JP2003129196A - 超低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法

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JP2003129196A
JP2003129196A JP2001322388A JP2001322388A JP2003129196A JP 2003129196 A JP2003129196 A JP 2003129196A JP 2001322388 A JP2001322388 A JP 2001322388A JP 2001322388 A JP2001322388 A JP 2001322388A JP 2003129196 A JP2003129196 A JP 2003129196A
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Masao Iguchi
征夫 井口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温長時間の歪取り焼鈍後であっても優れた
密着性と曲げ特性を有し、しかもかかる歪取り焼鈍時に
懸念される鉄損の劣化が全くないセラミック張力被膜を
有する超低鉄損一方向性珪素鋼板を提供する。 【解決手段】 仕上げ焼鈍済の一方向性珪素鋼板の表面
に、X線回折による(222)/(200)回折ピーク
強度比が1.2 以上に優先配向した結晶質に成る、極薄セ
ラミック被膜を被成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、超低鉄損一方向
性珪素鋼板に関し、仕上焼鈍済みの珪素鋼板の表面にセ
ラミック被膜を被覆するに際し、特に被覆の密着性を効
果的に改善することによって、鉄損特性の一層の向上を
図ろうとするものである。
【0002】
【従来の技術】近年、方向性珪素鋼板の製造に際し、フ
ォルステライト下地被膜を有さない一方向性珪素鋼板
(以下、膜無し材と呼ぶ)の表面に、TiN,TiO2,Cr
N,TiC,Ti(C,N), Si3N4, SiO2, AlNおよびSi系(Si
−N−O−C)等の薄いセラミック張力被膜を被成する
ことによって、超低鉄損を得る製造方法が提案されてい
る。例えば、特開平11−131252号公報など参照。
【0003】かかる製造方法などにおける長年の懸案事
項は、高温長時間の歪取り焼鈍に耐え得る被膜密着性と
曲げ特性とを有し、しかも歪取り焼鈍時に懸念される鉄
損の劣化が全くなく超低鉄損を達成できるセラミック張
力被膜を効果的に被成することである。
【0004】上記懸案事項は、高温長時間の歪取り焼鈍
に耐え得る被膜の密着性と曲げ特性を有し、しかも歪取
り焼鈍時に懸念される鉄損の劣化が全く無く超低鉄損を
達成できる極薄のセラミック張力被膜を効果的に被成す
ることである。
【0005】すなわち、方向性珪素鋼板は、トランスや
電気機器の鉄心材料として供され、中でも巻鉄心トラン
ス材料として供された方向性珪素鋼板は、その需要家に
おいて巻鉄心として加工された後、該加工時に導入され
た歪みを除去するための、高温長時間の歪取り焼鈍が施
されるため、この歪取り焼鈍後にも優れた特性が維持さ
れることが肝要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一方向
性珪素鋼板の膜無し材の表面に、薄いセラミック張力被
膜を被成した場合、特に高温の歪取り焼鈍後でも十分な
密着性を有するセラミック被膜を安定して得ることは極
めて難しかった。この主な理由は、被成したセラミック
被膜が、天然に存在するセラミックに比較して不安定で
あるため、高温の歪取焼鈍中に、被成したセラミック被
膜と一方向性珪素鋼板の膜無し材の表面との間に反応が
進行して、剥離が生じ易くなるためと考えられる。
【0007】この発明は、上記の問題を有利に解決する
ものであり、たとえ高温長時間の歪取り焼鈍後であって
も優れた密着性と曲げ特性を有し、しかもかかる歪取り
焼鈍時に懸念される鉄損の劣化が全くないセラミック張
力被膜を有する超低鉄損一方向性珪素鋼板を、その有利
