JP2003239189A - 工業用多層織物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 織物表面に部分的な凹みの発生がなく、ろ水
性、安定性、表面平滑性に優れた工業用織物を提供す
る。 【構成】 上面側層と走行面側層を備えた、工業用多層
織物であって、上面側経糸の一部または全部を経糸地糸
接結糸とし、経糸地糸接結糸を２本１組で配置し、２本
の経糸地糸接結糸が１本の走行面側経糸を挟んでどちら
か一方が上面側表面に現れて上面側緯糸と織りなし上面
側表面に実質上面側経糸１本分の組織を形成する組織と
し、走行面側層では組を形成する２本の経糸地糸接結糸
を１本の走行面側経糸を挟んでその両側に隣接配置し、
上面側表面では組を形成する２本の経糸地糸接結糸が互
いに接近して走行面側経糸のほぼ真上で実質上面側経糸
１本分の組織を形成することを特徴とする工業用多層織
物である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は製紙用織物、搬送ベ
ルト、ろ布等の工業用織物に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来から工業用織物としては経糸、緯糸
で製織した織物が広く使用されており、例えば製紙用ワ
イヤーや搬送用ベルト、ろ布等その他の多くの分野で使
用されており、用途や使用環境に適した織物特性が要求
されている。特に織物の網目を利用して原料の脱水等を
行う製紙工程で使用される抄紙用ワイヤーでの要求は厳
しく、紙に織物のワイヤーマークを転写することのない
表面性に優れた織物、また過酷な環境下においても好適
に使用できる程度の剛性を持ち合わせたもの、そして良
好な紙を製造するために必要な条件を長期間持続するこ
とのできる織物が要求されている。その他にも繊維支持
性、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、耐摩耗性、
寸法安定性、走行安定性等が要求されている。さらに近
年では抄紙マシンが高速化しているため、それに伴い抄
紙用ワイヤーへの要求も一段と厳しいものとなってい
る。このように工業用織物の中でも要求が厳しい抄紙用
織物について説明すればほとんどの工業用織物の要求と
その解決について理解できるので、以下抄紙用織物を代
表して本発明を説明する。

【０００3】例えば、抄紙スピードが高速になると必然
的に脱水スピードが高速になり、脱水力を強力にする必
要がある。それによって当然繊維や填料等の抜け、ワイ
ヤーマークの発生は顕著になるため、さらなる繊維支持
性、表面性の改良が必要となる。また、抄紙用織物に湿
紙のくい込みが大きくなったり、繊維のささり込みが発
生すると湿紙をフェルトへ移送する場合の湿紙剥離性が
悪くなるという問題も発生する。織物上に残って形成さ
れた湿紙は脱水力によって、織物表面に押し付けられる
ため、糸が存在している部分では糸が湿紙にくい込み、
逆に糸が存在しない網目間では湿紙が網目にくい込んで
湿紙表面上に糸と網目のマークを発生させるためであ
る。ワイヤーマークを完全になくすことは不可能である
が、これを極力小さく目立たなくするためには織物の上
層表面を細かくし、表面平滑性、及び繊維支持性の向上
を図らなくてはならない。しかし、表面性や繊維支持性
を重視した目の細かい織物は、基本的に線径の小さい糸
で製織されているため耐摩耗性には劣っていた。また、
抄紙用織物は高速で走行するためマシンと接触する側の
走行面側ではロール等との摩擦によって織物が次第に摩
耗していく現象がみられ、摩耗によって寿命が尽きてし
まうこともある。耐摩耗性を向上させるには織物組織を
緯糸摩耗型の組織にしたり、糸の材質を変更したりと様
々な対策が必要とされ、特に線径の大きい糸を用いるこ
とで耐摩耗性を付与する方法が一般的に用いられてい
る。しかし、線径の大きい糸は耐摩耗性は向上するもの
の優れた表面性を得ることは困難であった。

