JP2003013799A - アルミ合金製内燃機関用ピストン及びその製造方法 - Google Patents

アルミ合金製内燃機関用ピストン及びその製造方法

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JP2003013799A
JP2003013799A JP2001195378A JP2001195378A JP2003013799A JP 2003013799 A JP2003013799 A JP 2003013799A JP 2001195378 A JP2001195378 A JP 2001195378A JP 2001195378 A JP2001195378 A JP 2001195378A JP 2003013799 A JP2003013799 A JP 2003013799A
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anodic oxide
piston
oxide film
internal combustion
aluminum alloy
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JP2001195378A
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Hajime Miyasaka
一 宮坂
Ryotaro Takada
亮太郎 高田
Koji Kobayashi
幸司 小林
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スカート部の全域に油膜を均一に保持するこ
とができ、かつシリンダに接触する際の面圧を抑えるこ
とができるアルミ合金製内燃機関用ピストンを提供す
る。 【解決手段】 アルミ合金製内燃機関用ピストン10
は、スカート部20の外表面21aに条痕22を形成
し、この条痕22の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混
合した電解液を用いて陽極酸化皮膜50を被せ、この陽
極酸化皮膜50の微細な孔52に潤滑材54を含浸させ
たものである。アルミ合金製内燃機関用ピストン10
は、陽極酸化皮膜50において条痕22の頂部22aに
相当する部位H1を滑らかな面に形成したものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルミ合金製のピス
トンに陽極酸化皮膜を被せた内燃機関用のピストン及び
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の燃費やエンジン出力を向上させ
るためにピストンの摺動抵抗を減少させる方法が知られ
ている。このピストンの一例として、特開平11−33
6895号公報「ピストン及びピストンの加工方法」が
提案されている。この技術はピストンのスカート部に陽
極酸化皮膜を形成し、陽極酸化皮膜に化成処理皮膜を形
成することで、ピストンの摺動抵抗を減少させるもので
ある。
【0003】一方、摺動抵抗を減少させるために、ピス
トンのスカート部に条痕を形成する方法も知られてお
り、条痕を上記公報の技術と併用すること(すなわち、
条痕に皮膜を被せること)で摺動抵抗をより減少するこ
とができる。以下、条痕に皮膜を被せた例を、次図で詳
しく説明する。
【0004】図16(a),(b)は従来の内燃機関用
ピストンのスカート部の断面図であり、(a)はスカー
ト部に条痕を形成した例を示し、(b)は条痕に皮膜を
被せた例を示す。 (a)において、ピストン130のスカート部131に
条痕132・・・(・・・は複数個を示す)を形成する。条痕
132・・・の凹部133・・・を深さA1に一定に確保し、
凹部133・・・に油を溜めることにより、スカート部1
31全体に油膜を均一に保持することができる。このた
め、ピストン130の摺動抵抗を減少することができ
る。 (b)において、条痕132・・・を形成したスカート部
131に陽極酸化皮膜135を形成し、陽極酸化皮膜1
35に化成処理皮膜136を形成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、条痕132・・
・に陽極酸化皮膜135及び化成処理皮膜136を形成
することで、化成処理皮膜136の凹部137・・・を条
痕132の凹部133・・・に合せて一定ピッチに形成す
ることはできない。加えて、化成処理皮膜136の凹部
137・・・は深さA2も不均一なので、スカート部13
1全体に油膜を均一に保持することはできない。従っ
て、条痕132・・・に皮膜135,136を被せても、
ピストン130の摺動抵抗を大きく減らすことはできな
い。
【0006】また、化成処理皮膜136の頂部138
a,138b(その他の頂部は符号を付さない)は不均
一に突出するので、ピストン130をシリンダ内で往復
運動する際に、特に高く突出した頂部138aがシリン
ダに接触する際の面圧が高くなる。よって、摺動抵抗が
高くなることが考えられる。
【0007】そこで、本発明の目的は、スカート部の全
域に油膜を均一に保持することができ、かつシリンダに
接触する際の面圧を抑えることができるアルミ合金製内
燃機関用ピストン及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明の請求項1は、スカート部の外表面に条痕を形
成し、この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合
した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化
