JP2002509076A - 上皮細胞増殖因子としてのヘレグリンの用途 - Google Patents

上皮細胞増殖因子としてのヘレグリンの用途

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Abstract

(57)【要約】 HER2、HER3および/またはHER4レセプターーに結合するリガンドは、有用な、通常の上皮細胞増殖因子である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、HER2、HER3及び/又はHER4リガンド、特にヘレグリン
ポリペプチドの上皮細胞増殖因子としての用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
HER(ErbB)ファミリーは、サブクラスI受容体チロシンキナーゼスー
パーファミリーに属し、3種類の別個の受容体、すなわちHER2、HER3及
びHER4よりなる。このErbBファミリーに対するリガンドは、タンパク質
のヘレグリン(HRG)であって、少なくとも15の別個のイソ型を有する、多
ドメイン含有タンパク質である。
【0003】 細胞の増殖及び分化を調節するシグナルの形質導入は、部分的には、様々な細
胞性タンパク質のリン酸化によって調節されている。タンパク質チロシンキナー
ゼは、この過程を触媒する酵素である。受容体タンパク質チロシンキナーゼは、
細胞内基質の、リガンドで刺激されるチロシンリン酸化を介して細胞増殖を指図
すると考えられる。増殖因子受容体タンパク質であるクラスIサブファミリーの
チロシンキナーゼは、erbB1遺伝子がコードする170kDaの表皮増殖因
子受容体(EFGR)を包含する。erbB1は、ヒトの悪性腫瘍にその原因と
して関与している。特に、この遺伝子の発現の増大は、より活動的な、胸部、膀
胱、肺及び胃の癌腫で観察されている。
【0004】 クラスIサブファミリーの第二のメンバーであるp185neuは、本来は、化 学処理されたラットの神経芽細胞腫からの形質転換遺伝子の産物として特定され
た。neu遺伝子(erbB2及びHER2とも呼ばれる)は、185kDaの
受容体タンパク質チロシンキナーゼをコードする。ヒトHER2遺伝子の増幅及
び/又は過剰発現は、乳癌及び卵巣癌の劣悪な予後と相関する〔Slamon et al.,
Science 235:177-182 (1987);及びSlamon et al., Science 244:707-712 (198
9)〕。HER2の過剰発現は、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸及び膀胱
の癌腫を包含する、その他の癌腫と相関している。したがって、Slamonら〔米国
特許第4,968,603号明細書〕は、腫瘍細胞におけるHER2遺伝子の増
幅又は発現を決定するための様々な診断アッセイを記載かつクレームしている。
Slamonらは、腫瘍細胞におけるHER2癌遺伝子の多数の遺伝子コピーの存在は
、疾病が原発腫瘍部位を越えて転移する可能性がより高く、そのため、疾病が、
そうでない場合に他の診断要因が示すよりも積極的な処置を必要とすることを示
すことを発見した。Slamonらは、HER2遺伝子増幅試験は、リンパ腺の状態の
判定とともに、非常に改良された予後の活用を与えるとの結論に達した。
【0005】 それ以外の、erbB3又はHER3と呼ばれる関連遺伝子も、記載されてい
る。米国特許第5,183,884号明細書;Kraus et al., Proc. Natl. Acad
. Sci. USA 86:9193-9197 (1989);ヨーロッパ特許願第444,961A1号公
報;及びKraus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2900-2904 (1993)を参
照されたい。Krausら(1989)は、erbB3mRNAの顕著に上昇したレベル が、一定のヒト乳腺腫瘍細胞系に存在し、erbB3は、erbB1及びerb
B2と同様に、ヒトの悪性腫瘍でも役割を果たし得ることを示した。また、Krau
sら(1993)は、キメラのEGFR/ErbB3受容体のErbB3触媒ドメイ ンのEGF依存性活性化は、トランスフェクションされたNIH−3T3細胞に
増殖性応答を招くことを示した。これは、現在では、NIH−3T3における内
在性ErbB1又はErbB2の結果であると考えられている。更に、これらの
研究者は、いくつかのヒト乳腺腫瘍細胞系が、定常状態のErbB3チロシンリ
ン酸化の有意な上昇を示すことを立証して、この受容体がヒトの悪性腫瘍に役割
を果たすことを更に示した。癌におけるerbB3の役割は、他の研究者によっ
て探求されている。それは、***〔Lemoine et al., Br. J. Cancer 66:1116-11
21 (1992)〕、胃腸〔Poller et al., J. Pathol. 168:275-280 (1992);Rajkume
r et al., J. Pathol. 170:271-278 (1993);及びSanidas et al., Int. J. Can
cer 54:935-940 (1993)〕及び膵臓癌〔Lemoine et al., J. Pathol. 168:269-27
3 (1992);及びFriess et al., Clinical Cancer Research 1:1413-1420 (1995)
〕で過剰発現されることが見出されている。
【0006】 増殖因子受容体タンパク質チロシンキナーゼというクラスIサブファミリーは
、HER4/ErbB4受容体も包含するよう更に拡張されている。ヨーロッパ
特許願第599,274号公報;Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA
90:1746-1750 (1993);及びPlowman et al., Nature 366:473-475 (1993)を参 照されたい。Plowmanらは、増大したHER4発現は、胸部腺癌を包含する上皮 起源の一定の癌腫に密接に相関することを見出した。ヒトの新生物状態(特に乳
癌)の検出のための、HER4発現を評価する診断法は、ヨーロッパ特許願第5
99,274号公報に記載されている。
【0007】 HER2癌遺伝子の活性化因子の探求は、ヘレグリンポリペプチドファミリー
の発見へと導いた。これらのタンパク質は、Orr-Urtregerら〔Proc. Natl. Acad
. Sci. USA 90:1867-1871 (1993)〕がヒト第8染色体の短腕にマップされる、一
つの遺伝子の別のスプライシングに起因すると思われる。
【0008】 Holmesらは、HER2受容体に対する一群のポリペプチド活性化因子を単離か
つクローニングし、ヘレグリン−αα(HRG−α)、ヘレグリン−β1(HR
G−β1)、ヘレグリン−β2(HRG−β2)、ヘレグリン−β2様(HRG
−β2様)及びヘレグリン−β3(HRG−β3)と称した。Holmes et al., S
cience 256:1205-1210 (1992);国際公開特許第92/20798号公報;及び 米国特許第5,367,060号明細書を参照されたい。45kDaポリペプチ
ドであるHRG−αは、MDA−MB−231というヒト乳癌細胞系の調製培地
から精製された。これらの研究者は、精製ヘレグリンポリペプチドがMCF7乳
房腫瘍細胞のHER2受容体のチロシンリン酸化を活性化できることを立証した
。更に、ヘレグリンポリペプチドのSK−BR−3細胞(高レベルのHER2受
容体を発現する)に対する***促進活性が示された。EGFファミリーに属する
他の増殖因子と同様に、可溶性HRGポリペプチドは、膜結合前駆体(プロHR
Gと呼ばれる)から派生すると思われ、タンパク質分解によって処理されて、4
5kDa可溶形態を遊離する。これらのプロHRGは、N末端シグナルペプチド
を欠く。
【0009】 ヘレグリン類は、最初の213アミノ酸残基が実質的に同一ではあるが、C末
端部分が異なる二つの変種EGF様ドメインに基づいて、主要な二型、すなわち
α及びβに分類される。それでも、これらのEGF様ドメインは、それに含まれ
る6個のシステイン残基の間隔が同一である。アミノ酸配列の比較に基づき、Ho
lmesらは、EGF様ドメイン内の第1と第6とのシステイン間で、HRGは、ヘ
パリン結合性EGF様増殖因子(HB−EGF)と45%類似し、アンフィレグ
リン(AR)と35%同一であり、TGF−αと32%同一であり、EGFと2
7%同一であることを見出した。
【0010】 44kDのneu分化因子(NDF)は、ヒトHRGのラット等価体であって、Pel
esら〔Cell, 69:205-216 (1992)〕;及びWenら〔Cell, 69:559-572 (1992)〕が 最初に記載した。HRGポリペプチドと同様に、NDFは、免疫グロブリン(I
g)相同性ドメイン、及びその後にEGF様ドメインを有し、N末端シグナルペ
プチドを欠く。その後、Wenら〔Mol. Cell. Biol., 14(3):1909-1919 (1994)〕 は、「徹底的なクローニング」を実施して、NDFファミリーを拡張した。この
研究は、6種類の別個の繊維芽細胞性プロNDFを明らかにした。Holmesらの命
名法を採用すると、NDFは、EGF様ドメインの配列に基づいて、α又はβポ
リペプチドのいずれかに分類される。イソ型1〜4は、(EGF様ドメインと膜
貫通ドメインとの間の)可変的な膜上伸展部に基づいて特徴付けられる。また、
可変長の細胞質ドメインを有するイソ型a、b及びcが記載されている。これら
の研究者は、異なるNDFイソ型が、別のスプライシングによって生成され、別
個の組織特異的な機能を演じるとの結論に達している。NDFに関しては、ヨー
ロッパ特許第505 148号;国際公開特許第93/22424号;及び国際
公開特許第94/28133号公報を参照されたい。
【0011】 Fallsら〔Cell, 72:801-815 (1993)〕は、ヘレグリンファミリーのもう一つの
メンバーを記載して、アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA)ポリペプチド
と呼んでいる。ニワトリ由来ARIAポリペプチドは、筋アセチルコリン受容体
の合成を刺激する。国際公開特許第94/08007号公報も参照されたい。A
RIAは、β型のヘレグリンであり、HRGα及びHRGβ1〜β3のIg様ド
メインとEGF様ドメインとの間の、糖鎖形成部位に富むスペーサー領域全体を
欠く。
【0012】 Marcionniら〔Nature, 362:312-318 (1993)〕は、いくつかのウシ由来タンパ ク質を特定して、グリア細胞増殖因子(GGF)と呼んでいる。これらのGGF
は、上記のその他のヘレグリンタンパク質とともに、Ig様ドメイン及びEGF
様ドメインを共有するが、アミノ末端クリングルドメインも有する。GGFは、
一般的には、Ig様ドメインとEGF様ドメインとの間に完全な糖鎖形成された
スペーサー領域を保有しない。CGFのうち一つのみ、すなわちGGFIIがN末
端シグナルペプチドを有したにすぎない。GGF及びその用途に言及している、
国際公開特許第92/18627号;第94/00140号;第94/0456
0号;第94/26298号;及び第95/32724号公報も参照されたい。
【0013】 Hoらは、J. Biol. Chem. 270(4): 14523-14532 (1995)で、感覚及び運動性ニ ューロン由来因子(SMDF)と呼ばれる、ヘレグリンファミリーのもう一つの
メンバーを記載している。このタンパク質は、別個のN末端ドメインを除いた他
のすべてのヘレグリンポリペプチドに特徴的なEGF様ドメインを有する。SM
DFと他のヘレグリンポリペプチドとの間の主な構造的差異は、SMDFにおけ
るIg様ドメイン、及び他のすべてのヘレグリンポリペプチドに特徴的な「グリ
コ」スペーサーの欠如である。SMDFのもう一つの特徴は、N末端近くの疎水
性アミノ酸の二つの伸張部の存在である。
【0014】 ヘレグリンポリペプチドは、HER2受容体を活性化できるそれらの能力に基
づいて特定された最初のものであったが〔Holmes et al., 前掲〕、neuを発現す
る一定の卵巣細胞、及びneuをトランスフェクションされた繊維芽細胞は、ND Fとは結合若しくは架橋せず、NDFに応答して、チロシンリン酸化を受けるこ
ともなかった〔Peles et al., EMBO J. 12:961-971 (1993)〕。これは、完全な ヘレグリン応答性を与えるには、もう一つの細胞性成分が必要であることを示し
ていた。Carrawayらは、その後、NIH−3T3繊維芽細胞に結合した125I− rHRGβ1177-244が、ウシerbB3で安定的にトランスフェクションされ るが、トランスフェクションされなかった親細胞には結合しないことを立証した
。上記により、彼等は、ErbB3は、HRGの受容体であり、内在性チロシン
残基のリン酸化はもとより、両受容体を発現する細胞でのErbB2受容体のリ
ン酸化も仲介するとの結論に達した〔Carraway et al., J. Biol. Chem. 269(19
):14303-14306 (1994)〕。Sliwkowskiら〔J. Biol. Chem. 269(20):14661-14665
(1994)〕は、HER3のみでトランスフェクションされた細胞は、ヘレグリン に対する低い親和力を示すが、HER2とHER3との双方でトランスフェクシ
ョンされた細胞は、より高い親和力を示すことを見出した。
【0015】 この所見は、以前にKokaiら〔Cell 58:287-292 (1989)〕;Sternら〔EMBO J.
7:995-1001 (1988)〕;及びKingら〔4:13-18 (1989)〕が記載した、「受容体ク ロストーキング」と相関する。これらの研究者は、EGFRとのEGFの結合は
、EGFRキナーゼドメインの活性化、及びp185HER2の交差リン酸化を招く
ことを見出した。これは、リガンド誘導受容体ヘテロ二量体化、及びヘテロ二量
体内での受容体の同時交差リン酸化の結果であると考えられる〔Wada et al., C
ell 61:1339-1347 (1990)〕。
【0016】 Plowmanと彼の同僚は、同様に、p185HER4/p185HER2活性化を研究し た。彼等は、p185HER2のみ、p185HER4のみ、又は2受容体をともにヒト
Tリンパ球で発現させ、ヘレグリンが、両受容体を発現する細胞内では、p18
HER4のチロシンリン酸化を刺激できるが、p185HER2のリン酸化のみ刺激で
きたにすぎないことを立証した〔Plowman et al., Nature 336:473-475 (1993) 〕。
【0017】 ヘレグリンの生物学的役割は、いくつかのグループが研究している。例えば、
Fallsら(上記に考察)は、ARIAが、筋管分化に役割を果たすこと、すなわ ち、運動性ニューロンのシナプス後筋細胞内の神経伝達物質受容体の合成及び濃
度に影響を与えることを見出した。Corfas及びFischbachは、ARIAが、ニワ トリの筋におけるナトリウムチャンネルの数も増加させることを立証した〔Corf
as & Fischbach, J. Neuroscience, 13(5):2118-2125 (1993)〕。GGFIIは、 亜集密的静止状態のヒト筋芽細胞に対して***促進性であること、及びGGFII
の持続的存在下でのクローン性ヒト筋芽細胞の分化は、分化の6日後に、より多
くの数の筋管を生じることも示されている〔Sklar et al., J. Cell Biochem.,
Abst. W462, 18D, 540 (1994)〕。1994年11月24日に刊行された国際公 開特許第94/26298号公報も参照されたい。
【0018】 Holmesら〔前掲〕は、HRGが、乳腺細胞系(例えばSK−BR−3及びMC
F−7)に対して***促進効果を発揮することを見出した。シュワン細胞に対す
るGGFの***促進活性も報告されている。例えば、Brockes et al., J. Biol.
Chem., 255(18):8374-8377 (1980);Lemke & Brockes, J. Neurosci., 4:75-83
(1984);Brockes et al., Ann. Neurol., 20(3):317-322 (1986);Brockes, J.
, Methods in Enzym., 147:217-225 (1987);及びMarchionni et al.前掲を参照
されたい。シュワン細胞は、ニューロンの軸索の周囲に髄鞘を与え、それによっ
て個々の神経繊維を形成する、重要なグリア細胞を構成する。したがって、シュ
ワン細胞が、末梢神経の発生、機能及び再生に重要な役割を果たすことは明白で
ある。治療の立場からのこの形態の意味するものは、Leviら〔J. Neuroscience
14(3):1309-1319 (1994)〕が扱っている。Leviらは、損傷した脊椎の部域に移植
できると思われる、ヒトシュワン細胞を含む細胞プロテーゼの構成の可能性を考
察している。シュワン細胞をex vivoで培養する方法が記載されている。国際公 開特許第94/00140及びLi et al., J. Neuroscience 16(6):2012-2019 (
1996)を参照されたい。
【0019】 Pinkas-Kramarskiらは、NDFが、ラットの胚及び成体の脳内のニューロンや
グリア細胞、並びにラット脳細胞の初代培養で発現されると思われることを見出
し、それが、星状細胞の生存及び成熟因子として作用し得ると示唆した〔Pinkas
-Kramarski et al., PNAS, USA 91:9387-9391 (1994)〕。Meyer及びBirchmeier 〔PNAS, USA 91:1064-1068 (1994)〕は、in situハイブリダイゼーション及びR
Nアーゼ防護の実験を用いて、マウス胚形成の際や周産期動物でのヘレグリンの
発現を分析した。Meyer et al., Development 124(18):3575-3586 (1997)を参照
されたい。これらの著者は、この分子の発現に基づいて、ヘレグリンは、in viv
oで、間充織及びニューロン性因子としての役割を果たすとの結論に達した。同 様に、Danilenkoら〔Abstract 3101, FASEB 8(4-5):A535 (1994)〕;Danilenko ら〔Journal of Clinical Investigation 95(2):842-851 (1995)〕は、NDFと
HER2受容体との相互作用は、創傷修復の際の表皮移動及び分化を指示するの
に重要であることを見出した。
【0020】 Ramら〔Journal of Cellular Physiology 163:589-596 (1995)〕は、不死化し
たヒト乳腺上皮細胞系統であるMCF−10Aに対する、NDFの***促進活性
を評価した。Danilenkoら〔J. Clin. Invest. 95:842-851 (1995)〕は、NDF が、切開性の深い部分肥厚創傷修復のin vivoモデルでの表皮移動に影響を及ぼ すか否かを調べた。対照創傷と対比したrhNDF−α2処置創傷で、基底及び 基底上ケラチノサイトの増殖には、統計的有意差が皆無であったと報告されてい
る。Marikovskyら〔Oncogene, 10:1403-1411 (1995)〕は、異数性BALB/M K連続ケラチノサイト細胞系の増殖応答を調べ、表皮ケラチノサイトに対するN
DFのα及びβイソ型の効果を評価した。
【0021】 新規タンパク質の構造と機能との関係は、利用できる様々な突然変異分析手法
のいずれを用いても調べることができる。そのような手法の例は、アラニン走査
突然変異誘発、及びファージミドディスプレイを包含する。アラニン走査は、タ
ンパク質又はタンパク質ドメイン中の活性残基(すなわち、タンパク質の機能に
有意な効果を有する残基)を特定するのに用いることができる。例えば、Cunnin
gham及びWellsは、アラニン走査を用いて、ヒト増殖ホルモン中の、その受容体 と結合するのに重要である残基を特定した〔Cunningham & Wells, Science 244:
1081-1085 (1989)〕。アラニン走査では、走査しようとするタンパク質又はドメ
インをコードする遺伝子を発現ベクターに挿入し、連続する残基がアラニンに変
換されるタンパク質又はドメインをコードする、一連のベクターを生成するよう
突然変異誘発を実施する。コードされるタンパク質又はドメインは、これらのベ
クターから発現され、そうして、アラニン置換変種の活性を試験して、変化した
活性を有するものを特定する。活性の変化は、アラニン置換の位置の残基が活性
残基であることを示す。
【0022】 ファージミドディスプレイは、非常に多くの変種ポリペプチドを特定の結合活
性についてスクリーニングするのを可能にするために開発された。Smith及びPar
mleyは、外来ペプチドが、fdファージの遺伝子IIIに短い遺伝子フラグメント を挿入することによって、繊維状ファージの表面に効率的に「ディスプレイされ
る」ことができることを立証した〔Smith, Science 228:1315-1317 (1985);Par
mley & Smith, Gene 73:305-318 (1985)〕。遺伝子IIIコートタンパク質は、フ ァージ粒子の一端に約5コピーで存在する。改変されたファージは、遺伝子III コートタンパク質に融合した外来ペプチドをディスプレイするため、「融合ファ
ージ」と名付けられた。ファージ粒子は、それぞれ約5コピーの融合タンパク質
をディスプレイするため、このモードのファージディスプレイは、「多価ディス
プレイ」と名付けられた。
【0023】 Scottら及び Cwirlaらは、融合ファージライブラリーが、「パンニング」とし
て知られる連続親和性選別によって、スクリーニングできることを示した〔Scot
t et al., Science 249:386-390 (1990);Cwirla et al., PNAS USA 87:6378-63
82 (1990)〕。しかし、高親和性融合ファージを選別するための初期の努力は、 おそらくファージ粒子の多価性のために失敗した。この問題は、「一価」ファー
ジディスプレイシステムの開発によって解決されたが、ここでは、融合タンパク
質は、ファージミドから低レベルで発現され、ヘルパーファージが、大過剰量の
野生型コートタンパク質を与える〔Bass et al., Proteins 8:309-314 (1990);
Lowman et al., Biochem., 30:10832-10838 (1991)〕。一価ファージディスプレ
イは、問題の標的に高親和力で結合するものを単離するために、非常に多くの変
種ポリペプチドを生成かつスクリーニングするのに用いることができる。
【0024】 米国では、毎年約50,000人の幼児が、1.5kg未満の出生時体重で誕生
する。これら非常に少い出生時体重の幼児の約3分の2は、出生直後に呼吸困難
として表明される、肺の未成熟の証拠を有する。これらの幼児の大多数は、人工
呼吸を必要とする。不充分な肺界面活性剤生産はもとより、肺の構造的未成熟に
よっても生じる呼吸困難症候群が、これらの成熟前に生まれた新生児に認められ
る呼吸困難の原因である。肺の気液界面から全身的循環への効率的な酸素輸送を
与えるには、充分に発達した肺胞が必要である。界面活性剤タンパク質は、低い
肺容積での肺胞表面の張力を低下させ、肺胞の崩壊を防ぐのに決定的に重要であ
る。
【0025】 呼吸困難症候群、及び未成熟な肺の発達、及び低い肺界面活性剤生産に付随す
るその他の疾病を治療する方法に対して、必要性が存在し続けている。
【0026】 発明の要約 一般的には、本発明の目的は、組織の損傷又は傷害の修復及び治癒を促進する
目的で、上皮細胞の増殖及び発達を誘導する方法を提供することである。
【0027】 上記により、本発明の一つの目的は、そのような治療を要する患者、専らヒト
の患者における呼吸困難を治療する方法を提供することである。更に一つの目的
は、肺上皮細胞の増殖及び発達を誘導する方法を提供することである。更に一つ
の目的は、肺胞での酸素輸送の欠陥を有する身体の肺における、肺界面活性剤タ
ンパク質Aの生産を増大させる方法を提供することである。本発明は、呼吸困難
を有する幼児/新生児はもとより、肺の傷害又は損傷による肺機能の劣化を有す
る若年及び成年をも処置するのに役立つ。
【0028】 本発明の一態様では、これらの目的、並びに上皮細胞の損傷及び傷害に付随す
る状態を処置するという、より広い目的は、そのような処置を必要とする患者に
、有効量のヘレグリンリガンド、好ましくはそのポリペプチド又はフラグメント
を投与することによって達成されることが、今では発見されている。これらのヘ
レグリン(HRG)ポリペプチドは、HRG−α、HRG−β1、HRG−β2
、HRG−β3、並びにこれらのファミリーのメンバーに対して産生した抗体と
交差反応し、かつ/又は下記に定義されるとおり、実質的に相同であり、そのN
末端及びC末端フラグメントのようなHRG変種を包含する、その他のHRGポ
リペプチドを包含する。好適なHRGは、図1A〜1Dに開示され、その上HR
G−αと称されるリガンドである。その他の好適なHRGは、図2A〜2Eに開
示され、HRG−β1と称されるリガンド;図3A〜3Eに開示され、HRG−
β2と称されるリガンド;並びに図4A〜4Cに開示され、HRG−β3と称さ
れるリガンドである。
【0029】 もう一つの態様では、本発明は、本発明の目的を達成するために、HRGアゴ
ニスト抗体を投与する方法を提供する。この実施態様では、HER2/HER3
、又はそのフラグメント(in vitroの方法によって合成されてもよい)を、(組
換え発現、又はin vitroでのペプチジル結合によって)免疫原性ポリペプチドに
融合させ、次いで、この融合ポリペプチドを用いて、HER2/HER3エピト
ープに対する抗体を産生する。アゴニスト抗体は、感作した動物の血清から回収
する。これに代えて、モノクローナル抗体を、in vitroで細胞からか、又はin v
ivoで感作した動物から慣用の方式で調製する。望みであれば、アゴニスト抗体 は、抗体、又は抗体フラグメントのファージライブラリーから、ファージディス
プレイ選別によって得てよい。定型的なスクリーニングによって特定される好適
な抗体は、受容体には結合するが、EGFのような他のいかなる公知リガンドと
も実質的に交差反応せず、HER受容体のHER2、HER3及び/又はHER
4を活性化することになる。加えて、HRGファミリーの個々のファミリーメン
バー、例えばHRG−α、HRG−β1、HRG−β2、HRG−β3に特異的
に結合することができる、それらのアゴニストである抗体を選んでよい。
【0030】 一般的には、本発明は、上皮細胞、特に管上皮や繊毛上皮の細胞の増殖及び増
殖を刺激することによって、上皮細胞の傷害を再生及び/又は修復する方法であ
る。上皮細胞は、多くの種類の外傷、例えば外科的切開又は切除、化学物質又は
煙の吸入若しくは吸引による傷害、化学的又は生化学的な潰瘍形成、ウイルス又
は細菌の感染等々によって損傷され得る。本発明の方法によって影響され得る上
皮細胞は、HER2、HER3及び/又はHER4を発現するいかなる上皮細胞
も包含するが;適切な細胞は、例えば肺、胃粘膜、子宮内膜、輸卵管、乳腺、膵
臓、唾液腺等々に位置する。本発明の方法は、上皮細胞の増殖及び増殖を刺激し
て、器官の細胞障壁を修復かつ再確立し、影響された組織が正常な生理学的機能
を一層速やかに発達させるのを可能にする。例えば、肺上皮細胞は、煙の吸入に
よって損傷されて、肺気腫を招く。本発明の方法による肺細胞の処置は、肺上皮
細胞の障壁層を再生し、酸素付加を向上させ、感染に対する障壁の発達を加速す
る。同様に、胃酸の吸引による細胞損傷は、本発明の方法によって、上皮細胞の
再生を促進するよう処置することができる。
【0031】 したがって、本発明の一実施態様は、HER2、HER3及び/又はHER4
受容体を発現する肺上皮細胞を、有効量のHER2、HER3及び/又はHER
4活性化リガンドに接触させることによって、肺上皮細胞の増殖及び発達を誘導
する方法である。
【0032】 もう一つの実施態様は、有効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性
化リガンドを、それを必要とする患者に投与することによって、患者の肺界面活
性剤プロテインAを増加させる方法である。
【0033】 もう一つの実施態様は、有効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性
化リガンドを、それを必要とする患者に投与することによって、呼吸困難を処置
する方法である。
【0034】 もう一つの実施態様は、有効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性
化リガンドを、それを必要とする患者に投与することによって、肺気腫を処置す
る方法である。
【0035】 好適実施態様の詳細な説明 HRGリガンド、特にそのポリペプチド、及びアゴニスト抗体は、自己リン酸
化の際に、HER2、HER3及び/若しくはHER4受容体、又はそれらの組
合せに対する親和性を有し、それらを刺激する。HRGリガンドの定義には、H
RG−α、HRG−β1、HRG−β2、HRG−β3及びHRG−β2様に加
え、HRG−α又はHRG−β1との実質的なアミノ酸配列相同性を有する、H
ER2、HER3及び/若しくはHER4受容体に結合するその他のポリペプチ
ドが包含される。そのような更なるポリペプチドは、HER2、HER3及び/
若しくはHER4受容体に結合するポリペプチドリガンドのファミリーとして、
HRGの定義に属する。
【0036】 ヘレグリンポリペプチドは、HER2、HER3及び/又はHER4受容体に
様々な親和力で結合する。一般的には、HER3及びHER4受容体が、高い親
和力で結合する。HER2とHER3、及びHER2とHER4のヘテロ二量体
化が、その後の、上記の受容体交差リン酸化とともに生じることも、公知である
。本発明では、ヘレグリンタンパク質が、個々の受容体分子又は受容体二量体と
作用し合い、かつ結合する結果、受容体リン酸化が誘導されるときに、上皮細胞
の増殖及び/又は増殖が誘導される。したがって、HER2、HER3、HER
4、又はそれらの組合せの結合及び活性化は、受容体の活性化及び生物学的機能
に必要な、単量体の受容体、及び二量体の受容体の形態を包含するいかなる形態
の受容体の活性化も包含するものとする。二量体の受容体の形態は、下記に、例
えば、HER2/HER3、HER2/HER4及びHER3/HER4と称さ
れることがある。
【0037】 I.定義 一般に、説明、実施例及びクレームに用いられたときの下記の語句は、示した
定義を有する。
【0038】 「ヘレグリン」(HRG)リガンドは、本明細書では、自然に生じるHRGポ
リペプチドの生物学的特性を有する、単離されたいかなるリガンド、好ましくは
ポリペプチド配列でもあると定義される。本発明の対象範囲内のリガンドは、上
記に特定されたNDF、ARIA及びGGFの増殖因子のヘレグリンタンパク質
はもとより、本明細書で詳細に考察されるSMDF及びHRGポリペプチドも包
含する。これらの単離されたNDF、ARIA及びGGFヘレグリンは、当技術
で周知である。HRGは、図1A〜1D、2A〜2E、3A〜3E、4A〜4C
