JP2003013271A - 水素発生用電極 - Google Patents

水素発生用電極

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JP2003013271A
JP2003013271A JP2001203143A JP2001203143A JP2003013271A JP 2003013271 A JP2003013271 A JP 2003013271A JP 2001203143 A JP2001203143 A JP 2001203143A JP 2001203143 A JP2001203143 A JP 2001203143A JP 2003013271 A JP2003013271 A JP 2003013271A
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Takeaki Sasaki
岳昭 佐々木
Toshinori Hachitani
敏徳 蜂谷
Kentaro Sako
謙太郎 酒向
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ水溶液を電解する電解用陰極におい
て、低水素過電圧でかつ電解による陰極の重量変化が小
さい電解用陰極を提供する。 【解決手段】 電極基材上に格子定数が3.566Å以
下であるニッケルとモリブデンが固溶した合金を含有す
る活性層が積層されていることを特徴とする水素発生用
電極。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は食塩電解及び水電解
に使用される水素発生用電極に関するものである。
【0002】
【従来の技術】食塩水などのアルカリ水溶液を電解して
水素、塩素、苛性ソーダなどを製造するための電極の開
発が進んでいる。近年、食塩などのアルカリ金属塩の電
解法としてはイオン交換膜法が主流になりつつあるが、
苛性ソーダ等の製造費をさらに低減させるためには、電
解電圧を低くし、電力消費を低減することが必要であ
る。そのためには、陽極における塩素過電圧の低減、イ
オン交換膜抵抗の低減、陰極における水素過電圧の低
減、電極とイオン交換膜のゼロギャップ化など様々な検
討がされている。更に、近年、環境問題がクローズアッ
プするにつれて、省エネルギーの要請が高まっており、
中でも水素過電圧の低い陰極が求められている。
【0003】従来陰極には、ニッケルとモリブデン(N
i−Mo)の合金、ニッケルと錫(Ni−Sn)の合
金、ニッケル酸化物(NiO)、Pt、Ru等の様々な
材料が使用されている。中でもNi−Moの合金電極は
非常に低い水素過電圧を有することが知られている。N
i−Moの合金電極の公知な作製方法としては、電極基
材を硝酸ニッケルとパラモリブデン酸アンモニウムを含
む水溶液に浸漬して電極基材表面に塗膜を形成させた
後、焼成することでニッケルとモリブデンの複合酸化物
(NiMoO4)を生成させ、さらに還元雰囲気下で焼成して
作製する方法がある(特開昭55−44597号、特開
昭55−500750号)。還元雰囲気下での焼成によ
り、塗膜中に含まれる酸素が水として抜け、モリブデン
が固溶したニッケルの合金が形成される。しかし、この
方法ではニッケル原子とモリブデン原子が隣接する複合
酸化物を還元するため、本発明の合金よりも、格子定数
が大きくなり、安定性及び耐久性に問題点を有し、これ
を用いた水素発生用電極は食塩電解用として工業化に至
っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、水素過電圧
が低く、かつ耐久性のある水素発生用陰極を提供するこ
とを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
について鋭意研究を重ねた結果、ニッケルとモリブデン
が固溶した合金であって、モリブデンの固溶によるニッ
ケルの格子定数の広がり方を極力おさえることにより、
水素過電圧が低く、耐久性がある電極を作製できること
を見出し、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は 1、電極基材上に格子定数が3.566Å以下であるニ
ッケルとモリブデンが固溶した合金を含有する活性層が
