JP2002333375A - 磁歪式トルクセンサ材、及びそれを用いてなる磁歪式トルクセンサ軸、及び該軸を用いて成る磁歪式トルクセンサ - Google Patents

磁歪式トルクセンサ材、及びそれを用いてなる磁歪式トルクセンサ軸、及び該軸を用いて成る磁歪式トルクセンサ

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JP2002333375A JP2001140106A JP2001140106A JP2002333375A JP 2002333375 A JP2002333375 A JP 2002333375A JP 2001140106 A JP2001140106 A JP 2001140106A JP 2001140106 A JP2001140106 A JP 2001140106A JP 2002333375 A JP2002333375 A JP 2002333375A
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shaft
magnetostrictive
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Shinichiro Yokoyama
紳一郎 横山
Kazu Sasaki
計 佐々木
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Hitachi Metals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 構造的な硬さを備えた上で、高感度・低ヒス
テリシス特性を有する磁歪式トルクセンサ材、およびそ
れを用いて成る磁歪式トルクセンサ軸、更に該軸を用い
て成る磁歪式トルクセンサを提供する。 【解決手段】 質量%でC含有量が0.1%未満の析出硬化型
Fe基マルテンサイト系鋼でなる磁歪式トルクセンサ材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、被測定軸に加えら
れる弾性トルクを磁気的に検出するために利用される磁
歪式トルクセンサ材とそれを用いてなる磁歪式トルクセ
ンサ軸、及び該軸を用いて成る磁歪式トルクセンサに関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁歪式トルクセンサの分野では、
磁性鋼を被測定軸として使用し、磁性鋼が有する磁歪効
果を利用して、軸にかかる弾性トルクを磁気的に検出す
る手法が用いられている。図1はトルクセンサの出力特
性図を示す。トルクセンサの特性は、弾性トルク(入力
信号)に対する出力電圧の傾きS(以下、感度と記す)と、
弾性トルクを除去した後の出力電圧の初期値からのずれ
h(以下、ヒステリシスと記す)によって評価され、感度
(図1のS)が大きく、かつヒステリシス(図1のh)が小さ
い程、トルクセンサ特性は優れたものとなる。この様な
磁歪式トルクセンサの軸には、磁性とともに構造的な硬
さが要求されるので、従来はJISSK材、SCM材、SNCM材等
の構造用鋼が使用されており、これらの構造用鋼は、Fe
が有する磁歪効果を持ち、且つ安価なので好んで使用さ
れる。ところが従来から用いられてきた構造用鋼では、
比透磁率と磁歪が小さいために感度が小さく、且つヒス
テリシスも大きいので、正確なトルク検出を行えないと
いう問題があった。
【0003】上述の問題を解決するため、トルクセンサ
の軸用の材質や軸の製造方法に関し、多くの検討が行わ
れている。例えば、特許2132909号には、質量%でC:0.1
〜0.5%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下と、Ni:5.0%以下、C
r:5.0%以下の何れか一方または両方、残部がFeと不可避
不純物の組成で成る材料をトルクセンサ軸として使用す
る技術が開示されている。また特許2697846号には、特
許2132909号の材料を更に改良した組成として、C:0.1〜
1.5%、Si:0.5〜4.0%、Mn:0を超え3.0%以下、Al:0を超
え3.0%以下と、Ni:5.0%以下、Cr:5.0%以下の何れか