【０００４】表面性と耐摩耗性の両方の問題を解決する
ために、上面側層と走行面側層にそれぞれ別の経糸、緯
糸を用いて構成した２枚の織物を使用し、両層の織物を
接結糸によって一体化させた２層織物が用いられてき
た。この方法はそれぞれに要求される性能に応じた織物
を採用できるという効果があった。上面側層に線径の小
さい経糸、緯糸を用いて緻密な上層面を形成し、走行面
側層に線径の大きい経糸、緯糸を使用して耐摩耗性の大
きい走行面を形成した。接結糸には表面性を低下させな
いために一般的に上面側経糸、上面側緯糸より小径の糸
が使用された。上面側層組織は緻密な表面を形成するた
めに平織りが使用されることが多いが、実際には２つの
層を織り合わせるために接結糸が用いられるので、実質
平織り表面に接結糸が所々に配置された表面が形成され
ることとなる。接結糸はこのように表面に現れる部分も
存在するため、表面平滑性の問題から線径のあまり大き
い糸を使用することは好ましくはなかった。また、通常
製紙用織物としては使用時には経方向に張力が掛けられ
ることが多く、経方向の糸は常に張力が掛けられている
状態であるので織物の走行によって経糸がゆるみ移動す
ることはほとんどないが、製織性や繊維支持性等の問題
から緯糸間に配置されることの多い接結糸では張力が掛
かると伸びたり、上面側層と走行面側層の間で接結糸が
揉まれて内部摩耗が発生し、織物間に隙間が発生したり
分離してしまうという問題が生じることがあった。これ
は無端状ベルトがいくつかのロールに掛けられて走行し
ているためであり、ロールに織物が接触する部分ではロ
ールの弧に沿って２層織物が湾曲し織物の各層で周長差
が生じる。それによって各層を織り合わせている接結糸
は揉まれ、内部摩耗が発生するのである。内部摩耗は表
面性向上のために使用されている線径が小さく強度の低
い接結糸でよく見受けられる。線径の小さい接結糸のみ
での上面側層、走行面側層の接結は接結力が不十分であ
った。また接結糸は２枚の織物を連結するために上面側
層の糸に絡み、接結力によって糸を引き込むために上面
側表面に凹みを与えて織物の表面性を悪化させてしまう
という問題もあった。そこで、経方向の糸に上面側表面
を形成しつつも上面側層と走行面側層を織り合わせる経
糸地糸接結糸を用いた多層織物の開発もされてきた。上
面側層では上面側表面を形成する経糸に上面側経糸と経
糸地糸接結糸を組み合わせて配置し、上面側緯糸と織り
合わせて上面側表面を形成し、走行面側層は走行面側経
糸と走行面側緯糸によって形成した。さらに接結力の向
上や目開きの均一化を目的として、上面側層を形成する
経糸の全てを経糸地糸接結糸とした織物も開発された。
しかし、従来の該織物においては１本の走行面側経糸の
隣に２本１組の経糸地糸接結糸が配置される構造となる
ため、走行面側経糸と経糸地糸接結糸が上下に配置され
ることはなく、これらの上下の重なりがとれずろ水性が
低下するという問題があった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の問題に
鑑みて、上面側緯糸と織り合わされて上面側表面の一部
を形成しつつ上面側層と走行面側層を連結する経糸地糸
接結糸を２本１組で配置し、走行面側層では１本の下面
側経糸を挟んでその両側に組を形成する２本の経糸地糸
接結糸を隣接配置し、上面側表面は組を形成する２本の
経糸地糸接結糸が互いに接近して走行面側経糸のほぼ真
上で実質上面側経糸１本分の組織を形成する構造とし
た、経糸地糸接結糸と走行面側経糸の上下方向の重なり
が良好なろ水性、接結力、表面平滑性に優れた工業用多
層織物を提供しようとするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は 「１． 少なくとも上面側層と走行面側層を備え、上面
側層および走行面側層を織りなす経糸地糸接結糸により
上面側層と走行面側層とを連結してなる工業用多層織物
において、上面側経糸の一部または全部を経糸地糸接結
糸とし、経糸地糸接結糸を２本１組で配置し、２本の経
糸地糸接結糸が１本の走行面側経糸を挟んでどちらか一
方が上面側表面に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表
面に実質上面側経糸１本分の組織を形成する組織とし、
走行面側層では組を形成する２本の経糸地糸接結糸を１
本の走行面側経糸を挟んでその両側に隣接配置し、上面
側表面では組を形成する２本の経糸地糸接結糸が互いに
接近して走行面側経糸のほぼ真上で実質上面側経糸１本
分の組織を形成することを特徴とする工業用多層織物。 ２． ２本１組の経糸地糸接結糸が、１本の上面側緯糸
の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次い
で１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次い
で１本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナックル
を形成し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間
を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下側を通過し、
次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過する
組織の経糸地糸接結糸を２本組み合わせて形成した接結
糸である、１項に記載された工業用多層織物。 ３． ２本１組の経糸地糸接結糸が、１本の上面側緯糸
の上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次い
で１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次い
で１本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナックル
を形成し、次いで３本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間
を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下側を通過し、
次いで３本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過する
組織の経糸地糸接結糸と、１本の上面側緯糸の上側を通
過して上面側表面にナックルを形成し、次いで１本の上
面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで１本の上
面側緯糸の上側を通過して上面側にナックルを形成し、
次いで１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、
次いで１本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナッ
クルを形成し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸
の間を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下側を通過
し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過
する組織の経糸地糸接結糸を組み合わせて形成した接結
糸である、１項に記載された工業用多層織物。 ４． ２本１組の経糸地糸接結糸の組み合わせ方を１組
ごとに左右逆に組み合わせた、１項に記載された工業用
織物。 ５． 経糸地糸接結糸が、走行面側経糸が走行面側緯糸
の下側を通過する位置で走行面側緯糸の下側を通過す
る、１項ないし４項のいずれか１項に記載された工業用
多層織物。 ６． 組を形成する２本の経糸地糸接結糸が同組織であ
る、１項ないし５項のいずれか１項に記載された工業用
多層織物。」に関する。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明の工業用織物は製紙用ワイ
ヤー、搬送用ベルト、ろ布等の工業用織物として使用す
るものであり、特にはユーザーからの要求の厳しい抄紙
用ワイヤーとしても好適に使用することができる。本発
明は少なくとも上面側層と走行面側層を備え、上面側層
および走行面側層を織りなす経糸地糸接結糸により上面
側層と走行面側層とを連結してなる工業用多層織物であ
り、上面側経糸の一部または全部を経糸地糸接結糸とし
た。経糸地糸接結糸は２本１組で配置し、２本の経糸地
糸接結糸のどちらか一方が上面側表面に現れて上面側緯
糸と織りなし上面側層に実質上面側経糸１本分の組織を
形成する組織とし、走行面側層では組を形成する２本の
経糸地糸接結糸を１本の走行面側経糸を挟んでその両側
に隣接配置し、上面側表面では組を形成する２本の経糸
地糸接結糸が互いに接近して走行面側経糸のほぼ真上で
実質上面側経糸１本分の組織を形成することを特徴とす
る工業用多層織物である。この多層織物は走行面側経糸
のほぼ真上に１組の経糸地糸接結糸が配置される構造と
なるため重なりがよく、ろ水性に優れた多層織物とする
ことができる。また上面側表面の一部を形成しつつ上面
側層と走行面側層を連結する経糸接結糸を用いているた
め接結力、表面平滑性にも優れたものとなった。

