JP2003342663A - 成形加工用Al−Mg系合金圧延板調質材およびその製造方法 - Google Patents

成形加工用Al−Mg系合金圧延板調質材およびその製造方法

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JP2003342663A
JP2003342663A JP2002152591A JP2002152591A JP2003342663A JP 2003342663 A JP2003342663 A JP 2003342663A JP 2002152591 A JP2002152591 A JP 2002152591A JP 2002152591 A JP2002152591 A JP 2002152591A JP 2003342663 A JP2003342663 A JP 2003342663A
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Naoyuki Sakuma
尚幸 佐久間
Toshiki Muramatsu
俊樹 村松
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Sky Aluminium Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 曲げ加工を含む成形加工用のAl−Mg系合
金圧延板のH32〜H34相当の調質材として、曲げ加
工性が良好であると同時に、曲げ加工における異方性の
少ないものを提供する。 【解決手段】 Mg1.50〜3.50%、Cr0.03〜0.35%、
Cu0.30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%
を含有し、かつMn量が0.10%以下、Ti量が0.10%以
下に規制され、残部が実質的にAlよりなり、最大径5
μm以上の金属間化合物粒子の密度が100〜700個/mm
の範囲内、板表面の結晶粒の平均アスペクト比が2以
下、しかも耳率が7%以下であり、調質度H32〜H34とさ
れたAl−Mg系合金圧延板調質材。またその製造方法
として、鋳塊に均質化処理後熱間圧延を行ない、次いで
圧延率20〜85%で1次冷間圧延を行なった後、中間焼鈍
を行ない、さらに圧延率10〜50%で2次冷間圧延を行な
い、その後調質焼鈍を施してH32〜H34相当の調質度に仕
上げる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】この発明は、建築、土木、電
気機器、その他一般の機器、船舶などの用途に使用され
る成形加工用のAl−Mg系合金圧延板に関するもので
あり、特にH32〜H34相当に調質した、曲げ加工性
に優れかつ曲げ加工における異方性の少ないAl−Mg
系合金圧延板調質材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にAl−Mg系合金、すなわちいわ
ゆる5000番系合金は、強度と延性とのバランスに優
れていて、良好な成形性を有することなどから、従来か
ら建築、土木、電気機器、一般機器、船舶など、種々の
用途に広く使用されている。これらの用途のAl−Mg
系合金の代表的なものとしては、JIS5052合金な
どがある。ところでこれらの用途に使用されるAl−M
g系合金は、一般には冷間圧延のままではなく、冷間圧
延により加工硬化した材料について、さらに安定化処理
を目的とした調質焼鈍を施して、H3n材として用いる
のが通常である。すなわち、Al−Mg系合金では、冷
間圧延のままでは長時間放置すれば次第に耐力が低下す
るという、いわゆる経時軟化現象を示すところから、こ
のような経時軟化を抑えるための安定化処理を目的とし
た調質焼鈍処理を施し、H3n材、代表的にはH32材
もしくはH34材として使用するのが通常である。なお
前述のような用途では、0.8mm以上の比較的厚い板
厚で用いることが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】建築、土木、電気機器
部品、一般機器、船舶などの分野に利用するAl−Mg
系合金圧延板は、曲げ加工を施して使用することが多
く、そのため曲げ加工性に優れた材料が求められること
が多い。しかしながら、従来のAl−Mg系合金圧延板
については、曲げ加工性に優れた材料の開発が未だ充分
ではなかったため、曲げ加工中に材料の割れが発生し
て、製品の品質低下を招いてしまうことがあった。
【0004】そもそも素材には、ミクロ組織の不均一性
がもたらす組織の異方性や結晶方位の異方性などがあ
り、それらの異方性の制御が従来は厳密でなかったた
め、従来のAl−Mg系合金圧延板では、ある方向での
曲げ加工は優れていても、他の方向での曲げ加工が劣っ
たりすることが多く、そのため上述のような問題が生じ
てしまっていたのである。
