JP2003343336A - エンジントルクの算出方法 - Google Patents

エンジントルクの算出方法

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JP2003343336A
JP2003343336A JP2002149403A JP2002149403A JP2003343336A JP 2003343336 A JP2003343336 A JP 2003343336A JP 2002149403 A JP2002149403 A JP 2002149403A JP 2002149403 A JP2002149403 A JP 2002149403A JP 2003343336 A JP2003343336 A JP 2003343336A
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engine
engine torque
fuel injection
basic
torque
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JP2002149403A
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Takeshi Goto
岳史 後藤
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Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】基本エンジントルクを単に所定のパラメータで
補正する場合よりも高い精度でエンジントルクを算出す
る。 【解決手段】最終エンジントルクTQfin の算出に際
し、エンジンのエンジン回転速度及び燃料噴射量に基づ
いて基本エンジントルクTQbse を算出する(ステップ
110)。燃料噴射量指令値と実際の燃料噴射量との偏
差Qdlt を、燃料噴射量及び噴射時期についての各制御
信号(パイロット噴射量Qpl、パイロット噴射時期Int
p )から推定する(ステップ180)。この偏差Qdlt
が最終エンジントルクTQfin に及ぼす影響量である出
力トルクとして、補正値dTQを前記偏差Qdlt に基づ
いて算出する(ステップ190)。この補正値dTQを
用いて基本エンジントルクTQbse を補正することによ
り最終エンジントルクTQfinを算出する(ステップ2
00,210)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン回転速度
及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクを算出
し、この基本エンジントルクを補正することによりエン
ジントルクを算出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両においてトルクを制御する技術、例
えば、トランスミッション制御、ABS(Anti lock Br
ake System)制御、トラクション制御等が知られてい
る。これらの技術では、エンジンに関しては、実トルク
が目標トルクとなるように制御される。また、上述した
トランスミッション制御等に関しては、エンジンの実ト
ルクに応じて制御量が演算され、その制御量に従ってア
クチュエータが駆動制御される。例えば、トランスミッ
ション制御の場合、エンジンの実トルクに応じて変速用
ソレノイドバルブの制御量が演算され、その制御量に従
って同ソレノイドバルブが駆動される。この駆動により
油圧回路が切替えられ所定のギヤ位置(1速、2速、3
速等)が決定されて変速が行われる。また、ABS制御
では、エンジンの実トルクに応じてホイールシリンダの
ブレーキ油圧の制御量が演算され、その制御量に従って
アクチュエータが駆動される。この駆動によりブレーキ
油圧が制御され、車輪と路面とのスリップ率が望ましい
値に維持される。従って、これらのトランスミッション
制御等のためには、前記エンジンのトルク制御におい
て、実トルク(エンジントルク)を精度よく算出するこ
とが要求される。
【0003】ここで、エンジンでは、一般に環境条件に
より燃料の噴射時期、噴射圧や、冷却水温等が時々刻々
変化し、これらの変化が出力トルクに影響を及ぼす。す
なわち、前記の変化にともないシリンダ内の燃焼状態が
変わり、同一の燃料噴射量であってもエンジンの出力が
変わる。
【0004】そこで、例えば特開2000−12780
7号では、エンジントルクを次にようにして算出してい
る。まず、エンジン回転速度及び燃料噴射量に基づき基
本エンジントルクを求める。また、エンジントルクに影
響を及ぼすと考えられるパラメータ、例えば、吸入空気
量、吸気圧等から補正係数を求める。そして、この補正
係数で前記基本エンジントルクを補正することによっ
て、エンジントルクを算出する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、例えば燃焼
改善を目的として、燃料噴射をメイン噴射とそのメイン
噴射に先立つパイロット噴射とに分けて行うコモンレー
ル式のディーゼルエンジンエンジンでは、燃料噴射制御
に際し指令された燃料噴射量と実際の燃料噴射量との間
に差が生ずる場合がある。例えば、パイロット噴射の時
期が異なると、同じ燃料噴射量の指令値であっても、実
際の噴射量が変わってしまう。このように差が生ずる理
由としては、以下に示すものが考えられる。
【0006】(i)一般にパイロット噴射は圧縮行程の
上死点前に行われる。このことから、パイロット噴射の
噴射時期が異なると、すなわち、次のメイン噴射までの
インターバルが異なると、パイロット噴射が行われる時
点の筒内圧が異なる。例えば、インターバルが短くなる
に従いパイロット噴射時期が圧縮上死点に近づく。その
結果、筒内圧が高くなり、メイン噴射時に燃料が噴射さ
れにくくなり、噴射時間が同じであっても噴射量が少な
くなってしまう。
【0007】(ii)コモンレール式のディーゼルエンジ