、5A〜5D、6A〜6C、7A〜7C及び8に示したポリペプチド、並びにそ
れらの哺乳動物の類似体を包含する。包含されるのは、1998年1月22日に
刊行された国際公開特許第98/02541号公報に記載されたγ−HRG;1
998年8月13日に刊行された国際公開特許第98/35036号公報に記載
された変種;及び1998年6月23日に付与された米国特許第5,770,5
67号明細書(国際公開特許第96/15244号公報)に記載されたSMDF
変種である。これらの出願は、その全体が本明細書に組み込まれる。これらの変
種は、場合により、当技術に公知のアラニン走査及びファージディスプレイの手
法とともに、下記に記載された方法によって調製することができる〔Cunningham
& Wells, Science 244:1081-85 (1989);Bass et al., Proteins 8:309-14 (19
90);Lowman et al., Biochem., 30:10832-38 (1991)〕。
【0039】 用語「正常な」上皮細胞は、形質転換されていない、すなわち癌性でないか、
及び/又は不死化されていない上皮細胞を意味する。更に、正常な上皮細胞は、
好ましくは、異数体ではない。異数性は、細胞の核が染色体の半数体の正確な倍
数を含まずに、一本以上の染色体が、残りより大きいか、又は小さい数で存在す
るときに存在する。本発明の対象範囲外に属する、形質転換された細胞の代表的
な特性は、免疫欠損させたマウス(ヌードマウス)に移植したとき、腫瘍を形成
できる能力、懸濁液、又は寒天のような半固形培地中で増殖できる能力、コロニ
ー又はフォーカスへと細胞の積み重なりを可能にする、接触阻害の喪失、増殖因
子又は血清への依存性の喪失、細胞が増殖を阻害されたときの細胞死、及びアク
チン繊維の崩壊を包含する。本発明に具体的に包含されるのは、マウスに腫瘍を
形成せず、プラスチック又はガラスに付着して増殖せず(足場依存性である)、
接触阻害を示し、ホルモン及び増殖因子を含有する血清を必要とし、血清の欠如
によって増殖が停止された場合に生存可能に存続し、充分に組織化されたアクチ
ン繊維を有するような、正常な上皮細胞である。正常な上皮細胞は、好ましくは
、培養された細胞ではないが、哺乳動物組織から単離された、形質転換されてい
ない、不死化されていない上皮細胞も、本発明に適する。これらの上皮細胞は、
単離された上皮細胞サンプルの増殖及び/又は増殖を誘導するために、すなわち
サンプルを拡大するために、ヘレグリンの存在下で数世代(約10又は50世代
までさえ)培養してよい。そうして、拡大されたサンプルを、上皮細胞組織を再
増殖する目的で、哺乳動物に再導入することができる(再上皮化)。これは、組
織傷害又は損傷を修復するのに特に役立つ。
【0040】 「上皮」細胞は、器官の自由表面(角質、粘膜又は獎膜性の)を被覆するか、
又は動物体の管若しくは体腔を裏打ちする、細胞性で非脈管性の層に位置する細
胞である。肺上皮細胞は、気管支上皮細胞、第II型細胞及びクララ細胞を包含す
る。本明細書に用いられる限りでの用語「上皮細胞」は、上皮内の上皮細胞の、
当技術に認められた定義と整合する。例えば、Taber′s Encyclopedic Medical
Dictionary, Edition 12 (1973) F.A. Davis Company, publisherを参照された い。
【0041】 本明細書の目的での「生物学的特性」は、HRG配列が(その未変性であるか
、又は変性した席次構造であるかに拘わらず)直接又は間接的に果たす、in viv
oでの生物学的若しくは抗原性機能又は活性を意味する。生物学的機能は、受容 体結合、いかなる酵素活性又は酵素調節活性、いかなる担体結合活性、いかなる
ホルモン活性、細胞外基質若しくは細胞表面分子への細胞の付着を促進又は阻害
する、いかなる活性、或いはいかなる構造的役割も包含する。しかし、生物学的
機能は、抗原機能、すなわち、自然に生じるHRGポリペプチドに対して誘導さ
れた抗体と交差反応できる、エピトープ又は抗原部位の保有を包含しない。
【0042】 「生物学的に活性である」HRGは、本明細書では、HRG配列の生物学的機
能を共有し、その上、抗原機能を保有してよい(が、必ずしも必要ではない)ポ
リペプチドとして定義される。HRGの公知の主要な効果は、HER2、HER
3及び/又はHER4に結合する定性的な生物学的活性を有する結果、受容体チ
ロシンキナーゼの活性を生じるリガンドポリペプチド(「活性化リガンド」)と
してのそれである。活性化リガンドについての一試験は、下記のHRGチロシン
自己リン酸化アッセイである。この用語が本明細書に用いられる限りでのHRG
の範囲内には、本明細書で説明されるとおりの完全なヒトHRGの、翻訳された
成熟アミノ酸配列を有するHRG;脱グリコシルされたか、又は糖鎖未形成であ
るHRG誘導体;HRG配列のアミノ酸配列の変種;及びHRGに共通する生物
学的特性を示すことができる、HRG誘導体が包含される。未変性HERは、膜
に結合したポリペプチドである、可溶性形態、例えば、機能的な膜貫通ドメイン
を欠く形態のそれも、この定義に包含される。特に、HRG配列の、約S216
から約A227までのいかなる残基にもN末端を、また約K268からほぼR2
86までのいかなる残基にもC末端を有するポリペプチドフラグメント、及び図
6A〜Cに示した相同配列が包含され、以下、すべてのHRGについて、集合的
に増殖因子ドメイン(GFD)と称することにする。
【0043】 「抗原的に活性である」HRGは、HRGの抗原機能を保有し、その上、生物
学的機能を保有してよい(が、必ずしも必要ではない)ポリペプチドとして定義
される。
【0044】 好適実施態様では、抗原的に活性であるHRGは、自然に生じるHRG配列に
対して産生した抗体に、少なくとも約10-9L/Mの親和力で結合するポリペプチ
ドである。通常、このポリペプチドは、少なくとも約10-8L/Mの親和力で結合
する。最も好ましくは、抗原的活性HRGは、その未変性の席次構造でのHRG
の一つに対して産生した抗体に結合する、ポリペプチドである。未変性の席次構
造でのHRGは、一般的には、例えば非還元性、非変性性のサイズ決定用ゲル上
での移動によって決定されたとおりの、HRGの三次元構造を実質的に改変する
、カオトロピック作用因子、熱その他の処理によって変性されていない、天然に
見出されるとおりのHRGである。この決定に用いられる抗体は、フロイント完
全アジュバント中で、ウサギでない種から未変性HRGを配合し、この配合物を
皮下注射し、抗HRG抗体の力価がプラトーに達するまで、配合物の腹腔内注射
によって免疫応答を追加刺激することによって誘導した、ウサギポリクローナル
抗体であってよい。
【0045】 通常、生物学的又は抗原的活性HRGは、与えられたHRG配列との75%以
上、より好ましくは80%以上、はるかに好ましくは90%以上、最も好ましく
は95%以上のアミノ酸配列同一性を有すると思われる。あるHRGに関しての
同一性又は相同性は、本明細書では、必要ならば、配列を整合させ、ギャップを
導入して、最高の相同性の百分率を達成し、配列同一性の一部としてのいかなる
保存的置換も斟酌しなかった後の、図6A〜6CのHRG中のHRG残基と同一
である、候補配列中のアミノ酸残基の百分率として定義される。HRG配列のN
末端、C末端又は内部のいかなる延長、欠失又は挿入も、相同性に影響するとし
て解してはならない。
【0046】 したがって、本発明の主題である、生物学的活性及び抗原的活性HRGポリペ
プチドは、それぞれ、HRG配列全体;HRG配列からの少なくとも5、10、
15、20、25、30又は40アミノ酸残基の連続的配列;アミノ酸残基がH
RG配列に対してか、又はその中にN末端若しくはC末端で挿入された、HRG
配列のアミノ酸配列変種、或いは上記に定義されたとおりのそのフラグメント;
もう一つの残基で置換された、上記に定義されたとおりのHRG配列のアミノ酸
配列変種、又はそのフラグメントを包含する。HRGポリペプチドは、例えば、
部位指向性又はPCR突然変異誘発によって、あらかじめ決定された突然変異を
含むもの、及びウサギ、ラット、ブタ、ヒトでない霊長類、ウマ、マウス及びヒ
ツジのHRGのような他の動物種のHRGポリペプチド、並びに前記及びヒトの
配列の対立遺伝子、その他の自然に生じる変種;HRG又はそのフラグメントが
、自然に生じるアミノ酸以外の部分(例えば酵素又は放射性同位元素のような検
出できる部分)との置換、化学的、酵素的その他適切な手段で共有結合により改
変されている、上記に定義されたとおりのHRG誘導体、又はそのフラグメント
;HRGの糖鎖形成変種(適切なアミノ酸の欠失、挿入または置換による、いか
なる糖鎖形成部位の挿入、又はいかなる糖鎖形成部位の欠失);並びにHRGの
可溶性形態、例えばHRG−GFD、又は機能的膜貫通ドメインを欠くそれらを
包含する。
【0047】 「単離された」は、その天然の環境の構成要素から特定され、かつ分離及び/
又は回収されたリガンド、例えばHRGを意味する。その天然の環境の混入構成
要素は、HRGに対する診断又は治療の用途に干渉するような材料であり、タン
パク質、ホルモンその他の物質を包含し得る。好適実施態様では、HRGは、(
1)ローリー法その他の確認されたタンパク質決定法によって決定された限りで
、95重量%超、最も好ましくは99重量%超のタンパク質まで、(2)本明細
書の受理日の時点で市販される商業的に入手できる最良のアミノ酸シークエンス
装置の使用によって、N末端又は内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得
るのに充分な程度まで、或いは(3)クーマシーブルー、又は好ましくは銀染色
を用いたSDS−PAGEによる均一性まで、精製されることになる。単離され
たHRGは、HRGの天然の環境の少なくとも一つの構成要素が存在しないこと
になるため、組換え細胞内のin situでのHRGを包含する。単離HRGは、そ のような状況でのHRGが供給源のポリペプチドを欠くことになるため、もう一
つの種の組換え細胞培養体中の一つの種からのHRGを包含する。しかし、通常
は、単離HRGは、少なくとも一つの精製工程によって調製されることになる。
【0048】 本発明によれば、HRG核酸は、生物学的又は抗原的に活性なHRGをコード
する10塩基より多くを含むRNA又はDNAであり、そのようなHRGをコー
ドする核酸配列に相補的であるか、又はそのようなHRGをコードする核酸配列
とハイブリダイズし、そして緊縮条件下でそれと安定的に結合して存続する。
【0049】 好ましくは、HRG核酸は、75%以上、より好ましくは80%以上、更に好
ましくは85%以上、はるかに好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以
上の配列同一性をHRG配列と共有するポリペプチドをコードする。好ましくは
、ハイブリダイズするHRG核酸は、20以上、より好ましくは約40以上、最
も好ましくは約90以上の塩基を有する。
【0050】 単離されたHRG核酸は、HRG核酸の天然の供給源に通常付随する、少なく
とも1種類の包有核酸から特定かつ分離される核酸を包含する。したがって、単
離HRG核酸は、それが自然界に見出される以外の形態又は態様で存在する。し
かし、単離HRGコーディング核酸は、核酸が、天然の細胞のそれとは異なる染
色体の位置に存在するか、又は別途自然界に見出されるそれと異なるDNA配列
に挟まれている、HRGを通常発現する細胞内のHRG核酸を包含する。核酸コ
ーディングHRG、特にHRGコーディング配列の、他の公知のDNA配列とハ
イブリダイズしない部分は、特定のハイブリダイゼーションアッセイに用い得る
。「緊縮条件(stringent condition)」は、(1)洗浄のために、低いイオン 強度、及び温度、例えば、50℃で、0.015MNaCl/0.0015Mクエ
ン酸ナトリウム/0.1%NaDodSO4を用いるか;(2)ハイブリダイゼ ーションの際に、ホルムアミドのような変性剤、例えば、42℃で、0.1%ウ
シ血清アルブミンとともに50%(容量/容量)のホルムアミド、0.1%フィ
コール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mMNaClとともにpH6.5の
50mMリン酸ナトリウム緩衝液、75mMクエン酸ナトリウムを用いるか;又は(
3)42℃で、50%ホルムアミド、5xSSC(0.75MNaCl、0.0 75Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0. 1%ピロリン酸ナトリウム、5xデンハート溶液、超音波処理したサケ***DN
A(50g/ml)、0.1%SDS、及び10%硫酸デキストランを用い、42 ℃で、0.2xSSC及び0.1%SDSで洗浄するそれである。
【0051】 用語「制御配列」は、特定の宿主生物体内の作動可能に結合したコーディング
配列の発現に必要なDNA配列を意味する。原核生物に適した制御配列は、例え
ば、プロモーターー、場合によりオペレーター配列、リボソーム結合部位、及び
おそらくは、その他の未だに僅かに理解されているにすぎない配列を包含する。
真核生物は、プロモーターー、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーーを利
用することが知られている。
【0052】 核酸は、もう一つの核酸配列と作動可能な関係に置かれたときに、「作動可能
に結合され」る。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのためのDNAは、ポリペ
プチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現されるならば、そのポリペプ
チドに対するDNAに作動可能に結合され;プロモーターー又はエンハンサーー
は、配列の転写に影響を及ぼすならば、コーディング配列に作動可能に結合され
;或いはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように定置されるならば、コー
ディング配列に作動可能に結合される。一般に、「作動可能に結合された」は、
結合されるDNA配列が隣接し、分泌リーダーの場合は、隣接し、かつ読み取り
の位相にあることを意味する。しかし、エンハンサーーは、隣接する必要はない
。結合は、好都合な制限部位での結合を伴う。そのような部位が存在しないなら
ば、慣用の実施に従って、合成オリゴヌクレオチドのアダプター又はリンカーを
用いる。
【0053】 「外因性の」要素は、本明細書では、細胞に対して外来的であるか、又は細胞
に対して相同であるが、宿主細胞の核酸内の、該要素が通常は見出されない位置
にある核酸配列を意味すると定義される。
【0054】 本明細書に用いられる限りで、表現「細胞」、「細胞系」及び「細胞培養(体
)」は、互換的に用いられ、そのような指定はすべて、子孫を包含する。したが
って、単語「形質転換体」及び「形質転換された細胞」は、初代の対象細胞、及
び継代の数に関りなく、それから派生した培養体を包含する。また、故意又は偶
然の突然変異により、すべての子孫は、DNAの内容が厳密に同一でなくともよ
いと理解される。初めに形質転換された細胞でスクリーニングされたのと同じ機
能又は生物学的活性を有する、突然変異種の子孫は包含される。それは、明確な
指定が意図される文脈から明らかであると思われる。
【0055】 「プラスミド」は、大文字及び/又は数字が先行及び/又は後続する、小文字
の「p」によって指定される。本明細書中の出発プラスミドは、市販であるか、
無制限の形で公然と入手可能であるか、又はそのような入手できるプラスミドか
ら、刊行された手順に従って構築することができる。加えて、他の 等価のプラスミドが当技術に公知であり、当業者には明白であると思われる。
【0056】 DNAの「制限酵素消化」は、DNAの一定の位置でのみ作用するにすぎない
酵素による、DNAの触媒性切断を意味する。そのような酵素は、制限エンドヌ
クレアーゼと呼ばれ、それぞれがそれに特異的である部位は、制限部位と呼ばれ
る。本明細書で用いられる様々な制限酵素は、市販であり、それらの反応条件、
補助因子、その他の要件は、酵素供給者が確立したとおりに用いられる。制限酵
素は、一般的には、それぞれの制限酵素が初めて得られた微生物を表す、その他
の文字が後続する一つの大文字と、次いで個々の酵素を指定する数字とで構成さ
れる略号によって指定される。一般に、プラスミド又はDNAフラグメント約1
mgを、緩衝液約20ml中の酵素約1〜2単位とともに用いる。個々の制限酵素に
適した緩衝液及び基質は、製造業者によって指定される。通常、37℃で約1時
間のインキュベーションが用いられるが、供給者の指示に従って変動し得る。イ
ンキュベーション後、フェノール及びクロロホルムによる抽出によって、タンパ
ク質又はポリペプチドを除去し、消化された核酸を、エタノールによる沈澱によ
って、水性画分から回収する。制限酵素による消化の後に、細菌のアルカリホス
ファターゼ加水分解による、末端5′リン酸の加水分解を実施して、DNAフラ
グメントの二つの制限切断末端が、「環化」するか、又は制限部位でのもう一つ
のDNAフラグメントの挿入を阻止するような閉じられたループを形成するのを
防いでもよい。別途記述のない限り、プラスミドの消化は、5′末端の脱リン酸
化が後続しない。脱リン酸化のための手順及び試薬は、Sambrookら〔Molecular
Cloning: A Laboratory Manual New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ss, 1989〕のセクション1.56〜1.61に記載されたとおり、慣用的である
【0057】 DNAの与えられたフラグメントの、制限消化からの「回収」又は「単離」は
、電気泳動によるポリアクリルアミド又はアガロース上の消化物の分離、その移
動度と、既知分子量のマーカーDNAフラグメントのそれとの比較による、問題
のフラグメントの特定、望みのフラグメントを含有するゲル切片の取出し、及び
DNAからのゲルの分離を意味する。この手順は、一般的に公知である。例えば
Lawn et al., Nucleic Acids Res. 9:6103-6114 (1981)、及びGoeddel et al.,
Nucleic Acids Res. 8:4057 (1980)を参照されたい。
【0058】 「ノーザン分析」は、オリゴヌクレオチド、DNAフラグメント、cDNA若
しくはそのフラグメント、又はRNAフラグメントのような既知のプローブとハ
イブリダイズするRNA配列を特定するのに用いられる方法である。32Pのよう
な放射性同位元素でか、ビオチン化によってか、又は酵素でプローブを標識化す
る。分析しようとするRNAは、通常、Sambrookら〔前掲〕のセクション7.3
9〜7.52に記載されたそれのような、当業者に周知の標準的手法を用いて、
アガロース又はポリアクリルアミドゲル上で電気泳動により分離し、ニトロセル
ロース、ナイロンその他の適切な膜に移転し、プローブとハイブリダイズさせる
【0059】 「ライゲーション」は、二つの核酸フラグメント間にホスホジエステル結合を
形成する工程を意味する。DNAフラグメントを一緒にライゲーションするには
、DNAフラグメントの末端が、互いに適合性でなければならない。ある場合に
は、末端は、エンドヌクレアーゼ消化後に直ちに適合性となる。しかし、初めに
、エンドヌクレアーゼ消化後に一般的に形成される、食違いのある末端を、平滑
末端に変換して、結合に適合性にさせるのが必要なことがある。末端を平滑化す
るには、DNAを、4種類のデオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下、適切
な緩衝液中で、15℃で少なくとも15分間、約10単位のDNAポリメラーゼ
Iのクレノウフラグメント、又はT4DNAポリメラーゼで処理する。次いで、
フェノール−クロロホルム抽出及びエタノール沈澱によって、DNAを精製する
。一緒にライゲーションしようとするDNAフラグメントは、ほぼ等M量で溶液 に入れる。溶液は、ATP、リガーゼ緩衝液、及びDNA0.5mgあたり約10
単位でT4DNAリガーゼのようなリガーゼも、含有する。DNAをベクター内
にライゲーションしようとするならば、初めに、ベクターを、適切な制限エンド
ヌクレアーゼによる消化によって線状化する。次いで、線状化したフラグメント
を、細菌アルカリホスファターゼ、又は子ウシ腸ホスファターゼで処理して、ラ
イゲーション工程中の自己ライゲーションを防ぐ。
【0060】 細胞からのDNAの「調製」は、プラスミドDNAを宿主細胞の培養体から単
離することを意味する。DNA調製に一般的に用いられる方法は、Sambrookら〔
前掲〕のセクション1.25〜1.33に記載された、大規模及び小規模プラス
ミド調製である。DNAを調製した後、Sambrookら〔前掲〕のセクション1.4
0に記載されたそれのような、当技術に周知の方法によって、精製することがで
きる。
【0061】 「オリゴヌクレオチド」は、1988年5月4日に刊行されたヨーロッパ特許
第266,032号公報に記載されたような固相手法を用いるか、又はFrochler
et al., Nucl. Acids Res. 14:5399-5407 (1986)が記載したとおりの、デオキ シヌクレオシドH−ホスホン酸という中間体を介する(ホスホトリエステル、亜
リン酸塩又はアミドリン酸塩化学のような)公知の方法によって化学的に合成さ
れる、短鎖長、一本鎖又は二本鎖のポリデオキシヌクレオチドである。次いで、
ポリアクリルアミドゲル上で精製する。
【0062】 「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」という手法は、本明細書に用いられ
る限りでは、一般に、核酸、RNA及び/又はDNAの特定の一片の微小量を、
1987年7月28日に発行された米国特許第4,683,195号明細書に記
載されたとおりに増幅する手順を意味する。一般に、問題の領域、又はそれを越
える領域の末端からの配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーが設計できる
よう、利用できるようにする必要があり;これらのプライマーは、増幅しようと
するテンプレートの対面する鎖と配列が同一であるか、又はそれに類似すること
になる。二つのプライマーの5′末端ヌクレオチドは、増幅された材料の末端に
符合し得る。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNA、及び全細胞性RN
Aから転写されたcDNA、バクテリオファージ又はプラスミド等々を増幅する
のに用いることができる。一般的には、Mullis et al., Cold Spring Harbor Sy
mp. Quant, Biol., 51:263 (1987);Erlich,, ed., PCR Technology (Stockton
Press, NY, 1969) を参照されたい。本明細書に用いられる限りで、PCRは、 公知の核酸(DNA又はRNA)をプライマーとして用いることを含む、核酸の
試験サンプルを増幅する、核酸ポリメラーゼ反応法の一つであるが、唯一ではな
い例であると考えられ;核酸ポリメラーゼを用いて、核酸の特定の一片を増幅若
しくは生成するか、又は特定の核酸と相補的である、核酸の特定の一片を増幅若
しくは生成する。
【0063】 HRGリガンドの存在又は生物活性を検出するための「HRGチロシン自己リ
ン酸化アッセイ」は、HER2及びHER3受容体の精製を評価するのに用いる
ことができる。このアッセイは、EGFと、そのEGF受容体自己リン酸化の刺
激との類推において、受容体に特異的なリガンドは、受容体の自己リン酸化を刺
激するであろうという仮定に基づく。Sadich et al., Anal. Biochem. 235:207-
214 (1996)を参照されたい。高レベルのp185HER2受容体を有するが、無視で
きるレベルのヒトEGF受容体を有するMDA−MB−453細胞又はMCF7
細胞を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Co
llection, Rockville, Md)から得て(ATCC第HTB-131号)、10%の子ウシ
血清を含むDMEM/HamsF12(1:1)培地での組織培養で維持した。
アッセイ用に、細胞を、トリプシン処理し、24穴のディッシュ(Costar)に1
50,000細胞/ウェルで播種した。血清含有培地で終夜インキュベーション
した後、細胞を無血清培地に2〜18時間置いてから、アッセイに付した。10
0μlのアリコートの試験サンプルを、各ウェルに加えた。細胞を、37℃で5
〜30分間(典型的には30分間)インキュベーションし、培地を除去した。各
ウェル内の細胞をSDSゲル変性用緩衝液(SEPROSOL, Enpotech, Inc.)100
μlで処理し、プレートを100℃で5分間加熱して、細胞を溶解し、タンパク 質を変性させた。各ウェルからのアリコートを、5〜20%の勾配のSDSゲル
(NOVEX, Encinitas, CA)上で、製造業者の指示に従って、電気泳動した。色素
先端がゲルの下部に達した後、電気泳動を終結し、PVDF膜(PROBLOTT, ABI )をゲルに乗せ、タンパク質を、ブロッティングチャンバー(BioRad)内で、2
00mAで30〜60分間ゲルから膜へとトランスファーした。ブロッティングの
後、膜、0.1%トゥイーン20の洗剤緩衝液を5%BSAとともに含有するト
リス緩衝生理食塩水とともに2〜18時間インキュベーションして、非特異的結
合を遮断し、次いで、マウス抗ホスホチロシン抗体(Upstate Biological Inc.,
N.Y.)で処理した。その後、膜のブロットを、アルカリ性ホスファターゼに結 合したヤギ抗マウス抗体で処理した。Promega社のPROTOBLOTシステムを用いて、
ゲルを現象した。膜を染色した後、各サンプルレーンのp185HER2に相当する
バンドの密度を、マッキントッシュのコンピュータに取り付けたHewlett Packar
d社のSCANJET Plusスキャナーで定量した。MDA−MB−453細胞の1細胞 あたりの受容体の数は、これらの実験条件下では、p185HER2受容体タンパク
質が、標識化されている主要のタンパク質であるようなそれである。
【0064】 「タンパク質ミクロシークエンシング」は、下記の手順に基づいて遂行した。
最終HPLC工程からのタンパク質を、120AのPTHアミノ酸分析装置を装
備したモデル470AというApplied Biosystems社の気相シークエンサーによる
、自動化されたエドマン分解によって直接にか、又は様々な化学物質もしくは酵
素による消化後にかのいずれかでシークエンスした。PTHアミノ酸は、CHROMP
ERFECTデータシステム(Justice Innovations, Palo Alto, CA)を用いて組み込
んだ。配列の解釈は、記載のとおり〔Henzel et al., J. Chromatography 404:4
1-52 (1987)〕、VAX11/785というDigital Equipment Corporation社の
コンピュータで実施した。ある場合には、HPLC画分のアリコートを、5〜2
0%のSDSポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させ、PDVF膜(PROBLOTT
, ABI, Foster City, CA)にエレクトロトランスファーし、クーマシーブリリア
ントブルーで染色した〔Matsudaira, P., J. Biol. Chem. 262:10035-10038〕。
特定のタンパク質を、ブロットから切り出して、N末端シークエンスに付した。
内部タンパク質シークエンスするため、HPLC画分を減圧下で乾燥し(SPEEDV
AC)、適切な緩衝液で再懸濁し、臭化シアン、リシン特異酵素のLys-C(Wako Ch
emicals, Richmond, VA)又はAsp-N(Boehringer Mannheim, Indianapolis, Ind
)で消化した。消化の後、得られたペプチドを、混合物としてシークエンスした
か、又は0.1%TFA中のプロパノール勾配で展開するC4カラムでのHPL
Cによって分離してから、上記のとおりシークエンスした。
【0065】 「抗体(Ab)」及び「免疫グロブリン(Ig)」は、同じ構造的特徴を有す
る糖タンパク質である。抗体は、特定の抗原に対して結合特異性を示すが、免疫
グロブリンは、抗体と、抗原特異性を欠くその他の抗体様分子との双方を包含す
る。後者の種類のポリペプチドは、例えば、リンパ系によって低レベルで、また
ミエローマによって高レベルで生産される。
【0066】 抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれ、それぞれ単一の抗
原結合部位を有する、二つの同一の抗原結合性フラグメントと、その名称が、容
易に結晶化できることを反映する、残余の「Fc」フラグメントとを生じる。ペ
プシン処理は、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原と架橋結合できる、
F(ab′)2フラグメントを生じる。
【0067】 「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を有する、最小限の抗体フラグ
メントである。この領域は、緊密に非共有結合で会合した、一つのH鎖と、一つ
のL鎖可変ドメインとの二量体からなる。各可変ドメインの三つの超可変領域が
作用し合って、VH−VL二量体の表面に抗原結合部位を画定するのは、この立体
配置においてである。集合的には、6個の超可変領域が、抗原結合特異性を抗体
に賦与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3個の超可変領
域のみを含むにすぎない、Fvの半分)でさえ、結合部位全体より低い親和力で ではあるが、抗原を認識し、かつそれに結合できる能力を有する。
【0068】 Fabフラグメントは、L鎖の定常ドメイン、及びH鎖の第一定常ドメイン(
CH1)も有する。Fab′フラグメントは、H鎖CH1ドメインのカルボキシ
ル末端に、抗体のヒンジ領域からの一つ又はそれ以上のシステインを包含する、
いくつかの残基の付加があることが、Fabフラグメントと異なる。Fab′−
SHは、本明細書では、定常ドメインのシステイン残基が遊離のチオール基を有
する、Fab′の呼称である。F(ab′)2抗体フラグメントは、本来は、1 対のFab′フラグメントとして生産され、それらの間のヒンジとなるシステイ
ンを有する。抗体フラグメントのその他の化学的カップリングも公知である。
【0069】 いかなる脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「L鎖」も、定常ドメイ
ンのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、二つ
の明確に区別される種類のうち一方に割り振ることができる。
【0070】 H鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラ
スに割り振ることができる。免疫グロブリンの5大クラス:IgA、IgD、I
gE、IgG及びIgMが存在し、そのいくつかは、サブクラス(イソタイプ)
