにおけるNAタンパク質の低下が感染細胞におけるNAタン
パク質発現が低いためであることを示した。図4Cに示すように、NAは、野生型ウ
イルスに感染させた細胞の細胞質において高く発現された(パネルd)。これに
対して、A6突然変異体に感染させた細胞では、有意に少ないNAタンパク質が発現
された(パネルb)。この免疫蛍光アッセイの結果は定量的ではないが、それら
は図4Bの結果と一致しており、低下した量のNAがビリオンに取り込まれたことを
示している。加えて、これらの結果から、A6突然変異体の弱毒化が、A6突然変異
体に感染させた細胞におけるNAタンパク質発現の低下によることが示唆される。
【0071】実施例5 NA vRNAおよびmRNAのレベルは特異的に低下するがNA cRNAのレベルは低下しない 上記の結果から、A6突然変異体に感染させた細胞におけるNAタンパク質発現が
著しく低下することが示された。こうした低下は、感染細胞においてポリ(U)テ
ール含有mRNAが低レベルで合成されることによるものと考えられる。この仮説を
調べるために、各種の時点で感染細胞から全RNAを単離し、NA特異的vRNA、cRNA
およびmRNAの量をプライマー伸長アッセイにより定量した。NA vRNA分析のため
のプライマー伸長アッセイでは、内部対照としてNS vRNAを用いた。図5Aに示す
ように、試験した全ての時点において、A6突然変異体に感染させた細胞における
NA vRNAのレベルは、野生型ウイルスに感染させた細胞の場合よりも低かった。
これに対して、A6突然変異体に感染させた細胞からのNS vRNAのレベルは、野生
型の場合とほぼ同等であった。感染細胞におけるNA vRNAのレベルをNS vRNAのレ
ベルに対して標準化した場合、A6突然変異体の定常状態のNA vRNAレベルは、野
生型の場合の40〜53%であった(図5C)。また、ビリオンにおけるNA vRNAの量
も定量した(図5B)。トラスフェクタントウイルス(A6突然変異体)におけるNA
vRNAのレベルは、野生型の場合の約60%であった(図5B)。cRNAとmRNAは共に
プラスセンス(正方向;positive sense)なので、同じNA特異的プリマーを用い
て、これらのRNAの双方を分析した。これらのプライマー伸長反応では、内部対
照としてヘマグルチニン(HA)特異的プライマーを用いた。図6Aに示すように、
野生型ウイルスに感染させた細胞では、NA cRNAよりも多いNA mRNAが含まれてい
た。これに対して、A6突然変異体に感染させた細胞におけるNA mRNAシグナルは
、NA cRNAシグナルよりも遥かに弱いものであった。これらの結果から、ポリ(U)
テール含有mRNAが低下レベルで合成されたことが示唆された。NA cRNAのレベル
を内部対照(すなわちHA cRNA)に対して標準化したところ、A6突然変異体の定
常状態のcRNAレベルは、(3つの独立した実験からの)ステューデントt検定に
おいて、野生型の場合と統計上は違いはなかった(図6B)。これに対して、NA m
RNAを内部対照(すなわちHA mRNA)に対して標準化した場合、感染細胞における
A6突然変異体の定常状態のmRNAレベルは、野生型の場合の約40〜50%にすぎなか
った(図6C)。これらの結果から、A6突然変異体のNA mRNAは低下したレベルで
合成されたが、NA cRNAはそうではなかったことが実証された。
【0072】実施例6 ポリ(U)テール含有NA mRNAは主に核に局在する A6突然変異体に感染させた細胞はNA mRNAレベルの低下を示したが、こうした
低下は、A6突然変異体のNA活性の著しい低下(野生型の8%;図4B)を十分に説
明できなかった。インフルエンザウイルスのmRNAは、感染細胞の核において合成
されるので、ポリ(U)テール含有NA mRNAが核外移行に欠陥がある可能があった。
この問題に対処するために、蛍光in situハイブリダイゼーションを用いて、感
染細胞におけるポリ(U)テール含有NA mRNAの分布を可視化した(図7)。まず、
プラスセンスNA RNAに特異的な(つまり、mRNAとcRNAの両者を検出する)リボプ
ローブを用いた(図7、パネルA〜I)。感染の間にcRNAはmRNAと比較して少な
い量で合成され、それらはウイルス感染の間はずっと核に留まっているので、細
胞質におけるあらゆる正のシグナルがmRNAを表わし、核におけるシグナルは(こ
のシグナルはcRNAに或る程度起因する可能性があるが)主にmRNAを表わすと推測
できる。図7(パネルD〜F)に示すように、野生型ウイルスに感染させた細胞
は、細胞質において強いシグナルを示した。これらの結果から、予想どおり、ポ
リ(A)テール含有mRNAが核から細胞質へと輸送されたことが示された。これに対
して、A6突然変異体に感染させた細胞では、プラスセンスNA RNAが核において検
出できただけであり(図7、パネルA〜C)、このことは、ポリ(U)-mRNAが核輸
送に欠陥を有し、主に核に停留していることを示唆している。偽感染ではシグナ