【0005】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、材料の有する種々の異方性を適切に制御する
ことにより、曲げ加工性に優れると同時に曲げ加工の異
方性が小さい調質度H32〜H34相当のAl−Mg系
合金圧延板調質材を提供することを目的とするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、前述の課
題を解決するため、種々実験・検討を重ねた結果、Al
−Mg系合金における成分組成、特にCr、Cu、F
e、Si、Mn、およびTiの含有量を適切に調整する
と同時に、金属間化合物の分散密度、結晶粒のアスペク
ト比、耳率を適切に調整することによって、素材の有す
る種々の異方性を適切に制御し、これにより全体的な曲
げ加工性が優れると同時に、曲げ加工における異方性の
少ない材料を得ることができることを見出し、この発明
をなすに至った。
【0007】具体的には、請求項1の発明のAl−Mg
系合金圧延板調質材は、Mg1.50〜3.50%、C
r0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe
0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を必
須成分として含有し、かつMn量が0.10%以下、T
i量が0.10%以下に規制され、残部がAlおよび不
可避的不純物よりなる合金からなり、最大径5μm以上
の金属間化合物粒子の密度が1mm当り100〜70
0個の範囲内にあり、かつ板表面における結晶粒の平均
アスペクト比が2以下であり、しかも耳率が7%以下で
あり、調質度H32〜H34とされたことを特徴とする
ものである。
【0008】また請求項2の発明のAl−Mg系合金圧
延板調質材の製造方法は、Mg1.50〜3.50%、
Cr0.03〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe
0.10〜0.50%、Si0.05〜0.40%を必
須成分として含有し、かつMn量が0.10%以下、T
i量が0.10%以下に規制され、残部がAlおよび不
可避的不純物よりなる合金の鋳塊に均質化処理後熱間圧
延を行ない、次いで圧延率20〜85%で1次冷間圧延
を行なった後、中間焼鈍を行ない、さらに圧延率10〜
50%で2次冷間圧延を行ない、その後調質焼鈍を施し
てH32〜H34相当の調質度に仕上げ、これにより最
大径5μm以上の金属間化合物粒子の密度が1mm
り100〜700個の範囲内にあり、かつ板表面におけ
る結晶粒の平均アスペクト比が2以下であり、しかも耳
率が7%以下の圧延板調質材を得ることを特徴とするも
のである。
【0009】
【発明の実施の形態】先ずこの発明におけるAl−Mg
系合金の成分組成の限定理由について説明する。
【0010】Mg:Mgの添加は、Mgそれ自体の固溶
による強度向上に効果があり、またMgは転位との相互
作用が大きいため加工硬化による強度向上も期待でき、
したがって要求強度を満たすためには不可欠な元素であ
る。但しMg量が1.50%未満では、要求強度を満た
すことが困難となることもある。一方Mg量が3.50
%を越えるような多量のMgの添加により得られる高強
度は必要としないのが通常である。そこでMg添加量
は、1.50〜3.50%の範囲内とした。
【0011】Cr:Crの添加は製品板内の金属間化合
物の量やサイズ、さらには結晶方位の異方性に大きく影
響する。Cr量が少ないほど5μm以上のサイズの金属
間化合物の数がより少なくなって、金属間化合物による
曲げ加工性の低下が小さくなるが、Cr量が0.03%
未満では高純度地金を使用しなければならなくなってコ
ストアップを招く。またここで、結晶方位の異方性の指
標の一つとして、絞り加工を行なった場合の耳率を用い
ることができ、耳率が高いほど結晶方位の異方性が大き
いと言うことができるが、Cr量が0.03%未満で
は、中間焼鈍後に絞りカップ上に現れる耳が圧延方向に
対して平行方向と直角方向に強く現れて、2次冷間圧延
を施しても残存し、耳率が高いままとなる。このように
耳率が高くて結晶方位の異方性が大きい場合には、曲げ
異方性が顕在化してしまう。一方、Cr量が0.35%
を越えれば、耳率はより低くなる、言い換えれば結晶方
位の異方性はより小さくなり、曲げ加工の異方性が現れ
難くなる。しかしながら0.35%以上のCrを添加す
れば、Al−Cr系などの金属間化合物が極端に増えて
しまい、全体的に曲げ加工性が低下してしまう。そこ
で,Cr添加量は、曲げ加工性、経済性、および曲げ加
工の異方性のバランスから、0.03〜0.35%の範
囲内に限定した。
【0012】Cu:Cuは固溶強化により強度向上に寄
与する元素であり、製品板の強度調整に効果的である。
しかしながらCu量が0.30%を越えれば曲げ加工性
を低下させてしまう。そこでCu添加量は0.30%以
下とした。なおCu量の下限は特に限定しないが、0.