積層されていることを特徴とする水素発生用電極。 2、ニッケル原料とモリブデン原料が分散している塗布
液を、電極基材上に塗布し、還元雰囲気下で焼結するこ
とを特徴とする請求項1に記載の水素発生用電極の製造
方法に関する。
【0006】以下、本発明の水素発生用電極について詳
細に説明する。本発明は、導電性の電極基材上に活性層
を積層した水素発生用電極において、活性層に格子定数
が3.566Å以下のニッケルとモリブデンが固溶した
合金を含有することが特徴である。尚、本発明で言う活
性層とは水素過電圧を低減する機能を有するものであ
る。本発明のニッケルとモリブデンが固溶した合金は面
心立方体構造であるニッケルの結晶構造において格子点
にあるニッケル原子の一部がモリブデン原子で置換され
た構造を有する合金である。
【0007】従って、本発明のニッケルとモリブデンが
固溶した合金の格子定数が3.566Å以下であると
は、ニッケル原子の一部がモリブデン原子で置換されて
格子が広がった後の格子定数が3.566Å以下である
ことを意味している。上記の合金を活性層に含有するこ
とによって、低過電圧と同時に、電解による重量変化を
小さくすること即ち耐久性を達成したものである。尚、
本発明の合金の格子定数は3.540Åから3.566
Åであることが好ましい。さらに、好ましくは、3.5
50Åから3.566Åの格子定数である。格子定数が
3.566Åより大きいと電解による重量変化が大き
く、耐久性に問題がある。一方、格子定数が3.540
Åより小さいと水素過電圧の低減が十分でない。
【0008】本発明では格子定数を粉末X線回折法によ
り決定した。具体的には、RINT−2500(理学電
機(株)製)を用い、線源が銅Kα線(λ=1.541
84Å)、走査軸が2θ/θステップ間隔が0.02
°、スキャンスピード4.0°/min、加速電圧が4
0kV、加速電流が200mAの測定条件を用いた。な
お、測定の際に使用したスリットは、発散スリット1
°、散乱スリット1°、受光スリットが0.15mmで
あり、検出器の前にグラファイトモノクロメーターを装
着した。ニッケルの回折ピークを利用し、X線回折計の
光学補正を行い、ニッケルとモリブデンが固溶した合金
のX線回折ピーク角度から面心立方格子の格子定数を決
定した。
【0009】本発明の活性層にはニッケルとモリブデン
が固溶した合金以外に、ニッケルとモリブデンの単体が
含有されていてもかまわないが、モリブデンは、苛性ソ
ーダ中で不安定な材料であり、耐久性に悪影響を与え
る。そのため、可能な限りモリブデン単体を形成させな
い方が好ましい。また本発明の活性層には、上記以外の
成分として様々な材料を添加することも可能である。コ
バルト、銀、二酸化モリブデン、チタン、クロム、カー
ボン、酸化チタン、酸化クロム、ポリテトラフルオロエ
チレン(PTFE)などを添加することが可能である
が、好ましくは苛性ソーダ中で安定な材料である。
【0010】本発明の格子定数が3.566Å以下のニ
ッケルとモリブデンが固溶した合金は活性層中に30〜
100モル%、好ましくは40〜60モル%である。ま
た、活性層の比表面積は1〜20m2/g、好ましくは
5〜10m2/gである。活性層の比表面積が小さすぎ
ると、反応場が小さくなるため、過電圧の低減が十分で
ない。また、活性層の比表面積を大きくしすぎると、活
性層が脆くなるため、電解時に活性層が脱落しやすくな
るため、耐久性に問題がある。
【0011】本発明では活性層の比表面積は、電解前の
水素発生用電極の活性層を採取し、窒素吸着による比表
面積を測定した。具体的には、AUTOSORB−3B(ユアサ
アイオニクス(株)製)を用い、105℃、1時間の前
処理を行った後に測定を行った。次に本発明の水素発生
用電極の製造方法について説明する。本発明の水素発生
用電極は、電極基材上にニッケルとモリブデンが固溶し
た合金を含有する活性層を形成できる方法であれば、製
造方法はどのような方法であってもかまわない。
【0012】具体的には、電解メッキ法、無電解メッキ
法、分散メッキ法、蒸着法、スパッタリング法、プラズ
マ溶射法などの公知の様々な方法が適用可能であるが、
工業生産性などの面から、塗布焼結法が好ましい。本発
明で言う塗布焼結法とは、ニッケル原料、モリブデン原
料を分散した塗布液を電極基材上に塗布する塗布工程、
引き続き乾燥工程、焼結工程を経て電極基材上に活性層
を積層する方法である。