ンでは、同ディーゼルエンジンによってサプライポンプ
が駆動され、このサプライポンプからコモンレールに燃
料が圧送される。燃料はコモンレールに一時貯留された
後、インジェクタの開弁により燃焼室に噴射される。こ
の構成のディーゼルエンジンでは、燃料がサプライポン
プから一定の圧力でコモンレールに圧送される。この状
況下で、インジェクタからの燃料の噴射により、サプラ
イポンプからインジェクタまでの管路において、燃料が
一定量放出される。この放出にともない噴射圧が一時的
に低下する。この噴射圧の低下はメイン噴射の噴射圧に
影響を及ぼすが、その影響量がパイロット噴射時期によ
って異なる。その結果、燃料噴射量の指令値が同じであ
っても、パイロット噴射時期に応じてメイン噴射の燃料
噴射量が異なってしまう。
【0008】そして、上記のようにして、指令された燃
料噴射量と実際の燃料噴射量との間に差が生ずると、エ
ンジントルクがその差の影響を受ける。この点、前述し
た公報の技術では、パラメータの種類に応じた単一の補
正係数を設定しているに過ぎず、前述した偏差が出力ト
ルクに及ぼす影響まで考慮していない。これでは、燃料
噴射量の指令値と実際の燃料噴射量との間に差が生じた
場合、その差を反映したエンジントルクの算出を行うこ
とができない。このため、前記公報の方法では、エンジ
ントルクの算出精度を高めるにも限度がある。
【0009】本発明はこのような実情に鑑みてなされた
ものであって、その目的は、パラメータの種類に応じた
単一の補正係数で基本エンジントルクを補正する場合よ
りも高い精度でエンジントルクを算出することのできる
算出方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】以下、上記目的を達成す
るための手段及びその作用効果について記載する。請求
項1に記載の発明では、エンジンのエンジン回転速度及
び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクを算出し、
この基本エンジントルクを補正することによりエンジン
トルクを算出する方法において、燃料噴射量指令値と実
際の燃料噴射量との偏差を、前記燃料噴射量及び噴射時
期についての各制御信号から推定するとともに、この偏
差に基づいて出力トルクを算出し、この出力トルクで前
記基本エンジントルクを補正するものとする。
【0011】上記算出方法によれば、エンジン回転速度
及び燃料噴射量に基づいて基本エンジントルクが算出さ
れる。この基本エンジントルクはエンジンの標準状態で
のトルクである。また、実際の燃料噴射量が燃料噴射量
指令値と異なっていると、エンジントルクがその影響を
受ける。このため、燃料噴射量指令値と実際の燃料噴射
量との偏差が判れば、その偏差がエンジントルクに及ぼ
す影響量を求めることが可能である。一方、前記偏差
は、一般に燃料の噴射量と噴射時期の関係に強く依存し
ている。
【0012】そこで、請求項1に記載の発明では、偏差
との間に密接な関係が見られる燃料噴射量及び噴射時期
が用いられ、前記偏差がこれら燃料噴射量及び噴射時期
についての各制御信号に基づき推定される。このように
偏差の推定に燃料噴射量及び噴射時期が用いられること
で、偏差が高い精度で推定される。そして、推定された
偏差に基づいて、同偏差がエンジントルクに及ぼす影響
量として出力トルクが算出される。この出力トルクで基
本エンジントルクが補正されることによりエンジントル
クが算出される。
【0013】従って、たとえ燃料噴射量指令値と実際の
燃料噴射量との間に差が生じ、その偏差に応じた出力ト
ルクがエンジントルクに影響を及ぼしたとしても、その
影響を考慮したエンジントルクが算出されることとな
る。その結果、パラメータの種類に応じて設定した単一
の補正係数で基本エンジントルクを補正する場合より
も、そのエンジントルクの算出精度を高めることが可能
となる。
【0014】請求項2に記載の発明では、請求項1に記
載の発明において、燃料噴射についての制御信号と、暖
機状態のエンジンにおける燃料噴射についての基本制御
信号とを用い、前記制御信号の前記基本制御信号に対す
る変化度合いを算出し、この変化度合いに基づいて前記
基本エンジントルクをさらに補正するものとする。
【0015】ここで、エンジンにあっては、環境の変化
等により燃料噴射に関する状態量、例えば噴射時期、噴
射圧等が変化して、暖機状態のエンジンにおける燃料噴
射に関する基本状態量からずれると、エンジントルクが
その影響を受けて変化する。すなわち、燃料噴射に関す
る状態量が変化することにより燃焼状態が変わり、同一
の燃料噴射量であってもエンジンの出力が変わる。
【0016】この点、請求項2に記載の発明では、「燃
料噴射についての制御信号」が、前記状態量に対応する
ものとして用いられる。また、「暖機状態のエンジンに
おける燃料噴射についての基本制御信号」が、前記基本
状態量に対応するものとして用いられる。そして、制御
信号の基本制御信号に対する変化度合いが算出され、こ
の変化度合いに基づいて基本エンジントルクがさらに補
正される。従って、燃料噴射に関する状態量が基本状態
量からずれ、それにともないエンジントルクが変化した
としても、前記変化度合いを用いた基本エンジントルク
の補正により、その変化分を考慮したエンジントルクを
算出することが可能となり、算出精度がさらに高くな
る。
【0017】請求項3に記載の発明では、請求項2に記
載の発明において、前記基本エンジントルクの補正に際
しては、前記変化度合いと前記エンジン回転速度とに対
応する第1補正係数を求め、この第1補正係数で前記基
本エンジントルクを補正するものとする。
【0018】上記算出方法によれば、基本エンジントル
クの補正に際し、変化度合いとエンジン回転速度とに対
応する第1補正係数が求められ、この第1補正係数で基
本エンジントルクが補正される。エンジン回転速度は、
エンジントルクに影響を及ぼすパラメータの1つであ
る。従って、このようにエンジン回転速度を加味するこ
とで、変化度合いを用いた基本エンジントルクの補正の