01%未満では前述の効果が少ないから、0.01%以
上とすることが好ましい。
【0013】Fe:Fe量も、Cr量と同様に製品板内
の金属間化合物の量やサイズ、更には結晶方位の異方性
に大きく影響を与える。Fe量が少ないほど5μm以上
のサイズの金属間化合物の数がより少なくなって、金属
間化合物による曲げ加工性の低下は少なくなるが、Fe
量を0.10%未満とするためには高純度地金を使用し
なければならなくなってコストアップを招く。さらに、
Fe量が0.10%未満では、中間焼鈍後に絞りカップ
上に現れる耳が圧延方向に対して平行方向と直角方向で
強く現れて、2次冷間圧延を施しても残存し、耳率が高
いままとなる。これは結晶方位の異方性が大きいことを
意味するが、その場合には曲げ異方性が顕在化してしま
う。一方、Fe量が0.50%を越えれば耳率は低くな
る。言い換えれば結晶方位の異方性は小さくなって曲げ
加工の異方性が現れ難くなる。しかしながら、0.50
%を越えるFe量では、Al−Fe−(Mn)−(S
i)系の金属間化合物が極端に増えてしまい、全体的に
曲げ加工性が低下してしまう。そこでFe量は、曲げ加
工性、経済性、および曲げ加工の異方性のバランスか
ら、0.10〜0.50%の範囲内とした。
【0014】Si:Si量も、Cr量、Fe量と同様に
製品板内の金属間化合物の量やサイズ、更には結晶方位
の異方性に大きく影響を与える。Si量が少ないほど5
μm以上のサイズの金属間化合物の数がより少なくなっ
て、金属間化合物による曲げ加工性の低下が少なくなる
が、Si量を0.05%未満とするためには高純度地金
を使用しなければならなくなってコストアップを招く。
さらに、Si量が0.05%未満では、中間焼鈍後に絞
りカップ上に現れる耳が圧延方向に対して平行方向と直
角方向で強く現れて、2次冷間圧延を施しても残存し、
耳率が高いままとなる。このことは結晶方位の異方性が
大きいことを意味するが、その場合には曲げ異方性が顕
在化してしまう。一方Si量が0.40%を越えれば耳
率は低くなる。言い換えれば結晶方位の異方性は小さく
なって曲げ加工の異方性が現れ難くなる。しかしなが
ら、0.40%を越えるSi量では、Al−Fe−Si
−(Mn)系の金属間化合物が極端に増えてしまい、全
体的に曲げ加工性が低下してしまう。そこでSi量は、
曲げ加工性、経済性、および曲げ加工の異方性のバラン
スから、0.05〜0.40%の範囲内に限定した。
【0015】以上の各元素はいずれも必須成分として含
有されるものであるが、この発明ではさらに不純物元素
としてのMn、および通常のAl合金で添加されること
が多いTiについて、その含有量の上限を規制してい
る。これらの限定理由は次の通りである。
【0016】Mn:Mnは不純物としてAl合金に通常
含有される元素であるが、このMnも、製品板内の金属
間化合物の量やサイズ、さらには結晶方位の異方性に大
きく影響を与える。Mnの含有量が0.10%を越えれ
ば製品板の耳率は低下し、このことは結晶方位の異方性
が小さくなることを意味し、その場合曲げ異方性は現れ
難くなる。しかしながら、Mn量が0.10%を越えれ
ば、Al−Fe−Mn−(Si)系の金属間化合物が極
端に増えてしまい、全体的に曲げ加工性が低下してしま
う。さらにMn量が0.10%を越えた場合、一次冷間
圧延率と中間焼鈍の条件によっては、熱間圧延前の加熱