一方または両方、残部がFeと不可避不純物の組成で成る
材料をトルクセンサ軸として使用する技術が開示されて
いる。これらの技術は、合金元素の添加によって材料の
強度、硬さを確保するとともに、各添加元素の特徴を生
かし、JISSK材、SCM材、SNCM材等よりも感度が大きく、
かつヒステリシスが小さくなる様に合金組成を調整して
いるという点で優れた材料技術である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らの検討によ
ると、上述した特許2132909号や特許2697846号に開示さ
れる組成の軸材質は、材質の比透磁率や磁歪を改善する
ことによってJISSK材、SCM材、SNCM材等よりもトルクセ
ンサの感度を上げることはできるものの、何れの提案も
必須元素としてCを0.1%以上含有しているため、軸材の
比透磁率を十分に上げることができず、トルクセンサの
感度を画期的には上げることができないという第一の問
題がある。また、これらの組成の軸材では、ヒステリシ
スをゼロ近傍までは低減できないという第二の問題もあ
る。本発明の目的は、トルクセンサの感度を向上させ、
かつヒステリシスをゼロ近傍まで低減することが可能な
磁歪式トルクセンサ材と、それを用いてなる磁歪式トル
クセンサ軸、及び該軸を用いて成る磁歪式トルクセンサ
を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者は上述した問題
を解決するために、まず化学組成の点から詳細に検討を
行った結果、Cを特定量以下に調整した析出硬化型Fe基
マルテンサイト系鋼を用いることで、磁歪式トルクセン
サの感度を飛躍的に向上させることができることを見出
し、本発明に到達した。更に上述の磁歪式トルクセンサ
材をトルクセンサ軸に用いた時に負荷される最大トルク
以上の大きさのトルクを予歪として与えることによっ
て、磁歪式トルクセンサ材、ひいては該材料を用いて成
るトルクセンサ軸、更には該軸を用いて成る磁歪式トル
クセンサのヒステリシスをゼロ近傍まで低減できること
を見出し、本発明に到達した。即ち本発明は、質量%でC
含有量が0.1%未満の析出硬化型Fe基マルテンサイト系鋼
でなる磁歪式トルクセンサ材である。
【0006】好ましくは、質量%で、C:0.1%未満、Si:2.
0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:2.0〜10.0%、Cr:10.0〜25.0%
と、選択元素としてCu:0.5〜5.0%、Al:0.1〜2.0%、Ti:
0.1〜2.0%、Nb+Ta:0.05〜2.0%以下の一種または二種以
上を含有し、残部が実質的にFeからなる磁歪式トルクセ
ンサ材である。更に好ましくは、磁歪式トルクセンサ材
をトルクセンサ軸に用いた時に負荷される最大トルク以
上の大きさのトルクを予歪として与えた磁歪式トルクセ
ンサ材である。また本発明は、前述の予歪を与えた磁歪
式トルクセンサ材を用いてなる磁歪式トルクセンサ軸で
あり、更にはこの磁歪式トルクセンサ軸を用いて成る磁
歪式トルクセンサである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の磁歪式トルクセンサ材が
用いられるトルクセンサ軸では、感度が高く、しかも構
造的な硬さが高く、更にはヒステリシスをゼロ近傍まで
低減させることが可能な材料を選択する必要がある。本
発明者らがこの三つの特性を同時に満足する材料を検討
したところ、高い感度と、高い硬さについては、主とし
て材料の化学組成に大きく依存すること、ヒステリシス
をゼロ近傍まで低減させるのには、感度と硬さが磁歪式
トルクセンサ軸に求められる特性を満足可能な材料に、
予歪を負荷することで達成できることをつきとめた。以
下に詳しく本発明を説明する。
【0008】先ず、高い感度と、高い硬さとを兼ね備え
た材料としては、Fe基マルテンサイト系鋼が最適である
が、Fe基マルテンサイト系鋼のうち、Cを多量に含有
し、炭化物の分散によって転位を固着し、高硬度を得る
タイプのマルテンサイト系鋼では、材料の比透磁率を十
分に高めることができないため、磁歪式トルクセンサ材
