JP2003258377A - 半導体レーザ素子 - Google Patents

半導体レーザ素子

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JP2003258377A
JP2003258377A JP2002059105A JP2002059105A JP2003258377A JP 2003258377 A JP2003258377 A JP 2003258377A JP 2002059105 A JP2002059105 A JP 2002059105A JP 2002059105 A JP2002059105 A JP 2002059105A JP 2003258377 A JP2003258377 A JP 2003258377A
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diffraction grating
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JP2002059105A
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Hiroyuki Nakatani
洋幸 中谷
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラマンアンプの順方向励起光源に適した半導
体レーザ素子を提供する。 【解決手段】 本発明の半導体レーザ素子100は、多
重量子井戸構造の活性層45と、その上下に設けられた
分離閉じ込めヘテロ構造(SCH)層42、44、5
0、52を備えている。最も上に位置するSCH層52
の上面にはクラッド層16が設けられている。SCH層
52とクラッド層16との界面には、活性層45の全長
に沿って、その界面幅Mよりも小さい幅Gを有する均一
回折格子36が設けられている。この回折格子36によ
り、素子全体の規格化結合係数を任意に低下させること
ができ、マルチモード発振が可能となる。よって、その
出力光は光ファイバ内で散乱し難く、しかも、内部共振
器型であるのでRINが低く且つ波長安定性にも優れ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体レーザ素子
に関し、特に、ラマンアンプの励起光源に適した半導体
レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】ラマンアンプの励起光源としては、外部
グレーティング共振器型の半導体レーザが知られてい
る。これは、ファブリペロー(FP)型レーザの一方の
ファセットを無反射コーティングし、他方のファセット
とFP型レーザの外部に配置されたグレーティング(回
折格子)とで外部共振器を構成するレーザである。最近
では、外部グレーティングとして、ファイバブラッググ
レーティング(FBG)がしばしば使用されている。こ
のような外部FBG共振器型レーザには、波長選択性が
よいという利点がある。また、外部FBG共振器型レー
ザには、FP型レーザに比べて発振波長の電流依存性・
温度依存性が小さいという利点もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ラマンアン
プの高性能化のためには、信号光に対して順方向と逆方
向の双方から励起光を加える双方向励起方式が望まし
い。順方向励起では、励起光源の雑音特性が信号光に強
く影響する。したがって、相対雑音強度(RIN)の極
めて低い励起光源が必要となる。外部FBG共振器型レ
ーザは、優れた波長安定性を有するが、ラマンアンプの
順方向励起に十分なほどRINを低くすることは難し
い。実際、そのような低RINの外部FBG共振器型レ
ーザは、いまだ実現されていない。
【0004】そこで、本発明は、ラマンアンプの順方向
励起に適した半導体レーザ素子の提供を課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による半導体レー
ザ素子は、(a)第1の導電型の半導体からなる基板
と、(b)基板の上面側に設けられ、第1導電型の半導
体からなる下部クラッド層と、(c)下部クラッド層の
上に設けられた下部分離閉じ込めヘテロ構造層と、
(d)下部分離閉じ込めヘテロ構造層の上に設けられ、
多重量子井戸構造を有する活性層と、(e)活性層の上
に設けられた上部分離閉じ込めヘテロ構造層と、(f)
上部分離閉じ込めヘテロ構造層の上面に被着され、第1
導電型と異なる第2の導電型の半導体からなる上部クラ
ッド層と、(g)上部クラッド層の上に設けられた上部
電極と、(h)基板の下面側に設けられた下部電極とを
