JP2002265879A - カチオン電着塗料組成物、カチオン電着塗装方法及び被膜を有する被塗装物 - Google Patents

カチオン電着塗料組成物、カチオン電着塗装方法及び被膜を有する被塗装物

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JP2002265879A
JP2002265879A JP2001066062A JP2001066062A JP2002265879A JP 2002265879 A JP2002265879 A JP 2002265879A JP 2001066062 A JP2001066062 A JP 2001066062A JP 2001066062 A JP2001066062 A JP 2001066062A JP 2002265879 A JP2002265879 A JP 2002265879A
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electrodeposition coating
cationic electrodeposition
group
coating composition
resin
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JP2001066062A
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English (en)
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Toshitaka Kawanami
俊孝 川浪
Kazuo Morichika
和生 森近
Takayuki Kokubu
孝幸 国分
Ichiro Kawakami
一郎 川上
Hiroyuki Sakamoto
裕之 坂本
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Nippon Paint Co Ltd
Original Assignee
Nippon Paint Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹
脂組成物を含有するカチオン電着塗料により得られる電
着被膜の乾きムラを効果的に防止するとともに、上記電
着被膜の密着性を改良することによる耐水性向上をも達
成することができるカチオン電着塗料組成物を提供す
る。 【解決手段】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
つ樹脂組成物、及び、下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1 は(O−CH2 CH2n 〔式中、nは0
〜6の整数である。〕で表されるポリオキシエチレン鎖
であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基である。)で
表されるモノアルコール化合物を含むことを特徴とする
カチオン電着塗料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カチオン電着塗料
組成物、これを用いるカチオン電着塗装方法及びそれに
よって得られる被膜を有する被塗装物に関し、更に詳し
くは、電着塗装後の被膜の乾きムラが改良されたカチオ
ン電着塗料組成物、これを用いるカチオン電着塗装方法
及びそれによって得られる被膜を有する被塗装物に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自動車等の塗装工程は、一般的には、リ
ン酸塩等により予め化成処理が施された被塗装物に、カ
チオン電着塗料による下塗り塗装をした後、中塗り塗
料、次いで上塗り塗料が塗装され、得られる塗膜を加熱
硬化させることからなる。
【0003】このうち、下塗り塗装に用いられるカチオ
ン電着塗料は、防錆や防食等を主目的として塗装される
ものであり、特開2000−38525号公報には、ス
ルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物を含
有するカチオン電着塗料組成物が開示されている。この
スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物を
含有するカチオン電着塗料は、つきまわり性及び耐衝撃
性に優れた電着塗膜を形成することができるものであ
る。
【0004】一方、塗料の添加剤として、電着塗装時に
発生する電着被膜の乾きムラを防止するために、界面活
性剤が用いられる場合があり、このようなものとして、
主鎖が左右対称な非イオン性化合物が知られている。こ
のような非イオン性化合物としては、例えば、アルキレ
ンオキサイドや水酸基を有する分岐状アルキル基であっ
て同一構造を有するものが、炭素三重結合を構成する2
つの炭素原子に結合した化合物を挙げることができる。
しかしながら、このような左右対称の非イオン性化合物
を、上述のスルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹
脂組成物を含有するカチオン電着塗料に添加した場合、
得られる電着被膜の乾きムラを充分に防止することがで
きなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題に鑑み、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ
樹脂組成物を含有するカチオン電着塗料により得られる
電着被膜の乾きムラを効果的に防止するとともに、上記
電着被膜の密着性を改良することによる耐水性向上をも
達成することができるカチオン電着塗料組成物を提供す
ることにある。
【0006】即ち、本発明者は、炭素三重結合を構成す
る2つの炭素原子のうち一方の炭素原子に水素原子が結
合し、他方の炭素原子に水酸基含有分岐状アルキル基が
結合してなるモノアルコール化合物を、スルホニウム基
とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物を含有するカチオ
ン電着塗料に添加することにより、上記電着塗料により
得られる電着被膜の乾きムラが充分に防止されるととも
に、密着性の改良による耐水性向上が達成されることを
見出し、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、スルホニウム基とプロパ
ルギル基とを持つ樹脂組成物、及び、下記一般式(1)
【0008】
【化3】
【0009】(式中、R1 は(O−CH2 CH2n
〔式中、nは0〜6の整数である。〕で表されるポリオ