の感度を画期的に上げることは難しい。そこで本発明で
は、材料のC含有量を低くし、材料の硬さは炭化物の分
散ではなく、適当な元素や化合物を析出、分散させて析
出硬化によって得ることに着目した。そのために必要な
C量は0.1%未満であり、Cが0.1%以上となると、材料の
比透磁率の低下、ひいては感度の低下が顕著となる。従
って、本発明ではC含有量が0.1%未満の析出硬化型Fe基
マルテンサイト系鋼と規定した。
【0009】次に、磁歪式トルクセンサ材の好ましい組
成としてC以外の元素の含有量を規定した理由を以下に
説明する。 Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下 Si、Mnはともに製鋼プロセスでの脱酸元素としての作用
がある元素である。材料の感度とヒステリシスの特性に
特に影響しない範囲として、上述の範囲を含有して良
い。なお、好ましいSi、Mnの上限は、それぞれ1.5%以
下、1.0%以下の範囲とすると良い。
【0010】Ni:2.0〜10.0% NiはFe基マルテンサイト系鋼中で磁歪を高め、材料の感
度を上げる効果があるとともに、材料の焼入れ性を高
め、組織をマルテンサイトにする上で有効な本発明の重
要元素である。また適当な熱処理温度を選択すれば、Al
やTiと化合物を形成し、析出硬化により硬さを上げる効
果もある。但し、2.0%未満ではその効果が小さく、逆
に10.0%を超える範囲では軸材の組織はオーステナイト
となって、本発明の好ましい磁歪式トルクセンサ材の金
属組織の規定を外れるので、上述の範囲に規定した。望
ましくは3.0〜8.0%の範囲である。
【0011】Cr:10.0~25.0% Crは材料の耐食性を確保するとともに、Niと同様に焼入
れ性を良くして材料の組織をマルテンサイトとするため
に重要な元素である。但し、10.0%未満では耐食性を確
保する効果が小さく、逆に25.0%を超える範囲では材料
の加工性が著しく悪くなるので、上述の範囲に規定し
た。好ましいCr含有量は12.0〜20.0%の範囲である。
【0012】次に選択元素としてCu、Al、Ti、Nb+Taを
選択し、これらの一種または二種以上を含有することと
したのは、これらの元素は析出硬化によって材料の硬さ
を上げる効果があるからである。これらの元素の各一種
を添加しても、また二種以上の元素を複合添加しても析
出硬化の目的は達せられる。以下、各元素の効果と含有
量の範囲を規定した理由を述べる。 Cu:0.5〜5.0% Cuはマルテンサイト中の固溶度が低い上、マルテンサイ
トに過飽和に固溶し易いので、時効処理によってCuを析
出させると、マルテンサイトの硬化に寄与する。但し、
0.5%未満では効果が小さく、逆に5.0%を超える範囲で
は材料の加工性が悪くなるので、上述の範囲に規定し
た。
【0013】Al:0.1〜2.0% Alは時効処理によってNiと金属間化合物を形成し、析出
硬化によってマルテンサイトの硬化に寄与する。但し0.
1%未満では効果が小さく、逆に2.0%を超える範囲では
材料の加工性が悪くなるので、上述の範囲に規定した。 Ti:0.1〜2.0% TiもAl同様、時効処理によってNiと金属間化合物を形成
し、析出硬化によってマルテンサイトの硬化に寄与す
る。また微量のCを固定するので、材料の比透磁率を高
める上でも効果がある。但し0.1%未満では効果が小さ
く、逆に2.0%を超える範囲では材料の加工性が悪くな
るので、上述の範囲に規定した。
【0014】Nb+Ta:0.05〜2.0% NbやTaもTi同様、微量のCを固定するので、材料の比透
磁率を高める上で効果がある。但し0.05%未満では効果
が小さく、逆に2.0%を超える範囲では材料の加工性が
悪くなるので、上述の範囲に規定した。なお、本発明で
は上述した元素以外、特に規定するものではなく残部は
実質的にFeであれば良いとするが、当然のことながら不
可避的に含有される不純物は少量ながら含有される。但
し、過度に含有されるとトルクセンサ材の特性を劣化さ
せるので、不可避不純物としてP、S、N、Oを感度、ヒス
テリシス特性を特に劣化させない範囲として、それぞれ
0.1%以下の範囲で含有しても良い。
【0015】次に、本発明では、上述の磁歪式トルクセ