、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に更に
区分し得る。異なるクラスの免疫グロブリンに対応するH鎖定常ドメインは、そ
れぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサ
ブユニット構造および三次元立体配置は、周知である。
【0071】 本明細書での用語「抗体」は、より広い意味で用いられ、具体的には、モノク
ローナル抗体(全長モノクローナル抗体を包含)、ポリクローナル抗体、多重特
異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び望みの生物学的活性を示す限りでの抗
体フラグメントを網羅する。
【0072】 「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般的には、その抗原結合又は可
変ドメインを含む。抗体フラグメントの例は、Fab、Fab′、F(ab′) 2 及びFvフラグメント;ダイアボディー;線状抗体;単鎖抗体分子;及び抗体 フラグメントから形成された多重特異性抗体を包含する。
【0073】 本明細書に用いられる限りでの、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均
質である抗体の集団から得られた抗体を意味する。すなわち、該集団を構成する
個々の抗体は、僅かな量で存在し得る、天然に生じ得る突然変異以外は同一であ
る。モノクローナル抗体は、高度に特異的であって、単一の抗原性部位に対して
方向付けられる。更に、代表的には異なる決定基(エピトープ)に対して方向付
けられた異なる抗体を包含する、慣用の(ポリクローナル)抗体製剤とは対照的
に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原の単一の決定基に対して方向付けら
れる。修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるよ
うな、抗体の性質を示し、いかなる特定の方法による抗体の生産を要求するとも
解してはならない。例えば、本発明に従って用いようとするモノクローナル抗体
は、Kohlerら〔Nature 256:495 (1975)〕が最初に記載したハイブリドーマ法に よって製造してよいか、又は組換えDNA法によって製造してよい〔米国特許第4,8
16,567号明細書を参照されたい〕。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacks
on et al., Nature 352:624-628 (1991)及びMarks et al., J. Mol. Biol. 222:
581-597 (1991)に記載された手法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離
してもよい。
【0074】 モノクローナル抗体は、本明細書では、H鎖及び/又はL鎖の一部が、特定の
種に由来するか、又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応
する配列と同一若しくは相同であるが、該鎖の残余は、もう一つの種に由来する
抗体、又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体はもとより、望み
の生物学的活性をそれが示す限り、そのような抗体のフラグメントの対応する配
列と同一若しくは相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)を特定して包
含する〔米国特許第4,816,567号明細書;及びMorrison et al., Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984)〕。
【0075】 非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリ
ンに由来する最小限の配列を有する、キメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト
化抗体は、受容者の超可変領域が、マウス、ラット、ウサギ、又はヒトでない霊
長類のような種(供与者抗体)からの、望みの特異性、親和力及び容量を有する
超領域で置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(受容者抗体)である。ある場合
には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒ
ト残基で置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、受容者抗体又は供与者抗体には
見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体の性能を更に洗練する
ためになされる。一般に、ヒト化抗体は、超可変領域のすべて、又は実質的にす
べてが、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応し、FRのすべて、又は実質的にす
べてが、ヒト免疫グロブリン配列のそれである、少なくとも一つ、代表的には二
つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになる。ヒト化抗体は、場合によ
り、免疫グロブリン定常領域(FC)の少なくとも1部分、代表的にはヒト免疫
グロブリンのそれを含むことになる。それ以上の詳細については、Jounes et al
., Nature 321:522-525 (1986);Reichmann et al., Nature 332:323-329 (1988
);及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照されたい。
【0076】 「単鎖Fv」又は「sFv」抗体フラグメントは、抗体のVH及びVLドメイン
を含むが、ここで、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般
に、Fvポリペプチドは、sFvが、抗原結合のために望みの構造を形成するの
を可能にする、ポリペプチドリンカーをVH及びVLドメイン間に含む。sFvの
総説については、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Ros
enburg & Moore eds., Springer-Verlag, New York, pp.269-315 (1994)中のPlu
ckthunを参照されたい。
【0077】 用語「ダイアボディー」は、二つの抗原結合部位を有する小さい抗体フラグメ
ントを意味し、該フラグメントは、L鎖可変ドメイン(VL)に結合したH鎖可 変ドメイン(VH)を、同じポリペプチド鎖(VH−VL)中に含む。同じ鎖の二 つのドメイン間の対合を可能にするには短かすぎるリンカーを用いることによっ
て、ドメインは、もう一つの鎖の相補的ドメインと強いて対合させられ、二つの
抗原結合部位を生じる。ダイアボディーは、例えばヨーロッパ特許第404,0
97号公報;国際公開特許第93/11161号公報;及びHollinger et al.,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)に、より充分に記載されてい
る。
【0078】 本出願の全体を通して用いられるときの表現「線状抗体」は、Zapata et al.,
Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995)に記載された抗体を意味する。略述する
と、これらの抗体は、1対の抗原結合領域を形成する、1対の縦列Fdセグメン
ト(VH−CH1−VH−CH1)を含む。線状抗体は、二重特異性又は単一特異性
であることができる。
【0079】 II. HRG配列の使用と調製 H.変異体を含むHRG配列の調製 HRG配列を調製する上で利用されるべき系は、選択された特定のHRG配列
によって左右されることになる。この配列が充分に小さい場合は、HRGは in
vitro ポリペプチド合成方法によって調製されうる。しかしながら最も一般的に
は、HRGは、以下で記述する宿主ベクター系を用いた組換え型細胞培養の中で
調製されることになる。適切なHRGとしては、生物学的に活性で抗原的に活性
なあらゆるHRGが含まれる。
【0080】 一般に、哺乳動物の宿主細胞が利用され、かかる宿主は、正常な要領でHRG
プレプロ配列を処理するための翻訳後系を含んでいてもいなくてもよい。宿主細
胞がかかる系を含有している場合には、培養からHRG−GFDといったような
天然サブドメインフラグメントを回収することが可能となる。含有しない場合に
は、必要とされる酵素で宿主を形質転換するか又は in vitro 方法でそれらを供
給することによって、適切な処理を達成することができる。しかしながら、HR
G−GFDといったようなHRG配列のフラグメントを産生することしか望まな
い場合には、選択されたHRGについての完全なプレプロ又は構造遺伝子で細胞
を形質転換する必要はない。例えば、HRG−GFDをコードするDNAの5′
末端に開始コドンが連結され、このDNAは、宿主細胞を形質転換するために使
用され、産物は直接Met N末端形態として発現される(所望する場合、外来性 Metをin vitroで又は内在性N末端デメチオニラーゼにより除去することができ
る)。代替的には、HRG−GFDは、宿主細胞により認識されたシグナル配列
との融合として発現され、これは、以下でさらに記述するように成熟HRG−G
FDを処理し分泌する。未変性HRG−GFD配列のアミノ酸配列変異体も同じ
要領で産生される。
【0081】 HRG−GFD配列の第1のN末端残基と第1のN末端成熟残基の間にある、
HRG−NTDと呼ばれるHRG配列は、少なくとも部分的に、従来通りでない
シグナル配列として又はユニークな生物活性をもつHRG−GFDのための正常
に循環する担体/前駆物質として機能することができる。HRG−NTDは、全
長分子と同じ要領で産生されるが、停止コドンがHRG−NTDのC末端にある
ようなDNAの発現から産生される。さらに、HRG変異体は、GFD及びNT
Dドメインの両方共がその適正な方向にあるものの、 in vivo でのNTD−G FD接合部位のタンパク質分解分割を阻害又は防止するGFD−NTD分割部位
(配列VKC内にある)におけるアミノ配の挿入、欠失又は置換を含むタンパク
質をコードするDNAから発現され、ここでGFD−コーディング配列の3′末
端に停止コドンが位置づけされている。このグループの変異体(HRG−NTD
XGFDと呼ばれる)の例においては、(1)NTD−GFDジョイニング配列
VKCの中に見られるリシン残基は、欠失されているか又は(好ましくは)ヒス
チジル、アラニル、トレオニル又はセリルといったようなアルギニル以外のもう
1つの残基により置換されており、(2)停止コドンがシステイニル又はトレオ
ニル(HRG−αについて)又はグルタミニル(HRG−βについて)の代りに
RCT又はRCQの配列に導入される。
【0082】 p185HER2に対する結合親和力をもつ好ましいHRG−αリガンドには、図
1A〜Dのアミノ酸226〜265が含まれている。このHRG−αリガンドに
はさらに、アミノ酸226に先行する付加的な1〜20個のアミノ酸とアミノ酸
265に続く1〜20個のアミノ酸が含むことができる。p185HER2に対する
結合親和力をもつ好ましいHRG−βリガンドには、図2A〜Eのアミノ酸22
6〜265が含まれる。このHRG−βリガンドは、アミノ酸226に先行する
付加的な1〜20個のアミノ酸とアミノ酸265に続く1〜20個のアミノ酸を
含むことができる。
【0083】 以上で指摘したように、本発明に従って調製されるべきその他のHRG配列は
、GFDのものである。これらは in vitro で合成されるか又は、組換え型細胞
培養の中で産生される。これらは、酵母又は E. coliの中で、上述のとおりHR
G−非相同シグナルの制御下での分泌によって、最も廉価に産生されるが、tP
A、UK又は分泌されたウイルスタンパク質のもののような哺乳動物のタンパク
質シグナルを使用する哺乳動物細胞内での調製も同様に考慮されている。GFD
は、未変性HRGの配列であってもよいし或いは、以下で記述するようにその変
異体であってもよい。GFD配列には、EGFファミリーのメンバーからの単数
又は複数の残基がGFD配列内又はその上に置換されているような配列が含まれ
る。
【0084】 付加的なHRGは、GFD及びGFDのC末端と膜貫通ドメインのN末端の間
の配列(後者はC末端分割ドメイン又はCTCと呼ばれる)を含有するHRGで
ある。この変異体(HRG−GFD−CTC)においては、DNA開始コドンは
、HRG非相同シグナル配列の5′末端に存在するか又はGFDコーディング領
域の5′末端に隣接して存在し、最初の約1〜3個の細胞外ドメイン(ECD)
残基又は最初の約1〜2個の膜貫通領域残基のうちの1つに代って停止コドンが
見い出される。さらに、一部のHRG−GFD−CTC変異体においては、コド
ンは、置換、挿入又は欠失によりGFD−CTCタンパク質分解部位の中で修飾
される。GFD−CTCタンパク質分解部位は、GFDC末端残基及びこの残基
からN末端の約5個の残基及びC末端の5残基を含有するドメインである。Me
t−227末端及びVal−229末端HRG−α−GFDは生物学的に活性で
あることが知られている。HRG−α−GFDに対するC末端は、Met−22
7、Lys−228、Val−229、Gln−230、Asn−231又はG
ln−232であってよく、HRG−β−GFDについてはMet−226、A
la−227、Ser−228、Phe−229、Trp−230又はLys2
31/Ser231であってよい。未変性C末端は、C末端シークエンスによっ
て容易に決定されるが、GFD配列が所望の活性を有するかぎり、HRG−GF
Dが未変性端末を有することは重要なことではない。HRG−GFD−CTC変
異体のいくつかの実施形態においては、CTC内のアミノ酸変更は、 in vitro
でタンパク質分解に堪えHRG−GFDの生成の原因となるプロテアーゼを阻害
するその能力についてスクリーニングされる。
【0085】 HRG−ECD変異体は、HRG−GFD−CTC変異体と同じ位置に停止コ
ドンを与えることによって作られる。HRG−ECDは、例えばCTC−タンパ
ク質分解部位の修飾を含有するGFD−CTC変異体といったそのサブフラグメ
ントに関連して上述した変異体のうちのいずれか1つ以上のものを含むことがで
きる。
【0086】 より長いHRGポリペプチドを調製することが望まれしかも与えられたHRG
の5′又は3′末端が本書で記述されていない場合、欠如しているドメインがよ
り完全なHRG核酸の相同領域により供給されているような核酸を調製すること
が必要となるかもしれない。代替的には、欠如しているドメインは、図に開示さ
れているDNA又はそのフラグメントを用いてライブラリを探査することによっ
て得ることができる。
【0087】 A.ヘレグリンをコードするDNAの分離 HRGをコードするDNAは、HRGmRNAを有しそれを検出可能なレベル
で発現すると考えられている組織から調製されたあらゆるcDNAライブラリか
ら得ることができる。かくして、HRG−α遺伝子はゲノムライブラリーから得
ることができる。その他のHRG例えば、HRG−β1、HRG−β2、又はH
RG−β3のコーディング遺伝子分離のために類似の手順を使用することもでき
る。
【0088】 問題の遺伝子またはそれによってコードされるタンパク質を同定するように設
計されたプローブでライブラリをスクリーニングする。cDNA発現ライブラリ
については、適切なプローブとしては、HRG−αを認識しこれに特異的に結合
するモノクローナル又はポリクローナル抗体、同じ又は異なる種からのHRG−
α cDNAの既知の又は疑いのある部分をコードする約20〜80塩基の長さ のオリゴヌクレオチド;及び又は、同じ又は類似の遺伝子をコードする相補的又
は相同なcDNA又はそのフラグメントが内含される。ゲノムDNAライブラリ
をスクリーニングするための適切なプローブとしては、オリゴヌクレオチド;同
じ又は類似の遺伝子をコードするcDNA又はそのフラグメント;及び/又は相
同なゲノムDNA又はそのフラグメントが含まれる。選択されたプローブでのc
DNA又はゲノムライブラリーのスクリーニングは、Sambrook et al.,前出の第
10〜12章で記述しているような標準的手順を用いて行なうことができる。
【0089】 HRG−αをコードする遺伝子を分離する代替的手段は、Sambrook et al.(前
出) の第14節で記述されているようなポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使
用することである。この方法には、HRG−αにハイブリッド形成することにな
るオリゴヌクレオチドプローブの使用が必要とされる。オリゴヌクレオチドの選
択のための戦略が以下に記述されている。
【0090】 問題の遺伝子を得るためのもう1つの代替的方法は、Engels et al. の中で記
述されている方法の1 つを用いてそれを化学的に合成することにある。(Agnew,
Chem. Int. Ed. Engl.,28:716−734,1989)。これらの方法とし
ては、リン酸トリエステル法、亜リン酸法、亜リン酸アミダイト法、及びH−ホ
スホネート法、PCR及びその他のオートプライマー法及び固体支持体上でのオ
リゴヌクレオチド合成が含まれる。これらの方法は、遺伝子の核酸配列全体がわ
かっている場合、又はコーディングストランドに対し相補的な核酸の配列が利用
可能である場合に使用でき、又代替的には、標的アミノ酸がわかっている場合に
は、各々のアミノ酸残基について既知の及び好ましいコーディング残基を使用し
て潜在的核酸配列を推測することができる。
【0091】 本発明を実践する好ましい方法は、さまざまな組織、好ましくはヒトの***、
結腸、唾液腺、胎盤、胎児、脳及びガン腫細胞系統からcDNAライブラリをス
クリーニングするため入念に選択されたオリゴヌクレオチド配列を使用すること
にある。ヘレグリン様のリガンドをコードするDNAのその他の生物供給源とし
ては、その他の哺乳動物及び鳥類がある。好ましい哺乳動物としては、ウシ、ヒ
ツジ、ウマ、マウス及びげっ歯類といったような目の構メンバーがある。
【0092】 プローブとしては選択されたオリゴヌクレオチドは、偽陽性が最小限におさえ
られるよう充分な長さと充分な明確さをもっていなくてはならない。実際のヌク
レオチド配列は例えば、HRG−αの保存された又は高度相同性をもつヌクレオ
チド配列又は領域に基づくものでありうる。オリゴヌクレオチドは、単数又は複
数の位置で縮重していてよい。縮重したオリゴヌクレオチドの使用は、その種に
おける好ましいコドン利用が知られていない種からライブラリがスクリーニング
される場合に特に重要でありうる。オリゴヌクレオチドは、スクリーニングされ
つつあるライブラリ内でのDNAに対するハイブリダイゼーションの時点でそれ
を検出できるような形で標識されなくてはならない。好ましい標識方法は、当該
技術分野において周知のとおり、オリゴヌクレオチドを放射能標識するべくポリ
ヌクレオチドキナーゼと共に32Pで標識されたATPを使用することである。し
かしながら、オリゴヌクレオチドの標識にはビオチン化又は酵素標識を含む(た
だしこれに限られるわけではない)、にはその他の方法を使用することも可能で
ある。
【0093】 特に有利なのは、全長ポリペプチドをコードするHRG−α核酸である。いく
つかの好ましい実施形態においては、核酸配列には、未変性HRG−αシグナル
配列が内含されている。全てのタンパク質コーディング配列をもつ核酸は、選択
されたcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすること、又必要な場
合には前駆物質を検出するため前出のSambrook et al. の7.79節で記述され ているような従来のプライマー拡張手順を用いかつcDNAに逆転写されていな
い可能性のあるmRNAの中間体を処理することによって得られる。
【0094】 図1A〜1DのHRG−αをコードするDNAは、以上で記述されている方法
を利用するハイブリダイゼーションを介してその他の動物種から類似のリガンド
をコードするDNAを分離するために使用できる。好ましい動物は哺乳動物、特
にウシ、ヒツジ、ウマ、ネコ、イヌ及びげっ歯類、そしてより特定的にはラット
、マウス及びウサギである。
【0095】 B.ヘレグリンのアミノ酸配列変異体 HRGのアミノ酸配列変異体は、所望するHRGポリペプチドの in vitro 合
成によってか又はHRG DNA内への適切なヌクレオチド変異の導入によって 調製される。かかる変異体は、例えば、ヒトHRG配列について示されたアミノ
酸配列内の残基からの欠失、又はその挿入又は置換を内含する。最終構築物が所
望の特性を有することを条件として、最終構築物にたどりつくよう、欠失、挿入
及び置換のあらゆる組合せを行なうことができる。本発明の範囲から除外されて
いるのは、先行技術に比べて新規性がなく明瞭でないHRG変異体又はポリペプ
チド配列である。アミノ酸の変更は同様に、グリコシル化部位の数又は位置の変
更、膜固着特性の変化、未変性HRGのリーダ配列の挿入、欠失又はその他の形
での影響によるHRGの細胞内位置の変化、又はタンパク質分解分割に対するそ
の感受性の修正といったように、HRG−αの翻訳後のプロセスを変えることも
できる。
【0096】 HRG配列は、いくらかのHRGフラグメントを作り出すようにタンパク質分
解により処理されうる。HRG−αのHRG−GFD配列は全てHRG−αシス
テイン226とシステイン265との間のアミノ酸配列を含む。HRG−αフラ
グメントのアミノ末端は、アラニン1とシステイン226との間の、好ましくは
アルギニン、リシン、バリン又はメチオニンに隣接した、そして最も好ましくは
メチオニン45とセリン46との間での任意のペプチド結合の切断の結果として
得ることができる。HRG−αフラグメントのカルボキシ末端は、システイン2
65の間の、好ましくはアルギニン、リシン、バリン又はメチオニンに隣接した
、そして最も好ましくはリシン272とバリン273との間、リシン278とア
ラニン279との間、又はリシン285とアルギニン286との間の任意のペプ
チド結合の切断の結果として得ることができる。かかるタンパク質分解処理の結
果得られたHRG−αリガントは、好ましいリガンドである。
【0097】 HRG−β−GFDは、HRG−α−GFDについて上述したものと相似であ
る。各々のHRG−β−GFDは、図2A〜Eのシステイン212からシステイ
ン251までのポリペプチドセグメントを含有する。HRG−β1フラグメント
のアミノ末端は、アラニン1とシステイン212との間の、好ましくは、アルギ
ニン、リシン、バリン又はメチオニンに隣接した、そして最も好ましくはメチオ
ニン31とセリン32との間の任意のペプチド結合の切断の結果として得ること
ができる。HRG−β1フラグメントのカルボキシ末端は、図2A〜2Eのシス
テイン251の間の、好ましくはアルギニン、リシン、バリン又はメチオニンに
隣接した、そして好ましはバリン255とメチオニン256との間、リシン26
1とヒスチジン262との間、リシン276とアラニン277との間又はリシン
301とトリオニン302との間の任意のペプチド結合の切断の結果として得る
ことができる。このようなタンパク質の分解処理の結果として得られるHRG−
β1リガンドは、好ましいリガンドの中に入る。同様にして、図3A〜3Eに基
づくHRG−β2の及び図4A〜4Cに基づくHRG−β3の好ましいフラグメ
ントリガンドを産生するための処理は、好ましくはアルギニン、リシン、バリン
又はメチオニンに隣接した、図3A〜3E及び4A〜4CのHRG配列の分割に
よって達成することができる。
【0098】 HRGのアミノ酸配列変異体を設計するにあたっては、突然変異部位の場所及
び突然変異の性質は、変更すべきHRG特性によって左右されることになる。突
然変異のための部位は、個別に又は順次、例えば(1)まずは保存的アミノ酸選
択そして次に達成された結果に応じてのより極端な選択による置換、(2)標的
残基の欠失又は(3)位置された部位に隣接するその他のレセプターリガンドの
残基の挿入、によって修正することができる。
【0099】 突然変異誘発のための好ましい部位であるHRGポリペプチドのいくつかの残
基又は領域の同定のために有用な方法は、Cunningham and Wells(Science 244:
1081-1085, 1989)によって記述されているように「アラニン走査型突然変異誘
発」と呼ばれる。ここで、標的残基のうちの1つの残基又はそのグループが同定
され(例えば arg, asp, his, lys 及び glu といったような荷電した残基)、 細胞内又は外の周辺水性環境とアミノ酸の相互作用に影響を及ぼすべく中性の又
は陰に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)によって
置換される。置換に対する機能的感応性を示すこれらのドメインは次に、置換部
位における又は置換部位に対するさらなる又はその他の変異体の導入によって改
良される。かくして、アミノ酸配列の変更を導入するための部位は予め定められ
るものの、突然変異自体の性質は、予め定められる必要はない。例えば、一定の
与えられた部位における突然変異の遂行を最適化するために、標的コドン又は領
域において ala 走査又は無作為突然変異誘発を行なうことができ、発現された HRG変異体は、所望する活性の最適な組合わせのためにスクリーニングされる
【0100】 アミノ酸配列変異体の構築には2つの主要な変数が存在する:すなわち突然変
異部位の位置と突然変異の種類である。これらはHRG配列からの変異体であり
、天然に見られない変異体又は対立遺伝子のいずれかに到達するべくDNAを突
然変異させることによって作られた予め定められた突然変異体形態又は自然に存
在する対立遺伝子(HRG DNAの操作を必要としないと思われるもの)を表 わすことがある。一般に、選択される突然変異の場所及び性質は、改変すべきH
RG特性によって左右されることになる。明らかに、例えば既知のレセプターリ
ガンドへとHRGを変換するような変更は、本発明の範囲内には含まれず、又、
先行技術に比べて新規性がなく明瞭でないその他のあらゆるHRG変異体又はポ
リペプチド配列も含まれない。
【0101】 アミノ酸配列の欠失は一般に、約1〜30残基、より好ましくは約1〜10残
基の範囲に及び;標準的には約1〜5残基が隣接している。HRGの活性を修正
するべくその他のEGFファミリーと低い相同性をもつ領域内に欠失を導入する
こともできる。その他のEGFファミリーの配列との実質的相同性をもつ部域内
のHRGからの欠失は、HRGの生物活性をより有意な形で修正する確率がさら
に高いものと思われる。連続する欠失の数は、例えばシステイン交叉結合、ベー
タプリーツシート又はアルファヘリックスといった影響を受けたドメインのHR
Gの三次構造を保存するように選択されることになる。
【0102】 アミノ酸配列の挿入には、長さが1〜100以上の残基を含むポリペプチドに
至るアミノ酸及び/又はカルボキシル末端融合、ならびに1以上のアミノ酸残基
の配列内挿入が含まれる。配列内挿入(すなわちHRG配列内の挿入)は一般に
、約1〜10個の残基、より好ましくは1〜5個、最も好ましくは1〜3個の残
基という範囲に及ぶことができる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を
伴うHRG(細菌の組換え型細胞培養内の直接的HRG発現の人為現象)、及び
組換え型宿主細胞からの成熟HRGの分泌を促進するためのHRGのN末端に対
する非相同N末端シグナル配列の融合、が含まれる。かかるシグナル配列は一般
に、意図された宿主細胞種から得られ、従ってこの種と相同となる。適切な配列
としては、E. coli についてのSTI1、tPA又は1pp、酵母についてのア
ルファ因子及び哺乳動物細胞についてのヘルペスgDといったウイルスシグナル
が含まれる。
【0103】 HRGのその他の挿入変異体には、E. coli trp 遺伝子座によってコードされ
る酵素又はベータラクタマーゼといったような細菌性ポリペプチド、又は酵母タ
ンパク質、ウシ血清アルブミン及び走化性ポリペプチドといった免疫原性ポリペ
プチドのHRGのN末端又はC末端に対する融合が内含される。1989年4月
6日に公示されたWO89/02922号中に記述されているように、免疫グロ
ブリン定常領域(又はその他の免疫グロブリン領域)といった長い半減期をもつ
タンパク質、アルブミン又はフェリチンとHRG−ECDのC末端融合が考慮さ
れている。
【0104】 もう1つの変異体グループはアミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、
HRG分子内の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その代りに異なる残
基が挿入されている。置換による突然変異誘発にとって最も有利な部位としては
、HRGの活性部位として同定された部位、及びさまざまな種からのHRGリガ
ンド中に発見されたアミノ酸が、側鎖のかさ、電荷及び/又は疎水性に関して実
質的に異なっているような部位が含まれる。増殖因子として生物活性をもつHR
G−GFDの適当なサブドメインは、特に、EGF活性をもつことがわかってい
るEGFサブ配列に対する相似に基づいて約グリシン218〜バリン226(H
RG−α)及びグリシン218〜リシン228/セリン228(HRG−β)の
配列内にあるC末端セグメントである。
【0105】 その他の有利な部位は、さまざまな種から得られたHRG様のリガンドの特定
の残基が同一である部位である。これらの位置は、HRGの生物活性にとって重
要なものでありうる。これらの部位、特に少なくとも3つの同一に保存されたそ
の他の部位の配列内に入る部位は、比較的保存的な形で置換される。このような
保存的置換は、「好ましい置換」という見出しの下で表1内に示されている。か
かる置換が生物活性の変化という結果をもたらす場合には、表1で置換例と称さ
れ、アミノ酸のクラスを参考にして以下でさらに記述されているようなより実質
的な変更が導入され、産物はスクリーニングされる。
【0106】
【表1】
【0107】 HRGの機能又は免疫学的同一性の実質的な改変は、(a)例えば、シート又
はらせんの高次構造としての置換の領域内のポリペプチドバックボーンの構造、
(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性又は(c)側鎖のかさを維持する
ことに対するその効果において著しく異なる置換を選択することによって達成さ
れる。自然に存在する残基は、共通の側鎖の物性に基づいてグループに分けられ
る:すなわち 1) 疎水性:ノルロイシン、met, ala, val, leu, ile ; 2) 中性親水性: cys, ser, thr; 3) 酸性: asp, glu ; 4) 塩基性:asn, gln, his, lys, arg ; 5) 鎖の方向に影響を及ぼす残基: gly, pro ;及び 6) 芳香族: trp, tyr, phe.