【０００８】従来の多層織物では２つの織物を連結する
接結糸に、上面側経糸、緯糸よりもはるかに線径が小さ
い上面側表面に突出等の影響を与えない程度の径の接結
糸を緯糸間に配置することが多かった。しかし、周知の
方法によって端部を織り継がれた無端状ベルトはいくつ
かのロールに掛けられて走行しているため、張力をかけ
られた織物がロールに接触する部分ではロールの弧に沿
って２層織物が湾曲することで曲率半径が異なるため織
物の各層で周長差が生じ、それによって各層を織り合わ
せている接結糸が揉まれ、織物間張力を受けると伸びて
ゆるみが生じ、内部摩耗が発生し、接結糸が切断したり
織物がずれてろ水性を低下させてしまうことがあった。
また、たとえ小径で接結力の小さい接結糸であっても２
つの織物を接結しているため、上面側層の糸の上側を通
ってから下側に潜るとき、接結糸が表面に現れる部分で
織物表面に凹みが発生し紙にワイヤーマークを与えてし
まうことがあった。

【０００９】そこで本発明の多層織物は上面側表面の一
部を形成しつつも上面側層と走行面側層を連結する経糸
地糸接結糸を織物走行方向に配置した。また、従来の経
糸地糸接結糸を用いた多層織物で問題となっていたろ水
性の悪さを、本発明では走行面側経糸のほぼ真上に経糸
地糸接結糸を配置した構造としたことで解決することが
できた。本発明では織物の走行方向に経糸地糸接結糸を
配置している構造であるが、経糸地糸接結糸によって織
物を接結することによる一番の効果は、従来の接結する
だけで表面組織形成に関与しない接結糸とは異なり、該
経糸地糸接結糸が織物表面の一部として機能するため局
所的な凹みの発生がないということである。経糸地糸接
結糸は経方向、つまり一般的にいう織物の走行方向に伸
びて常に張力がかけられた状態で使用されるため糸のた
るみの発生がなく、織物構造から見ても接結力が強い傾
向にある。

【００１０】本発明の多層織物は経糸地糸接結糸を２本
１組で配置し、走行面側層では１本の走行面側経糸を挟
んで組を形成する２本の経糸地糸接結糸がその両側に隣
接配置された組織であり、上面側層では２本の経糸地糸
接結糸が上面側表面に交互に現れて上面側緯糸と織りな
し実質上面側経糸１本分の組織を形成する。上面側表面
では組を形成する２本の経糸地糸接結糸が互いに接近し
て走行面側経糸のほぼ真上に配置され、実質上面側経糸
１本分の組織を形成している。従来の組を形成した経糸
地糸接結糸を用いた多層織物は、本発明の多層織物と同
じように上面側表面に交互に現れて上面側緯糸と織り合
わされて上面側表面の一部を形成しつつ、組になったも
う一方の経糸地糸接結糸が走行面側層と織り合わされて
２つの層を連結しているものもある。しかし、従来の織
物では組になった経糸地糸接結糸が隣接配置されてお
り、組になった経糸地糸接結糸がその他の糸と上下に重
なることはない。つまり、上面側層を形成する経糸の全
てが経糸地糸接結糸である場合や、上面側経糸の配置本
数が走行面側経糸に対して少ない場合では、走行面側経
糸は経糸地糸接結糸の間に配置されることとなり、それ
等が上下に配置されることはなく、それによってろ水空
間が塞がれてしまうためろ水性が低下することとなる。
ところが、本発明の多層織物においては走行面側では１
本の走行面側経糸を挟んで組になった経糸地糸接結糸が
配置されており、上面側表面では組を形成する２本の経
糸地糸接結糸が交互に上面側表面に現れ、互いに接近し
て走行面側経糸のほぼ真上に実質上経糸１本分の組織を
形成するような構造とした。このような構造とすること
で経糸地糸接結糸と走行面側経糸が上下に配置されるた
め経糸の重なりがよくなり、ろ水性悪化の問題を解決す
ることができた。