ルは検出されなかった(図7、パネルG〜I)。
【0073】 ポリ(U)テール含有NA mRNAが合成後に主に核に停留していることを確認するた
めに、in situハイブリダイゼーションにおいて、ポリ(U)テール含有NA mRNAに
特異的であるがNA cRNAには特異的でないリボプローブを用いた。予想通り、野
生型ウイルスに感染させた細胞(図7、パネルM〜O)でも偽感染体(図7、パ
ネルP〜R)でも、ポリ(U)テール含有NA mRNAは検出されなかった。これに対し
て、A6突然変異体に感染させた細胞では、ポリ(U)テール含有NA mRNAは検出され
た(図7、パネルJ〜L)。より重要なことは、ポリ(U)テール含有NA mRNAが主
に感染細胞の核内で検出された点である(図7、パネルJ〜L)。つまり、これ
らの結果から、ポリ(U)テール含有mRNAは合成後に主に核に停留していることが
実証され、このことは、ポリ(U)テール含有mRNAが核外移行に欠陥を有すること
を強く示唆している。
【0074】実施例7 A 6 突然変異体の病原性および有効性 A6突然変異体の病原性およびA6突然変異体によりもたらされる防御は、Balb/C
マウスを用いて調べた。これらのマウスを、様々な力価の野生型または突然変異
型のウイルスでチャレンジして病原性を調べ、次に肺炎の徴候について観察した
。次いで、突然変異型ウイルスの防御効果を調べるために、突然変異型インフル
エンザウイルスに感染させたマウスを、野生型インフルエンザウイルスの感染に
よりチャレンジし、病状についてモニターした。このマウスのインフルエンザチ
ャレンジモデルは、インフルエンザ感染の研究用の樹立系であり、インフルエン
ザに対するワクチンまたは抗ウイルス性化合物の有効性を測定するのに伝統的に
用いられてきたものである。
【0075】 この研究では、同腹のものを無作為に混ぜて6〜12週令の雌性Balb/Cマウス(
Charles River UK Ltd.)42匹を用いた。マウスを6匹ずつ7群に分け、群内で
各個体が識別できるように、全部を電気的にタグ付けした。0日目に、全てのマ
ウスをハロタン/酸素を用いて麻酔し、50μlのインフルエンザウイルスで鼻腔
内感染させ、各マウスのそれぞれの体重を記録した。7つの群のマウスに、表1
に示すようにして、突然変異型または野生型のウイルスを投与した。毎日、全て
のマウスを個々に臨床的症状について観察し、体重測定をした。進行した肺炎の
症状を示すマウス、または20%以上体重が減少したマウスを、Home Officeスケ
ジュール1の手順に従って安楽死させた。全てのマウスの総合的な健康等級付け
は、0(十分に健康)〜8の段階に分けて行った。7よりも高い等級を付けられ
たマウスは安楽死させ、8と等級付けされたマウスは残りの研究用とした。安楽
死させたマウスの最終体重を、残りの研究日数について群平均に含めた。全ての
マウスを、感染後21日間にわたって観察した。A/WSN/33野生型の群からの生存マ
ウスを、Home Officeスケジュール1の手順に従って安楽死させた。感染後21日
目に、残りのマウス全て(未感染の対照群を含む)に、A/WSN/33野生型50μlに
よる2回目の感染を施した。全てのマウスを毎日、臨床的症状について観察した
。前回と同じ安楽死の終点を用いた。2回目の感染の10日後、残りのマウスを犠
牲にした。表2に、病原性研究の結果を示す。野生型ウイルスに感染させたマウ
スでは、2または3日目以後に、重篤な健康影響が見られ、大部分を安楽死させ
なければならなかった。これに対して、最高投与量の突然変異型ウイルスを感染
させたグループの数匹のマウスでは、7日目および8日目にわずかな影響が見ら
れただけだった。少な目の投与量では、悪影響は全く見られなかった。
【0076】 表3に、防御研究の結果を示す。最初にポリU改変ウイルスに感染させた後で
野生型ウイルスでチャレンジしたものの健康状態および体重の数値は、対照群の
値よりも有意に良好であった。防御していない対照群では、チャレンジの2日以
内に、重篤な健康影響および体重減少が見られた。しかし、予め突然変異型ウイ
ルスに感染させておいたマウスでは、どの投与量においても、健康影響および体
重減少はずっと少なく、最大投与量の群では、影響はほとんどなかった。したが
って、この突然変異型ウイルスは、通常は致死的である量の野生型ウイルスに対
して有意な防御をもたらした。
【0077】考察 インフルエンザウイルスのvRNA鋳型におけるポリアデニル化部位は、該vRNAの
5’末端近傍にあるウリジン残基のトラックに位置していた。そこで、本発明者
らは、NA vRNA断片の5’末端にU6からA6への突然変異を含むインフルエンザウイ
ルスを作製した。このU6からA6への突然変異によって、この新規なトランスフェ
クタントウイルスは、通常のポリ(A)テールの代わりにポリ(U)テールを含むNA m
RNAを合成した。本発明者らがこのNA mRNA中にポリ(A)配列を検出しなかったこ