備えており、上部分離閉じ込めヘテロ構造層と上部クラ
ッド層との界面の一部に、活性層の延在方向に沿って均
一回折格子が設けられている。
【0006】なお、活性層の「延在方向」とは、当該半
導体レーザ素子の全長方向つまり長軸方向を示し、上記
界面の「幅」とは、その長軸方向に直交する川幅方向つ
まり短軸方向に沿う全幅を示す。また、「界面の一部に
設けられている」とは、界面の延在方向または幅方向に
おいて、その界面領域の一部に均一回折格子が形成され
ていることをいう。
【0007】具体的には、均一回折格子の少なくとも一
部が、界面の最大幅よりも小さい(狭い)幅を有するよ
うに設けられて成ると好ましい。この場合、例えば、均
一回折格子が活性層の全長にわたって形成されており、
その幅が全長にわたって界面の最大幅よりも狭くされて
いてもよく、或いは、界面の最大幅よりも狭い均一回折
格子が、全長方向の少なくとも一部に設けられていても
よい。この場合、均一回折格子が当該レーザ半導体素子
の後端面側に設けられると好ましい。
【0008】さらに、界面の一部に均一回折格子が設け
られていれば、必ずしもその幅が界面の最大幅よりも狭
くなくとも構わない。例えば、界面幅と同幅の均一回折
格子が活性層の延在方向の一部に形成されていても好適
である。この場合、活性層幅つまり界面幅が部分的に狭
くされて成るとより好ましい。こうすれば、横方向(活
性層の幅方向)の光の閉じ込めが小さくされる。この場
合、均一回折格子が当該レーザ半導体素子の後端面側に
設けられる一方で、前端面側の活性層幅が後端面側より
も小さいと一層好ましい。
【0009】また、本発明の半導体レーザ素子は、無反
射コートが施された前端面と、前端面に対向し且つ高反
射コートが施された後端面を更に備えていても好まし
い。さらに、基板、下部クラッド層および上部クラッド
層がInPから構成され、下部分離閉じ込めヘテロ構造
層、活性層、および上部分離閉じ込めヘテロ構造層がI
nGaAsPから構成されていても好ましい。具体的に
は、下部分離閉じ込めヘテロ構造層、活性層、および上
部分離閉じ込めヘテロ構造層がメサ構造を有していても
よい。この場合、上部分離閉じ込めヘテロ構造層と上部
クラッド層との界面の幅は、その界面におけるメサ幅と
なる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を説明する前
に、本発明の概要を説明する。
【0011】分布帰還型(DFB)半導体レーザは、波
長安定性が高く、RINが低いという特性を有してい
る。この点は、ラマンアンプの順方向励起光源に適して
いる。しかし、既存のDFBレーザをラマンアンプの励
起光源として実際に使用すると、十分な励起光パワーを
維持できない。これは、DFBレーザ光が光ファイバの
内部でブルリアン散乱を起こすからである。
【0012】DFBレーザ光のブルリアン散乱が顕著な
のは、DFBレーザがシングルモード発振(縦単一モー
ド発振)するからである。そこで、本発明者は、DFB
レーザと同じように回折格子を有し、それでいてマルチ
モード発振(縦多モード発振)をする半導体レーザ素子
を考案した。これが、本発明の半導体レーザ素子であ
る。
【0013】本発明者は、既存のDFBレーザと同様の
構造を有する半導体レーザ素子であっても、素子全体と
して一定値未満の規格化結合係数を有するものはマルチ
モード発振することを見出した。規格化結合係数はκL
と表されることが多い。ここで、κは結合係数、Lは回
折格子の長さである。「半導体レーザ」(応用物理学会
編/伊賀健一 編著、オーム社)によれば、結合係数
κは、おのおの反対方向に伝搬する光が回折格子により
回折されて単位長さ当たりに結合し合う程度を示す。
【0014】また、本発明者は、かかるκLを一定値未
満とするには、回折格子を浅く(薄く)すること、上部
分離閉じ込めヘテロ構造層とこれに接するクラッド層と
の屈折率差を小さくすること、上部分離閉じ込めヘテロ
構造層に接するクラッド層の基本厚を大きくすること、
等が有効であることを見出した。これらのなかでも、回
折格子を浅くすることがκLの低下効果が極めて高い。
しかし、従来のDFBレーザの回折格子深さは数100
Å程度であり、κLを一層低下させるには、回折格子深
さを100Å以下好ましくは70〜80Å以下とするこ
とが望まれる。
【0015】このような極薄い回折格子を、上記界面全
体の広い面積に均一に設けるには成形・加工が難しく、
しかも、その結果としてκLの制御が困難となり、素子
の歩留まりが悪化するおそれがある。これに対し、本発
明の半導体レーザ素子には、上述の如く、上部分離閉じ
込めヘテロ構造層と上部クラッド層との界面において、
