JP2002256326A - 溶鉄の精錬方法 - Google Patents

溶鉄の精錬方法

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JP2002256326A
JP2002256326A JP2001059455A JP2001059455A JP2002256326A JP 2002256326 A JP2002256326 A JP 2002256326A JP 2001059455 A JP2001059455 A JP 2001059455A JP 2001059455 A JP2001059455 A JP 2001059455A JP 2002256326 A JP2002256326 A JP 2002256326A
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molten iron
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JP2001059455A
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Yoji Idemoto
庸司 出本
Shinya Kitamura
信也 北村
Naoto Sasaki
直人 佐々木
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明はスラグを再利用することで生石灰原
単位、系外スラグ排出量を極限まで少なくするととも
に、未滓化石灰が極めて少ないスラグのみを系外へ排出
させることを可能とする方法を提供する。 【解決手段】 2基の精錬炉を用い、片炉を脱炭炉、他
炉を溶銑脱燐炉とする製鋼方法において、脱炭炉におい
ては、当該脱炭炉で生成した脱炭スラグを全量又は一部
を残留させたまま溶銑脱燐炉で精錬された溶銑を脱炭精
錬し、溶銑脱燐炉においては、当該溶銑脱燐炉で生成し
た脱燐スラグを全量又は一部を残留させたまま高炉溶
銑、又は、脱珪処理及び/もしくは脱硫処理を施した溶
銑を精錬する工程を少なくとも1回実施する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶銑の精錬におい
て、スラグの再利用を促進し系外排出量を極限まで少な
くするとともに、未滓化石灰が極めて少ないスラグのみ
を系外へ排出させることを可能とする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】2つの転炉を用いた溶銑脱燐と脱炭によ
る製鋼法は広く知られている。例えば、特開昭63−9
3813号公報には、上下両吹き機能を有する二基の転
炉形式の炉のうち一方を脱燐炉、他方を脱炭炉として溶
銑の精錬を行い、脱燐炉内に注入した溶銑に対し、脱炭
炉にて発生した転炉滓と生石灰とを精錬剤の主成分とし
て添加する方法が開示されている。しかし、この方法で
は、脱炭滓を再度、脱燐炉へ添加するため冷却固化し成
型する必要がある上に、膨張粉化しやすく利材化しにく
い脱燐炉で生成するスラグの量が、かえって増加すると
いう大きな問題があった。さらに、脱炭滓は吹き止め温
度である1650℃では溶融状態にあるものの、溶銑脱
燐の場合は1350℃程度のため容易には溶融すること
はできず、脱燐効率は生石灰を用いた場合よりも低下す
る。さらに、脱炭滓は脱燐処理が進行して温度やスラグ
組成が溶解に適した条件に到達した時点で急激に溶解す
る。しかし、脱炭滓中には高い濃度の(T・Fe)が含まれ
るため、脱炭滓が溶融すると急激に脱炭反応が生じるた
めスロッピングが多発するという問題がある。
【0003】この他、脱炭滓を用いた溶銑脱燐は、いく
つかの公知例がある。特開平01−75618号公報に
は、脱硫された溶銑を脱燐炉にて脱燐し、次いで脱炭炉
にて脱炭し溶鋼製品とする製鋼工程で、媒溶剤を添加し
て行う脱燐銑の脱炭精錬で副生される低P転炉滓を、そ
のまま脱燐炉に装入して脱燐精錬に再利用することで、
低遊離石灰・高P転炉滓として排出する方法が開示され
ている。しかし、この方法でも前記課題は解決されてい
ない。特に、脱炭滓の燐酸濃度は低いので再利用した後
の脱燐滓中の燐酸濃度は決して濃縮されず、脱炭滓を再
利用しない場合と、ほとんど変わらない。したがって、
燐酸の有する肥料としての用途を開くものでは無い。
【0004】特開平05−247511号公報には、溶
銑を精錬して溶鋼を製造する際に、第一工程として溶銑
を転炉に装入し、第二工程としてフラックス添加と酸素
上吹きとを行って脱燐精錬を施し所定のりん濃度まで低
減させ、第三工程として前記転炉を傾動して第二工程で
生成したスラグを排出し、その後同一転炉により脱炭工
程を行い、スラグを転炉に残したまま出鋼し、該スラグ
を第一工程にリサイクルする方法が開示されている。こ
の方法では、脱炭滓が溶融状態でリサイクルされるため
滓化に起因する問題は少なくなるものの、第三工程とし
ての排滓が十分にできないため脱炭炉での脱燐負荷が大
きく、スラグ発生量全体としては低下せず、また、脱燐
滓への燐酸の濃化も不十分であるという問題があった。
【0005】一方、溶銑脱燐スラグの処理方法として、
例えば特開昭57−179090号公報には、[P]を
0.15〜0.5%含む高燐銑を脱燐処理することで生
成スラグ中の燐酸を15%以上として燐酸肥料原料とす
る方法が開示されているが、溶銑[P]が低い条件でスラ
グ中に濃縮できる燐酸濃度については何らの知見もな
い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、特開昭63
−93813号公報、特開平01−75618号公報に
開示された技術が持つ、脱燐炉で生成するスラグの量が
