JP2003276309A - 昇華インク用インクジェット被記録媒体と転写記録方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】昇華性染料を含有するインクを用いて記録した
画像を、プリント媒体と重ね合せて加熱することによ
り、昇華性染料をプリント媒体に転写してプリント物を
得る記録方法に使用するに適した、コックリング、イン
ク吸収性に優れかつ転写して得たプリント物の発色濃度
が高い、昇華インク用インクジェット被記録媒体を提供
する。 【解決手段】木材パルプを主成分とする紙を基紙とし
て、その少なくとも片面にインク受容層を塗布してなる
インクジェット記録シートにおいて、該基紙がＪ．ＴＡ
ＰＰＩＮｏ．２７ Ｂ法に記載されるフェンチェン伸縮
度試験器において、抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合
における、紙の進行方向に直角な方向の１分後の浸水伸
度が１．５％以下である昇華インク用インクジェット被
記録媒体。該インク受理層が水溶性バインダーと比表面
積が２００ｍ²／ｇ以下の非晶質シリカを含有すること
が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、昇華性染料を含有
するインクを用いて記録するインクジェット被記録媒体
に関するものであり、更に詳しくはインクジェット記録
後に、プリント媒体と重ね合せて加熱することにより、
昇華性染料をプリント媒体に転写する記録方法とそれに
使用するインクジェット被記録媒体に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】インクジェット記録方式は、種々の作動
原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録
用紙に付着させ、画像・文字などの記録を行なうもので
あるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの
融通性が大きい、現像−定着が不要等の特徴があり、漢
字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種
々の用途に於いて急速に普及している。更に、多色イン
クジェット方式により形成される画像は、製版方式によ
る多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜
色のない記録を得ることが可能である。又、作成部数が
少なくて済む用途に於いては、写真技術によるよりも安
価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応
用されつつある。

【０００３】インクジェット記録方式の欠点の一つとし
てその印字速度の遅さがある。近年インクジェット記録
方式の普及に伴い技術改良が進み、そのプリント速度は
格段と早くなった。しかし、プリンターが高速印字なる
につれて、インクジェット被記録媒体が打ち込まれたイ
ンクによって印字部分が波打つコックリングが問題とな
っている。コックリングがひどくなると紙の盛り上がっ
たところにプリンターヘッドが擦り、印字している画像
が汚染されたり、紙が破けて通紙が出来なくなることが
ある。

【０００４】インクは溶剤タイプと水性タイプに分類さ
れるが、価格、安全性、取り扱いの容易性等から水性イ
ンクが多くインクジェット用昇華インクも水性インクに
属する。基紙にまで到達した水性インクの溶媒によるコ
ックリングの改良が重要な課題となっている。この課題
に対する取り組みは十分に行われていないのが現状であ
り、インク吸収体としての機能を有する木材パルプを主
体成分とする支持体をインクジェット被記録媒体に於い
ては、更に重要かつ早期に解決しなければならない課題
となっている。

【０００５】又、昇華性染料を含有するインクを使用し
て、グラビア印刷、オフセット印刷等によって印刷した
転写紙を作成し、布帛等に熱転写する昇華転写捺染方法
が従来から知られている。

【０００６】一方、インクジェット記録で作成した画像
等を任意のプリント媒体に転写して、プリント物を得る
技術も開発されている。例えば、特開平７−１４８９１
７号公報、特開平７−１７９０２４号公報、特開平９−
２９０５６０号公報、特開平１０−２４６５１号公報、
特開平１０−２５６７２号公報、特開平１０−１６３８
２号公報、特開平１０−３１５６９５号公報、特開平１
１−４２８９６号公報、特開平１１−３１４４５２号公
報、特開２０００−１０４４号公報等には、インクジェ
ット記録画像受像層を設け、その受像層が支持体から
熱、圧力等により容易に剥離することによって、プリン
ト媒体に受像層ごと転写する技術が開示されている。