【0013】以下本発明の塗布焼結法による水素発生用
電極の製造方法を詳細に説明する。本発明の塗布液は、
ニッケル原料、モリブデン原料が分散した状態で含有す
る以外に、溶媒とバインダー、及び必要に応じて少量の
添加剤を含有する。塗布液は、電極基材に塗布できるも
のであれば、どのようなものであってもかまわない。本
発明に用いるニッケル原料にはニッケル、酸化ニッケ
ル、ニッケルの塩化物、蓚酸塩、硝酸塩、硫化塩、アン
モニア塩、硼酸塩、燐酸塩などがあるがニッケルが好ま
しい。
【0014】また、モリブデン原料には三酸化モリブデ
ン、二酸化モリブデン、モリブデン、モリブデンのアン
モニア塩などがあるが三酸化モリブデンが好ましい。本
発明に用いるモリブデン原料、ニッケル原料は粉末状で
あることが好ましいが、塗布液中で分散していればかま
わない。従って、その粒径や形態は様々なものを用いる
ことができる。通常は数nm〜10μmの粒径を使用す
ることができる。10μm以上の粉末を使用することも
出来るが、活性層の比表面積が小さくなるため、水素過
電圧が十分に低減出来ない場合が多い。
【0015】また、粉末の形状に関する特別な制限はな
いが、球状以外にも、平板状、鱗片状など、活性層の比
表面積を大きくできる形状あればかまわない。本発明の
塗布液中のニッケル原料とモリブデン原料の総計に対す
るモリブデン原料の割合は5〜60モル%が好ましく、
より好ましくは10〜40モル%である。モリブデン原
料の割合が多すぎるとニッケルとモリブデンが固溶した
合金の格子定数が大きくなる。この場合には、固溶体中
のモリブデンの溶出が大きくなり、電解による重量変化
が大きくなる傾向があり、十分な耐久性が得られない。
逆に、モリブデン原料の割合が少なすぎると本発明のモ
リブデンを固溶したニッケル合金の含有量がすくなくな
り水素過電圧の低減が十分発揮できない。
【0016】また、本発明では上記割合が20モル%以
上、好ましくは30モル%以上(即ちモリブデン原料の
含有量が多い)の場合には、ニッケル原料として酸化ニ
ッケルを混合することが好ましい。酸化ニッケルを混合
して製造した電極はモリブデンによる格子定数の広がり
を抑制するためであると考えられる。従って、このよう
な組成で製造した電極は電解による重量変化が減少し、
耐久性が向上する。
【0017】また、酸化ニッケルは後述する焼結工程で
還元され比表面積の大きいニッケルを形成すると考えら
れ、活性層の比表面積の増大に寄与し、過電圧も低減す
る傾向にある。このようにモリブデン原料の割合が20
モル%以上含有する場合にニッケル原料の一部として酸
化ニッケルを混合して製造した電極は耐久性に優れ、過
電圧の低減効果も示す。
【0018】尚、本発明では酸化ニッケル以外にもニッ
ケルの硝酸塩を同様の効果を奏するものとして添加する
こともできる。本発明では酸化ニッケルとニッケルとを
ニッケル原料に用いた場合、ニッケル原料中の酸化ニッ
ケルの割合は5モル%から80モル%であることが好ま
しい。酸化ニッケルをあまり多くすると、塗膜が脆くな
る傾向にあるため、電解時に塗膜の脱落により、十分な
耐久性が得られない。
【0019】本発明の塗布液に通常用いられる溶媒とし
ては水が一般的である。更に、水に様々な有機溶媒を少
量添加することも可能である。アルコール類、アセトン
やアセチルアセトンなどの水と相溶性のよい溶媒が通常
用いられる。また、バインダーとしては、様々なバイン
ダーを使用することができる。ポリエチレングリコー
ル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチル
セルロース、ニトロセルロース、カルボキシメチルセル
ロール、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニ
ルブチラール、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリ
アクリル酸などの様々な有機高分子材料を使用すること
ができる。好ましくはポリエチレングリコール、ポリビ
ニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロー
ス、ニトロセルロース、カルボキシメチルセルロースな
どの水溶性バインダーが好ましい。
【0020】少量の添加剤としては、界面活性剤などの
分散性を向上させる添加剤や、塗布性を向上させるため