皮膜の微細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃
機関用ピストンであって、陽極酸化皮膜において条痕の
頂部に相当する部位をカットしつつ丸める処理を施した
ものであることを特徴とする。
【0009】電解液にりん酸塩並びにふっ化物を混合す
ることで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これによ
り、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成して、陽
極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすることができ
る。このため、陽極酸化皮膜の表面全域に油膜を均一に
保持することができる。
【0010】加えて、りん酸塩には陽極酸化皮膜の微細
な孔の孔径を大きくする作用がある。このため、微細な
孔に多量の潤滑剤を含浸させ、その潤滑剤を孔内に確実
に固着させることができる。さらに、条痕の頂部に相当
する陽極酸化皮膜をカットしつつ丸める処理を施すこと
により、その部位を滑らかな面にすることができる。こ
のため、ピストンがシリンダに接触した際の面圧を抑え
ることができる。
【0011】請求項2は、ピストンスカート部の外表面
に条痕を加工する工程と、この条痕の表面にりん酸塩並
びにふっ化物を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜を
被せる工程と、この陽極酸皮膜の微細な孔に潤滑材を含
ませる工程と、陽極酸化皮膜において条痕の頂部に相当
する部位をカットしつつ丸めるラップ処理あるいは砥粒
流動加工を施す工程とからなる。
【0012】条痕に陽極酸化皮膜を被せた後、条痕の頂
部に相当する陽極酸化皮膜にラップ処理あるいは砥粒流
動加工を施すことで、陽極酸化皮膜をカットしつつ丸め
るようにした。このため、ラップ処理あるいは砥粒流動
加工だけで、条痕の頂部に相当する陽極酸化皮膜を滑ら
かな面に仕上げて、ピストンがシリンダに接触した際の
面圧を抑えることができる。
【0013】請求項3は、ピストンスカート部の外表面
に条痕を加工する工程と、この条痕の頂部をカットしつ
つ丸める工程と、条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物
を混合した電解液を用いて陽極酸化皮膜を被せる工程
と、この陽極酸皮膜の微細な孔に潤滑材を含ませる工程
と、丸めた条痕に相当する陽極酸化皮膜の部位にラップ
処理あるいは砥粒流動加工を施す工程とからなる。
【0014】条痕に陽極酸化皮膜を被せる前に、条痕の
頂部をカットしつつ丸めることで、条痕に陽極酸化皮膜
を丸めた状態に被せることができる。このため、陽極酸
化皮膜を僅かに研磨するだけで、陽極酸化皮膜を滑らか
な面に仕上げることができるので、ラップ処理や砥粒流
動加工を行う時間を短くすることができる。
【0015】請求項4は、ラップ処理をバフラップなど
の軟質のラップ盤でラップ処理を実施することを特徴と
する。軟質のラップ盤は被ラップ面の凹凸に倣わせて研
磨することが可能である。このため、軟質のラップ盤で
ラップ処理を行うことで、条痕の頂部に相当する部位を
好適にカットしつつ丸めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基
づいて以下に説明する。図1は本発明に係るアルミ合金
製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の斜視図であ
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、Si(シ
リコン)系アルミニウム合金で形成した部材であって、
ピストン頭部12にピストンリング溝13,14及びオ
イルリング溝15を形成し、オイルリング溝15の下側
に一対のスカート部20,25を形成し、スカート部2
0,25の外表面21a(スカート部25の外表面は図
示しない)に条痕22を形成し、一対のスカート部2
0,25の間に一対のピンボス部35,37(ピンボス
部37は図2参照)を形成した部材である。
【0017】スカート部20,25は、条痕22を形成
した各外表面21aに、りん酸塩並びにふっ化物を混合
した電解液で陽極酸化皮膜(特殊な陽極酸化皮膜)5
0,50(スカート部25の陽極酸化皮膜50は図2に
示す)をそれぞれ被せ、特殊な陽極酸化皮膜50,50
の微細な孔に潤滑剤54(図4に示す)を含浸させた部
材である。なお、陽極酸化皮膜50を被せた領域を「網
目」で示す。
【0018】図2は図1の2矢視図であり、この図でア
ルミ合金製内燃機関用ピストンの形状を詳しく説明す
る。アルミ合金製内燃機関用ピストン10は、コンロッ
ド(図示しない)側から見たときに、一対のスカート部
20,25を対向する一対で構成し、これら一対のスカ
ート部20,25の対向する端部(一端)20a,25
a同士を壁部30で連結し、スカート部20,25の対
向する端部(他端)20b,25b同士を壁部32で連
結することで、これら壁部30,32とスカート部2
0,25とで略矩形を形成させ、且つ壁部30,32の
中央にピンボス部35,37を膨出形成した部材であ
る。
【0019】加えて、アルミ合金製内燃機関用ピストン
10は、壁部30,32がスカート部20,25に交わ
る部位(すなわち、スカート部20,25の一端20
a,25a及び他端20b,25b)において、これら
の部位の内壁40〜43を円弧状に形成し、スカート部
20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚t2より