【０００７】更に、昇華性染料を含有するインクを使用
して、インクジェット記録し、染料だけをプリント媒体
に熱等によって転写する方法も開示されている。例えば
特開昭５３−５５２２１号公報には、昇華性インクを使
用して転写紙得ることにより、印刷版が不要になり、小
ロットの転写紙を得る場合でも安価に作ることが出来る
と言う技術が開示されている。また、特開平１０−５８
６３８号公報、特開２０００−１５９２６号公報には、
昇華性染料を使用したインクでミラーイメージ画像を作
成し、プリント媒体に重ね合わせて加熱し、画像をプリ
ント媒体へ昇華転写する方法が開示されている。しかし
これらの中間転写媒体に従来のインクジェット被記録媒
体を使用しても十分な染料の転写が得られるとは限らな
かった。また、前述のように印字後コックリングの発生
したインクジェット被記録媒体にプリント媒体を重ね合
わせて加熱しても、転写画像がゆがみ解像度も劣ること
が多い。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、昇華
性染料を含有するインクを用いて記録した画像を、プリ
ント媒体と重ね合せて加熱することにより、昇華性染料
をプリント媒体に転写してプリント物を得る記録方法に
使用するに適した、印字部分のコックリング、インク吸
収性に優れ、かつ転写して得たプリント物の転写濃度が
高いインクジェット被記録媒体を提供することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明は、木材パルプを
主成分とする紙を基紙として、その少なくとも片面にイ
ンク受容層を塗布してなるインクジェット被記録媒体に
おいて、該基紙がＪ．ＴＡＰＰＩＮｏ．２７ Ｂ法に記
載されるフェンチェル伸縮度試験器による、抄紙機で紙
及び板紙を抄造する場合における、紙の進行方向に直角
な方向の横方向の１分後の浸水伸度が１．５％以下であ
る昇華インク用インクジェット被記録媒体である。

【００１０】該インク受理層が水溶性バインダーと比表
面積が２００ｍ²／ｇ以下の非晶質シリカを含有するこ
とが好ましい。

【００１１】該水溶性バインダーはポリビニルアルコー
ル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、
ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセル
ロース、ヒドロキシメチルセルロースから選ばれる少な
くとも１種類以上であることが好ましい。

【００１２】本発明のインクジェット被記録媒体に、昇
華染料を含有するインクを用いてインクジェット記録
後、任意のプリント媒体と重ね合わせて加熱し、該昇華
染料をプリント媒体へ転写する転写記録方法の発明であ
る。

【００１３】

【発明の実施の形態】以下に本発明の昇華インク用イン
クジェット被記録媒体及びプリント媒体への転写記録方
法について、詳細に説明する。

【００１４】本発明の基紙は、Ｊ．ＴＡＰＰＩＮｏ．２
７ Ｂ法に記載されるフェンチェル伸縮度試験器によ
る、抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の
進行方向に直角な方向の１分後の浸水伸度が１．５％以
下に制御する必要がある。浸水伸度度を与える手段とし
ては、様々な手段があるが、大きく二つの方法に分けら
れると考える。一つは基紙を製造する際に内添サイズ剤
の添加量や表面サイズ剤の塗布量を変えることによる方
法である。この方法は、基紙の表面や内部のパルプ繊維
の濡れ性を変えることによって、浸水時の伸度を制御す
る方法である。

【００１５】もうひとつの方法は、基紙の空隙構造を変
えることによる方法である。液体の毛細管への浸透のモ
デル式としてＬｕｃａｓ−Ｗａｓｈｂｕｒｎの式がよく
知られているが、この式においては、液体の浸透する深
さは、時間および毛細管半径の平方根に比例し、液体の
粘度の平方根に反比例することが示されている。つまり
より蜜に抄造し易いパルプを選定したり、パルプの叩解
条件を選定したり、紙料スラリーにポリマーを添加した
り、多段のウェットプレスを用いたり、途中の塗工装置
で表面サイズ剤や水溶性ポリマーを付与したり、抄造後
にマシンカレンダー処理等と言った、各種抄造条件を調
整して基紙の空隙（毛細管半径）を少なく（小さく）す
ることが、本発明の目的を達成するもう一つの方法であ
る。

【００１６】本発明の１分後の浸水伸度が１．５％以下
である基紙を得るには、以下の方法を用いることによ
り、好ましくは以下の方法を２つ以上組み合わせて抄造
することにより達成するのが本発明の目的に適している
ことが本発明者らの検討で明らかとなった。