【００１１】本発明の好ましい実施例としては、２本１
組とした経糸地糸接結糸を１本の走行面側経糸を挟んで
両側に配置し、経糸地糸接結糸のうち１本の経糸地糸接
結糸が上面側表面を形成しているところの下側でもう一
方の経糸地糸接結糸が走行面側層を接結し、走行面側経
糸が走行面側緯糸の下側を通るところで、該走行面側経
糸に隣接する１本の経糸地糸接結糸が走行面側緯糸の下
側を通る構造とした。走行面側層では走行面側経糸とそ
れに隣接する１本の経糸地糸接結糸が並列して走行面側
緯糸の下側を通る構造とした。そのような構造とするこ
とで経糸地糸接結糸が移動しにくい構造となるため、安
定した織物を形成することができる。また、経糸地糸接
結糸の走行面側ナックルと走行面側経糸の走行面側ナッ
クルが隣接配置されることで、一般的に走行面側経糸よ
りも小径である経糸地糸接結糸の摩耗を軽減させる効果
もある。上面側表面においては組になった経糸地糸接結
糸が上面側表面に交互に現れて走行面側経糸のほぼ真上
で、互いに接近して実質１本分の上面側経糸のように機
能する。また上面側層を形成する経糸に上面側経糸と経
糸地糸接結糸の両方を用いる方法もある。経糸地糸接結
糸の配置割合を多くすることで接結力を向上させる効果
がある。織物を構成する上面側経糸、経糸地糸接結糸、
走行面側経糸等それぞれの組織は特に限定されていない
が、製紙用織物としては上面側層は湿紙に織物のマーク
を付与しにくい構造とすることが望ましく、また走行面
側層は織物の走行によって生じる摩耗に耐性のある構造
とすることが好ましい。走行面側では走行面側層に走行
面側経糸を配置し、その両側に組になった経糸地糸接結
糸を配置すればよい。組になった経糸地糸接結糸の組織
については同一であっても、異なっても構わない。上面
側表面を形成する経糸地糸接結糸は２本１組とし、紙に
マークを付与しない組織とすることが好ましい。例え
ば、経糸地糸接結糸を２本１組で組み合わせて平織を形
成する構造等が考えられる。織物表面を平織構造とする
と繊維支持点数が増加するため繊維支持性が向上し、ま
た織り目が細かくなるため表面平滑性にも優れるという
効果がある。また経糸地糸接結糸が異なる組織の場合、
それらを１組ごとに左右逆に組み合わせて配置してもよ
い。このような配置にすることで織物表面に現れる斜め
マークを崩すことができるため、織物表面性を重視する
製紙用織物等において好適である。走行面側経糸の組織
も特に限定されてはいないが、経糸地糸接結糸との組み
合わせ等によって適宜決定するとよい。

【００１２】本発明に使用される糸は用途、あるいは織
物上での各糸の機能によって選択すればよく、例えば、
モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤ
ーン、捲縮加工や嵩高加工等を施した一般的にテクスチ
ャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称
される加工糸、あるいはこれらを撚り合わせる等して組
み合わせた糸が使用できる。また、糸の断面形状も円形
だけでなく四角形状や星型等の短形状の糸や楕円形状、
中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自
由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレ
ンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロ、ア
ラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナ
フタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウー
ル、金属等が使用できる。もちろん、共重合体やこれら
の材質に目的に応じてさまざまな物質をブレンドしたり
含有させた糸を使用してもよい。抄紙用ワイヤーとして
は一般的には、上面側経糸、走行面側経糸、上面側緯糸
には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノ
フィラメントを用いるのが好ましい。また、経糸地糸接
結糸としては上面側経糸同様ポリエステルモノフィラメ
ントを用いるのが好ましい。上面側経糸と経糸地糸接結
糸の糸の種類や線径等は同じであっても、異なるもので
あってもよく、織物の性質や製織性等から随時選択でき
る。しかし、上面側経糸と経糸地糸接結糸では役割が異
なり、また経糸地糸接結は２本１組で経糸間に配置され
ることが多いことから、異なる糸を用いた方が好まし
い。また、耐摩耗性が要求される走行面側緯糸にはポリ
エステルモノフィラメントとナイロンモノフィラメント
を交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐
摩耗性を向上できるため好ましい。それぞれの線径につ
いても用途や適正に合わせて選択すればよく、一般的に
は上面側層を形成する上面側経糸、上面側緯糸には比較
的小径の糸を使用することが好ましく、走行面側層を形
成する走行面側経糸、走行面側緯糸には比較的大径の糸
を使用することが好ましい。また、２本１組で上面側表
面を形成しつつも上面側層と走行面側層を織り合わせる
経糸地糸接結糸は２本１組で使用されること等を考慮に
入れると上面側経糸よりも小径であるものが好ましい
が、用途や目的の物性等に合わせて適宜変更するとよ
い。

【００１３】

【実施例】発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を
参照して説明する。図１、２、３、４は本発明の実施例
の完全組織を示す意匠図である。完全組織とは、織物組
織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下
左右につながって織物全体の組織が形成される。意匠図
において、経糸はアラビア数字、例えば、１、２、３・
・・で示した。また、走行面側経糸の両側に配置されて
いる経糸地糸接結糸はアラビア数字の後ろにａ、ｂを付
した番号、例えば１ａ、１ｂ、２ａ、２ｂで示し、１ａ
と１ｂ、２ａと２ｂ・・・１０ａと１０ｂが組になって
いる。緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば１
´、２´、３´で示した。それぞれ上面側緯糸と走行面
側緯糸が上下に配置されている。×印は上面側経糸、ま
たは経糸地糸接結糸が上面側緯糸の上側を通ってナック
ルを形成していることを示し、○印は走行面側経糸が走
行面側緯糸の下側に位置していることを示し、△印は経
糸地糸接結糸が走行面側緯糸の下側に位置していること
を示す。本実施例では上面側緯糸と走行面側緯糸、上面
側経糸と走行面側経糸が意匠図上において、便宜上上下
に重なって配置されているが、実際の織物ではずれて配
置されることがある。また走行面側経糸と経糸地糸接結
糸は実際には上下に重なって配置されている部分がある
が、意匠図上では横に並列に示した。