【0108】 非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つの構メンバーともう1つのもの
との変換を誘発する。かかる置換済み残基は、その他のレセプターリガンドと相
同であるHRGの領域内に、又より好ましくは分子の非相同領域内に導入され得
る。
【0109】 本発明の一実施形態においては、分子内に存在する単数又は複数のプロテアー
ゼ切断部位を不活性化することが望ましい。これらの部位は、コード化されたア
ミノ酸配列の検査により同定される。プロテアーゼ切断部位が同定された場合、
これらは、ターゲディングされた残基をもう1つの残基、好ましくはグルタミン
といった塩基性残基又はセリンといった親水性残基で置換することによって;又
は残基を欠失させることによって、;又は残基の直後にプロリル残基を挿入する
ことによって、タンパク質分解による切断に対し不活性なものにされる。
【0110】 もう1つの実施形態においては、シグナル配列の開始メチオニル残基以外のあ
らゆるメチオニル残基又は各々のこのようなメチオニル残基に対しN末端又はC
末端で約3個の残基以内にあるあらゆる残基は、もう1つの残基(好ましくは表
1に従う)により置換されるか又は欠失させられる。代替的には、かかる部位に
隣接して約1〜3個の残基が挿入される。
【0111】 HRGの適切な高次構造を維持することに関与していないあらゆるシステイン
残基も、分子の酸化安定性を改善させ異常な架橋を防ぐため、一般にはセリンで
置換され得る。
【0112】 置換、欠失若しくは挿入又はフラグメントとしての使用に特に適した部位には
、図1A〜1DのHRG−αのN末端から番号づけした形で、以下のものが含ま
れる: 1) 42〜43、64〜65、151〜152にあるセリン・グリシンジペ
プチドにおける潜在的なグリコサミノグリカン付加部位; 2) 位置164、170、208及び437、部位(NDS)164〜16
6、(NIT)170〜172、(NTS)208〜210及びNTS(609
〜611)における潜在的なアスパラギン連結されるグリコシル化; 3) 209−218におけるセリン及びトレオニンクラスター内での潜在的
O−グリコシル化。 4) 226、234、240、254、256及び265におけるシステイ
ン; 5) 287〜309における膜貫通ドメイン; 6) システイン226及び240によって線引きされたループ1; 7) システイン234及び254によって線引きされたループ2; 8) システイン256及び265によって線引きされたループ3;及び 9) 2〜3、8〜9、23〜24、33〜34、36〜37、45〜46、
48〜49、62〜63、66〜67、86〜87、110〜111、123〜
124、134〜135、142〜143、272〜273、278〜279及
び285〜286における潜在的プロテアーゼ処理部位。
【0113】 HRG−β1における類似領域は、その配列を参照することによって決定でき
る。相似のHRG−β1アミノ酸は、HRG−αについて上述したとおりに突然
変異又は修飾を受けることができる。HRG−β2内の類似領域も同様にその配
列を参照することで決定できる。類似のHRG−β2アミノ酸は、HRG−α又
はHRG−β1について以上で論述したように突然変異又は修飾を受けることが
できる。HRG−β3内の相似領域は、その配列を参照することで決定できる。
さらに、相似のHRG−β3アミノ酸は、HRG−α、HRG−β1又はHRG
−β2について上述したように突然変異又は修飾を受けることができる。
【0114】 もう1つのHRG変異体は γ−HRG(又はガンマ−ヘレグリン)である。
γ−HRGは、配列番号11をもつ未変性配列γ−HRGの少なくとも1つの生
物学的特性を有するあらゆるポリペプチド配列である。この変異体の生物学的特
性は、上述したHRGについてのものと同じである。この変異体は、ヒトMDA
−MB−175細胞といった未変性γ−HRG供給源から又はもう1つの動物種
といったようなもう1つの供給源から分離されたポリペプチドのみならず、組換
え型又は合成方法によって調製されたポリペプチドをも包含する。これは同様に
、機能的誘導体、対立変異体、自然に存在するイソ型タンパク質及びその類似体
を含めた変異体形態をも内含している。時として、γ−HRGは、哺乳動物から
分離された内在性γ−HRGポリペプチドを意味する「未変性γ−HRG」であ
る。γ−HRGは同様に、それが未変性γ−HRG(例えば図7A〜7Cに示さ
れているヒトγ−HRG)と同じアミノ酸配列を有するかぎりにおいて、「未変
性配列γ−HRG」であることができる。未変性配列のアミノ酸配列変異体は、
未変性配列DNA内に適切なヌクレオチド変化を導入することによって又は所望
するポリペプチドの in vitro 合成によって調製される。かかる変異体は、例え
ば、その他のHRGについて以上で一般的に記述したように、図7A〜7C内で
ヒトタンパク質について示されたアミノ酸配列内の残基からの欠失、又はその挿
入又は置換を内含している。最終構築物が所望の特性を有することを条件として
、最終構築物に到達するべく欠失、挿入及び置換のあらゆる組合せが行なわれる
。アミノ酸の変化は、0連結されるグリコシル化部位の数又は位置の変更といっ
たように、未変性配列の翻訳後のプロセスを変化させることもできる。
【0115】 もう1つの変異体は、WO96/15244で記述されているように調製され
うる図8にその核酸及びアミノ酸配列が示されている(配列番号13及び14)
感覚ニューロン及び運動ニューロン由来の因子(SMDF)と呼ばれるポリペプ
チドである。本発明のSMDF ポリペプチドは、HER2/HER3レセプタ ーに結合し上述のHRGポリペプチドと類似の要領で上皮細胞の増殖及び分化を
刺激するという特性を示す。未変性配列SMDFのアミノ酸配列の変異体は、未
変性配列SMDF DNA内に適当なヌクレオチド変更を導入することによって 、又は、その他のHRGについて以上で一般的に考察された所望のSMDFポリ
ペプチドの in vitro 合成によって調製される。かかる変異体は、例えば図8内
でヒトSMDFについて示されたアミノ酸配列内の残基からの欠失、又はその挿
入又は置換を内含している。最終構築物が所望の特性を有することを条件として
最終構築物に到達するべく欠失、挿入及び置換のあらゆる組合せが行なわれる。
アミノ酸の変化は、0連結されたグリコシル化部位の数又は位置の変更といった
ような、未変性配列SMDFの翻訳後のプロセスを変化させることができる。
【0116】 付加的な変異体には、変異体が、以下のものの中から選択された645アミノ
酸の未変性ヒトヘレグリン−β1の残基に対応する選択された残基におけるアミ
ノ酸置換を有するポリペプチドが内含される:
【0117】 S177, H178, L179, V180, K181, E184, E186, K187, T188, V191, N192, G193, G194, E195, M198, V199, K200, D201, N204, P205, S206, R207, Y208, L209, K211, P213, N214, E215, T217, G218, D219, Q222, N223, Y224, S228, 及び F229.
【0118】 この実施態様の変形形態においては、アミノ酸置換は、選択された残基に対応
する表皮増殖因子(EGF)残基での選択された残基の置換ではない。
【0119】 その他のヘレグリン−β変異体には以下の中から選択されたアミノ酸置換が内
含される:
【0120】 S177W; H178S, E, R, 又は A; V180Q, I 又は E; K181P 又は A; A183G; E184V, W, K, R, G,又は N; K185E, S, Q, 又は G; E186R; K187E 又は A; T188Q; E195Q; F197Y; M198R 又は K; K200R; D201T 又は I; P205T 又は Y; S206K, H, G, P, 又は R; R207Y; Y208R 又は L; L209M 又は G; K211R; R213S, T, N, 又は K; N214L, K, S, 又は E; F216M; N223H 又は W; 及び M226I.
【0121】 この実施形態の変形形態においては、ヘレグリン変異体は、このグループの中
から選択されたアミノ酸置換のセットを内含する。アミノ酸置換セットを有する
本発明のいくつかのヘレグリン変異体は、HER4レセプター親和力の増大も同
様に伴って、HER3レセプター親和力の少なくとも50倍の増大を示す。特異
的変異体としては、以下のものが含まれる:
【0122】 A183G, E184W, K185D, E186R, K187E, T188G, M226I; A183D, E184K, K185S, E186R, K187E, T188G, M226I; F197Y, M198K, K200R, D201I, M226I; P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M; P205Y, S206R, R207Y, Y208R, L209M, M226I; P205T, S206H, R207Y, Y208R, L209M; P205T, S206K, R207Y, Y208R, L209G; N223W, M226I; N223H, M226I; S177W, H178E, K181P, A183G, E184W, K185D, E186R, K187E, T188G, M226I; P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M, M226I; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, F197Y, M198R, D201T; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R2
07Y, Y208L, L209M; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, M226I; F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M; F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M, M226I; F197Y, M198R, D201T, M226I; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, F197Y, M198R, D201T, M226I; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M, M2
26I; A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R2
07Y, Y208L, L209M, M226I; F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R207Y, Y208L, L209M, N223H, M226I; 及
び A183G, K185E, E186R, K187E, T188G, F197Y, M198R, D201T, P205Y, S206G, R2
07Y, Y208L, L209M, N223H, M226I;
【0123】 本書に開示されているアミノ酸置換のうち単数又は複数のものを内含すること
に加えて、ヘレグリン変異体は、アミノ酸置換、少なくとも1つのアミノ酸の挿
入、少なくとも1つのアミノ酸の欠失又は化学的修飾といったような単数又は複
数のその他の修飾を有することができる。例えば、本発明は、フラグメントであ
るヘレグリンを提供する。この実施形態の変形形態においては、フラグメントは
、約残基175から約残基230まで拡がるヒトヘレグリン−β1の一部分(す
なわちEGF様のドメイン)に対応する残基を内含する。例えば、フラグメント
は、残基177から残基244まで拡がることができ、又、組換え技術によって
調製され得る(rHRGβ1−177〜244)。
【0124】 HRGのアミノ酸配列変異体をコードするDNAは、当該技術分野において既
知のさまざまな方法によって調製される。これらの方法には(自然に存在するア
ミノ酸配列変異体の場合の)天然供給源からの分離又は、HRGの以前に調製さ
れた変異体又は非変異体バージョンのオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的
)突然変異誘発、PCR突然変異誘発及びカセット突然変異誘発による調製が含
まれるが、これらに制限されるわけではない。これらの技術は、HRG核酸(D
NA又はRNA)又はHRG核酸に相補的な核酸を利用することができる。
【0125】 オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発は、HRG DNAの置換、欠失、及び 挿入変異体を調製するための好ましい方法である。この技術は、Adelman et al.
, DNA.2:183(1983)により記述されているように当該技術分野に
おいて周知のものである。簡単に言うと、HRG DNAは、鋳型が、HRGの 不変のすなわち未変性のDNA配列を含有するプラスミド又はバクテリアオファ
ージの1本鎖形態であるような、DNA鋳型に対する所望の突然変異をコードす
るオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって変性させる。ハイブリ
ダイゼーションの後、かくしてオリゴヌクレオチドプライマーを取込みHRG DNA内の選択された変性についてコードすることになる鋳型が第2の相補的ス
トランド全体を合成するために、DNAポリメラーゼが用いられる。
【0126】 一般には、長さが少なくとも25ヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドが用
いられる。最適なオリゴヌクレオチドは、突然変異についてコードするヌクレオ
チドのいずれかの例で鋳型に完全に相補的である12〜15個のヌクレオチドを
有することになる。こうして、オリゴヌクレオチドは、確実に1本鎖DNA鋳型
分子に対し適切にハイブリッド形成することになる。オリゴヌクレオチドは、Cr
ea et al. により記述されたもののような(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:57
65, 1978)当該技術分野において既知の技術を用いて容易に合成される。
【0127】 1本鎖DNA鋳型は同様に、標準的技術を用いて2本鎖プラスミド(又はその
他の)DNAを変性させることによって生成できる。
【0128】 (例えば、アミノ酸配列変異体を生成するために)未変性DNA配列を変化さ
せる目的で、オリゴヌクレオチドは、適切なハイブリダイゼーション条件下で1
本鎖鋳型にハイブリッド形成される。通常はDNAポリメラーゼIのクレノウフ
ラグメントであるDNA重合用酵素が、次に、合成のためのプライマーとしてオ
リゴヌクレオチドを用いて鋳型の相補的ストランドを合成するために付加される
。かくして、DNAの1つのストランドがHRGの突然変異された形態をコード
しかつその他のストランド(もとの鋳型)がHRGの未変性の、不変の配列をコ
ードするような形で、ヘテロ2本鎖分子が形成される。このヘテロ2本鎖分子は
次に、通常は E. coli JM 101といったような原核生物である適切な宿主細胞へ と形質転換される。細胞は、増殖させられた後、アガロース平板上にプレーティ
ングされ、突然変異を受けたDNAを含む細菌コロニーを同定するべく32P−リ
ン酸塩で放射能標識付けされたオリゴヌクレオチドプライマーを用いてスクリー
ニングされる。次に、突然変異を受けた領域は除去され、一般に適切な宿主の形
質転換のために標準的に利用されるタイプの発現ベクターである、タンパク質再
生のための適切なベクターの中に入れられる。
【0129】 以上で記述した方法は、プラスミドの両方のストランドが突然変異を含む、ホ
モ2本鎖分子が作り出されるような形で修正することが可能である。修正は、以
下のとおりである:すなわち、上述のように、1本鎖オリゴヌクレオチドを1本
鎖鋳型にアニールする。3つのデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボアデノ
シン(dATP)、デオキシリボグアノシン(dGTP)及びデオキシリボチミ
ジン(dTTP)の混合物を、(Amersham Corporation から入手することができ
る)dCTP−(aS)と呼ばれる修飾されたチオ−デオキシリボシトシンと組
合わせる。この混合物を、鋳型−オリゴヌクレオチド複合体に添加する。この混
合物にDNAポリメラーゼを添加した時点で、突然変異を受けた塩基を除く鋳型
と同一のDNAストランドが生成される。さらにこの新しいDNAストランドは
、dCTPの代りにdCTP−(aS)を含有することになり、これはそれを制
限エンドヌクレアーゼ消化から保護するのに役立つ。2本鎖ヘテロ2本鎖分子の
鋳型ストランドが適切な制限酵素でニックされた後、鋳型ストランドを突然変異
誘発されるべき部位を含む領域を通って、Exo IIIヌクレアーゼ又はもう1つの
適切なヌクレアーゼを用いて消化させることができる。このとき、部分的にのみ
1本鎖にされている分子を残すべく反応を停止させる。次に全4種のデオキシリ
ボヌクレオチド 三リン酸、ATP及びDNAリガーゼの存在下でDNAポリメ ラーゼを用いて、完全2本鎖DNAホモ2本鎖分子を形成させる。このホモ2本
鎖分子は次に、以上で記述したように、E. coli JM 101といったような適切な宿
主細胞の中へ形質転換させることができる。
【0130】 置換すべき複数のアミノ酸を伴うHRG 突然変異体をコードするDNAは、 複数の方法のうちの1つで生成できる。アミノ酸がポリペプチド鎖の中で密に互
いに近接して位置する場合、これらは、所望のアミノ酸置換の全てについてコー
ドする1つのオリゴヌクレオチドを用いて同時に突然変異され得る。しかしなが
らアミノ酸が互いに一定の距離をおいて位置する(約10個以上のアミノ酸によ
って分離されている)場合には、所望する変更の全てをコードする単一のオリゴ
ヌクレオチドを生成することはさらに困難である。その代り、2つの代替的方法
のうちの1つを利用することができる。
【0131】 第1の方法では、置換されるべき各アミノ酸について、別々のオリゴヌクレオ
チドが生成される。このとき、オリゴヌクレオチドは、1本鎖鋳型のDNAに同
時にアニールされ、鋳型から合成されるDNAの第2のストランドは所望のアミ
ノ酸置換の全てをコードすることになる。
【0132】 代替的方法には、所望の突然変異体を産生するべく2つ以上の突然変異誘発ラ
ウンドが関与する。第1ラウンドは、単一の突然変異体について記述されている
通りである:すなわち、鋳型には野生型DNAが用いられ、第1の所望のアミノ
酸置換をコードするオリゴヌクレオチドがこの鋳型にアニールされ、次にヘテロ
2本鎖DNA分子が生成されている。第2の突然変異誘発ラウンドは、鋳型とし
て第1ラウンドの突然変異誘発で産生された突然変異を受けたDNAを利用する
。かくしてこの鋳型はすでに単数又は複数の突然変異を含んでいる。付加的な所
望のアミノ酸置換をコードするオリゴヌクレオチドは次にこの鋳型にアニールさ
れ、結果として得られたDNAストランドはこのとき、第1及び第2の両方の突
然変異誘発ラウンドからの突然変異をコードする。結果として得られたこのDN
Aは、第3ラウンドの突然変異誘発の中で鋳型として使用されることができ、そ
れ以降も同様である。
【0133】 PCR突然変異誘発は同様に、HRGのアミノ酸変異体を作るのにも適してい
る。以下の論述は、DNAに関するものであるが、この技術がRNAでも応用で
きるということがわかる。PCR技術は一般に以下の手順を基準にしている(Er
lich, 前出、R.Higuchi による章、p61〜70参照)。少量の鋳型DNAが、
PCRにおける開始材料として使用されるとき、鋳型DNA内の対応する領域と
は配列がすこし異なっているプライマーを用いて、プライマーが鋳型と異なって
いる位置でのみ鋳型配列と異なっている特異的DNAフラグメントを比較的大量
に生成することが可能である。プラスミドDNA内に突然変異を導入するために
、プライマーの1つは、突然変異の位置にオーバラップし突然変異を含むように
設計される;その他のプライマーの配列は、プラスミドの相対するストランドの
配列の伸長と同一でなくてはならないが、この配列は、プラスミドDNAに沿っ
たどこにでも位置され得る。しかしながら、第2のプライマーの配列が第1のも
のから200ヌクレオチド以内に位置され、かくして最終的にプライマーと境界
を接するDNAの増幅された領域を容易にシークエンスできるようになっている
ことが好ましい。以上で記述したようなもののようなプライマー対を用いたPC
R増幅は、鋳型のコピーが幾分か誤りを生じやすい作業であることから、プライ
マーにより特定される突然変異の位置そして可能であればその他の位置で異なっ
ているDNAフラグメントの個体群を結果としてもたらす。
【0134】 鋳型対生成物材料の比率がきわめて低い場合、大部分の産物DNA フラグメ ントは所望の突然変異を取込む。この生成物材料は、標準的なDNA技術を用い
てPCR鋳型として役立ったプラスミド内の対応する領域に置き換わるように使
用される。別々の位置での突然変異は、突然変異体の第2のプライマーを使用す
ること又は、異なる突然変異体プライマーで第2のPCRを実施し、結果として
得られたPCRフラグメントを3(又はそれ以上)部分連結において同時にベク
ターフラグメントに連結することのいずれかによって同時に導入され得る。
【0135】 PCR突然変異誘発の特異的例においては、鋳型プラスミドDNA(1mg)が
、増幅されるべき領域の外側のプラスミドDNA内にユニークな認識部位をもつ
制限エンドヌクレアーゼでの消化によって線形化される。この材料のうち100
ngが、4種のデオキシヌクレオチド三リン酸を含有し(Perkin-Elmer Cetus, No
rwalk, CT and Emeryville, CA から得られる)GENEAMPキット内に内含 されているPCR緩衝液を含むPCR混合物に添加され、又25pmole の各々の
オリゴヌクレオチドが最終容量50mlとなるまで添加される。反応混合物には3
5mlの鉱油が上に入れられる。反応を100℃で5分間変性させ、短時間氷上に
置き、次に鉱油層の下に、1mlのThermus aquaticus (Taq) DNAポリメラーゼ
(5単位/ml,Perkin-Elmer Cetus, Norwalk, CT and Emeryville, CA から購 入したもの)を添加する。その後、反応混合物を、以下の要領でプログラムされ
たDNAサーマルサイクラー(Perkin-Elmer Cetusから購入されたもの) の中に
挿入する: 55℃で2分 72℃で30秒、次に以下のもの19サイクル; 94℃で30秒、 55℃で30秒、そして 72℃で30秒、
【0136】 プログラムが終了した時点で、反応バイアルをサーマルサイクラーから取り出
し、水相を新しいバイアルに移し、フェノール/クロロホルム(50: 50: vol) で抽出し、エタノールで沈降させ、DNAを標準的手順で回収する。この材料を
その後、ベクター内への挿入のため適切な処理に付す。
【0137】 変異体を調製するためのもう1つの方法すなわちカセット突然変異誘発は、We
lls et al.,(Gene, 34: 315, 1985)により記述された技術に基づくものである 。出発材料は、突然変異すべきHRG DNAを含むプラスミド(又はその他の ベクター)である。突然変異すべきHRG DNA内のコドンを同定する。同定 された突然変異部位の各々の側にユニークな制限エンドヌクレアーゼ部位がなく
てはならない。このような制限部位が全く存在しない場合、HRG DNA内の 適切な場所に導入するべく上述のオリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発方法を用
いて、これらを生成することができる。プラスミド内に制限部位が導入された後
、このプラスミドをこれらの部位で切断してそれを線形化する。制限部位間のD
NAの配列をコードするものの所望の突然変異を含む2本鎖オリゴヌクレオチド
を、標準的手順を用いて合成する。2本のストランドは別々に合成され、次に標
準的技術を用いて一緒にハイブリッド形成される。この2本鎖オリゴヌクレオチ
ドはカセットと呼ばれる。このカセットは、それを直接プラスミドに連結させる
ことができるように、線形化されたプラスミドの端部と相容性のある3′及び5
′末端をもつように設計される。このプラスミドはこのとき、突然変異を受けた
HRG DNA配列を含有する。
【0138】 C.クローニングビヒクル内へのDNAの挿入 未変性又は変異体HRGをコードするcDNA又はゲノムDNAを、さらなる
クローニング(DNAの増幅)又は発現のため、複製可能なベクター内に挿入す
る。数多くのベクターが利用可能であり、適切なベクターの選択は、1)それが
DNA増幅のために使用されるか又はDNA発現のために使用されるべきものか
、2)ベクター内に挿入されるべきDNAのサイズ、及び 3)ベクターを用い て形質転換すべき宿主細胞、に依存することになる。各々のベクターは、その機
能(DNAの増幅又はDNAの発現)及びそれが相容性をもつ宿主細胞に応じて
さまざまな成分を含んでいる。ベクターの成分としては一般に、シグナル配列、
複製起点、単数又は複数のマーカー遺伝子、エンハンサー因子、プロモーター及
び転写終結配列のうちの単数又は複数のものが含まれるが、これらに制限される
わけではない。
【0139】 (i)シグナル配列成分 一般に、シグナル配列は、ベクターの成分であってもよいし、或いは又、ベク
ターの中に挿入されるHRG DNAの一部分であってもよい。未変性HRG D
NAは、従来のシグナル構造が明らかではないものの、HER2/HER3レセ
プターに結合する成熟HRGポリペプチドリガンドを形成するべくポリペプチド
の翻訳後プロセシング中に分割されるポリペプチドのアミノ末端(HRGをコー
ドするDNAの5′末端)においてシグナル配列をコードするものと考えられて
いる。未変性HRGは、細胞から分泌されるものの、ポリペプチドのカルボキシ
ル末端領域内に細胞質領域及び膜貫通ドメインを含有していることから、膜の中
に収容された状態にとどまる。かくして、可溶型の分泌されたHRGにおいては
、膜貫通ドメインを内含する分子のカルボキシル末端ドメインは、通常欠失させ
られている。この切形変異体HRGポリペプチドは、切形変異体をコードするD
NAが宿主により認識されるシグナル配列をコードすることを条件として、細胞
から分泌されてよい。
【0140】 本発明のHRGは、直接的のみならず、非相同ポリペプチド、好ましくはシグ
ナル配列又は成熟タンパク質又はポリペプチドのN及び/又はC末端に特異的分
割部位を有するその他のポリペプチドとの融合としても発現され得る。 一般に、シグナル配列はベクターの成分であってもよいし、又、ベクターの中
に挿入されるHRG DNAの一部であってもよい。本発明の範囲内に含まれる のは、欠失させられ非相同シグナル配列で置換された未変性シグナル配列を伴う