【００１７】（１）木材パルプとしては、塩素、次亜塩
素酸塩、二酸化塩素漂白の通常の漂白処理並びにアルカ
リ抽出もしくはアルカリ処理および必要に応じて過酸化
水素、酸素などによる酸化漂白処理など、およびそれら
の組み合わせ処理を施した針葉樹パルプ、広葉樹パル
プ、針葉樹広葉樹混合パルプの木材パルプが用いられ、
また、クラフトパルプ、サルファイトパルプ、ソーダパ
ルプなどの各種のもの、更には古紙パルプ等を用いるこ
とができる。これらのパルプのうち短繊維で地合の取り
易い広葉樹パルプを多く用い、具体的には広葉樹パルプ
を６０質量％以上、好ましくは７５質量％以上用い、叩
解機により長繊維分がなるべく少なくなるように叩解し
て用いるか、繊維長が短い古紙パルプを混合して用いる
ことが有利である。

【００１８】（２）本発明の実施に用いられる基紙中に
は、紙料スラリー調製時に各種の添加剤を含有せしめ
る。サイズ剤として、脂肪酸金属塩あるいは脂肪酸、ア
ルキルケテンダイマー乳化物あるいはエポキシ化高級脂
肪酸アミド、アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物
乳化物、ロジン誘導体等を単独または併用して比較的多
量に添加することが、本発明の基紙を得るためには有利
である。その他、乾燥紙力増強剤として、アニオン性、
カチオン性あるいは両性のポリアクリルアミド、ポリビ
ニルアルコール、カチオン化澱粉、植物性ガラクトマン
ナン等、湿潤紙力増強剤として、ポリアミンポリアミド
エピクロルヒドリン樹脂等、填料として、クレー、カオ
リン、炭酸カルシウム、酸化チタン等、定着剤として、
塩化アルミニウム、硫酸バン土等の水溶性アルミニウム
塩等、ｐＨ調節剤として、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、硫
酸等を、その他着色顔料、着色染料、蛍光増白剤などを
適宜組み合せて含有せしめるのがより有利である。

【００１９】（３）基紙中あるいは基紙上に、各種の表
面サイズ剤、水溶性ポリマー、親水性コロイドあるいは
ポリマーラテックスを含有あるいは塗設せしめる。具体
的には、基紙中あるいは基紙上に各種の表面サイズ剤、
水溶性ポリマーもしくは親水性コロイドあるいはポリマ
ーラテックスをサイズプレスもしくはタブサイズプレス
あるいはブレード塗工、エアーナイフ塗工などの塗工に
よって固形塗布量として１．０ｇ／ｍ²以上含有あるい
は塗設せしめるのが好ましい。

【００２０】（４）基紙を抄紙後マシンカレンダー、ス
ーパーカレンダー、熱カレンダー等を用いてカレンダー
処理を行う。

【００２１】本発明の実施に用いられる基紙の厚みに関
しては、特に制限はないが、その坪量は４０〜３００ｇ
／ｍ²の範囲で適宜選択することが出来る。好ましくは
８０〜２８０ｇ／ｍ²、より好ましくは１００〜２５０
ｇ／ｍ²の範囲のものである。

【００２２】コックリングは一般的に基紙に水分が浸透
すると基紙を構成するパルプの膨潤、応力緩和が起こ
り、再度乾燥された場合に局所的に発生した凹凸が残る
ためと考えられるが、本発明の基紙の如く、初期の横方
向への浸水伸度を極めて少なくした場合は、急激なパル
プの膨潤、応力緩和が極めて少なく、発生する凹凸の差
が極めて小さいためではないかと推定される。

【００２３】本発明のインク受理層で使用される水溶性
バインダーとしてはポリビニルアルコール、メチルセル
ロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロ
ピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロ
キシメチルセルロースが挙げられる。好ましくはインク
受容性やドット再現性さらには印字部のベタ付き防止性
の点からカルポリビニルアルコール、ボキシメチルセル
ロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロー
ス中から選ばれる少なくとも１種の水溶性バインダーを
併用することが好ましい。

【００２４】本発明で使用されるポリビニルアルコール
はけん化度、重合度は特に限定されないが、好ましくは
けんか度８６．５ｍｏｌe％〜９０ｍｏｌe％のポリビニ
ルアルコールである。