ンサ材に予歪を加えることによって、ヒステリシスをゼ
ロ近傍まで低減させることができる。本発明者は、ヒス
テリシスは弾性限内での転位の動きによって生じると推
察した。逆に材料内部の転位が動き難い状態を作れば、
ヒステリシスは除去できると推察した。本発明で磁歪式
トルクセンサ材に予歪を導入した理由は、一旦、材料に
予歪を導入すると、材料内部の転位は予歪を導入した方
向に固着されて、動き難い状態となるからである。ここ
で磁歪式トルクセンサ材に導入する予歪を付与する方向
は、実際のトルクセンサ軸となった場合に、そのトルク
センサ軸に負荷される歪の方向と実質的に同一の方向に
加えると良く、例えば、トルクセンサ軸が捻りの方向に
歪が加わる場合、予歪の方向は、トルクセンサ軸が捻ら
れる同一方向に加えれば予歪方向に固着される転位の効
果を利用することができる。
【0016】また、予歪の大きさをトルクセンサ使用時
に軸に負荷される最大トルク以上のトルクとしたのは、
上述の場合と同様に予歪によって固着される転位の効果
を利用するためである。例えば予歪よりも更に大きい量
の歪がかかった場合、予歪によって固着された転位は、
更に大きい歪に対しては固着の効果がないため、軸内の
転位が動き、新たなヒステリシスが生じることとなる。
以上の理由から、導入する予歪の大きさはトルクセンサ
使用時に軸に負荷される最大トルク以上のトルクとし
た。なお、本発明においては、必要に応じて予歪を複数
回、導入しても良い。
【0017】この予歪導入時、例えば予歪方向と反対方
向に軸を捻った場合、予歪によって固着された転位は、
反対方向の歪に対しては固着せず動き易いため、新たな
ヒステリシスが生じることとなり、予歪の効果が得難い
ため、予歪を導入する方向はトルクセンサ使用時の軸の
ねじり方向と同一の方向が良い。本発明の予歪を付与し
たトルクセンサ材を用いたトルクセンサ軸が用いられる
用途としては、一定の方向にのみ歪が付加される、例え
ば電動アシスト自転車や工作機械、ロボット分野等への
適用が望ましい。
【0018】また本発明の磁歪式トルクセンサ材、及び
それを用いて成る磁歪式トルクセンサ軸の望ましい製造
手順としては、まず本発明の好ましい組成の材料を溶製
した後、1050〜1200℃に加熱して熱間加工し、
目的とする寸法に仕上げると良い。次にこの熱間加工し
たトルクセンサ材を600〜800℃で熱処理して軟化
した後、磁歪式トルクセンサ軸の形状に加工し、次いで
1000〜1100℃の温度範囲から急冷を行い、軸材
料の金属組織をマルテンサイト系組織とする。更に40
0〜600℃の範囲で時効処理を行い、析出硬化により
トルクセンサ材の硬さを上げて、本発明の磁歪式トルク
センサ材を得る。
【0019】次に、上述の磁歪式トルクセンサ材にトル
クセンサ軸に用いた時に負荷される最大トルク以上の大
きさのトルクを予歪として与えて、本発明で規定する予
歪を付与したトルクセンサ材とする。そして、この予歪
を付与したトルクセンサ材に、必要に応じて仕上加工を
施して磁歪式トルクセンサ軸とすれば良い。本発明の磁
歪式トルクセンサ軸は高感度で、かつ構造的な硬さを備
え、更に予歪によってヒステリシスがゼロ近傍まで除去
された材料で成るので、高感度・低ヒステリシスな磁歪
式トルクセンサ軸として極めて有効である。すなわち本
発明の磁歪式トルクセンサ軸を使用した磁歪式トルクセ
ンサは高精度のトルク検出を行うことができる。
【0020】
【実施例】10kgの材料を真空溶解により溶製した。表1
に各供試材の化学組成を示す。表1に示す各材料の内訳
は、下記の通りである。No.1、2の組成は、質量%でC含
有量が0.1%未満であり、熱処理によって析出硬化型Fe基
マルテンサイト系鋼となる磁歪式トルクセンサ用材料で
ある。この内、No.1は本発明の好ましい組成範囲に相当
する材料である。No.3、4の組成は、質量%でC含有量が
0.1%以上であり、熱処理によってFe基マルテンサイト系
鋼となる磁歪式トルクセンサ用材料である。この内、N
o.3は従来、磁歪式トルクセンサ用材料として好んで用
いられてきたJISSK5材に相当する。またNo.4は特許2132
909号で開示される材料に相当する。
【0021】
【表1】
【0022】溶製した鋼塊を1100℃に加熱して熱間加工