の酸など必要に応じて様々な添加剤を使用することも可
能である。また、塗布さえできればバインダーは必ずし
も使用する必要はない。本発明の塗布液中のバインダー
濃度は、一般的には、0.01〜10重量%の範囲であ
るが、使用するニッケル原料、モリブデン原料の量、最
終的な塗布液の粘度などによって、調整する必要があ
る。また、本発明において、バインダーは、塗布後の焼
結処理によって、最終的には活性層の中から焼き飛ばし
て除去される。焼結残さのカーボンなどが活性層内部に
多く残ると、表面を被覆するなどして、水素過電圧が十
分に低減されないので、熱分解しやすいバインダーを少
量使用することが好ましい。
【0021】本発明の塗布液を調製する際、ニッケル原
料、モリブデン原料と溶媒、バインダーを混練する方法
としては様々な方法を用いることができる。攪拌棒を用
いて攪拌する方法、混練機を用いる方法、ホモジナイザ
ーを用いる方法、超音波ホモジナイザーを用いる方法、
ボールミルを用いる方法などを用いることが可能であ
る。好ましくは、ホモジナイザーを用いる方法である。
次に塗布液を電極基材上に塗布する方法について述べ
る。
【0022】電極基材としては、鉄、ニッケル、ニッケ
ル合金、ステンレス鋼、銅、または、銀などが適してい
る。より好ましい電極基材としてはニッケル、銀および
ニッケル、銀を主成分とする様々な合金を挙げることが
できる。電極基材の形態としては、メッシュ、網状、エ
キスパンドメタルまたは多孔質シートなどを使用するこ
とができる。これらの電極基材は、それらの表面に被覆
される活性物質との密着性を向上させるために、塗布液
を塗布する前に前処理として、ブラスト処理、脱脂、及
び/または酸処理を行うことが好ましい。
【0023】塗布方法には公知の様々な手法を用いるこ
とが可能である。刷毛塗り、アプリケータ、バーコー
タ、ブレードコータ、ロールコータなどを用いた塗布
法、スプレーを用いた塗布法などを用いることが可能で
ある。次に乾燥工程について説明する。乾燥工程では、
塗布液中に含まれる溶媒の蒸発乾固を目的としている。
室温で乾燥することも可能であるが、温風を送って乾燥
を速めることもできるし、100℃以下の乾燥機中で乾
燥させることも可能である。
【0024】次に焼結工程について説明する。焼結工程
は、還元雰囲気下で、焼結温度は、300〜800℃程
度が好ましく、さらに好ましくは500〜650℃であ
る。300℃以下ではニッケルとモリブデンが固溶した
合金が十分に形成されない。一方、800℃以上では、
ニッケル基材が軟化したり、焼結が進みすぎるため、活
性層の比表面積が格段に小さくなり、水素過電圧の低減
が見られない場合が多い。
【0025】還元雰囲気下での焼結時間としては、好ま
しくは10分〜10時間程度である。10分以下である
と加熱不充分なため十分な塗膜強度が得られない。ま
た、10時間以上では活性層の比表面積が小さくなり、
水素過電圧が改善されない。また、焼結時間も長いの
で、生産面からも問題がある。焼結処理の還元雰囲気は
様々な条件を用いることが出来る。ニッケルとモリブデ
ンが固溶した合金を形成することが出来る条件ならどの
ような条件を用いてもよい。例えば、純水素ガス雰囲気
や窒素ガスなどの不活性ガスと水素ガスの混合ガス雰囲
気でも可能である。
【0026】本発明では、塗布、乾燥、還元雰囲気での
焼結処理の工程を一度づつ行って水素発生用陰極を作製
することも可能であるが、活性層の重量を増やすため
に、塗布、乾燥、還元雰囲気での焼結処理を数回繰り返
すことも可能である。本発明では活性層の重量は電極基
材の投影面積1cm2あたり、0.012〜0.1g/
cm2であることが好ましい。さらに好ましくは0.0
25〜0.075g/cm2である。活性層の重量が少
なすぎると、水素過電圧の低減が十分でない。一方、活
性層の重量が多いと基材との接着性が悪く、電解時に脱
離が多くなり、耐久性に問題がある。
【0027】本発明では、水素発生用陰極の表面に補強
層を形成させ、電極の膜強度を更に強めることも可能で
ある。代表的なものとしてはニッケルを主成分とした補
強層を無電解メッキ法で形成できる。また、ニッケル微
粉体のみを、作製した水素発生用陰極の表面に塗布し、
加熱処理をすることにより補強層を形成させることも可
能である。この場合の加熱処理としては、酸化が好まし