【００２５】本発明のインクジェット被記録媒体のイン
ク受理層に使用するポリビニルアルコールは市販のもの
を好適に用いることができ、以下に例を挙げるが、本発
明はこれに限定されるものではない。例えば、ＰＶＡ１
０５、ＰＶＡ１１０、ＰＶＡ１１７、ＰＶＡ１１７Ｈ、
ＰＶＡ１２０、ＰＶＡ１２４、ＰＶＡ１２４Ｈ、ＰＶＡ
ＣＳ、ＰＶＡＣＳＴ、ＰＶＡＨＣ、ＰＶＡ２０２、ＰＶ
Ａ２０３、ＰＶＡ２０４、ＰＶＡ２０５、ＰＶＡ２１
０、ＰＶＡ２１７、ＰＶＡ２２０、ＰＶＡ２２４、ＰＶ
Ａ２２８、ＰＶＡ２３５、ＰＶＡ２１７ＥＥ、ＰＶＡ２
１７Ｅ、ＰＶＡ２２０Ｅ、ＰＶＡ２２４Ｅ、ＰＶＡ４２
０、ＰＶＡ６１３（以上、クラレ製）、Ｃ２５、Ｃ２
０、Ｃ２０１、Ｃ１７、Ａ、Ｃ１０、ＭＡ３３、ＭＡ２
６、ＭＡ２３、ＭＡ１７、ＰＡ２４、ＰＡ２０、ＰＡ１
８、ＰＡ１５、ＰＡ１０（以上、信越化学製）などを挙
げることができる。

【００２６】本発明のインクジェット被記録媒体のイン
ク受理層に使用するカルボキシセルロースとしては、エ
ーテル化度０．４から２．５の範囲が好ましい。このよ
うなカルボキシメチルセルロースは、市販のものを好適
に用いることができ、例えば、セロゲン５Ａ、セロゲン
６Ａ、セロゲン７Ａ、セロゲンＰＲ、セロゲンＷＳ−
Ａ、セロゲンＰＬ−１５、セロゲンＷＳ−ＣＮ、セロゲ
ンＷＳ−Ｃ、セロゲンＷＳ−Ｄ、セロゲンＢＳ、セロゲ
ンＨＨ、セロゲン３Ｈ、セロゲン４Ｈ、セロゲンＢＳ−
Ｈ、セロゲンＢＳＨ−３、セロゲンＢＳＨ−４、セロゲ
ンＢＳＨ−５、セロゲンＢＳＨ−６、セロゲンＢＳＨ−
１０、セロゲンＢＳＨ−１２、セロゲン６ＨＳ９、セロ
ゲンＥＰ、セロゲンＨＥ−１５００Ｆ（以上第一工業製
薬製）などが挙げられる。

【００２７】本発明のインクジェット被記録媒体のイン
ク受理層に使用する非晶質シリカは、比表面積が２００
ｍ²/ｇ以下のものを使用する。このような非晶質シリカ
は市販のものを好適に使用でき、例えばミジカシルＰ−
８０１、ミズカシルＰ−８０２、ミズカシルＰ−５２
６、ミズカシルＰ−５２７、ミズカシルＰ−６０３、ミ
ズカシルＰ−６０４、（水沢化学工業社製）ファインシ
ールＥ５０、ファインシールＥ７０、ファインシールＴ
３２、ファインシールＰ８、ファインシールＣＭＦ（ト
クヤマ社製）等が挙げられる。

【００２８】本発明において非晶質シリカの比表面積が
２００ｍ²／ｇより大きいと昇華インクのシリカ細孔へ
の吸着が過度になり、転写時にインクの昇華性を阻害す
ることになる。その結果プリント媒体に転写した際に転
写濃度の低下を招くと推定される。

【００２９】本発明に於いて水溶性バインダーに対する
非晶質シリカの配合量としては、水溶性バインダーの全
固形分１００質量部に対して、３〜３００質量部、好ま
しくは３〜１００質量部、さらに好ましくは５０〜８０
質量部である。３質量部未満ではインク受理層のインク
吸能力が著しく不足するし、３００質量部を越えると転
写効率が著しく低下する。

【００３０】更に、インク受理層には、添加剤として、
染料定着剤（各種カチオン性樹脂）、顔料分散剤、増粘
剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、サイズ
剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線
吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、湿潤強度増強
剤、乾燥強度増強剤等を適宜配合することもできる。