精度を高めることが可能となる。
【0019】請求項4に記載の発明では、請求項1〜3
のいずれか1つに記載の発明において、前記出力トルク
を用いた基本エンジントルクの補正に先立ち、単位燃料
噴射量当たりの出力トルクに対応する第2補正係数のう
ち、そのときのエンジン回転速度に対応する値を算出
し、この第2補正係数で前記偏差を補正することにより
前記出力トルクを算出するものとする。
【0020】ここで、前述した請求項1に記載の発明に
おいて、燃料噴射量指令値と実際の燃料噴射量との偏差
は、エンジン回転速度に応じて異なってくる。この点、
請求項4に記載の発明によれば、燃料噴射量指令値と実
際の燃料噴射量との偏差の推定とは別に第2補正係数が
算出される。この第2補正係数は、単位燃料噴射量当た
りの出力トルクに対応するもので、エンジン回転速度毎
に設定されている。そして、そのときのエンジン回転速
度に対応する第2補正係数が算出され、この第2補正係
数によって前記偏差が補正されることで出力トルクが算
出される。従って、このようにエンジン回転速度を加味
した第2補正係数を用いることで、出力トルクの算出精
度を高めることが可能となる。
【0021】請求項5に記載の発明では、請求項4に記
載の発明において、前記出力トルクを用いた基本エンジ
ントルクの補正に先立ち、燃料噴射についての制御信号
と、暖機状態のエンジンにおける燃料噴射についての基
本制御信号とを用い、前記制御信号の前記基本制御信号
に対する変化度合いを算出し、この変化度合いに基づい
て、前記第2補正係数を用いた補正後の前記出力トルク
をさらに補正するものとする。
【0022】ここで、エンジンにあっては、環境の変化
等により燃料噴射に関する状態量、例えば噴射時期、噴
射圧等が変化して、暖機状態のエンジンにおける燃料噴
射に関する基本状態量からずれると、エンジントルクが
その影響を受けて変化する。すなわち、燃料噴射に関す
る状態量が変化することにより燃焼状態が変わり、同一
の燃料噴射量であってもエンジンの出力が変わる。
【0023】この点、請求項5に記載の発明では、「燃
料噴射についての制御信号」が、前記状態量に対応する
ものとして用いられる。また、「暖機状態のエンジンに
おける燃料噴射についての基本制御信号」が、前記基本
状態量に対応するものとして用いられる。そして、制御
信号の基本制御信号に対する変化度合いが算出され、こ
の変化度合いに基づいて、第2補正係数を用いた補正後
の出力トルクがさらに補正される。従って、燃料噴射に
関する状態量が基本状態量からずれ、それにともないエ
ンジントルクが変化したとしても、前記変化度合いを用
いた補正により、その変化分を考慮した出力トルクを算
出することが可能となる。
【0024】請求項6に記載の発明では、請求項1〜5
のいずれか1つに記載の発明において、前記エンジンの
一燃焼行程中には、所定の燃料噴射と、その所定の燃料
噴射の燃料噴射量に影響を及ぼす直前の燃料噴射とを含
む複数の燃料噴射が行われ、前記偏差は、前記直前の燃
料噴射の噴射量についての制御信号と噴射時期について
の制御信号とに基づき推定されるものとする。
【0025】上記算出方法によれば、前記偏差との間に
密接な関係を有する直前の燃料噴射の噴射量及び噴射時
期が用いられ、前記偏差がこれら噴射量及び噴射時期に
ついての各制御信号に基づき推定される。従って、一燃
焼行程中に複数の燃料噴射を行うエンジンにおいて、前
記偏差ひいてはエンジントルクを高い精度で算出するこ
とが可能となる。
【0026】請求項7に記載の発明では、請求項6に記
載の発明において、前記一燃焼行程中の複数の燃料噴射
は、メイン噴射と、そのメイン噴射に先立ち行われるパ
イロット噴射とからなり、前記偏差は、パイロット噴射
量についての制御信号とパイロット噴射時期についての
制御信号とに基づき推定されるものとする。
【0027】上記算出方法によれば、前記偏差との間に
密接な関係を有するパイロット噴射の噴射量及び噴射時
期が用いられ、前記偏差がパイロット噴射量についての
制御信号と、パイロット噴射時期についての制御信号と
に基づいて推定される。従って、一燃焼行程中にパイロ
ット噴射及びメイン噴射を行うエンジンにおいて、前記
偏差ひいてはエンジントルクを高い精度で算出すること
が可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施
形態について説明する。図1は、車両に搭載されたディ
ーゼルエンジン11の概略構成図である。ディーゼルエ
ンジン11は、複数の気筒12を有して構成されてい
る。ディーゼルエンジン11には、これら各気筒12の
燃焼室に対応してインジェクタ13がそれぞれ配設され
ており、同インジェクタ13から各燃焼室内に燃料が噴
射される。インジェクタ13は、噴射制御用の電磁弁1
4を備えており、この電磁弁14の開閉動作に基づいて
インジェクタ13による燃料噴射が制御される。この燃
料が燃焼されることにより、出力軸であるクランクシャ
フト(図示略)が回転される。クランクシャフトの回転
は変速機(図示略)によって変速され、その変速後の回
転が駆動輪に伝達される。
【0029】ここで、ディーゼルエンジン11における
燃焼過程は、予混合燃焼期間と、この予混合燃焼期間に
続く拡散燃焼期間に大別できる。予混合燃焼期間では、
燃焼室内に噴射された燃料が可燃混合気となって自己着
火することにより、燃料の燃焼が急激に進行する。そし
て、拡散燃焼期間では、予混合燃焼期間で燃焼室内に生
成された燃焼ガス中に燃料が噴射されることになるた
め、同燃料の燃焼が継続して行われるようになる。とこ
ろで、予混合燃焼期間では、上記のように燃焼が急激に
進行するため、燃焼室内における燃焼圧の上昇率が大き
くなり、また燃焼温度も極めて高くなる傾向にある。従
って、この予混合燃焼期間が長くなると、すなわち自己
着火によって急激に燃焼する燃料の割合が増加すると、
燃焼騒音の増大や、排気中における窒素酸化物(NOx
)の増大を招くこととなる。
【0030】こうした燃焼騒音やNOx の増大を防止す
るために、本実施形態のディーゼルエンジン11ではパ