な製造方法と共に提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】さて、発明者らは、上記
の目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、膜無し材上
に形成したセラミック被膜の密着性を向上するには、セ
ラミック被膜を膜無し材との整合性に優れるものとする
こと、そのためには極薄のセラミック被膜の構造を制御
することが重要であることを知見した。さらに、セラミ
ック被膜の構造を制御するに当り、セラミック被膜のX
線回折による(222 )/(200 )回折ピーク強度比が、
とりわけ膜無し材との整合性に優れる被膜を得るための
指針となることを見出し、この発明を完成するに到っ
た。
【0009】すなわち、この発明は、仕上げ焼鈍済の一
方向性珪素鋼板の表面に、X線回折による(222 )/
(200 )回折ピーク強度比が1.2 以上に優先配向した結
晶質に成る、極薄セラミック被膜を有することを特徴と
する超低鉄損一方向性珪素鋼板である。
【0010】また、この発明は、上記の極薄セラミック
被膜上に、非晶質薄膜、次いで絶縁被膜を積層して成る
ことを特徴とする超低鉄損一方向性珪素鋼板である。
【0011】上記の超低鉄損一方向性珪素鋼板は、仕上
げ焼鈍済の一方向性珪素鋼板の表面に、極薄セラミック
被膜を被成したのち、該極薄セラミック被膜上に非晶質
の薄膜を被成することを特徴とする一方向性珪素鋼板の
製造方法によって、有利に製造することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】まず、この発明を導くに到った実
験結果について、以下に詳しく述べる。C:0.076 mass
%、Si:3.35mass%、Mn:0.076 mass%、Se:0.020 ma
ss%、Sb:0.025 mass%、Al:0.021 mass%、N:0.00
70mass%およびMo:0.012 mass%を含有し、残部はFeお
よび不可避的不純物の組成になる珪素鋼連鋳スラブを、
1350℃、4時間の加熱処理後、熱間圧延を施して板厚:
2.0 mmの熱延板とした。この熱延板に1050℃、2分間の
均一化焼鈍を施した後、1050℃の中間焼鈍を挟む2回の
圧延を施して板厚:0.23mmの最終冷延板とした。
【0013】次いで、 840℃の湿H2中で脱炭・1次再結
晶焼鈍を行った後、鋼板表面に MgO(20mass%), Al2O3(3
0mass%), Sr(OH)(10mass%), NiCl3(15mass%), CaSiO3(5
mass%),SiO2(20mass%) の組成になる焼鈍分離剤スラリ
−を塗布し、次いで 850℃で15時間の焼鈍後、 850℃か
ら12℃/hの速度で1100℃まで昇温してゴス方位に強く集
積した2次再結晶粒を発達させたのち、1200℃の乾H2
で純化処理を施してフォルステライト被膜を有さない珪
素鋼板(膜無し材)を製造した。
【0014】かくして得られた膜無し材の表面に、中空
陰極を用いたHollow Cathode Discharge(HCD )法、ア
ーク放電法、エレクトロンビームにRadio Frequency を
組み合わせた手法(EB+RF法)、エレクトロンビームに
HCD 法を組み合わせた手法(EB+HCD 法)、化学蒸着法
(熱CVD 法)、プラズマ化学蒸着法(プラズマCVD 法)
および直流マグネトロンスパッタの各手法を用いて、種
々の条件下にTiN による極薄セラミック被膜を0.1 μm
厚にて形成した。ここで、各膜無し材上に被成した極薄
セラミック被膜について、その薄膜X線による(222 )
/(200 )回折ピーク強度比を測定した。
【0015】その後、極薄セラミック被膜上にマグネト
ロン・スパッタ法を用いて、SiNxによる被膜を0.2 μm
厚で形成した。さらに、コロイダルシリカと燐酸塩を主
成分とする0.8 μm 厚の絶縁被膜を塗布、焼付けによっ
て形成した後、高温の歪取り焼鈍条件に相当する800 ℃
で3時間窒素中で焼鈍した。
【0016】かくして得られた方向性珪素鋼板の鉄損を