とは驚くことではない。何故ならば、ポリ(U)テール含有mRNAには、ポリアデニ
ル化のためのウイルスシグナルが欠落しているからである。更に、このmRNAは、
真核細胞性ポリアデニル化機構のためのシグナルを含んでいない。したがって、
既知の宿主の酵素がこのポリ(U)テール含有NA mRNAにポリ(A)配列を付加できる
可能性はほとんどない。興味深いことに、A6突然変異体に感染させた細胞では、
NAの低い発現が検出され、このことは、ポリ(U)テール含有NA mRNAが翻訳され得
ることを示している。U6からA6への突然変異は、驚くべきことに、ウイルスの継
代の間ずっと安定であり、10回ウイルス継代した後でさえも、A6トラックにおけ
る逆突然変異は検出されなかった。これに対して、U6トラックをランダムな配列
(TCTACG)に突然変異させた場合には、ウイルスはレスキューされず、このこと
は、ポリアデニル化部位にあるホモポリマー性トラックがmRNAの合成に必要不可
欠であることを示唆している。これらの結果は、CATレポーターアッセイ(図2
)により確認されたものであり、そこにおいて、U6→TCTACG突然変異体はCAT発
現を示さなかった。
【0078】 A6突然変異体は、細胞培養下で弱毒化された。この突然変異型ウイルスのNA活
性を分析したところ、わずか野生型の約8%であり、これは、A6突然変異体に感
染した細胞におけるNA発現レベルの低下と相関する。NAは、細胞表面とウイルス
の双方の糖タンパク質から末端シアル酸を除去することによってウイルス粒子の
細胞表面からの放出を促進し、そうしてウイルスの伝播を促進することが知られ
ている。したがって、A6突然変異体の弱毒化は、細胞におけるNA発現レベルの低
下によるものであることはほぼ間違いない。
【0079】 感染細胞では、低下したレベルのポリ(U)テール含有NA mRNAが検出され、この
ことは、NAの低発現が低レベルのポリ(U)テール含有NA mRNAによるものである可
能性があることを示唆している。U6トラックもしくはA6トラックを含むモデルvR
NA鋳型はin vitroでほぼ同量のmRNAを合成する(1)ので、A6突然変異体の突然
変異NA vRNAがポリ(U)テール含有mRNAの合成にとってあまり効果的な鋳型ではな
いことはまずなかった。観察されたポリ(U)テール含有NA mRNAレベルの低下は、
NA vRNAレベルの低下によるものであると考えられた。感染細胞におけるvRNAの
定常状態レベルを分析したところ、NA vRNAレベルは50%低下していた。vRNAの3
’末端および5’末端にある非保存的ヌクレオチドが複製において重要な役割を
担っていることが示された。cRNAおよびvRNAの非保存的配列に変化をもたらすU6 からA6への突然変異が、幾分か複製プロセスをダウンレギュレートし得る可能性
がある。しかし、A6突然変異体のNA cRNAレベルは、この突然変異体変異により
影響を受けなかった。野生型ウイルスの感染において、vRNAは、子孫ビリオンへ
のパッケージングのために細胞質に輸送され得るか、あるいは転写および複製の
ための鋳型として用い得る。A6突然変異体を感染させる場合には、通常mRNAの合
成に用いられるかまたは細胞質へと輸送されるNA vRNAが、NA cRNA合成にリクル
ートされ、NA vRNAの合成に十分なレベルのNA cRNA鋳型を維持されている可能性
がある。A6突然変異型ウイルスのNA活性の著しい低下(野生型の8%)は、A6
然変異体に感染した細胞におけるNA mRNAレベルの低下(野生型の50%)と相関
しなかった。このことは、ポリ(U)テール含有mRNAのレベルの低下が、NA発現に
影響を及ぼす唯一の要因ではないことを示している。in situハイブリダイゼー
ションの結果(図7)から、ポリ(A)テール含有NA mRNAとポリ(U)テール含有NA
mRNAの異なる局在パターンが見られた。ポリ(A)テール含有NA mRNAは、細胞質に
のみ分布していた。これに対して、ポリ(U)テール含有NA mRNAは、主に核におい
て認められた。タンパク質合成は細胞質で起こるので、ポリ(U)テール含有NA mR
NAの核から細胞質への輸送に欠陥があれば、タンパク質発現のためのmRNAは限ら
れた量しか生じない。したがって、感染細胞におけるNAタンパク質発現の著しい
低下は、ポリ(U)テール含有mRNAの核内での停留が原因である可能性が最も高い
。本発明者らはA6突然変異体感染細胞の細胞質においてNA mRNAを検出できなか
ったが(図7)、このことは、今回の検出限界よりも低いレベルでポリ(U)テー
ル含有NA mRNAが細胞質内に存在していたことを示している。一方、感染細胞(
図4B)およびA6突然変異型ウイルス(図4C)におけるNAタンパク質の検出から、
ある特定量のポリ(U)テール含有NA mRNAが翻訳に利用可能であることが明確に実
証された。したがって、それは、細胞質へと輸送(または拡散)されなければな
らない。