【００１４】実施例１ 図１の意匠図において本実施例は経糸地糸接結糸、上面
側緯糸、走行面側経糸、走行面側緯糸からなる１０シャ
フトの２層織物である。上面側層を形成する経糸の全て
を経糸地糸接結糸としたため接結力に優れ、また上面側
表面を形成する経方向の糸が１種類であるため表面の目
開きを均一にすることもでき、表面性の優れた織物とす
ることができる。図１の実施例は上面側経糸の全てを経
糸地糸接結糸とし、経糸地糸接結糸を２本１組で配置し
て、２本の経糸地糸接結糸のどちらか１本が緯糸１本お
きに上面側表面に現れて上面側緯糸と織りなし上面側表
面に実質上面側経糸１本分の平織を形成する組織とし、
走行面側層では組を形成する２本の経糸地糸接結糸を１
本の走行面側経糸を挟んでその両側に隣接配置し、上面
側表面では組を形成する２本の経糸地糸接結糸が互いに
接近して走行面側経糸のほぼ真上で実質上面側経糸１本
分の平織組織を形成する組織とした。本実施例では２本
１組の経糸地糸接結糸１ａと１ｂ，２ａと２ｂ，３ａと
３ｂ，４ａと４ｂ，５ａと５ｂ，６ａと６ｂ，７ａと７
ｂ，８ａと８ｂ，９ａと９ｂ，１０ａと１０ｂを経方向
に配置し、走行面側層では１組の経糸地糸接結糸間に走
行面側経糸１，２，３，４，５，６，７，８を配置し
た。１´，２´，３´，４´，５´，６´，７´，８
´，９´，１０´は緯糸であり、上面側緯糸、走行面側
緯糸が上下に配置されている。上面側層では２本１組の
経糸地糸接結糸のどちらか一方が緯糸１本置きに上面側
表面に現れて、上面側緯糸と織り合わされて経糸１本分
の平織組織を形成している。走行面側層では走行面側経
糸の両側に組になった２本の経糸地糸接結糸をそれぞれ
１本づつ配置した。そして組になった経糸地糸接結糸の
うち一方が上面側表面を形成しているところの下側でも
う一方の経糸地糸接結糸が走行面側緯糸の下側を通過し
て、上層と下層を織り合わせる組織とした。走行面側経
糸は４本の走行面側緯糸の上側を通過した後、１本の走
行面側緯糸の下側を通過する組織とし、走行面側経糸の
走行面側ナックルを１サイクルで２回繰り返した組織で
ある。２本１組の経糸地糸接結糸も走行面側経糸の両側
でそれぞれ１回ずつ、走行面側経糸が走行面側緯糸の下
側を通るところで同じ走行面側緯糸の下側を通る走行面
側ナックルを形成した。走行面側経糸とそれに隣接する
１本の経糸地糸接結糸が並列して走行面側緯糸の下側を
通る構造とすることで、経糸地糸接結糸の移動がなく安
定した織物とすることができる。また比較的小径の経糸
地糸接結糸の摩耗を軽減させることができる。またそれ
ぞれの経糸地糸接結糸は２本１組で交互に上面側表面に
現れて、互いに接近して走行面側経糸のほぼ真上に配置
し１本の上面側経糸のように機能するため、表面性、ろ
水性に優れた織物を提供することができる。

