JP2002294556A - 高白度吸湿性合成繊維及び該繊維の製造方法 - Google Patents
高白度吸湿性合成繊維及び該繊維の製造方法Info
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Abstract
繊維の有すべき特徴を備え、且つ白度が向上し加工工程
や最終製品使用時においても色変化の少ない色安定性に
優れた高白度吸湿性繊維ならびに該繊維の製造方法を提
供する。 【構成】 20℃65%RHにおける飽和吸湿率が1
0重量%以上である吸湿性合成繊維であって、該繊維の
白度がJIS−Z−8729に記載の表示方法におい
て、L*85以上、a*±6の範囲内であり、且つJI
S−L0217−103法で洗濯処理した洗濯5回後の
繊維の変色がJIS−L0805汚染用グレースケール
で評価して3−4級以上であることを特徴とする高白度
吸湿性合成繊維および該繊維の製造方法。 【効果】 優れた白度及び色安定性を有し、高い吸湿
性、難燃性、抗菌性、消臭性、耐薬品性等を備え、衣
料、寝装寝具、建材、メディカル、産業資材など幅広い
分野に好適に使用することができる。
Description
する。さらに詳しくは、難燃性、抗菌性を有しながら、
加工性も優れ、かつ従来品よりもさらに白度が向上し染
色工程での晒し処理および洗濯を繰り返しても色がほと
んど変化しない色安定性に優れる高白度吸湿性合成繊維
に関する。
を除去する手段として、潮解性塩類を高吸水性繊維に含
浸させた特開平1−299624号公報の手段が提案さ
れている。この手段により得られた繊維は、編物・織物
・不織布等への加工が容易で吸放湿速度が速く、さらに
吸湿剤の脱落もない実用性能を備えたものではあるが、
繊維表面がヒドロゲルであるため、吸湿すると粘着性を
帯び、特に壁紙やふとん綿への適用が困難であること、
及び最近社会的ニーズとして高まりつつある難燃性や抗
菌性を満たすものではなかった。
開平5−132858号公報の手段も提案されている。
しかしながら、この方法では塩型カルボキシル基の量が
4.5meq/gを超えてしまうと引張強度が0.9c
N/dtex以下となり、種々の加工に耐え得るには不
十分な繊維物性となってしまい、さらに吸湿率を高める
為の障壁となっていた。また、繊維強度0.9cN/d
tex以上の高吸湿性繊維を得る為にヒドラジン系化合
物による処理によって導入される窒素含有量の増加を
8.0重量%をこえたものにした場合、加水分解後の塩
型カルボキシル基の導入量が少なくなり、吸湿性が低く
なってしまうという問題があった。
よる方法で得られる繊維は、濃いピンク色から濃い茶色
を呈する為、利用分野が限定されてしまうという欠点が
あった。この欠点を克服する手段として提案されている
特開平9−158040号公報の発明は、ヒドラジン系
化合物による架橋処理の後に酸処理Aを行うこと、アル
カリによる加水分解処理の後に酸処理Bを行うこと、を
開示し相当に白度の改善を為し得ている。しかしかかる
技術によっても、厳しい白度を要求される分野に対して
は、十分満足を与えるものではないのが現状である。特
開2000−303353号公報では白度を改善する方
法として加水分解処理を無酸素雰囲気下で行うことを開
示している。しかしながら、該方法で得られる繊維は染
色工程での酸化晒し処理や洗濯を繰り返すことにより着
色するため、色安定性に乏しいという欠点を有するのが
現状である。
される基本物性並びに吸湿性繊維の有すべき特性を維持
しながら、かかる従来の吸湿性繊維が抱える色が不安定
であるという欠点を改良した繊維並びにかかる繊維の製
造方法を提供することを目的とする。
は、20℃65%RHにおける飽和吸湿率が10重量%
以上である吸湿性合成繊維(以下、単に吸湿性繊維とも
いう)であって、該繊維の白度がJIS−Z−8729
に記載の表示方法において、L*85以上、a*±6の