【0080】 本発明者らには、NA mRNAのポリ(A)テールをポリ(U)テールで置き換えること
が、翻訳効率に影響を及ぼすのか否かについては判らない。しかし、ポリ(U)テ
ール含有mRNAの大部分が核に残留することが判ったので、A6突然変異体感染細胞
において明らかなレベルのNAタンパク質発現(野生型の8%)があることは、ポ
リ(U)テール含有NA mRNAが翻訳に対して適性のある鋳型であることを示唆してい
る。ポリアデニル化されていないインフルエンザウイルスのmRNAは、in vitro条
件下で翻訳されることが判っている。また、本研究からの結果から、ポリアデニ
ル化が翻訳に必要ではないことも示される。更に、本発明者らの結果は、他の要
因がウイルス翻訳の調節に関与することを意味している。故に、ウイルスmRNAの
5’非翻訳領域、NS1タンパク質およびある種の細胞性タンパク質は、ウイルスmR
NAの翻訳に役立つことが判る。したがって、インフルエンザウイルスmRNAのポリ
(A)テールは翻訳にとって必須ではなく、その最も重要な機能は、インフルエン
ザmRNAの核から細胞質への輸送を指令することであると思われる。
【0081】 幾つかのインフルエンザウイルスのタンパク質がRNAの輸送に関連するプロセ
スに関与することが示されている。例えば、核タンパク質およびマトリックスタ
ンパク質1は、vRNAに結合して、その核外移行を促進することが知られている。
近年、NS2(NEPとしても知られている)が、ウイルス性RNPの輸送を媒介する点
でHIV-1のRevタンパク質とほぼ同様の機能を持つと確認された。しかし、これら
のタンパク質は、vRNAの核外移行のみの媒介に限られると考えられる。NS1タン
パク質は、細胞性3’末端プロセシング機構と相互作用して、細胞性ポリ(A)含有
mRNAの核外移行を阻害すると思われる。しかし、新しい証拠から、NS1のこれら
の機能が、ある特定の条件下ではウイルス複製にとって重要ではないことが示唆
される。インフルエンザウイルスのmRNAは、細胞性mRNAとほぼ同様の構造[例え
ば、5’キャップおよびポリ(A)テール]を持つので、それらが核外移行のために
細胞性mRNA輸送系を利用するとしても驚くことではない。
【0082】 真核細胞においては、細胞性mRNA前駆体の突然変異が核外移行にとっての先行
条件である、という考えを支持する一連の証拠が次々に出てきている。この考え
と一致して、ポリ(A)テールの付加が、mRNAの輸送を刺激することが判った。ポ
リアデニル化されていないヒストンmRNAでは、成熟型3’末端を作ることが核外
移行に必要であることも知られている。この場合、成熟型mRNAの特徴的なシグナ
ル[例えばポリ(A)テール]がないと、細胞性核外移行因子は、A6突然変異体の
ポリ(U)テール含有NA mRNAをmRNA前駆体とみなして、そのポリ(U)テール含有mRN
Aを核内に停留させる。インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼによるポリ(A)
テールの合成には細胞開裂/ポリアデニル化機構は必要ではないので、本発明者
らの結果は、効率的なmRNAの輸送にはポリ(A)配列自体が必要であることを示唆
している。
【0083】 一方、ポリ(U)テール自体が核内停留のシグナルである可能性がある。真核細
胞では、mRNAの核外移行に先立って、核内のmRNAに関連する幾つかの細胞性タン
パク質が選択的に取り除かれるが、このことは、これらの細胞性タンパク質の中
のあるものが核内停留に関与し得ることを示している。興味深いことに、hnRNP
Cタンパク質(mRNAの核内停留に関与するタンパク質)は、ポリ(U)配列に対して
強い結合特性を持つことが示されている。本発明者らは、hnRNP Cタンパク質、
あるいは恐らくは(細胞性およびウイルス性の)他の核内停留因子が、ポリ(U)
テール含有mRNAのポリ(U)配列に特異的に結合して、ポリ(U)テール含有mRNAの核
から細胞質への輸送を妨害すると推測する。
【0084】材料および方法 ウイルス類 A/HK/8/68インフルエンザウイルス由来のNA断片とA/WSN/33インフルエンザウ
イルス由来の全ての他の断片とを含む遺伝子交雑ウイルスであるインフルエンザ
A/WSN/HKウイルスは、胚性ニワトリ卵内で増殖させた。インフルエンザX-31ウイ
ルスは、インフルエンザA/HK/8/68ウイルスとインフルエンザA/PR/8/34との遺伝
子交雑ウイルスである。
【0085】プラスミドトランスフェクションおよびCATアッセイ インフルエンザPB1、PB2、PAおよびNPタンパク質それぞれを発現するプラスミ
ドである、pGT-h-PB1、pGT-h-PB2、pGT-h-PA、pGT-h-NP、並びにpPOLI-CAT-RTは
、P. Palese氏(1、19)から恵贈していただいた。1μgの各プラスミドを、25
μlのDOTAPトランスフェクション試薬(Boehringer Mannheim)と共に、製造元