を行い、直径20mmの丸棒を得た。この丸棒に対し、C含
有量が0.1%未満の材料No.1〜2は大気中700℃×3h炉冷
の条件で、またC含有量が0.1%以上の材料No.3〜4は大
気中750℃-4h→20℃/h→650℃炉冷の条件で軟化処理を
行った。
【0023】上述の材料が磁歪式トルクセンサとして実
際に使用される際には、上述の軟化処理を施した材料
を、磁歪式トルクセンサの軸形状に機械加工した後、軸
材料を硬化する熱処理を行うことによって磁歪式トルク
センサ材、及びそれを用いて成る磁歪式トルクセンサ軸
となる。磁歪式トルクセンサ軸には外部トルク(捻り)
が加わるが、比透磁率(インダクタンス)の変化が検出
される軸の表層部には、軸の長手方向から45度の角度に
引張と圧縮の応力がかかる。すなわち磁歪式トルクセン
サの感度、ヒステリシス特性は、簡易的には外部から印
加される引張または圧縮応力に対する磁歪式トルクセン
サ用材料のインダクタンス変化を測定することによって
評価できる。材料を評価する場合の応力の方向は引張、
圧縮いずれの方向でも良い。
【0024】ここで直径Dの丸棒に捻りを加えた場合の
トルクTと丸棒の表面に生じる引張応力σの関係は、概
ね下記の関係式(1)で表される。 σ=16T/(πD)3 …(1) 仮にD=10(mm)とすれば、100(Nm)のトルクがかかった場
合の表面の引張応力は、(1)式より約50(MPa)と見積もる
ことができる。実際の磁歪式トルクセンサとして使用さ
れる場合に軸にかかる最大トルクは、約500(Nm)以下で
あることが多く、引張応力のレベルは、約250(MPa)まで
の応力範囲で評価すれば十分である。
【0025】本実施例では、上述の軟化処理を施した材
料から、直径10mm×長さ80mmの丸棒試験片を機械加工に
より採取し、両端にM10ネジ加工を行った後、各材料を
硬化させる条件で熱処理を行い、材料の金属組織をマル
テンサイト系組織とした。この熱処理により、本実施例
の材料はFe基マルテンサイト系鋼で成る磁歪式トルクセ
ンサ材とした。この内、No.1〜2は本発明の質量%でC含
有量が0.1%未満の析出硬化型Fe基マルテンサイト系鋼で
あり、No.3〜4は比較例のC含有量が0.1%以上のFe基マル
テンサイト系鋼である。各材質の熱処理条件と熱処理後
の硬さを表2に示す。
【0026】
【表2】
【0027】表2から、いずれの材料も40HRC以上の硬
さとなっており、構造的な硬さは維持されていることが
分かる。
【0028】次に本実施例では、各磁歪式トルクセンサ
材の感度、ヒステリシス特性は、引張試験機とLCRメー
タを用いて、以下の方法で評価した。上述の丸棒試験片
に磁路長25mm、巻数100のサーチコイルをかぶせた後、
試験片は引張試験機に、サーチコイルはLCRメータにそ
れぞれ接続する。LCRメータの設定は、周波数f=80[kH
z]、最大印加磁場Hm=40[Am-1]とし、まず引張応力を掛
けない状態でコイルのインダクタンスの初期値L0[μH]
を測定する。この状態から引張応力の負荷と除荷を繰り
返し、引張応力の大きさを徐々に上げて行く。本実施例
では、引張応力は50[MPa]ごとに増加して行き、最大負
荷応力250[MPa]まで試験した。最大負荷応力を250[MPa]
とした理由は、上述した様に実際のトルクセンサとして
使用される場合の最大トルクを考慮したからである。な
お、LCRメータにより測定されるインダクタンスは、材
料の比透磁率μrに相当する値である。このインダクタ
ンス−応力特性の測定例として、本発明の磁歪式トルク
センサ材であるNo.1の特性と、比較例のNo.3の特性をそ
れぞれ図2と図3に示す。
【0029】上述のインダクタンス−応力特性から、各
材料の感度S0とヒステリシスh0は下記の式で定義した。 感度:S0[nH/MPa]=(L負荷時−L0)/負荷応力 … (2) ヒステリシス:h0[%]=100×(L除荷時−L0)/L0 … (3) 250[MPa]の引張応力を負荷、除荷した際の各材料の感
度、ヒステリシス特性を表3に示す。
【0030】
【表3】
【0031】表3から、本発明の磁歪式トルクセンサ材
は、高い感度が得られているが、比較材の感度は低いこ