測定するとともに、被膜密着性について評価した。な
お、鉄損は膜無し材での鉄損値に対する低減度合いとし
て評価した。これらの評価結果をまとめて、図1に示
す。
【0017】図1から明らかなように、TiN セラミック
膜を薄膜X線による(222 )/(200 )回折ピーク強度
比が1.2 以上である、極薄セラミック被膜を有する場合
に、高温の歪取焼鈍後の一方向性珪素鋼板における、鉄
損の低減度合いが0.11W/kg以上になり、しかも被膜の密
着性も良好な製品が得られることがわかる。特に、(22
2 )/(200 )回折ピーク強度比が4以上になると、鉄
損の低減度合いが大幅に増加することも判明した。
【0018】ここで、薄膜X線による(222 )/(200
)回折ピーク強度比の典型的な事例について、図2に
示す。すなわち、図2に、HCD 法およびアーク放電法を
用いて作製したTiN による極薄セラミック被膜について
の、薄膜X線による回折結果を示すように、HCD 法によ
るセラミック被膜とアーク放電法によるセラミック被膜
との(222 )/(200 )回折ピーク強度比は全く異なる
ことがわかる。
【0019】なお、(222 )/(200 )回折ピーク強度
比と鉄損との関係は、明確に解明されたわけではない
が、極薄セラミック被膜が珪素鋼板マトリックスと整合
が良い場合は、該極薄セラミック被膜が膜無し材上でエ
ピタキシャル成長して(222 )/(200 )回折ピーク強
度比が高くなって、密着性が良くなる結果、鉄損に好影
響を与えるためと考えられる。
【0020】ところで、TiN のJCPDS (International
Centre for Diffraction Data No.38−1420)では、Ti
N の(222 )の回折ピーク強度は、Int.:72であり、Ti
N の(200 )の回折ピーク強度は、Int.:100 である。
従って、(222 )/(200 )回折ピーク強度比は0.72と
なり、この発明で規定する1.2 未満であるのが通例であ
る。従って、(222 )/(200 )回折ピーク強度比を1.
2 以上に上昇させるには、極薄セラミック被膜を形成す
る手法を選択した上で、適宜の条件で処理を行う必要が
ある。
【0021】例えば、図1に示したように、(222 )/
(200 )回折ピーク強度比を1.2 以上にするには、HCD
法、EB+HCD 法、プラズマCVD 法および熱CVD を用い
て、適宜の条件に従って処理を行うことが有利である。
特に、(222 )/(200 )回折ピーク強度比を4以上の
範囲とするには、HCD 法、中でも高バイアス電圧を付与
するHCD 法によって被膜形成を行うことが好ましい。
【0022】次に、上記の極薄セラミック被膜の上に形
成する第2層の被膜について行った実験結果について、
詳しく説明する。まず、磁区細分化処理を施した一方向
性珪素鋼板の膜無し材に、HCD 法を用いてTiN による極
薄セラミック被膜を0.1 μm 厚で形成した。この極薄セ
ラミック被膜の(222 )/(200 )回折ピーク強度比は
4.8 であった。この極薄セラミック被膜上に、マグネト
ロン・スパッタ法を用いて、(1)SiNx および(2)AlNによ
る被膜を0.2 μm 厚にて、またHCD 法を用いて、(3)Cr
N、(4)TiO2 、(5)TiAlO2 、(6)MnCoNiNおよび(7)CrAlSi
Nによる被膜を0.1 〜0.15μm の厚さにて、それぞれ被
成し、さらにその上に、コロイダルシリカおよび燐酸塩
を主成分とする絶縁被膜を0.8 μm 厚で塗布、焼付した
後、800 ℃で3時間窒素中で焼鈍した。 かくして得られ
た膜付きの方向性珪素鋼板について、磁気特性および被
膜密着性を調査した結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】表1から明らかなように、極めて低い鉄損
と良好な被膜密着性の両方を達成出来る場合は、(1) Si
Nx、(2) AlN および(7) CrAlSiN であることが判る。そ
の中でもSiNxは、最も優れた特性を有することが注目さ
れる。一方、CrAlSiN の場合は、鉄損が0.55〜0.64W /