の指示どおりに293細胞にトランスフェクトした。pPOLI-CAT-RTプラスミドの突
然変異型は、逆PCR法によりPfu DNAポリメラーゼを用いて作製し、突然変異した
配列をDNA配列決定により確認した。トランスフェクションの約60時間後の時点
で、細胞抽出物を回収し、記載されているようにして(23)CAT活性について調
べた。50μlの未希釈もしくは希釈した細胞抽出物を、0.08μCiの[14C]クロラ
ムフェニコール、1mMのアセチル-CoAおよび250mMのTris-HCl(pH 7.5)を含む
反応混合物75μl中でインキュベートした。37℃で2時間インキュベートした後
、反応生成物を酢酸エチルで抽出し、次に薄層クロマトグラフィーにより分離し
た。アセチル化した生成物を、オートラジオグラフィーにより検出し、ホスホル
イメージャー(phosphorimager)で分析した。
【0086】A型インフルエンザウイルスRNPの調製およびRNPトランスフェクション 先に記載されているようにして(25)、A型インフルエンザウイルスX-31株か
らRNAポリメラーゼおよび核タンパク質を単離した。簡単に述べると、このウイ
ルスを、Triton X-100、NP-40およびリゾレシチンを用いて破壊した。グリセロ
ール段階勾配遠心分離によりRNPを分離した。RNPに富む画分を、ミクロコッカル
ヌクレーアーゼ(micrococcal nuclease)で処理し、次にEGTAを添加した後でRN
Pトランスフェクションに用いた。インフルエンザA/WSN/33の全長野生型NA vRNA
断片をコードするプラスミドpT3NAM1(5)は、P. Palese氏から恵贈していただ
いた。このプラスミドの突然変異型は、逆PCR法によりPfu DNAポリメラーゼを用
いて作製し、突然変異した配列をDNA配列決定により確認した。RNPトランスフェ
クションは、記載されているようにして行った(8)。簡単に述べると、BpuAI
で直鎖状化したpT3NAM1を、ミクロコッカルヌクレアーゼ処理したRNPの存在下で
、T3 RNAポリメラーゼにより37℃で30分間転写させた。再構成されたRNP複合体
を、DEAE-デキストランを用いて、インフルエンザA/WSN/HKヘルパーウイルスに
感染させたMDBK細胞にトランスフェクトした。1日間インキュベートした後、ト
ランスフェクト細胞から得られた培地を、MDBK細胞についてのプラークアッセイ
により、トランスフェクタントウイルスの存在の有無についてチェックした。
【0087】ウイルスの精製 トランスフェクタントウイルスは、寒天上層培地で覆ったMDBK細胞中で、3回
プラーク精製した。次に、精製したウイルスをMDBK細胞で増殖させ、30%ショ糖
クッションにより精製し、続いて30〜60%ショ糖勾配で精製した。
【0088】NA遺伝子の5’末端および3’末端の配列決定 トランスフェクタントウイルスからのNA断片の5’末端のcDNAクローンは、5’
DNA末端の迅速増幅(5’ RACE)により得た。精製トランスフェクタントウイル
スからのNA vRNAを、プライマー5’-GGGTGTCCTTCGACCAAAAC-3’(NA vRNAのnt87
9〜898に相補的)およびSuperScript II逆転写酵素(Gibco BRL)を用いて逆転
写した。ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼにより逆転写産物
の3’末端にポリ(C)配列を付加した。このポリ(C)テール付加cDNAを、PCRにより
、プライマー5’-TGGACTAGTGGGAGCATCAT-3’(NA vRNAのnt1280〜1299に相補的
)および5’RACE短縮アンカー(abridged anchor)プライマーを用いて、製造元
(Gibco BRL)の指示どおりに増幅した。次に、PCR産物をpGEM(登録商標)-Tベ
クター(Promega)にクローニングし、配列決定した。NA断片の3’末端配列のcD
NAを合成するために、まず、精製ウイルスからのvRNAをポリ(A)ポリメラーゼ(G
ibco BRL)によりポリアデニル化した。このポリアデニル化vRNAを、プライマー
5’-GCGCTCTAGAATTCTTTTTTTTTTTTTTTTAGC-3’を用いて逆転写した。cDNAを、PCR
により、逆転写用プライマーおよびプライマー5’-GTTGAGTCCTGCCCAGCAACAACT-3
’(NA vRNAのnt1197〜1220に対応)を用いて増幅した。次に、PCR産物をpGEM(
登録商標)-Tにクローニングし、配列決定した。
【0089】NA活性のアッセイ NA活性は、先に記載されているようにして測定した(25)。簡単に述べると、
精製ウイルス(約3μg)を、1mMのCaCl2および50nmolの2’-(4-メチル-ウンベ
リフェリル)-α-D-N-アセチルノイラミン酸(MU-NANA)(Sigma)を含有する150
mMリン酸緩衝液100μl中で、37℃で10分間インキュベートした。次に、2mlの0.
