JP2003089524A - 錫系酸化物ゾルの製造方法 - Google Patents

錫系酸化物ゾルの製造方法

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JP2003089524A
JP2003089524A JP2001281007A JP2001281007A JP2003089524A JP 2003089524 A JP2003089524 A JP 2003089524A JP 2001281007 A JP2001281007 A JP 2001281007A JP 2001281007 A JP2001281007 A JP 2001281007A JP 2003089524 A JP2003089524 A JP 2003089524A
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oxide
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JP2001281007A
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Toshiaki Mabuchi
俊朗 真淵
Shoji Tachibana
昇二 橘
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Tokuyama Corp
Original Assignee
Tokuyama Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 透明基材の帯電防止処理剤、屈折率制御剤あ
るいは紫外線・赤外線遮蔽剤として好適に使用できる錫
系酸化物ゾルを高収率で、且つ容易に合成することが可
能な製造方法を提供する。 【解決手段】 塩化錫等の加水分解及び重縮合して酸化
錫を形成し得る錫化合物、及び必要に応じて塩化アンチ
モン等の錫と複合酸化物を形成し得る金属又は半金属元
素を含む化合物がメタノール等の有機溶媒に溶解した錫
系酸化物前駆体溶液と、酸又は塩基とを混合し、前記錫
系酸化物前駆体溶液中に含まれる金属又は半金属元素と
の合計モル数に対して4〜40倍モルの水の存在下で反
応させて塩素等の酸根を含む錫系酸化物を得、次いで得
られた錫系酸化物中に含まれる酸根を水洗・濾過等の方
法で除去した後に当該錫系酸化物を水系溶液に分散させ
て錫系酸化物ゾルを得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、錫系酸化物ゾルの
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】錫系酸化物材料は、導電性、可視光透過
性に優れ、屈折率が高く、赤外線・紫外線の遮蔽効果を
有し、さらに熱的・化学的安定性の優れていることか
ら、ガラスや透明樹脂などの透明基材用の帯電防止性付
与剤、メガネレンズの屈折制御剤や赤外線・紫外線遮蔽
用添加剤として幅広く利用されている。このような錫系
酸化物材料としては、酸化錫単体の他に、酸化錫をアン
チモン、インジウムなどと複合化して導電性を更に高め
たものが良く知られているが、その他にも、酸化錫をチ
タン、タングステン、ケイ素などと複合化して屈折率を
制御したものなどが開発されている。
【0003】錫系酸化物材料を透明基材用の帯電防止性
付与剤として利用する方法としては、真空蒸着法、スパ
ッタリング法、CVD(Chemical Vaper
Deposition)法等により錫系酸化物材料の
薄膜を透明基材の表面に形成する方法が知られている
が、これらの方法では大型で高価な装置が必要であり、
製膜速度が遅く、また大面積の透明基材に均一に薄膜を
形成するのが難しいといった欠点がある。そこで最近で
は、錫系酸化物材料の粉末をコーティング液などに分散
させて透明基材上に塗布する方法や、透明基材の中に錫
系酸化物材料の粉末を練り込む方法が広く検討されてい
る。これら方法は錫系酸化物材料を屈折率制御剤や赤外
線・紫外線遮蔽用添加剤として利用する場合にも非常に
有効な方法である。
【0004】錫系酸化物材料の粉末は、塩化第二錫の水
溶液をアルカリ水溶液で中和して得られる沈殿物を水洗
した後に焼成する方法や、塩化第二錫の無水物を原料に
用いたCVD法などにより合成されている。このような
製造方法により合成された錫系酸化物材料の粉末は通常
凝集している為、コーティング液に均一に分散させるに
は、ボールミル等を用いて粉末を解砕する必要がある。
しかし、解砕処理しても粉末の一部は凝集した状態で残
る場合が多く、コーティング液中に粗粉が残ることで透
明基材に塗布した際に透明性が損なわれるという問題が
あった。
【0005】最近では、塗料やコーティング液に容易に
均一に分散できる錫系酸化物材料の要求が高まり、錫系
酸化物材料の微粒子を溶液中に分散した錫系酸化物ゾル
およびその製造方法が種々提案されている。
【0006】例えば、特開昭62−207717号公報
には、粒径30nm以下の結晶性酸化錫ゾルが開示され
ており、該ゾルの製造方法として、塩化錫等の水溶性錫
化合物と重炭酸アルカリ金属塩または重炭酸アンモニウ
ム塩を水溶液中で反応させることにより錫化合物の加水
分解生成物を含有する沈殿物(ゲル)を得た後、沈殿物
から酸根を有する塩類等の副生物を除去し、更に分散性
や結晶性を向上させるためにアンモニアを添加して水熱
処理を行なう方法が記載されている。また、特開平10
−59720号公報には、非晶質酸化錫ゾルが開示され
ており、該ゾルの製造方法として、錫化合物を加水分解
処理して沈殿物を得た後、沈殿物から酸根(ハロゲンイ
オン)を除去し、更にこれを(分散性の良いゾルを得る
ために)アンモニア水に溶解して加熱処理を行う方法が
記載されている。これら酸化錫ゾルの製造方法におい
て、沈殿物中に酸根が多量に残っていると粒子の分散性
を低下させる原因になるので、沈殿物から酸根を除去す
る操作が行われる。酸根の除去方法としては、沈殿物に
水を加えて酸根を溶解させた後に、沈殿物と酸根の溶解
した水溶液を濾別する「水洗−濾過操作」を繰り返す方
法が簡便である。しかし、本発明者らが確認したとこ
ろ、上記製造方法で製造した沈殿物は濾過の際に濾過膜
の目詰まりを起こしやすく、酸根と水の除去に著しく時
間がかかり、更に洗浄効率も悪いことが判明した。ま
た、水洗時に沈殿物が徐々に解膠して微粒子として分散
するために、微粒子が濾過膜を通過して最終的に得られ
る酸化錫成分の収率が大幅に低下するといった欠点を有
していた。
【0007】また、酸化錫ゾルを高収率で得る方法とし
て、特開平10−251018号公報には、沈殿物を水
で洗浄する際に洗浄水にメタノール、アセトンなどの有
機溶媒を加えることにより、沈殿物が解膠して回収でき
なくなるのを防止するといった方法が記載されている。
しかし、上記方法では沈殿物を構成する微粒子の隙間に
有機溶媒を十分に浸透させるのが難しいため、洗浄水中
に多量に有機溶媒を添加しなければ沈殿物の解膠を抑制
する効果が得られず、更に、洗浄水中に多量に有機溶媒
を添加した場合には、最終的に得られる酸化錫ゾル中に
有機溶剤が多量に含まれるために、酸化錫ゾルの安定性
が低下してゲル化しやすくなるといった問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように、錫系化合
物の加水分解を利用して錫系酸化物微粒子が溶液中に良
好に分散した錫系酸化物ゾルを製造する方法として知ら
れている従来の製造方法は、粒子の分散性を低下させる
原因ともなる酸根を有する塩類等の副生物を簡便かつ効
率的に除去することができないといった問題が有った。
そこで、本発明は、上記従来法の問題を解決し、簡便な
方法で、錫系酸化物微粒子のロスを抑えて上記副生物が
除去でき、延いては、効率よく(短時間且つ高収率で)
目的とする錫系酸化物ゾルを製造することができる方法
を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記課題を
解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、特願平9−
76164号公報に記載されているような有機溶媒系で
の加水分解・重縮合反応を利用した錫系酸化物粒子の製
造方法において、特定の条件下で加水分解・重縮合反応
を行なって得られた錫系酸化物は、濾過性が良好であ
り、該錫系酸化物を焼成せずに水系溶液に分散させた時
の分散粒子の粒径が、コーティングにより透明被膜を形
成するのに適していることを見出し、本発明を完成する
に至った。
【0010】即ち、本発明は、加水分解及び重縮合して
錫酸化物を形成し得る錫化合物、又は該錫化合物及び該
錫化合物と共に加水分解及び重縮合して複合錫酸化物を
形成し得る金属或いは半金属を含む化合物が有機溶媒に