イロット噴射を行うようにしている。すなわち、燃焼室
内に噴射すべき燃料のうち、一部の燃料が噴射(パイロ
ット噴射)された後、その燃料噴射が一旦中断される。
そして、パイロット噴射された燃料が着火状態となった
ときに、再度、残りの燃料が噴射(メイン噴射)され
る。こうしたパイロット噴射の実行により予混合燃焼期
間が短縮され、自己着火によって急激に燃焼する燃料の
割合が減少するため、燃焼圧の上昇が緩慢になり、燃焼
室内における燃焼温度も低下する。従って、燃焼騒音の
増大や排気中のNOx 増大を防止することができる。
【0031】また、一般に、パイロット噴射はディーゼ
ルエンジン11の低負荷低回転時に行われる。これは、
高負荷時や高回転時にもパイロット噴射を実行するよう
にすると、排煙濃度が増加するとともにエンジン出力が
低下する傾向があるからである。このため、燃料の噴射
形態を、パイロット噴射とメイン噴射が実行されるモー
ド(以下「パイロット噴射モード」という)と、メイン
噴射のみが実行されるモード(以下「メイン噴射モー
ド」という)とにエンジン運転状態に応じて切替えるよ
うにしている。
【0032】各インジェクタ13は、各気筒12に共通
のコモンレール15にそれぞれ接続されている。コモン
レール15は、逆止弁16が設けられた供給配管17を
介してサプライポンプ18の吐出ポート18aに接続さ
れている。
【0033】サプライポンプ18の吸入ポート18b
は、フィルタ19を介して燃料タンク21に接続されて
いる。また、サプライポンプ18のリターンポート18
c及び電磁弁14のリターンポート14aはいずれも、
リターン配管22によって燃料タンク21に接続されて
いる。
【0034】上記サプライポンプ18は、ディーゼルエ
ンジン11のクランクシャフトの回転に同期して往復動
するプランジャ(図示略)を備えており、同プランジャ
によって加圧室(図示略)内の燃料を加圧し、その加圧
された燃料を吐出ポート18aからコモンレール15に
圧送する。このサプライポンプ18の燃料圧送量は、吐
出ポート18aの近傍に設けられたプレッシャコントロ
ールバルブ(以下、「PCV」と略記する)23の開閉
動作に基づいて調節される。
【0035】ディーゼルエンジン11の運転に係る各種
状態量を検出するために各種センサが設けられている。
例えば、アクセルペダル24の近傍には、同ペダル24
の踏込量(アクセル開度ACCP)を検出するためのア
クセルセンサ31が設けられている。また、コモンレー
ル15には、その内部の燃料圧力(燃料圧PC)を検出
するための燃料圧センサ32が設けられている。
【0036】また、前記クランクシャフトの近傍にはク
ランクセンサ33が設けられ、同クランクシャフトの回
転に同期して回転するカムシャフト(図示略)の近傍に
は、カムセンサ34が設けられている。これらクランク
センサ33及びカムセンサ34は、クランクシャフトの
時間当たりの回転数(エンジン回転速度NE)と、同ク
ランクシャフトの回転角度(クランク角CA)を検出す
るためのセンサである。
【0037】これら各センサ31〜34の出力信号は、
ディーゼルエンジン11の電子制御装置(以下「EC
U」と略記する)41に入力される。ECU41は、C
PU、メモリ、入出力回路、駆動回路(いずれも図示
略)等を備えて構成されている。ECU41は、上記各
センサ31〜34の出力信号に基づいて、ディーゼルエ
ンジン11の運転に係る各種状態量の読み込み及び算出
等を実行するとともに、電磁弁14やPCV23を制御
することにより、燃料噴射制御を実行する。
【0038】すなわち、ECU41はアクセルセンサ3
1及び燃料圧センサ32の各出力信号に基づいて、アク
セル開度ACCP及び燃料圧PCをそれぞれ読み込む。
さらに、ECU41は、クランクセンサ33及びカムセ
ンサ34の出力信号に基づいて、エンジン回転速度NE
及びクランク角CAを算出する。
【0039】さらに、ECU41は、上記各種状態量に
基づいて、燃料の噴射形態、噴射量、噴射時期及び噴射
圧(コモンレール15の燃料圧PC)に係る制御を実行
する。以下、こうした燃料噴射制御の概略について説明
する。
【0040】[燃料噴射形態の設定]燃料噴射形態の設
定に際して、ECU41は例えばアクセル開度ACCP
及びエンジン回転速度NEに基づいて基本噴射量Qmain
b を算出する。この基本噴射量Qmainb は、ディーゼル
エンジン11の運転状態を最も的確に反映するものであ
り、燃料噴射制御に係る各種制御値を算出する際に用い
られる。
【0041】次に、例えば上記基本噴射量Qmainb 及び
エンジン回転速度NEに基づいて基本パイロット噴射量
Qplb を算出する。この基本パイロット噴射量Qplb
は、燃焼騒音、排煙濃度等を考慮して、燃料噴射形態が
メイン噴射モードからパイロット噴射モードに切替えら
れたときから十分に時間が経過した時点でのエンジン運
転状態に最も適した量となるように設定されている。
【0042】次に、エンジン運転状態に基づいて燃料噴
射形態を設定する。例えば、エンジン運転状態が低負荷
低回転領域にある場合、燃料噴射形態としてパイロット
噴射モードを選択する。これに対して、エンジン運転状
態が高負荷高回転領域にある場合、燃料噴射形態として
メイン噴射モードを選択する。
【0043】[燃料噴射時期制御及び燃料噴射量制御]
次に、上記のように選択された燃料噴射形態に基づいて
実行される燃料の噴射時期及び噴射量に係る制御につい
て説明する。
【0044】図3は、ECU41により制御される電磁
弁14のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチ
ャートであり、(a)はパイロット噴射モード時、
(b)はメイン噴射モード時における同変化態様をそれ
ぞれ示している。
【0045】[パイロット噴射モード]燃料噴射形態と
してパイロット噴射モードが選択されているときには、
ECU41は、パイロット噴射とメイン噴射の双方を実
行する。すなわち、図3(a)に示すように、ECU4
1は、現在のクランク角CAがパイロット噴射時期Int