範囲内であり、且つJIS−L0217−103法(洗
剤は花王株式会社製アタック使用)で洗濯処理した洗濯
5回後の繊維の変色がJIS−L0805汚染用グレー
スケールで評価して3−4級以上であることを特徴とす
る高白度吸湿性合成繊維(以下、単に高白度吸湿性繊維
ともいう)により達成することが出来る。
率が300重量%未満、好ましくは200重量%以下、
より好ましくは150重量%以下であること、高白度吸
湿性合成繊維が、共重合成分として(メタ)アクリル酸
エステル化合物が5重量%未満であるアクリロニトリル
系重合体からなるアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合
物による架橋導入処理、加水分解、還元処理を施したも
のであること、洗濯5回後の繊維の白度がJIS−Z−
8729に記載の表示方法において、L*85以上、a
*±6の範囲内であることにより、好適に達成すること
ができる。
酸エステル化合物が5重量%未満であるアクリロニトリ
ル系重合体からなるアクリル系繊維に、ヒドラジン系化
合物による架橋導入処理、加水分解、還元処理を施すこ
とを特徴とする高白度吸湿性合成繊維の製造方法により
好適に達成されるが、架橋導入処理と加水分解処理の間
に酸処理を施す製造方法であればさらによりよく達成さ
れる。
アクリル酸エステル化合物が5重量%未満であるアクリ
ロニトリル系重合体からなるアクリル系繊維をヒドラジ
ン系化合物処理して、架橋の導入と1.0〜10.0重
量%の窒素含有量の増加を行わしめ、(2)アルカリ性
金属塩水溶液処理して、CN基を加水分解した金属塩型
カルボキシル基を4.0〜10.0meq/g生成せし
め、(3)ハイドロサルファイト塩、チオ硫酸塩、亜硫
酸塩、亜硝酸塩、二酸化チオ尿素、アスコルビン酸塩、
ヒドラジン系化合物からなる群より選ばれた還元処理剤
で還元処理する高白度吸湿性合成繊維の製造方法によ
り、好適に達成される。なお、上述と同様に、(1)の
後(2)に先立って酸処理を施す、という方法も当然に
採用し得る。
該金属塩型カルボキシル基をH型化し、Li、Na、
K、Ca、Mg、Ba、Alから選ばれる金属塩による
処理により、該H型カルボキシル基の一部を金属塩型化
(以下、塩型調整処理と略称する)してH型/金属塩型
のモル比を90/10〜0/100に調整する高白度吸
湿性合成繊維の製造方法により、より好適に達成され
る。
に採用する吸湿性繊維は20℃65%RHにおける飽和
吸湿率が10重量%以上である必要がある。さらに、本
発明の高白度吸湿性繊維の白度はJIS−Z−8729
に記載の表示方法において、L*85以上、a*±6の
範囲内である必要がある。L*が85未満、a*が±6
の範囲外である場合には、もはや白度に優れているとは
いえない。なお、好ましくはL*が86以上、a*が±
4の範囲内である。
処理においても、その白度の変色が極めて少ない点、即
ち洗濯耐久性に優れている点に特徴があり、具体的に
は、JIS−L0217−103法(洗剤は花王株式会
社製アタック使用)で洗濯処理した洗濯5回後の繊維の
変色がJIS−L0805汚染用グレースケールで評価
して3−4級以上のものである。なお、洗濯処理後であ
っても、繊維の白度がJIS−Z−8729に記載の表
示方法において、L*85以上、a*±6の範囲内、好
ましくはL*が86以上、a*が±5の範囲内であるこ
とが望ましい。また、衣料用途で最も疎まれるのは、赤
みであり、このことから、赤みを表すパラメーターであ
るa*の値の、洗濯前後における差(Δa*)が0.7以
下、好ましくは0.6以下であることが望ましい。
は、300重量%未満であることが好ましい。飽和吸水
率が300重量%以上の場合には、吸水した際繊維表面
がべとつくため、特に衣料用途では好ましくない。
程の酸化晒し等の処理においても、その白色度が低下し
ないことが望ましく、具体的には、過酸化水素濃度0.