活性層の延在方向に沿って、界面幅よりも狭小な幅を有
する均一回折格子が設けられている。これにより、回折
格子と光の相互作用が素子全体として減弱され、光の閉
じ込め効果が弱くなり、分離閉じ込めヘテロ構造におけ
る光子密度を有意に低下させ得る。よって、回折格子を
極端に薄くすることなく、例えば、従来と同等の深さと
しても、半導体レーザ素子全体のκLを所望の値未満に
抑え、縦方向にマルチモード発振させることが可能とな
る。
【0016】したがって、本発明の半導体レーザ素子
は、DFBレーザと同様に、波長安定性が高く且つRI
Nが低く、しかも、マルチモード発振するので、光ファ
イバ内のブルリアン散乱も抑えられる。これらより、本
発明による半導体レーザ素子は、ラマンアンプの励起光
源として好適である。
【0017】以下、添付図面を参照しながら本発明の実
施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同
一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略す
る。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のもの
と必ずしも一致しない。
【0018】図1は、本発明に係る第1実施形態の半導
体レーザ素子100の構造を示す斜視図である。半導体
レーザ素子100は、縦方向(図1のz方向)に沿って
一様な構造を有している。半導体レーザ素子100は、
基板10の上面に順次に被着された下部クラッド層1
2、多重量子井戸−分離閉じ込め構造(MQW−SC
H)層14、および第1上部クラッド層16を備えてい
る。これらは、いずれもメサ型の半導体層である。基板
10および下部クラッド層12は、いずれもn−InP
から構成されている。一方、MQW−SCH層14は、
4元化合物半導体のInGaAsPから構成されてい
る。他方、第1上部クラッド層16は、p−InPから
構成されている。
【0019】下部クラッド層12、MQW−SCH層1
4、および第1上部クラッド層16の両側面は、埋め込
み層18によって覆われている。埋め込み層18はp−
InPから構成されている。埋め込み層18の上には、
電流ブロック層20が設けられている。電流ブロック層
20は、n−InPから構成されている。第1上部クラ
ッド層16、埋め込み層18、および電流ブロック層2
0の上には、第2上部クラッド層22が被着されてい
る。第2上部クラッド層22は、p−InPから構成さ
れている。このように、n型の電流ブロック層20が、
p型の第2上部クラッド層22とp型の埋め込み層18
との間に介在している。
【0020】第2上部クラッド層22の上面には、コン
タクト層24が被着されている。コンタクト層24は、
+−InGaAsから構成されている。コンタクト層
24の上面には、上部電極層28が被着されている。基
板10の下面には、下部電極層30が被着されている。
コンタクト層24に隣接する第2上部クラッド層22
は、第1上部クラッド層16よりも高いp型導電性を有
していてもよい。下部電極層30に隣接する基板10
は、下部クラッド層12よりも高いn型導電性を有して
いてもよい。
【0021】第1上部クラッド層16、第2上部クラッ
ド層22および下部クラッド層12は、MQW−SCH
層14で発生した光をMQW−SCH層14内に閉じ込
めるためのものである。したがって、これらのクラッド
層は、MQW−SCH層14よりも低い屈折率を有して
いる。
【0022】以下、図2を参照しながら、MQW−SC
H層14の構造を詳細に説明する。図2は、MQW−S
CH層14のバンドギャップ波長の分布を示す図であ
る。図2において、縦軸(x)は半導体レーザ素子10
0の垂直方向(厚さ方向)距離を示し、横軸(λg)は
バンドギャップ波長を示している。
【0023】図2に示されるように、MQW−SCH層
14は、下部クラッド層12から第1上部クラッド層1
6へ向かって、第1SCH層42、第2SCH層44、
活性層45、第3SCH層50および第4SCH層52
が順次に積層された多層半導体である。各層は、4元化
合物半導体のInGaAsPで構成されている。
【0024】第1SCH層42と第4SCH層52は、
対になって分離閉じ込めヘテロ構造を形成している。第
1SCH層42と第4SCH層52は、同じバンドギャ
ップを有する。具体的には、第1SCH層42と第4S
CH層52は、例えば、ともに1.05μmのバンドギ
ャップ波長を有している。
【0025】第2SCH層44と第3SCH層50も、
対になって分離閉じ込めヘテロ構造を形成している。第
2SCH層44と第3SCH層50は、同じバンドギャ
ップを有する。具体的には、第2SCH層44と第3S