キシエチレン鎖であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル
基である。)で表されるモノアルコール化合物を含むこ
とを特徴とするカチオン電着塗料組成物である。上記モ
ノアルコール化合物は、上記カチオン電着塗料組成物中
の樹脂固形分重量に対して、好ましくは0.1〜10重
量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。
【0010】上記スルホニウム基とプロパルギル基とを
持つ樹脂組成物は、上記カチオン電着塗料組成物中の樹
脂固形分100g当り、スルホニウム基を5〜400m
mol及びプロパルギル基を10〜495mmol含有
し、スルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が
500mmol以下であることが好ましい。上記スルホ
ニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物は、ま
た、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラッ
ククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる
ものであって、数平均分子量として700〜5000を
有するものであり、上記樹脂組成物の固形分100g当
り、スルホニウム基を5〜250mmol及びプロパル
ギル基を20〜395mmol含有し、スルホニウム基
及びプロパルギル基の合計含有量が400mmol以下
であることが好ましい。本発明は、また、スルホニウム
基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物に、下記一般式
(1)
【0011】
【化4】
【0012】(式中、R1 は(O−CH2 CH2n
〔式中、nは0〜6の整数である。〕で表されるポリオ
キシエチレン鎖であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル
基である。)で表されるモノアルコール化合物を分散さ
せることにより得られることを特徴とするカチオン電着
塗料組成物である。本発明は、更に、被塗装物に上記カ
チオン電着塗料組成物を電着塗装し、得られる被膜を加
熱硬化させる工程を含むことを特徴とするカチオン電着
塗装方法である。本発明は、また、上記カチオン電着塗
装方法によって得られる被膜を有することを特徴とする
被塗装物である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】カチオン電着塗料組成物 本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記一般式(1)
で表されるモノアルコール化合物を含むものである。上
記モノアルコール化合物は、炭素三重結合に水素原子が
直接結合しているので、これと共通の構造を有するプロ
パルギル基が上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂組成
物に含まれることにより、上記樹脂組成物との相溶性や
均一性が向上し、上記樹脂組成物中に充分に分散される
ためと推定されるが、得られる未硬化電着被膜の乾きム
ラが充分に防止されるとともに、密着性ひいては防錆性
が向上する。
【0014】上記一般式(1)中、R1 は(O−CH2
CH2n で表されるポリオキシエチレン鎖であり、上
記式中、nは0〜6の整数である。nが6を超えると、
分子の安定性が低下し、また、親水性が高くなりすぎて
本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂との相溶性が
低下し、分散性が悪化して、乾きムラ防止が不充分とな
る。nが0である場合には、上記一般式(1)において
炭素三重結合に隣接する1つの炭素原子に、−R1 −O
H基としてヒドロキシル基が直接結合することとなる。
【0015】上記一般式(1)中、R2 は炭素数1〜5
のアルキル基である。1未満であると、上記モノアルコ
ール化合物の疎水性が低下し、本発明のカチオン電着塗
料組成物中の樹脂との相溶性が低下し、分散性に劣っ
て、乾きムラが充分に防止されない。5を超えると、上
記モノアルコール化合物の疎水性が高くなりすぎ、水性
媒体において分散性が低下し、乾きムラ防止が不充分と
なる。上記R2 のアルキル基は、直鎖状であっても分岐
状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、1−
プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチ
ル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル
基等が挙げられ、これらは置換されていてもよいが、非
置換であることが好ましい。好ましくは、炭素数2〜4
のアルキル基であり、より好ましくは、1−プロピル
基、2−プロピル基である。このようなモノアルコール
化合物としては、例えば、市販品を用いることができ、
サーフィノール61(n=0、R2 はイソプロピル基;
エアープロダクツ社製)が好ましい。
【0016】上記モノアルコール化合物の製造方法とし
ては、例えば、高圧下でのアセチレンに対するアルコー
ルやケトン等の付加によって得る方法を挙げることがで
きる。
【0017】上記モノアルコール化合物は、上記カチオ
ン電着塗料組成物中の樹脂固形分重量に対して、0.1
〜10重量%であることが好ましい。0.1重量%未満
であると、乾きムラが不充分であり、10重量%を超え
ると、耐水性等の塗膜物性が低下する。より好ましく
は、0.2〜5重量%である。
【0018】本発明のカチオン電着塗料組成物は、更
に、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成
物を含むものである。上記樹脂組成物を構成する樹脂
は、一分子中にスルホニウム基及びプロパルギル基の両
者を持っていてもよいが、必ずしもその必要はなく、例
えば、一分子中にスルホニウム基又はプロパルギル基の
いずれか一方だけを持っていてもよい。この後者の場合
には、樹脂組成物全体として、これら2種の硬化性官能
基の全てを持っている。すなわち、上記樹脂組成物は、
スルホニウム基及びプロパルギル基を持つ樹脂からなる
か、スルホニウム基だけを持つ樹脂及びプロパルギル基
だけを持つ樹脂の混合物からなるか、又は、これらすべ
ての混合物からなるものであってもよい。本発明のカチ
オン電着塗料組成物に含まれる樹脂組成物は、上述の意
味においてスルホニウム基及びプロパルギル基を持つ。
【0019】上記スルホニウム基は、上記樹脂組成物の