薄く設定した。
【0020】スカート部20,25の対向する一端20
a,25aを壁部30で連結し、他端20b,25bを
壁部32で連結することで、壁部30,32及びスカー
ト部20,25で略矩形を形成する。このため、スカー
ト部20,25の幅Wをピンボス部35,37の幅W1
より小さくすることができる。従って、スカート部2
0,25を幅狭まとすることで、アルミ合金製内燃機関
用ピストン10の軽量化を図ることができる。また、ス
カート部20,25の肉厚t1を壁部30,32の肉厚
t2より薄く設定したので、アルミ合金製内燃機関用ピ
ストン10をより軽量にすることができる。
【0021】一方、スカート部20,25及び壁部3
0,32で略矩形を形成することにより、スカート部2
0,25を壁部30,32で補強することができる。従
って、スカート部20,25の剛性を高めることができ
る。また、壁部30,32がスカート部20,25に交
わるスカート部の一端20a,25a及び他端20b,
25bの内壁40〜43を円弧状に形成したので、スカ
ート部の一端20a,25a及び他端20b,25bに
応力が集中することを防ぐことができる。従って、スカ
ート部20,25の剛性をより高めることができる。
【0022】一対のスカート部20,25は、幅W及び
長さL(図1に示す)の網目で示した外表面21aに条
痕22・・・(図1に示す)を形成し、スカート部20,
25の各外表面21aに特殊な陽極酸化皮膜50,50
をそれぞれ被せ、特殊な陽極酸化皮膜50,50の微細
な孔に潤滑剤を含浸させたものである。なお、特殊な陽
極酸化皮膜及び潤滑剤については図4でさらに詳しく説
明する。
【0023】図3は図1の3矢視図であり、スカート部
20,25の下端23,28(下端28は図1も参照)
をピンボス部35,37の下端36,38より下方に延
した状態を示す。スカート部20,25の下端23,2
8をピンボス部35,37の下端36,38より下方に
延すことにより、アルミ合金製内燃機関用ピストン10
がシリンダ内を移動している際に、スカート部20,2
5をシリンダに接触させることでピストン10の姿勢を
正規の状態に容易に保つことができる。
【0024】図4は本発明に係るアルミ合金製内燃機関
用ピストンの特殊な陽極酸化皮膜の表面を拡大した断面
図である。なお、潤滑剤54として熱硬化性樹脂を使用
した例を説明する。特殊な陽極酸化皮膜50は、膜厚t
3が略一定で皮膜面21を平坦に形成し、皮膜面21に
微細な孔52・・・(・・・は複数個を示す。以下同様。)を
備えたものである。孔52・・・は孔径d1が比較的大き
い孔である。このため、孔52・・・に十分な量の潤滑剤
(熱硬化性樹脂)54を含浸することができ、含浸した
熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着すること
ができる。
【0025】このように、熱硬化性樹脂54を陽極酸化
皮膜50の微細な孔52・・・に固着させることで、陽極
酸化皮膜50で耐摩耗性を高めるとともに、潤滑剤54
で摺動抵抗を減らすことができる。加えて、特殊な陽極
酸化皮膜50は、皮膜面21を平坦にすることで、摺動
抵抗をさらに減らすことができる。
【0026】図5は図3の5−5線断面図である。特殊
な陽極酸化皮膜50は、電解液にりん酸塩並びにふっ化
物を混合することで、Siを溶かして平坦に形成するこ
とができる。これで、陽極酸化皮膜50をスカート部2
0の条痕22・・・の形状に倣わせて形成して、陽極酸化
皮膜50の表面を条痕22・・・と略同じ形状にすること
ができる。
【0027】さらに、陽極酸化皮膜50を条痕22・・・
の形状に倣わせて形成することで、陽極酸化皮膜50の
表面全域に油膜を均一に保持することができる。また、
図4で説明したように、陽極酸化皮膜の微細な孔の孔径
を大きくすることで、微細な孔52に多量の潤滑剤54
を含浸させ、その潤滑剤54を孔52内に確実に固着さ
せることができる。
【0028】加えて、特殊な陽極酸化皮膜50は、条痕
22の頂部22aに相当する平坦部位50aの陽極酸化
皮膜をカットしつつ丸める処理(特に角部位50b,5
0bを丸める)を施すことにより、その平坦部位50a
及び角部位50b,50bの部位H1(すなわち、条痕
22の頂部22aに相当する部位)を滑らかな面にする
ことができる。
【0029】よって、ピストン10がシリンダ(図示し
ない)に接触する際の面圧を抑えることができる。この
ように、陽極酸化皮膜50の表面全域に油膜を均一に保
持し、潤滑剤54を確実に固着させ、加えて面圧を抑え
ることができるので、ピストン10をスムーズに摺動さ
せることができる。
【0030】以下、図6で普通の陽極酸化皮膜の形成方
法を比較例として説明する。図6(a)〜(c)は内燃
機関用ピストンのスカート部に普通の陽極酸化皮膜を形
成した比較例を示す説明図である。(a)は、硫酸電解
液で生成した普通の陽極酸化皮膜を示す。母材としての
アルミ合金製内燃機関用ピストンのスカート部100に
Si粒111・・・が分布し、そのうちの表面近傍のSi
粒112・・・が陽極酸化皮膜113に悪影響を及ぼし
て、陽極酸化皮膜113が全体的に凹凸となっている。
【0031】(b)は、(a)の拡大図であり、たまた
ま表面に出ていたSi粒115の部分には陽極酸化皮膜
を形成できずに大きな窪みD1となり、また、表面にご
く近いSi粒116の部分には陽極酸化皮膜117が形
成できたけれども、膜厚は周囲の陽極酸化皮膜113と
比べると小さく、窪みD2ができている。すなわち、S
iを含むアルミニウム合金製ピストン100を硫酸電解
液で陽極酸化処理をしても、平坦な陽極酸化皮膜113
が得られないことが分かった。また、硫酸電解液では、
微細な孔118・・・の孔径をd2とすると、d2は一般