5M グリシン-NaOH(pH 10.4)を添加することにより反応を停止させ、放出され
た4-メチルウンベリフェロンを蛍光光度計(Shimadzu, RF-540)を用いてアッセ
イした。4-メチルウンベリフェロン(Sigma)の0.1mM溶液を標準対照として用い
た。
【0090】免疫蛍光顕微鏡法 ガラス製カバースライド(glass cover slide)上で増殖させたMDBK細胞を、
リン酸緩衝化食塩水(PBS)で洗浄し、次にウイルスに約0.5moi.で感染させた。
感染の10時間後に感染細胞を回収し、PBS中で2回洗浄し、パラホルムアルデヒ
ドの4%PBS溶液中で固定した。固定した細胞を0.5%Triton-X-100のPBS溶液で1
5分間透過化し、続いてPBS中で2回洗浄した。次に、細胞を100倍希釈したマウ
ス・モノクローナル抗NA抗体(H17-L17-5;Walter Gerhard氏からの恵贈)と共
に4℃で一夜インキュベートした。0.01% Triton-X-100を含むPBS中で2回洗浄
した後、細胞を、フルオレセインとコンジュゲートさせたウマ抗マウス抗体(Ve
ctor;1:200希釈)と共に室温で1時間インキュベートした。サンプルを、0.01
%Triton-X-100を含有するPBS中で2回洗浄し、次に、DNA染色用の4’,6-ジアミ
ジノ-2-フェニルインドール(DAPI)を含有する抗退色性培地(Vector)中でマ
ウントした。サンプルを、Zeiss Axiophot顕微鏡で調べた。
【0091】感染細胞からのmRNAおよびvRNAについてのRT-PCRアッセイ ウイルスに2moiで感染させたMDBK細胞を、感染12時間後に回収した。全RNAを
Trizol(Gibco BRL)を用いて、製造元の指示どおりにして単離した。NA vRNAを
検出するために、まず、約1.5μgの全RNAを25U モロニーマウス白血病ウイルス
逆転写酵素(M-MLV RT、Promega)により、NA vRNA特異的プライマー5’-GGGTGT
CCTTCGACCAAAAC-3’(NA vRNAのnt879〜898に相補的)の存在下で42℃で30分間
にわたり逆転写した。次に、この逆転写産物を、Taqポリメラーゼにより、プラ
イマー5’-TGGACTAGTGGGAGCATCAT-3’(NA vRNAのnt1280〜1299に相補的)およ
び5’-ggactagtagtAGTAGAAACAAGG-3’(下線部のntは、NA vRNAの5’末端の最初
の13ntに対応)を用いて増幅した。
【0092】 NA mRNAのホモポリマー性テールを検出するために、先に記載されているよう
にして(22)RT-PCRを行った。まず、約1.5μgの全RNAを、25U のM-MLV RT(Pro
mega)により、5’GCクランプT20プライマー[5’-GCCCCGGGATCCT20-3’、ポリ(
A)テール含有mRNAに特異的]もしくは5’GCクランプA20プライマー[5’-GCCCCG
GGATCCA20-3’、ポリ(U)テール含有mRNAに特異的]のいずれか一方の存在下で、
42℃で30分間にわたり逆転写した。次に、この逆転写産物を、Taqポリメラーゼ
により、5’-TGGACTAGTGGGAGCATCAT-3’(NA遺伝子のnt1280〜1299に相補的)お
よびホモポリマー性テールに特異的な対応するプライマーを用いて増幅した。次
に、全てのPCR産物をpGEM(登録商標)-Tにクローニングし、配列決定した。
【0093】プライマー伸長アッセイ 2moiでウイルスに感染させた細胞からの全RNAを、Trizol(Gibco BRL)を用
いて、指定の時点にて単離した。プライマー伸長アッセイは、先に記載されてい
