JP2003013200A - 硬質炭素膜およびその製造方法 - Google Patents

硬質炭素膜およびその製造方法

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JP2003013200A
JP2003013200A JP2001199056A JP2001199056A JP2003013200A JP 2003013200 A JP2003013200 A JP 2003013200A JP 2001199056 A JP2001199056 A JP 2001199056A JP 2001199056 A JP2001199056 A JP 2001199056A JP 2003013200 A JP2003013200 A JP 2003013200A
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carbon film
hard carbon
semiconductor
metal
organic compound
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JP2001199056A
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Nobuki Yamashita
信樹 山下
Hiroyuki Sonobe
裕之 園部
Toshiya Watanabe
俊哉 渡辺
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Mitsubishi Heavy Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 空気中での潤滑性を向上させ、さらに耐熱性
を向上させた硬質炭素膜を提供する。 【解決手段】 半導体もしくは金属を0.1〜30原子
%含むアモルファス構造の炭素膜からなることを特徴と
する。半導体もしくは金属は、シリコン、アルミニウ
ム、クロムもしくはチタンのいずれかよりなる。成膜方
法には、イオンビーム蒸着法またはプラズマ蒸着法を用
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種回転機械の軸
受やスライドなどの摺動部材や情報機器記憶装置等、耐
摩耗性を要求される部材への硬質炭素膜およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】硬質炭素膜は、1970年代後半から、
研究が開始され始めたi−カーボン膜と言われる硬質膜
である。この硬質炭素膜は、炭素原子の結合状態に短周
期の結晶性が見られる、アモルファス状の結合状態を有
するものである。
【0003】前記硬質炭素膜の形成方法としては、例え
ば特開昭64−31974号公報に開示されているよう
な、プラズマ化学気相成長法が知られている。
【0004】硬質炭素膜の物性は、ビッカース硬度で3
0GPa前後と高硬度で、耐摩耗性や、潤滑性、絶縁性
や、耐薬品性等に優れた性質を有するため、工具、各種
機械摺動部品、電子部品へのコーティングに応用されて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来法
で得られた硬質炭素膜は、真空中、窒素ガス雰囲気中で
は摩擦係数が0.1以下と低く、摩擦特性に優れている
ものの、空気中では摩擦係数が増加して潤滑性が低下す
ることが報告されている。特に、従来法で得られた硬質
炭素膜は、熱に弱く、加熱すると軟らかい黒鉛膜に変化
し、更に高温にすると燃焼し消滅してしまう。このた
め、使用温度は300℃以下と制限されており、厳しい
環境で使用される工具、各種機械摺動部品には適用でき
ない問題があった。
【0006】本発明は、空気中での潤滑性を向上させ、
さらに耐熱性を向上させた硬質炭素膜およびその製造方
法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る硬質炭素膜
は、半導体もしくは金属を0.1〜30原子%含むアモ
ルファス構造の炭素膜からなることを特徴とするもので
ある。
【0008】本発明によれば、炭素原子の結合状態に短
周期の結晶性が見られる、アモルファス状の結合状態を
有する炭素膜に特定量の半導体もしくは金属(好ましく
はシリコン、アルミニウム、クロムもしくはチタンのう
ちのいずれか)を含有させることによって、空気中での