p となったときに、電磁弁14に対してON信号(開弁
信号)を出力する。この信号に応じてインジェクタ13
が開弁状態となり、パイロット噴射が開始される。
【0046】このパイロット噴射時期Intp はメイン噴
射時期Injを基準とし、そのメイン噴射時期Inj前の相
対角度として定義されている。従って、パイロット噴射
時期Intp は、パイロット噴射の開始時期とメイン噴射
の開始時期との間の時間間隔(クランク角間隔、インタ
ーバル)に相当する。
【0047】メイン噴射時期Injはメイン噴射が開始さ
れる時期であり、例えばエンジン回転速度NE及び基本
噴射量Qmainb に基づいて算出される。メイン噴射時期
Injは、燃料を噴射しようとする気筒12の圧縮上死点
(図中、「TDC」として示す)を基準とし、その圧縮
上死点後の相対角度として定義されている。
【0048】上記のように、電磁弁14に対してON信
号が出力され、インジェクタ13が開弁状態となったと
きから所定期間Tpが経過すると、ECU41は、電磁
弁14に対してOFF信号(閉弁信号)を出力する。こ
の信号に応じてインジェクタ13が閉弁状態となり、パ
イロット噴射が停止される。前記所定期間Tpは、例え
ばパイロット噴射量Qplとコモンレール15の燃料圧P
Cとに基づいて決定される。ここで、パイロット噴射量
Qplは、パイロット噴射実行中に燃焼室内に噴射される
燃料の量である。こうしてパイロット噴射が実行された
後、インジェクタ13による燃料噴射は所定期間Toff
の間、一時的に停止される。
【0049】次に、パイロット噴射停止から所定期間T
off が経過して、現在のクランク角CAがメイン噴射時
期Injになると、ECU41は電磁弁14に対してON
信号を出力する。この信号に応じてインジェクタ13が
再び開弁状態となり、メイン噴射が開始される。
【0050】そして、ECU41は、メイン噴射開始か
ら所定期間Tmが経過すると、電磁弁14に対して再び
OFF信号を出力する。この信号に応じてインジェクタ
13が閉弁状態となり、メイン噴射が停止される。前記
所定期間Tmは、例えば最終メイン噴射量Qmainとコモ
ンレール15の燃料圧PCとに基づいて決定される。こ
こで、最終メイン噴射量Qmainは、メイン噴射の実行中
に燃焼室内に噴射される燃料の量であり、基本噴射量Q
mainb からパイロット噴射量Qplを減算することにより
算出される。
【0051】[メイン噴射モード]これに対して、燃料
噴射形態としてメイン噴射モードが選択されているとき
には、ECU41はメイン噴射のみを実行する。すなわ
ち、図3(b)に示すように、ECU41は、現在のク
ランク角CAがメイン噴射時期Injとなったときに、電
磁弁14に対してON信号を出力する。この信号に応じ
てインジェクタ13が開弁状態となり、メイン噴射が開
始される。
【0052】ここで、メイン噴射時期Injは、パイロッ
ト噴射モード時におけるメイン噴射時期Injと同様に圧
縮上死点を基準とし、その圧縮上死点後の相対角度とし
て定義されている。
【0053】そして、ECU41は、メイン噴射が開始
されたときから所定期間Tmが経過すると、電磁弁14
に対してOFF信号を出力する。この信号に応じてイン
ジェクタ13が閉弁状態となり、メイン噴射が停止され
る。
【0054】[燃料噴射圧制御]次に、燃料の噴射圧、
すなわち、コモンレール15の燃料圧力に係る制御につ
いて説明する。
【0055】ECU41は、コモンレール15の燃料圧
力に係る目標圧力である基本噴射圧Pcrb を算出する。
この基本噴射圧Pcrb は燃焼騒音、排煙濃度等を考慮し
てエンジン運転状態に最も適した圧力となるように、例
えばエンジン回転速度NE及び基本噴射量Qmainbに基
づいて設定される。
【0056】ECU41は、こうして算出された基本噴
射圧Pcrb に対して補正を行うことにより噴射圧Pcrを
算出する。そして、ECU41は、燃料圧センサ32に
より検出されるコモンレール15の燃料圧PCがこの噴
射圧Pcrと一致するように、前記PCV23の開閉状態
をフィードバック制御してサプライポンプ18からの燃
料圧送量を調節する。
【0057】そのほかにも、ECU41はディーゼルエ
ンジン11のエンジントルク(最終エンジントルクTQ
fin という)を算出する。次に、この最終エンジントル
クTQfin の算出手順を図2のフローチャートに従って
説明する。
【0058】ECU41はまずステップ110におい
て、ディーゼルエンジン11の標準状態(十分に暖機さ
れた状態)でのトルクである基本エンジントルクTQbs
e を算出する。この算出に際しては、例えばエンジン回
転速度NE及び燃料噴射量(基本噴射量Qmainb )と、
基本エンジントルクTQbse との関係を規定した二次元
マップを参照する。これらエンジン回転速度NE及び燃
料噴射量は、最終エンジントルクTQfin に比較的大き
な影響を及ぼすと考えられるパラメータである。上記マ
ップは、例えば実験等により、エンジン回転速度NE及
び燃料噴射量を種々変化させて最終エンジントルクTQ
fin を測定することによって作成したものである。この
測定に際しては、最終エンジントルクTQfin に影響を
及ぼすと考えられるパラメータのうち、前述したエンジ
ン回転速度NE及び燃料噴射量を除くもの、例えば吸入
空気量等は一定に保たれている。そして、そのときの運
転状態での基本エンジントルクTQbse 、すなわちエン
ジン回転速度NE及び燃料噴射量に対応する基本エンジ
ントルクTQbse を前記マップから求める。
【0059】次に、ステップ120において、エンジン
運転状態に基づいて設定された燃料形態がパイロット噴
射モードであるか否かを判定する。この判定条件が満た
されている(パイロット噴射モード)と、ステップ13
0,140において、第1補正係数a,b,c,dを基
づき算出する。これらの第1補正係数a〜dは、最終エ
ンジントルクTQfin に影響を及ぼす所定のパラメータ
が単位量変化したときの最終エンジントルクTQfin の