とが分かる。本発明の好ましい組成範囲であるNo.1は、
特に高い感度が得られていることが分かる。
【0032】表3から、本発明のNo.1とNo.2は高い感度
が得られているが、ヒステリシスも大きいことが分か
る。そこで、ヒステリシスを低減することを目的とし
て、250[MPa]の引張応力を予歪として負荷後、除荷した
時のインダクタンスの値L1[μH]を初期値と看做して上
述の試験と同じ試験を行った。予歪導入後の硬さは、予
歪導入前と変わらず、表2の値を示した。また予歪導入
後のインダクタンス-応力特性の測定例として、本発明
の磁歪式トルクセンサ材であるNo.1の特性と、比較例の
No.3の特性をそれぞれ図4と図5に示す。
【0033】予歪導入後の感度S1とヒステリシスh1
は次式で定義した。 引張予歪250[MPa]導入後、予歪なしの各々の状態で、25
0[MPa]の引張応力を掛けた後の感度、ヒステリシスの値
を表4に示す。
【0034】
【表4】
【0035】表4から、ヒステリシスの絶対値は、予歪
を導入することによって、材質にかかわらずゼロ近傍の
0.1%以下まで低減することが分かる。ヒステリシスの絶
対値が0.1%以下であれば、この材料を用いて成る磁歪式
トルクセンサ軸、及び該軸を用いて成る磁歪式トルクセ
ンサとして、ヒステリシスによるトルク測定精度の低下
は無視することができる。一方、予歪導入後の感度は、
やはり本発明のNo.1とNo.2の感度が高く、比較例のNo.3
とNo.4の感度は低いことが分かる。本発明のNo.1とNo.2
は、構造的な硬さが高く、感度も高い上、予歪導入によ
ってヒステリシスをほぼゼロにすることができる。一
方、比較例のNo.3とNo.4は、構造的な硬さは高く、また
予歪導入によってヒステリシスをほぼゼロとすることも
できるが、感度が低い点で本発明の磁歪式トルクセンサ
材より劣っている。
【0036】以上の実験結果から、本発明の磁歪式トル
クセンサ材は、構造的な硬さを備えた上で感度が高く、
また予歪導入によりヒステリシスをほぼゼロにすること
ができる。本発明の磁歪式トルクセンサ材を用いて成る
磁歪式トルクセンサ軸は、硬さ、感度、ヒステリシスと
も優れているので、磁歪式トルクセンサとして特に使い
易い軸となることが分かる。更に、この軸を用いて成る
磁歪式トルクセンサは精度良くトルク検出を行うことが
できるので、特に電動アシスト自転車や工作機械、ロボ
ット分野での用途に適したものとなる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば磁歪式トルクセンサ材の
硬さ、感度、ヒステリシスの特性を飛躍的に改善するこ
とができ、本材を用いて成る磁歪式トルクセンサ軸、及
びこの軸を用いて成る磁歪式トルクセンサの検出精度を
高めることができる。本発明は磁歪式トルクセンサの実
用化にとって欠くことのできない技術となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】トルクセンサの出力特性を示す模式図である。
【図2】本発明の磁歪式トルクセンサ材の熱処理状態で
のインダクタンス−応力特性を示す一例である。
【図3】比較例の磁歪式トルクセンサ材の熱処理状態で
のインダクタンス−応力特性を示す一例である。
【図4】本発明の磁歪式トルクセンサ材の予歪導入後の
インダクタンス−応力特性を示す一例である。
【図5】比較例の磁歪式トルクセンサ材の予歪導入後の
インダクタンス−応力特性を示す一例である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年6月13日(2001.6.1
3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正内容】
【0024】ここで直径Dの丸棒に捻りを加えた場合の
トルクTと丸棒の表面に生じる引張応力σの関係は、概
ね下記の関係式(1)で表される。 σ=16T/(πD) 3 …(1) 仮にD=10(mm)とすれば、100(Nm)のトルクがかかった場
合の表面の引張応力は、(1)式より約50(MPa)と見積もる
ことができる。実際の磁歪式トルクセンサとして使用さ
れる場合に軸にかかる最大トルクは、約500(Nm)以下で