潤滑性を向上させ、さらに耐熱性を向上させた硬質炭素
膜を得ることができる。
【0009】本発明に係る硬質炭素膜の製造方法は、
(a)炭化水素と半導体もしくは金属を含む有機化合物
との混合ガス、(b)炭化水素と半導体もしくは金属を
含む有機化合物と酸素との混合ガス、または(c)炭化
水素と半導体もしくは金属および酸素を含む有機化合物
との混合ガスのイオンを発生させ、このイオンを加速し
て基材に照射する、イオンビーム蒸着法により硬質炭素
膜を被覆することを特徴とするものである。
【0010】本発明に係る硬質炭素膜の製造方法におい
て、前記イオンの加速電圧を50〜2000Vに設定す
ることが好ましい。
【0011】本発明方法によれば、空気中での潤滑性を
向上させ、さらに耐熱性を向上させた硬質炭素膜を製造
することができる。
【0012】本発明に係る別の硬質炭素膜の製造方法
は、(a)炭化水素と半導体もしくは金属を含む有機化
合物との混合ガス、(b)炭化水素と半導体もしくは金
属を含む有機化合物と酸素との混合ガス、または(c)
炭化水素と半導体もしくは金属および酸素を含む有機化
合物との混合ガスのプラズマを発生させ、このプラズマ
中に曝した基材に対して負のパルス電圧を印加すること
を特徴とするものである。
【0013】本発明に係る別の硬質炭素膜の製造方法に
おいて、前記基材に印加するパルス電圧を−1kVから
−10kVにすることが好ましい。
【0014】本発明の別の方法によれば、空気中での潤
滑性を向上させ、さらに耐熱性を向上させた硬質炭素膜
を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る硬質炭素膜を
説明する。
【0016】この硬質炭素膜は、半導体もしくは金属を
0.1〜30原子%含むアモルファス構造の炭素膜から
なる。
【0017】前記半導体もしくは金属は、シリコン、ア
ルミニウム、クロムもしくはチタンのうちのいずれかで
あることが好ましい。
【0018】前記半導体もしくは金属の含有量を0.1
原子%未満にすると大気中での摩擦係数、耐熱性が従来
品を越える性能を有する硬質炭素膜を得ることが困難に
なる。一方、前記半導体もしくは金属の含有量が30原
子%を超えると、炭素原子の結合状態に短周期の結晶性
が見られるアモルファス状の結合状態を有する硬質炭素
膜が、黒鉛とシリコン、アルミニウムのような半導体も
しくは金属の混合物となり、ビッカース硬度5GPa以
下の軟質な膜になり、硬質炭素膜本来の優れた性質が損
なわれる虞がある。
【0019】次に、本発明に係る硬質炭素膜の製造方法
を図1を参照して詳細に説明する。
【0020】図1は、本発明に係る硬質炭素膜を製造す
るための装置を示す概略図である。
【0021】真空容器1は、図示しない真空排気装置に
よって真空排気される。処理すべき基材2を保持するた
めのホルダ3は、前記真空容器1内に設けられている。
図示しない電源および温調器に接続された加熱ヒータ4
は、前記ホルダ3に内蔵されている。なお、前記ホルダ
3は必要に応じて回転機構を設けてもよい。
【0022】イオン源5は、前記真空容器1に前記ホル
ダ3と対向するように取り付けられている。このイオン
源5は、ガス導入管6より導入した後述する混合ガスの
イオンを発生させるとともに、加速してそのイオンを前
記ホルダ3にイオンビーム7として照射する。前記イオ
ン源5は、膜質の均一性、生産性という点から、例えば
カウフマン型イオン源、バケット型イオン源等が適用さ
れる。
【0023】硬質炭素膜は、次のような方法により製造
される。
【0024】まず、ホルダ3に基材2を取付け、真空容
器1を所定の真空度に真空排気する。つづいて、前記ホ
ルダ2に内蔵した加熱ヒータ4により前記基材1を所望
温度に加熱する。
【0025】次いで、(a)炭化水素と半導体もしくは
金属を含む有機化合物との混合ガス、(b)炭化水素と
半導体もしくは金属を含む有機化合物と酸素との混合ガ
ス、または(c)炭化水素と半導体もしくは金属および
酸素を含む有機化合物との混合ガスをガス導入管6を通
してイオン源5(例えばカウフマンイオン源)に導入
し、前記真空容器1を所定の真空度に制御する。この状
態でイオン源5を作動させ、イオンビーム7を前記基材
2に照射し、アモルファス構造の硬質炭素膜8を成膜す
る。
【0026】前記基材としては、例えばステンレス鋼、
工具鋼、軸受け鋼、超硬合金などからなる耐摩耗性が要
求される機械部材等を挙げることができる。
【0027】前記基材の加熱温度は、30〜200℃に