るようにして行った(25)。約0.2μgのウイルスRNAまたは5μgの全RNAを、200
UのSuperScript(Gibco BRL)により、対応する32P標識化プライマーの存在下
で、42℃で45分間にわたり逆転写した。同容量のホルムアミド・ローディング用
色素を添加することにより反応を停止させた。次に、生成物を99℃まで2分間加
熱し、5%ポリアクリルアミド−7M 尿素ゲルで分析した。逆転写産物の収量を
定量するために、ゲルを乾燥させ、ホスホロイメージャーで分析した。
【0094】 NAおよびNSのvRNAのレベルを求めるために、NA vRNA特異的プライマー(5’-G
TGGCAATAACTAATCGGTCA-3’、NA vRNAのnt1151〜1171に相補的)およびNS vRNA特
異的プライマー(5’-GGGAACAATTAGGTCAGAAGT-3’、NS vRNAのnt695〜715に相補
的)をプライマー伸長アッセイに用いた。NA cRNA/mRNA特異的プライマー(5’
-GTTGAGTCCTGCCCAGCAACAACT-3’、NA vRNAのnt142〜122に対応)およびHA cRNA
/mRNA特異的プライマー(5’-CATATTGTGTCTGCATCTGTAGCT-3’、HA vRNAのnt94
〜71に対応)を用いて、それぞれNAおよびHAのmRNAおよびcRNAのレベルを求めた
【0095】in situハイブリダイゼーション ガラス製カバースリップ上で増殖させたMDBK細胞をPBSで洗浄し、次にウイル
スに0.5moiで感染させた。感染細胞を感染8時間後に回収し、PBSで2回洗浄し
、パラホルムアルデヒドの4%PBS溶液中で固定した。次に、固定された細胞を
、0.5%Triton X-100を含有するPBSにより、室温で15分間透過化した。次に、細
胞をPBS中で2回洗浄し、続いて、2×SSC(1×SSC=0.15M NaCl、0.015M クエ
ン酸ナトリウム)で2回洗浄した。サンプルを、約100ngのリボプローブを含有
するハイブリダイゼーション用緩衝液(50%ホルムアミド、2×SSC、10%デキ
ストラン硫酸塩、1mg/mlの大腸菌 tRNA)20μl中で、37℃で一夜ハイブリダイ
ズさせた。ハイブリダイゼーション後、細胞をハイブリダイゼーション用緩衝液
で37℃で2回洗浄し、続いて2×SSC、1×SSC、0.5×SSCおよび0.2×SSCで、室
温で15分間、順次洗浄した。次に、サンプルを、1μg/mgの抗ジゴキシゲニン−
フルオレセイン抗体(Boehringer Mannhein)を含有する4×SSC中で室温で1時
間インキュベートした。インキュベート後、サンプルを、0.01%Triton X-100を
含有する4×SSCで3回洗浄し、DNA染色用のDAPIを含有する抗退色性培地(Vect
or)中でマウントした。サンプルを、Zeiss Axiophot顕微鏡により調べた。
【0096】 NA cRNAおよびNA mRNAの検出のために、リボプローブ(NA vRNAのnt1〜299に
対応)を、BamHIで直鎖状化したpT3NAM1のT3 RNAポリメラーゼ転写により調製し
た。ポリ(U)テール mRNAの検出のために、ポリ(A)配列およびNA遺伝子の3’末端
の部分を含むプラスミドを構築した。このプラスミドからの転写産物は、86個の
A残基からなる配列[ポリ(U)テールに特異的]と、NA mRNAの少なくとも21個の
NA特異的残基とを含んでいた。両方のリブプローブは、in vitro転写の際に、ジ
ゴキシゲニン−UTP(Boehringer Mannheim)で標識した。
【0097】参考文献 1.Poon, L. L. M., D. C. Pritlove, E. Fodor, and G. G. Brownlee. 1999.