【００１５】図１は本発明の実施例の一つであり、異な
る組織の経糸地糸接結糸を２本１組で配置し、走行面側
経糸の両側に組になった経糸地糸接結糸を配置したもの
である。２本の経糸地糸接結糸１ａは、１本の上面側緯
糸１´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、
１本の上面側緯糸２´と走行面側緯糸２´の間を通り、
次いで１本の上面側緯糸３´の上側を通って上面側表面
にナックルを形成し、次いで３本の上面側緯糸４´，５
´，６´と走行面側緯糸４´，５´，６´の間を通り、
そして１本の走行面側緯糸７´の下側を通り、次いで３
本の上面側緯糸８´，９´，１０´と走行面側緯糸８
´，９´，１０´の間を通る組織である。それと対にな
る経糸地糸接結糸１ｂは１本の上面側緯糸１´と走行面
側緯糸１´の間を通り、次いで１本の走行面側緯糸２´
の下側を通り、２本の上面側緯糸３´，４´と走行面側
緯糸３´，４´の間を通り、次いで１本の上面側緯糸５
´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、次い
で１本の上面側緯糸６´と走行面側緯糸６´の間を通
り、次いで１本の上面側緯糸７´の上側を通って上面側
表面にナックルを形成し、１本の上面側緯糸８´と走行
面側緯糸８´の間を通り、次いで１本の上面側緯糸９´
の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、次いで
１本の上面側緯糸１０´と走行面側緯糸１０´の間を通
る組織である。これらは意匠図上においては、１本の走
行面側経糸を挟んで離れて配置されているが、実際の織
物では上面側層では、経糸地糸接結糸１ａは右側に配置
されている走行面側経糸１の上側に、そして経糸地糸接
結糸１ｂは左側に配置されている走行面側経糸１の上側
に配置され、１本の上面側緯糸の上側、１本の上面側緯
糸の下側・・・と交互に織り合わされて２本１組で上面
側表面に実質上面側経糸１本分の平織組織を形成してい
る。その他の２ａと２ｂ、３ａと３ｂ・・・１０ａと１
０ｂについても同様で、異なる組織の経糸地糸接結糸を
組み合わせて織物表面に平織を形成しつつ、上面側層と
走行面側層を織り合わせる組織とした。１本の経糸地糸
接結糸が上面側表面を形成しているところの下側で、も
う一方の経糸地糸接結糸が走行面側層と織り合わされて
いるため、経糸地糸接結糸１ａが上面側緯糸１´，２
´，３´と織り合わされているところの下側では、対に
なった経糸地糸接結糸１ｂが走行面側緯糸２´と織り合
わされている。同様に、経糸地糸接結糸１ｂが上面側緯
糸５´，６´，７´，８´，９´と織り合わされて上側
表面を形成しているところの下側では、対になった経糸
地糸接結糸１ａが走行面側緯糸７´と織り合わされてい
る。また、走行面側経糸が走行面側緯糸の下側を通ると
ころで、それに隣接配置した経糸地糸接結糸が同じ走行
面側緯糸の下側を通る構造とした。つまり走行面側経糸
１においては、走行面側経糸１が走行面側緯糸２´の下
側を通るところで、それに隣接配置する経糸地糸接結糸
１ｂも走行面側緯糸２´の下側を通る組織とし、走行面
側経糸１が走行面側緯糸７´の下側を通るところで、そ
れに隣接配置する経糸地糸接結糸１ａも走行面側緯糸７
´の下側を通る組織とした。このように経糸地糸接結糸
の走行面側ナックルを走行面側経糸の走行面側ナックル
の隣に配置した構造とすると、１本の緯糸によって連続
する２本の経方向の糸が織り合わされることとなるため
経糸地糸接結糸が緯方向に移動しにくい安定した織物を
供給することができる。また、一般的に走行面側経糸よ
りも線径の小さい経糸地糸接結糸の摩耗を軽減させる効
果もある。緯方向には上面側緯糸、走行面側緯糸が上下
同じ本数で配置されており、走行面側層は織物の走行に
よって生じる摩耗に耐え得る緯糸摩耗型組織とした。走
行面側緯糸１´では４本の走行面側経糸１０，１，２，
３の下側を通った後、１本の走行面側経糸４と、それに
隣接する経糸地糸接結糸４ｂの上側を通り、次いで４本
の走行面側経糸５，６，７，８の下側を通った後、１本
の走行面側経糸９と、それに隣接する経糸地糸接結糸９
ａの上側を通り、走行面側緯糸が経糸４本分のロングナ
ックルを形成する組織とした。その他の走行面側緯糸も
同様に緯糸摩耗型組織とした。

【００１６】実施例２ 図２の実施例は本発明の他の実施例であり、組になった
経糸地糸接結糸の組織が同じである８シャフトの多層織
物の意匠図である。本実施例の経糸、緯糸の配置等は実
施例１と同じである。上面側表面では２本１組の経糸地
糸接結糸のどちらか一方が緯糸１本おきに上面側表面に
現れて、上面側緯糸と織り合わされて経糸１本分の平織
組織を形成している。走行面側層では走行面側経糸の両
側に組になった２本の経糸地糸接結糸をそれぞれ１本づ
つ配置した。そして組になった経糸地糸接結糸のうち一
方が上面側表面を形成しているところの下側でもう一方
の経糸地糸接結糸が走行面側緯糸の下側を通過して、上
層と下層を織り合わせる組織とした。走行面側経糸は３
本の走行面側緯糸の上側を通過した後、１本の走行面側
緯糸の下側を通過する組織とし、走行面側経糸の走行面
側ナックルが、１サイクルで２回配置される組織を繰り
返した組織である。組になった経糸地糸接結糸は上面側
表面で互いに接近して走行面側経糸のほぼ真上に１本の
上面側側経糸のように配置されることとなる。経糸が上
下に重なって配置されるためろ水性に優れた織物とな
る。また、走行面側表面では走行面側経糸の走行面側ナ
ックルと経糸地糸接結糸の走行面側が並列配置される組
織とすることで経糸地糸接結糸が移動しにくくなり、一
般的に走行面側経糸よりも小径の経糸地糸接結糸の摩耗
を軽減させることができるという効果がある。経糸地糸
接結糸は同じ組織のものを２本組み合わせた組織であ
り、走行面側経糸の両側に組になった経糸地糸接結糸を
配置した。経糸地糸接結糸の組織は、経糸地糸接結糸１
ａは、１本の上面側緯糸１´の上側を通って上面側表面
にナックルを形成し、１本の上面側緯糸２´と走行面側
緯糸２´の間を通り、次いで１本の上面側緯糸３´の上
側を通って上面側表面にナックルを形成し、次いで２本
の上面側緯糸４´，５´と走行面側緯糸４´，５´の間
を通り、そして１本の走行面側緯糸６´の下側を通り、
次いで２本の上面側緯糸７´，８´と走行面側緯糸７
´，８´の間を通る組織である。それと対になる経糸地
糸接結糸１ｂも同じ組織であり、一方が上面側層を形成
しているところの下でもう一方が走行面側層を織り合わ
せており、これらを組み合わせて走行面側経糸の上側で
１本の上面側経糸のように上面側表面に平織組織を形成
している。その他の２ａと２ｂ、３ａと３ｂ・・・１０
ａと１０ｂについても同様で、組織が同じである経糸地
糸接結糸を組み合わせて織物表面に平織を形成しつつ、
上面側層と走行面側層を織り合わせ、接結力、表面平滑
性、安定性に優れた織物とした。