することが好ましい。
【0028】前記イオン源5に導入される混合ガス中の
炭化水素としては、例えばメタン、エタン、アセチレ
ン、ベンゼン等の容易に気体として導入できる炭化水素
を用いればよいが、中でもベンゼンが好ましい。
【0029】前記半導体もしくは金属を含む有機化合物
において、前記半導体もしくは金属としてはシリコン、
アルミニウム、クロムもしくはチタンのうちのいずれか
であることが好ましい。
【0030】前記イオン源5に導入される混合ガス中の
半導体もしくは金属を含む有機化合物としては、例えば
ヘテロメチルジシロキサン(CH34Si、トリエチル
アルミニウム(C253Al、ビスシクロペンタジエ
ニルクロニウム(C552Cr、シクロペンタジエニ
ルシクロオクタテトラエニイチタニウム(C55)(C
88)Tiを用いることができる。
【0031】前記イオン源5に導入される混合ガス中の
半導体もしくは金属と酸素とを含む有機化合物として
は、例えばテトラメチルシラン(CH36Si2O、ト
リス(アセチルアセトナト)アルミニウム(C5
723Al)、トリス(アセチルアセトナト)クロニ
ウム(C5723Cr)、テトラエトキシチタニウム
(OC 254Ti等を用いることができる。
【0032】前記イオン源5でのイオン加速電圧は、5
0〜2000Vにすることが好ましい。イオン加速電圧
を50V未満にすると、膜中に水素が多く混入してポリ
マー状となり、軟質な膜となる虞がある。イオン加速電
圧が2000Vを超えると膜の自己スパッタ効果が強く
なり極端に成膜速度が低くなる虞がある。より好ましい
イオン加速電圧は、100〜1000Vである。
【0033】次に、本発明に係る別の硬質炭素膜の製造
方法を図2を参照して詳細に説明する。
【0034】図2は、本発明に係る硬質炭素膜を製造す
るための別の成膜装置の概略図である。
【0035】真空容器11は、図示しない真空排気装置
により真空排気される。処理部材である基材12を設置
するホルダ13は、高絶縁フィードスルー14を介し
て、負のパルス電圧を印加できるバイアス電源15に接
続されている。プラズマ16は、前記真空容器11内に
発生されている。このプラズマ16は、後述する混合ガ
スをガス導入管17から前記真空容器11内に導入し、
かつマイクロ波をマイクロ波電源19から導波管18を
介して真空容器11に導入し、前記真空容器11にそれ
ぞれ互いに対向して配置した一対の電磁コイル20a,
20bにより前記基材12付近に導入された前記マイク
ロ波を最も効率的に吸収する磁場を形成することによっ
て発生させる。
【0036】なお、このような構造によるプラズマの発
生以外に、高周波プラズマやヘリコンプラズマ、誘導結
合プラズマ等種々のプラズマ源を用いてもよい。
【0037】硬質炭素膜は、次のような方法により製造
される。
【0038】まず、ホルダ13に基材12を設置し、真
空容器11を所定の真空度まで真空排気する。(a)炭
化水素と半導体もしくは金属を含む有機化合物との混合
ガス、(b)炭化水素と半導体もしくは金属を含む有機
化合物と酸素との混合ガス、または(c)炭化水素と半
導体もしくは金属および酸素を含む有機化合物との混合
ガスをガス導入管17を通して前記真空容器11内に導
入し、所望の圧力に設定する。一対の電磁コイル20
a,20bに所望の電流を流すことにより、前記真空容
器11内の所望の箇所においてマイクロ波を効率的に吸
収可能な磁場を形成する。この状態で、所望の出力のマ
イクロ波をマイクロ波電源19から導波管18を介して
前記真空容器11内に導入することによりプラズマ16
を発生させる。
【0039】前記プラズマ発生と同時に、高絶縁フィー
ドスルー14を介してバイアス電源15から前記基材1
2に所望のパルス電圧を印加する。
【0040】以上の工程により前記基材12表面に硬質
炭素膜21を成膜する。
【0041】前記基材としては、例えばステンレス鋼、
工具鋼、軸受け鋼、超硬合金などからなる耐摩耗性が要
求される機械部材等を挙げることができる。
【0042】前記真空容器11に導入される混合ガス中
の炭化水素としては、例えばメタン、エタン、アセチレ
ン、ベンゼン等の容易に気体として導入できる炭化水素
を用いれば良いが、中でもベンゼンが好ましい。
【0043】前記半導体もしくは金属を含む有機化合物
において、前記半導体もしくは金属としてはシリコン、
アルミニウム、クロムもしくはチタンのうちのいずれか
であることが好ましい。
【0044】前記真空容器11に導入される混合ガス中