HRGである。選択される非相同シグナル配列は、宿主細胞によって認識され処
理され、すなわちシグナルペプチダーゼにより分割されるものでなくてはならな
い。未変性HRGシグナル配列を認識せずプロセシングしない原核生物の宿主細
胞については、シグナル配列は、例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナー
ゼ、1pp又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダーというグループの中から選
択された原核シグナル配列により置換される。酵母分泌については、未変性HR
Gシグナル配列は、酵母インベルターゼ、アルファ因子又は酸ホスフォターゼリ
ーダーにより置換され得る。哺乳動物細胞発現においては、未変性シグナル配列
は充分なものであるが、その他の哺乳動物シグナル配列も適切でありうる。
【0141】 (ii) 複製起点成分 発現及びクローニングベクターはどちらも、一般に、単数又は複数の選択され
た宿主細胞内でベクターが複製できるようにする核酸配列を含有する。一般に、
クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主の染色体DNAとは独立して
ベクターが複数できるようにするものであり、複数起点又は自動的に複製する配
列を内含する。このような配列は、さまざまな細菌、酵母及びウイルスについて
周知のものである。プラスミドpBR322からの複製起点は、大部分のグラム
陰性菌に適しており、2mプラスミド起点は酵母に適しており、さまざまなウイ
ルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)が、哺
乳動物細胞内でのクローニングベクターにとって有用である。一般に、複製起点
成分は、哺乳動物の発現ベクターには必要とされない(SV40起点は標準的に
、それが初期プロモーターを含んでいるというだけの理由で使用することができ
る)。
【0142】 大部分の発現ベクターは「シャトル」ベクターである。すなわちこれらは少な
くとも1つのクラスの生体の中で複製できるが、発現のためもう1つの生体内に
トランスフェクションすることができる。例えば、E. Coli の中で1つのベクタ
ーがクローンされ、その後、この同じベクターは、たとえそれが宿主細胞の染色
体とは独立して複製する能力をもたなくても、発現のため酵母又は哺乳動物細胞
内にトランスフェクションされる。
【0143】 DNAは同様に、宿主ゲノム内への挿入よっても増幅され得る。これは、例え
ば、BacillusのゲノムDNA内に見い出される配列と相補的であるDNA配列を
ベクター内に含み入れることによって、Bacillus種を用いて容易に達成される。
このベクターでの Bacillusのトランスフェクションは、ゲノムでの相同性組換 え及びHRG DNAの挿入を結果としてもたらす。しかしながら、HRGをコ ードするゲノムDNAの回収は、HRG DNAを切除するのに制限酵素消化が 必要とされるため、外因的に複製されたベクターのものよりもさらに複雑である
。DNAは、PCRにより増幅し、いかなる複製成分もなく宿主細胞内に直接ト
ランスフェクションされうる。
【0144】 (iii) 選択遺伝子成分 発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝
子を含んでいなくてはならない。この遺伝子は、選択培地内で増殖させられた形
質転換済み宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝
子を含むベクターで形質転換されていない宿主細胞は培地内で存続しなくなる。
標準的な選択遺伝子は、(a)例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキ
セート又はテトラサイクリンといった抗生物質又はその他の毒素に対する耐性を
付与する、(b)栄養素要求性欠損を補足する又は(c)例えば Bacilliに対す
るD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子といった、複合培地から入手でき
ない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードする。
【0145】 選択スキームの一例では、宿主細胞の増殖を阻止するために薬物が利用される
。非相同遺伝子でうまく形質転換されるような細胞は、薬物耐性を付与するタン
パク質を発現し、かくして選択体制を生き延びる。かかる優性選択の例では、ネ
オマイシン(Southern et al., J. Molec. Appl. Genet. 1; 327, 1982)、マイ
コフェノール酸(Mulligan et al., Science209; 1422, 1980)又はハイグロマ イシン(Sugden et al., Mol. Cell. Biol. 5;410-413, 1985)の薬物が使用さ れる。以上に記した3つの例は、それぞれ適切な薬物G418又はネオマイシン
(ゲネテイシン)、xgpt(マイコフェノール酸)又はハイグロマイシンに対
する耐性を伝達すべく真核制御下で細菌遺伝子を利用する。
【0146】 哺乳動物細胞のための適切な選択可能マーカーのもう1つの例は、ジヒドロ葉
酸レダクターゼ(DHFR)又はチミジンキナーゼといったようなHRG核酸を
取り込むための応答能をもつ細胞の同定を可能にするマーカーである。哺乳動物
の細胞形質転換体は、マーカーを取り込むことにより形質転換体のみが生きのび
るように、特異的に適応する淘汰圧の下に置かれる。淘汰圧は、培地内の選択作
用物質の濃度がうまく変えられ、それにより選択遺伝子及びHRGをコードする
DNAの両方の増幅を導くような条件下で、形質転換体を培養することによって
加えられる。増幅というのは、増殖にとって決定的なタンパク質の産生のために
要求度の高い遺伝子を、組換え細胞の連続する世代の染色体内で連繋して反復さ
せるプロセスである。増加した量のHRGが、増幅されたDNAから合成される
【0147】 例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞はまず最初に、DHFRの
競合的拮抗薬であるメトトレキセート(Mtx)を含有する培地内で全ての形質転
換体を培養することによって同定される。野生型DHFRが利用される場合に適
切な宿主細胞は、Urlaub and Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77; 4216,
1980 によって記述されているように調製し増殖させた、DHFR活性が決失し
たチャイニーズハムスターー卵巣(CHO)細胞系統である。形質転換された細
胞は次に、増大したレベルのメトトレキセートに暴露される。こうして、DHF
R遺伝子の多重コピー、そしてそれと同時に、HRGをコードするDNAといっ
たような発現ベクターを含むその他のDNAの多重コピーの合成が導かれる。こ
の増幅技術は、例えばMtxに対する高い耐性をもつ突然変異体DHFR遺伝子が
利用される場合(EP117,060)に内在性DHFRの存在にもかかわらず
、例えばATCC No.CCL61 CHO−K1といったその他の点で適切なあ
らゆる宿主と共に使用することができる。代替的には、HRG、野生型DHFR
タンパク質及びもう1つの選択可能マーカー例えばアミノグリコシド3′ホスホ
トランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換又は同時形質
転換された宿主細胞(特に内在性DHFRを含む野生型宿主)は、アミノグリコ
シド抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシン又はG418といったような
選択可能マーカーのための選択作用物質を含有する培地内での細胞増殖によって
選択することもできる(米国特許第4,965,199号参照)。
【0148】 酵母内で使用するのに適した選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7の中に存
在する trp1遺伝子である(Stinchcomb et al., Nature, 282; 39, 1979; King
sman et al., Gene, 7; 141, 1979; 又は Tschemper et al., G10; 157, 1980) 。 trp1遺伝子は、例えばATCC No.44076又はPEP4−1(Jones, G
enetics, 85: 12, 1977)といったように、トリプトファンの中で増殖する能力 が欠如している酵母の突然変異体菌株のための選択マーカーを提供する。このと
き、酵母宿主細胞ゲノム内の trp1病巣の存在は、トリプトファンの不在下での
増殖によるトランスフェクションを検出するための有効な環境を提供する。同様
にして、Leu2欠損酵母菌株(ATCC 20,622又は38,626)は、Leu 2遺伝子を担持する既知のプラスミドによって補完される。
【0149】 (iv) プロモーター成分 発現及びクローンベクターは通常、宿主生体により認識されHRG核酸に作動
可能な形で連結されているプロモーターを含有する。プロモーターは、それらが
作動可能に連結されているHRGといったような特定の核酸配列の転写及び翻訳
を制御する構造遺伝子(一般には約100〜1000bp)の開始コドンに対し上
流側(5′)に位置する未翻訳の配列である。かかるプロモーターは、標準的に
、誘発性と構成性という2つのクラスに入る。誘発性プロモーターは、培養条件
の何らかの変化、例えば栄養素の有無又は温度変化に応答してそれらの制御下で
のDNAからの転写レベルの増大を開始するプロモーターである。現時点で、さ
まざまな潜在的宿主細胞によって認識される数多くのプロモーターがよく知られ
ている。これらのプロモーターは、制限酵素消化によりソースDNAからプロモ
ーターを除去し、単離したプロモーター配列をベクター内に挿入することによっ
て、HRGをコードするDNAに作動可能に連結されている。未変性HRGプロ
モーター配列及び数多くの非相同プロモーターの両方を用いてHRG DNAの 増幅及び/又は発現を導くことができる。しかしながら、未変性HRGプロモー
ターに比べて多くの転写量及び発現されたHRGのより高い収量を一般に可能に
することから、非変性プロモーターが好ましい。
【0150】 原核細胞宿主と共に使用するのに適したプロモーターには、b−ラクタマーゼ
及びラクトースプロモーター系(Chang et al., Nature, 275: 615, 1978; 及び
Goeddel et al., Nature 281; 544, 1979)、アルカリホスファターゼ、トリプ
トファン(trp)プロモーター系(Goeddel, Nucleic Acids Res., 8; 4057, 198
0及び EP 36,776)、tPA(U.S. 5,641,655)及び tacプロモーターといった ようなハイブリッドプロモーター(deBoer et al., Proc, Natl. Acad. Sci. US
A 80; 21-25, 1983)が含まれる。しかしながら、その他の既知の細菌プロモー ターも適している。それらのヌクレオチド配列はすでに公表されており、従って
、当業者であれば、必要とされるあらゆる制限部位を供給するべくリンカー又は
アダプターを用いてHRGをコードするDNAに対しこれらを作動可能に連結す
ることが可能となっている(Siebenlist et al., Cell 20; 269, 1980)。細菌 系内で使用するためのプロモーターは同様に一般に、HRGをコードするDNA
に作動可能に結合されたシャイン−ダルガーノ(S.D.) 配列を含むことになる。
【0151】 酵母宿主と共に使用するための適切なプロモーター配列としては、3−ホスフ
ォグリセレートキナーゼ(Hitzeman et al., J. Biol. Chem., 255; 2073, 1980
)又はその他の解糖酵素(Hess et al., J. Adv. Erzyme Reg 7: 149, 1968; 及
び Holland. Biochemistry 17; 4900, 1978)例えばエノラーゼ、グリセルアル デヒト3リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラ
ーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホ
スホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラー
ゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼに対するプロモーター
が含まれる。
【0152】 増殖条件によって制御された転写という付加的な利点をもつ誘発可能なプロモ
ーターであるその他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イ
ソシトクロムC、酸ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解性酵素、グリセル
アルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ及びマルトース及びガラクトースの利
用に反応し得る酵素のためのプロモーター領域である。酵母の発現において使用
するための適切なベクター及びプロモーターについてはさらに Hitzeman et al.
, EP 73,657A.に記述されている。酵母エンハンサーは同様に、酵母プロモータ
ーと合わせた形でも有利に使用される。
【0153】 真核生物について、プロモーター配列が知られている。事実上全ての真核遺伝
子が、転写が開始される部位から上流側約25〜30塩基のところにあるATリ
ッチな領域を有している。多くの遺伝子の転写開始点から上流側70〜80塩基
のところに見られるもう1つの配列は、Xが任意のヌクレオチドでありうるCX
CAAT領域である。大部分の真核遺伝子の3′末端には、コーディング配列の
3′末端に対する ポリA尾部の付加のためのシグナルでありうるAATAAA 配列がある。これらの配列全てが哺乳動物発現ベクター内に適切に挿入される。
【0154】 哺乳動物宿主細胞内のベクターからのHRG遺伝子転写は、そのプロモーター
が宿主細胞系と相容性をもつものであることを条件としてポリオーマウイルス、
鶏痘ウイルス(UK 2,211,504,1989年7月5日公示)、アデノウイルス(例
えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、鳥類サルコーマウイルス、サイ
トメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス及び最も好ましくはシミ
アンウイルス40(SV40)といったようなウイルスのゲノムから、例えばア
クチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターといった非相同な哺乳動物
プロモーターから、熱ショックプロモーターから、及びHRG配列と通常関連す
るプロモーターから得られたプロモーターによって制御されうる。
【0155】 SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターは、同様にSV40ウイルス複
製起点を含むSV40制限フラグメントとして都合よく得られる(Fiers et al.
, Nature, 273: 113(1978); Mulligan 及び Berg, Science, 209; 1422-1427(19
80); Pavlakis et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 78:7398-7402 (1981)ヒ トサイトメガロウイルスの中間初期プロモーターは、便利にも、HindIII E 制限
断片として得られる(Greenaway et al., Gene, 18:355-360(1982))。ウシ乳頭 腫ウイルスをベクターとして用いて哺乳動物宿主内でDNAを発現するための系
については、US4,419,446中で開示されている。この系の修飾について
は、US4601,978に記述されている。同様に、サルの細胞内で免疫イン ターフェロンをコードするcDNAを発現することに関する Gray et al., Natu
re, 295; 503-508(1982);単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモ
ーターの制御下でのマウス細胞内のヒトb−インターフェロンcDNAの発現に
関する Reyes et al., Nature, 297; 598-601(1982);培養されたマウス及びウ サギ細胞の中でのヒトインターフェロンb1遺伝子の発現に関する Canaani 及 び Berg, Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 79; 5166-5170 (1982);及びラウス肉腫
ウイルス末端反復配列をプロモーターとして用いたCV−1サル腎細胞、ニワト
リ胚線維芽細胞チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞及びマウスNIH−
3T3細胞内での細菌CAT配列の発現に関する Gorman et al., Proc. Natl.
Acad. Sci. USA, 79; 6777-6781 (1982)も同様に参照のこと。
【0156】 (v)エンハンサー因子成分 高等真核生物による本発明のHRGをコードするDNAの転写は往々にしてベ
クター内へのエンハンサー配列の挿入によって増大させられる。エンハンサーは
、その転写を増大させるべくプロモーター上に作用する通常約10〜300bpの
DNAのシス作用性因子である。エンハンサーは、イントロン内(Banerji et a
l., Cell, 33; 729, 1983)内ならびにコーディング配列自体(Osborne et al.,
Mol. Cell Bio., 4; 1293, 1984)の中で転写単位まで5′(Laimins et al., P
roc. Natl. Acad. Sci. USA. 78; 993, 1981)及び3′(Lusky et al., Mol. Ce
ll Bio.,3: 1108, 1983)のところに見い出されて比較的向き及び位置とは独立 したものである。哺乳動物遺伝子からの数多くのエンハンサーが現在知られてい
る(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、a−フェトプロテイン及びインシュ
リン)。しかしながら標準的には、真核細胞ウイルスからのエンハンサーが使用
されることになる。その例としては、複製起点の後期側にあるSV40エンハン
サー(bp100−270)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサ
ー、複製起点の後期側にあるポリオーマエンハンサー及び真核プロモーターの活
性化のための増強要素上のアデノウイルスエンハンサー(Yaniv, Nature, 297:
17-18(1982)も同様に参照のこと)。エンハンサーは、HRG DNAに対する位
置5′又は3′においてベクター内にスプライスされ得るか、好ましくはプロモ
ーターから5′の部位に位置設定される。
【0157】 (vi)転写終結成分 真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト又はその他の多細胞生体
からの有核細胞)の中で用いられる発現ベクターは、同様に、転写の終結及びm
RNAの安定化のために必要な配列を含むことになる。かかる配列は一般に、真
核又はウイルスDNA又はcDNAの5′及び場合によっては3′の未翻訳領域
から入手可能である。これらの領域は、HRGをコードするmRNAの未翻訳部
分の中でポリアデニル化断片として転写されたヌクレオチドセグメントを含有す
る。3′未翻訳領域は同様に、転写終結部位をも内含する。
【0158】 以上に列挙された成分のうちの単数又は複数のもの、所望のコーディング及び
制御配列を含む適切なベクターの構築には、標準的な連結技術が利用される。単
離されたプラスミド又はDNA断片は、分割され、調製されかつ必要なプラスミ
ドを生成するために所望の形態に再度連結される。
【0159】 構築されたプラスミドの中で適正な配列を確認することを目的とした分析のた
めに E. Coli k12菌株294(ATCC 31446)を形質転換するべく連
結混合物が用いられ、該当する場合、成功した形質転換体がアンピシリン又はテ
トラサイクリン耐性によって選択される。形質転換体からのプラスミドが調製さ
れ、制限エンドヌクレアーゼ消化により分析されかつ/又は、Messing et al.,
Nucleic Acids Res. 9: 309(1981)の方法又は Maxam et al., Methods in Enzym
ology 65: 499(1980) の方法によってシークエンスされる。
【0160】 本発明の実施において特に有用であるのは、HRGをコードするDNAの哺乳
動物細胞内の一過的発現を提供する発現ベクターである。一般に、過渡的発現に
は、宿主細胞が発現ベクターの数多くのコピーを蓄積し、その結果、順番に発現
ベクターによりコードされた所望のポリペプチドを高レベルで合成するような形
で、宿主細胞内で効率良く複製することのできる発現ベクターの使用を含む。適
切な発現ベクター及び宿主細胞を含む過渡的発現系は、クローンされたDNAに
よってコードされたポリペプチドの便利な正の同定ならびに、所望の生物学的又
は生理学的特性についてかかるポリペプチドを迅速にスクリーニングすることを
可能にする。かくして、過渡的発現系は、本発明において、HRG様活性をもつ
HRGの変異体及び類似体を同定する目的で特に有用である。かかる過渡的発現
系についてはUS5,024,939において記述されている。
【0161】 組換え型脊椎動物細胞培養内でのHRGの合成への適合に適したその他の方法
、ベクター及び宿主細胞については Gething et al., Nature 293: 620-625, 19
81; Mantei et al., Nature, 281: 40-46, 1979; Levinson et al., EP 117,060
and EP 117,058 の中で記述されている。HRGの哺乳動物細胞培養発現のため
の特に有用な発現プラスミドは、pRK5(欧州公報307,247号)である 。
【0162】 D.宿主細胞の選択と形質転換 本書のベクターをクローニング又は発現するための適切な宿主細胞は、原核生
物、酵母又は上述の高等真核生物細胞である。適切な原核細胞としては、真正細
菌、例えばグラム陰性又はグラム陽性生物例えば E. Coli, B. subtilis といっ
た Bacillis, P. aeruginosaといった Pseudomonas種、Salmonella typhimurium
又は Serratia marcescans が含まれる。1つの好ましい E. Coli クローン宿 主は、E. coli 294(ATCC 31,446)であるが、E. coli B、 E. col
i x1776(ATCC31,537)及び E. Coli W3110(ATCC27,
325)といったようなその他の菌株も適している。これらの例は、制限的な意
味のない例示目的のものである。好ましくは宿主細胞は、最少量のタンパク質分
解酵素を分泌しなくてはならない。代替的には、 in vitro のクローン方法、例
えばPCR又はその他の核酸ポリメラーゼ反応が適している。
【0163】 原核生物に加えて糸状真菌又は酵母といった真核微生物もHRGをコードする
ベクターのための適切な宿主である。Saccharomyces cerevisiae 又は一般的な
パン酵母が、下等真核宿主微生物の中でも最も一般的に使用されている。しかし
ながら、Schizosaccharomyces pombe (Beach and Nurse, Nature, 290: 140(198
1); EP 139,383、 published May 2,1985)、Kluyveromyces hosts(U.S.S.N. 4,9
43,529)例えば K. lactis (Louvencourt et al, J. Bacteriol., 737 (1983);K
. fragilis, K. bulgaricus, K. thermotolerans, 及び K. marxianus, yarrowi
a (EP 402,226);Pichia pastoris (EP 183,070), Sreekrishna et al., J. Basi
c Microbiol., 28:265-278(1988);Candida. Trichoderma reesia(EP244,234);Ne
urospora crassa (Case et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76:5259-5263(1
979)、 及び糸状真菌例えば Neurospora, Penicillium, Tolypocladium(WO9 1/00357,1991年1月10日公示)。及び Aspergillus 宿主、例え ば Anidulans (Ballance et al., Biochem, Biophys. Res. Commun., 112: 284-
289(1983); Tilburn et al., Gene. 26:205-221(1983); Yelton et al., Proc.
Natl. Acad. Sci. USA,81: 1470-1474(1984)及び A. niger (Kelly 及び Hynes,
EMBO J., 4: 475-479 (1985))といったような数多くのその他の属、種及び菌株
が一般に入手可能であり、ここでは有用である。
【0164】 グリコシル化されたHRGポリペプチドの発現のために適した宿主細胞は、多
細胞生物から誘導される。かかる宿主細胞は、複雑なプロセシング及びグリコシ
ル化活動の能力をもつ。原則として、脊椎動物又は無脊椎動物のいずれの培養か
らのものであれ、任意の高等真核細胞培養が実行可能である。無脊椎動物細胞の
例としては、植物及び昆虫細胞が含まれる。Spodoptera frugiperda(毛虫)、Aed
es aegypti (蚊)、Aedes albopictus (蚊) 、Drosophila melanogaster(ミバ エ)及び Bombyx mori宿主細胞といったような宿主からの数多くのバキュロウイ
ルス菌株及び変異体及び対応する許容性昆虫宿主細胞が同定されてきている Luc
kow et al., Bio/Technology, 6:47-55(1988); Miller et al., Genetic Engine
ering, Setlow, J.K. et al., 編,第8巻中 (Plenum Publishing, 1986)、pp.