CH層50は、例えば、ともに1.1μmのバンドギャ
ップ波長を有している。
【0026】活性層45は、複数のバリア層46および
複数の井戸層48が交互に積層された多重量子井戸(M
QW)構造を有している。各バリア層46は、例えば、
1.2μmのバンドギャップ波長を有し、各井戸層48
は、例えば、1.48μmのバンドギャップ波長を有し
ている。
【0027】MQW−SCH層14は、バンドギャップ
波長分布と同様の屈折率分布を有している。すなわち、
井戸層48、バリア層46、SCH層44および50、
SCH層42および52の順に高い屈折率を有してい
る。第2SCH層44と第3SCH層50は同じ屈折率
を有する。また、第1SCH層42と第4SCH層52
は同じ屈折率を有する。このような屈折率分布により、
活性層45で生じた光は、MQW−SCH層14内に良
好に閉じ込められる。
【0028】具体的に述べると、上述のバンドギャップ
波長の場合、各井戸層48は、3.506の屈折率を有
している。各バリア層46は、3.312の屈折率を有
している。第2SCH層44および第3SCH層50
は、それぞれ3.244の屈折率を有している。また、
第1SCH層42および第4SCH層52は、それぞれ
3.206の屈折率を有している。下部クラッド層12
および第1上部クラッド層16は、それぞれ3.100
の屈折率を有している。このようなバンドギャップ波長
分布と屈折率分布は、InGaAsPの組成を適宜調整
することにより実現できる。
【0029】次に、図3および図4を参照しながら、半
導体レーザ素子100の構造について更に説明する。図
3は、図1の3−3線に沿った、半導体レーザ素子10
0の縦断面図である。図4は、図3の4−4線に沿っ
た、半導体レーザ素子100の平面断面図である。
【0030】半導体レーザ素子100の前端面32に
は、活性層45(図2参照)で発生した光に対する反射
率が結晶へき開面より小さくなるように、AR(Anti-R
eflection:無反射)コートが施されている。本実施形
態では、前端面32の反射率(AR反射率)は、例えば
0.5%である。半導体レーザ素子100の後端面34
には、活性層45で発生した光に対する反射率が結晶へ
き開面より大きくなるように、HR(High Reflectio
n:高反射)コートが施されている。本実施形態では、
後端面34の反射率(HR反射率)は、例えば90%で
ある。半導体レーザ素子100で生成されたレーザ光
は、矢印60で示されるように、前端面32から出射す
る。
【0031】MQW−SCH層14と第1上部クラッド
層16との界面、より具体的には、第4SCH層52
(図2参照)と第1上部クラッド層16との界面には、
回折格子36が設けられている。回折格子36は、第4
SCH層52の上面に設けられた正弦波形状の構造であ
る。
【0032】ここで、図4に示す如く、回折格子36の
形状は、水平方向(図1,4のy方向)に沿って一様で
あり、且つ、回折格子36の幅Gは、MQW−SCH層
14と第1上部クラッド層16との界面幅M(すなわ
ち、界面の最大幅であり且つ界面におけるメサ幅)より
小さくされている。また、回折格子36は、活性層45
の全長に沿って形成されている。さらに、回折格子36
は、均一の周期(図3の符号Λ)と均一の深さ(図3の
符号a)を有する均一回折格子である。つまり、回折格
子36は、位相シフトを有さない。本実施形態では、回
折格子36の深さa(回折格子36の最上部と最下部と
の距離)は、例えば従来と同等の100〜200Å程
度、好ましくはそれ未満である。
【0033】かかる回折格子36はレーザ共振器を構成
する。したがって、回折格子36の長さは共振器長に等
しい。本実施形態では、回折格子36の長さは、例えば
900μmであるが、半導体レーザ素子100の組成に
よっては、共振器長が600μmを超えることが好まし
く、特に共振器長が900〜1800μmであると一層
好ましい。
【0034】再び図2を参照し、MQW−SCH層14
を構成する各層の寸法の一例について説明する。第1お
よび第2SCH層42、44の厚さは、それぞれ150
Åである。各バリア層46の厚さは100Åであり、各
井戸層48の厚さは50Åである。第3SCH層50の
厚さは150Åであり、第4SCH層52の基本厚は1
00Åである。上述のように、第4SCH層52の上面
の一部には、正弦波状の回折格子36が設けられてい
る。したがって、回折格子36が設けられている部分の
第4SCH層52の厚さは、縦方向(図示z方向)に沿
って周期的に変動する。
【0035】なお、本明細書において「基本厚」は、第
4SCH層52のうち回折格子36を除いた部分の厚さ