の半導体もしくは金属を含む有機化合物としては、例え
ばヘテロメチルジシロキサン(CH34Si、トリエチ
ルアルミニウム(C253Al、ビスシクロペンタジ
エニルクロニウム(C552Cr、シクロペンタジエ
ニルシクロオクタテトラエニイチタニウム(C55
(C88)Tiを用いることができる。
【0045】前記真空容器11に導入される混合ガス中
の半導体もしくは金属と酸素とを含む有機化合物として
は、例えばテトラメチルシラン(CH36Si2O、ト
リス(アセチルアセトナト)クロニウム(C5723
Cr)、テトラエトキシチタニウム(OC254Ti
等を用いることができる。
【0046】前記基材に印加するパルス電圧は、−1k
V〜−10kVとすることが好ましい。この基材に印加
するパルス電圧を−1kV未満にすると、膜中に水素が
多く混入しポリマー状となり、軟質な膜になる虞があ
る。一方、前記基材に印加するパルス電圧が−10kV
を超えると、膜の自己スパッタ効果が強くなり極端に成
膜速度が低くなる虞がある。
【0047】
【実施例】以下、好ましい実施例を前述した図1および
図2を参照して詳細に説明する。
【0048】(実施例1〜3および比較例1)まず、ホ
ルダ3に高速度工具鋼(JIS:SKH55)からなる
基材2を取付け、真空容器1内を1.5×10-3Pa以
下に真空排気した。
【0049】次いで、カウフマンイオン源5のガス導入
管6より原料ガスを供給した。前記原料ガスは、炭化水
素としてベンゼン(C66)、シリコンを含む有機化合
物としてヘテロメチルジシロキサン(CH34Si、酸
素(O2)、シリコン及び酸素を含む有機化合物として
テトラメチルシラン(CH36Si2O、アルミニウム
を含む有機化合物としてトリエチルアルミニウム(C2
53Alを用い、下記表1に示す混合ガスまたはベン
ゼン単独(比較例1)の形態でガス導入管6よりイオン
源5に供給した。すなわち、実施例1では導入ガスとし
てベンゼン、ヘテロメチルジシロキサン、酸素の混合ガ
スを用い、実施例2では導入ガスとしてベンゼン、テト
ラメチルシランの混合ガスを用い、実施例3では導入ガ
スとしてベンゼン、トリエチルアルミニウムの混合ガス
を用い、比較例1では導入ガスとしてベンゼンを用い
た。なお、各ガスは図示しない流量制御装置により下記
表1に示す設定したの流量比で混合すると共に流量を制
御し、ガス導入管6より供給した。この時、前記真空容
器1を7×10-1Paに制御した。
【0050】このような状態でイオン源5を作動させ、
イオン加速電圧500V、イオン電流密度1mA/cm
2でイオンビーム7を基材2上に照射し、厚さ1μmの
硬質炭素膜8を成膜した。
【0051】
【表1】
【0052】実施例1〜3および比較例1により得られ
た炭素膜について、ラマンスペクトル分析により調べ
た。その結果、いずれの炭素膜も1500〜1600c
-1付近に広いピークを示し、アモルファス構造の硬質
炭素膜であることが確認できた。
【0053】また、実施例1〜3および比較例1により
得られた炭素膜について、元素組成をX線光電子分光分
析により分析し、ビッカース硬度を測定した。さらに、
ボールオンディスク型摩擦試験機により前記炭素膜の摩
擦係数を調べた。摩擦試験の条件としては、相手材をス
テンレス鋼(JIS:SUS304)ボール、荷重を2
N、速度を0.1m/sec、雰囲気を温度30℃、お
よび400℃とした。その結果を下記表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】前記表2の結果から明らかなように、シリ
コンを含むアモルファス構造を有する実施例1、2の硬
質炭素膜、およびアルミニウムを含むアモルファス構造
を有する実施例3の硬質炭素膜は、温度30℃の大気中
の摩擦試験にて、比較例1の硬質炭素膜に比べて1桁以
下の低い摩擦係数を示すことがわかる。特に注目すべき
点は、温度400℃の大気中の摩擦試験においても、実
施例1〜3の硬質炭素膜は低い摩擦係数を示している点
である。比較例1の硬質炭素膜は、この温度で破損し、
高摩擦係数を示す。これは、実施例1〜3の硬質炭素膜
は耐熱性が大幅に向上していることを示している。
【0056】なお、前述した実施例1〜3において、半
導体もしくは金属を含む有機化合物としてクロムを含む
有機化合物ガス(例えばビスシクロペンタジエニルクロ
ニウム;(C552Cr)、チタンを含む有機化合物
ガス(例えばシクロペンタジエニルシクロオクタテトラ
エニイチタニウム;(C55)(C88)Ti)、また