277-279; 及び Maeda et al., Nature, 315; 592-594(1985)。例えば Autograph
a california NPVのL−1変異体及び Bombyx mori NPVのBm−5菌株な
どのさまざまなこのようなウイルス菌株が一般に入手可能であり、特に Spodopl
era frugiperda 細胞のトランスフェクションのために、本発明に従った、ここ
でいうウイルスとしてかかるウイルスを使用することができる。
【0165】 宿主として、綿花、トウモロコシ、ジャガイモ、大豆、ペチュニア、トマト及
びタバコの植物細胞培養を利用することができる。標準的には、植物細胞は、H
RG DNAを含むように予め操作された細菌 Agrobacterium tumefaciens の或
る種の菌株とのインキュベーションによりトランスフェクションされる。A.tume
faciens との植物細胞培養のインキュベーションの間、HRGをコードするDN
Aは、それがトランスフェクションを受け適切な条件下でHRG DNAを発現 することになるような形で、植物細胞に移送される。さらに、ノパリンシンター
ゼプロモーター及びポリアデニル化シグナル配列(Depicker et al., J. Mol. A
ppl. Gen. 1:561(1982))といったような植物細胞と相容性ある調節及びシグナル
配列も利用可能である。さらに、T−DNA780遺伝子の上流側領域から単離
されたDNAセグメントは、組換えDNA含有植物組織の中で植物発現可能遺伝
子の転写レベルを活性化又は増大させる能力をもつ(1989年6月21日発行
のEP321,196参照)。
【0166】 しかしながら、最も有利なのは脊椎動物細胞においてであり、近年、培養(組
織培養)中の脊椎動物細胞の増殖が日常的手順となってきた(Tissue Culuture,
Academic Press. Kruse 及び Patterson, editors(1973)).有用な哺乳動物宿 主細胞系統の例としては、SV40による形質転換を受けたサルの腎臓CV1系
統(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎系統(293又は懸濁
培養における増殖のためサブクローニングされた293細胞、Graham et al., J
. Gen Virol., 36: 59, 1977);初生ハムスター腎細胞(BHK,ATCC C CL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO、Urlaub
及び Chasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA.77: 4216(1980));マウスセルト リ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23: 243-251(1980);サル腎細胞(C
VI ATCC CCL 70);アフリカサバンナモンキー腎細胞(VERO− 76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸ガン細胞(HELA、ATC C CCL2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL34);バッファロー
ラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442);ヒト肺細胞(W13
8、ATCC CCL75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB8065);マウス 乳ガン(MMT060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et
al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383: 44-68(1982));MRC5細胞:FS4細
胞及びヒト肝ガン細胞系統(Hep G2)がある。好ましい宿主細胞はヒト胚 腎293及びチャイニーズハムスターの卵巣細胞である。
【0167】 宿主細胞は、トランスフェクションされ、好ましくは本発明の上述の発現又は
クローンベクターを用いて形質転換され、プロモーターの誘発、形質転換体の選
択又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するのに適切な形で修飾された従来
の栄養培地の中で培養される。
【0168】 トランスフェクションとは、いずれかのコーディング配列が実際に発現されて
いるか否かとは無関係の、宿主細胞による発現ベクターの取り込みのことである
。例えばCaPO4及び電気穿孔法といった数多くのトランスフェクション方法 が当業者にとって既知のものである。このベクターの働きを表わす何かが宿主細
胞内で生じた時点で、トランスフェクションの成功が認められる。
【0169】 形質転換というのは、染色体外要素として又は染色体組込みにより、DNAが
複製可能となるように生体の中にDNAを導入することを意味する。使用される
宿主細胞に応じて、かかる細胞に適切な標準的技術を用いて形質転換が行なわれ
る。前出の Sambrook et al., の第1.82節で記述されているように、塩化カ ルシウムを利用するカルシウム処理が一般に、原核生物又は実質的な細胞壁バリ
ヤを含むその他の細胞のために使用される。Shaw et al., Gene. 23: 315(1983)
及びWO89/05859(1989年6月29日公示)によって記述されてい るように、或る種の植物細胞のトランスフェクションのために、Agrobacterium
tumefaciens での感染が用いられる。かかる細胞壁の無い哺乳動物細胞について
は、Sambrook et al. 前出の第16、30−16、37節に記述されているリン
酸カルシウム沈降法が好まれる。哺乳動物細胞宿主系の形質転換の全体的様相に
ついては、1983年8月16日に発行されたU.S.4,399,216中で Axe
l によって記述されている。酵母内へのトランスフェクションは標準的に、Van
Solingen et al., J. Bact., 130:946(1977) 及び Hsiao et al., Proc. Natl.
Acad. Sci.(USA), 76:3829(1979)の方法に従って実施される。しかしながら、核
注入、電気穿孔法は又はプロトプラスト融合によるものといったように細胞内に
DNAを導入するためのその他の方法も使用することも可能である。
【0170】 E.宿主細胞の培養 本発明のHRGポリペプチドを産生するのに使用される原核細胞は、Sambrook
et al.,前出に全体的に記述されているような適切な培地内で培養される。
【0171】 本発明のHRGを産生するために使用される哺乳動物宿主細胞は、さまざまな
培地の中で培養することができる。Ham's F10(Sigma)、最少必須培地((MEM)、S
igma)、RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((D MEM)、Sigma)が宿主細胞の培養に適している。さらに、宿主細胞のための培
地として、Ham 及び Wallace. Meth. Enz., 58:44(1979)、Barnes及び Sato, An
al. Biochem., 102:255(1980)、U.S. 4,767,704; 4,657,866; 4,927,762; 又は
4,560,655; WO90/03430; WO87/00195; U.S. Pat.Re.30.985 又は U.S. 5,122,46
9; の中で記述されている培地のうちのいずれでも使用することができる。これ らの培地のいずれも必要に応じて、ホルモン及び/又はその他の増殖因子(例え
ばインシュリン、トランスフェリン又は表皮増殖因子)、塩(例えば塩化ナトリ
ウム、カルシウム、マグネシムウ及びリン酸塩)、緩衝液(例えばHEPES)
、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマ
イシン製剤)、微量元素(マイクロM範囲内の最終濃度で通常存在する無機化合 物として定義される)及びグルコース又は同等のエネルギー源で補足され得る。
その他の任意の必要な補足物も、当業者にとって既知であると思われる適切な濃
度で内含され得る。温度、pHなどといった培養条件は、発現のために選択された
宿主細胞について以前に使用されたものであり、当業者にとっては明らかであろ
う。
【0172】 この開示で言及されている宿主細胞は in vitro 培養中の細胞ならびに宿主動
物の体内にある細胞を包含する。
【0173】 さらに、本発明のHRGを、相同性組換えによってか又は、現在当該分野で使
用されているHRGをコードするDNAをすでに含有する細胞内に導入された制
御要素を利用した組換え型産出方法を用いて産出することも可能であることが考
えられている。例えば、強力なプロモーター/エンハンサー要素、サプレッサー
、又は外因性転写モジュレータ要素が、所望のHRGをコードするDNAの転写
に影響を及ぼすのに充分な近接性及び向きで、意図された宿主細胞のゲノム内に
挿入される。制御要素は、本発明のHRGをコードしないが、DNAは、宿主細
胞ゲノム内に存在する。次に本発明のHRGを作る細胞について、又は望みに応
じて増大又は減少される発現レベルについてスクリーニングが行なわれる。
【0174】 F.遺伝子増幅/発現の検出 遺伝子増幅及び/又は発現は、本書に提供されている配列に基づいて適切に標
識づけされたプローブを用いて、例えば従来のサザンブロット法、mRNAの転
写を定量するためのノーザンブロット法(Thomas. Proc. Natl. Acad. Sci. USA
, 77; 5201-5205(1980)、ドットブロット法(DNA解析)、又は in sith ハイ
ブリダイゼーションによって直接サンプル内で測定することができる。さまざま
な標識を利用することができるが、最も一般的には、放射性同位元素、特に32
が使用される。しかしながら、ポリヌクレオチド内への導入のためにビオチン修
飾されたヌクレオチドを用いることといったようなその他の技術も同様に利用可
能である。このとき、ビオチンは、放射性核種、蛍光剤、酵素などといったさま
ざまな標識で標識づけされうる抗体又はアビジンに結合するための部位として役
立つ。代替的には、DNA2本鎖分子、RNA2本鎖分子、及びDNA−RNA
ハイブリッド2本鎖分子又はDNA−タンパク質2本鎖分子を含めた特定の2本
鎖分子を認識できる抗体を利用することができる。抗体自体標識づけすることが
でき、2本鎖分子が表面に結合されている場合検定を行なうことができ、かくし
て表面上での2本鎖分子の形成の時点で、2本鎖分子に結合した抗体の存在を検
出することができるようになっている。
【0175】 代替的には、遺伝子産物の発現を直接定量するべく、組織切片の免疫組織化学
的染色及び細胞培養又は体液の検定といったような免疫学的方法により、遺伝子
発現を測定することができる。免疫組織化学的染色技術により、酵素標識、螢光
標識、発光標識などのように標識が通常視覚的に検出可能であるような、結合さ
れた遺伝子産物に特定的な標識づけされた抗体との反応が続く、脱水及び固定に
よって標準的に細胞標本が調製される。本発明で使用するのに適した特に感受性
の高い染色技術は、Hsu et al., Am. J. Clin. Path,75; 734-738(1980)によっ て記述されている。
【0176】 免疫組織化学的染色及び/又は標本流体の検定にとって有用な抗体は、モノク
ローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよく、あらゆる哺乳動物
中で調製され得る。適切には、抗体は、未変性HRGポリペプチドに対してか又
は、以下でさらに詳述するように本書で提供されているDNA配列に基づいた合
成ペプチドに対して調製され得る。
【0177】 G.ヘレグリンポリペプチドの精製 HRGは、細胞膜画分から回収される。代替的には、タンパク質分解により分
割されたか又は切断された、発現した可溶性HRGフラグメント又はサブドメイ
ンが、可溶性ポリペプチドとして培地から回収される。HRGは、分泌シグナル
無しで直接発現されたとき宿主細胞溶解産物から回収される。
【0178】 HRGがヒト由来のもの以外の組換え型細胞内で発現された時点で、HRGは
、ヒト由来のタンパク質又はポリペプチドを全く含まない状態にある。しかしな
がら、HRGに関して実質的に相同である調製物を得るためには、組換え型細胞
タンパク質又はポリペプチドからHRGを精製することが望ましい。第1段階と
して、培地又は溶解産物を遠心分離に付して、粒状の細胞破片を除去する。次に
、膜及び可溶性タンパク質分画を分離させる。HRGが膜結合されているか否か
に応じて可溶性タンパク質分画(プロテアーゼの存在が必要)及び培養溶解産物
の膜分画の両方から、HRGを精製する。以下の手順は、適切な精製手順の一例
である:イムノアフィニティ又はイオン交換カラム上の分画化;エタノール沈降
法;逆相HPLC;シリカ、へパリンセファロース又はDEAEといったカチオ
ン交換樹脂上でのクロマトグラフィ;クロマトフォーカシング;SDS−PAG
E;硫酸アンモニウム沈降法;及び例えばSEPHADEX G−75を用いた ゲルろ過。
【0179】 残基が欠失、挿入又は置換されたHRG変異体は、変異によってひき起こされ
た特性の何らかの実質的変化を考慮に入れて、未変性HRGと同じ要領で回収さ
れる。例えば、細菌又はウイルス抗原といったもう1つのタンパク質又はポリペ
プチドとのHRG融合の調製が精製を容易にする。すなわち抗原に対する抗体を
含有するイムノアフィニティカラムを、融合体を吸着させるべく使用することが
できる。少なくとも1つの残りの免疫エピトープに結合させることによってHR
G変異体を吸収するためにウサギポリクローナル抗HRGカラムといったような
イムノアフィニティカラムを利用することができる。フェニルメチルスルフォニ
ルフルオリド(PMSF)といったようなプロテアーゼ阻害物質も同様に、精製
中のタンパク質分解による分解を阻害するために有用であり得、又、付随的な汚
染物質の増殖を防ぐため抗生物質を内含させることもできる。当業者であれば、
未変性HRGに適した精製方法には、HRG変異体の性質の変化を考慮に入れる
ため又は組換え型細胞培養の発現時点で修飾が必要となる可能性があるというこ
とがわかるだろう。
【0180】 H.HRCの共有結合修飾 本発明の範囲内には、HRGポリペプチドの共有結合修飾が含まれる。未変性
HRG及びHRGのアミノ酸配列変異体は両方共、任意に共有結合修飾される。
本発明の範囲内に含まれる共有結合修飾の1つのタイプは、HRGポリペプチド
フラグメントである。HRG−GDFといったような、最高約40個のアミノ酸
残基をもつHRGフラグメントは、化学合成によってか、又は全長HRGポリペ
プチド又はHRG変異体ポリペプチドの酵素的又は化学的切断によって適切に調
製される。HRG又はそのフラグメントのその他のタイプの共有結合修飾は、選
択された側鎖又はN又はC末端残基と反応する能力をもつ有機誘導体化剤と、H
RG又はそのフラグメントの標的アミノ酸残基を反応させることによって、分子
内に導入される。
【0181】 システイニル残基は、最も一般的に、クロロ酢酸又はクロロアセタミドといっ
たα−ハロアセテート(及び対応するアミン)と反応させられ、カルボキシメチ
ル又はカルボキシアミドメチル誘導体を提供する。システイニル残基もまた、ブ
ロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミドゾイル)プロピオン
酸、クロロアセチルリン酸、N−アルキルマレイミド、3−ニトロ−2−ビリジ
ルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリ安息香
酸塩、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール又はクロロ−7−ニトロベン
ゾ−2−オキサ1,3−ジアゾールとの反応によっても誘導体化される。
【0182】 ヒスチジル残基は、pH5.5〜7.0でジエチルピロカルボネートとの反応に よって誘導体化されるが、これは、この作用物質がヒスチジル側鎖に対し比較的
特定的なものであるからである。パラブロモフェナシルブロミドも同様に有用で
ある;この反応は好ましくは、pH6.0で0.1Mのカコジル酸ナトリウム内で実
施される。
【0183】 リジニル及びアミノ末端残基は、コハク酸又はその他のカルボン酸無水物と反
応させられる。これらの作用物質での誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転さ
せる効果をもつ。a−アミノ含有残基を誘導体化するためのその他の適切な試薬
としては、ピコリニミド酸メチルといったイミドエステル、リン酸ピリドキサー
ル;ピリドキサール;クロロボロヒドリド;トリニトロベンゼンスルフォン酸;
O−メチルイソ尿素;2,4−ペンタンジオン;及びトランスアミナーゼを触媒
とするグリオキレートとの反応が含まれる。
【0184】 アルギニル残基は、フェニルグリオキサル、2,3−ブタンジオン、1,2−
シクロヘキサンジオン及びニンヒドリンを含む、単数又は複数の従来の試薬との
反応によって修飾される。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基の
pKaが高いことを理由としてアルカリ性条件下で反応を行なう必要がある。さら に、これらの試薬は、リシン基ならびにアルギニンイプシロン−アミノ基と反応
することができる。
【0185】 チロシル残基の特異的修飾は、芳香ファミリージアゾニウム化合物又はテトラ
ニトロメタンとの反応により、チロシル残基の中にスペクトル標識を導入する上
で特に有利なものとして実行することができる。最も一般的には、それぞれO−
アセチルチロシル種及び3−ニトロ誘導体を形成するために、N−アセチルイミ
ジゾル及びテトラニトロメタンが用いられる。放射性免疫測定法において使用す
るための標識づけされたタンパク質を調製するため125I又は131Iを用いてチロ
シル残基がヨウ素化され、ここで上述のクロラミンT法が適している。
【0186】 カルボキシル側鎖(アスパルチル又はグルタミル)は、カルボジイミド(R′
−N=C=N−R′)との反応により選択的に修飾される。なお式中R及びR′ は、1−クロロヘキシル−3−(2−Mクオリニル−4−エチル)カルボイミド 又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイ
ミドといったような異なるアルキル基である。さらにアスパルチル及びグルタミ
ル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニル及びグルタミニル
残基に変換される。
【0187】 抗−HRG抗体を精製するための方法の中で使用するためのHRGを非水溶性
の支持体マトクリス又は表面に架橋させるため及びその逆のために、2官能作用
物質での誘導体化が有用である。一般に使用される架橋剤としては、例えば、1
,1−ビス(ジアゾアセチル)−2−フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N
−ヒドロキシスクシニミドエステル、例えば、4−アジドサリチル酸とのエステ
ル、3,3′−ジチオビス(スクシニミジルプロピオネート)といったようなジ
スクシニミジルエステルを含むホモ2官能イミドエステル、及びビス−N−マレ
イミド−1,8−オクタンといったような2官能マレイミドが含まれる。メチル
−3−((P−アジドフェニル)ジチオ)プロピオイミデートといった誘導体化
剤は、光の存在下で架橋を形成する能力をもつ光活性化可能な中間体を生み出す
。代替的には、タンパク質固定化のためには、U.S.3,969,287;3, 691,016;4,195,128;4,247,642;4,229,537;及 び4,330,440の中で記述されている反応性基質及び臭化シアノゲンで活性
化された炭水化物といったような反応性非水溶性マトリクスが利用される。
【0188】 グルタミニル及びアスパラギニル残基は、頻繁に、それぞれ対応するグルタミ
ル及びアスパルチル残基まで脱アミドされる。代替的には、これらの残基は、弱
酸性条件下で脱アミドされる。これらの残基の両方の形態が、本発明の範囲内に
入る。
【0189】 その他の修飾には、プロリン及びリシンのヒドロオキシル化、セリル又はトレ
オニル残基のヒドロキシ基のリン酸化、リシン、アルギニン及びヒスチジン側鎖
のα−アミノ基のメチル化(T.E.Ceighton:Proteins:Structure and Molecula
r Properties、W.H.Freeman & Co., San Francisco, pp. 79-86(1983)、N末端 アミンのアセチル化及びいずれかのC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる
【0190】 HRGは任意には、HRGに対し非相同なポリペプチドと融合させられる。非
相同ポリペプチドは、任意には、M13遺伝子III 又は遺伝子 VIII タンパク質
といったファージコートタンパク質の中に見い出されるようなアンカー配列であ
る。これらの非相同ポリペプチドは、HRGポリペプチドに対し側鎖を通して又
は末端残基を通して共有結合によって結合され得る。
【0191】 HRGは同様に、その未変性グリコシル化パターンを変えることによっても、
共有結合修飾されうる。これらの実施形態における単数又は複数の炭水化物置換
基は、一定の与えられた部位で単糖成分を付加、除去又は変異させることによっ
て、又はグリコシル化部位を付加又は欠失するようにHRG内の残基を修飾する
ことによって、修飾される。
【0192】 ポリペプチドのグリコシル化は、標準的にはN連結又はO連結のいずれかを受
けている。N連結されたというのは、アスパラギン残基の側鎖に対する炭水化物
の付着を意味する。Xがプロリンを除く任意のアミノ酸であるものとして、トリ
ペプチド配列、つまりアスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−トレオ
ニンは、アスパラギン側鎖に対する炭水化物半分の酵素的付着のための認識配列
である。かくして、ポリペプチド内にこれらのトリペプチド配列のいずれかの存
在が、潜在的なグリコシル化部位を作り出す。O連結されたグリコシル化という
のは、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリシンも同様に使用できるも
のの、最も一般的にはセリン又はトレオニンであるヒドロキシアミノ酸に対する
、Nアセチルガラクトースアミン、ガラクトース又はキシロースといった糖のう
ちの1つの付着のことを意味する。
【0193】 グリコシル化部位は、(N連結されたグリコシル化部位については)上述のト
リペプチド配列のうち単数又は複数のものを含むべくそのアミノ酸配列を変化さ
せることによってHRGに付加される。この変化は、(O連結されたグリコシル
化部位については)HRGに対して単数又は複数のセリン又はトレオニン残基を
付加するか又は置換することによっても加えることができる。簡易的には、好ま
しくは、HRGは、DNAレベルでの変更、特に、所望のアミノ酸へと翻訳され
るコドンを生じさせるように、予め選択された塩基においてHRGをコードする
DNAを突然変異させることによって、変化させる。
【0194】 HRGに対するグリコシドの化学的又は酵素的結合は、炭水化物置換基の数を
増大させる。これらの手順は、N及びO連結されたグリコシル化の能力をもつ宿
主細胞内でのポリペプチドの産生を必要としないという点で有利である。使用さ
れるカップリング様式に応じて、糖を、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b
)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基例えばシステイン基、(d
)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、トレオニン又はヒドロキシプロリン基、
(e)芳香ファミリー基、例えばフェニルアラニン、チロシン又はトリプトファ
ン基、又は(f)グルタミンのアミド基に付着させることができる。これらの方
法は、1987年9月11日に公示されたWO87/05330及び Aplin 及び
Wriston (CRC Crit. Rev. Biochem., pp.259-306(1981))中で記述されている 。
【0195】 HRG上に存在する炭水化物部分も同様に、化学的又は酵素的に除去される。
化学的脱グリコシル化には、化合物トリフルオロメタンスルフォン酸又はそれと
等価の化合物に対するポリペプチドの暴露が必要とされる。この処理は結果とし
て、ポリペプチドを無傷の状態に残しながら、連結している糖(N−アセチルグ
ルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く全ての又は大部分の糖の切
断をもたらす。化学的脱グリコシル化については Hakimuddin et al.(Arch. Bio
chem. Biophys., 259・52(1987))及び Edge et al.(Anal. Biochem.,118;131(19
81))によって記述されている。炭水化物部分は、Thotakura et al.(Meth, Enzy
mol.,138;350(1987)によって記述されているようにさまざまなエンド及びエキソ
グリコシダーゼによりHRGから除去される。
【0196】 グリコシル化は同様に、Duskin et al.(J. Biol. Chem. 257;3105(1982))に よって記述されているようにツニカマイシンによって抑制される。ツニカマイシ
ンは、タンパク質−N−グリコシドリンケージの形成を遮断する。
【0197】 HRGは同様に、U.S.4,640,835;4,496,689;4,3
01,144;4,670,417;4,791,192又は4,179,33
7に記述されている要領で、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレング
リコール又はポリオキシアルキレンといったさまざまな非タンパク様の重合体に
HRGをリンクさせることによっても修飾され得る。
【0198】 非膜結合HRGの in vivo 循環半減期を延長させる1つの好ましい方法は、 ポリエチレングリコール(PEG)といったような、半減期の延長を付与する重
合体にそれを接合させることにある。(Maxfield, et al, Polymer 16, 505-509
(1975): Bailey, F.E., et al, in Nonionic Surfactants (Schick, M. J., ed.
) pp. 794-821, 1967); (Abuchowski, A. et al., J. Biol. Chem. 252, 3582-3
586, 1977; Abuchowski, A. et al., Cancer Biochem. Biophys. 7, 175-186, 1
984); (Katre, N. V. et al., Prov. Natl. Acad. Sci., 84, 1487-1491, 1987;
Goodson, R. et al., Bio Technology, 8, 343-346, 1990)。PEGに対する接 合は、免疫原性及び毒性を低減させたものとして報告されてきた(Abuchowski,
A. et al., J. Biol. Chem., 252, 3578-3581, 1977)。
【0199】 HRGは、例えば、コアセルベーション技術又は界面重合によって調製された
マイクロカプセル(例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−
マイクロカプセル及びポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)内、コ
ロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ
エマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)内又はマイクロエマルジョン内に捕
獲されていてもよい。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Science
s, 第16版、Osol, A., Ed.,(1980)の中で開示されている。
【0200】 当業者であれば、意図された目的のために最適な変異体を選択する目的で変異
体スクリーニングを行なうことができるだろう。例えば、所定の抗原又はHER
2レセプターに対する親和力の変化といったようなHRGの免疫学的特性の変化
は、未変性HRG(特に未変性HRG−GFD)といったような標準又は対照を
用いた競合タイプのイムノアッセイによって測定される。酸化還元又は熱安定性
、疎水性、タンパク質分解による分解に対する感受性、組換え型細胞培養又は血
漿中の安定性又は担体との又は多重体への凝集傾向といったようなタンパク質又
はポリペプチドの特性のその他の潜在的修飾は、当該技術分野において周知の方
法によって検定される。
【0201】 I.ヘレグリン抗体の調製 本発明の抗体は、日常的スクリーニングによって得られ、ポリクローナル抗体
、モノクローナル抗体及びその断片を内含する。
【0202】 ポリクローナル抗体は好ましくは、関連する抗原及びアジュバントを多数回皮
下(sc)又は腹腔内(ip)注入することによって、動物の体内で発生させられる
。例えばマレイミドベンゾイル スルホスクシニミドエステル(システイン残基
を通しての接合)、N−ヒドロキシスクシニミド(リシン残基を通して)、グル
タルアルデヒド、コハク酸無水物、SOCl2又はR1N=C=NR(式中、R及
びR1は異なるアルキル基である)といった2官能性又は誘導体化剤を用いて、 例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシチログロブリ
ン又はダイズトリプシン阻害物質といったような、免疫化されるべき種の中で免
疫原性であるタンパク質に対し、関連する抗原を接合させることが有利であり得
る。
【0203】 動物を、例えば3体積のフロイント完全アジュバントと100μg又は5μgの
タンパク質又は接合体(それぞれウサギとマウスについて)を組合わせ多数の部
位において皮肉に溶液を注入することによって、抗原、免疫原性接合体又は誘導
体に対し免疫化させる。1カ月後、多数の部位での皮下注入によりフロイント完
全アジュバント内のペプチド又は接合体を当初の量の1/5〜1/10 の量だけ用 いて動物を追加免疫に付す。7〜14日後に、動物から採血し、血清を抗体力価
について検定する。力価が安定状態に入るまで動物を追加免疫に付す。好ましく
は、同じ抗原のものではあるものの異なるタンパク質に対してかつ/又は異なる 架橋試薬を通して接合された接合体を用いて、動物に追加免疫を施す。接合体は
同様に、タンパク質融合体として組換え型細胞培養の中で作ることもできる。同
じく、ミョウバンといったような凝集剤を使用して免疫応答を増強させることも
適当である。
【0204】 モノクローナル抗体は、kohler et al, Nature, 256:495(1975)
によって最初に記述されたハイブリドーマ法を用いて作ることもできるし、或い
は又組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作ることもでき
る。
【0205】 ハイブリドーマ方法においては、マウス又はハムスターーやマカクモンキーと
いったその他の適切な宿主動物を、免疫感作のために使用されるタンパク質に特
異的に結合する抗体を産生するか又は産生する能力をもつリンパ球を惹起するた
めに、上述のように免疫感作する。代替的には、リンパ球を in vitro で免疫感
作することもできる。リンパ球は、次にポリエチレングリコールのような適切な
融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding
, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice;p59〜103(Academic Pre
ss, 1986)。
【0206】 かくして調製されたハイブリドーマ細胞は、未融合の親骨髄腫細胞の増殖又は
存続を阻害する単数又は複数の物質を好ましくは含有する、適切な培地内で播種
され増殖させられる。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ヒポキサンチン−グアニン−
ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)が欠如している
場合には、ハイブリドーマのための培地は標準的にヒポキサンチンアミノプテリ
ン及びチミジン(HAT培地)を内含することになり、これらの物質はHGPR
T欠損細胞の増殖を妨げる。
【0207】 好ましい骨髄種細胞は、効果的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体
の安定した高レベル産生を支援し、HAT培地といったような培地に対する感受
性の細胞である。これらのうち、好ましい骨髄腫細胞系統は、Salk Institute C
ell Distribution Center, San Diego, Califormia, USAから入手可能なMO
P−21及びM.C.−11マウス腫瘍及び American Type Culture Collection,
Rockville, Maryland USA から入手可能なSP−2又はX63−Ag8−65 3細胞から誘導されたもののようなマウスの骨髄腫系統である。ヒト骨髄腫及び
マウス−ヒト異種骨髄腫細胞系統もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生につい
て記述されてきた(Kozbor, J. Immunol., 133:300)(1984); Brodeur et al., M
onoclonal Antibody Production Techiques and Applications pp51〜63(Marce
l Dekker, Inc., New York., 1987)).