処理中あるいは熱間圧延中に析出したAl−Mn系析出
物の影響が強く現れ、中間焼鈍時の結晶粒を偏平状にさ
せてしまい、結晶粒のアスペクト比を大きくさせてしま
う。このように中間焼鈍時の結晶粒のアスペクト比が大
きくなれば、製品板となった状態でも結晶粒のアスペク
ト比が大きいままとなり、製品板の曲げ異方性を大きく
させてしまう。そのためこの発明では不純物としてのM
nの含有量を0.10%以下に規制することとした。
【0017】Ti:Tiは結晶粒微細化のために一般の
Al合金において添加されることが多い元素であり、ま
た微量のBと組合せて添加することもある。この発明の
場合も結晶粒微細化のために少量のTiを単独で、ある
いは微量のBと組合せて添加することは許容される。し
かしながらTi量が0.10%を越えれば、粗大な金属
間化合物を生成してしまい、全体的に曲げ加工性を低下
させるから、Ti量は0.10%以下に規制することと
した。またTiと組合せてBを添加する場合、B量は1
00ppm以下とすることが望ましい。
【0018】以上の各元素のほかは、Alおよび不可避
的不純物とすれば良い。
【0019】さらにこの発明の曲げ加工用Al−Mg系
合金圧延板調質材では、合金の成分組成を前述のように
調整するだけではなく、金属間化合物粒子の分散密度、
結晶粒のアスペクト比、および耳率を制御することが、
曲げ加工における異方性を抑えるために重要である。
【0020】すなわち、先ず金属間化合物粒子の分散密
度については、製品板内に存在する最大径5μm以上の
金属間化合物粒子の数が1mmあたり100〜700
個の範囲内となるように調整する必要がある。ここで、
最大径5μm以上の金属間粒子の数が少ないほど、金属
間化合物粒子が引き起こす曲げ加工性の低下は抑えられ
る。しかしながら、最大径5μm以上の金属間化合物粒
子が100個/mm未満になれば、中間焼鈍後に絞り
カップ上に現れる耳が圧延方向に対して平行方向と直角
方向で強く現れて、その影響が製品板まで引き継がれ
て、製品板の耳率が大きいままとなってしまう。すなわ
ち製品板の曲げ異方性を大きくしてしまい、ある方向の
曲げ加工性を低下させてしまうことになる。一方最大径
5μm以上の金属間化合物粒子が700個/mmを越
えれば、絞りカップ上に現れる耳は低くなる。すなわち
結晶方位の異方性は小さくなるが、金属間化合物粒子数
が極端に多くなり、金属間化合物粒子による曲げ加工性
の低下が現れてしまう。そのため全体的な曲げ加工性と
曲げ加工における異方性との兼ね合いから、金属間化合
物粒子数を100〜700個/mmの範囲内に限定し
た。なお金属間化合物粒子数の定量化は、圧延方向断面
で組織観察して、画像解析処理装置ルーゼックスを用い
て行なった。
【0021】次に製品板の結晶粒については、製品板表
面における結晶粒の平均アスペクト比が2以下である必
要がある。ここでアスペクト比とは、結晶粒の長径と短
径との比であるが、一般に冷間圧延板においては圧延方
向と平行な方向の径が長径、圧延方向に対し直角な方向
の径が短径となる。そして製品板表面の平均アスペクト
比が2を越える場合には、曲げ加工時において曲げ先端
部にかかる応力の不均一性が大きくなり、曲げ加工の異
方性が顕在化する。そこで、曲げ加工における異方性を
少なくするためには、製品板の表面から観た結晶粒の平
均アスペクト比を2以下に規制する必要がある。なお製
品板の平均アスペクト比の測定法としては、偏光顕微鏡