くないため、通常、真空中あるいは、窒素ガスやアルゴ
ンガスなどの不活性ガス雰囲気下で焼結を行う。また、
還元雰囲気下での焼結も可能である。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明を実施例に基づいて、さら
に詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるも
のではない。
【0029】
【実施例1】ニッケル粉末(平均粒径1μm高純度化学
(株)製)と三酸化モリブデン粉末(平均粒径2.4μ
m日本新金属(株)製)をモル比80:20で、粉末の
全量が2.5gになるように計量した。さらに、ポリエ
チレングリコール(平均分子量1540、和光純薬
(株)製)10%の水溶液2.5gを粉末に混ぜ、ホモ
ジナイザ−で均一に分散させ、塗布液を作製した。アル
ミナでブラスト処理した後、アセトンで脱脂した2cm
角のニッケル製のメッシュ基材(線径0.7mm、12
メッシュ)上に、作製した塗布液を刷毛で、塗布した。
これを室温で乾燥させた後、純水素雰囲気下において6
00℃で1時間保持し、水素発生用陰極を作製した。作
製した陰極の活性層の重量は0.02833g/cm2
であり、比表面積は5.4m2/gであった。
【0030】この作製した陰極を試験極として、電解評
価試験を次のように実施した。90℃、33%苛性ソー
ダ水溶液中で、白金金網を対極、水素電極(RHE)を
参照極として、0.4A/cm2の電流密度で電解を行
った。8時間経過後の安定した電極電位を読み取り、ル
ギン毛管を用いて、電流遮断法により、溶液抵抗を測定
し、電極電位の補正を行って、85mVの水素過電圧値
を得た。更に、24時間経過後、同様の測定を行い、8
4mVの水素過電圧値を得た。
【0031】電解による重量変化率は、水洗、乾燥さ
せ、電解前後の重量を測定し、基材の重量を差し引き、
活性層の重量変化率を求めた。この水素発生用陰極の重
量変化率は−0.7%であった。次に、ニッケルとモリ
ブデンが固溶した合金の格子定数は、粉末X線回折法に
より決定した。RINT−2500(理学電機(株)
製)を用い、線源が銅Kα線(λ=1.54184
Å)、走査軸が2θ/θステップ間隔が0.02°、ス
キャンスピード4.0°/min、加速電圧が40k
V、加速電流が200mAの測定条件を用いた。なお、
測定の際に使用したスリットは、発散スリット1°、散
乱スリット1°、受光スリットが0.15mmであり、
検出器の前にグラファイトモノクロメーターを装着し
た。ニッケルの回折ピークを利用し、X線回折計の光学
補正を行い、ニッケルとモリブデンが固溶した合金のX
線回折ピーク角度から面心立方格子の格子定数を決定
し、3.564Åを得た。ニッケルの格子定数はa=
3.524Åである。
【0032】次に、イオン交換膜を用いた食塩電解試験
は次のように実施した。イオン交換膜としては旭化成
(株)製のAciplexR−F4203を用いた。陽
極は、チタン製のメッシュ基材上に、熱分解法により、
酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化チタンからなる
複合酸化物を焼結させた電極を用いた。陽極はイオン交
換膜と密着させ、試験極は膜との間隔を2mmにして、
電解槽に設置した。陽極室には200g/リットルの食
塩水、陰極室には33%苛性ソーダ水溶液を供給した。
温度90℃、33%苛性ソーダ水溶液中で、水素電極
(RHE)を参照極として、0.4A/cm2の電流密
度で電解を行った。1週間経過後に陰極を取り出し、電
解による重量変化率は−1.1%であった。また、この
陰極の皮膜を粉末X線回折法により定性分析した結果、
ニッケル、モリブデン、ニッケルとモリブデンが固溶し
た合金が検出された。
【0033】
【比較例1】ニッケル粉末(平均粒径1μm高純度化学
(株)製)とモリブデン酸ニッケル粉末(高純度化学
(株)製)をモル比で80:20、粉末の全量を2.5
gになるように計量した。それ以外は実施例1と全く同
様に作製し、評価を行った。作製した陰極の活性層の重
量は0.04068g/cm2であった。電解評価試験
において8時間後の水素過電圧は52mVであり、24
時間後の水素過電圧は60mVであった。この24時間
の電解による重量変化率は−3.7%であった。また、
粉末X線回折法からニッケルとモリブデンが固溶した合