変化量に対応する係数である。
【0060】具体的には、ステップ130では、ディー
ゼルエンジン11の制御信号の基本制御信号に対する変
化度合いを算出する。ここで、制御信号はディーゼルエ
ンジン11の燃料噴射についての制御信号であり、例え
ば噴射圧Pcr、メイン噴射時期Inj、パイロット噴射量
Qpl、パイロット噴射時期Intp である。また、基本制
御信号は、噴射圧、メイン噴射時期、パイロット噴射
量、パイロット噴射時期について、ディーゼルエンジン
11が十分に暖機された状態となったときの制御信号で
ある。基本噴射圧Pcrb 、基本メイン噴射時期Injb 、
基本パイロット噴射量Qplb 、基本パイロット噴射時期
Intpbがこの基本制御信号に相当する。
【0061】そして、このステップ130では、基本噴
射圧Pcrb に対する噴射圧Pcrの比(Pcr/Pcrb )を
ΔPcrとして算出する。基本メイン噴射時期Injb に対
するメイン噴射時期Injの比(Inj/Injb )をΔInj
として算出する。基本パイロット噴射量Qplb に対する
パイロット噴射量Qplの比(Qpl/Qplb )をΔQplと
して算出する。基本パイロット噴射時期Intpbに対する
パイロット噴射時期Intp の比(Intp /Intpb)をΔ
Intp として算出する。
【0062】次に、ステップ140において、エンジン
回転速度NE及び前記比ΔPcrに基づき第1補正係数a
を算出し、エンジン回転速度NE及び前記比ΔInjに基
づき第1補正係数bを算出する。エンジン回転速度NE
及び前記比ΔQplに基づき第1補正係数cを算出し、エ
ンジン回転速度NE及び前記比ΔIntp に基づき第1補
正係数dを算出する。これらの算出に際しては、例え
ば、エンジン回転速度NE及び比ΔPcr等と第1補正係
数a等との関係を規定した二次元マップを用いる。例え
ば、第1補正係数aを算出するためのマップについて
は、基本噴射圧Pcrb に対して実際の噴射圧Pcrが変化
した場合に、最終エンジントルクTQfin がどれだけ変
わるかがエンジン回転速度毎に測定され、その測定結果
に基づいて第1補正係数a(0<a≦1)が決定されて
いる。このようにして第1補正係数a〜dをそれぞれ対
応する二次元マップから算出すると、これらの値をメモ
リに記憶し、その後ステップ170へ移行する。
【0063】これに対し、前記ステップ120の判定条
件が満たされていない(メイン噴射モード)と、ステッ
プ150,160において、第1補正係数a〜dを算出
する。
【0064】まず、ステップ150では、前記ステップ
130と同様にして、ディーゼルエンジン11の制御信
号の基本制御信号に対する変化度合いを算出する。ただ
し、メイン噴射モードではパイロット噴射を行っていな
い(Qpl=0)。このことが基本エンジントルクTQbs
e の補正に影響を及ぼさないようにするためには、パイ
ロット噴射に関わる第1補正係数c,dを前述したよう
に「1」にすることが必要である。第1補正係数c,d
が判っていれば、比ΔQpl,ΔIntp の算出は不要であ
る。そこで、ステップ150では、パイロット噴射に関
わらない比ΔPcr(=Pcr/Pcrb ),ΔInj(=Inj
/Injb )のみを算出する。
【0065】ステップ160では、エンジン回転速度N
E及び前記比ΔPcrに基づき第1補正係数aを算出し、
エンジン回転速度NE及び前記比ΔInjに基づき第1補
正係数bを算出する。第1補正係数c,dをそれぞれ
「1」に設定する。そして、これらの第1補正係数a〜
dをメモリに記憶した後、ステップ170へ移行する。
【0066】ステップ170では、次式(1)に従って
補正後トルクTQcor を算出する。すなわち、前記ステ
ップ140又は160において算出した第1補正係数a
〜dを用いて基本エンジントルクTQbse を補正するこ
とにより補正後トルクTQcor を算出する。
【0067】 TQcor =a・b・c・d・TQbse ・・・(1) 上記式(1)に従うことで、基本エンジントルクTQbs
e を噴射圧Pcr、メイン噴射時期Inj、パイロット噴射
量Qpl、パイロット噴射時期Intp に基づいて補正した
補正後トルクTQcor が算出される。
【0068】ここで、前述したステップ130,14
0,170の処理を行うことで、燃料噴射量一定のもと
パイロット噴射の噴射時期、噴射圧、噴射量等が変化し
た場合において、それにともない変化する燃焼状態が補
正後トルクTQcor として算出される。ところで、この
補正後トルクTQcor には、燃料噴射量が変化した場合
における最終エンジントルクTQfin の変化分が含まれ
ていない。そのため、この不足分を次のステップ180
〜200の処理によって算出する。
【0069】ステップ180では、燃料噴射量指令値と
実際の噴射量との偏差Qdlt を推定する。ここで、偏差
Qdlt は、最終エンジントルクTQfin に影響を及ぼす
要素の1つであり、パイロット噴射量Qplとパイロット
噴射時期Intp との関係に強く依存している。そのた
め、例えばパイロット噴射量Qpl及びパイロット噴射時
期Intp と、偏差Qdlt との関係を規定した二次元マッ
プを予め作成しておく。そして、このマップを使用する
ことで、そのときのパイロット噴射量Qpl及びパイロッ
ト噴射時期Intp に対応する偏差Qdlt を推定する。
【0070】ステップ190では、前記偏差Qdlt が最
終エンジントルクTQfin に及ぼす影響量である出力ト
ルクとして補正値dTQを算出する。詳しくは、そのと
きのエンジン回転速度NEに対応する第2補正係数αを
求める。第2補正係数αは、単位燃料噴射量当たりの出
力トルク(補正値dTQ)に対応する係数である。すな
わち、偏差Qdlt はエンジン回転速度NEに応じて異な
り、この偏差Qdlt にともない出力トルク(補正値dT
Q)も異なってくる。そのため、例えばエンジン回転速
度NEと第2補正係数αとの関係を規定した一次元マッ
プを予め作成しておく。このマップを参照することで、
そのときのエンジン回転速度NEに対応する第2補正係