を用い、製品板表面における結晶粒のコントラストの違
いを利用して、200個の結晶粒に対し圧延方向と平行
な方向および直角な方向の結晶粒界の長さの比を測定し
て、平均値を求めた。
【0022】さらに製品板の耳率は、結晶方位の異方性
の指標となり、曲げ加工における異方性に関係するが、
この発明の場合、製品板の耳率が7%以下となるように
調整する必要がある。結晶方位の異方性が大きく、製品
板の耳率が7%を越えるような場合には、ある方向の曲
げ加工性は良好であっても、別の方向の曲げ加工性が劣
ってしまう。すなわち曲げ加工性の異方性が大きくなっ
てしまう。そこで製品板の結晶方位の異方性の指標とし
て、耳率を7%以下と規定した。なお耳率の測定方法と
しては、絞り比1.75の条件で絞りカップを作成し、
以下の通りの方法で耳率を測定した。 耳率(%)=(平均耳高さ/平均谷高さ)×100 但し、平均耳高さ=平均山高さ−平均谷高さ
【0023】次にこの発明のAl−Mg系合金圧延板調
質材の製造プロセスについて説明する。
【0024】先ず前述のような成分組成の合金を、DC
鋳造法などの常法に従って鋳造し、得られた鋳塊に対し
て均質化処理を施してから、あるいは均質化処理を兼ね
て熱間圧延前加熱を行ない、常法に従って熱間圧延を行
なう。ここで、均質化処理や熱間圧延の条件は特に限定
されるものではなく、一般的な条件に従えば良い。
【0025】得られた熱間圧延板(コイル)に対して
は、1次冷間圧延を20〜85%の圧延率で施す。
【0026】ここで、熱間圧延板の組織が部分再結晶状
態にある場合、1次冷間圧延の圧延率が20%未満で
は、その後の中間焼鈍後に絞りカップ上に現れる耳が圧
延方向に対して平行方向と直角で強く現れ、その影響は
2次冷間圧延を施しても残ってしまい、結果的に製品板
まで引き継いでしまって、曲げ加工性の異方性が大きく
なり、ある方向の曲げ加工性は良好となっても別方向で
は曲げ加工性が低下してしまう。一方1次冷間圧延の圧
延率が85%を越える場合は、上述のような曲げ加工に
おける異方性の問題は生じにくいが、冷間圧延のパス数
が増加して生産性が低下する。そのため1次冷間圧延の
圧延率は20〜85%の範囲内に限定した。
【0027】1次冷間圧延後には連続焼鈍炉(CAL)
を用いた中間焼鈍、もしくは箱型焼鈍炉(バッチ式焼鈍
炉:BAF)を用いた中間焼鈍を行なう。この中間焼鈍
は1次冷間圧延で導入された冷間歪を利用して材料を再
結晶させて、組織を均一かつ微細にするために必要な工
程である。
【0028】ここで、連続焼鈍炉を用いる場合には、焼
鈍温度を400〜550℃とし、保持を1分以下とする
ことが望ましい。連続焼鈍炉を用いた場合、焼鈍温度が
400℃未満では完全再結晶組織にならないことがあ
り、一方550℃を越えれば結晶粒の粗大化が生じるお
それがあり、その場合製品板の曲げ加工性の低下が避け
られなくなる。また連続焼鈍炉による中間焼鈍の保持時
間が1分を越えれば生産性の低下を招く。
【0029】また中間焼鈍を箱型焼鈍炉を用いて行なう
場合には、焼鈍温度を280〜370℃とし、保持を
0.5〜5時間とすることが望ましい。箱型焼鈍炉を用
いた場合の焼鈍温度が280℃未満では完全再結晶組織
にならないことがあり、一方370℃を越えれば結晶粒
の粗大化が生じるおそれがあり、その場合製品板の曲げ
加工性の低下が避けられなくなる。また保持時間が0.