溶解した酸根を含有していてもよい錫系酸化物前駆体溶
液と、酸又は塩基とを混合し、前記錫系酸化物前駆体溶
液中に含まれる前記錫化合物及び複合錫酸化物を形成し
得る金属或いは半金属を含む化合物に含まれる金属(錫
を含む)及び半金属元素の合計モル数に対して4〜40
倍モルの水の存在下で反応させて酸根を含む錫系酸化物
を得、次いで得られた錫系酸化物中に含まれる酸根を湿
状態で除去した後に当該錫系酸化物を水系溶液に分散さ
せて錫系酸化物ゾルを得ることを特徴とする錫系酸化物
ゾルの製造方法である。
【0011】上記本発明の製造方法によれば、錫系酸化
物前駆体溶液の組成を調整する、具体的には、錫酸化物
を複合酸化物化させるか否か、更に複合化させる場合に
は複合化させる元素の種類や量を適宜決定することによ
り、得られるゾル中の粒子の性状を制御することも可能
である。例えば、複合化させない場合には、錫系酸化物
前駆体溶液として前記錫化合物のみが溶解した酸化錫前
駆体溶液を用いればよく、又、複合化させる場合には、
前記錫化合物及び該錫化合物と共に加水分解及び重縮合
して複合錫酸化物を形成し得る金属或いは半金属元素を
含む化合物が溶解した酸化錫前駆体溶液を用いればよ
い。このとき、上記金属或いは半金属元素が希土類元
素、遷移元素、周期律表13族元素、周期律表14族元
素(但し、錫を除く。)、周期律表15族元素、および
カルコゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一種
の元素を使用した場合には、粒子の比抵抗、強度、屈折
率、更には透明性等の性状を制御することが可能とな
る。また、本発明の製造方法によれば、透明被膜を形成
するのに適した粒径の酸化錫系ゾル、即ち光散乱性が高
い0.1μm以上の粒子を実質上含まない酸化錫系ゾ
ル、例えば遠心沈降法で測定した分散粒子の粒度分布に
おけるD90の粒径が0.1μm以下である錫系酸化物
ゾルを容易に得ることができる。
【0012】本発明は理論に拘束されるものではない
が、本発明の製造方法の製造過程において形成される錫
系酸化物は、以下に記すように構成成分、構造などが従
来の製造方法で得られる錫系酸化物と異なるために、酸
根の除去が容易であり、高収率で錫系酸化物ゾルを得る
ことが可能になったと推定される。
【0013】即ち、本発明の製造方法では、水分含有量
が少ない有機溶媒中で錫系酸化物前駆体の加水分解・重
縮合反応を起こして錫系酸化物を生成させるが、このと
きに副生する塩類(酸根とカチオンの塩)は通常有機溶
媒中への溶解度が低いため、錫系酸化物の微粒子と共に
凝集して、粗大な粒子を構成すると考えられる。これに
対して、従来の製造方法では、錫系酸化物を生成する段
階で多くの水を使用するので、副生する塩類は溶媒に溶
けてイオンとして存在し、これらイオン(酸根及びカチ
オン)は錫系酸化物微粒子の隙間にイオンとして水と共
に取り込まれると考えられる。したがって、従来の製造
方法では、錫系酸化物の微粒子同士が互いに接触し、狭
い隙間に酸根が入り込んでいるため、酸根は置換されに
くいが、本発明の製造方法において生成した錫系酸化物
では、錫系酸化物の微粒子が析出した塩類により隔てら
れて隙間ができているため、洗浄水を加えると塩類は容
易に洗浄水と接触し、溶解して簡単に除去されるものと
推定される。さらに、従来の製造方法では、洗浄中に錫
系酸化物が解膠して微粒子として分散するために、濾過
膜の間から抜け落ちて収率が低下したり、濾過膜の間に
詰まって濾過性を低下させる原因になるが、本発明の製
造方法では、錫系酸化物凝集粒子中に保持されている有
機溶媒が解膠を抑える働きをするため、上記のような問
題が発生しないものと考えられる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法では、錫系酸化
物前駆体溶媒溶液と酸又は塩基とを混合し、該前駆体溶
液中の錫系酸化物前駆体を加水分解及び重縮合させて酸
根を含む錫系酸化物(錫酸化物又は複合錫酸化物)を
得、該錫系酸化物中に含まれる酸根を湿状態で除去した
後にこれを水性溶媒に分散させてゾルを得る。
【0015】本発明で使用する錫系酸化物前駆体溶液
(単に前駆体溶液ともいう。)は、加水分解及び重縮合
して錫酸化物を形成し得る錫化合物(以下、前駆体錫化
合物ともいう。)、又は該錫化合物及び該錫化合物と共
に加水分解及び重縮合して複合錫酸化物を形成し得る金
属或いは半金属元素を含む化合物(以下、複合化化合物
ともいう。)が有機溶媒に溶解した酸根を有していても
よい溶液である。
【0016】上記前駆体溶液においては、反応時の水分
量を制御して後の酸根を含む錫系酸化物から湿状態で酸
根を除去する工程において操作性が良好となる粒子性状
の錫系酸化物を得るために溶媒としては有機溶媒を使用
する必要がある。ここで使用する有機溶媒は、上記前駆
体錫化合物の原料となる有機溶媒可溶性錫化合物及び/
又は金属錫(これらについては後で詳述する。)、更に
必要に応じて上記複合化化合物の原料となる有機溶媒可
溶性第二成分元素含有化合物(これについても後で詳述
する。)を溶解するものであれば何ら制限されない。こ
のような有機溶剤として、アルコール、アセトン、アセ
トニトリル等、あるいはこれらの混合物が挙げられる
が、有機溶媒可溶性錫化合物、金属錫、或いは有機溶媒
可溶性第二成分元素含有化合物の溶解度が高いという理
由からアルコールを使用するのが好適である。本発明で
好適に使用できるアルコールを具体的に例示すれば、メ
タノール(メチルアルコールともいう)、エタノール
(エチルアルコールともいう)、1−プロパノール(1
−プロピルアルコールともいう)、2−プロパノール
(2−プロピルアルコール、イソプロパノール、イソプ
ロピルアルコールともいう)、1−ブタノール(1−ブ
チルアルコールともいう)、2−ブタノール(2−ブチ
ルアルコールともいう)、1−オクタノール(1−オク
チルアルコールともいう)、2−オクタノール(2−オ
クチルアルコールともいう)、3−オクタノール(3−
オクチルアルコールともいう)、2−メトキシエタノー
ル、2−エトキシエタノール、エチレングリコール、1
−メトキシ−2−プロピルアルコール、2−(2−メト
キシエトキシ)エタノール、2−フェニルエチルアルコ
ール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、2−メ
チル−2−プロペン−1−オール、3−メチル−3−ブ
テン−1−オールなどを挙げることができる。中でもメ
タノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパ
ノールは、特に有機溶媒可溶性化合物の溶解度が高いた
め好ましく、更にメタノールは安価で手に入りやすいと
いう理由もあり、より好ましい。なお、上記アルコール
は通常単独で用いられるが、有機溶媒可溶性化合物との
反応性や溶解性あるいは得られる錫系酸化物の粒子の大
きさなどを制御するために2種類以上のアルコールの混
合物を用いることもできる。なお、これら有機溶媒は、
後述する反応時における水分量を制御しやすいという観
点から水を含まないものを用いるのが好適である。
【0017】上記錫系酸化物前駆体溶液中に含まれる前
駆体錫化合物は、これを例えば単独で加水分解及び重縮
合したときにSn−O−Sn結合を形成し得る有機溶媒
に可溶な化合物であれば特に限定されず、前記した特願
平9−76164号公報に有機溶媒可溶性錫化合物及び
/又は金属錫を有機溶媒に溶解させたときに形成される
化合物が好適に使用できる。なお、該前駆体錫化合物は
有機溶媒に溶解させる時に溶媒、或いは雰囲気ガス等と
反応して形成されることもあり、その構造を一概に特定
することはできないが、加水分解及び重縮合したときに
Sn−O−Sn結合を形成し得るという共通の特性を有
することで特定することができる。該前駆体錫化合物の
原料となる上記有機溶媒可溶性錫化合物としては、Sn
Cl、SnCl・2HO、SnCl、SnCl
・5HO、SnBr、SnBr、SnI、S
nI、SnF、SnFなどのハロゲン化錫(水和
物を含む);(CHSn、(CSn、
(CSnなどの有機錫;Sn(OC
、Sn(OC、Sn(OCなど
の錫のアルコキシドなどが使用できるが、価格、安定性
の点からハロゲン化錫を用いることが好ましい。また、
ハロゲン化錫のなかでも、有機溶媒への溶解度の高さか
ら、SnCl、SnCl・2HO、SnCl
SnCl・5HO、SnBr等の塩化錫及び/又
は臭化錫(水和物を含む)を使用するのが特に好まし
い。なお、これら有機溶媒可溶性錫化合物は2種類以上
の混合物として用いることもできる。更に、金属錫とし
ては、板状、棒状、シート状、粒状、粉末状、砂状、花
状、塊状のものなどがが使用可能であるが、溶解のしや
すさの点からは粒状、粉末状、砂状のものを使用するが
好ましい。また、その純度は高い方が好ましいが、本発