【００３１】本発明における、インク受理層の塗布量
は、あまり少ないとインクの吸収性に問題が生じるばか
りでなく、画像濃度・色彩性・鮮明性が低く、インクが
インク受理層の面方向に拡散して鳥の羽状にギザギザし
たフェザリングと呼ばれるドット形状の悪化が発生す
る。又、あまり塗布量が多いと塗布後の乾燥工程におけ
る乾燥負荷が高まり、塗布速度の低下に伴う生産性の低
下ばかりでなく、高負荷での乾燥では、インク受理層を
構成する塗被組成物中の接着剤が、蒸発する溶媒と共に
インク受理層表面に移動して、その表面の空隙量を低下
させるために、吸収性が低下し記録時に地汚れなどが発
生したり、カール性が悪化するため好ましくない。この
ような観点から、インク受理層の塗布量は、１〜３０ｇ
／ｍ²が好ましい。又、インク受理層はある一定の塗布
量を数回に分けて塗布する事も可能であり、後処理でキ
ャスト処理しても良い。

【００３２】インク受理層を塗布する方法は、各種ブレ
ードコーター、ロールコーター、エアーナイフコータ
ー、バーコーター、ロッドブレードコーター、カーテン
コーター、ショートドウェルコーター、サイズプレス等
の各種装置をオンマシン或いはオフマシンで用いること
ができる。又、塗布後に、マシンカレンダー、ＴＧカレ
ンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー等のカ
レンダー装置を用いて平坦化でき、光沢付与仕上げする
ことで、さらに平坦化したインク受理層を形成出来る。

【００３３】インク受理層を塗布する場合、支持体上に
そのままインク吸収層を設けても良いし、予めコロナ処
理、フレーム処理、プラズマ処理、紫外線照射処理など
の公知の表面活性化処理を施した後塗布しても差し支え
ない。

【００３４】本発明で使用する昇華インクは、熱によっ
て染料分子が拡散又は昇華する昇華性染料を液体中に分
散させた記録液体である。これらの昇華性染料は１００
℃〜２５０℃位の熱で昇華、気化、拡散して転写しうる
ものであれば良く、分散染料と呼ばれる水に対して不溶
なものもあるので、その場合は樹脂粒子等の染料保持粒
子中に保持させて液中に分散させるようにする。

【００３５】昇華性染料としては、カチオン染料又は分
散染料がある。例えば分散染料としては、アゾ系及びア
ゾ誘導体、ジアリールメタン系、トリアリールメタン
系、チアゾール系、メチン系、アゾメチン系、キサンテ
ン系、アントラキノン誘導体、キノフタロン誘導体、ス
チロジピラン系、インドリノスピロピラン系、フルオラ
ン系、スチリル系、ジフェニルメタン系、トリフェニル
メタン系、オキサジン系、トリアジン系、チクリジン
系、ジアジン系、ローダミンラクタム系等の染料が挙げ
られる。また、「WHITE SERIES No.78昇華型感熱転写記
録技術」（田口信義監修、株式会社トリケップス発行、
昭和６３年５月３１日）に昇華性色素の代表的なものが
記されている。

【００３６】又これらの染料は１成分のみでなく、２種
以上を混合して用いても良い。これ等の染料を樹脂微粒
子中に含有させて、液体中に分散させインクとする。例
えば、樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体を用
い、分散染料をテトラヒドロフラン中に分散させ、高沸
点飽和炭化水素中に分散しながら投入することによっ
て、高沸点溶剤タイプのインクとすることが出来る。ま
た、同様に水ベースのインクの作成も可能である。

【００３７】本発明インクジェット被記録媒体を用いて
の熱転写物の作製は、被記録媒体の記録画像面を昇華性
染料の定着性を向上する処理が施されたプリント媒体と
重ね合せ、熱転写用プレス機を用いて、それぞれのプリ
ント媒体に適した転写温度と転写時間で処理し作製す
る。本発明で使用できるプリント媒体としては、ポリエ
ステエルフィルムを基本としたフィルム素材、アルミ、
ステンレスなどの金属素材、ポリエステル布素材などが
ある。本発明のインクジェット被記録媒体を用いると発
色濃度、転写画像の解像度が大幅に改善される。

【００３８】

【実施例】以下に、本発明の実施例をあげて説明する
が、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
又、実施例に於いて示す「部」および「％」は、特に明
示しない限り質量部及び質量％を示す。