5重量%、NaOHによるpH10、浴比1/50、8
0℃、60分の条件で晒し処理した過酸化水素晒し後の
繊維の変色(晒し耐久性)がJIS−L0805汚染用
グレースケールで評価して3級以上、繊維を飽和吸水量
を超える水の共存下80℃16時間放置した後の変色
(放置安定性)がJIS−L0805汚染用グレースケ
ールで評価して3−4級以上であることが好ましい。
HによりpH10に調節した過酸化水素0.5重量%の
水溶液中に、繊維試料と水溶液の浴比が1/50となる
よう繊維試料を投入し、80℃で、60分間晒し処理し
た繊維の、晒し処理前の繊維試料の色からの変色の程度
をJIS−L0805汚染用グレースケールで評価する
ことによって得られたものである。
純水に浸漬し、十分含水させた後取出し、80℃におい
ても飽和吸水量を超える水が維持できるに十分な量の水
を保持させたまま、容器の半分以上が空間となるよう容
器に密閉して、80℃に調整した恒温機に入れ、16時
間後取出し、脱水、乾燥した繊維の、処理前の繊維試料
からの変色の程度をJIS−L0805汚染用グレース
ケールで評価することによって得られたものである。な
お、飽和吸水量とは、十分含水した繊維の遠心脱水後
(160G×5分間)の重量から、同じ試料繊維の乾燥
(105℃×16時間)後の重量を引いた量である。ま
た、飽和吸水率は、飽和吸水量を試料繊維の乾燥(10
5℃×16時間)後の重量で除した値を%で表したもの
である。
ては、共重合成分として(メタ)アクリル酸エステル化
合物が5重量%未満であるアクリロニトリル系重合体か
らなるアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物による架
橋導入処理、加水分解、還元処理を施すことを特徴とす
る高白度吸湿性繊維の製造方法が推奨される。以下該方
法について詳述する。
リル系繊維と呼ぶこともある)としてはアクリロニトリ
ル(以下、ANという)を40重量%以上、好ましくは
50重量%以上含有するAN系重合体により形成された
繊維であり、短繊維、トウ、糸、編織物、不織布等いず
れの形態のものでも良く、また、製造工程中途品、廃繊
維などでも構わない。AN系重合体は、AN単独重合
体、ANと他の単量体との共重合体のいずれでも良い
が、ANと共重合する単量体として(メタ)アクリル酸
エステル化合物は最も好ましくは使用を避けたいが、や
むを得ず用いる場合は、5重量%未満さらに好ましくは
4.0重量%以下である必要がある。尚、(メタ)を付
した表記は、アクリル酸エステル,メタアクリル酸エス
テルの双方を表わしている。また、5重量%未満であれ
ば共重合成分としてもかまわない該エステル化合物とし
ては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)ア
クリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)
アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸
ジエチルアミノエチル等が挙げられる。それ以外の共重
合成分としてはメタリルスルホン酸、p−スチレンスル
ホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びその塩;スチレ
ン、酢酸ビニル等の単量体等、ANと共重合可能な単量体
であれば特に限定されないが、酢酸ビニルに代表される
ビニルエステル系化合物を5〜20重量%共重合させる
ことが望ましい。かかるビニルエステルとしては酢酸ビ
ニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ
る。
により架橋導入処理を施され、アクリル系繊維の溶剤で
は最早溶解されないものとなるという意味で架橋が形成
され、同時に結果として窒素含有量の増加が起きるが、
その手段は特に限定されるものではない。この処理によ
る窒素含有量の増加が1.0〜10重量%に調整し得る
手段が好ましいが、窒素含有量の増加が0.1〜1.0
重量%であっても、本発明繊維の高白度吸湿性繊維が得
られる手段である限り採用し得る。なお、窒素含有量の
増加が1.0〜10重量%に調整し得る手段としては、
ヒドラジン系化合物の濃度5〜60重量%の水溶液中、
温度50〜120℃で5時間以内で処理する手段が工業
的に好ましい。尚、窒素含有量の増加を低率に抑えるに
は、反応工学の教える処に従い、これらの条件をよりマ
イルドな方向にすればよい。ここで、窒素含有量の増加
とは原料アクリル系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化