明の錫系酸化物ゾルの性能に影響しない範囲であれば特
に制限されない。
【0018】また、上記錫系酸化物前駆体溶液は、最終
的に得られるゾル中の分散粒子の導電性、屈折率、赤外
線・紫外線遮蔽効果、粒子の分散安定性を向上される等
の目的で前記前駆体錫化合物に加えて更に複合化化合物
を含んでいてもよい。この時使用される複合化化合物
は、錫と複合酸化物を形成し得る金属或いは半金属元素
(以下、第二成分元素ともいう。)を含む化合物であっ
て前記前駆体錫化合物と共に加水分解及び重縮合させた
時に複合錫酸化物を形成し得る有機溶媒に可溶な化合物
であれば特に限定されないが、得られる錫系酸化物ゾル
中の粒子性状を制御する際の有用性から、希土類元素、
遷移元素、周期律表13族元素、周期律表14族元素
(但し、錫を除く。)、周期律表15族元素、およびカ
ルコゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一種の
元素を含む有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物を有
機溶媒に溶解させたときに形成される化合物が好適に使
用できる。なお、該複合化化合物は有機溶媒に溶解させ
る時に溶媒、或いは雰囲気ガス等と反応して形成される
こともあり、その構造を一概に特定することはできない
が、例えば単独で加水分解及び重縮合したときにM−O
−M結合(但し、Mは第二成分元素を表す。)を形成し
得るという共通の特性を有することで特定することがで
きる。
【0019】上記複合化化合物の原料となる有機溶媒可
溶性第二成分元素含有化合物としては、所望の第二成分
元素を含有するアルコキシド、ハロゲン化物、オキシハ
ロゲン化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、あるいはアンモ
ニウム塩などが用いられる。以下に、第二成分元素ごと
に複合化化合物の原料として好適に使用できる有機溶媒
可溶性第二成分元素含有化合物を例示する。
【0020】即ち、第二成分元素が希土類元素である場
合の有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物としては、
LaCl、LaBr、LaI、LaCl・7H
O、La(NO・6HO、La(OCH
、La(OC、La(OC、C
eCl、CeBr、CeI、CeCl・6H
O、Ce(NO・6HO、PrCl、PrC
・7HO、Pr(NO・6HO、Pr
(OC、NdCl、NdBr、NdCl
・6HO、Nd(NO・5HO、SmCl
・xHO、Sm(NO・xHO、Sm(O
、EuCl・6HO、Eu(NO
・6HO、GdCl、GdCl・6HO、G
d(NO・5HO、TbCl、TbCl
xHO、Tb(NO・xH O、DyCl
DyCl・xHO、Dy(NO・5HO、
Dy(OC、HoCl、HoCl・6H
O、Ho(NO・5HO、ErCl・6H
O、Er(NO・5HO、Er(OC
、TmCl・6HO、Tm(NO
・5HO、YbBr、YbI、YbCl・6H
O、Yb(NO・xHO、LuCl、Lu
(NO・xHOなどを例示することができる。
【0021】第二成分元素が遷移元素である場合の有機
溶媒可溶性第二成分元素含有化合物としては、ScCl
、ScCl・xHO、Sc(NO・xH
O、TiCl、TiBr、Ti(OCH、T
i(OC、Ti(OC、Ti(O
、VBr、VCl、VCl、VCl
、VOBr、VOBr、VOCl、VF、V
、VF、VI・6HO、VO(OC
、VO(OC、VO(OC
、VO(OC、CrCl、CrBr
CrCl・xHO、CrBr・6HO、CrI
・xHO、Cr(CHCOO)・xHO、M
nCl、MnBr、MnI、MnCl・4H
O、MnBr・4HO、MnI・4HO、Mn
(NO・6HO、Mn(OC 、Mn
(OC、FeBr、FeBr・6H
O、FeBr 、FeBr・6HO、Fe(O
H)(CHCOO)、FeCl、FeCl・6
O、FeCl、FeI、Fe(NO・9
O、(NHFe(SO・xHO、
(NH)Fe(SO・xHO、Fe(OCH
、Fe(OC、Fe(OC
、Fe(OC、CoBr、Co
Br・6HO、Co(C ・4H
O、CoCl、CoCl・6HO、CoI
Co(NO ・6HO、Co(OC
NiBr、NiBr・xHO、Ni(CHCO
O)・xHO、NiCl、NiCl・6H
O、NiI 、NiI・6HO、Ni(NO
・6HO、CuBr、CuBr、Cu(CH
OO)、CuCl、CuCl、CuCl・2H
O、Cu(NO・3HO、ZnBr、Zn
(CHCOO)・2HO、ZnCl、Zn
、Zn(NO・6HO,Zn(OCH
、Zn(OC、Zn(OC、Z
n(OC、YBr、YCl・6HO、
YCl、Y(NO・6HO、Y(OCH
、Y(OC、Y(OC、ZrB
、ZrCl、ZrI、ZrO(CHCOO)
、ZrOCl・8HO、ZrI・xHO、Z
rO(NO・2HO、Zr(SO・4H
O、Zr(OCH、Zr(OC、Z
r(OC、Zr(OC 、NbCl
、NbOCl、NbBr、NbF、Nb(OC
、Nb(OC、Nb(OC
、Nb(OC、MoBr、MoBr
MoCl、(NHMo24・4HO、M
o(OC、RuCl・HO、PdCl
・2HO、AgNO、CdBr・4HO、Cd
Br、CdCl・5/2HO、CdCl、Cd
、CdI、Cd(NO・4HO、HfC
、HfOCl・8HO、Hf(OCH
Hf(OC、Hf(OC、Hf
(OC、TaCl、TaBr、Ta(O
CH、Ta(OC、Ta(OC
、Ta(OC、WCl、WCl
、WBr、W(OC、W(OC
、ReCl、ReCl、OsCl、IrCl
・3HO、IrCl、IrCl、PtCl・5
O、HPtCl・nHO、AuBr・xH
O、AuCl・xHO、AuHCl・4H
O、HgBr、HgCl、Hg(NO
2HO、HgSOなどを例示することができる。
【0022】第二成分元素が周期律表13族元素である
場合の有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物として
は、B、(NHO・5B・8H
O、BCl、BBr、BI、HBO、B
(OCH、B(OC、B(OC
、B(OC、AlBr、AlC
・6HO、AlCl、AlI、Al(N
・9HO、Al(SO、Al(S
・nHO、Al(OCH、Al(OC
、Al(OC、Al(OC
、GaBr、GaCl、GaI、Ga
(NO・xHO、Ga(SO、Ga
(SO ・xHO、Ga(OCH、Ga
(OC、Ga(OC、Ga(OC
、InBr、InCl、InCl・x
O、InI、In(NO・xHO、In
(SO、In(SO ・xHO、In
(OCH、In(OC、In(OC
、In(OC、CH(COOT
l)、TlOOCHなどを例示することができる。
【0023】第二成分元素が周期律表14族元素である
場合の有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物として
は、GeBr、GeCl、GeI、Ge(OCH
、Ge(OC、Ge(OC
、Ge(OC、テトラメトキシシ
ラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラ
ン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラ
ン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシ
シラン、プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリ
メトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−
ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメ
トキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリ
エトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、フェニル
トリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラ
ン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、n−ドデシ
ルトリエトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エ
チルトリブトキシシラン、エチルトリプロポキシシラ
ン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシ
ラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキ
シシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ジエチルジ
メトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、Si
Cl、SiHCl、SiHClなどが例示され
る。
【0024】第二成分元素が周期律表15族元素である
場合の有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物として
は、P、PBr、PCl、POBr、PO
Cl、PO(OCH、PO(OC
PO(OC、PO(OC、P(O
CH、P(OC、AsBr、AsC
、AsI、As(OCH、As(OC
、As(OCH7)、SbBr、SbCl
、SbCl、SbOCl,Sb(SO 、S
b(OCH、Sb(OC、Sb(OC
、Sb(OC、BiBr、Bi
Cl、BiI、Bi(NO・xHO、Bi
OCl、Bi(OCなどを例示することがで
きる。
【0025】第二成分元素がカルコゲン元素である場合
の有機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物としては、S
Cl、SCl、SeOCl、SeBr、Se
Cl 、SeI、TeBr、TeCl、TeO
・xHOなどを例示することができる。
【0026】複合化化合物を使用する場合における前駆
体溶液中の前駆体錫化合物と複合化化合物との量比は特
に限定されず、得られる複合酸化錫ゾルにおける分散粒
子の性状に応じて適宜決定すればよいが、通常、第二成
分元素の量は、前駆体溶液中の錫元素と第二成分元素と
の合計原子モル数を基準としたモル%で表して30モル
%以下である。また、前駆体溶液中における前駆体錫化
合物又は前駆体錫化合物及び複合化化合物の濃度は特に
限定されないが、均一な溶液が得られ、更に反応および
後処理が効率的に行なえるという観点から錫元素と第二
成分元素との合計原子モル数に対する有機溶媒のモル数
が、2〜1000倍、特に5〜500倍となるような濃
度にするのが好適である。
【0027】また、前記したような前駆体錫化合物の原
料となる有機溶媒可溶性錫化合物及び/又は金属錫、さ
らに必要に応じて使用する複合化化合物の原料となる有
機溶媒可溶性第二成分元素含有化合物を有機溶媒に溶解
させる方法は特に限定されず、例えば、有機溶媒を撹拌
しながらこれら原料を添加する方法等が好適に採用でき
る。なお、原料として金属錫を用いる場合には、金属錫
の溶解性を高めるために、他のハロゲン含有原料化合物
と併用したり、塩化水素などのハロゲン化水素ガスや塩
酸などを添加したりするのが好適である。さらに、金属
錫の溶解を促進するために、有機溶媒を還流させること
も効果的である。更に、金属錫または二価の錫イオンを
含有する有機溶媒可溶性錫化合物を用いて前駆体溶液を
調製する場合には、酸素、空気、過酸化水素などの酸化
剤を加えて系中で錫イオンの全て又は一部を四価に酸化
させて使用することが好ましい。
【0028】このようにして調製された前駆体溶液に
は、用いた原料或いはこれら原料を溶解させる時に加え
た添加物として酸根を有する化合物を使用した場合に
は、これら化合物に由来する酸根が含まれることにな
る。なお、酸根とは、酸基とも呼ばれ、酸の分子からイ
オン化しうる水素の一部または全部を除いた残りの基の
ことであり、通常陰イオンの形で存在することが多い。
このような酸根を具体的に示せば、ハロゲン根(ハロゲ
ンイオン)、硫酸根(硫酸イオン)、硝酸根(硝酸イオ
ン)を挙げることができる。
【0029】本発明の製造方法においては、上記のよう
な前駆体溶液を水の存在下で酸又は塩基と混合して前駆
体錫化合物又は前駆体錫化合物及び複合化化合物を加水
分解・重縮合させて錫系酸化物を得るが、該錫系酸化物
に含まれる酸根を湿状態で除去する時の操作性が良好
で、更にその時の錫系酸化物のロスが少なくなるような
粒子性状の錫系酸化物を得るために、上記反応を前記前
駆体溶液中に含まれる前駆体錫化合物及び複合化化合物
に含まれる金属(錫を含む)及び半金属元素との合計モ
ル数、即ち錫と第二成分元素(Sn+M)との合計モル
数に対して4〜40倍モル、好適には4〜20倍モルの
水の存在下で行なうことが重要である。反応時の水分モ
ル数が上記合計モル数に対して4倍未満の場合には加水
分解が十分に進行しない為、収率が低くなるばかりでな
く、その後の酸根除去工程において酸根の除去が困難と
なる。また、水のモル数が上記合計モル数に対して40
倍を越える場合には、錫系酸化物粒子の粒径が小さくな
りすぎ、例えば後の酸根除去工程において例えば濾過を
行なった時の濾過性が低下して時間がかかったり、粒子
のロスが増えて収率が低下したりする。反応時の水分量
を上記合計モル数に対して4〜40倍モルに制御する方
法は特に限定されず、前駆体溶液やこれと混合する酸又
は塩基に含まれる水分量を調べ、不足分の水を別途添加
することにより好適に行なうことができる。なお、前駆
体溶液調製時に使用する有機溶媒に水分が含まれていな
い場合であっても、前駆体錫化合物の原料や複合化化合
物の原料に結晶水の形で水がることがあるので、別途添
加する水分量を決定する場合にはこれら水分量も考慮す
る必要がある。
【0030】尚、前駆体溶液と水を混合して加水分解・
重縮合反応を行う際に、反応速度を制御したり、生成す
る錫系酸化物の濾過性を更によくするために、予め水を
アルコールなどの有機溶媒と混合して希釈してもよい。
水を希釈する際の有機溶媒の添加量は、水のモル数に対
して有機溶媒のモル数が2〜1000倍、特に5〜50
0倍となるようにするのが好適である。
【0031】また、上記加水分解・重縮合反応を行なう
ために使用する酸又は塩基は、前駆体錫化合物や複合化
化合物の加水分解・重縮合反応の触媒又は反応促進剤と
して機能するものであれば特に限定されず公知の酸又は
塩基が使用できる。好適に使用できる酸及び塩基を具体
的に例示すれば、酸としては、塩化水素、硝酸、酢酸な
どを挙げることができ、塩基としてはアンモニア、水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸アンモニウム、炭
酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、重
炭酸ナトリウム、重炭酸カリウムなどを挙げることがで
きる。また、塩基としてはアンモニアを遊離する化合物
なども使用することもできる。アンモニアを遊離させる
ことができる化合物として、尿素、ヘキサメチレンテト
ラミン、ホルムアミド、アセトアミドなどの化合物を挙
げることができる。通常、水を含む前駆体溶液が酸性の
場合には塩基を、また水を含む前駆体溶液が塩基性の場
合には酸を、更に水を含む前駆体溶液が中性の場合酸又
は塩基を混合して反応が行われる。混合する酸又は塩基
の量は、反応が充分に進行する量であれば特に限定され
ないが、通常は、水を含む前駆体溶液が中性の場合には
触媒量、水を含む前駆体溶液が酸性又は塩基性の場合に
は該溶液を中和するのに必要な量より僅かに多い量を混
合すればよい。
【0032】また、前駆体溶液と酸又は塩基、更に必要
に応じて添加する水とを混合する順序には特に制限はな
く、水と酸又は塩基を混合した後に錫系酸化物前駆体溶
液を混合したり、錫系酸化物前駆体溶液と水を混合した
後に酸又は塩基を混合することができる。このようにし
て特定量の水の共存下で前駆体溶液と酸又は塩基とを混
合することにより、前駆体溶液中の前駆体錫化合物又は
前駆体錫化合物及び複合化化合物が加水分解・重縮合反
応を起こし、酸化錫又は複合酸化錫を主成分とする粒子
が形成される。この時、溶液の温度は特に限定されない
が、反応時間を調整する目的等で必要に応じて加熱又は
冷却してもよい。このようにして粒子が形成された溶液
から溶媒を濾過等により除去することにより、酸根を含
む錫系酸化物を得ることができる。
【0033】なお、このような方法で得られる錫系酸化
物は、最終的に得られるゾル中の固形成分となるもので
あるが、該錫系酸化物の組成は前駆体溶液の組成をほぼ
反映したものであり、その組成に応じて、該錫系酸化物
を室温にて乾燥して得られる錫系酸化物粉末の粉末比抵
抗(圧粉法による)が10〜10Ωcmの範囲で調
整可能である。また、該錫系酸化物は前駆体溶液の組成
や反応条件を制御することにより結晶質構造、非晶質構
造、或いはこれらが混在する構造の何れの構造もとり得
る。更に、粒径もある程度制御可能であり結晶質のもの
として結晶子サイズが1〜30nmのものも調製可能で
ある。
【0034】本発明の製造方法では、上記のようにして
前駆体溶液又はこれと混合した酸に由来する酸根を含む
錫系酸化物を得た後、該錫系酸化物から錫系酸化物中に
含まれる酸根を湿状態で除去した後に当該錫系酸化物を
水系溶液に分散させて錫系酸化物ゾルを得る。酸根が錫
系酸化物中に多量に残っていると、後に錫系酸化物に水
系溶液を添加して錫系酸化物ゾルを調製した際に、錫系