半導体もしくは金属と酸素とを含む有機化合物としてク
ロムを含む有機化合物ガス(例えばトリス(アセチルア
セトナト)クロニウム;(C5723Cr)、チタン
を含む有機化合物ガス(例えばテトラエトキシチタニウ
ム;(OC254Ti)を用いても、実施例1〜3と
同等の性能を有する硬質炭素膜が製造することが可能で
あった。
【0057】(実施例4〜6および比較例2)まず、ホ
ルダ13に高速度工具鋼(JIS:SKH55)からな
る基材12を取付け、真空容器1内を1×10-3Pa以
下に真空排気した。つづいて、原料ガスをガス導入管1
7を通して前記真空容器11内に導入し、5×10-2
aに制御した。前記原料ガスは、炭化水素としてベンゼ
ン(C66)、シリコンを含む有機化合物としてヘテロ
メチルジシロキサン(CH34Si、酸素(O2)、シ
リコン及び酸素を含む有機化合物としてテトラメチルシ
ラン(CH36Si2O、アルミニウムを含む有機化合
物としてトリエチルアルミニウム(C253Alを用
い、下記表3に示す混合ガスまたはベンゼン単独(比較
例2)の形態でガス導入口6よりイオン源5に供給し
た。すなわち、実施例4では導入ガスとしてベンゼン、
ヘテロメチルジシロキサン、酸素の混合ガスを用い、実
施例5では導入ガスとしてベンゼン、テトラメチルシラ
ンの混合ガスを用い、実施例6では導入ガスとしてベン
ゼン、トリエチルアルミニウムの混合ガスを用い、比較
例2では導入ガスとしてベンゼンを用いた。なお、各ガ
スは図示しない流量制御装置により下記表3に示す設定
したの流量比で混合すると共に流量を制御し、ガス導入
管17より供給した。
【0058】
【表3】
【0059】次いで、電磁コイル20a,20bに30
0Aの電流を流すことにより、真空容器11内の中心部
から100mm離れた箇所においてマイクロ波を効率的
に吸収可能な磁場(875ガウス)を形成した。この状
態で、導波管18を介してマイクロ波電源19から10
00Wの出力のマイクロ波(周波数2.45GHz)を
真空容器11内へ導入することによりプラズマを発生さ
せた。プラズマ発生と同時に、高絶縁フィードスルー1
4を介してバイアス電源15から基材12に電圧−2k
V、デューティ(duty)比1%のパルス電圧を印加させ
ることにより硬質炭素膜21を成膜した。
【0060】実施例4〜6および比較例2により得られ
た炭素膜について、ラマンスペクトル分析により調べ
た。その結果、いずれの炭素膜も1500〜1600c
-1付近に広いピークを示し、アモルファス構造の硬質
炭素膜であることが確認できた。
【0061】また、実施例4〜6および比較例2により
得られた炭素膜について、元素組成をX線光電子分光分
析により分析し、ビッカース硬度を測定した。さらに、
ボールオンディスク型摩擦試験機により前記炭素膜の摩
擦係数を調べた。摩擦試験の条件としては、相手材をス
テンレス鋼(JIS:SUS304)ボール、荷重を2
N、速度を0.1m/sec、雰囲気を温度30℃、お
よび400℃とした。その結果を下記表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】前記表4の結果から明らかなように、シリ
コンを含むアモルファス構造を有する実施例4、5の硬
質炭素膜、およびアルミニウムを含むアモルファス構造
を有する実施例6の硬質炭素膜は、温度30℃の大気中
の摩擦試験にて、比較例2の硬質炭素膜に比べて1桁以
下の低い摩擦係数を示すことがわかる。特に注目すべき
点は、温度400℃の大気中の摩擦試験においても、実
施例4〜6の硬質炭素膜は低い摩擦係数を示している点
である。比較例2の硬質炭素膜は、この温度で破損し、
高摩擦係数を示す。これは、実施例4〜6の硬質炭素膜
は耐熱性が大幅に向上していることを示している。
【0064】なお、前述した実施例4〜6において、半
導体もしくは金属を含む有機化合物としてクロムを含む
有機化合物ガス(例えばビスシクロペンタジエニルクロ
ニウム;(C552Cr)、チタンを含む有機化合物
ガス(例えばシクロペンタジエニルシクロオクタテトラ
エニイチタニウム;(C55)(C88)Ti)、また
半導体もしくは金属と酸素とを含む有機化合物としてク
ロムを含む有機化合物ガス(例えばトリス(アセチルア
セトナト)クロニウム;(C5723Cr)、チタン
を含む有機化合物ガス(例えばテトラエトキシチタニウ
ム;(OC254Ti)を用いても、実施例4〜6と
同等の性能を有する硬質炭素膜が製造することが可能で
あった。