水和官能基である。スルホニウム基は、電着塗装過程で
一定以上の電圧又は電流を与えられると、電極上で電解
還元反応をうけてイオン性基が消失し、不可逆的に不導
体化することができる。本発明のカチオン電着塗料組成
物は、このことにより高度のつきまわり性を発揮するこ
とができるものと考えられる。
【0020】本発明のカチオン電着塗料組成物が使用さ
れる電着塗装過程においては、電極反応が引き起こさ
れ、生じた水酸化物イオンをスルホニウム基が保持する
ことにより電解発生塩基が電着被膜中に発生するものと
考えられる。この電解発生塩基は、電着被膜中に存在す
る加熱による反応性の低いプロパルギル基を、加熱によ
る反応性の高いアレン結合に変換することができる。
【0021】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物の骨格となる樹脂としては、特に限定され
るものではないが、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
エポキシ樹脂としては、1分子中に少なくとも2つ以上
のエポキシ基を有するものが好適に用いられ、具体的に
は、例えば、エピビスエポキシ樹脂、これをジオール、
ジカルボン酸、ジアミン等により鎖延長したもの;エポ
キシ化ポリブタジエン;ノボラックフェノール型ポリエ
ポキシ樹脂;ノボラッククレゾール型ポリエポキシ樹
脂;ポリグリシジルアクリレート;脂肪族ポリオール又
はポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;
多塩基性カルボン酸のポリグリシジルエステル等のポリ
エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのうち、硬
化性を高めるための多官能基化が容易であるので、ノボ
ラックフェノール型ポリエポキシ樹脂、ノボラッククレ
ゾール型ポリエポキシ樹脂、ポリグリシジルアクリレー
トが好ましい。なお、上記エポキシ樹脂の一部は、モノ
エポキシ樹脂であってもかまわない。
【0022】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を骨格とする樹脂か
らなり、数平均分子量は、500〜20000である。
数平均分子量が500未満であると、カチオン電着塗装
の塗装効率が悪くなり、20000を超えると被塗物表
面で良好な被膜を形成することができない。上記数平均
分子量は樹脂骨格に応じてより好ましい分子量を設定可
能であり、例えば、ノボラックフェノール型エポキシ樹
脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とす
る場合には、700〜5000であることがより好まし
い。
【0023】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるスルホニウム基の含有量は、後述するス
ルホニウム基及びプロパルギル基の含有量の条件を充た
した上で、上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分
100gあたり5〜400mmolである。5mmol
/100g未満であると、十分なつきまわり性や硬化性
を発揮することができず、また、水和性、浴安定性が悪
くなる。400mmol/100gを超えると、被塗物
表面への被膜の析出が悪くなる。上記スルホニウム基の
含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより好ましい含
有量を設定可能であり、例えば、上記樹脂組成物がノボ
ラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラッククレゾ
ール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる場合に
は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分1
00gあたり5〜250mmolであることがより好ま
しく、10〜150mmolが更に好ましい。
【0024】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるプロパルギル基は、上記カチオン電着塗
料において、硬化官能基として作用するのみならず、理
由は不明であるが、スルホニウム基と併存することによ
り、上記カチオン電着塗料組成物のつきまわり性を一層
向上させることができる。
【0025】本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
組成物におけるプロパルギル基の含有量は、後述するス
ルホニウム基及びプロパルギル基の含有量の条件を充た
した上で、上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分
100gあたり10〜495mmolである。10mm
ol/100g未満であると、十分なつきまわり性や硬
化性を発揮することができず、495mmol/100
gを超えると、カチオン電着塗料として使用した場合の
水和安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。上記プロパ
ルギル基の含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより
好ましい含有量を設定可能であり、例えば、上記樹脂組
成物がノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラ
ッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からな
る場合には、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂
固形分100gあたり20〜395mmolであること
がより好ましい。
【0026】また、本発明のカチオン電着塗料組成物に
含まれる樹脂組成物中のスルホニウム基及びプロパルギ
ル基の合計含有量は、上記カチオン電着塗料組成物中の
樹脂固形分100gあたり500mmol以下である。
500mmolを超えると、樹脂が実際には得られなか
ったり、目的とする性能が得られないことがある。上記
樹脂組成物中のスルホニウム基及びプロパルギル基の合
計含有量は、用いられる樹脂骨格に応じてより好ましい
含有量を設定可能であり、例えば、ノボラックフェノー
ル型エポキシ樹脂、ノボラッククレゾール型エポキシ樹
脂の場合には、400mmol以下であることがより好
ましい。
【0027】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物中のプロパルギル基の一部は、アセチリド