【0208】 ハイブリドーマ細胞が中で増殖しつつある培地を、抗原に対し導かれたモノク
ローナル抗体の産生について検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によっ
て産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、放射性免疫検定法(RIA)
又は酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)といったような in vitro 結合検定
又は免疫沈降法によって測定する。
【0209】 モノクローナル抗体の結合親和力は、例えば、Munson et al., Anal. Biochem
., 107: 220(1980)の Scatchard分析によって測定され得る。
【0210】 所望の特異性、親和力及び/又は活性をもつ抗体を産生するハイブリドーマ細
胞が同定した後、希釈手順を制限することによってクローンをサブクローニング
して、標準的方法で増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies:
Principles and Practice、 p59〜103(Academic Press1986))。この目的のため に適した培地としては例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地が含まれ
る。さらにハイブリドーマ細胞を、1匹の動物中で腹水腫瘍として in vivo で 増殖させることが可能である。
【0211】 サブクローンによって分泌モノクローナル抗体は、例えばプロテインA−SE
PHAROSE、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、ゲル電気球動法、透
析、又はアフィニティクロマトグラフィといったような従来の免疫グロブリン精
製手順により、培地、腹水又は血清から適切に分離される。
【0212】 モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を用いて容易に単離及
びシークエンスされる(例えば、モノクローナル抗体のH鎖及びL鎖をコードす
る遺伝子に特異的に結合する能力をもつオリゴヌクレオチドプローブを用いるこ
とによる)。ハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの好ましい供給源として役立
つ。ひとたび単離すれば、DNAを発現ベクター内に入れることができ、これら
のベクターは次に、組換え型宿主細胞内でモノクローナル抗体を合成させるべく
E. coli細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又
は、そうでなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞といった
ような宿主細胞内にトランスフェクションされる。以下では、抗体の組換え型産
生について詳述する。
【0213】 抗体を産生するハイブリドーマ細胞系を、HER2/HER3レセプターに結 合する抗体について培養上清をスクリーニングすることによって同定する。これ
は可溶性レセプター調製物を用いる従来の免疫検定によってか又は細胞結合型レ
セプター及び標識された候補の抗体を用いるFACSによって定型的に達成され
る。アゴニスト抗体は、好ましくは、上述したHRGチロシン自己リン酸化検定
における自己リン酸化を刺激する抗体である。
【0214】 ハイブリッド細胞系統は、細胞培地内で in vitro 培養状態に維持され得る。
本発明の細胞系統は、ヒポキサンチン−アミノプテリンチミジン(HAT)培地
中の連続的細胞系統を含む組成物の中で選択されかつ/又は維持され得る。実際
には、ハイブリドーマ細胞系統がひとたび確立されると、これを栄養的に適切な
種々の培地上に維持することができる。その上、ハイブリッド細胞系統は、液体
窒素下での凍結及び貯蔵を含め、あらゆる数の従来の方法で貯蔵及び保存するこ
とができる。凍結された細胞系統は、モノクローナル抗体の合成及び分泌の再開
により、無限に再生及び培養させることができる。分泌された抗体は、沈降、イ
オン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィなどといった従来の
方法により組織培養上清から回収される。本書で記述した抗体は同様に、場合に
よっては、例えばエタノール又はポリエチレングリコール沈降手段といったよう
にこれまでプールされた血漿からこれらの免疫グロブリンを精製するのに使用さ
れてきたIgG又はIgMの精製のための従来の方法によって、ハイブリドーマ
細胞培養からも回収される。
【0215】 ヒト抗体を使用することができ、これが好ましい。かかる抗体は、ヒトハイブ
リドーマを使用することにより得られる(Cote et al., モノクローナル抗体と ガン療法 Alan R. Liss, p.77(1985))。マウス抗HER2/HER3可
変領域及び適当な生物活性(例えばヒト補体を活性化しADCCを媒介する能力
)をもつヒト定常領域を含有するキメラ抗体、 (Cabilly et al., U.S.4,816,
567, Morrison et al., Proc. Natl, Acad. Sci., 81:6851(1984); Neuberger e
t al., Nature 312: 604(1984); Takeda et al. Nature 314; 452(1985))が、従
来のCDR移植方法(Riechmann et al., Nature 332: 333-327(1988); EP03284
04A1; EP02394000 A2)により産生させるヒト化抗体と同様、本発明の範囲内に入
る。
【0216】 モノクローナル抗体の生成をバイパスする抗体分子(Fab又は可変領域断片)
の抗原結合領域の組換え型DNAバージョンを作り出すための技術も同様に、本
発明の実施の中に包含されている。免疫感作された対象から採取された免疫系細
胞から抗体特異的メッセンジャーRNA分子を抽出し、これらを相補的DNA(
cDNA)に転写し、cDNAを細菌発現系内にクローニングし、所望の結合特
性について選択する。Scripps/Stratagene法では、発現されたFabタンパク質を
(細菌細胞膜と細胞壁の間の)細胞膜周辺腔まで移動させるか又は分泌されるよ
うにするリーダー配列を含有するバクテリオファージラムダベクター系が使用さ
れる。所望の特性をもつレセプターと結合するものを同定するために、多数の機
能的Fab フラグメントを迅速に生成しスクリーニングすることが可能である。 代替的には、Hoogenboom, Tibtech February 1997(vol.15); Neri et al., Cell
Biophysics 27; 47-61(1995); Winter et al., Annu. Rev. Immunol. 12; 433-5
5(1994);及び Soderlind et al., Immunol. Rev. 130; 109-124(1992)の中で記
述されている、ファージディスプレイ技術及びその中で記述されている参考文献
ならびに Lowman et al. Biochem. 30: 10832-10838(1991) の中で記述されてい
る1価のファージディスプレイ技術によって、抗体を調製することが可能である
【0217】 2.ヘレグリン及びアゴニスト抗体の治療的組成物、投与及び利用 HRGは、本発明におてい、例えば肺上皮細胞増殖すなわち上皮細胞増殖、分
裂及び分化を誘発し、肺細胞による界面活性プロテインAの産生を増大させるた
めに使用されている。これらの効果は、本発明の方法により、組織損傷に付随す
る疾患状態、例えば、慢性気管支炎、気腫、ぜん息といったようなその亜型を含
めた慢性閉塞性肺疾患(COPD);新生児呼吸困難症候群、胎便誤えん症候群
、新生児の慢性肺疾患、先天性横隔膜ヘルニア、などを含む新生児肺疾患;煙又
は化学物質の吸入、吸引、放射線に起因する肺炎、臨溺死、膵のう胞性繊維症を
含む急性肺損傷;及び外科的創傷及び切除術に付随する損傷、潰瘍、病巣及び組
織引裂を含むその他の上皮細胞外傷を治療することを可能にしている。
【0218】 本発明の方法を用いた治療のための好ましい療法は、COPDの治療である。
COPDは、せき、たん、呼吸困難、気流制限及び気体交換機能障害により特徴
づけられる一連の慢性炎症性の呼吸器系統疾患である。COPDは、高齢者に一
般的なものであり、肺機能が漸進的に衰弱するというパターンを呈する。標準的
には、患者は、濃厚なたん及び付随する気体交換の劣化を伴うせきにまで悪化す
る、透明なたんを伴う慢性のせき症状を示すことになる。これらの病状は、心臓
疾患そして死に至ることが多い。COPDを患う多くの人が、気腫と共に気管支
炎を有する。本発明は、COPD患者における肺破壊プロセスを止め、減速させ
かつ/又は逆行させることから、きわめて重要である。この作用において、本発
明の方法は、症状は治療されるものの根底にある肺細胞の組織及び機能の破壊は
治療されないCOPD用の標準的治療とはきわめて異なるものである。
【0219】 しかしながら、本発明の方法は、COPDといった肺疾患の治療のためのその
他の療法と組合わせたり、それらと共に投与することができるものである。例え
ば、本発明の方法は、臭化イプラトロピウム(Boehringer Ingleheim から入手 可能なATROVENT)又はチオトロピウムといったような抗コリン作動性気
管支拡張剤、アルブテロール(Schering から入手可能なPROVENTIL) 又はサルメテロールといったようなβアドレナリン作動性レセプターアゴニスト
、プレドニゾンといったステロイド、レチノイン酸、ホスホジエステラーゼ阻害
物質、エンドテリンアンタゴニスト、メタロプロテイナーゼ阻害物質、エラスタ
ーゼ阻害物質、遊離ラジカル阻害物質、セリンプロテイナーゼ阻害物質、好中性
エラスターゼ阻害物質、肺界面活性剤組成物例えばベラクタント(Ross Labs か
ら入手可能なSURVANTA)、PDGF、FGF、EGF、増殖ホルモン又
はその他のタンパク質増殖因子など又はそれらの組合せの投与と合わせて使用す
ることができる。HRG及び付加的化合物の相対的量は、患者の個々の症状を考
慮して医師が容易に決定できる。これらの組成物及びその中の成分の相対的量は
、患者の特定的ニーズに対処すべく必要に応じて変更され、肺機能についての従
来の物理化学的及び医学的テストを用いて監視され調製されることになる。
【0220】 HRG又はアゴニスト抗体の治療向け製剤は、所望の純度をもつHRGタンパ
ク質を生理学的に受容可能な任意の担体、賦形材又は安定化剤(Remington's Ph
amaceutical Sciences. 前出)と混合することによって、凍結乾燥されたケーキ
又は水溶性液の形で貯蔵向けに調製される。受容可能な担体、賦形材又は安定化
剤は、利用される用量及び濃度でレシピエントにとって非毒性であり、リン酸塩
、クエン酸塩及びその他の有機酸といった緩衝液;アスコルビン酸を含む酸化防
止剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン
又は免疫グロブリンといったようなタンパク質;ポリビニルピロリドンといった
親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシンと
いったアミノ酸;グルコース、マンノース又はデキストリンを含む、単糖類、二
糖類及びその他の炭水化物;EDTAといったキレート化剤;マンニトール又は
ソルビトールといった糖アルコール;ナトリウムといった塩形成対イオン;及び
/又はTWEEN、PLURONICS又はポリエチレングリコール(PEG)
といった非イオン性界面活性剤を内含する。
【0221】 in vitro 投与に使用すべきHRG又はアゴニスト抗体は、無菌でなくてはな
らない。これは、凍結乾燥及び再構成の前又は後に、無菌ろ過膜を通してろ過す
ることによって容易に達成される。HRG又は抗体は、通常は、凍結乾燥形態又
は溶液の形で貯蔵されることになる。
【0222】 治療用HRG又は抗体組成物は、無菌の出入り口をもつ容器、例えば皮下注射
針で穴あけできるストッパーを有する静脈内溶液用袋又はバイアルの中に入れら
れる。
【0223】 HRG又は抗体投与の経路は、既知の方法例えば、静脈内、腹腔内、大脳内、
筋肉、眼内、動脈内経路、又は鼻又は肺への粉末又は液体エアゾル投与、又は病
変内経路によるか又は以下に記すような徐放システムによる注入又は輸注といっ
た、既知の方法に従ったものである。HRGリガンドは、輸注又は静脈内ボーラ
スによって連続的に投与され得る。
【0224】 HRG、HRG変異体又は断片及びアゴニスト抗体は、既知の技術を用いて噴
霧乾燥又は噴霧凍練乾燥させることができる(Yeo et al, Biotech. and Bioeng
., 41: 341-346(1993); Gombotz et al., PCT/US90/02421).
【0225】 徐放性調製物の適切な例としては、タンパク質を含有する固体疎水性重合体の
半透性マトリクスがあり、これらのマトリクスは、成形品例えばフィルム又はマ
イクロカプセルの形態をとる。徐放性マトリクスの例としては、ポリエステル、
ハイドロゲル(例えば、Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277
(1981)及び Langer, Chem., Tech., 12: 98-105(1982)によって記述されている
ようなポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリビニルアルコール
))、ポリラクチド(U.S. 3,773,919、EP 58,481)、L−グルタミン酸とガン マ−L−グルタメートの共重合体(Sidman et al., Biopolymers, 22: 547-556
(1983))、非分解性エチレン酢酸ビニル(Langer et al.,前出)、分解性乳酸−
グリコール酸共重合体 例えばLUPRON DEPOT(乳酸−グリコール酸 共重合体と酢酸ロイプロリドから成る注入可能なマイクロスフェア)及びポリ−
D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸(EP.133,988)が含まれる。エ
チレン酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸は100日以上の間分子を放出すること
ができるが、いくつかのヒドロゲルはそれより短期間、タンパク質を放出する。
カプセル化されたタンパク質が長時間体内にとどまっている場合、これらのタン
パク質は、37℃での水分に対する露呈の結果として、変性又は凝集し、その結
果、生物活性が喪失したり、免疫原性が変化する可能性がある。関与するメカニ
ズムに応じて、タンパク質の安定化のために合理的な戦略を考案することができ
る。例えば、凝集メカニズムがチオスルフィド相互交換を通しての分子間シグナ
ル配列結合形であることがわかった場合、安定化は、スルフヒドリル残基に修正
し、酸性溶液から凍結乾燥させ、含水量を制御し、適切な添加剤を用い、特異的
重合体マトリクス組成物を開発することによって達成することができる。
【0226】 徐放性HRG又は抗体組成物は、同様に、リポソームに捕獲されたHRG又は
抗体をも内含する。HRG又は抗体を含有するリポソームはそれ自体既知の方法
によって調製される:DE3,218,121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U
SA. 82: 3688-3692(1985); Hwang et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA.77: 403
0-4034(1980); EP52,322; EP 36,676; EP 88,046; EP 143,949; EP 142,641:日 本特許出願 83−118008;U.S.4,485,045 及び4,544,545;及びEP 102,3
24。通常リポソームは、脂質含有量が約30mol%コレステロールより多い小さ な(約200〜800オングストローム)単一層タイプのものであり、選択され
た割合は、最適なHRG療法のために調製される。循環時間が増強されたリポソ
ームについては、米国特許第5,013,536号に開示されている。
【0227】 治療用に利用すべきHRG又は抗体の有効量は、例えば、治療目的、投与経路
及び患者の状態によって左右される。同様に、HRGポリペプチドの量は一般に
アゴニスト抗体の量より少なくなる。従って、セラピストは最適な治療効果を得
るために必要とされるように、用量を滴定し投与経路を修正することが必要であ
ろう。標準的な一日の用量は、上述の要因に応じて約1μg/kg〜約1mg/kgの範 囲内であり、最高で100mg/kgであると考えられる。標準的には、臨床医は、 所望の効果を達成する用量に達するまでHRG又は抗体を投与することになる。
この療法の進捗は、例えば界面活性プロテインA産生といった従来の検定により
容易に監視される。
【0228】 さらにもう1つの実施形態においては、当該技術分野において周知の技術(生
検など)を用いて正常な上皮細胞標本を得るため、哺乳動物組織から上皮細胞を
得るか又は分離することができる。この標本は、このとき、標本中での上皮細胞
の増殖及び/又は増殖を誘発し、それにより初代上皮細胞の個体群を拡大させる
目的でヘレグリンタンパク質で処置され得る。標準的には、ヘレグリンは、 in
vitro 上皮細胞培養に対し、約0.1〜約100nM好ましくは1〜50nMの濃度 で添加されることになる。所望する場合には、初代上皮細胞は、上皮細胞個体群
を充分に拡大させる目的で数世代にわたり、 in vitro で培養されうる。上皮細
胞は、以上で論述したとおり、哺乳動物の細胞培養に適した条件下で培養される
。拡大後、拡大した標本は、哺乳動物組織を再度上皮形成させる目的で、哺乳動
物の体内に再導入される。例えば、損傷を受けた肺組織をより迅速に再上皮形成
させかくして肺機能を再度確立するために、気腫又は慢性閉塞性肺疾患を患う患
者から分離した肺上皮細胞を獲得し、拡大させ、肺の中に再導入することが可能
である。拡大された細胞は、当該技術分野において周知の方法を用いて吸引又は
挿管により肺の中に再導入することができる。
【0229】 HRG−α又はHRG全般に関して本書に記述した方法及び手順は、HRG−
β1、HRG−β2及びHRG−β3といったその他のHRG及びその変異体、
ならびに抗体に対しても同様に適用可能である。以下の例は、制限的な意味のな
い例として提供されている。
【0230】
【実施例】
実施例1−ヘレグリンの調製 (a)米国特許第5,367,060に記載されているように、ヘレグリンH
RG−α、HRG−β1、HRG−β2、HRG−β2様、およびHRG−β3
を単離し、クローン化し、発現させて、細胞培養培地から単離した。 (b)SMDFポリペプチドを、WO96/15244に記載されているよう
に調製した。 (c)γ−HRGポリペプチドを、以下に記載するように調製して特徴づけた
。 試薬類:前述のごとく(Sliwcowski et al. J. Biol. Chem. 269: 14661-1466
5(1994))、HRGβ1(177-244)のEGF様ドメインをE.coil中で発現さ
せ、精製し、放射性ヨウ素化した。抗HER2モノクローナル抗体2C4および
4D5は、すでに別に記載されている(Fendly et al. Cancer Reserch 50: 155
0-1558(1990))。
【0231】 HER3およびHER4−免疫アドへジン:独自のMlI部位をヒトIgGの
H鎖を発現するプラスミドの免役グロブリンのヒンジドメインをコードする部分
に組み込んだ。MlI部位を、HER発現プラスミドのセットの、これらのレセ
プターーのECD/TM接合部をコードする部分にも組み込んだ。全ての突然変
異はKunkel法(Kunkel,T., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82:488(1985
))を用いて行われた。MlI部位は、適当なHER−IgG融合構築物を作る のに用いられた。種々のHER−IgGキメラの融合接合部は:HER2につい
ては、E646 HER2−(TR)−DKTH224 VH;HER3については、L636 HER3 −(TR)−DKTH224 VH;HER4については、G640 HER4−(TR)−DK
TH224 VHである。保存されたTR配列は、MlI部位よりもたらされている。 最終発現構築物は、真核生物での発現がCMVプロモーターーによって駆動され
る、pRK型プラスミド骨格(backbone)(Gorman et al., DNA Prot. Eng. Te
ch. 2:3-10(1990))に挿入した。
【0232】 in vitro実験のためのタンパク質を得るため、標準的なリン酸カルシウム法を
用いて、適当な発現プラスミドを付着HEK−293細胞にトランスフェクショ
ンした(Gorman et al., supra and Huang et al., Nucleic Acids Res. 18:937
-947(1990)。血清含有培地を、トランスフェクション後15時間後に血清なしの
培地と置換して、トランスフェクションされた細胞を5〜7日インキュベートし
た。結果として生じたならし培地を回収し、プロテインAカラム(1mlファルマ
シアHiTrap)に通した。精製したIgG融合体を、0.1Mクエン酸(pH
4.2)で1MトリスpH9.0を含むカラムの中で溶出した。溶出したタンパク
質を続いてPBSに対して透析し、Centri-prep-30フィルター(Amicon)を用い
て濃縮した。グリセロールを、最終濃度が25%となるように添加して、この材
料を−20℃で保管した。材料の濃度を、Fc−ELISAによって測定した。
【0233】 細胞培養:ヒト乳癌細胞系統MDA−MB−175、MDA−MB−231、
SK−BR−3およびMCF7を、American Type Culture Collectionから得 て、10%非働化FBS、2mMグルタミンおよび10%ペニシリン−ストレプト
マイシンを添加した、F12Hamおよび Dullbecco改変 Eagle培地(DMEM)の50:5
0混合物中に保持した。
【0234】 cDNAライブラリーの作成および特徴づけ:全RNAをMDA−MB−17
5細胞から、グアニジンイソチオシアナート−セシウムクロリド法(Sambrook e
t al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual(New York: Cold Spring Har
bor Laboratory Press, (1989))を用いて精製した。ポリ(A)+RNAを、製 造元の推奨のとおりにオリゴ(dT)ダイナビーズ(DYNAL)を用いて単離
した。第1および第2鎖の合成は、Gibco BRLのcDNA合成キットを用いて行 った。AmershamのcDNAクローニングシステムを用いた場合には、λgt10
組換えcDNAを作成した。In vitroでのパッケージングを、GigapackIIパッケ
ージングエキストラクト(Stratagene)を用いて行った。PstI-XhoIのHRGβ 3cDNA断片(ヌクレオチド144〜618)をランダムプライミングによっ
て標識し、1×106個のプラークをスクリーニングした。陽性クローンを、第 2および第3のスクリーニングによって確認および精製した。ファージDNAを
、BamHI断片として単離し、pBluescriptSK-の、対応する部位にサブクロー ニングした。クローン5をSequence version 2.0 DNAシーケンスキット(Uni
ted States Biochemicals社)を用いて完全にシーケンスした。両鎖ともシーケ ンスした。
【0235】 細菌発現系:クローン5のcDNA断片(ヌクレオチド1690〜2722)
をpET−32TRX 融合ベクター(Novagen)にサブクローニングした。この
BglII-BglII断片を、pET32aプラスミドのBamHI部位に挿入した。E.co
ilにおけるtrxγ−HRG(アミノ酸455〜768)タンパク質の発現は
、製造元の推奨のとおりに誘導した。
【0236】 組換えγ−HRGの精製:trxγ−HRGを発現しているE.coil細胞
を回収し、50mMのTrisHCl(pH8)に9ml/gで懸濁した。リゾチーム
を、最終濃度が0.2mg/mlになるように添加し、溶液を氷上で1時間攪拌した
。DnaseI(10μg/μl)およびMgCl2(4mM)を添加した。次に、溶液 を30分間音波処理した後、細胞ペレットを回収した。ペレット画分を、1/1
0量の1MNa2SO3および1/10量の0.2MNa246を添加して亜硫酸 分解した。反応は、室温で1.5時間進行させ、タンパク質を(登録商標)High
Load Superdex 75実験等級カラム(Pharmacia)を用いたゲルろ過クロマト グラフィーで精製した。リフォールディング再生を、1mMシステインを添加して
開始させ、10mMメチオニンを抗酸化剤として添加し、室温で一晩インキュベー
トした。タンパク質濃度を、量的アミノ酸解析によって測定した。
【0237】 ノーザンおよびサザンハイブリダイゼーション:全RNAを、Chomczynski et
al.(Anal. Biochem. 162: 156-159(1987))の方法によって単離した。ポリ( A)+を、オリゴd(T)セルロースカラム(Qiagen)を製造元の推奨のとおり に用いて単離した。RNAを、0.8%ホルムアルデヒド/1%アガロースゲル
で変性およびサイズ分画し、ナイロンメンブレン(Hybond, Amersham社)上にト
ランスファーした。RNAを、UV固定した(UV Stratalinker、Stratagene社)
。プレハイブリダイゼーションを、42℃で、50%ホルムアミド/1%SDS
/1MNaCl、10%デキストラン硫酸および100μg/ml ニシン***DN
A中で少なくとも2時間行った。HRGβ3のEGF様ドメインに対する相補的
配列を有する制限酵素断片、またはγ−HRGの独自の配列(ヌクレオチド12
38〜1868)をコードしているKpnI−AvaIIcDNA断片、を用いた
cDNAプローブを、ランダムプライミング(Prime-It II、 Stratagene社)に よって放射線標識した。ハイブリダイゼーションを、42℃の、32P標識した断
片を含む同じ溶液中で16時間行った。ブロットを、2×SSC/1%SDSで
、室温で数回洗浄し、同じ溶液で65℃で20分間洗浄して、最後に0.2×S
SC/0.1%SDSで室温で15分間洗浄した。ブロットを空気乾燥し、増強
スクリーンと一緒に(登録商標)Du Pont Reflectionフィルムに−80℃で7〜
40時間露光した。脾臓、胸腺、前立腺、睾丸、卵巣、小腸、結腸、末梢血白血
球、心臓、脳、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓のポリ(A)+2μgを
含む、ヒト多組織ノーザンブロット(Clontech社)を、放射線標識したγ−HR
GcDNAプローブ(ヌクレオチド841〜1447)と、製造元の推奨のとお
りにハイブリダイズさせた。
【0238】 MDA−MB−175およびMDA−MB−231ゲノムDNAを、Sambrook
et al(上記)に記載されたように単離した。DNAを、異なる制限酵素で消化
し、トランスファー前に0.25NのHClで処理して、ナイロンメンブレン(H
ybond, Amersham社)上にトランスファーした。γ−HRGのBglII−Nde IcDNA断片も、ランダムプライミングによって放射線標識して、ハイブリダ
イゼーションプローブとして用いた。プレハイブリダイゼーションを、6×SS
C/5×デンハルト溶液/0.75%SDS、10%デキストラン硫酸および1
00μg/mlニシン***DNA中で、68℃で4時間行ない、放射線標識したプ ローブとのハイブリダーゼーションを一晩行った。0.2×SSC/0.1%S
DS、68℃の洗浄工程を加えたのを除いて、ノーザンブロットに対するのと同
じ洗浄条件を用い、検出は上述したとおりに行った。
【0239】125 I−HRG結合アッセイ:結合アッセイを、Nunc 分割切断ストリップ ウェル中で行った。プレートを、4℃で、カルボン酸バッファー(pH9.6)中
のヒツジ抗ヒト抗体(Boehringer mannheim)5μg/ml100μlでコートした 。プレートを、洗浄バッファー(PBS/0.05% Tween−20)で2 回洗浄し、1%のBSA/PBS100μlで30分間ブロックした。バッファ ーを除去し、それぞれのウエルを、1%のBSA/PBS中のIgG融合タンパ
ク質15ngで、激しく振とうしながら1.5時間インキュベートした。プレート
を洗浄バッファーで3回洗浄し、拮抗的結合を、激しい振とう下において種々の
量のγ−HRGおよび125I−HRGβ1を加えることにより行った。1.5〜 2時間インキュベーションした後、ウェルを洗浄バッファーで3回洗浄し、排液
して、個々のウェルを100シリーズIso Data γ−カウンターで計数した。
【0240】 チロシンリン酸化アッセイ:MCF7細胞を、24ウェルプレートに1×105 個/ウェルで、FBS10%を含むF12/DMEM中で培養した。48時間後
、細胞を、無血清のF12/DMEMで洗浄し、6時間血清飢餓状態にした。種
々の濃度の、細菌に発現させた切断されたγ−HRG(すなわち、trxγ−H
RG0pM、22pM、66pM、200pMおよび600pM)またはMDA−MB−1
75細胞の未精製調製培地を、結合バッファー(F12/DMEM中にBSA0
.1%)中に調製して、それぞれのウエルに添加した。室温で8分間のインキュ
ベーションの後、培地を注意深く吸引し、反応を、100μlのサンプルバッフ ァー(SDS5%、2−メルカプトエタノール0.25%、Tris−HClpH
6.8 25mM)を添加して中止した。それぞれのサンプルの20μlを、4〜 12%のグラジエントゲル(Novex)中で分画し、ニトロセルロースメンブレン 上に電気泳動的にトランスファーした。抗ホスホチロシン(4G10、UBI社
、1μg/mlで使用)免疫ブロットを現像し、分子量180kDaまでの顕著な反応
性バンドを、反射型濃度計で計量した。
【0241】 MDA−MB−175細胞の調製培地の生産および特徴づけ 細胞を、T175フラスコ中に播種し、集密度が70〜80%に達するまで(
2.5×107個/フラスコまで)培養した。続いて、細胞をPBSで洗浄し、 無血清のF12/DMEM倍地中で3〜4日培養した。その後、培地を回収し、
YM10 Diaflo 限外ろ過膜(Amicon)と一緒に限外ろ過細胞を用いて
ろ過および濃縮した。γ−HRGを、非還元条件下でのウエスタンブロット解析
により、MDA−MB−175細胞の調製培地中に可視化した。γ−HRGを、
C4逆相カラムを用いて部分的に精製した。全長HRGβ1を発現するCHO(
レーン1)および準純粋γ−HRGを発現するCHO(レーン2)を電気泳動し
、ブロットにHER2/HER4 IgGヘテロダイマーをプローブとして結合