【0065】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、大
気中での摩擦特性、耐熱性に優れ、産業機械、自動車、
航空宇宙機器の部品の性能と寿命を向上させることが可
能な硬質炭素膜およびその製造方法を提供することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の硬質炭素膜の製造に用いられる成膜装
置を示す概略図。
【図2】本発明の硬質炭素膜の製造に用いられる別の成
膜装置を示す概略図。
【符号の説明】
1,11…真空容器、 2,12…基材、 3…ホルダ、 5…イオン源、 7…イオンビーム、 8,21…硬質炭素膜、 14…高絶縁フィードスルー、 15…バイアス電源、 16…プラズマ、 18…導波管、 19…マイクロ波電源、 20a,20b…電磁コイル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 俊哉 神奈川県横浜市金沢区幸浦一丁目8番地1 三菱重工業株式会社基盤技術研究所内 Fターム(参考) 4G046 CA02 CB03 CC06 4K029 AA02 BA34 BA64 BC00 BC10 BD04 CA03 CA13 DE02 4K030 AA06 AA09 AA11 BA02 BA06 BA18 BA27 BA29 FA01 LA23

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体もしくは金属を0.1〜30原子
    %含むアモルファス構造の炭素膜からなることを特徴と
    する硬質炭素膜。
  2. 【請求項2】 前記半導体もしくは金属は、シリコン、
    アルミニウム、クロムもしくはチタンのうちのいずれか
    からなることを特徴とする請求項1記載の硬質炭素膜。
  3. 【請求項3】 (a)炭化水素と半導体もしくは金属を
    含む有機化合物との混合ガス、(b)炭化水素と半導体
    もしくは金属を含む有機化合物と酸素との混合ガス、ま
    たは(c)炭化水素と半導体もしくは金属および酸素を
    含む有機化合物との混合ガスのイオンを発生させ、この
    イオンを加速して基材に照射する、イオンビーム蒸着法
    により硬質炭素膜を被覆することを特徴とする硬質炭素
    膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記イオンの加速電圧を50〜2000
    Vに設定することを特徴とする請求項3記載の硬質炭素
    膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 (a)炭化水素と半導体もしくは金属を
    含む有機化合物との混合ガス、(b)炭化水素と半導体
    もしくは金属を含む有機化合物と酸素との混合ガス、ま
    たは(c)炭化水素と半導体もしくは金属および酸素を
    含む有機化合物との混合ガスのプラズマを発生させ、こ
    のプラズマ中に曝した基材に対して負のパルス電圧を印
    加することを特徴とする硬質炭素膜の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記基材に印加するパルス電圧は、−1
    kVから−10kVであることを特徴とする請求項5記
    載の硬質炭素膜の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007247038A (ja) * 2006-03-20 2007-09-27 Hitachi Ltd 硬質炭素被膜
JP2007316283A (ja) * 2006-05-25 2007-12-06 Matsushita Electric Works Ltd 赤外線フィルタ及びその製造方法
JP2009174039A (ja) * 2008-01-28 2009-08-06 Panasonic Electric Works Co Ltd ダイヤモンド状炭素被膜の製造方法及び摺動部材
US8178471B2 (en) 2003-01-31 2012-05-15 Japan Science And Technology Agency Hydrogen storage materials and process for the preparation of the same

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