合物による架橋が導入されたアクリル系繊維の窒素含有
量との差をいう。
は、特に限定されるものでなく、水加ヒドラジン、硫酸
ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒド
ラジンカーボネート等、この他エチレンジアミン、硫酸
グアニジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン、メラ
ミン等のアミノ基を複数含有する化合物が例示される。
処理工程を経た繊維は、酸処理を施しても良い。この処
理は、繊維の色安定性の向上に寄与がある。ここに使用
する酸としては、硝酸、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液、
有機酸等が挙げられるが特に限定されない。この処理の
前に架橋導入処理で残留したヒドラジン系化合物は、十
分に除去しておく。該酸処理の条件としては、特に限定
されないが、大概酸濃度5〜20重量%、好ましくは7
〜15重量%の水溶液に、温度50〜120℃で0.5
〜10時間被処理繊維を浸漬するといった例が挙げられ
る。
程を経た繊維、或いはさらに酸処理を経た繊維は、続い
てアルカリ性金属塩水溶液により加水分解される。この
処理により、アクリル系繊維のヒドラジン系化合物処理
による架橋導入処理に関与せずに残留しているCN基、及
び架橋処理工程後酸処理を施した場合には残留している
CN基と一部酸処理で加水分解されたCONH2基の加水分解
が進められる。これらの基は加水分解によりカルボキシ
ル基を形成するが、使用している薬剤がアルカリ性金属
塩であるので、結局金属塩型カルボキシル基を生成して
いる。ここで使用するアルカリ性金属塩としては、アル
カリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカ
リ金属炭酸塩等が挙げられる。使用するアルカリ性金属
塩の濃度は特に限定されないが、1〜10重量%さらに
好ましくは1〜5重量%の水溶液中、温度50〜120
度で1〜10時間以内で処理する手段が工業的、繊維物
性的にも好ましい。
塩型としては、Li,Na,K等のアルカリ金属、M
g,Ca,Ba等のアルカリ土類金属を挙げることが出
来る。加水分解を進める程度即ち金属塩型カルボキシル
基の生成量は4〜10meq/gに制御すべきであり、
これは上述した処理の際の薬剤の濃度や温度,処理時間
の組合せで容易に行うことができる。尚、かかる加水分
解工程を経た繊維は、CN基が残留していてもいなくて
もよい。CN基が残留していれば、その反応性を利用し
て、さらなる機能を付与する可能性がある。
る還元処理剤としてはハイドロサルファイト塩、チオ硫
酸塩、亜硫酸塩、亜硝酸塩、二酸化チオ尿素、アスコル
ビン酸塩、ヒドラジン系化合物からなる群より選ばれた
1種類または2種類以上を組み合わせた薬剤が好適に使
用できる。該還元処理の条件としては、特に限定されな
いが、概ね薬剤濃度0.5〜5重量%の水溶液に、温度
50℃〜120℃で30分間〜5時間被処理繊維を浸漬
するといった例が挙げられる。なお、該還元処理は前述
の加水分解時に同時に行ってもよいし、加水分解後に行
なってもよい。
られるが、より色を安定化させるため、前述の還元処理
工程を経た繊維に、酸処理を施し、該金属塩型カルボキ
シル基をH型化し、Li、Na、K、Ca、Mg、B
a、Alから選ばれる金属塩処理により、該H型カルボ
キシル基の一部を金属塩型化(塩型調整処理)してH型
/金属塩型のモル比を90/10〜0/100に調整す
ることが好ましい。
酸、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液、有機酸等が挙げられ
るが特に限定されない。該酸処理の条件としては、特に
限定されないが、大概酸濃度1〜10重量%、好ましく
は2〜10重量%の水溶液に、温度50〜120℃で2
〜10時間被処理繊維を浸漬するといった例が挙げられ
る。
属種類としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Ba、
Alから選ばれるが、Na、K、Ca、Mg等が特に推
奨される。又塩の種類としては、これらの金属の水溶性
塩であれば良く、例えば水酸化物,ハロゲン化物,硝酸
塩,硫酸塩,炭酸塩等が挙げられる。具体的には、夫々
の金属で代表的なものとして、Na塩としてはNaO
H、Na2CO3、K塩としてはKOH、Ca塩として
はCa(OH)2、Ca(NO3)2、CaCl2が好
適である。
上述した範囲内であるが、繊維に与えようとする機能に