kg、密着性も若干剥離(△)から剥離無し(○)の間で
変化することが判明した。
【0025】また、薄膜X線回折による第2層目の被膜
の構造解析では、超鉄損と密着性の両方を達成できた
(1) SiNxおよび(7) CrAlSiN の場合においては、SiNxの
構造が非晶質であり、CrAlSiN の構造は非晶質〜結晶質
であることが注目される。すなわち、TiN の極薄セラミ
ック被膜上に形成する第2層については、結晶質よりも
非晶質構造である場合において、超鉄損および良好な密
着性の両方を達成できることが注目される。
【0026】この理由は、明確に解明された訳ではない
が、第1層目の極薄セラミック被膜を結晶質構造とし、
その上に第2層目を非晶質の構造として積層すると、そ
の後の高温の歪取焼鈍において第2層目が拡散のバリヤ
ーとしての作用を効果的に発揮するためと考えられる。
【0027】そこで、この考察結果が妥当であるのかを
検証するため、さらには(7) のCrAlSiN の構造が非晶質
から結晶質に変化し、同時に一方向性珪素鋼板の鉄損お
よび密着性も変化していることから、(7) のCrAlSiN の
被膜について、Cr、AlおよびSiの含有量を変えて再度詳
細な実験を行った。すなわち、第2層としてCrAlSiNの
被膜を形成する際、該被膜におけるCr、AlおよびSiの含
有量を変えた他は、上記した表1に結果を示した実験と
同様の条件にて、膜付き鋼板を作製し、膜無し材におけ
る鉄損値と高温の歪取り後の鉄損との差である、鉄損低
減度合い△W17 /50 および被膜密着性を評価すると共
に、第2層目の薄膜X線回折を行った。その結果を、表
2にまとめて示す。
【0028】
【表2】
【0029】表2から明らかなように、鉄損の低減度合
い△W17/50 は、Cr、AlおよびSiの含有量によって0.07
4 〜0.151W/kgと変化し、また薄膜X線回折による測定
も、Cr、AlおよびSiの含有量によって結晶質または非晶
質になることが判る。特に、(7-3) Cr1.5Al1.0 Si2.0
成分は、鉄損の低減度合い△W17/50 が0.151W/kgと最
も大きく、この場合の薄膜X線回折による測定結果は非
晶質であることが注目される。 従って、この発明では、
第2層として非晶質被膜を採用することとした。
【0030】なお、薄膜X線回折による結晶質または非
晶質の判断は、次のように行った。ここで、薄膜X線回
折の例として、表2のCrAlSiN 被膜について行った薄膜
X線回折結果のうち、結晶質の場合を図3(a)に、ま
た非晶質の場合を図3(b)に、それぞれ示す。すなわ
ち、図3(a)に示した薄膜X線回折では、明瞭な回折
ピークが認められることから、結晶質であることがわか
る。なお、CrN のJCPDS (カードNo.11-0065 )では、
(200 )CrN が2.0680Å、Int.:100 、(220 )CrN
1.4630Å、Int.:80であり、またAIN のJCPDS (カード
No.25−1496)では、(200 )AI N が2.060 Å、Int.:
100 、(220 )AIN が1.457 Å、Int.:80であり、CrN
とほぼ同一の回折ピーク位置であり、さらに、被膜のGD
S (Glow Discharge Spectroscopy )分析では、Cr、Al
およびSiが検出されることから、図3(a)の回折ピー
クについて、CrN とAlN のピークの相違を区別すること
は不可能である。
【0031】これに対して、図3(b)のX線回折の結
果は、明瞭な回折ピークのないブロードな状況にあり、
ピークの判定が不可能であるところから、かようなX線
回折結果が得られる場合を非晶質とした。従って、この
発明における非晶質とは、例えば図3(b)に示したよ
うな、明瞭な回折ピークのないブロードな状況の回折結
果が得られた場合を意味する。
【0032】以上、表2および図3の結果から、TiN の
極薄セラミック被膜上に第2層として、非晶質構造の被
膜を形成した場合に、高温の歪取焼鈍後においても、超
低鉄損でかつ密着性に優れた一方向性珪素鋼板が得られ
ることがわかる。
【0033】このように、第2層として非晶質構造の被