数αを算出する。そして、補正値dTQを次式(2)に
従って算出する。
【0071】 dTQ=α・Qdlt ・・・(2) ステップ200では、前述したステップ140又は16
0で先に算出した第1補正係数a〜dと、前記ステップ
190で求めた補正値dTQとを用いて、次式(3)に
従って最終補正値TQdlt を算出する。
【0072】 TQdlt =a・b・c・d・dTQ ・・・(3) 上記式(3)に従って算出した最終補正値TQdlt は、
十分に暖機された状態ではなく、刻々と変化するディー
ゼルエンジン11の運転状態に応じたものとなる。
【0073】次に、ステップ210において、前記ステ
ップ170で求めた補正後トルクTQcor と、前記ステ
ップ200で求めた最終補正値TQdlt とを用いて、次
式(4)に従って最終エンジントルクTQfin を算出す
る。
【0074】 TQfin =TQcor +TQdlt ・・・(4) そして、ステップ210の処理を経た後にエンジントル
ク算出ルーチンを修了する。
【0075】以上詳述した本実施形態によれば、以下の
効果が得られる。 (1)実際の燃料噴射量及び燃料噴射量指令値の偏差Q
dlt と、燃料噴射量及び噴射時期との間に密接な関係が
見られることに着目し、これら燃料噴射量及び噴射時期
についての各制御信号(パイロット噴射量Qpl、パイロ
ット噴射時期Intp )を推定に用いている(ステップ1
80)。このため、偏差Qdlt を高い精度で推定するこ
とが可能となる。従って、たとえ燃料噴射量指令値と実
際の燃料噴射量との間に差が生じ、その偏差に対応する
出力トルクが最終エンジントルクTQfin に影響を及ぼ
したとしても、その影響を考慮した最終エンジントルク
TQfin を算出することができる。その結果、パラメー
タの種類に応じた単一の補正係数を設定しているに過ぎ
ず、偏差が最終エンジントルクTQfin に及ぼす影響ま
で考慮していない従来技術に比べ、本実施形態では最終
エンジントルクTQfin の算出精度を高めることができ
る。
【0076】(2)特に、本実施形態では、ディーゼル
エンジン11の一燃焼行程中にパイロット噴射及びメイ
ン噴射が行われる。パイロット噴射は、メイン噴射の燃
料噴射量に影響を及ぼす。前述した実際の燃料噴射量と
燃料噴射量指令値との偏差Qdlt は、パイロット噴射に
おける噴射量(パイロット噴射量Qpl)と噴射時期(パ
イロット噴射時期Intp )との関係に強く依存してい
る。例えば、パイロット噴射時期Intp が偏差Qdlt に
影響を及ぼす点については、従来技術において説明した
通りである。
【0077】この点、本実施形態では、このように偏差
Qdlt との間に密接な関係を有するパイロット噴射量Q
plとパイロット噴射時期Intp とを推定に用いている
(ステップ180)ため、得られる偏差Qdlt は精度の
高いものとなる。
【0078】(3)ディーゼルエンジン11にあって
は、環境の変化等により燃料噴射に関する状態量、例え
ば噴射時期、噴射圧等が変化し、暖機状態のディーゼル
エンジン11における燃料噴射に関する基本状態量と異
なると、最終エンジントルクTQfin がその影響を受け
て変化する。すなわち、燃料噴射に関する状態量が変化
することにより燃焼状態が変わり、同一の燃料噴射量で
あっても最終エンジントルクTQfin が変わる。
【0079】この点、本実施形態では、噴射圧Pcr、メ
イン噴射時期Inj、パイロット噴射量Qpl及びパイロッ
ト噴射時期Intp を燃料噴射に関する状態量に対応する
ものとして用いている。また、基本噴射圧Pcrb 、基本
メイン噴射時期Injb 、基本パイロット噴射量Qplb 及
び基本パイロット噴射時期Intpbを基本状態量に対応す
るものとして用いている。そして、補正値dTQ及び最
終補正値TQdlt を用いた補正とは別に、制御信号の基
本制御信号に対する変化度合い(比ΔPcr,ΔInj,Δ
Qpl,ΔIntp )を算出し、これらの変化度合いに基づ
いて基本エンジントルクTQbse を補正している(ステ
ップ130〜170)。従って、燃料噴射に関する状態
量が基本状態量からずれ、それにともない最終エンジン
トルクTQfin が変化したとしても、前記変化度合いを
用いた基本エンジントルクTQbse の補正により、その
変化分を考慮した最終エンジントルクTQfin を算出す
ることができる。
【0080】(4)基本エンジントルクTQbse の補正
に際し、変化度合い(ΔPcr,ΔInj,ΔQpl,ΔInt
p )とエンジン回転速度NEとに対応する第1補正係数
a〜dを求め(ステップ130〜160)、これらの第
1補正係数a〜dによって基本エンジントルクTQbse
を補正している(ステップ170)。ここで、エンジン
回転速度NEは、最終エンジントルクTQfin に影響を
及ぼすパラメータの1つである。従って、このようにエ
ンジン回転速度NEを加味することで、変化度合いを用
いた基本エンジントルクTQbse の補正の精度を高める
ことができる。
【0081】(5)偏差Qdlt はエンジン回転速度NE
に応じて異なってくる。この点、本実施形態では、偏差
Qdlt の推定とは別に第2補正係数αを算出している
(ステップ190)。第2補正係数αは、単位燃料噴射
量当たりの出力トルクに対応するもので、エンジン回転
速度NE毎に設定されている。そして、そのときのエン
ジン回転速度NEに対応する第2補正係数αを算出し、
この第2補正係数αによって偏差Qdlt を補正すること
で出力トルク(補正値dTQ)を算出している(ステッ
プ190)。従って、このようにエンジン回転速度NE
を加味した第2補正係数αを用いることで、出力トルク
(補正値dTQ)の算出精度を高めることができる。
【0082】(6)上記(3)における、変化度合い
(ΔPcr,ΔInj,ΔQpl,ΔIntp)とエンジン回転
速度NEとに対応する第1補正係数a〜dに基づいて、
第2補正係数αを用いた補正後の出力トルク(補正値d
TQ)をさらに補正している(ステップ200)。従っ