より、金属の種類と共に適宜設定する。塩型調整処理の
具体的な実施にあたっては、処理槽に金属塩の0.2〜
30重量%の水溶液を準備し、20℃〜80℃において
0.25〜5Hr程度被処理繊維を浸漬する、あるいは
該水溶液を噴霧する等の方法がある。上述の比率に制御
するには、緩衝剤共存下での塩型調整処理が好ましい。
緩衝剤としてはpH緩衝域が5.0〜9.2のものが好
適である。また、金属塩型カルボキシル基の金属塩の種
類は1種類に限定されるわけではなく、2種類以上が混
在してもかまわない。
は、吸湿性,難燃性,抗菌性を有しながら、加工性も優
れ、かつ従来品よりもさらに白度が向上し色安定性にも
優れた吸湿性繊維である。
金属塩化合物の如き水溶解度が低い物質で行う場合に
は、該工程においてH型カルボキシル基からH型/金属
塩型のモル比を、金属塩型を高める方向にするのに幾分
難がある。かかる場合には、酸処理の後で塩型調整処理
の前処理として、酸処理工程においてH型化されている
カルボキシル基を、苛性ソーダあるいは苛性カリ等の水
溶液で該カルボキシル基の示すpHを調整即ち中和処理
(pH=5〜11位)しておくことが推奨される。かか
る処方により、中和処理後のカルボキシル基はH型とN
a又はK型が共存する状態になっているので、次の塩型
調整処理はCa等とNa又はKとの交換となって容易に
進行するので、提起した難点が解消する。
造手段は特に限定されるものではなく、通常の衣料用繊
維の製造に採用される手段を用いることができる。ま
た、このような繊維を出発繊維として用いる事が好まし
いが、必ずしも最終工程まで済んでいる必要はなく、ア
クリル系繊維製造工程途中のものであっても、あるいは
最終繊維に紡績加工等を施した後のものでも良い。中で
も出発アクリル系繊維として、アクリル系繊維の製造工
程途中である延伸後熱処理前の繊維(AN系重合体の紡
糸原液を常法に従って紡糸し、延伸配向され、乾燥緻密
化、湿熱緩和処理等の熱処理の施されてない繊維、中で
も湿式又は乾/湿式紡糸、延伸後の水膨潤ゲル状繊維:
水膨潤度 30〜150%)を使用すると、処理液中へ
の繊維の分散性、繊維中への処理液の浸透性などが改善
され、以て架橋結合の導入や加水分解反応が均一かつ速
やかに行われるので望ましい。
拌機能、温度制御機能を備えた容器内に充填し、前述の
工程を順次実施する、あるいは複数の容器を並べて連続
的に実施する等の手段をとることが、装置上、安全性、
均一処理性等の諸点から望ましい。かかる装置としては
染色機が例示される。
の方法としては、アクリル系繊維に、上述してきたヒド
ラジン系化合物による架橋導入処理、加水分解、還元処
理、酸処理を施し、更に還元処理、酸処理を繰り返す方
法が挙げられる。還元処理、酸処理を繰り返すことによ
り、白度及び色安定性が向上し、L*85以上、a*±
6の範囲内であり、且つ洗濯耐久性が3−4級以上とい
う高白度吸湿性繊維が得られる。本方法によると、アク
リル系繊維を形成するアクリロニトリル系重合体の共重
合成分として、(メタ)アクリル酸エステル化合物が5
重量%以上であっても、本発明の高白度吸湿性繊維を得
ることが出来るが、還元処理、酸処理を繰り返すことが
必要であることから、繊維物性が低下したり、生産コス
トが高くなったりするため、上述した本発明が推奨する
製造方法を採用する方が有利である。
を備え、色安定性に優れた高白度吸湿性繊維であり、吸
湿に伴って発熱も起こる。又、窒素を含有した架橋構造
や高い吸湿率に起因すると思われる難燃性、抗菌性、消
臭性、耐薬品性等も備えている。このため、本発明の繊
維は下着、肌着、ランジェリー、パジャマ、乳児用製
品、ガードル、ブラジャー、手袋、靴下、タイツ、レオ
タード、トランクス等衣料品全般、セーター、トレーナ
ー、ポロシャツ、スーツ、スポーツウェア、マフラー、
等の中外衣料用途、ハンカチ、タオル、カーテン、布団
地、布団、枕、クッション、ぬいぐるみ等の中綿、詰め
綿、シーツ、毛布、パッド等の寝装寝具、カーペット、
マット、サポーター、芯地、靴の中敷き、インソール、
スリッパ、壁紙等の建材、メディカル分野への用途等に
好適に適用される。
優れた白度及び色安定性を有する理由は、十分解明する
に至っていないが、概ね次のように考えられる。即ち、
ヒドラジン系化合物により架橋構造を導入される際に、
原料であるアクリル系繊維が共重合成分として(メタ)
アクリル酸エステル化合物を5重量%以上含む場合は該
共重合成分のカルボニル炭素の部分にヒドラジン系化合
物が反応することにより結果的に架橋構造に酸素分子を
含む結合が導入され発色しやすく、即ち色安定性が劣る