金の格子定数はa=3.584Åであった。さらに、イ
オン交換膜法を用いた食塩電解試験を実施した。1週間
の電解による重量変化率は−4.9%であった。格子定
数が大きい方が活性が高いと考えられる。しかし、電解
による重量変化は大きかった。
【0034】
【実施例2】ニッケル粉末(平均粒径1μm高純度化学
(株)製)と酸化ニッケル粉末(平均粒径1μm)と三
酸化モリブデン粉末(平均粒径2.4μm日本新金属
(株)製)をモル比で60:20:20、粉末の全量を
2.5gになるように計量した。それ以外は実施例1と
全く同様に作製し、評価を行った。作製した陰極の活性
層の重量は0.04068g/cm2であり、比表面積
は8.9m2/gであった。
【0035】電解評価試験において8時間後の水素過電
圧は52mVであり、24時間後の水素過電圧は54m
Vであった。この24時間の電解による重量変化率は−
0.5%であった。また、粉末X線回折法からニッケル
とモリブデンが固溶した合金の格子定数はa=3.55
8Åであった。さらに、イオン交換膜法を用いた食塩電
解試験を実施した。1週間の電解による重量変化率は−
0.4%であった。原料であるニッケルの一部を酸化ニ
ッケルで置き換えることで、実施例1と比較して格子定
数が小さくなり、電解による重量変化が小さくなった。
【0036】
【比較例2】原料のニッケルとモリブデンの原子量比が
2:1になるように、硝酸ニッケルを1.45gとモリ
ブデン酸アンモニウムを0.44gを水6gに溶解した
水溶液を作製し、アンモニア水を用いてpH=9になる
ように調整した。ニッケル基材を作製した水溶液に浸漬
し、空気中で600℃で10分の焼成を繰り返し行い、
複合酸化物を形成させ、その後純水素雰囲気下、400
℃で1時間保持して還元処理を行ない、電解用陰極を作
製した。実施例1と全く同様に評価を行った。作製した
活性層の重量は0.00555g/cm2であり、電解
評価試験において24時間後の水素過電圧は71mV、
24時間後の重量変化率は−14.5%であった。ま
た、粉末X線回折法からニッケルとモリブデンが固溶し
た合金の格子定数はa=3.586Åであった。さら
に、イオン交換膜法を用いた食塩電解試験を実施した。
1週間の電解による重量変化率は−20.0%であっ
た。
【0037】
【発明の効果】本発明の水素発生用電極は、イオン交換
膜を用いた食塩水などのアルカリ金属ハロゲン化物水溶
液の電解及び水電解等における水素過電圧を、従来より
も低減することができ、かつ電解による重量変化率が小
さく、安定性にも優れたものである。そのため、電解に
使用する電力を低減でき、塩素、水素、苛性ソーダなど
の製品を低コストで生産することが可能になる。その結
果、工業電解によって消費される電力量を削減すること
ができ、省エネルギーの観点からも有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K011 AA04 AA05 AA06 AA48 DA01 DA03

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極基材上に格子定数が3.566Å以
    下であるニッケルとモリブデンが固溶した合金を含有す
    る活性層が積層されていることを特徴とする水素発生用
    電極。
  2. 【請求項2】 ニッケル原料とモリブデン原料が分散し
    ている塗布液を、電極基材上に塗布し、還元雰囲気下で
    焼結することを特徴とする請求項1に記載の水素発生用
    電極の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005082856A (ja) * 2003-09-08 2005-03-31 Osaka Prefecture ニッケル−モリブデン合金めっき液とそのめっき皮膜及びめっき物品
JP2010189763A (ja) * 2009-02-18 2010-09-02 Boo-Sung Hwang 水素酸素発生用電極板及びそれを製造するための製造方法
WO2022080142A1 (ja) * 2020-10-14 2022-04-21 国立大学法人筑波大学 電極、その製造方法、水電解装置および燃料電池

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