5時間未満では、組織の均一化効果が得られず、一方5
時間を越えるような長時間焼鈍では生産性が大きく低下
してしまう。
【0030】中間焼鈍後には、製品板厚まで2次冷間圧
延(最終冷間圧延)を行なう。この2次冷間圧延は、圧
延率を10〜50%の範囲内とする必要がある。2次冷
間圧延率が10%未満では、目標とする製品板強度を得
ることが困難となる。一方2次冷間圧延率が50%を越
えれば、平均アスペクト比が2を越えてしまうことが多
く、曲げ加工の異方性が顕在化してしまう。そのため2
次冷間圧延の圧延率は10〜50%の範囲に限定した。
【0031】2次冷間圧延後には、最終的に安定化処理
を目的として調質焼鈍を行ない、H32〜H34相当の
調質度の材料とする。この調質焼鈍は、連続焼鈍炉(C
AL)を用いた連続焼鈍によって行なっても、あるいは
箱型タイプの焼鈍炉(BAF)を用いたバッチ式の焼鈍
によって行なっても良い。
【0032】連続焼鈍炉を用いた連続式の調質焼鈍の場
合は、150〜340℃の範囲内の温度に加熱して保持
なしもしくは1分以内の保持の条件とすることが望まし
い。ここで、焼鈍温度が150℃未満では、冷間圧延に
よって導入された転位の消滅が不充分で、製品にした場
合に経時軟化が生じてしまい、製品としての価値を損な
う。一方焼鈍温度が340℃を越えれば、H3n材では
なく、完全に再結晶したO材になってしまうことがあ
り、要求強度を満たすことができなくなる。また保持時
間が1分を越えれば、完全に再結晶してしまうこともあ
り、要求強度を満たすことができず、また生産性も低下
してしまう。そこで連続焼鈍炉で調質焼鈍を行なう場合
は、150〜340℃の温度範囲で、保持なしもしくは
1分以内の保持の条件とすることが望ましい。
【0033】一方箱型タイプの焼鈍炉を用いたバッチ式
によって調質焼鈍を行なう場合、その条件は、100〜
270℃の範囲内の温度で0.5〜5時間保持とするこ
とが望ましい。ここで、焼鈍温度が100℃未満では、
冷間圧延によって導入された転位の消滅が不充分で、製
品にした場合に経時軟化が生じてしまうおそれがある。
一方焼鈍温度が270℃を越えれば、H3n材ではな
く、完全に再結晶したO材になってしまい、要求強度を
満たすことができなくなる。また保持時間が0.5時間
未満では、コイル全体にわたり均一な熱処理ができず、
コイル内で強度の変動が生じてしまう。一方保持時間が
5時間を越えれば、焼鈍温度によっては完全に再結晶し
てしまい、要求強度を満たすことができなくなり、また
生産性も低下させてしまう。そこで箱型タイプの焼鈍炉
でバッチ式により調質焼鈍を行なう場合は、100〜2
70℃の温度範囲内で、0.5〜5時間の保持とするこ
とが望ましい。
【0034】
【実施例】表1の合金No.1〜No.5に示す種々の
化学成分のAl合金を、常法に従ってDC鋳造法により
鋳造し、得られた鋳塊に対し500℃×8時間の均質化
処理を行なってから、熱間圧延開始温度460〜490
℃にて熱間圧延を行なった。得られた各熱延板に対し、
H32もしくはH34の調質度を目標材質として、1次
冷間圧延−中間焼鈍−2次冷間圧延−調質焼鈍を行な
い、製品板とした。詳細なプロセス条件を表2に示す。
【0035】得られた各製品板(圧延板)における最大
径5μm以上の金属間化合物の1mm当りの数および
表面の結晶粒の平均アスペクト比を測定するとともに、
カップ絞り試験を行なって耳率を調べ、さらに各製品板
から圧延方向と平行に試験片を切出して、機械的性質
(YS)を調べるとともに、曲げ加工性を圧延方向と平
行な方向、45°方向、直角方向について調べたので、
その結果を表3に示す。
【0036】なお5μm以上の金属間化合物の数は、圧
延方向断面で組織観察して画像解析装置(ルーゼック
ス)により測定した。また平均アスペクト比は、偏光顕
微鏡を用い、結晶粒のコントラストの差を利用して20
0個の結晶粒につき圧延方向と平行な方向および直角な
方向の結晶粒界の長さの比を測定し、平均値を求め、そ
の値が2以下の場合を合格として○印を付し、2を越え
る場合を不合格として×印を付した。さらに耳率測定の
ためのカップ絞り試験は、各材料についてサンプル数3
として行なった。機械的性質の評価規準は、JIS50
52合金のH32、H34のYS規準(H32材:15
5MPa以上、H34材:175MPa以上)に従い、
それぞれの材質で、これらの規定を満たさない場合を不
合格と評価した。一方曲げ加工性については、製品板か
ら圧延方向(0°)、45°、直角方向(90°)にそ
れぞれ曲げ試験片を切出し、それぞれ180°曲げ試験
を行なった。なおこの180°曲げ試験では、曲げの内
側半径を厚さの1倍に統一して実施した。そして目視に
て観察して、曲げR部に割れが全く認められない場合を
合格として○印を付し、1個でも曲げR部に割れが認め