膜を用いた場合に、超低鉄損と優れた密着性が得られる
理由については、明確に解明された訳ではないが、第1
層目に結晶質の極薄セラミック被膜を形成した上に、第
2層として、例えばCrAlSiNやSiNxによる非晶質膜を積
層すると、該第2層が、その後の高温の歪取焼鈍におい
て極薄セラミック被膜の拡散のバリヤーとしての作用を
効果的に発揮出来るためと考えられる。
【0034】この発明は、以上の実験結果に基づき、膜
無し材上に形成する極薄セラミック被膜に関する新規の
技術内容を開示したものであり、この発明によって発揮
される効果は極めて大きいところに特徴がある。
【0035】以下に、この発明の各構成要素について、
さらに詳しく述べる。この発明において、被膜処理を行
う素材には、一方向性珪素鋼板、とりわけ磁区細分化処
理を施した膜無し材を用いることが好ましい。この膜無
し材としては、従来の公知の技術によって製造された、
一方向性珪素鋼板を用いることができる。また、膜無し
材に、さらに表面処理、例えば酸洗処理、化学研磨ある
いは電解研磨処理を施すことも可能であるが、これらの
手法はいずれもコスト増をまねくため、膜無し材をその
まま使用することが、コスト面からは好ましい。
【0036】次に、この発明の必須条件である、第1層
目の極薄セラミック被膜は、膜無し材との密着性の観点
から、TiN から成ることが有利である。しかし、図1に
示したように、極薄セラミック被膜の薄膜X線回折によ
る(222 )/(200 )回折ピーク強度比が1.2 以上であ
れば、特に材質を限定する必要はなく、従来公知の被
膜、例えば窒化物系セラミック膜や炭化物系セラミック
膜等の従来公知の被膜を用いても良い。なお、極薄セラ
ミック被膜の被成方法としては、PVD 、CVD 、スパック
リングおよびイオンインプランテーション等を用いるこ
とができるが、(222 )/(200 )回折ピーク強度比が
1.2 以上を容易に得られる、HCD 法が最適である。
【0037】HCD 法による成膜条件、とりわけ(222 )
/(200 )回折ピーク強度比を4以上にするには、200
℃以上に加熱し、 バイアス電圧を−70V以上の高バイヤ
ス印加( 好適には−100 〜−300 V) ,反応ガスのイオ
ン化電圧1500V、65mAなどの条件が推奨される。
【0038】さらに、極薄セラミック被膜の膜厚は、0.
01〜0.3 μm 程度とする。すなわち、上記した極薄セラ
ミック被膜による効果を得るには、少なくとも0.01μm
の厚さが必要であり、一方厚さが0.3 μm を超えると、
やはり上記した極薄セラミック被膜による効果、特に膜
無し材と絶縁被膜との間の密着層としての役目が発揮さ
れなくなり、またコスト増をまねくことになる。より好
ましくは、0.005 〜0.3 μm とする。
【0039】次に、上記極薄セラミック被膜上への第2
層目としては、非晶質の被膜、具体的には、CrAISiN 或
いはSiNxによる非晶質被膜が、その後の高温の歪取焼鈍
において第2層を第1層の拡散のバリヤーとしての作用
を効果的に発揮させるのに有利である。この場合の非晶
質の定義は、上述のとおりである。なお、非晶質被膜と
しては、CrAISiN およびSiNxの他、TiAlN,TiCrSiN,TiCr
AlSiN 等の多種の金属の窒化物などの非晶質被膜を採用
することができる。
【0040】また、非晶質被膜の膜厚は、0.005 〜0.3
μm 程度とする。すなわち、非晶質被膜の厚みが0.005
μm 未満ではバリアーとしての効果が小さく、一方0.3
μmをこえると、コストアップとなり経済的に問題とな
る。
【0041】ここで、非晶質被膜の被成は、HCD 法、 マ
グネトロンスパッタ法の手法を用いて行うことができる
が、得られる被膜を非晶質とするためには、多種の金属
を含有する窒化物( 例えばCr、 Al、 Si、 Ti、 B 等を含有
する) を被成することに留意する。
【0042】かくして被膜を施した鋼板には、さらに公
知の絶縁被膜を好ましくは0.3 〜1.5 μmの厚さで被覆
して製品板とする。
【0043】
【実施例】C:0.073 mass%、Si:3.42mass%、Mn:0.