化されていてもよい。アセチリドは、塩類似の金属アセ
チレン化物である。上記樹脂組成物中のアセチリド化さ
れるプロパルギル基の含有量は、樹脂組成物固形分10
0gあたり0.1〜40mmolであることが好まし
い。0.1mmol未満であると、アセチリド化による
効果が十分発揮されず、40mmolを超えると、アセ
チリド化が困難である。この含有量は、使用する金属に
応じてより好ましい範囲を設定することが可能である。
【0028】上記アセチリド化されたプロパルギル基に
含まれる金属としては、触媒作用を発揮する金属であれ
ば特に限定されず、例えば、銅、銀、バリウム等の遷移
金属を挙げることができる。これらのうち、環境適合性
を考慮するならば、銅、銀が好ましく、入手容易性か
ら、銅がより好ましい。銅を使用する場合、上記樹脂組
成物中のアセチリド化されるプロパルギル基の含有量
は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分1
00gあたり0.1〜20mmolであることがより好
ましい。
【0029】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物中のプロパルギル基の一部をアセチリド化
することにより、硬化触媒を樹脂中に導入することがで
きる。このようにすれば、一般に、有機溶媒や水に溶解
又は分散しにくい有機遷移金属錯体を使用する必要がな
く、遷移金属であっても容易にアセチリド化して導入可
能であるので、難溶性の遷移金属化合物であっても自由
に塗料組成物に使用可能である。また、遷移金属有機酸
塩を使用する場合のように、有機酸塩がアニオンとして
電着浴中に存在することを回避でき、更に、金属イオン
が限外ろ過によって除去されることはなく、浴管理やカ
チオン電着塗料の設計が容易となる。なお、このアセチ
リド化は、上記モノアルコール化合物の炭素三重結合の
一部について行われていてもよい。
【0030】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物には、所望により、炭素−炭素二重結合を
含有させてもよい。上記炭素−炭素二重結合は、反応性
が高いので硬化性を一層向上させることができる。
【0031】上記炭素−炭素二重結合の含有量は、後述
するプロパルギル基及び炭素−炭素二重結合の含有量の
条件を充たした上で、本発明のカチオン電着塗料組成物
中の樹脂固形分100gあたり10〜485mmolが
好ましい。10mmol/100g未満であると、添加
により十分な硬化性を発揮することができず、485m
mol/100gを超えると、カチオン電着塗料として
使用した場合の水和安定性に悪影響を及ぼすおそれがあ
る。上記炭素−炭素二重結合の含有量は、用いられる樹
脂骨格に応じてより好ましい含有量を設定可能であり、
例えば、上記樹脂組成物がノボラックフェノール型エポ
キシ樹脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨
格とする樹脂からなる場合には、20〜375mmol
であることがより好ましい。
【0032】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が上記炭素−炭素二重結合を含有する場
合、上記プロパルギル基及び炭素−炭素二重結合の合計
含有量は、本発明のカチオン電着塗料組成物中の樹脂固
形分100gあたり80〜450mmolの範囲内であ
ることが好ましい。80mmol未満であると硬化性が
不十分となるおそれがあり、450mmolを超えると
スルホニウム基の含有量が少なくなり、つきまわり性が
不十分となるおそれがある。上記プロパルギル基及び炭
素−炭素二重結合の合計含有量は、用いられる樹脂骨格
に応じてより好ましい含有量を設定可能であり、例え
ば、上記カチオン電着塗料組成物に含まれる樹脂組成物
がノボラックフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック
クレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする樹脂からなる場
合には、100〜395mmolであることがより好ま
しい。
【0033】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が上記炭素−炭素二重結合を含有する場
合、上記スルホニウム基、プロパルギル基及び炭素−炭
素二重結合の合計含有量は、上記カチオン電着塗料組成
物中の樹脂固形分100gあたり500mmol以下で
あることが好ましい。500mmolを超えると、樹脂
が実際には得られなかったり、目的とする性能が得られ
ないことがある。上記スルホニウム基、プロパルギル基
及び炭素−炭素二重結合の合計含有量は、用いられる樹
脂骨格に応じて、より好ましい含有量を設定可能であ
り、例えば、上記樹脂組成物がノボラックフェノール型
エポキシ樹脂又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂
を骨格とする樹脂からなる場合には、400mmol以
下であることがより好ましい。
【0034】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物は、例えば、一分子中に少なくとも2つの
エポキシ基を有するエポキシ樹脂に、エポキシ基と反応
する官能基及びプロパルギル基を有する化合物(A)を
反応させて、プロパルギル基を持つエポキシ樹脂組成物
を得る工程(i)、及び、工程(i)で得られたプロパ
ルギル基を持つエポキシ樹脂組成物中の残存エポキシ基
に、スルフィド/酸混合物を反応させて、スルホニウム
基を導入する工程(ii)により好適に製造することが
できる。
【0035】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物に、必要に応じて炭素−炭素二重結合を持
たせる場合には、上記工程(i)において、エポキシ基
と反応する官能基及び炭素−炭素二重結合を有する化合
物(B)を、上記化合物(A)と併用すればよい。
【0036】本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれ
る樹脂組成物が有するプロパルギル基の一部をアセチリ
ド化する場合は、上記工程(i)で得られたプロパルギ
ル基を持つエポキシ樹脂組成物に、例えば銅、銀又はバ
リウム等の遷移金属の錯体又は塩等の金属化合物を反応
させて、上記エポキシ樹脂組成物中の一部のプロパルギ
ル基をアセチリド化する工程を施すことができる。上記
本発明のカチオン電着塗料組成物に含まれる樹脂組成物