【００３９】＜基紙１〜４の作製＞広葉樹漂白クラフト
パルプ８５質量％、及び針葉樹漂白サルファイトパルプ
１５質量％から成る混合パルプを叩解度３２０ｍｌ（Ｃ
ＳＦ）になるように叩解後、パルプ１００質量部に対し
て、カチオン化澱粉３質量部、アニオン化ポリアクリル
アミド０．２質量部、アルキルケテンダイマー乳化物
（ケテンダイマー分として）０．２質量部（基紙１）、
０．３質量部（基紙２）、０．４質量部（基紙３）、
０．５質量部（基紙４）、ポリアミドエピクロルヒドリ
ン樹脂０．４質量部を添加して紙料スラリーを調製し
た。その後、紙料スラリーを長網抄紙機で紙匹を形成
し、ウェットパートで３段のウェットプレスを行った
後、スムージングロールで処理し、引き続く乾燥パート
で２段の緊度プレスを行った後、乾燥した。その後、乾
燥の途中でカルボキシ変性ポリビニルアルコール溶液で
サイズプレスし、固形分付着量を２．０ｇ／ｍ²とし、
最終的に得られる基紙水分が絶乾水分で８質量％になる
ように乾燥し、マシンカレンダー処理して、坪量１５０
ｇ／ｍ²の表１に記載される浸水伸度を有するインクジ
ェット被記録媒体用の基紙を製造した。

【００４０】実施例１ 実施例１のインク受理層の塗被組成物は、ポリビニルア
ルコール（ＰＶＡ２２４：クラレ製）１００部、非晶質
シリカ（ミズカシルＰ−５６２：比表面積１４０ｍ²／
ｇ：水澤化学工業社製）８０部を用い、固形分濃度１５
％に調整して得た。次いで該組成物を、エアーナイフコ
ーターにより基紙１上に乾燥塗工量５ｇ／ｍ²となるよ
うに塗工し、これをスーパーカレンダー処理して実施例
１のインクジェット被記録媒体を作製した。

【００４１】実施例２ 実施例２のインク受理層の塗被組成物は、カルボキシメ
チルセルロース（セロゲン５Ａ：第一工業製薬社製）１
００部、非晶質シリカ（ミズカシルＰ−５２７：比表面
積５５ｍ²／ｇ：水澤化学工業社製）６０部を用い、固
形分濃度１５％に調整して得た。次いで該組成物を、エ
アーナイフコーターにより基紙２上に乾燥塗工量４ｇ／
ｍ²となるように塗工し、これをスーパーカレンダー処
理して実施例２を作製した。

【００４２】実施例３ 実施例３は実施例１において、基紙１を基紙３に変更し
た以外は同様にし実施例３のインクジェット被記録媒体
を作製した。

【００４３】実施例４ 実施例４は実施例２において、基紙２を基紙４に変更し
た以外は同様に実施例４のインクジェット被記録媒体を
作製した。

【００４４】実施例５ 実施例５のインク受理層の塗被組成物は、ヒドロキシエ
チルセルロース（HECダイセルＳＰ２００：ダイセル化
学工業社製）１００部、非晶質シリカ（ファインシール
Ｅ７０：比表面積１３０ｍ²／ｇ：トクヤマ社製）３０
部を用い、固形分濃度１０％に調整して得た。次いで該
組成物を、エアーナイフコーターにより基紙４上に乾燥
塗工量４ｇ／ｍ²となるように塗工し、これをスーパー
カレンダー処理して実施例５を作製した。

【００４５】実施例６ 実施例６のインク受理層の塗被組成物は、カルボキシメ
チルセルロース（セロゲン５Ａ：第一工業製薬社製）１
００部、非晶質シリカ（ファインシールＴ３２：比表面
積１６０ｍ²／ｇ：トクヤマ社製）１００部を用い、固
形分濃度１５％に調整して得た。次いで該組成物を、エ
アーナイフコーターにより基紙４上に乾燥塗工量４ｇ／
ｍ²となるように塗工し、これをスーパーカレンダー処
理して実施例６を作製した。

【００４６】実施例７ 実施例７のインク受理層の塗被組成物は、ポリビニルア
ルコール（ＰＶＡ４２０：クラレ社製）１００部、非晶
質シリカ（ファインシールＴ３２：比表面積１６０ｍ²
／ｇ：トクヤマ社製）２５０部を用い、固形分濃度１６
％に調整して得た。次いで該組成物を、エアーナイフコ
ーターにより基紙２上に乾燥塗工量４ｇ／ｍ²となるよ
うに塗工し、これをスーパーカレンダー処理して実施例
７を作製した。