072 mass%、Se:0.020 mass%、Sb:0.025 mass%、A
l:0.020 mass%、Mo:0.012 mass%およびN:0.0071m
ass%を含有し、残部は実質的に鉄および不可避的不純
物の組成になる珪素鋼スラブを、1340℃で3時間加熱
後、熱間圧延を施し、次いで1050℃の中間焼鈍を挟む2
回の冷間圧延を施して0.23mm厚の最終冷延坂とした。そ
の後、圧延方向にほぼ直角方向に4mm間隔にて、幅:20
0 μm および深さ:20μm の溝を形成する、磁区細分化
処理を施したのち、840 ℃の湿水素中で脱炭焼鈍を行
い、ついで鋼坂表面に、CaSiO3:25mass%,A1203 :10
mass%,MgO :45mass%,SiO2:15mass%、AICl3 :3
mass%およびSr(OH):2 mass%を主成分とする焼鈍分
離剤を塗布してから、850 ℃で15時間保持後、12℃/h
で1050℃まで昇温してゴス方位の2次再結晶粒を優先成
長させた後、1200℃の乾水素中で純化焼鈍を施した。
【0044】次いで、この膜無し材上に、第1層目とし
て (A)HCD法を用いて、TiN セラミック張力被膜を0.1 μm
厚で被成した。 (B) 熱CVD 法を用いて、TiN セラミック張力被膜を0.15
μm 厚を被成した。その後、第2層目として、 (a) マグネトロン・スパッタ法を用いて、SiNx膜を0.15
μm 厚で被成した。 (b)HCD法を用いて、CrAlSiN 膜を0.15μm 厚で被成し
た。
【0045】なお、被膜の被成条件は、次の通りであ
る。 (A)HCD法:40V、500Aおよび250 ℃にて−150 Vのバイ
アス電圧、 イオン化電圧1500V、65mAで成膜した。 (B) 熱CVD 法:950 ℃のTiCl4 +H2+N2雰囲気中にて、
10分間のCVD 反応を行った。 (a) マグネトロン・スパッタ法:15KWで、 フェローSiタ
ーゲットを用いてスパッタ処理した。 (b)HCD法:20Vおよび 250Aで成膜した。
【0046】次いで、コロイダルシリカおよび燐酸塩を
主成分とする絶縁被膜を塗布・焼付けによって形成した
後、800 ℃で3時間窒素雰囲気中で歪取焼鈍を行った。
かくして得られた製品の鉄損向上度合い(△W17/50
と被膜密着性とを評価した結果を、表3にまとめて示
す。
【0047】
【表3】
【0048】表3から明らかなように、一方向性珪素鋼
板の膜無し材に施す第1層目を(222 )/(200 )回折
ピーク強度比が1.2 以上の極薄セラミック被膜とし、第
2層目を非晶質被膜とすることによって、一方向性珪素
鋼板の磁気特性のうち、磁束密度は同じであるが、鉄損
が0.13W/kgと大幅に向上することが注目される。ま
た、直径 15 mmの丸棒上での 180°曲げを行った際に、
被膜が剥離することもなく、被膜の密着性にも優れるこ
とがわかる。
【0049】
【発明の効果】この発明に従って、仕上げ焼鈍済の一方
向性珪素鋼板の表面に形成した被膜は、たとえ高温長時
間の歪取り焼鈍後であっても優れた密着性と曲げ特性を
有し、しかもかかる歪取り焼鈍時に懸念される鉄損の劣
化を招くことがないため、高温長時間の歪取り焼鈍後で
あっても優れた鉄損特性を有する超低鉄損一方向性珪素
鋼板を安定して提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 鉄損の低減度合いおよび被膜の密着性と被膜
の薄膜X線回折測定による(222 )/(200 )回折ピー
ク強度比との関係を示す図である。
【図2】 極薄セラミック被膜の薄膜X線回折測定の結
果を示す図である。
【図3】 CrAlSiN 被膜の薄膜X線回折測定の結果を示
す図である。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K026 AA03 AA22 BA01 BA08 BA12 BB10 CA16 CA18 CA23 CA27 CA41 DA02 EB11 4K029 AA02 BA58 BB02 BB08 BB10 CA03 CA05 DC39 DD05 FA06 GA01 GA03

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 仕上げ焼鈍済の一方向性珪素鋼板の表面
    に、X線回折による(222 )/(200 )回折ピーク強度
    比が1.2 以上に優先配向した結晶質に成る、極薄セラミ
    ック被膜を有することを特徴とする超低鉄損一方向性珪
    素鋼板。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の極薄セラミック被膜上
    に、非晶質薄膜、次いで絶縁被膜を積層して成ることを
    特徴とする超低鉄損一方向性珪素鋼板。
  3. 【請求項3】 仕上げ焼鈍済の一方向性珪素鋼板の表面
    に、極薄セラミック被膜を被成したのち、該極薄セラミ
    ック被膜上に非晶質の薄膜を被成することを特徴とする
    一方向性珪素鋼板の製造方法。
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