【００１７】実施例３ 図３の実施例は本発明の他の実施例であり、組になった
経糸地糸接結糸の組織が異なり、また上面側表面を形成
する経糸が上面側経糸と経糸地糸接結糸である１０シャ
フトの多層織物の意匠図である。上面側表面では２本１
組の経糸地糸接結糸がどちらか一方が緯糸１本おきに表
面に現れて、上面側緯糸と織り合わされて経糸１本分の
平織組織を形成している。そしてその横では１本の上面
側経糸が上面側緯糸と織り合わされて上面側表面に平織
組織を形成している。これら２種類の経糸によって上面
側表面に全体として平織組織を形成する。走行面側層で
は走行面側経糸の両側に組になった２本の経糸地糸接結
糸をそれぞれ１本づつ配置した。そして組になった経糸
地糸接結糸のうち一方が上面側表面を形成しているとこ
ろの下側でもう一方の経糸地糸接結糸が走行面側緯糸の
下側を通過して、上層と下層を織り合わせる組織とし
た。走行面側経糸は４本の走行面側緯糸の上側を通過し
た後、１本の走行面側緯糸の下側を通過する組織とし、
走行面側経糸の走行面側ナックルが１サイクルで２回配
置される組織を繰り返した組織である。組になった経糸
地糸接結糸は上面側表面で互いに接近して走行面側経糸
のほぼ真上に１本の上面側経糸のように配置されること
となる。経糸が上下に配置されることでろ水性を向上さ
せることができる。また、走行面側表面では走行面側経
糸の走行面側ナックルと経糸地糸接結糸の走行面側が並
列配置され組織とするることで、経糸地糸接結糸の移動
が起こりにくくなり、一般的に走行面側経糸よりも小径
の経糸地糸接結糸の摩耗を軽減させることができる効果
がある。また本発明の織物は接結力、表面平滑性、安定
性にも優れる。経糸地糸接結糸は実施例１と同様であ
り、異なる組織のものを２本組み合わせた組織であり、
走行面側経糸の両側に組になった経糸地糸接結糸を配置
した。

【００１８】実施例４ 図４の実施例は本発明の他の実施例であり、組になった
経糸地糸接結糸が異なる組織であり、それらの配置順序
を交互にしたものである。経糸地糸接結糸の組織やその
他の組織、構成糸等は実施例１と同じである。組織の異
なる組になった２本の経糸地糸接結糸１ａは、１本の上
面側緯糸１´の上側を通って上面側表面にナックルを形
成し、１本の上面側緯糸２´と走行面側緯糸２´の間を
通り、次いで１本の上面側緯糸３´の上側を通って上面
側表面にナックルを形成し、次いで３本の上面側緯糸４
´，５´，６´と走行面側緯糸４´，５´，６´の間を
通り、そして１本の走行面側緯糸７´の下側を通り、次
いで３本の上面側緯糸８´，９´，１０´と走行面側緯
糸８´，９´，１０´の間を通る組織である。それと対
になる経糸地糸接結糸１ｂは１本の上面側緯糸１´と走
行面側緯糸１´の間を通り、次いで１本の走行面側緯糸
２´の下側を通り、２本の上面側緯糸３´，４´と走行
面側緯糸３´，４´の間を通り、次いで１本の上面側緯
糸５´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、
次いで１本の上面側緯糸６´と走行面側緯糸６´の間を
通り、次いで１本の上面側緯糸７´の上側を通って上面
側表面にナックルを形成し、１本の上面側緯糸８´と走
行面側緯糸８´の間を通り、次いで１本の上面側緯糸９
´の上側を通って上面側表面にナックルを形成し、次い
で１本の上面側緯糸１０´と走行面側緯糸１０´の間を
通る組織である。そして、次の経糸地糸接結糸の組２ａ
と２ｂにおいては、該経糸地糸接結糸の配置順序を１
ａ、１ｂの組と逆に配置する。つまり、上面側表面に２
つのナックルを形成していた１ａと同じ組織のものを２
ｂに配置し、３つのナックルを形成していた１ｂと同じ
組織のものを２ａに配置した。このように上面側表面を
形成する２本１組の経糸地糸接結糸の配置順序を交互に
することで、上面側表面に現れる上面側経糸によって形
成される斜めマークを軽減させることができる。組にな
った経糸地糸接結糸は互いに接近して走行面側経糸のほ
ぼ真上に１本の上面側経糸のように配置するため、ろ水
性に優れた織物とすることができる。また、走行面側表
面では走行面側経糸の走行面側ナックルと経糸地糸接結
糸の走行面側ナックルが並列配置することで、経糸地糸
接結糸の移動が起こりにくくなるため安定した織物とす
ることができ、一般的に走行面側経糸よりも小径の経糸
地糸接結糸の摩耗を軽減させることができる効果もあ
る。