させウエスタンブロットを現像した。部分的に精製した上清を含むレーンでは6
4kDaまでのバンドが見られ、それに対し、全長HRGβ1を発現したCHOで は45kDaタンパク質として移動した。
【0242】 クリスタルバイオレットでの細胞増殖アッセイ 腫瘍細胞系統を、96ウエルプレートに、以下の密度:MDA−MB−175
については2×104個/ウエルおよびSK−BR−3については1×104個/
ウェルで培養した。培地は、FBS1%を含有し、細胞を、2時間付着させた。
モノクローナル抗体、免疫接着剤(10μg/ml)または培地のみ、を添加し、 細胞を37℃で2時間インキュベートした。免疫接着を中和するため、γHRG
β1177-244を最終濃度1nMまたは100nMで添加し、細胞を4日間インキュベ ートした。単層をPBSで洗浄し、0.5%クリスタルバイオレットで染色/固
定した。プレートを風乾し、染料を、エタノール中の0.1Mクエン酸ナトリウ ム(pH4.2)(50:50)に溶出し、吸光度を540nmで測定した。
【0243】 γ−HRGの単離およびシークエンス MDA−MB−175細胞中でのヘレグリン転写を特徴づけるため、この細胞
系統由来のmRNAで、λgt10cDNAライブラリを構築した。ライブラリ
を、EGF様ドメインおよびHRGβ3のN末端配列に相当するcDNAプロー
ブでスクリーニングした。種々のクローンを同定した。全長cDNAを含むこと
が明らかとなったクローンの1つを単離してシークエンスした。図7A〜7Dは
、γ−HRGのヌクレオチド配列および推定されるアミノ酸配列を示す。230
3bpの単一オープンリーディングフレームは、ヌクレオチド334位のATGコ
ドンで始まる。この開始コドンは、潜在的転写開始部位として知られる1つのヌ
クレオチド配列上にある(Kozak, Nucleic Acid Research 15:8125-8148(1987) )。数個の終止コドンを、開始コドンの上流に発見した。ヌクレオチド2637
の終止コドンTAGは、3′非コード配列の後ろにあり、これは他のHRGアイ
ソフォーム配列と同じであり、A−リッチ領域の後ろにあるポリアデニル化シグ
ナルを含んでいる。オープンリーディングフレームは、計算分子量84.2kDa の、768アミノ酸残基のタンパク質をコードしている。
【0244】 (d)最小EGF様ドメイン(HRG−β1 177−228)に相当する残
基を含むHRG−β1変異体の選択を、1価ファージディスプレイを用いて行っ
た。これらの変異体については、残基番号も、最小EGF様ドメインにおける残
基位置に基づいて、括弧内に示した(すなわち、HRG−β1 EGF 1−5
2)。
【0245】 HRG−β1EGFの変異体を調製し、Bass et alの方法(Proteins 8:309-3
14(1990))により、1価ファージディスプレイを用いて、HER−3−Igへの
結合のために選択した。以下で詳細を述べるとおり、HRG−β1EGFファー
ジミドベクターを調製した(ここで、HRG−β1EGFは、M13コートタン
パクpIIIのC末端断片に融合した)。終止コドンを、このベクターの任意に選 択した部位に導入するため、Kunkel突然変異誘発を施した。この工程は、出発ベ
クターが野生型ポリペプチドを発現することができないことを確実にするもので
ある。ライブラリーごとの4から6残基の延長は、直鎖形式で、6個のシステイ
ン、すなわちPhe189(HRG−β1 EGF Phe13)および2個の最 もC末端の残基を除いて、任意抽出した。Phe189は、変更しなかった、な
ぜならこの残基がEGFおよびTGF−αにおいて芳香ファミリー残基として保
存され、Tyr208(HRG−β1 EGF Tyr32)と共に積み重ね相
互作用を形成していたからである(Jacobsen et al., Biochemistry 35:3402-17
(1996)。こうして、HRG−β1 EGFを、A〜E、G、HおよびIの8つの
ライブラリに変えた。
【0246】 HRG−β1 202〜209(HRG−β1 EGF 26〜33)を変換
したライブラリーEは、3残基の欠損を含んでいた。HRG−β1 EGFの第
2と第3のβ−シートの間の異常ターンに相当する欠損した領域、および同等の
アミノ酸はEGFおよびTGF−αには存在しない。HRG8のHRG−β1
202〜204(HRG−β1 EGF 26〜28)が欠失したHRG−β1
コントロール変異体(HRG63)は、野生型のそれと同様の親和性でHER−
3−Igに結合した。
【0247】 追加のライブラリ(F)を、HRG−β1 178、180、198および2
00(HRG−β1 EGF 2、4、22、および24)を含む第1および第
2のβ−シートからの側鎖を含む表面パッチを任意に抽出するように作製した。
【0248】 出発ベクター中の選択された部位は、HRG−β1 EGF ライブラリを作
製するためのKunkel突然変異誘発によって任意抽出した。突然変異したHRG−
β1 EGFを提示するファージは、厳格に、それぞれのファージ粒子が1コピ
ー以上の突然変異したHRG−β1 EGFを提示しているという、条件のライ
ブラリから作成した(Bass et al., 上記、を参照)。これらのファージを、E LISAプレート上に固定したHER−3−Igに対する結合(選り分け)につ
いて選択した。結合したファージを、溶出し、挿入の別の回のための新しいファ
ージを津作成するために用いた宿主細胞を再感染するために用いた。次に、それ
ぞれのライブラリから選択されたファージからの12種のクローンをシークエン
スした。
【0249】
【表2】
【0250】
【表3】
【0251】
【表4】
【0252】
【表5】
【0253】
【表6】
【0254】
【表7】
【0255】 実施例2 胚性ラット肺におけるHER2/HER3の発現 ラット肺を、発生学的日(E)16、18、20のラット胚および出生前日(
P)7、14日および成体から小さく切片化した。単離した肺組織を標準プロテ
アーゼ阻害バッファー中でホモジナイズし、等量のタンパク質をSDS−PAG
E(4〜20%)に付し、ニトロセルロースにブロットして特異的抗体(HER
2、HER3、HER4−Santa Cruz Biological社、San Jose, CA. およびH RG、3G11、Genentech社)で化学発光技術を用いて同定した。
【0256】 ブロットの解析は、HER2が、子宮内の発生を通して高レベルで発現してお
り、E18にピークになり、出生後により低い成体レベルまで減少することを示
した。HER3の発現は、E18にピークになり、出生後により低い成体レベル
まで減少した。HER4は、肺の発生の間のどの時点でも同定されなかった。H
RGのプロフォームは、おそらくE16に現れ(75kDaのタンパク質)、E1 8にピークになり、その後、成体では低いレベルに減少するのであろう。これら
のデータは、HER/HRG系は、肺の発生の間に発生学的に調節され、活性レ
セプターーは、HER2/HER3ヘテロダイマーであることを示唆している。
レセプターーが発現のピークとなる期間(E18)は、ラット肺発生の小管期(
19〜20日)と隣り合う、偽腺期(13〜18日)を表している。偽腺期の間
、肺上皮細胞の増殖は、他のどの時期よりも多い。小管期の間に、分化は、タイ
プIの肺胞上皮細胞およびタイプII(界面活性物質産生)肺胞上皮細胞の出現と
共に始まる。このことは、どちらかの又は両方の過程における、HRG/HER
相互作用に対する1つの役割を示している。
【0257】 実施例3 ヒト胎児肺におけるHER2/HER3の発生 ヒト胎児肺を中3ヶ月(17〜22週)から得た。肺組織を、無血清の Weymo
uth培地の空気液体界面で37℃で加湿した5%CO2雰囲気中で培養した。組織
を0日(組織を入れた日)および培養開始後1〜4日(D)(D1〜D4)に回
収し、標準プロテアーゼ阻害バッファー中でホモジナイズし、等量のタンパク質
をSDS−PAGE(4〜20%)に付し、ニトロセルロースにブロットして特
異的抗体で同定した。
【0258】 HER2は、D0に発現し、in vitro培養の間に発現レベルにおいて増加した
。HER3は、D0では検出できないレベルの低さで現れ、in vitro培養の間に
発現レベルにおいて増加した。HER4は、肺発生のいずれの時期にも同定され
なかった。HRGは、D0では同定されず、しかしながら、D1〜D2に75,
000Daのタンパク質として同定され、培養期間をとおして発現量が増加し続け
た。このヒト生体外培養モデルは、通常の肺発生プログラムの部分を、培養の5
日以上反復した。発生は、気腔の形成に伴う上皮細胞増殖、および分化の生起の
両方と共に急速に起こる。これらのデータは、HER/HRG系も、in vitroヒ
ト肺発生の間に調節されることを示している。第3期は、ヒト肺発生における後
期偽分泌期(42〜112日)および小管期を表す。ラットでのように、偽分泌
段階の間に、上皮細胞増殖および将来の気道の形成が起こる。小管段階の間に上
皮の分化が起こる。
【0259】 実施例4 ヒト肺におけるHER2およびHER3の発現 HER2およびHER3は、肺発生の間、肺上皮において排他的に発現する。
中三期ヒト肺を、上記概説のように培養した。組織を毎日回収し、すばやく凍結
し、5ミクロンの切片に切断した。切片を、スライドガラス上に設置し、標準A
BC法を用いて免疫組織化学的に解析した。HER2、HER3およびHER4
を、上述した特異的抗体を用いて同定した。
【0260】 コントロールとして、肺組織を、D0およびD5において関連性のない抗体で
染色し、非染色を検出した。D0において、肺は相対的に形成されていなかった
。組織の大半は間葉細胞であった。初期空腔が発生していた。D5には、間葉組
織が薄くなり、空腔を大きくするために必要とされる肺上皮の増殖と共に、空間
が明瞭に識別可能であった。
【0261】 D0およびD5に染色したHER2を用いて、HER2が、D0肺組織上に、
肺上皮組織の至るところに一様に現れるということを確立した。間葉細胞におい
ては発現がみられなかった。D5までに、HER2はまだ均一であり、肺上皮に
制限されていた。
【0262】 D0およびD5でのHER3染色コントロールを用いたことで、HER3は、
D0肺組織中で識別可能であった。染色は、HER2に比較して少なく、均一で
はなく、HER3レセプターーを発現している特異的な上皮領域があることを示
唆した。D5までに、発現は、肺上皮をとおしてより均一にはなったが、あきら
かに均一ではなかった。発現は、なおも上皮に特異的であった。
【0263】 実施例5 rHRGβ1177-244の調製 EGF様ドメイン断片HRG-β1 177-244を、ベクターpHL89(Holmes
et al., Science 256: 1205-1210(1992) に記載)から、突出末端を含むNsi I/XbaIを有するプライマーで、PCRによって増幅した。断片を、ファー
ジミド提示ベクターpam−g3に、pHRG2−g3(177−224)構築
物を作製するのと同じ部位の制限切断−結合により、挿入した。pam−g3は
、ヒト増殖ホルモン(hGH)のファージ提示のために設計され、Lowman et al
., Biochemistry 30: 10832-10838(1991) に記載された、phGHam−g3の
誘導体である。pam−g3は、phGHam−g3に存在するhGH遺伝子を
除去し、クローニングに用いる制限部位で切断する空間を提供する、詰め込み断
片と置換することにより産生する。HRG−β1断片をpIIIの残基247位に 接着した。
【0264】 上述の構築物から発現したHRG−β1 EGF様ドメインは、構築物の名前
に現れている「p」および「−g3」を除去することにより称する。すなわち、
pHRG2−g3構築物から発現したHRG−β1 EGF様ドメインを、「H
RG2」と称する。
【0265】 ドメインは、Bass et al., Proteins 8:309-314(1990)に記載されたように、 pIII融合タンパクとして、1価でファージ上に提示される。
【0266】 同様に、変異体HRG−β1147-227、HRG−β1147-244、およびHRG−
β1177-227を調製し、上述のように発現させた。
【0267】 実施例6 rHRGβ1177-244は促進された肺発生を引き起こす 外因性のrHRGβ1177-244は、in vitroで促進された肺発生を引き起こす 。発現したHER2/HER3レセプターーが機能しているか、およびin vitro
での肺発生の間のHRG刺激の役割を調べるため、rHRGβ1177-244をin vi
tro培養に10nMで添加した。組織をD5で回収し、すばやく凍結して、解析の ために5ミクロンの切片に切断した。
【0268】 その形態は、未処理の標本と比べて、大いに異なっていた。上皮が、顕著に増
殖していた。通常は単層細胞で覆われている空腔が、今や2〜3の細胞の厚みを
持っていた。その変化は、より高い濃度へのより大きな上皮細胞反応に依存する
量である。HER2およびHER3は、なおも上皮細胞だけにおいて識別可能だ
った。
【0269】 実施例7 ヒト肺分化 ヒト肺上皮細胞の分化は、HRG処理の後に起こる。分化は、界面活性タンパ
ク質A(SPA)産生によって測定した。すべての切片を、SPAについて染色
した。SPAについて染料で染色したヒト肺外植片は、前肺胞管の上皮細胞中に
集中していた。10nMHRGに暴露したヒト肺外植片は、SPA産生の効果を示
した。分化コントロールとして、ある外植片を1mMジブチリルcAMPにさらし
た。ネガティブコントロールもまた施した。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1A】 図1Aは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンに含まれる、cDNA配列(SEQ ID NO:2)につ
いて推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。HRG−αの
開始メチオニン(Met)は、第45位にある。
【図1B】 図1Bは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンに含まれる、cDNA配列(SEQ ID NO:2)につ
いて推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。HRG−αの
開始メチオニン(Met)は、第45位にある。
【図1C】 図1Cは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンに含まれる、cDNA配列(SEQ ID NO:2)につ
いて推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。HRG−αの
開始メチオニン(Met)は、第45位にある。
【図1D】 図1Dは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンに含まれる、cDNA配列(SEQ ID NO:2)につ
いて推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。HRG−αの
開始メチオニン(Met)は、第45位にある。
【図2A】 図2Aは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンの可能なコーディング配列の、推測されたアミノ酸配列(S
EQ ID NO:3)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す
。開始MetはM31である。
【図2B】 図2Bは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンの可能なコーディング配列の、推測されたアミノ酸配列(S
EQ ID NO:3)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す
。開始MetはM31である。
【図2C】 図2Cは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンの可能なコーディング配列の、推測されたアミノ酸配列(S
EQ ID NO:3)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す
。開始MetはM31である。
【図2D】 図2Dは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンの可能なコーディング配列の、推測されたアミノ酸配列(S
EQ ID NO:3)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す
。開始MetはM31である。
【図2E】 図2Eは、HRG−β1について米国特許第5,367,060号明細書によ
り得られたクローンの可能なコーディング配列の、推測されたアミノ酸配列(S
EQ ID NO:3)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す
。開始MetはM31である。
【図3A】 HRG−β2について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:5)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図3B】 HRG−β2について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:5)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図3C】 HRG−β2について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:5)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図3D】 HRG−β2について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:5)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図3E】 HRG−β2について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:5)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図4A】 HRG−β3について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:7)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:8)を示す。
【図4B】 HRG−β3について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:7)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:8)を示す。
【図4C】 HRG−β3について米国特許第5,367,060号明細書により得られた
クローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO
:7)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:8)を示す。
【図5A】 HRG−β2様タンパク質について米国特許第5,367,060号明細書に
より得られたクローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ
ID NO:9)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図5B】 HRG−β2様タンパク質について米国特許第5,367,060号明細書に
より得られたクローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ
ID NO:9)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図5C】 HRG−β2様タンパク質について米国特許第5,367,060号明細書に
より得られたクローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ
ID NO:9)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図5D】 HRG−β2様タンパク質について米国特許第5,367,060号明細書に
より得られたクローンのヌクレオチド配列の、推測されたアミノ酸配列(SEQ
ID NO:9)、及びcDNA配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図6A】 降順でのいくつかの公知ヘレグリンα、β1、β2、β2様及びβ3のアミ
ノ酸相同性の比較を示し、そしてこれらの形態のHRG(SEQ ID NO:
1、3、5、9及び7)を特徴付ける、アミノ酸の挿入、欠失及び置換を示す。
【図6B】 降順でのいくつかの公知ヘレグリンα、β1、β2、β2様及びβ3のアミ
ノ酸相同性の比較を示し、そしてこれらの形態のHRG(SEQ ID NO:
1、3、5、9及び7)を特徴付ける、アミノ酸の挿入、欠失及び置換を示す。
【図6C】 降順でのいくつかの公知ヘレグリンα、β1、β2、β2様及びβ3のアミ
ノ酸相同性の比較を示し、そしてこれらの形態のHRG(SEQ ID NO:
1、3、5、9及び7)を特徴付ける、アミノ酸の挿入、欠失及び置換を示す。
【図7A】 米国特許願第08/891,845号明細書に記載のとおり得られたγ−HR
Gの、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)、及びcDNA配
列(SEQ ID NO:12)を示す。疎水性領域には、下線を施す。EGF
様ドメインは、影を付け、EGF様ドメイン内のシステイン残基を、丸で囲む。
N結合糖鎖形成部位は、核酸配列の上に()でマークした。
【図7B】 米国特許願第08/891,845号明細書に記載のとおり得られたγ−HR
Gの、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)、及びcDNA配
列(SEQ ID NO:12)を示す。疎水性領域には、下線を施す。EGF
様ドメインは、影を付け、EGF様ドメイン内のシステイン残基を、丸で囲む。
N結合糖鎖形成部位は、核酸配列の上に()でマークした。
【図7C】 米国特許願第08/891,845号明細書に記載のとおり得られたγ−HR
Gの、推測されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)、及びcDNA配
列(SEQ ID NO:12)を示す。疎水性領域には、下線を施す。EGF
様ドメインは、影を付け、EGF様ドメイン内のシステイン残基を、丸で囲む。
N結合糖鎖形成部位は、核酸配列の上に()でマークした。
【図8A】 米国特許願第08/339,517号明細書に記載のとおり得られたSMDF
のcDNA配列(SEQ ID NO:13)、及びアミノ酸配列(SEQ I
D NO:14)を示す。EGF様ドメイン、並びに非極性及び非荷電ドメイン
(すなわち「非極性I」は、約48〜62位の残基からなり「非極性II」は、約
76〜100位の残基からなる)に、下線を施す。EGF様ドメイン内、及びユ
ニークN末端ドメインの「システインノット」(「NTD−cysノット」)内
のシステインを、四角で囲む。停止コドンを、文字「O」で示す。
【図8B】 米国特許願第08/339,517号明細書に記載のとおり得られたSMDF
のcDNA配列(SEQ ID NO:13)、及びアミノ酸配列(SEQ I
D NO:14)を示す。EGF様ドメイン、並びに非極性及び非荷電ドメイン
(すなわち「非極性I」は、約48〜62位の残基からなり「非極性II」は、約
76〜100位の残基からなる)に、下線を施す。EGF様ドメイン内、及びユ
ニークN末端ドメインの「システインノット」(「NTD−cysノット」)内
のシステインを、四角で囲む。停止コドンを、文字「O」で示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 111 C07K 14/485 4H045 C07K 14/485 16/22 16/22 C12P 21/08 C12N 15/09 ZNA A61K 37/02 C12P 21/08 C12N 15/00 ZNAA (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM ,HR,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG, KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,L U,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO ,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG, SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,U G,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 スリウコウスキー,マーク アメリカ合衆国、アイオワ 94070、アイ オワ・シティ、オーク・クリーク・レーン 42 (72)発明者 ケーン,ジェフリー・エー アメリカ合衆国、アイオワ 52240、アイ オワ・シティ、メイアー・アベニュー 4344 Fターム(参考) 4B024 AA01 BA10 BA53 BA63 CA04 DA02 DA06 DA12 EA04 FA06 FA15 FA18 GA11 HA01 4B064 AG01 AG27 CA02 CA10 CA19 CA20 CC24 DA01 4C084 AA02 BA01 BA02 BA08 BA22 BA23 CA18 CA53 CA56 DB53 NA14 ZA592 ZB212 ZC412 4C085 AA13 AA14 BB11 CC21 DD62 DD88 4C087 AA01 AA02 BB63 NA14 ZA59 ZB21 ZC41 4H045 AA10 AA11 BA10 CA40 DA75 DA76 EA20 FA72 FA73 FA74 GA10 GA22 HA05

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上皮細胞の増殖及び/又は増殖を誘導する方法であって、H
    ER2、HER3及び/又はHER4受容体を発現する正常な上皮細胞を、HE
    R2、HER3、HER4受容体、又はそれらの組合せを活性化する単離された
    有効量のリガンドに接触させることを含むことを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 活性化リガンドが、HER2、HER3及び/又はHER4
    受容体に結合することができる、ヘレグリン(HRG)ポリペプチド、HRG変
    異体、HRGアゴニスト抗体、又はそれらのフラグメントである、請求項1記載
    の方法。
  3. 【請求項3】 活性化リガンドが、ヒトHRG又はそのフラグメントである
    、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 活性化リガンドが、HRG−α、−β1、−β2、−β2様
    及びそれらのフラグメントよりなる群から選ばれる、請求項2記載の方法。
  5. 【請求項5】 活性化リガンドが、γ−HRG又はそのフラグメントである
    、請求項2記載の方法。
  6. 【請求項6】 活性化リガンドが、組換えヒトHRG、又はそのフラグメン
    トである、請求項2記載の方法。
  7. 【請求項7】 活性化リガンドが、感覚性及び運動性ニューロン由来因子(
    SMDF)、又はそのフラグメントである、請求項2記載の方法。
  8. 【請求項8】 活性化リガンドを、約1μg/kg〜100mg/kgの用量で投与 する、請求項1記載の方法。
  9. 【請求項9】 活性化リガンドが、アゴニスト抗体である、請求項2記載の
    方法。
  10. 【請求項10】 接触が、それを必要とする患者への投与による、請求項1
    記載の方法。
  11. 【請求項11】 HRGが、rHRG−β1−177〜244である、請求
    項6記載の方法。
  12. 【請求項12】 上皮細胞が肺細胞である、請求項1記載の方法。
  13. 【請求項13】 上皮細胞が、HER2/HER3、HER2/HER4、
    HER3/HER4、HER3又はHER4を発現する、請求項1記載の方法。
  14. 【請求項14】 肺界面活性剤プロテインAを増加させる方法であって、単
    離された有効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性化リガンドを、そ
    れを必要とする患者に投与することを含む方法。
  15. 【請求項15】 活性化リガンドが、HER2、HER3及び/又はHER
    4受容体に結合することができる、ヘレグリン(HRG)ポリペプチド、HRG
    変異体、HRGアゴニスト抗体、又はそれらのフラグメントである、請求項14
    記載の方法。
  16. 【請求項16】 慢性閉塞性肺疾患を処置する方法であって、単離された有
    効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性化リガンドを、それを必要と
    する患者に投与することを含む方法。
  17. 【請求項17】 活性化リガンドが、HER2、HER3及び/又はHER
    4受容体に結合することができる、ヘレグリン(HRG)ポリペプチド、HRG
    変異体、HRGアゴニスト抗体、又はそれらのフラグメントである、請求項16
    記載の方法。
  18. 【請求項18】 呼吸困難又は肺気腫を処置する方法であって、単離された
    有効量のHER2、HER3及び/又はHER4活性化リガンドを、それを必要
    とする患者に投与することを含む方法。
  19. 【請求項19】 活性化リガンドが、HER2、HER3及び/又はHER
    4受容体に結合することができる、ヘレグリン(HRG)ポリペプチド、HRG
    変異体、HRGアゴニスト抗体、又はそれらのフラグメントである、請求項18
    記載の方法。
  20. 【請求項20】 (a)哺乳動物から正常な上皮細胞サンプルを得る工程と
    ; (b)該サンプルを、HER2、HER3、HER4受容体、又はそれらの組合
    せを活性化し、サンプル中の上皮細胞の増殖及び/又は増殖を誘導するリガンド
    に接触させ、そして拡大されたサンプルを得る工程及び; (c)該拡大されたサンプルを哺乳動物に再導入する工程 を含む方法。
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