こととなるが、本発明が推奨する製造方法では該結合の
生成を原料段階で抑制したために発色が抑えられ、過酸
化水素晒し処理や洗濯繰り返し等の処理によっても発色
しにくいと推定される。また、(メタ)アクリル酸エス
テル化合物を5重量%以上含む場合であっても、還元処
理、酸処理を繰り返すことにより、過酸化水素晒し処理
や洗濯繰り返し等の処理によっても、発色する分子構造
に変化しにくい安定した分子構造を持つためであると推
定される。
る。実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基
準で示す。なお、金属塩型カルボキシル基量、白度およ
び吸湿率は以下の方法により求めた。
/g) 十分乾燥した加水分解後の繊維約1gを精秤し(X
g)、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温
しながら1mol/l塩酸水溶液を添加してpH2に
し、次いで0.1mol/l苛性ソーダ水溶液で常法に
従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からカルボキシル
基に消費された苛性ソーダ水溶液消費量(Yml)を求
め、次式によってカルボキシル基量(meq/g)を算
出した。 (カルボキシル基量)=0.1Y/X 別途、上述のカルボキシル基量測定操作中の1mol/
l塩酸水溶液の添加によるpH2への調整をすることな
く同様に滴定曲線を求めH型カルボキシル基量(meq
/g)を求めた。これらの結果から次式により金属塩型
カルボキシル基量を算出した。 (金属塩型カルボキシル基量)=(カルボキシル基量)
−(H型カルボキシル基量)
ル(35mlの透明円筒セル)に充填し、東京電色社製
色差計TC−1500MC−88型(D65光源)に
て、60回/分の割合で回転させながら測色した。この
測定を3回繰返し、L*、a*の値(平均値)を求め
た。 (3)吸湿率(%) 試料繊維約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間
乾燥して重量を測定する(W1g)。次に試料を温度2
0℃で65%RHの恒湿槽に24時間入れておく。この
ようにして吸湿した試料の重量を測定する(W2g)。
以上の測定結果から、次式によって算出した。 (吸湿率 %)={(W2−W1)/W1}×100
う)4重量%からなるAN系重合体(30℃ジメチルホ
ルムアミド中での極限粘度[η]:1.2)10部を4
8%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液
を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率;10倍)し
た後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾
燥、湿熱処理して単繊維繊度1.7dtexの原料繊維
を得た。
%水溶液中で、98℃×5Hr架橋導入処理を行った。
本処理により、架橋が導入され、窒素含有量が増加す
る。なお、窒素増加量は、原料繊維と架橋導入処理後の
繊維を元素分析にて窒素含有量を求め、その差から算出
した。次に、苛性ソーダの3重量%水溶液中で、90℃
×2Hr加水分解処理を行い、純水で洗浄した。この処
理により、繊維にNa型カルボキシル基が5.5meq
/g生成していた。
イトナトリウム塩(以下、SHSという)の1重量%水
溶液中で、90℃×2Hr還元処理を行い、純水で洗浄
した。続いて、硝酸の3重量%水溶液中、90℃×2H
r酸処理を行った。これにより5.5meq/g生成し
ていたNa型カルボキシル基は全量がH型カルボキシル
基になっていた。該酸処理後の繊維を、純水中に投入
し、濃度48%の苛性ソーダ水溶液をH型カルボキシル
基に対し、Na中和度70モル%になる様に添加し、6
0℃×3Hr塩型調整処理を行った。
与、脱水、乾燥し実施例1の高白度吸湿性繊維を得た。
得られた繊維の吸湿率、白度、色安定性を調べ、塩型カ
ルボキシル基量、窒素増加量などと共に表1に示した。
また、比較例1は、AN94重量%、MA6重量%から
なるAN系重合体を用いた以外は実施例1と同様にして
得られた吸湿性繊維である。
様にして実施例2の高白度吸湿性繊維を得た。また、実
施例3は、実施例1の繊維を塩化カルシウム水溶液で処
理して、Na型カルボキシル基をCa型カルボキシル基
としたものである。これらの繊維の特性も表1に併記し
た。
施例1と同様にして、実施例4及び5の高白度吸湿性繊
維を得た。これらの繊維の特性も表1に併記した。な
お、表中水加ヒドラジンをHH、チオ硫酸ナトリウムを