【００１９】

【発明の効果】本発明の工業用多層織物は上面側表面の
一部を形成し且つ上面側層と走行面側層を織り合わせる
経糸地糸接結糸を配置した多層織物であり、経糸地糸接
結糸を２本１組で配置したために接結が非常に強く、走
行面側層では組を形成する２本の経糸地糸接結糸を１本
の走行面側経糸を挟んでその両側に隣接配置し、上面側
表面では組を形成する２本の経糸地糸接結糸が上面側表
面に交互に現われ互いに接近して走行面側経糸のほぼ真
上で実質上面側経糸１本分の組織を形成する２層織物で
あるため、ろ水性に優れ、織物表面にも部分的な凹みを
発生させることもなく、安定性、表面平滑性に優れた効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例の完全組織を示す意匠図であ
る。

【図２】本発明の他の実施例の完全組織を示す意匠図で
ある。

【図３】本発明の他の実施例の完全組織を示す意匠図で
ある。

【図４】本発明の他の実施例の完全組織を示す意匠図で
ある。

【符号の説明】

１ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 １ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 １ 走行面側経糸 ２ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ２ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ２ 走行面側経糸又は走行面側経糸と上面側経糸 ３ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ３ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ３ 走行面側経糸 ４ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ４ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ４ 走行面側経糸又は走行面側経糸と上面側経糸 ５ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ５ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ５ 走行面側経糸 ６ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ６ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ６ 走行面側経糸又は走行面側経糸と上面側経糸 ７ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ７ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ７ 走行面側経糸 ８ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ８ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ８ 走行面側経糸又は走行面側経糸と上面側経糸 ９ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 ９ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 ９ 走行面側経糸 １０ａ ２本１組の経糸地糸接結糸 １０ｂ ２本１組の経糸地糸接結糸 １０走行面側経糸又は走行面側経糸と上面側経糸 １´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ２´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ３´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ４´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ５´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ６´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ７´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ８´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 ９´ 上面側緯糸・走行面側緯糸 １０´上面側緯糸・走行面側緯糸

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項1】 少なくとも上面側層と走行面側層を備
   え、上面側層および走行面側層を織りなす経糸地糸接結
   糸により上面側層と走行面側層とを連結してなる工業用
   多層織物において、上面側経糸の一部または全部を経糸
   地糸接結糸とし、経糸地糸接結糸を２本１組で配置し、
   ２本の経糸地糸接結糸が１本の走行面側経糸を挟んでど
   ちらか一方が上面側表面に現れて上面側緯糸と織りなし
   上面側表面に実質上面側経糸１本分の組織を形成する組
   織とし、走行面側層では組を形成する２本の経糸地糸接
   結糸を１本の走行面側経糸を挟んでその両側に隣接配置
   し、上面側表面では組を形成する２本の経糸地糸接結糸
   が互いに接近して走行面側経糸のほぼ真上で実質上面側
   経糸１本分の組織を形成することを特徴とする工業用多
   層織物。
2. 【請求項２】 ２本１組の経糸地糸接結糸が、１本の上
   面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成
   し、次いで１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過
   し、次いで１本の上面側緯糸の上側を通過して上面側に
   ナックルを形成し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側
   緯糸の間を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下側を
   通過し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を
   通過する組織の経糸地糸接結糸を２本組み合わせて形成
   した接結糸である、請求項１に記載された工業用多層織
   物。
3. 【請求項３】 ２本１組の経糸地糸接結糸が、１本の上
   面側緯糸の上側を通過して上面側表面にナックルを形成
   し、次いで１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過
   し、次いで１本の上面側緯糸の上側を通過して上面側に
   ナックルを形成し、次いで３本の上面側緯糸と走行面側
   緯糸の間を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下側を
   通過し、次いで３本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を
   通過する組織の経糸地糸接結糸と、１本の上面側緯糸の
   上側を通過して上面側表面にナックルを形成し、次いで
   １本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を通過し、次いで
   １本の上面側緯糸の上側を通過して上面側にナックルを
   形成し、次いで１本の上面側緯糸と走行面側緯糸の間を
   通過し、次いで１本の上面側緯糸の上側を通過して上面
   側にナックルを形成し、次いで２本の上面側緯糸と走行
   面側緯糸の間を通過し、次いで１本の走行面側緯糸の下
   側を通過し、次いで２本の上面側緯糸と走行面側緯糸の
   間を通過する組織の経糸地糸接結糸を組み合わせて形成
   した接結糸である、請求項１に記載された工業用多層織
   物。
4. 【請求項４】 ２本１組の経糸地糸接結糸の組み合わせ
   方を１組ごとに左右逆に組み合わせた、請求項１に記載
   された工業用織物。
5. 【請求項５】 経糸地糸接結糸が、走行面側経糸が走行
   面側緯糸の下側を通過する位置で走行面側緯糸の下側を
   通過する、請求項１ないし４のいずれか１項に記載され
   た工業用多層織物。
6. 【請求項６】 組を形成する２本の経糸地糸接結糸が同
   組織である、請求項１ないし５のいずれか１項に記載さ
   れた工業用多層織物。