られたものを不合格として×印を付した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】表3から明らかなように、この発明で規定
する成分組成範囲内の合金No.1、No.2を用いか
つ製造プロセスもこの発明で規定する範囲内の製造符号
A、Cにより得られた材料では、機械的性質(YS)が
目標とする調質度の規準をクリヤするとともに、金属間
化合物数、平均アスペクト比、耳率もこの発明で規定す
る条件範囲内となり、これらの場合は曲げ加工性の異方
性が小さく、全方向に曲げ加工性が優れていることが判
明した。
【0041】一方製造符号Bの場合は、熱延板の組織が
部分再結晶状態にあるにもかかわらず、1次冷間圧延率
が20%未満であったため、中間焼鈍時に結晶方位の異
方性が大きくなり、その異方性を製品板まで引き継いで
しまった結果、曲げ加工性の異方性が不合格となった。
また製造符号Dの場合は、530℃の高温で調質焼鈍を
行なったためO材になってしまい、機械的性質の規定を
満たすことができず不合格となった。さらに製造符号E
の場合は、熱延板の組織が部分再結晶状態にあるにもか
かわらず、1次冷間圧延率が20%未満であったため、
中間焼鈍時に結晶方位の異方性が大きくなり、その異方
性を製品板まで引き継いでしまった結果、曲げ加工性の
異方性が大きくなって、不合格となり、さらには平均ア
スペクト比が2を越えてしまったため、曲げ加工性の低
下が助長されてしまった。一方製造符号F〜Hの場合
は、プロセス条件はこの発明に従ったが、合金成分が規
定から外れていたため、曲げ加工性の異方性が大きいか
または機械的性質の規定を満たすことができず、不合格
となった。
【0042】
【発明の効果】この発明によれば、Al−Mg系合金か
らなる調質度H32〜H34の成形加工用圧延板調質材
として、単に全体的な曲げ加工性が良好であるばかりで
なく、曲げ加工における異方性が小さく、全方向に曲げ
加工性が良好で、成形中に割れが発生するおそれが少な
い材料を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 623 C22F 1/00 623 630 630K 682 682 683 683 685 685Z 686 686A 691 691B 691C 694 694A

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg1.50〜3.50%(mass
    %、以下同じ)、Cr0.03〜0.35%、Cu0.
    30%以下、Fe0.10〜0.50%、Si0.05
    〜0.40%を必須成分として含有し、かつMn量が
    0.10%以下、Ti量が0.10%以下に規制され、
    残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合金からな
    り、最大径5μm以上の金属間化合物粒子の密度が1m
    当り100〜700個の範囲内にあり、かつ板表面
    における結晶粒の平均アスペクト比が2以下であり、し
    かも耳率が7%以下であり、調質度H32〜H34とさ
    れたことを特徴とする、曲げ加工性に優れかつ曲げ加工
    における異方性の小さい成形加工用Al−Mg系合金圧
    延板調質材。
  2. 【請求項2】 Mg1.50〜3.50%、Cr0.0
    3〜0.35%、Cu0.30%以下、Fe0.10〜
    0.50%、Si0.05〜0.40%を必須成分とし
    て含有し、かつMn量が0.10%以下、Ti量が0.
    10%以下に規制され、残部がAlおよび不可避的不純
    物よりなる合金の鋳塊に均質化処理後熱間圧延を行な
    い、次いで圧延率20〜85%で1次冷間圧延を行なっ
    た後、中間焼鈍を行ない、さらに圧延率10〜50%で
    2次冷間圧延を行ない、その後調質焼鈍を施してH32
    〜H34相当の調質度に仕上げ、これにより最大径5μ
    m以上の金属間化合物粒子の密度が1mm当り100
    〜700個の範囲内にあり、かつ板表面における結晶粒
    の平均アスペクト比が2以下であり、しかも耳率が7%
    以下の圧延板調質材を得ることを特徴とする、曲げ加工
    性に優れかつ曲げ加工における異方性の小さい成形加工
    用Al−Mg系合金圧延板調質材の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005298922A (ja) * 2004-04-13 2005-10-27 Furukawa Sky Kk 成形加工用アルミニウム合金板およびその製造方法
CN106216680A (zh) * 2016-09-14 2016-12-14 中南大学 一种粉末烧结制备的铝硅合金板的热加工及热处理工艺

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