STSと表記した。
ルボキシル基量とCa塩型カルボキシル基量のモル比が
50/50となるよう塩型調整処理条件を変更した以外
は実施例1と同様にして、実施例6の高白度吸湿性繊維
を得た。ここで塩型調整処理は、Na中和度50モル%
になる条件にて処理した後、塩化カルシウム水溶液で処
理して、Na型カルボキシル基をCa型カルボキシル基
とした。これらの繊維の特性も表1に併記した。
加水分解する前に10重量%の硝酸水溶液中、90℃で
2時間酸処理した以外は実施例1と同様にして、実施例
7の高白度吸湿性繊維を得た。実施例8の繊維は、実施
例7の繊維を実施例3に記載の方法を用いてCa型カル
ボキシル基としたものである。これらの繊維の特性も表
1に併記した。
湿率を示し、白度もL*88.4、a*0.99と良好
であった。また、晒し耐久性、洗濯耐久性および放置安
定性もそれぞれ3−4級、4−5級、4−5級と色安定
性に優れた繊維であった。実施例1と金属塩の種類が異
なる実施例2、3は、実施例1に比べ、吸湿率が若干低
下するものの、白度、色安定性は実施例1繊維と遜色の
ない結果であった。実施例1と還元処理剤の種類が異な
る実施例4、5は、実施例1に比べ、若干、白度及び色
安定性が劣るが、使用可能なレベルであった。カルシウ
ム塩型カルボキシル基を有し、H型カルボキシル基のモ
ル比が50モル%と高い実施例6の吸湿率は20%であ
り、吸湿率、白度、色安定性共に、使用可能なレベルで
あった。架橋導入処理工程を経た繊維を、加水分解する
前に酸処理した実施例7、8は実施例1、3に比べ、白
度は大差ないものの、色安定性がさらに高いものであっ
た。一方、比較例1はアクリル酸エステル化合物である
MAを6重量%含む原料繊維を使用した。白度は良好で
あったが、晒し耐久性、洗濯耐久性および放置安定性
は、それぞれ2級、3級、3級と色安定性が劣り加工段
階あるいは最終製品としての使用段階で問題となるレベ
ルであった。
う)を採用し、AN系重合体の組成を表2に記載したよ
うに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例9、
10の高白度吸湿性繊維を得た。この繊維の特性も表2
に併記した。なお、表中、酢酸ビニルをVACと略称し
た。
件の水加ヒドラジン濃度及び処理時間を調整し、塩型調
整処理をNa型カルボキシル基が30モル%となる条件
に変更した以外は実施例10と同様にして、実施例11
の高白度吸湿性繊維を得た。この繊維の特性も表2に併
記した。
記載した量となるよう、架橋導入処理条件の水加ヒドラ
ジン濃度及び処理時間を調整した以外は実施例1と同様
にして、実施例12、13の高白度吸湿性繊維を得た。
これらの繊維の特性も表2に併記した。
まず、VACを10重量%含む原料アクリル系繊維を使
用し、還元剤としてUTOを使用しているが、吸湿率は
35%と高く、白度はL*87.6、a*0.91と優
れたものであり、洗濯耐久性、晒し耐久性および放置安
定性もそれぞれ4−5級、4級、4−5級と色安定性に
優れた繊維であった。実施例10はMAを2重量%含む
原料アクリル系繊維を使用しているが、高い吸湿率を持
ち、高い白度と優れた色安定性を維持していた。実施例
11は塩型調整処理でNa型カルボキシル基を30モル
%としたものであり、吸湿率が24%となったが、優れ
た白度と色安定性を維持していた。実施例12、13は
還元剤としてUTOを採用し、窒素増加量がそれぞれ
2、9重量%であり、金属塩型カルボキシル基量は8.
5、4.2meq/gであった。これらは優れた白度と
色安定性を維持していた。
実施例9と同様にして、実施例14の高白度吸湿性繊維
を得た。この繊維の特性は表3に示した。
10重量%の硝酸水溶液中、90℃で2時間酸処理を施
す以外は実施例14と同様にして、実施例15の高白度
吸湿性繊維を得た。これらの繊維の特性も表3に併記し
た。
処理後の酸処理及び塩型調整処理を行わない以外は実施
例1と同様にし、比較例2の吸湿性繊維を得た。
件の水加ヒドラジン濃度及び処理時間を調整し、表3に
示した還元処理剤を用いた以外は比較例2と同様にし
て、比較例3、4の繊維を得た。この繊維の特性も表3
に併記した。
は実施例1と同様にして、比較例5の吸湿性繊維を得
た。この繊維の特性も表3に併記した。
は実施例7と同様にし、比較例6の吸湿性繊維を得た。
塩型調整処理を行なわない以外は比較例6と同様にして
得られた繊維を、再度SHSの1重量%水溶液中で、9
0℃×2Hr還元処理を行い、純水で洗浄し、続いて、
硝酸の3重量%水溶液中、90℃×2Hr酸処理を行
い、さらに、塩型調整処理を行って実施例16の高白度