をいう。これは、第4SCH層52の下面から回折格子
36の最下部(最深部)までの距離に当たる。基本厚
は、縦方向の位置によらず一定である。基本厚をd、回
折格子36の深さをaとすると、第4SCH層52の厚
さは、縦方向に沿ってdとd+aの間で周期的に変動す
る。
【0036】また、活性層45の幅を調整すると、横モ
ードを単一にできる。横方向のシングルモード化のため
には、活性層45の幅は約1〜約5μmであることが好
ましい。本実施形態では、活性層45の幅は、例えば約
4μmである。横モードが単一であると、ファーフィー
ルドパターン(FFP)が安定するので、半導体レーザ
素子100と光ファイバと結合が容易になる。これは、
半導体レーザ素子100をラマンアンプの励起光源とし
て使用するうえで有益である。
【0037】さらに、半導体レーザ素子100の規格化
結合係数は、全体として0.8未満であることが望まし
い。先に述べたように、規格化結合係数は、理論的には
κLで表される。ここで、κは結合係数であり、Lは回
折格子36の長さである。上述のように、回折格子36
は共振器を構成するので、Lは共振器長に等しい。
【0038】この規格化結合係数κLは、半導体レーザ
素子100の出力光のスペクトラムを測定することによ
り求められる。具体的には、スペクトラムからストップ
バンド(「禁止帯」とも呼ばれる)の幅を求め、そのス
トップバンド幅と、モード結合方程式に基づく発振条件
とを用いれば、κLの値を求めることができる。発振条
件を表す式は、DFBレーザと同じである。なお、規格
化結合係数および発振条件は、「半導体レーザの基礎」
(栖原 利明著、共立出版)や「半導体レーザ」(応用
物理学会 編/伊賀健一 編著、オーム社)に説明され
ている。
【0039】このような構成を有する半導体レーザ素子
100に対し、上部電極層28および下部電極層30を
介して順方向電圧を印加すると、半導体レーザ素子10
0はレーザ発振をする。レーザ発振の原理は、DFBレ
ーザと同じである。すなわち、回折格子36がレーザ共
振器として機能することにより誘導放出が促進され、レ
ーザ発振が引き起こされる。図7は、半導体レーザ素子
100の発光スペクトラムの一例を示す。同図に示され
るように、半導体レーザ素子100はマルチモード発振
(縦多モード発振)する。
【0040】なお、本発明の半導体レーザ素子の発光ス
ペクトラムに含まれる縦モードの数は任意であり、特に
上限を定める必要はない。また、発光スペクトラム幅
は、約10nm以下であることが好ましい。ここで、
「発光スペクトラム幅」は、発光スペクトラムに含まれ
る複数の縦モードの包絡線の幅を指す。本発明の半導体
レーザ素子では、規格化結合係数κLが小さいほど発光
スペクトラム幅が広がる。
【0041】このように構成された半導体レーザ素子1
00によれば、回折格子36の幅Gが、MQW−SCH
層14と第1上部クラッド層16との界面幅Mより小さ
くされているので、回折格子36の深さaを従来よりも
浅くすることなく、素子全体の規格化結合係数κLを有
意に低下させることができる。よって、規格化結合係数
κLを低下させるべく極めて浅い凹凸を有する回折格子
を界面全体の広い面積に均一に形成する場合に比して、
生産性を向上できる。また、界面幅Mに対して、この幅
Gを適宜選択することにより、深さaに応じた所望の規
格化結合係数κLを簡便に達成できる。よって、素子の
規格化結合係数κLの制御性に優れたものとなる。
【0042】そして、かかる半導体レーザ素子100
は、ラマンアンプの順方向励起光源として好適に使用で
きる。これには、四つの理由がある。第1に、半導体レ
ーザ素子100のレーザ発振光は光ファイバ内で散乱し
にくい。これは、半導体レーザ素子100がマルチモー
ド発振するからである。第2に、半導体レーザ素子10
0は、外部ファイバブラッググレーティング共振器型レ
ーザに比べて、相対雑音強度(RIN)が小さい。これ
は、半導体レーザ素子100は内部共振器型であるた
め、共振器内に外乱が入り込みにくいからである。第3
に、半導体レーザ素子100は優れた波長安定性を有す
る。半導体レーザ素子100のレーザ発振波長は、回折
格子36の周期によって実質的に定まる。したがって、
既存のDFBレーザと同様に、波長の電流依存性・温度
依存性が小さい。第4に、半導体レーザ素子100は、
ラマンアンプの順方向励起光源として十分に狭い線幅を
有する。これは、回折格子36の回折作用により、発振
波長が限定されるからである。
【0043】図5は、本発明に係る第2実施形態の半導
体レーザ素子200の構造を示す縦断面図(図1におけ
る5−5線断面図に相当)であり、図6は、図5の4−
4線に沿った、半導体レーザ素子200の平面断面図で