的に15nm程度と小さいことが分かった。
【0032】(c)は、液状の熱硬化性樹脂を微細な孔
118・・・に含浸させ、含浸した液状の熱硬化性樹脂を
加熱して硬化樹脂119・・・に変えた状態を示す。樹脂
は摩擦抵抗が小さいので、陽極酸化皮膜113,117
に硬化樹脂119・・・を含浸させることで、Si系アル
ミニウム合金製ピストンがシリンダ内を高速で往復移動
するときの摺動抵抗は比較的小さくなる。
【0033】しかし、(b)に示したように、陽極酸化
皮膜113に窪みD1,D2が発生して陽極酸化皮膜1
13を平坦に生成することが困難であり、また、陽極酸
化皮膜113に発生した微細な孔118・・・の孔径d2
が小さいので陽極酸化皮膜113に樹脂119を十分に
含有することができない。このため、陽極酸化皮膜11
3に樹脂119を含浸させても摩擦抵抗を所望の値まで
小さくすることはできない。
【0034】以下、図4の断面拡大図に示した特殊な陽
極酸化皮膜を形成する方法、すなわちアルミ合金製内燃
機関用ピストンの製造方法を説明する。図7は本発明に
係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)
の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明するフローチャー
トであり、アルミ合金製内燃機関用ピストンの製造方法
を示す。なお、図中ST××はステップ番号を示す。 ST10;アルミ合金製内燃機関用ピストン(すなわ
ち、Si系アルミニウム合金としてのAC8Cアルミニ
ウム合金製ピストン)のスカート部の外表面に条痕を形
成する。
【0035】ST11;条痕を形成したスカート部の外
表面を脱脂する。 ST12;りん酸塩としてのりん酸3ナトリウム及びふ
っ化物としてのふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分
解して、スカート部の外側表面に特殊な陽極酸化皮膜を
生成する。この陽極酸化皮膜の表面に微細な孔が生成す
る。 ST13;ふっ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂
(ふっ素系樹脂)を準備し、この液状の熱硬化性樹脂を
陽極酸化皮膜の微細な孔に含浸させる。
【0036】ST14;微細な孔に含浸した液状の熱硬
化性樹脂を加熱することにより硬化させる。これで、本
発明に係るアルミニウム合金製ピストンの陽極酸化処理
が完了する。 ST15;陽極酸化処理の条痕に相当する部位にラップ
処理あるいは砥粒流動加工を施すことで、その部位をカ
ットしつつ丸める。 以下、Si系アルミニウム合金の陽極酸化処理方法のS
T10〜ST15を図8〜図11で詳しく説明する。
【0037】図8は本発明に係るアルミ合金製内燃機関
用ピストン(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理
方法の第1説明図であり、ST10を示す。アルミ合金
製内燃機関用ピストン(すなわち、Si系アルミニウム
合金としてのAC8Cアルミニウム合金製ピストン)の
スカート部20の外表面21aに条痕22を形成する。
【0038】図9(a),(b)は本発明に係るアルミ
合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の特殊な陽
極酸化皮膜処理方法の第2説明図である。なお、理解を
容易にするためスカート部20の外表面を横向きに配置
した状態で説明する。(a)は、ST11(脱脂)後の
状態を示す図であり、アルミ合金製内燃機関用ピストン
のスカート部20の外表面21aを脱脂した状態を示
す。スカート部20の外表面21aの近傍にはアルミニ
ウムにSi粒55,56,57が分散している。
【0039】(b)は、ST12(特殊な陽極酸化皮膜
処理)後の状態を示す図であり、りん酸3ナトリウム及
びふっ化カリウムの混合水溶液中で電気分解して陽極酸
化皮膜50を生成した状態を示す。りん酸3ナトリウム
の腐食作用でスカート部20の外表面21a((a)に
示す)が溶解して、Si粒55,56,57が露出す
る。露出したSi粒55,56,57がふっ化カリウム
の作用で溶解して小さくなる。
【0040】このため、スカート部20の外表面21a
にSi粒55,56,57が存在するにも拘らず、陽極
酸化皮膜50が良好に成長する。この結果、陽極酸化皮
膜50の皮膜面21が揃うので、面粗度は小さくなり、
膜厚t3はほぼ一定となる。また、電解液にはりん酸3
ナトリウムを含むため、りん酸3ナトリウムの孔径を大
きくする作用で、微細な孔52・・・の孔径d1は略10
0nmと十分に大きくなる。
【0041】図10(a),(b)は本発明に係るアル
ミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の特殊な
陽極酸化皮膜処理方法の第3説明図である。(a)は、
ST13(樹脂含浸処理)後の状態を示す図であり、ふ
っ素樹脂を含有する液状の熱硬化性樹脂53を準備し、
この液状の熱硬化性樹脂53を陽極酸化皮膜50の孔5
2・・・に含浸した状態を示す。孔52・・・の孔径d1が1
00nmと大きいので、多量の熱硬化性樹脂53を孔5
2・・・内に含浸させることができる。なお、熱硬化性樹
脂53は溶媒希釈しなくても液状をなす樹脂である。
【0042】(b)は、ST14(樹脂硬化処理)後の
状態を示す図であり、オーブンのコイル58から矢印の
如く熱を伝えることにより液状の熱硬化性樹脂53を加
熱する状態を示す。液状の熱硬化性樹脂53が硬化して
熱硬化性樹脂(潤滑剤)54となる。これで、図4に示
す特殊な陽極酸化皮膜50に熱硬化性樹脂54を含浸さ