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【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1には、野生型の保存末端配列を含むvRNAのモデルを示す。
【図2】 図2は、CAT発現に及ぼすU6トラックの突然変異の影響を示す。
【図3】 図3には、ポリ(U)テール含有NA mRNAがA6トランスフェクタントウイルスによ
り合成されることを示す。
【図4】 図4には、A6突然変異体が、NA発現の低下により弱毒化されていることが示さ
れている。
【図5】 図5には、NA特異的vRNAについてのプライマー伸長アッセイを示す。
【図6】 図6には、NA特異的cRNAおよびmRNAについてのプライマー伸長アッセイを示す
【図7】 図7には、ポリ(U)テール含有NA mRNAが主に核に局在することを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 19/00 C12N 7/04 C12N 5/10 15/00 ZNAA 7/04 5/00 B (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG ,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD, RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT, AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,C A,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK,DM ,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH, GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,K E,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS ,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN, MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,RO,R U,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM ,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VN, YU,ZA,ZW (72)発明者 フォドール,アービン イギリス国 オクスフォード オーエック ス1 3アールイー,ユニバーシティ オ ブ オクスフォード,サー ウィリアム ダン スクール オブ パソロジー (72)発明者 プーン,レオ イギリス国 オクスフォード オーエック ス1 3アールイー,ユニバーシティ オ ブ オクスフォード,サー ウィリアム ダン スクール オブ パソロジー Fターム(参考) 4B024 AA01 BA31 CA03 EA02 4B065 AA95 AB01 BA14 CA45 4C085 AA03 BA51 BA55 BA57 BA58 CC08 EE01 4H045 AA10 BA40 CA01 EA31

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核酸から転写されたmRNAにポリUテールを付与し得るように
    コピー可能なポリAトラックで、ゲノム核酸内のポリUトラックを置換することに
    よって弱毒化されたマイナスセンス一本鎖RNAウイルス。
  2. 【請求項2】 ポリAトラックが反復的メカニズムによってコピーされる請
    求項1に記載のウイルス。
  3. 【請求項3】 インフルエンザウイルスである、請求項1または2に記載の
    ウイルス。
  4. 【請求項4】 A型、B型またはC型インフルエンザウイルスである、請求項
    3に記載のウイルス。
  5. 【請求項5】 核酸がノイラミニダーゼをコードするものである、請求項3
    または4に記載のウイルス。
  6. 【請求項6】 核酸が、天然型インフルエンザウイルスゲノムRNA断片が変
    異したものである、請求項3〜5のいずれか1項に記載のウイルス。
  7. 【請求項7】 MDCK細胞において、起源の野生型ウイルスに比べて、少なく
    とも約0.5 logのプラーク力価の低下を示す、請求項3〜6のいずれか1項に記
    載のウイルス。
  8. 【請求項8】 標的細胞で発現可能な異種コード配列をさらに含む、請求項
    1〜7のいずれか1項に記載のウイルス。
  9. 【請求項9】 異種コード配列が、病原物質に対する免疫応答を刺激し得る
    抗原性のあるペプチドまたはポリペプチドをコードするものである、請求項8に
    記載のウイルス。
  10. 【請求項10】 請求項1、5または6に記載の核酸。
  11. 【請求項11】 転写されて請求項10に記載の核酸を提供し得るDNA。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載のDNAを含むプラスミド。
  13. 【請求項13】 請求項10に記載の核酸が、インフルエンザウイルスのポ
    リメラーゼタンパク質および核タンパク質と複合体を形成している、請求項3〜
    9のいずれか1項に記載の弱毒化ウイルスの調製に使用するためのリボ核タンパ
    ク質(RNP)複合体。
  14. 【請求項14】 請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルスに感染した
    生体外(ex vivo)の細胞。
  15. 【請求項15】 請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルスを含むワク
    チン。
  16. 【請求項16】 請求項9に記載のウイルスを含み、かつインフルエンザウ
    イルスとインフルエンザウイルス以外の第2の病原物質とに対する免疫応答を刺
    激することが可能である、請求項15に記載のワクチン。
  17. 【請求項17】 請求項8または9に記載のウイルスを、その異種コード配
    列を標的細胞に送達するための薬学的に許容される担体または希釈剤と共に含む
    、医薬組成物。
  18. 【請求項18】 請求項8または9に記載のウイルスに感染した細胞を薬学
    的に許容される担体または希釈剤と共に含む、医薬組成物。
  19. 【請求項19】 宿主細胞内において、ゲノム核酸断片がウイルス粒子にパ
    ッケージングされる条件下で、ゲノム核酸断片がウイルスに提供されることを含
    む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のウイルスを調製する方法。
  20. 【請求項20】 細胞内でインフルエンザウイルスゲノム核酸断片をレスキ
    ューするためのヘルパーウイルスとしての、請求項1〜9のいずれか1項に記載
    のウイルスの使用であって、該核酸断片を含んで作製されたウイルスが、選択さ
    れた細胞型において、ヘルパーウイルスに比べて増殖が増大していることに基づ
    いて選択される、上記使用。
  21. 【請求項21】 インフルエンザウイルスに対する免疫応答を、場合によっ
    ては1種以上の他の病原物質に対する免疫応答と一緒に刺激する方法であって、
    請求項1〜9のいずれか1項に記載の弱毒化インフルエンザウイルスを免疫感作
    の様式で投与することを含む、上記方法。
  22. 【請求項22】 異種コード配列を含む請求項8または9に記載のウイルス
    を細胞に感染させることを含む、異種コード配列を細胞に送達する方法。
  23. 【請求項23】 ウイルスを弱毒化するための、ポリAトラックにおける突
    然変異の使用。
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