ある。半導体レーザ素子200は、回折格子36の代わ
りに回折格子37が形成されていること以外は、図1に
示す半導体レーザ素子100と同等の構成を有するもの
である。
【0044】この回折格子37は、MQW−SCH層1
4と第1上部クラッド層16との界面において、活性層
45の延在方向(全長方向)の少なくとも一部に形成さ
れており、具体的には、後端面34から素子の中央部付
近の手前までの第4SCH層52の上面に均一格子が形
成されたものである。
【0045】このような構成を有する半導体レーザ素子
200においても、界面の一部に回折格子37が設けら
れることにより、光の閉じ込め性が低下して格子密度が
減少するので、回折格子と光との相互作用が減弱され
る。よって、素子全体の規格化結合係数κLが平均化さ
れて有意に低下する。したがって、回折格子37の深さ
aを浅くすることなく、前出の図7に示されるのと同様
な発光スペクトラムを有する所望のマルチモード発振を
実現できる。また、HRコートが施された後端面34側
に回折格子37を設けることにより、矢印60で示され
る光出力が向上する。
【0046】なお、半導体レーザ素子200において
も、活性層45の幅を好ましくは約1〜約5μmとする
ことにより、横モードの単一化が可能である。こうすれ
ば、ファーフィールドパターン(FFP)が安定化させ
得るので、半導体レーザ素子200と光ファイバとの結
合が容易となり、ラマンアンプの励起光源として有用で
ある。
【0047】図8は、本発明に係る第3実施形態の半導
体レーザ素子300の構造を示す平面断面図であり、図
5における6−6線断面図に相当するものである。半導
体レーザ素子300は、基板10の上面に積層された下
部クラッド層12、MQW−SCH層14、および第1
上部クラッド層16のメサ構造の形状が異なること、お
よび、回折格子37の代わりに回折格子38が形成され
ていること以外は、図5および6に示す半導体レーザ素
子200と同等に構成されたものである。
【0048】すなわち、回折格子38は、MQW−SC
H層14と第1上部クラッド層16との界面において、
活性層45の延在方向(全長方向)の少なくとも一部、
具体的には、後端面34から素子の中央部付近の手前ま
での第4SCH層52の上面部位に形成されている。
【0049】また、メサ構造の全長のうち回折格子38
が設けられている部位に相当する深さ方向(x方向)に
延在する部分が、回折格子38が設けられていない部位
に相当する部分よりも狭小に形成されている。つまり、
回折格子38が設けられている領域のメサ幅(ストライ
プ幅)が短縮されている。より具体的には、後端面34
側に位置する回折格子38のメサ幅Hが、前端面32側
のメサ幅Mよりも小さくされている。
【0050】このような構成を有する半導体レーザ素子
300においては、回折格子38が形成されている部位
の活性層自体の容積領域が減少するので、活性層を伝播
する光の拡がりが縮小されて光の閉じ込め性が弱まる傾
向となる。したがって、前述の半導体レーザ素子10
0,200と同等またはそれ以上に規格化結合係数κL
の低減効果が向上される。なお、半導体レーザ素子30
0においても、活性層45の幅を好ましくは約1〜約5
μmとすることにより、横モードの単一化が可能であ
り、これにより、FFPの安定化が図られ、半導体レー
ザ素子300と光ファイバとの結合が容易となってラマ
ンアンプの励起光源として有用である。
【0051】以上、本発明をその実施形態に基づいて詳
細に説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定され
るものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲
で様々な変形が可能である。例えば、形成加工上の不都
合が生じない程度に回折格子36の深さaを従来よりも
小さくしても構わない。こうすれば、回折格子の厚さを
薄くする効果が重畳され、規格化結合係数κLをより一
層低下させることができる。
【0052】また、第4SCH層52と上部クラッド層
16との屈折率差を一層小さくしてもよい。例えば、第
4SCH層52の屈折率を第1実施形態と異なり3.1
26未満としてもよい。この場合、上部クラッド層16
の屈折率を第1実施形態と同じく3.100とすれば、
第4SCH層52と上部クラッド層16との屈折率差は
0.026未満となる。こうしても、かかる屈折率差を
小さくする効果が重畳され、規格化結合係数κLをより
一層低下させることができる。また、この場合、回折格
子36,37,38の深さaをより一層厚くして(例え
ば300Å程度として)、生産制御性の一層の向上を図
り得る。