せた状態になる。
【0043】図11(a),(b)は本発明に係るアル
ミ合金製内燃機関用ピストン(第1実施形態)の特殊な
陽極酸化皮膜処理方法の第4説明図である。(a)は、
スカート部20の条痕22に陽極酸化皮膜50を被せた
状態を示す。陽極酸化皮膜50の皮膜面21が揃うの
で、面粗度は小さくなり、膜厚t3はほぼ一定となる。
【0044】(b)は、ST15後の状態を示す図であ
り、図5と同じ図である。陽極酸化皮膜50において、
条痕22の頂部22aに相当する平坦部位50aをカッ
トしつつ丸める(特に角部位50b,50bを丸める)
ラップ処理あるいは砥粒流動加工を施すことにより、そ
の平坦部位50aを滑らかな面にする。このため、ピス
トン10がシリンダに接触する際の面圧を抑えることが
できる。
【0045】ここで、ラップ処理としては、バフラップ
(一例として起毛バフラップ)などの軟質のラップ盤で
実施する。起毛バフラップなどの軟質ラップ盤は被ラッ
プ面の凹凸にある程度倣わせて研磨することが可能であ
る。このため、軟質ラップ盤でラップ処理を行うこと
で、条痕の頂部に相当する部位をカットしつつ丸めるこ
とができる。なお、起毛バフラップに代えて、砥粒流動
加工を採用しても同様の効果を得ることができる。砥粒
流動加工とは、研磨材を混練した半固体状で粘弾性をも
つ材料を準備し、この材料を加工箇所に機械的に押し込
んで圧接移動をさせることにより、この材料で所望の面
を加工する方法をいう。
【0046】本発明によれば、りん酸3ナトリウムには
微細な孔52・・・の孔径を大きくする作用がある。この
ため、陽極酸化皮膜50の微細な孔52・・・を大きな孔
径d1にすることができる。従って、陽極酸化皮膜50
に多量の熱硬化性樹脂54を含浸することができ、且つ
含浸した熱硬化性樹脂54を孔52・・・内に確実に固着
することができる。この結果、摺動抵抗を減らすことが
でき、かつ耐久性を高めることができる。一方、ふっ化
カリウムにはSiを溶解する作用と増膜作用とがある。
このため、陽極酸化皮膜50の皮膜面21を平坦にする
ことができるので、摺動抵抗をより減らすことができ
る。
【0047】さらに、熱硬化性樹脂54に含有したふっ
素樹脂は、耐摩耗性や耐熱性に優れており、熱硬化性樹
脂54を耐摩耗性や耐熱性に優れた樹脂にすることがで
きる。従って、熱硬化性樹脂54を、例えば100℃〜
300℃以上の高温において使用することができるの
で、ピストンのような高温状態で使用する部材に好適で
ある。
【0048】加えて、条痕22に陽極酸化皮膜50を被
せた後、条痕22の頂部22aに相当する平坦部位50
a及び角部位50b,50bにラップ処理あるいは砥粒
流動加工を施すことで、平坦部位50a及び角部位50
b,50bをカットしつつ丸めるようにした。このた
め、ラップ処理あるいは砥粒流動加工だけで、条痕22
の頂部22aに相当する部位を滑らかな面に仕上げて、
ピストン10がシリンダに接触する際の面圧を抑えるこ
とができる。
【0049】ここで、一例として陽極酸化皮膜50の膜
厚6μmとすると、陽極酸化皮膜の研磨量は1〜5μm
に抑えることが好ましい。研磨量が1μmより小さいと
面圧を抑えることが難しくなり、研磨量が5μmを越え
ると陽極酸化皮膜50の膜厚が薄くなりすぎるからであ
る。
【0050】
【実施例】本発明に係る実施例及び比較例を表1、表2
及び図12に基づいて説明する。 共通条件: 供試材 AC8C(JIS H 5202 アルミニウム
合金鋳物) 成分は表1に示すが、約10%のSiを含む鋳物であ
る。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】実施例:アルミ合金製内燃機関用ピストン
のスカート部の外表面を脱脂した後、0.4モル/lり
ん酸3ナトリウム及び0.125モル/lふっ化カリウ
ムの混合電解液で、電解液温度を22℃、電圧を70V
として30分間電気分解して、スカート部の外表面に特
殊な陽極酸化皮膜を生成した。特殊な陽極酸化皮膜の微
細な孔は孔径d1(図10(a)参照)が100nmと
大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗さRmaxは2〜3
μmと平坦である。なお、Rmaxは、JIS B 06
01で定義する表面粗さの最大高さであるが、便宜上
「表面最大粗さRmax」を表記した。
【0054】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmH
gの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレー
ト(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放
して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出
した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチル
エチルメタクレートを硬化した。
【0055】次いで、条痕の頂部に相当する部位にラッ
プ処理あるいは砥粒流動加工を施すことで、その部位を
カットしつつ丸めるようにした。これにより、条痕の頂
部に相当する部位を滑らかな面に仕上げることができ
る。このピストンをエンジンに組込んでならし運転をお
こない、そのときのエンジン出力特性を測定した。その
結果、ならし運転の当初から所望のエンジン出力特性を
得ることができることが判かった。その理由は、条痕の
頂部に相当する部位を滑らかな面に仕上げることで、ピ
ストンがシリンダに接触する際の面圧を抑えて、初期摺
動抵抗を低くすることができるからである。なお、パー
フロロオクチルエチルメタクレートの化学式は以下の通