酸化物ゾル中に含まれる粒子の安定性が低下して、ゲル
化することがある。このような酸根は例えば、錫系酸化
物を高温で加熱処理することにより分解させたり揮発さ
せたりすることによって除去することもできるが、高温
で加熱した場合には粒子の融着や強固な凝集が起こり、
破砕処理を行なってから水性溶液に分散させても分散粒
子の粒径が大きくなったりばらついたりして、微粒子が
均一に分散したゾルを得ることが困難である。特に25
0℃以上で焼成を行うと、粒径0.1μm以上の焼結し
た粒子が多く存在するようになり、そのような粒子を含
む粉末を水性溶液に分散させても十分に分散しない。そ
のため、本発明の製造方法では、上記のような粒子の融
着や強固な凝集を起こさないように湿状態を保ったまま
酸根を除去する。湿状態で酸根の除去を行なうことによ
り、水性溶液に分散させてゾルとした時に、遠心沈降法
で測定した分散粒子の粒度分布におけるD90の粒径が
0.1μm以下、より好ましくは0.08μm以下であ
る、透明被膜を形成するのに好適な錫系酸化物ゾルを得
ることが可能となる。
【0035】一般的な遠心沈降法の原理を利用した粒度
分布測定装置では、その検出下限は0.01μmである
ため、本発明での遠心沈降法で測定した分散粒子の粒度
分布におけるD90は、0.01μm以上の測定領域に
おける粒度分布測定結果に基づいて、横軸に粒径、縦軸
に体積換算の通過分積算をとって積算分布曲線を描いた
ときに、通過分積算の値が90%に相当する粒径として
定義する。但し、錫系酸化物ゾルに0.01μm以下の
微粒子が多く含まれる場合には、そのような微粒子は遠
心沈降法では検出されない。よって、遠心沈降法で検出
されない場合は、0.01μm以下の微粒子のみを含有
する錫系酸化物ゾルと判断できるため、D90は0.0
1μm以下となる。
【0036】また、錫系酸化物ゾルには、製造中に埃や
ゴミ等の粗大な不純物が不可避的に混入する場合があ
り、遠心沈降法で粒度分布を測定した際に、不純物に起
因するピークが分散粒子のピークとは明確に区別できる
位置に検出されることがある。大抵の場合、そのような
粗大な不純物に起因するピークはおよそ数μm前後の領
域に現れるが、D90を算出する際には、このような不
純物に由来するピークは除外する。
【0037】湿状態で酸根を除去する方法は特に限定さ
れないが、注水して洗浄した後に濾別して錫系酸化物を
回収する水洗濾過法、同様に水洗してデカンテーション
により錫系酸化物を回収するデカンテーション法、イオ
ン交換法、電解透析法などを用いることができる。中で
も、水洗濾過法は操作が簡単であり、高価な装置などを
使用せずに酸根を除去できるので好ましい。なお、この
時用いる水には、酸根除去効率を高めたり、酸根除去後
の乾燥を容易にするためにアルコールやアセトン等の水
溶性有機溶媒が含まれていてもよい。なお、残存する酸
根の量は少なければ少ないほうが良いが、必ずしも酸根
の量をゼロにしなくとも保存安定性の良いゾルを得るこ
とは可能である。保存安定性の良いゾル中に含有される
酸根の量は、ゾルに含まれる分散粒子の粒径や含有量等
によって異なるため、最低限どの程度酸根を除去すれば
よいかは一概に特定することはできないが、一般には乾
燥錫系酸化物の重量基準で3wt%以下、特に0.3w
t%以下になるまで酸根を除去すればよい。
【0038】なお、反応によって生成した錫系酸化物中
には、酸根以外にもナトリウムイオン、カリウムイオ
ン、アンモニウムイオンなどのプロトン以外のカチオン
が含まれている。これらカチオンのゾルの安定性に与え
る影響は酸根に比べて小さいが、これらカチオンの残存
量が余りにも多いと、錫系酸化物ゾルを添加したコーテ
ィング液を用いて塗膜を形成した際に塗膜の導電性が低
下したり、塗膜からカチオンが溶出して問題になること
がある。したがって、これらカチオンの残存量も低くす
る必要があるが、酸根除去工程においてこれらカチオン
も問題のないレベルまで除去される。
【0039】本発明の製造方法では、上記のようにして
酸根を除去した錫系酸化物を水系溶液に分散することで
錫系酸化物ゾルを得る。このとき水系溶液としては、純
水、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カ
リウム水溶液等の塩基性水溶液を使用するのが好適であ
る。錫系酸化物ゾルは一般に塩基性にすると安定性が向
上し、固形分濃度を高めてもゲル化しにくくなるため好
ましいが、錫系酸化物ゾルのpHがあまりに高くなる
と、後で錫系酸化物ゾルを塗料に加えた際に、塗料中の
樹脂が劣化しやすくなり問題になることがあるので、錫
系酸化物ゾルのpHは7〜11の範囲に調整することが
好ましい。また、錫系酸化物を水系溶液に分散する際に
使用する水系溶液の量は、最終的に得られるゾルの使用
目的に応じて適宜決定すればよいが、あまりに錫系酸化
物ゾル中の固形分濃度が低いと使時に濃縮する必要が生
じ、また逆に固形分濃度高すぎると粘度が上昇して取扱
いにくくなるので、通常は得られる錫系酸化物ゾルの固
形分濃度が2〜30wt%、特に3〜20wt%になる
量使用される。また、錫系酸化物を水系溶液に分散する
際に、錫系酸化物ゾル中の粒子の分散安定性を高めるた
めに分散剤などを添加してもよい。
【0040】なお、安定な錫系酸化物ゾルが得られる範
囲内であれば水系溶液中に水溶性有機溶媒などが含まれ
ていてもよい。また、本発明の錫系酸化物ゾルの製造方
法においては、特に加熱処理を行う必要はないが、錫系
酸化物ゾル中に含まれるアンモニアや有機溶媒を除去し
たり、水の一部を留去して固形分濃度を調整するため
に、加熱処理を行っても何ら差し支えない。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はかかる実施例によって限定されるもの
ではない。
【0042】実施例1 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gを溶解させて前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液
と、28%アンモニア水146g(アンモニア41g、
水105g)とメタノール1000mlの混合溶液を徐
々に混合して錫酸化物を生成させた後、生成した錫酸化
物を濾別してケーキを得た。上記の錫酸化物の生成に使
用した水の量は、錫のモル数の約15倍モルである。続
いてケーキにイオン交換水500mlを加えて攪拌し、
再度錫酸化物を濾別し、更にこの水洗・濾過の操作を3
回繰り返し(計4回操作を行なった。)、酸根の除去を
行なった。上記の濾過に要した時間は1回当たり平均で
3分間であった。回収した錫酸化物の全量にイオン交換
水を加えて重量を400gに調整して24時間攪拌して
分散させ、錫酸化物ゾルを得た。
【0043】上記のようにして得られたゾルについて、
ゾル中に分散する粒子についてD90の粒径の測定、粉
末比抵抗測定、及び粒子のトータル収率の決定を行な
い、更に、酸根除去工程後に回収されたゲル中に含まれ
るカチオン(アンモニウムイオン)濃度と酸根(ハロゲ
ンイオン)濃度の決定を行なった。なお、各測定及び決
定は以下に示す方法で行なった。
【0044】(1)D90の粒径の測定 まず、得られたゾルをイオン交換水で希釈し、次いで島
津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置SA−CPAL
にて粒度分布の測定を行った。得られた粒度分布曲線か
ら、D90の粒径を算出した。
【0045】(2)粉末比抵抗の測定 先ず、得られたゾル20gを室温で48時間真空乾燥し
て乾燥状態の分散粒子を回収した後にこれをメノウ乳鉢
で粉砕した。次いで、得られた粉末を銅製の下ポンチ
(φ15mm×高さ10mm)が付属した中空(穴直径
φ15mm)の円筒形のダイス(絶縁体、φ50mm×
高さ50mm)の中に錫系酸化物粉末を入れた後、その
上端に銅製の上ポンチ(φ15mm×高さ50mm)を
挿入し、5.6×10Paの圧力で加圧成型し、ペレ
ット状の試験片を作製した。その後、該試験片を加圧し
た状態で、上ポンチと下ポンチ間の抵抗値をヒューレッ
ト・パッカード(HEWLETT PACKARD)社
製3478Aマルチメーターを用いて4端子法で測定
し、同時に試験片の高さを算出した。試験片の高さの算
出では、試験片を挟んだ上ポンチの上面から下ポンチの
下面までの間隔を測定し、測定値から上ポンチの長さと
下ポンチの長さを引いて、試験片の高さを算出した。測
定された抵抗値及び試験片の高さ及び断面積から粉末比
抵抗を算出した。
【0046】(3)粒子のトータル収率(単に収率とも
いう。)の決定 用いた前駆体溶液に含まれる前駆体錫化合物又は前駆体
錫化合物及び複合化化合物がすべて錫系酸化物粒子に転
化したとした場合に得られる粒子の総重量(w )に対
する、実際に得られたゾル中に含まれている錫系酸化物