【0053】さらに、第4SCH層52の基本厚を一層
大きくしてもよい。例えば、第4SCH層52の基本厚
を7700Å超とすることも可能である。こうしても、
第4SCH層52を厚くする効果が重畳され、規格化結
合係数κLをより一層低下させることができる。また、
この場合、回折格子36,37,38の深さaをより一
層厚くして(例えば300Å程度として)、生産制御性
の一層の向上を図り得る。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の半導体レ
ーザ素子によれば、上部分離閉じ込めヘテロ構造層と上
部クラッド層との界面の一部に均一回折格子が設けられ
ているので、素子全体の規格化結合係数が十分に小さく
され、これによりマルチモード発振が可能となる。よっ
て、光ファイバ内で散乱され難いレーザ光を発する。ま
た、素子内部に設けられた回折格子によってレーザ共振
器が構成されているので、RINが低く、波長安定性に
優れている。したがって、本発明の半導体レーザ素子
は、ラマンアンプの順方向励起光源として好適に使用で
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1実施形態の半導体レーザ素子
100の構造を示す斜視図である。
【図2】MQW−SCH層14のバンドギャップ波長の
分布を示す図である。
【図3】半導体レーザ素子100の縦断面図である。
【図4】半導体レーザ素子100の平面断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の半導体レーザ素子
の構造を示す縦断面図である。
【図6】半導体レーザ素子200の平面断面図である。
【図7】半導体レーザ素子100の発光スペクトラムを
示す図である。
【図8】半導体レーザ素子300の平面断面図である。
【符号の説明】
10…基板、12…下部クラッド層、14…MQW−S
CH層、16…第1上部クラッド層、18…埋め込み
層、20…電流ブロック層、22…第2上部クラッド
層、24…コンタクト層、28…上部電極層、30…下
部電極層、36,37,38…回折格子、42…第1S
CH層、44…第2SCH層、45…活性層、46…バ
リア層、48…井戸層、50…第3SCH層、52…第
4SCH層、100,200,300…半導体レーザ素
子。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の導電型の半導体からなる基板と、 前記基板の上面側に設けられ、第1導電型の半導体から
    なる下部クラッド層と、 前記下部クラッド層の上に設けられた下部分離閉じ込め
    ヘテロ構造層と、 前記下部分離閉じ込めヘテロ構造層の上に設けられ、多
    重量子井戸構造を有する活性層と、 前記活性層の上に設けられた上部分離閉じ込めヘテロ構
    造層と、 前記上部分離閉じ込めヘテロ構造層の上面に被着され、
    前記第1導電型と異なる第2の導電型の半導体からなる
    上部クラッド層と、 前記上部クラッド層の上に設けられた上部電極と、 前記基板の下面側に設けられた下部電極と、を備え、 前記上部分離閉じ込めヘテロ構造層と前記上部クラッド
    層との界面の一部に、前記活性層の延在方向に沿って均
    一回折格子が設けられており、 発振縦モードが2本以上の発光スペクトラムを有する半
    導体レーザ素子。
  2. 【請求項2】 前記均一回折格子の少なくとも一部が、
    前記界面の最大幅よりも小さい幅を有するように設けら
    れて成る、請求項1記載の半導体レーザ素子。
  3. 【請求項3】 前記活性層の幅が部分的に狭くされて成
    る、請求項1記載の半導体レーザ素子。
  4. 【請求項4】 無反射コートが施された前端面と、 前記前端面に対向し、高反射コートが施された後端面
    と、を更に備える請求項1記載の半導体レーザ素子。
  5. 【請求項5】 前記基板、下部クラッド層および上部ク
    ラッド層はInPから構成され、 前記下部分離閉じ込めヘテロ構造層、活性層、および上
    部分離閉じ込めヘテロ構造層はInGaAsPから構成
    されている、請求項1記載の半導体レーザ素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013168513A (ja) * 2012-02-15 2013-08-29 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> 半導体レーザおよび光半導体装置

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