て、燃料噴射に関する状態量が基本状態量からずれ、そ
れにともない最終エンジントルクTQfin が変化したと
しても、前記変化度合い、すなわち第1補正係数a〜d
を用いた補正により、その変化分を考慮した出力トルク
として最終補正値TQdlt を算出することができる。
【0083】なお、本発明は次に示す別の実施形態に具
体化することができる。・本発明は、一燃焼行程中に複
数回燃料噴射を行うタイプのエンジンに適用可能であ
る。すなわち、一燃焼行程中に、所定の燃料噴射と、そ
の所定の燃料噴射の燃料噴射量に影響を及ぼす直前の燃
料噴射とを含む複数の燃料噴射が行われるエンジンに適
用可能である。この場合、実際の燃料噴射量と燃料噴射
量指令値との偏差は、この直前の燃料噴射における噴射
量と噴射時期の関係に強く依存している。そのため、前
記偏差との間に密接な関係を有する直前の燃料噴射の噴
射量及び噴射時期を用い、前記偏差をこれら噴射量及び
噴射時期についての各制御信号に基づき推定する。従っ
て、この推定により得られる偏差は精度の高いものとな
る。
【0084】・前記実施形態におけるステップ120〜
160の処理、すなわち制御信号の基本制御信号に対す
る変化度合いに基づく基本エンジントルクTQbse の補
正処理を省略してもよい。この場合、ステップ210で
は、補正後トルクTQcor に代えて基本エンジントルク
TQbse を用いる。
【0085】・前記実施形態におけるステップ200の
処理、すなわち第1補正係数a〜dを用いた補正値dT
Qの補正処理を省略してもよい。この場合、ステップ2
10では、最終補正値TQdlt に代えて補正値dTQを
用いる。
【0086】・本発明のエンジントルクの算出方法は、
ディーゼルエンジンに限らずガソリンエンジンにも適用
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態において、エンジントルク
の算出方法が適用されるディーゼルエンジンの概略構成
図。
【図2】エンジントルクを算出する手順を示すフローチ
ャート。
【図3】(a)はパイロット噴射モード時における電磁
弁のオン/オフ状態の変化態様を示すタイミングチャー
ト、(b)はメイン噴射モード時における同変化態様を
示すタイミングチャート。
【符号の説明】
11…ディーゼルエンジン、a,b,c,d…第1補正
係数、α…第2補正係数、dTQ…補正値(出力トル
ク)、Inj…メイン噴射時期、Injb …基本メイン噴射
時期、Intp …パイロット噴射時期、Intpb…基本パイ
ロット噴射時期、NE…エンジン回転速度、Pcr…噴射
圧、Pcrb …基本噴射圧、Qpl…パイロット噴射量、Q
plb …基本パイロット噴射量、Qdlt …偏差、TQbse
…基本エンジントルク、TQfin …最終エンジントルク
(エンジントルク)、ΔPcr,ΔInj,ΔQpl,ΔInt
p …比(変化度合い)。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エンジンのエンジン回転速度及び燃料噴射
    量に基づいて基本エンジントルクを算出し、この基本エ
    ンジントルクを補正することによりエンジントルクを算
    出する方法において、 燃料噴射量指令値と実際の燃料噴射量との偏差を、前記
    燃料噴射量及び噴射時期についての各制御信号から推定
    するとともに、この偏差に基づいて出力トルクを算出
    し、この出力トルクで前記基本エンジントルクを補正す
    ることを特徴とするエンジントルクの算出方法。
  2. 【請求項2】燃料噴射についての制御信号と、暖機状態
    のエンジンにおける燃料噴射についての基本制御信号と
    を用い、前記制御信号の前記基本制御信号に対する変化
    度合いを算出し、この変化度合いに基づいて前記基本エ
    ンジントルクをさらに補正する請求項1に記載のエンジ
    ントルクの算出方法。
  3. 【請求項3】前記基本エンジントルクの補正に際して
    は、前記変化度合いと前記エンジン回転速度とに対応す
    る第1補正係数を求め、この第1補正係数で前記基本エ
    ンジントルクを補正する請求項2に記載のエンジントル
    クの算出方法。
  4. 【請求項4】前記出力トルクを用いた基本エンジントル
    クの補正に先立ち、単位燃料噴射量当たりの出力トルク
    に対応する第2補正係数のうち、そのときのエンジン回
    転速度に対応する値を算出し、この第2補正係数で前記
    偏差を補正することにより前記出力トルクを算出する請
    求項1〜3のいずれか1つに記載のエンジントルクの算
    出方法。
  5. 【請求項5】前記出力トルクを用いた基本エンジントル
    クの補正に先立ち、燃料噴射についての制御信号と、暖
    機状態のエンジンにおける燃料噴射についての基本制御
    信号とを用い、前記制御信号の前記基本制御信号に対す
    る変化度合いを算出し、この変化度合いに基づいて、前
    記第2補正係数を用いた補正後の前記出力トルクをさら
    に補正する請求項4に記載のエンジントルクの算出方
    法。
  6. 【請求項6】前記エンジンの一燃焼行程中には、所定の
    燃料噴射と、その所定の燃料噴射の燃料噴射量に影響を
    及ぼす直前の燃料噴射とを含む複数の燃料噴射が行わ
    れ、前記偏差は、前記直前の燃料噴射の噴射量について
    の制御信号と噴射時期についての制御信号とに基づき推
    定される請求項1〜5のいずれか1つに記載のエンジン
    トルクの算出方法。
  7. 【請求項7】前記一燃焼行程中の複数の燃料噴射は、メ
    イン噴射と、そのメイン噴射に先立ち行われるパイロッ
    ト噴射とからなり、前記偏差は、パイロット噴射量につ
    いての制御信号とパイロット噴射時期についての制御信
    号とに基づき推定される請求項6に記載のエンジントル
    クの算出方法。
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