は、特開2000−38525号公報等に記載の製造方
法に従って得ることができる。
【0037】本発明のカチオン電着塗料組成物には、上
記スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成物
に併用して、脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物を配合
することができる。上記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組
成物の配合により、得られる塗膜の耐衝撃性が向上す
る。上記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物としては、
上記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物中の樹脂固形分
100gあたり、スルホニウム基5〜400mmol、
炭素数8〜24の不飽和二重結合を鎖中に含んでいても
よい脂肪族炭化水素基80〜135mmolおよび炭素
数3〜7の不飽和二重結合を末端に有する有機基および
プロパルギル基のうち少なくとも1種10〜315mm
olを含有し、かつ、スルホニウム基、炭素数8〜24
の不飽和二重結合を鎖中に含んでいてもよい脂肪族炭化
水素基および炭素数3〜7の不飽和二重結合を末端に有
する有機基およびプロパルギル基の合計含有量が500
mmol以下であるものを挙げることができる。
【0038】上記カチオン電着塗料組成物に対して、上
記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物を配合する場合、
上記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物の樹脂固形分1
00gあたり、スルホニウム基が5mmol未満である
と、十分なつきまわり性や硬化性を発揮することができ
ず、また、水和性、浴安定性が悪くなり、400mmo
lを超えると、被塗物表面への被膜の析出が悪くなる。
また、炭素数8〜24の、不飽和二重結合を鎖中に含ん
でいてもよい脂肪族炭化水素基が80mmol未満であ
ると、耐衝撃性の改善が不十分であり、135mmol
を超えると、樹脂組成物の取扱性が困難となる。プロパ
ルギル基および炭素数3〜7の不飽和二重結合を末端に
有する有機基の合計が10mmol未満であると、他の
樹脂や硬化剤と組み合わせて使用する場合であっても、
十分な硬化性を発揮することができず、315mmol
を超えると、耐衝撃性の改善が不十分となる。スルホニ
ウム基、炭素数8〜24の不飽和二重結合を鎖中に含ん
でいてもよい脂肪族炭化水素基およびプロパルギル基お
よび炭素数3〜7の不飽和二重結合を末端に有する有機
基の合計含有量が500mmolを超えると、樹脂が実
際には得られなかったり、目的とする性能が得られない
ことがある。
【0039】本発明のカチオン電着塗料組成物に対し
て、上記脂肪族炭化水素基を持つ樹脂組成物を配合する
場合、上記カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形分10
0gあたり、スルホニウム基5〜400mmol、炭素
数8〜24の不飽和二重結合を鎖中に含んでいてもよい
脂肪族炭化水素基10〜300mmolおよびプロパル
ギル基および炭素数3〜7の不飽和二重結合を末端に有
する有機基の合計10〜495mmolを含有し、か
つ、スルホニウム基、炭素数8〜24の不飽和二重結合
を鎖中に含んでいてもよい脂肪族炭化水素基およびプロ
パルギル基および炭素数3〜7の不飽和二重結合を末端
に有する有機基の合計含有量が500mmol以下であ
り、上記炭素数8〜24の不飽和二重結合を鎖中に含ん
でいてもよい脂肪族炭化水素基の含有割合が、上記カチ
オン電着塗料組成物の樹脂固形分の3〜30重量%であ
ることが好ましい。
【0040】本発明のカチオン電着塗料組成物において
は、上述のようにスルホニウム基とプロパルギル基とを
持つ樹脂組成物が含まれており、上記樹脂組成物自体が
硬化性を有するので、硬化剤の使用は必ずしも必要な
い。しかし、硬化性を更に向上させるために使用しても
よい。このような硬化剤としては、例えば、プロパルギ
ル基及び炭素−炭素二重結合のうち少なくとも1種を複
数個有する化合物、例えば、ノボラックフェノール等の
ポリエポキシドやペンタエリスリットテトラグリシジル
エーテル等に、プロパルギルアルコール等のプロパルギ
ル基を有する化合物やアクリル酸等の炭素−炭素二重結
合を有する化合物を付加反応させて得た化合物等を挙げ
ることができる。
【0041】本発明のカチオン電着塗料組成物には、硬
化触媒を必ずしも使用する必要はない。しかし、硬化反
応条件により、更に硬化性を向上させる必要がある場合
には、必要に応じて、通常用いられる遷移金属化合物等
を適宜添加してもよい。このような化合物としては特に
限定されず、例えば、ニッケル、コバルト、マンガン、
パラジウム、ロジウム等の遷移金属に対して、シクロペ
ンタジエンやアセチルアセトン等の配位子や酢酸等のカ
ルボン酸等が結合したもの等を挙げることができる。上
記硬化触媒の配合量は、上記カチオン電着塗料組成物中
の樹脂固形分100gあたり0.1〜20mmolであ
ることが好ましい。
【0042】本発明のカチオン電着塗料組成物には、ア
ミンを配合することができる。上記アミンの配合によ
り、電着過程における電解還元によるスルホニウム基の
スルフィドへの変換率が増大する。上記アミンとしては
特に限定されず、例えば、1級〜3級の単官能及び多官
能の脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等のア
ミン化合物を挙げることができる。これらのうち、水溶
性又は水分散性のものが好ましく、例えば、モノメチル
アミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチ
ルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ト
リブチルアミン等の炭素数2〜8のアルキルアミン;モ
ノエタノールアミン、ジメタノールアミン、メチルエタ
ノールアミン、ジメチルエタノールアミン、シクロヘキ
シルアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピリ
ジン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾリン、イミダゾ
ール等を挙げることができる。これらは単独で使用して
もよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、水分散
安定性が優れているので、モノエタノールアミン、ジエ
タノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のヒドロ
キシアミンが好ましい。
【0043】上記アミンは、直接、本発明のカチオン電
着塗料組成物中に配合することができる。従来の中和型
アミン系のカチオン電着塗料では、遊離のアミンを添加
すると、樹脂中の中和酸を奪うことになり、電着溶液の
安定性が著しく悪化するが、本発明においては、このよ
うな浴安定性の阻害が生じることはない。
【0044】上記アミンの配合量は、本発明のカチオン
電着塗料組成物中の樹脂固形分100gあたり、0.3
〜25meqが好ましい。0.3meq/100g未満
であると、つきまわり性に対して十分な効果を得ること
ができず、25meq/100gを超えると、添加量に
応じた効果を得ることができず不経済である。より好ま
しくは、1〜15meq/100gである。
【0045】本発明のカチオン電着塗料組成物は、更
に、必要に応じて、通常のカチオン電着塗料に用いられ
るその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分
としては特に限定されず、例えば、顔料、防錆剤、顔料
分散樹脂、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の
塗料用添加剤等を挙げることができる。
【0046】上記顔料としては特に限定されず、例え
ば、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等の着
色顔料;塩基性けい酸鉛、リンモリブデン酸アルミニウ
ム等の防錆顔料;カオリン、クレー、タルク等の体質顔
料等の一般にカチオン電着塗料に使用されるもの等を挙
げることができる。上記防錆剤としては、具体的には、
亜リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛カルシウム、カルシ
ウム担持シリカ、カルシウム担持ゼオライト等を挙げる
ことができる。上記顔料と防錆剤との合計配合量は、本
発明のカチオン電着塗料組成物中の固形分として0〜5
0重量%であることが好ましい。
【0047】上記顔料分散樹脂は、上記顔料をカチオン
電着塗料中に安定して分散させるために用いられる。顔
料分散樹脂としては、特に限定されるものではなく、一
般に使用されている顔料分散樹脂を使用することができ
る。また、樹脂中にスルホニウム基と不飽和結合とを含
有する顔料分散樹脂を使用してもよい。このようなスル
ホニウム基と不飽和結合とを含有する顔料分散樹脂は、
例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂とハーフブロッ
ク化イソシアネートとを反応させて得られる疎水性エポ
キシ樹脂に、スルフィド化合物を反応させるか、又は、
上記樹脂に、一塩基酸及び水酸基含有二塩基酸の存在下
でスルフィド化合物を反応させる方法等により得ること
ができる。上記非重金属防錆剤についても上記顔料分散
樹脂によってカチオン電着塗料中に安定して分散させる
ことができる。
【0048】上記界面活性剤としては特に限定されず、
例えば、塗料に通常用いられる界面活性剤が挙げられ
る。このようなものとしては、例えば、相互に同様の構
造を有する基が炭素三重結合を構成する2つの炭素に結
合してなるような左右対称の構造を有する非イオン性化
合物が挙げられ、例えば、下記式
【0049】
【化5】
【0050】で表されるサーフィノール104、下記式
【0051】
【化6】
【0052】〔式中、(m+n)は平均3.5であ
る。〕で表されるサーフィノール440、下記式
【0053】
【化7】
【0054】〔式中、(m+n)は平均10である。〕
で表されるサーフィノール465(何れもエアープロダ
クツ社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤をカチ
オン電着塗料に添加するのみでは、得られる電着被膜の
充分な乾きムラ防止は実現されない。
【0055】本発明のカチオン電着塗料組成物の硬化温
度は、130〜220℃に設定されていることが好まし
い。硬化温度が130℃より低温である場合は、得られ
る塗膜の平滑性が低下する恐れがある。硬化温度が22
0℃より高温である場合は、得られる塗膜の物性が低下
したり、それに上塗り塗料等を塗装する場合に得られる
多層塗膜の外観が低下するおそれがある。上記硬化温度
の設定は、硬化官能基、硬化剤及び触媒の種類や量等の
調整といった当業者に公知の方法で行うことができる。
【0056】本発明における硬化温度とは、30分間の
加熱でゲル分率85%の塗膜を得るための温度のことを
いう。上記ゲル分率の測定は、試験塗板をアセトンに浸
漬し5時間還流させた時の、試験前後における試験塗板
の重量差から算出する方法により行われる。
【0057】本発明のカチオン電着塗料組成物は、これ
に含まれる上記樹脂組成物に、必要に応じて、上述の各
成分を混合し、水に溶解又は分散すること等により得る
ことができる。上記一般式(1)で表されるモノアルコ
ール化合物は、上記カチオン電着塗料組成物を調製する
に先立って上記樹脂組成物に分散させてもよいし、上記
塗料組成物を製造した後に添加してもよいが、乾きムラ
防止を高める点から、前者が好ましい。上記カチオン電
着塗料組成物は、これに含まれる樹脂組成物中のプロパ
ルギル基、炭素−炭素二重結合及びスルホニウム基の含
有量が上述の範囲を逸脱しないように調整することが好
ましい。カチオン電着塗装に用いる際には、上記カチオ
ン電着塗料組成物は、不揮発分が10〜30%の浴液と
なるように調製されることが好ましい。
【0058】カチオン電着塗装方法 本発明のカチオン電着塗装方法は、上述のカチオン電着
塗料組成物を電着塗装し、得られる被膜を加熱硬化させ
る工程を含むものである。本発明のカチオン電着塗装方
法に用いられる被塗装物としては、特に限定されるもの
ではなく、カチオン電着すること及び硬化のための加熱
により変質しないものであれば特に限定されず、例え
ば、鉄板、鋼板、アルミニウム等の平板、成型物及びそ
れらを表面処理したもの等を挙げることができる。
【0059】上記電着塗装は、被塗装物を陰極とし、陽
極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行
う。印加電圧が50V未満であると電着が不十分とな
り、450Vを超えると、消費電力が大きくなり、不経
済である。上述のカチオン電着塗料組成物を使用して上
記範囲内で電圧を印加すると、電着過程における急激な
膜厚の上昇を生じることなく、被塗物全体に均一な被膜
を形成することができる。上記電圧を印加する場合の上
記カチオン電着塗料組成物の浴液温度は、通常、10〜