吸放湿繊維を得た。これらの繊維の特性も表3に併記し
た。
42%を示し、L*87.3、a*1.18と十分な白
度を有していた。色安定性は、実施例9に比べ若干劣る
ものの、洗濯耐久性4級、晒し耐久性3級、放置安定性
3−4級と十分な性能を有していた。実施例15の繊維
は実施例14と同様に優れた吸湿率および白度を示し、
さらに色安定性では洗濯耐久性4級、晒し耐久性3−4
級、放置安定性4級と実施例14よりも優れた安定性を
有していた。実施例16の繊維は、MAが6重量%である
が、還元処理、酸処理を繰り返すことで、(メタ)アク
リル酸エステル化合物が5重量%未満である他の実施例
と同様に優れた白度及び色安定性を有していた。
たものの繊維の色安定性にきわめて劣り、さらに比較例
3は吸湿時のハンドリング性が悪く実用的には採用が困
難な結果となった。また、比較例4の繊維は、吸湿率が
10%と低く、しかも、L*84.1、a*8.23で
高白度とはいい難いものであった。比較例5では還元処
理を省略しているため赤色に着色していた。比較例6の
繊維は、実施例16に比べ還元処理、酸処理を繰り返し
ていないため、白度は良好であったものの、色安定性に
劣るものであった。
0−303353号公報の技術により得られるものが、
吸湿性能と白度のバランスのとれたものとされてきた
が、本発明の出現により、吸湿性能を維持し、且つ染色
工程での晒しや最終製品での繰り返し洗濯をおこなって
も色変化の起こらない、即ち色安定性に優れた繊維の提
供が可能となった。本発明による繊維は用途が限定され
ることなく、好適に使用できるものである。なお、本発
明繊維の製造において、一旦特定のカルボキシル基の
「金属塩型」及び特定のH型/金属塩型の「モル比」に
調整された製品繊維も、要求があれば該製品繊維とは異
なる「モル比」あるいは「金属塩型」に再調整できるこ
とも工業的な利点である。
Claims (7)
- 【請求項1】 20℃65%RHにおける飽和吸湿率が
10重量%以上である吸湿性合成繊維であって、該繊維
の白度がJIS−Z−8729に記載の表示方法におい
て、L*85以上、a*±6の範囲内であり、且つJI
S−L0217−103法で洗濯処理した洗濯5回後の
繊維の変色がJIS−L0805汚染用グレースケール
で評価して3−4級以上であることを特徴とする高白度
吸湿性合成繊維。 - 【請求項2】 高白度吸湿性合成繊維の飽和吸水率が3
00重量%未満であることを特徴とする請求項1記載の
高白度吸湿性合成繊維。 - 【請求項3】 高白度吸湿性合成繊維が、共重合成分と
して(メタ)アクリル酸エステル化合物が5重量%未満
であるアクリロニトリル系重合体からなるアクリル系繊
維に、ヒドラジン系化合物による架橋導入処理、加水分
解、還元処理を施したものであることを特徴とする請求
項1又は2に記載の高白度吸湿性合成繊維。 - 【請求項4】 洗濯5回後の繊維の白度がJIS−Z−
8729に記載の表示方法において、L*85以上、a
*±6の範囲内であることを特徴とする請求項1から3
のいずれかに記載の高白度吸湿性合成繊維。 - 【請求項5】 共重合成分として(メタ)アクリル酸エ
ステル化合物が5重量%未満であるアクリロニトリル系
重合体からなるアクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物
による架橋導入処理、加水分解、還元処理を施すことを
特徴とする高白度吸湿性合成繊維の製造方法。 - 【請求項6】 (1)共重合成分として(メタ)アクリ
ル酸エステル化合物が5重量%未満であるアクリロニト
リル系重合体からなるアクリル系繊維をヒドラジン系化
合物処理して、架橋の導入と1.0〜10.0重量%の
窒素含有量の増加を行わしめ、(2)アルカリ性金属塩
水溶液処理して、CN基を加水分解した金属塩型カルボ
キシル基を4.0〜10.0meq/g生成せしめ、
(3)ハイドロサルファイト塩、チオ硫酸塩、亜硫酸
塩、亜硝酸塩、二酸化チオ尿素、アスコルビン酸塩、ヒ
ドラジン系化合物からなる群より選ばれた還元処理剤で
還元処理することを特徴とする高白度吸湿性合成繊維の
製造方法。 - 【請求項7】 還元処理後にさらに酸処理を施し、該金
属塩型カルボキシル基をH型化し、Li、Na、K、C
a、Mg、Ba、Alから選ばれる金属塩による処理に
より、該H型カルボキシル基の一部を金属塩型化してH
型/金属塩型のモル比を90/10〜0/100に調整
することを特徴とする請求項5または6に記載の高白度
吸湿性合成繊維の製造方法。
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