【００４７】実施例８ 実施例８のインク受理層の塗被組成物は、ポリビニルア
ルコール（ＰＶＡ２２０：クラレ社製）１００部、非晶
質シリカ（ミズカシルＰ−６０３：比表面積３０ｍ²／
ｇ：水澤化学社製）１０部を用い、固形分濃度１０％に
調整して得た。次いで該組成物を、エアーナイフコータ
ーにより基紙２上に乾燥塗工量４ｇ／ｍ ²となるように
塗工し、これをスーパーカレンダー処理して実施例８を
作製した。

【００４８】実施例９ 実施例９のインク受理層の塗被組成物は、ポリビニルア
ルコール（ＰＶＡ４２０：クラレ製）１００部、非晶質
シリカ（ファインシールＸ４５：比表面積２４０〜２８
０ｍ²／ｇ：トクヤマ社製）を用い８０部、固形分濃度
１７％に調整して得た。次いで該組成物を、カーテンコ
ーターにより基紙４上に乾燥塗工量１０ｇ／ｍ²となる
ように塗工し、これをスーパーカレンダー処理して実施
例９を作製した。

【００４９】比較例１ 基紙１においてアルキルケテンダイマー（アルキルケテ
ンダイマー分として）０．１質量部とした他は、基紙１
と同様にして基紙５を作成した。

【００５０】比較例１は実施例１において基紙１を基紙
５に変更した以外は同様にし、比較例１のインクジェッ
ト被記録媒体を作製した。

【００５１】比較例２ 濾水度４５０ｍｌ（ＣＳＦ）の広葉樹漂白クラフトパル
プ７０部、濾水度４５０ｍｌ（ＣＳＦ）の針葉樹漂白サ
ルファイトパルプ３０部から成る木材パルプ１００部
に、軽質炭酸カルシウム／重質炭酸カルシウム／タルク
の比率が３０／３５／３５の顔料５部、アルキルケテン
ダイマー０．１部、カチオン系アクリルアミド０．０３
部、カチオン化澱粉１．０部、硫酸バンド０．５部を調
成後、長網抄紙機を用いて坪量８０ｇ／ｍ²で抄造し、
酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量５
ｇ／ｍ²塗布させて乾燥して基紙６を得た。

【００５２】比較例２は実施例１において基紙１を基紙
６に変更した以外は同様に比較例２を作製した。

【００５３】表１に示すインク吸収性、転写物の発色濃
度の評価は以下の方法により行った。

【００５４】＜評価用インクの作製＞下記化１、化２、
化３の染料１５部をポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル硫酸ナトリウム５部、イオン交換水７５部、ジエチレ
ングリコール５部の混合液に分散し、サンドグラインダ
ー（１ｍｍ径ジルコニウムビーズ）で３時間粉砕した。
この分散液を更にフロロポアフィルター（ＦＰ−２５
０）で濾過して分散染料液とし、この分散液４０部にチ
オジグリコール２５部、ジエチレングリコール１０部、
イオン交換水２５部を混合して、酢酸でｐＨ５〜７に調
整して、イエロー、マゼンタ、シアンの水性昇華染料分
散インクを作製した。

【００５５】

【化１】

【００５６】

【化２】

【００５７】

【化３】

【００５８】＜インク受理性の評価＞上記インクをイン
クジェットプリンタ（ＪＶ２：ミマキ株式会社）を用い
て、写真画像を被記録媒体上に記録し、インクの溢れ程
度を目視で判定して、インク吸収性、解像性を評価し
た。Ａ，Ｂが良好であり、Ｃは実用が劣り、Ｄ実用性不
可である。Ａ：インク吸収性、解像性ともに良好。Ｂ：
解像性がやや劣るが実用上全く問題が無い。Ｃ：解像性
が悪く、ニジミが発生する。Ｄ：解像性、吸収性共に悪
く、ニジミが大きい。

【００５９】＜転写物発色濃度＞裏抜け防止の評価を行
った際に被記録媒体と重ね合わせ、熱処理されたプリン
ト媒体の光学濃度を光学濃度計（MACHBETH社 ＴＲ１２
２４）で測定し相対比較を行い高い方からＨ、Ｍ⁺、
Ｍ、Ｍ^-、Ｌとした。Ｍ以上が好ましく、Ｍ^-が実用下限
レベルである。