45℃が好ましい。
【0060】上記電着塗装は、上記カチオン電着塗料組
成物に被塗装物を浸漬する過程、上記被塗装物を陰極と
して陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過
程、析出させた上記被膜に、電圧を更に印加することに
より、上記被膜の単位体積あたりの電気抵抗値を増加さ
せる過程、から構成されることが好ましい。上記電圧印
加時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜
4分とすることができる。このようにして得られるカチ
オン電着未硬化被膜は、電着過程の終了後、そのまま又
は水洗した後、セッティングされる。上記セッティング
において、従来は、水分の乾き方が不均一であることに
起因して乾きムラが生じていたところ、本発明のカチオ
ン電着塗装方法によると、用いるカチオン電着塗料組成
物に上述の一般式(1)で表されるモノアルコール化合
物が含まれているので、上記乾きムラが効果的に防止さ
れる。
【0061】上記電着未硬化被膜は、次いで、加熱硬化
される。加熱条件としては、例えば、上述のカチオン電
着塗料組成物の硬化温度より0〜15℃高い温度、即
ち、130〜235℃に設定された乾燥炉に、得られた
被塗装物を投入し、10〜60分間加熱することが挙げ
られる。
【0062】本発明のカチオン電着塗装方法において
は、カチオン電着塗装により得られる電着被膜の上に、
必要に応じ、下地隠蔽性や耐チッピング性を付与するた
め中塗り塗料を塗布してもよく、更に、着色、外観向上
等のため上塗り塗料を重ね塗りしてもよい。この場合に
おいて、上記電着被膜や中塗り塗膜は、形成される度に
加熱硬化させてもよいし、上記中塗り塗料や上記上塗り
塗料の塗布前に加熱硬化させることなくウエット・オン
・ウエットで重ね塗りし、得られる複層塗膜を同時に加
熱硬化させてもよい。上記中塗り塗膜や上記上塗り塗膜
の加熱硬化は、例えば、上述の加熱条件により行うこと
ができる。
【0063】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上記
一般式(1)で表されるモノアルコール化合物を含むも
のであるので、従来よりも、得られるカチオン電着被膜
の乾きムラが効果的に防止されるとともに、密着性ひい
ては防錆性や耐水性が向上される。このような有利な効
果を奏する理由は、定かではないが、上記モノアルコー
ル化合物における炭素三重結合に水素原子が直接結合し
てなる分子の部分構造が、上記カチオン電着塗料組成物
に含まれる樹脂組成物中のプロパルギル基と、両者の構
造上の類似性から親和性を有すること等に起因して、上
記モノアルコール化合物が電着塗料中の樹脂組成物と相
溶性を有し、上記樹脂組成物中に充分に分散されること
によるものと考えられる。上記モノアルコール化合物
は、また、分子中に炭素三重結合を有するので、本発明
のカチオン電着塗料組成物の硬化に寄与している可能性
が考えられ、このため防錆性が向上したとも考えられ
る。
【0064】本発明のカチオン電着塗料組成物は、ま
た、スルホニウム基とプロパルギル基とを持つ樹脂組成
物を含むものであるので、つきまわり性に優れた電着塗
膜が得られ、また、得られるカチオン電着被膜が未硬化
のまま、その上に中塗り塗料等を重ね塗りするウエット
・オン・ウエット方式による塗装を行う場合において
も、好適に用いられる。従って、本発明のカチオン電着
塗料組成物、上記カチオン電着塗料組成物を用いるカチ
オン電着塗装方法及び上記カチオン電着塗装方法により
得られる被膜を有する被塗装物は、特に自動車の車体や
部品等の塗装に好適に用いられる。
【0065】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるもの
ではない。製造例1 スルホニウム基とプロパルギル基とを持つエ
ポキシ樹脂組成物の製造 エポキシ当量200.4のエポトートYDCN−701
(東都化成社製のクレゾールノボラック型エポキシ樹
脂)100.0重量部にプロパルギルアルコール23.
6重量部、ジメチルベンジルアミン0.3重量部を攪拌
機、温度計、窒素導入管及び還流冷却管を備えたセパラ
ブルフラスコに加え、105℃に昇温し、3時間反応さ
せてエポキシ当量が1580のプロパルギル基を含有す
る樹脂組成物を得た。このものに銅アセチルアセトナー
ト2.5重量部を加え90℃で1.5時間反応させた。
プロトン(1H)NMRで付加プロパルギル基末端水素
の一部が消失していることを確認した(14mmol/
100g樹脂固形分相当量のアセチリド化されたプロパ
ルギル基を含有)。このものに、1−(2−ヒドロキシ
エチルチオ)−2,3−プロパンジオール10.6重量
部、氷酢酸4.7重量部、脱イオン水7.0重量部を入
れ75℃で保温しつつ6時間反応させ、残存酸価が5以
下であることを確認した後、脱イオン水43.8重量部
を加え、目的の樹脂組成物溶液を得た。このものの固形
分濃度は70.0重量%、スルホニウム価は28.0m
mol/100gワニスであった。数平均分子量(ポリ
スチレン換算GPC)は2443であった。
【0066】実施例1〜3 (カチオン電着塗料組成物の製造)製造例1で得られた
エポキシ樹脂組成物142.9重量部、モノアルコール
化合物としてサーフィノール61(n=0、R2 はイソ
プロピル基;エアープロダクツ社製)を表1に示す量
(上記エポキシ樹脂組成物の固形分重量に対する重量
%)及び脱イオン水157.1重量部を加え、高速回転
ミキサーで1時間攪拌後、更に脱イオン水373.3重
量部を加え、固型分濃度が15重量%となるように水溶
液を調製し、カチオン電着塗料組成物を得た。このカチ
オン電着塗料組成物の硬化温度を測定したところ、15
0℃であった。
【0067】(カチオン電着塗装方法)得られたカチオ
ン電着塗料組成物をステンレス容器に移して電着浴と
し、ここに被塗装物として、リン酸亜鉛処理した冷間圧
延鋼板(JIS G3141 SPCC−SD、日本ペ
イント社製のリン酸亜鉛処理剤サーフダインSD−50
00で処理)が陰極となるようにして、乾燥膜厚が30
μmとなるように電着塗装を行った。
【0068】(評価)得られる電着被膜について下記の
ように評価し、結果を表1に示した。 1.乾きムラ 電着塗装後、ステンレス容器内の電着浴から引き上げた
被塗装物を液面上に上げた状態のまま、180秒間自然
乾燥させた後水洗し、190℃で25分間加熱硬化させ
て塗板を作成し、外観を目視により下記基準に従って評
価した。 ○ 乾きムラが全く生じなかった。 △ 乾きムラがやや生じた。 × 乾きムラが顕著に生じた。
【0069】2.片側剥離幅 上記1により得られた塗板(横7cm×縦15cm)の
右端から1.5cmの箇所に1本、及び、左端から1.