粒子の乾燥重量(w)の割合、即ち、{(w)/
(w)}×100(%)をトータル収率として定義し
決定した。但し、wは、得られたゾル20gをオーブ
ンで120℃にて24時間乾燥し、該ゾル20g中に含
まれる錫系酸化物粉末の乾燥中重量を測定し、その値を
20(=400g/20g)倍してゾル全量に含まれる
錫系酸化物粉末の乾燥中重量に換算して求めた。なお、
上記wは、用いた前駆体溶液から得られる錫系酸化物
の全量を用いてゾルを製造しようとした時の値であり、
より反応が充分に進行しなかったために得られなか
った錫系酸化物の重量及び製造過程において不可避的に
ロスした錫系酸化物の重量分だけ低い値となっている。
一般に加水分解・重縮合反応の収率は高く、他に錫系酸
化物のロスが起り易い操作がないことから、上記トータ
ル収率は、主に酸根除去過程における錫系酸化物の回収
率とほぼ一致する。
【0047】(4)酸根除去工程後に回収されたゲル中
に含まれるカチオン(アンモニウムイオン)濃度と酸根
(ハロゲンイオン)濃度の決定 日本ダイオネクス(株)製イオンクロマトグラフDX−
120を用いてゾル中のアンモニウムイオン濃度とハロ
ゲンイオン濃度の測定し、上記(2)で求めたwを用
いて粒子重量基準の濃度に換算し、酸根除去工程後に回
収された錫系酸化物中に含まれるカチオン(アンモニウ
ムイオン)濃度と酸根(ハロゲンイオン)濃度を決定し
た。
【0048】錫系酸化物形成における水分量、酸根除去
工程における濾過所用時間、及び上記方法に従って行な
った評価結果を表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】また、得られたゾルを室温で乾燥した試料
について透過電子顕微鏡にて観察したところ、このゾル
の固形成分は結晶子径4nm程度の結晶質二酸化錫で構
成されていることが確認された。
【0051】実施例2 実施例1と同様にして前駆体溶液を調製した。該前駆体
溶液と、28%アンモニア水350g(アンモニア98
g、水252g)とメタノール1000mlの混合溶液
を徐々に混合して錫系酸化物を生成させた後、生成した
錫系酸化物を濾別した。上記の錫系酸化物の生成に使用
した水の量は、錫に対してモル換算で約35倍である。
続いて錫系酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪
拌し、再度濾別した。この水洗・濾過の操作を計4回繰
り返した。錫系酸化物の濾過に要した時間は1回当たり
平均で15分間であった。回収した錫系酸化物全量にイ
オン交換水を加えて重量を400gに調整して24時間
攪拌して分散させ、錫系酸化物ゾルを得た。得られたゾ
ルについて実施例1と同様にして評価を行なった。その
結果を表1に合わせて示す。
【0052】実施例3 メタノール150mlに金属錫11.9gと塩化第一錫
(SnCl)56.9gを還流しながら溶解させ、前
駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アンモニ
ア水55g(アンモニア15g、水40g)とメタノー
ル1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系酸化物
を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別した。この
錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫に対してモル
換算で約6倍である。続いて錫系酸化物にイオン交換水
500mlを加えて攪拌し、再度濾別した。この水洗・
濾過の操作を計4回繰り返した。錫系酸化物の濾過に要
した時間は1回当たり平均で3分間であった。回収した
錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を400g
に調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得た。得
られたゾルについて実施例1と同様にして評価を行なっ
た。その結果を表1に合わせて示す。
【0053】実施例4 メタノール150mlに塩化第一錫(SnCl)7
5.8gを溶解させ、攪拌しながら乾燥空気を吹き込ん
で前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アン
モニア水73g(アンモニア20g、水53g)とメタ
ノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系酸
化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別した。
上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫に対し
てモル換算で約7倍である。続いて錫系酸化物にイオン
交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾別した。この
水洗・濾過の操作を4回繰り返した。錫系酸化物の濾過
に要した時間は1回当たり平均で3分間であった。回収
した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を40
0gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得
た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価を
行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0054】また、透過電子顕微鏡を用いた観察によ
り、このゾルの固形成分は、結晶質二酸化錫および非晶
質酸化錫で構成されていることが確認された。
【0055】実施例5 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと三塩化セリウム(CeCl)1gを溶解させて
前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アンモ
ニア水146g(アンモニア41g、水105g)とメ
タノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系
酸化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別し
た。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫と
セリウムの合計モル数の約14倍である。続いて錫系酸
化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾
別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。錫系
酸化物の濾過に要した時間は1回当たり平均で4分間で
あった。回収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加え
て重量を400gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化
物ゾルを得た。得られたゾルについて実施例1と同様に
して評価を行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0056】実施例6 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと四塩化チタン(TiCl)2gを溶解させて前
駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アンモニ
ア水146g(アンモニア41g、水105g)とメタ
ノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系酸
化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別した。
上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫とチタ
ンの合計モル数の約14倍である。続いて錫系酸化物に
イオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾別し
た。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過に要
した時間は1回当たり平均で3分間であった。回収した
錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を400g
に調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得た。得