【００６０】＜コックリング評価＞インク受理性の評価
で用いたインクジェットプリンターＪＶ２で、インク塗
出量が２００％以上になるような単色画像を印字し、印
字部のコックリングを目視で評価した。Ａ、Ｂ、は良好
で、Ｃは実用性劣り、Ｄは実用不可とした。

【００６１】

【表１】

【００６２】表１から明らかなように、実施例１〜９は
木材パルプを主成分とする紙を基紙として、その少なく
とも片面にインク受容層を塗布してなるインクジェット
記録シートにおいて該基紙がＪ．ＴＡＰＰＩＮｏ．２７
Ｂ法に記載されるフェンチェル伸縮度試験器による、
抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の進行
方向に直角な方向の１分後の浸水伸度が１．５％以下で
あり、該インク受理層が水溶性バインダーと比表面積が
２００ｍ²／ｇ以下の非晶質シリカを含有しているの
で、実施例１〜９はインク吸収性、コックリングに優
れ、転写時の発色性に優れている。但し、実施例９は、
比表面積が２００ｍ²／ｇ以上の非晶質シリカを使用し
ているため、昇華インクが非晶質シリカの細孔へ吸着し
ているためか、実施例１〜８に比べ若干転写濃度が劣る
結果となった。

【００６３】比較例１、２は浸水伸度が２．２％、３．
０％と１．５％を越えているので、実施例１〜９に比べ
印字部のコックリングが劣る。

【００６４】

【発明の効果】以上のように、本発明は昇華染料を含有
するインクを用いて、インクジェット被記録媒体にイン
クジェット印字し、プリント媒体と重ね合わせ加熱転写
する。本発明の昇華インク用インクジェット被記録媒体
は、木材パルプを主成分とする紙を基紙として、その少
なくとも片面にインク受容層を塗布してなるインクジェ
ット被記録媒体で、該基紙がＪ．ＴＡＰＰＩＮｏ．２７
Ｂ法に記載されるフェンチェル伸縮度試験器におい
て、抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合における、紙の
進行方向に直角な方向の１分後の浸水伸度が１．５％以
下である。また、該インク受理層が水溶性バインダーと
比表面積が２００ｍ²／ｇ以下の非晶質シリカを含有す
ると好ましい。さらに、該水溶性バインダーがポリビニ
ルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ
エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースから選
ばれる少なくとも１種類以上であることが好ましい。そ
の結果、インクジェットプリンターで形成される画像の
インク吸収性が良く、印字時のコックリングが良好で、
光学濃度の高い転写物が得られる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁷ 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ｄ２１Ｈ 27/00 Ｄ２１Ｈ 27/00 Ｚ Ｆターム(参考） 2H086 BA01 BA15 BA21 BA26 BA33 BA35 BA41 BA48 BA56 3B005 EA01 EB05 EC11 FB23 FB25 FB26 FE01 FE13 GA02 GB01 4L055 AA02 AA03 AC06 AG18 AG40 AG46 AG64 AG87 AH02 AH11 AH17 AH37 AJ04 BB03 BE02 BE08 EA09 EA17 FA11 GA09 GA13 GA50

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 木材パルプを主成分とする紙を基紙とし
   て、その少なくとも片面にインク受容層を塗布してなる
   インクジェット被記録媒体において、該基紙がＪ．ＴＡ
   ＰＰＩＮｏ．２７ Ｂ法に記載されるフェンチェル伸縮
   度試験器による、抄紙機で紙及び板紙を抄造する場合に
   おける、紙の進行方向に直角な方向の１分後の浸水伸度
   が１．５％以下であることを特徴とする昇華インク用イ
   ンクジェット被記録媒体。
2. 【請求項２】 該インク受理層が水溶性バインダーと比
   表面積が２００ｍ²／ｇ以下の非晶質シリカを含有する
   ことを特徴とする請求項１記載の昇華インク用インクジ
   ェット被記録媒体。
3. 【請求項３】 該水溶性バインダーがポリビニルアルコ
   ール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロー
   ス、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチル
   セルロース、ヒドロキシメチルセルロースから選ばれる
   少なくとも１種類以上であることを特徴とする請求項１
   または２記載のインクジェット被記録媒体。
4. 【請求項４】 請求項１〜３項いずれか１項記載の該被
   記録媒体に、昇華染料を含有するインクを用いてインク
   ジェット記録後、プリント媒体と重ね合わせて加熱し、
   該昇華染料をプリント媒体へ転写することを特徴とする
   転写記録方法。