りである。
【0056】
【化1】
【0057】比較例:実施例と同様に、アルミ合金製内
燃機関用ピストンのスカート部の外表面を脱脂した後、
0.4モル/lりん酸3ナトリウム及び0.125モル
/lふっ化カリウムの混合電解液で、電解液温度を22
℃、電圧を70Vとして30分間電気分解して、スカー
ト部の外表面に特殊な陽極酸化皮膜を生成した。特殊な
陽極酸化皮膜の微細な孔は孔径d1(図10(a)参
照)が100nmと大きく、陽極酸化皮膜の表面最大粗
さRmaxは2〜3μmと平坦である。なお、Rmax
は、JIS B 0601で定義する表面粗さの最大高さ
であるが、便宜上「表面最大粗さRmax」を表記し
た。
【0058】次に、生成した陽極酸化皮膜を10mmH
gの減圧状態で、パーフロロオクチルエチルメタクレー
ト(熱硬化性樹脂)液中に5分間浸漬した後、大気開放
して98℃の温水に10分間浸漬した。温水から取り出
した後、オーブンで5分間加熱してパーフロロオクチル
エチルメタクレートを硬化した。
【0059】このピストンをエンジンに組込んでならし
運転をおこない、そのときのエンジン出力特性を測定し
た。その結果、所望のエンジン出力特性を得るまでに
は、ならし運転を比較的長い時間実施する必要があるこ
とが判かった。その理由は、陽極酸化皮膜において条痕
の頂部に相当する部位が頂部として存在しているため、
ピストンがシリンダに接触する際の面圧が高くなり、初
期摺動抵抗が高くなるからである。
【0060】図12(a)〜(c)は本発明に係るアル
ミ合金製内燃機関用ピストンの特殊な陽極酸化皮膜を説
明する断面図であり、(a)〜(b)は表1の比較例、
(c)は表1の実施例を示す。(a)は、アルミ合金製
内燃機関用ピストン120のスカート部121に条痕1
22を形成し、条痕122に特殊な陽極酸化皮膜50を
形成し、陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸さ
せた状態を示す。
【0061】特殊な陽極酸化皮膜50は条痕122に沿
って均一の厚さ(t3)で陽極酸化皮膜50を被せるこ
とが可能であり、陽極酸化皮膜50において条痕122
の頂部122aに相当する部位50cが、条痕122の
頂部122aと同様に突出する。従って、ピストン12
0がシリンダ59内で矢印の如く往復運動する際に、
陽極酸化皮膜50の頂部50cに大きな面圧がかかる。
【0062】(b)において、陽極酸化皮膜50の頂部
50cや条痕122の頂部122a((a)に示す)が
部位H2に渡って摩耗する。これにより、条痕122の
部位122bが露出してしまい、この部位122bを陽
極酸化皮膜50で保護することができない。
【0063】(c)において、アルミ合金製内燃機関用
ピストン10のスカート部20に条痕22を形成し、条
痕22に特殊な陽極酸化皮膜50を形成し、陽極酸化皮
膜50の微細な孔に潤滑剤を含浸させた。この状態で
は、特殊な陽極酸化皮膜50は条痕22に沿って均一の
厚さ(t3)で陽極酸化皮膜50を被せることが可能で
あり、比較例と同様に、陽極酸化皮膜50において条痕
22の頂部22aに相当する部位50c((a)参照)
が、条痕22の頂部22aと同様に突出する。次に、陽
極酸化皮膜50の部位50cにラップ処理或は砥粒流動
を施して、その部位50cをカットしつつ丸めるように
することで、部位H1を平坦部位50a及び角部位50
b,50bからなる滑らかな面に形成した。
【0064】従って、ピストン10がシリンダ59内で
矢印の如く往復運動する際に、陽極酸化皮膜50の滑
らかな面(すなわち、平坦部位50a及び角部位50
b,50b)に大きな面圧がかかることを抑えることが
できる。従って、ピストンの摺動抵抗を減少させて円滑
に運動させることができる。
【0065】次に、第2〜第4実施形態を図13〜図1
5に基づいて説明する。なお、第1実施形態と同一部材
については同一符号を付して説明を省略する。図13は
本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン(第2実
施形態)の側面図である。アルミ合金製内燃機関用ピス
トン60は、ピンボス部35の下端36及びピンボス部
37の下端38より一対のスカート部62(奥側のスカ
ート部は図示しない)の下端63をδ寸法だけ上方に上
げたものである。このため、一対のスカート部62を、
第1実施形態のスカート部20,25より小さくするこ
とができる。従って、アルミ合金製内燃機関用ピストン
60をよりアルミ合金製内燃機関用ピストン10より軽
量にすることができる。
【0066】図14は本発明に係るアルミ合金製内燃機
関用ピストン(第3実施形態)の側面図である。アルミ
合金製内燃機関用ピストン70は、スカート部72を略
逆台形、すなわち下端73からピストン頭部74に向け
てスカート幅をW3からW4に徐々に大きく形成したも
のである。スカート部72を略逆台形に形成することに
より、スカート部72の剛性を高めることができる。
【0067】図15(a)〜(d)は本発明に係るアル
ミ合金製内燃機関用ピストン(第4実施形態)の断面図
である。(a)において、アルミ合金製内燃機関用ピス
トン80のスカート部20に条痕22を形成する。
(b)において、条痕22の頂部22a((a)に示
す)をラップ処理あるいは砥粒流動加工でカットしつつ
丸めることにより、条痕22の頂部22aを、平坦部位
22b及び角部位22c,22cの部位H3に渡って滑
らかな面に成形する。
【0068】ここで、一例として条痕の頂部22aから
谷部までの深さA3((a)に示す)が20μmとする
と、研磨量は5〜15μmに抑える必要があり、特に9
μmに抑えることが好ましい。研磨量が5μmより小さ