られたゾルについて実施例1と同様にして評価を行なっ
た。その結果を表1に合わせて示す。
【0057】実施例7 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと五塩化タンタル(TaCl)2gを溶解させて
前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アンモ
ニア水146g(アンモニア41g、水105g)とメ
タノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系
酸化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別し
た。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫と
タンタルの合計モル数の約14倍である。続いて錫系酸
化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾
別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過
に要した時間は1回当たり平均で4分間であった。回収
した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を40
0gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得
た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価を
行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0058】実施例8 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと五塩化モリブデン(MoCl)1gを溶解させ
て前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アン
モニア水146g(アンモニア41g、水105g)と
メタノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫
系酸化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別し
た。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫と
モリブデンの合計モル数の約14倍である。続いて錫系
酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度
濾別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾
過に要した時間は1回当たり平均で3分間であった。回
収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を4
00gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得
た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価を
行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0059】実施例9 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと三塩化インジウム(InCl)1gを溶解させ
て前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アン
モニア水146g(アンモニア41g、水105g)と
メタノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫
系酸化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別し
た。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫と
インジウムの合計モル数の約14倍である。続いて錫系
酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度
濾別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾
過に要した時間は1回当たり平均で3分間であった。回
収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を4
00gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得
た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価を
行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0060】実施例10 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gとテトラエトキシシラン(Si(OC
4gを溶解させて前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液
と、28%アンモニア水146g(アンモニア41g、
水105g)とメタノール1000mlの混合溶液を徐
々に混合して錫系酸化物を生成させた後、生成した錫系
酸化物を濾別した。上記の錫系酸化物の生成に使用した
水の量は、錫と珪素の合計モル数の約14倍である。続
いて錫系酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌
し、再度濾別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返
した。濾過に要した時間は1回当たり平均で4分間であ
った。回収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて
重量を400gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物
ゾルを得た。得られたゾルについて実施例1と同様にし
て評価を行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0061】実施例11 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと三塩化アンチモン(SbCl)9gを溶解させ
て前駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アン
モニア水160g(アンモニア45g、水115g)と
メタノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫
系酸化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別し
た。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫と
アンチモンの合計モル数の約13倍である。続いて錫系
酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度
濾別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾
過に要した時間は1回当たり平均で3分間であった。回
収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を4
00gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得
た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価を
行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0062】実施例12 メタノール150mlに塩化第二錫(SnCl)10
4gと二塩化テルル(TeCl)4gを溶解させて前
駆体溶液を調製した。該前駆体溶液と、28%アンモニ
ア水146g(アンモニア41g、水105g)とメタ
ノール1000mlの混合溶液を徐々に混合して錫系酸
化物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別した。
上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫とテル
ルの合計モル数の約14倍である。続いて錫系酸化物に
イオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾別し
た。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過に要
した時間は1回当たり平均で3分間であった。回収した
錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を400g
に調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得た。得
られたゾルについて実施例1と同様にして評価を行なっ
た。その結果を表1に合わせて示す。
【0063】比較例1 実施例1と同様にして前駆体溶液を調製した。該前駆体
溶液と、28%アンモニア水20g(アンモニア6g、
水14g)とメタノール1000mlの混合溶液を徐々
に混合して錫系酸化物を生成させた後、生成した錫系酸
化物を濾別した。上記の錫系酸化物の生成に使用した水
の量は、錫に対してモル換算で約2倍である。続いて錫
系酸化物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再
度濾別した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。
濾過に要した時間は1回当たり平均で6分間であった。
回収した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を
400gに調整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを
得た。得られたゾルについて実施例1と同様にして評価
を行なった。その結果を表1に合わせて示す。
【0064】比較例2 実施例1と同様にして前駆体溶液を調製した。該前駆体
溶液と、28%アンモニア水146g(アンモニア41
g、水105g)、イオン交換水250mlおよびメタ
ノール750mlの混合溶液を徐々に混合して錫系酸化
物を生成させた後、生成した錫系酸化物を濾別した。上
記の錫系酸化物の生成に使用した水の量は、錫に対して
モル換算で約49倍である。続いて錫系酸化物にイオン
交換水500mlを加えて攪拌し、再度を濾別した。こ
の水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過に要した時
間は1回当たり平均で約1時間であった。回収した錫系
酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を400gに調
整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得た。得られ
たゾルについて実施例1と同様にして評価を行なった。
その結果を表1に合わせて示す。
【0065】比較例3 実施例1と同様にして前駆体溶液を調製した。該前駆体
溶液と、28%アンモニア水146g(アンモニア41
g、水105g)とイオン交換水1000mlの混合溶
液を徐々に混合して錫系酸化物を生成させた後、生成物
を濾別した。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量
は、錫に対してモル換算で約153倍である。次に錫系
酸化物にメタノール1000mlを加えて攪拌し、再度
濾別した。メタノール溶媒に置換した錫系酸化物にイオ
ン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾別した。こ
の水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過に要した時
間は1回当たり平均で約1時間であった。回収した錫系
酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を400gに調
整して24時間攪拌し、錫系酸化物ゾルを得た。得られ
たゾルについて実施例1と同様にして評価を行なった。
その結果を表1に合わせて示す。
【0066】比較例4 イオン交換水150mlに塩化第二錫(SnCl)1
04gを溶解させて前駆体溶液を調製した。該前駆体溶
液にイオン交換水1000mlと重炭酸アンモニウム7
9gを徐々に加えて錫系酸化物を生成させた後、生成物
を濾別した。上記の錫系酸化物の生成に使用した水の量
は、錫に対してモル換算で約160倍である。錫系酸化
物にイオン交換水500mlを加えて攪拌し、再度濾別
した。この水洗・濾過の操作を4回繰り返した。濾過に
要した時間は1回当たり平均で約1時間であった。回収
した錫系酸化物全量にイオン交換水を加えて重量を40
0gに調整した後、オートクレーブで200℃24時間
加熱処理し、錫系酸化物ゾルを得た。得られたゾルにつ
いて実施例1と同様にして評価を行なった。その結果を
表1に合わせて示す。また、透過電子顕微鏡測定によ
り、このゾルの固形成分は結晶子径15nm程度の結晶
質二酸化錫粒子で構成されていることが確認された。
【0067】比較例5 イオン交換水1000mlに塩化第二錫(SnCl
104gを溶解させて前駆体溶液を調製した。該前駆体
溶液を煮沸して錫系酸化物を生成させた。上記の錫系酸
化物の生成に使用した水の量は、錫に対してモル換算で
約139倍である。生成物を濾別しようとしたところ、
5時間経過しても1回目の濾過操作が完了しなかった。
そこで、濾過操作を中止した。
【0068】比較例6 前述した特願平9−76164の実施例2に記載した方
法と同様にして酸化錫粉末を得た。即ち、メタノール6
4.2g(2.0モル)に、塩化第一錫(SnCl
9.48g(0.05モル)、金属錫5.94g(0.
05モル)、テトラエトキシシラン(Si(OC
)2.30g(0.011モル)および三塩
化アンチモン(SbCl)1.21g(0.0053
モル)を還流しながら順次溶解させ、均一で透明な酸化
錫前駆体溶液を調製した。この酸化錫前駆体溶液を濃縮
して得られたゲルを、電気炉を用いて空気中600℃で
1時間焼成して酸化錫粉末を得た。
【0069】得られた粉末10gをメノウ乳鉢で粉砕し
た後、イオン交換水400gに入れ、超音波を加えて分
散を試みた。しかしながら、この分散液について粒度分
布測定を行ったところ、粒度分布におけるD90の粒径
が5μmであり、粗大な粒子が存在することが分かっ
た。
【0070】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、錫系酸化物
ゾルを高収率で、且つ容易に製造することが可能となっ
た。本発明により製造される錫系酸化物ゾルは、例え
ば、室温で乾燥した錫系酸化物粉末の粉末比抵抗が10
〜10Ωcmと小さく、しかも透明性が高いため、
透明基材の帯電防止処理剤、屈折率制御剤あるいは紫外
線・赤外線遮蔽剤として好適に使用できる。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 加水分解及び重縮合して錫酸化物を形成
    し得る錫化合物、又は該錫化合物及び該錫化合物と共に
    加水分解及び重縮合して複合錫酸化物を形成し得る金属
    或いは半金属を含む化合物が有機溶媒に溶解した酸根を
    含有していてもよい錫系酸化物前駆体溶液と、酸又は塩
    基とを混合し、前記錫系酸化物前駆体溶液中に含まれる
    前記錫化合物及び複合錫酸化物を形成し得る金属或いは
    半金属を含む化合物に含まれる金属(錫を含む)及び半
    金属元素の合計モル数に対して4〜40倍モルの水の存
    在下で反応させて酸根を含む錫系酸化物を得、次いで得
    られた錫系酸化物中に含まれる酸根を湿状態で除去した
    後に当該錫系酸化物を水系溶液に分散させて錫系酸化物
    ゾルを得ることを特徴とする錫系酸化物ゾルの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 前記錫化合物と共に加水分解及び重縮合
    して複合錫酸化物を形成し得る金属或いは半金属元素を
    含む化合物が、希土類元素、遷移元素、周期律表13族
    元素、周期律表14族元素(但し、錫を除く。)、周期
    律表15族元素、およびカルコゲン元素からなる群より
    選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物であること
    を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 遠心沈降法で測定した分散粒子の粒度分
    布におけるD90の粒径が0.1μm以下である錫系酸
    化物ゾルを得ることを特徴とする請求項1又は2に記載
    の製造方法。
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