5cmの箇所に1本の合計2本の縦カットを入れて40
mm間隔の平行線とし、55℃に加温した5%NaCl
水溶液中に浸し、240時間後、水洗して、室温で1時
間放置後、セロハンテープ(ニチバン社製)を用いてテ
ープ剥離を行い、片側剥離幅を調べた。
【0070】3.ブリスタ 上記1により得られた塗板(横7cm×縦15cm)を
55℃に加温した5%NaCl水溶液中に浸してSDT
(塩水浸漬試験)を240時間行った後、水洗し水を切
って室温で1時間放置し、次いで、上記2と同様にして
テープ剥離を行い、測定面積当りのブリスタの個数を調
べた。測定面積は、塗板の下端から10cmの部分(横
7cm×縦10cm)のうち幅0.5mmの周縁部を除
く部分(横6cm×縦9cm)である。ブリスタの個数
は、直径10mmを超える大ブリスタは生じなかったの
で、直径0.5mm未満の小ブリスタの個数及び直径
0.5〜10mmの中ブリスタの個数を数え、その合計
数とした。
【0071】比較例1〜3 サーフィノール61に代えて、サーフィノール104、
サーフィノール440又はサーフィノール465(何れ
もエアープロダクツ社製左右対称型水酸基含有非イオン
性化合物)を、製造例1で得られたエポキシ樹脂組成物
の固形分重量に対してそれぞれ4重量%添加することの
他は、実施例1〜3と同様にして、カチオン電着塗料組
成物を製造し、電着被膜を評価した。結果を表1に示
す。
【0072】
【表1】
【0073】表1から、左右対称の分子構造を有するサ
ーフィノールを添加した比較例では、何れも乾きムラを
生じ、被膜の密着性が悪かったが、本発明の範囲内にあ
るサーフィノールを添加した実施例では、何れも乾きム
ラが効果的に防止され、被膜の密着性が優れていた。
【0074】
【発明の効果】本発明のカチオン電着塗料組成物は、上
述の構成よりなることから、得られるカチオン電着被膜
において、乾きムラ防止が効果的に行われ、また、密着
性に優れるので防錆性や耐水性にも優れる。従って、本
発明のカチオン電着塗料組成物、上記カチオン電着塗料
組成物を用いるカチオン電着塗装方法及び上記方法によ
り得られる被膜を有する被塗装物は、自動車の車体や部
品類等の塗装に好適に用いられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 国分 孝幸 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 川上 一郎 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 (72)発明者 坂本 裕之 大阪府寝屋川市池田中町19番17号 日本ペ イント株式会社内 Fターム(参考) 4J038 DB031 DB061 DB071 DB091 DB201 DB221 GA01 GA13 JA19 JC30 PA04 PA19 PB07

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物、及び、下記一般式(1) 【化1】 (式中、R1 は(O−CH2 CH2n 〔式中、nは0
    〜6の整数である。〕で表されるポリオキシエチレン鎖
    であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基である。)で
    表されるモノアルコール化合物を含むことを特徴とする
    カチオン電着塗料組成物。
  2. 【請求項2】 モノアルコール化合物は、カチオン電着
    塗料組成物中の樹脂固形分重量に対して0.1〜10重
    量%である請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  3. 【請求項3】 モノアルコール化合物は、カチオン電着
    塗料組成物中の樹脂固形分重量に対して0.2〜5重量
    %である請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
  4. 【請求項4】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物は、カチオン電着塗料組成物中の樹脂固形
    分100g当り、スルホニウム基を5〜400mmol
    及びプロパルギル基を10〜495mmol含有し、ス
    ルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が500
    mmol以下である請求項1、2又は3記載のカチオン
    電着塗料組成物。
  5. 【請求項5】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物は、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂
    又はノボラッククレゾール型エポキシ樹脂を骨格とする
    樹脂からなるものであって、数平均分子量として700
    〜5000を有するものであり、前記樹脂組成物の固形
    分100g当り、スルホニウム基を5〜250mmol
    及びプロパルギル基を20〜395mmol含有し、ス
    ルホニウム基及びプロパルギル基の合計含有量が400
    mmol以下である請求項1、2、3又は4記載のカチ
    オン電着塗料組成物。
  6. 【請求項6】 スルホニウム基とプロパルギル基とを持
    つ樹脂組成物に、下記一般式(1) 【化2】 (式中、R1 は(O−CH2 CH2n 〔式中、nは0
    〜6の整数である。〕で表されるポリオキシエチレン鎖
    であり、R2 は炭素数1〜5のアルキル基である。)で
    表されるモノアルコール化合物を分散させることにより
    得られることを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
  7. 【請求項7】 被塗装物に請求項1、2、3、4、5又
    は6記載のカチオン電着塗料組成物を電着塗装し、得ら
    れる被膜を加熱硬化させる工程を含むことを特徴とする
    カチオン電着塗装方法。
  8. 【請求項8】 請求項7記載のカチオン電着塗装方法に
    よって得られる被膜を有することを特徴とする被塗装
    物。
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