いと面圧を下げることが難しく、研磨量が15μmを越
えると条痕としての役割を果たさなくなる。
【0069】(c)において、条痕22に特殊な陽極酸
化皮膜50を形成し、陽極酸化皮膜50の微細な孔に潤
滑剤を含浸させる。特殊な陽極酸化皮膜50は、皮膜面
21が揃うので、面粗度は小さくなり、膜厚t3はほぼ
一定となる。よって、条痕22の平坦部位22b及び角
部位22c,22cの部位H3に沿って、陽極酸化皮膜
50の平坦部位51a及び角部位51b,51bをある
程度滑らかな面に成形することができる。
【0070】(d)において、陽極酸化皮膜50の平坦
部位51a及び角部位51b,51bをラップ処理ある
いは砥石粒流動することで、陽極酸化皮膜50の平坦部
位51a及び角部位51b,51bの部位H4(すなわ
ち、丸めた条痕の部位H3に相当する陽極酸化皮膜50
の部位)を十分に滑らかな面に成形することができる。
このため、ピストン10がシリンダ59に接触する際の
面圧を抑えることができる。
【0071】ここで、一例として陽極酸化皮膜50の膜
厚6μmとすると、陽極酸化皮膜の研磨量は1〜5μm
に抑える必要があり、特に1μmに抑えることが好まし
い。研磨量が1μmより小さいと角部位を丸めることが
難しくなり、研磨量が5μmを越えると陽極酸化皮膜5
0の膜厚が薄くなりすぎる。
【0072】ここで、ラップ処理としては、バフラップ
(一例として起毛バフラップ)などの軟質のラップ盤で
実施する。軟質のラップ盤は被ラップ面の凹凸にある程
度倣わせて研磨することが可能である。このため、軟質
のラップ盤でラップ処理を行うことで、条痕の頂部に相
当する部位をカットしつつ丸めることができる。
【0073】起毛バフラップを使用することで、条痕の
頂部に相当する部位に限らないで、条痕の谷部に相当す
る部位まで研磨することが可能になる。よって、平坦部
位の角部位を丸みを持たせるように研磨することができ
る。なお、起毛バフラップに代えて、砥粒流動加工を採
用しても同様の効果を得ることができる。砥粒流動加工
とは、研磨材を混練した半固体状で粘弾性をもつ材料を
準備し、この材料を加工箇所に機械的に押し込んで圧接
移動をさせることにより、この材料で所望の面を加工す
る方法をいう。
【0074】第4実施形態によれば、条痕22に陽極酸
化皮膜50を被せる前に、条痕22の頂部22aをカッ
トしつつ丸めることで、丸めた部位22a,22b,2
2bに陽極酸化皮膜50を丸めた状態に被せることがで
きる。このため、陽極酸化皮膜50を僅かに研磨するだ
けで、陽極酸化皮膜50の平坦部位51a及び角部位5
1b,51bを滑らかな面に仕上げることができるの
で、ラップ処理あるいは砥粒流動加工を行う時間を短く
することができる。従って、短いならし運転で所望のエ
ンジン出力特性を得ることができるピストンを比較的簡
単に製造することができる。
【0075】なお、前記実施形態では、りん酸塩として
りん酸3ナトリウムを使用した例を示したが、その他に
りん酸ナトリウムなどを使用してもよい。また、ふっ化
物としてふっ化カリウムを使用した例を示したが、その
他にふっ化ナトリウムなどを使用してもよく、アルカリ
金属系ふっ化物であれば同等の作用効果がある。
【0076】さらに、液状の熱硬化性樹脂としてパーフ
ロロオクチルエチルメタクレート液を使用した例を説明
したが、ふっ素を含んだその他の熱硬化性樹脂を使用し
てもよい。また、潤滑剤として熱硬化性樹脂を使用した
例を説明したが、光硬化性樹脂などのその他の樹脂を使
用しても同様の効果を得ることができる。光硬化性樹脂
は、例えば紫外線硬化性樹脂や可視光硬化性樹脂が該当
する。さらに、前記実施形態では、条痕22の凹部を湾
曲形に形成した例について説明したが、その他に条痕の
凹部を略台形などに形成してもよく、凹部の形状は任意
である。
【0077】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮
する。請求項1は、電解液にりん酸塩並びにふっ化物を
混合することで、陽極酸化皮膜を平坦に形成する。これ
により、陽極酸化皮膜を条痕の形状に倣わせて形成し
て、陽極酸化皮膜の表面を条痕と略同じ形状にすること
ができる。このため、陽極酸化皮膜の表面全域に油膜を
均一に保持することができる。加えて、りん酸塩には陽
極酸化皮膜の微細な孔の孔径を大きくする作用がある。
このため、微細な孔に多量の潤滑剤を含浸させ、その潤
滑剤を孔内に確実に固着させることができる。
【0078】さらに、条痕の頂部に相当する陽極酸化皮
膜をカットしつつ丸める処理を施すことにより、その部
位を滑らかな面にすることができる。このため、ピスト
ンがシリンダに接触した際の面圧を抑えることができ
る。このように、油膜を均一に保持し、潤滑剤を確実に
固着させ、加えて面圧を抑えることができるので、短い
ならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができ
る。
【0079】請求項2は、条痕に陽極酸化皮膜を被せた
後、条痕の頂部に相当する陽極酸化皮膜にラップ処理あ
るいは砥粒流動加工を施すことで、陽極酸化皮膜をカッ
トしつつ丸めるようにした。このため、ラップ処理ある
いは砥粒流動加工だけで、条痕の頂部に相当する陽極酸
化皮膜を滑らかな面に仕上げて、ピストンがシリンダに
接触した際の面圧を抑えることができる。従って、短い
ならし運転で所望のエンジン出力特性を得ることができ
るピストンを比較的簡単に製造することができる。
【0080】請求項3は、条痕に陽極酸化皮膜を被せる
前に、条痕の頂部をカットしつつ丸めることで、条痕に
陽極酸化皮膜を丸めた状態に被せることができる。この
ため、陽極酸化皮膜を僅かに研磨するだけで、陽極酸化
皮膜を滑らかな面に仕上げることができるので、ラップ