あることが多く、引張応力のレベルは、約250(MPa)まで
の応力範囲で評価すれば十分である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正内容】
【0028】次に本実施例では、各磁歪式トルクセンサ
材の感度、ヒステリシス特性は、引張試験機とLCRメー
タを用いて、以下の方法で評価した。上述の丸棒試験片
に磁路長25mm、巻数100のサーチコイルをかぶせた後、
試験片は引張試験機に、サーチコイルはLCRメータにそ
れぞれ接続する。LCRメータの設定は、周波数f=80[kH
z]、最大印加磁場Hm=40[A m -1 ]とし、まず引張応力を
掛けない状態でコイルのインダクタンスの初期値L0[μ
H]を測定する。この状態から引張応力の負荷と除荷を繰
り返し、引張応力の大きさを徐々に上げて行く。本実施
例では、引張応力は50[MPa]ごとに増加して行き、最大
負荷応力250[MPa]まで試験した。最大負荷応力を250[MP
a]とした理由は、上述した様に実際のトルクセンサとし
て使用される場合の最大トルクを考慮したからである。
なお、LCRメータにより測定されるインダクタンスは、
材料の比透磁率μrに相当する値である。このインダク
タンス−応力特性の測定例として、本発明の磁歪式トル
クセンサ材であるNo.1の特性と、比較例のNo.3の特性を
それぞれ図2と図3に示す。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%でC含有量が0.1%未満の析出硬化型
    Fe基マルテンサイト系鋼でなることを特徴とする磁歪式
    トルクセンサ材。
  2. 【請求項2】 質量%で、C:0.1%未満、Si:2.0%以下、M
    n:2.0%以下、Ni:2.0〜10.0%、Cr:10.0〜25.0%と、選択
    元素としてCu:0.5〜5.0%、Al:0.1〜2.0%、Ti:0.1〜2.0
    %、Nb+Ta:0.05〜2.0%以下の一種または二種以上を含有
    し、残部が実質的にFeからなることを特徴とする請求項
    1に記載の磁歪式トルクセンサ材。
  3. 【請求項3】 磁歪式トルクセンサ材をトルクセンサ軸
    に用いた時に負荷される最大トルク以上の大きさのトル
    クを予歪として与えたことを特徴とする請求項1または
    2に記載の磁歪式トルクセンサ材。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の磁歪式トルクセンサ材
    を用いてなることを特徴とする磁歪式トルクセンサ軸。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の磁歪式トルクセンサ軸
    を用いてなることを特徴とする磁歪式トルクセンサ。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10983019B2 (en) 2019-01-10 2021-04-20 Ka Group Ag Magnetoelastic type torque sensor with temperature dependent error compensation
US11486776B2 (en) 2016-12-12 2022-11-01 Kongsberg Inc. Dual-band magnetoelastic torque sensor
US11821763B2 (en) 2016-05-17 2023-11-21 Kongsberg Inc. System, method and object for high accuracy magnetic position sensing
US12025521B2 (en) 2021-10-15 2024-07-02 Brp Megatech Industries Inc. Magnetoelastic torque sensor with local measurement of ambient magnetic field

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