処理や砥粒流動加工を行う時間を短くすることができ
る。従って、短いならし運転で所望のエンジン出力特性
を得ることができるピストンを比較的簡単に製造するこ
とができる。
【0081】請求項4は、軟質のラップ盤は被ラップ面
の凹凸に倣わせて研磨することが可能である。このた
め、軟質のラップ盤でラップ処理を行うことで、条痕の
頂部に相当する部位を好適にカットしつつ丸めることが
できる。従って、軟質のラップ盤を使用することによ
り、条痕の頂部に相当する部位を比較的簡単に滑らかな
面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施形態)の斜視図
【図2】図1の2矢視図
【図3】図1の3矢視図
【図4】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
の特殊な陽極酸化皮膜の表面を拡大した断面図
【図5】図3の5−5線断面図
【図6】内燃機関用ピストンのスカート部に普通の陽極
酸化皮膜を形成した比較例を示す説明図である。
【図7】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法を説明
するフローチャート
【図8】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第1
説明図
【図9】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピストン
(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第2
説明図
【図10】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第
3説明図
【図11】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第1実施形態)の特殊な陽極酸化皮膜処理方法の第
4説明図
【図12】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ンの特殊な陽極酸化皮膜を説明する断面図
【図13】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第2実施形態)の側面図
【図14】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第3実施形態)の側面図
【図15】本発明に係るアルミ合金製内燃機関用ピスト
ン(第4実施形態)の断面図
【図16】従来の内燃機関用ピストンのスカート部の断
面図
【符号の説明】
10,60,70,80…アルミ合金製内燃機関用ピス
トン、20,25,62,72…スカート部、21a…
スカート部の外表面、22…条痕、22a…条痕の頂
部、22b…平坦部位、22c…角部位、50…陽極酸
化皮膜、50a…平坦部位、50b…角部位、51a…
平坦部位、51b…角部位、52…微細な孔、54…潤
滑剤、H1,H4…部位、H3…丸めた条痕の部位。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 3/10 F02F 3/10 B F16J 1/00 F16J 1/00 1/01 1/01 1/08 1/08 (72)発明者 小林 幸司 埼玉県狭山市新狭山1丁目10番地1 ホン ダエンジニアリング株式会社内 Fターム(参考) 3J044 AA12 AA18 BA04 BB05 BB12 BB39 BC04 CA14 DA09 EA02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スカート部の外表面に条痕を形成し、こ
    の条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解
    液を用いて陽極酸化皮膜を被せ、この陽極酸化皮膜の微
    細な孔に潤滑材を含浸させたアルミ合金製内燃機関用ピ
    ストンであって、 前記陽極酸化皮膜において条痕の頂部に相当する部位を
    カットしつつ丸める処理を施したものであることを特徴
    とするアルミ合金製内燃機関用ピストン。
  2. 【請求項2】 ピストンスカート部の外表面に条痕を加
    工する工程と、 この条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電
    解液を用いて陽極酸化皮膜を被せる工程と、 この陽極酸皮膜の微細な孔に潤滑材を含ませる工程と、 前記陽極酸化皮膜において条痕の頂部に相当する部位を
    カットしつつ丸めるラップ処理あるいは砥粒流動加工を
    施す工程と、からなるアルミ合金製内燃機関用ピストン
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 ピストンスカート部の外表面に条痕を加
    工する工程と、 この条痕の頂部をカットしつつ丸める工程と、 条痕の表面にりん酸塩並びにふっ化物を混合した電解液
    を用いて陽極酸化皮膜を被せる工程と、 この陽極酸皮膜の微細な孔に潤滑材を含ませる工程と、 前記丸めた条痕に相当する陽極酸化皮膜の部位にラップ
    処理あるいは砥粒流動加工を施す工程と、からなるアル
    ミ合金製内燃機関用ピストンの製造方法。
  4. 【請求項4】 前記ラップ処理をバフラップなどの軟質
    のラップ盤で実施することを特徴とする請求項2又は請
    求項3記載のアルミ合金製内燃機関用ピストンの製造方
    法。
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