かえって増加するという問題、脱燐効率が生石灰を用い
た場合よりも低下するという問題、再利用した後の脱燐
滓中の燐酸濃度は濃縮されないという問題、及び、特開
平05−247511号公報に開示された技術が持つ、
第三工程としての排滓が十分にできないため脱炭炉での
脱燐負荷が大きく、スラグ発生量全体としては低下しな
いという問題、脱燐滓への燐酸の濃化も不十分であると
いう問題、及び、特開昭57−179090号公報に開
示された技術が持つ、溶銑Pが低い条件でスラグ中に濃
縮できる燐酸濃度については何らの知見もないという問
題を解決し、スラグの再利用を促進し系外排出量を極限
まで少なくするとともに、未滓化石灰が極めて少ないス
ラグのみを系外へ排出させることを可能とする方法を提
供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は以下の各
方法にある。 (1) 2基の精錬炉を用い、片炉を溶銑脱燐炉、他炉
を脱炭炉とする精錬方法において、溶銑脱燐炉において
は、当該溶銑脱燐炉で生成した脱燐スラグを全量又は一
部を残留させたまま高炉溶銑、又は、脱珪処理及び/も
しくは脱硫処理を施した溶銑を精錬し、脱炭炉において
は、当該脱炭炉で生成した脱炭スラグを全量又は一部を
残留させたまま溶銑脱燐炉で精錬された溶銑を脱炭精錬
する工程を、どちらの炉においても、少なくとも1回以
上実施することを特徴とする溶鉄の精錬方法。 (2) (1)の方法において、脱炭炉、溶銑脱燐炉と
も、上底吹き転炉を用いることを特徴とする溶鉄の精錬
方法。 (3) (1)または(2)の方法において、溶銑脱燐
処理後のスラグの塩基度が0.7以上の間は溶銑脱燐炉
で生成した脱燐スラグを全量又は一部を残留させたま
ま、生石灰を添加せずに高炉溶銑、又は、脱珪処理及び
/もしくは脱硫処理を施した溶銑を精錬する操作を実施
し、0.7よりも低くなった時点で脱燐スラグを全量排
出することを特徴とする溶鉄の精錬方法。ここで塩基度
とはスラグ中のCaO濃度とSiO2濃度の質量パーセント比
(CaO/SiO 2)である。 (4) (1)〜(3)のいずれかの方法において、溶
銑脱燐炉に装入される溶銑中[Si]濃度を0.25質量
%以下とすることを特徴とする溶鉄の精錬方法。 (5) (1)〜(4)のいずれかの方法において、溶
銑脱燐炉での吹錬において、(1)式で決まるパラメー
タαを300〜1300とすることを特徴とする溶鉄の
精錬方法。 α=(F/W)×τ/(L/L0) ・・・・・・・… (1) ここで、Fは上吹き送酸速度(Nm3/h)、Wは溶鉄質量
(t)、τは均一混合時間(s)、Lはキャビティー深さ
(m)、L0は浴深(m)。また、底吹き攪拌による均一混合
時間(τ)は以下の各式で計算される。 τ=100×{(D2/L0)2/(εB+εT)}0.337 ・・・・ (2) εB=371×(Q/3600/W)×T×{ln(1+7×L0/10.33)+0.06×(1−298/T)} ・・・・ (3) εT=0.134/W×(F/3600)3×32/n2/d3/LG ・・・・ (4) ここで、Dは浴直径(m)、Qは攪拌ガス流量(Nm3/h)、
Tは溶銑温度(K)、nは上吹きランスノズル数、dは上
吹きランスノズル径(m)、LGは上吹きランス先端と静
止溶鉄面間距離(m)である。また、L(m)は次式で計算す
る。 L=63×(F/(d×1000)/n)2/3× exp(−0.78×LG×1000/(63×(F/(d×1000)/n)2/3)) ・・・(5) (6) (1)〜(5)のいずれかの方法において、脱
炭炉での吹錬において、脱炭スラグが20〜40kg/
tとなるように当該脱炭炉で生成した脱炭スラグの一部
を排滓することを特徴とする溶鉄の精錬方法。 (7) (1)〜(6)のいずれかの方法において、脱
炭炉での吹錬後に排滓された脱炭スラグを、溶銑脱燐炉
へリサイクルすることを特徴とする溶鉄の精錬方法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、脱燐処理で生成したス
ラグは、一度の脱燐処理の後も、なお十分な脱燐能力を
有し、再度、脱燐処理に用いることが可能であるという
事実を見出したことに基づく。
【0009】溶銑脱燐処理は、(T・Fe)が高く酸素活
量が高いスラグ相と、炭素飽和に近く酸素活量が低い溶
鉄との間で起こる非平衡系のプロセスであり、脱燐速度
は(6)式で表される。 −d[%P]/dt=(A・k/W){[%P]−aPO2.5 */LP} ・・・… (6) ここで、[%P]は溶銑中の燐濃度、tは時間(s)、Aは
反応界面積(cm2)、kは総括物質移動係数(cm/s)、Wは
溶銑量(t)、aPO2.5はスラグ中(PO2.5)の活量、LPは
界面での平衡分配比であり*で示す界面濃度により(7)
式で表される。 LP=aPO2.5 */[%P]* = K×aO * 2.5 ・・・… (7) ここで、Kは平衡定数、aO *は界面酸素活量である。
【0010】仮に、aPO2.5 *がスラグ中(PO2.5)の濃度
に比例し、かつ、LPが十分には大きくない場合、スラ
グ中(PO2.5)濃度の増加に伴い(6)式のaPO2.5 */LPが
大きくなるため脱燐速度は低下する。
【0011】しかし、本発明者らの詳細な研究によれ
ば、溶銑脱燐スラグの場合、スラグ中(PO2.5)濃度が変
化しても(6)式のaPO2.5 */LPはほとんど影響を受け
ないことを見出した。これは、以下の2つの要因による
ものである。
【0012】1)反応が起こる溶銑とスラグの接触界面
での酸素活量は、スラグ中の(T・Fe)の影響を受けるた
めバルク溶銑中の炭素濃度との平衡で決まる値よりも大
きい。従って、(7)式からわかるようにLPが十分に大
きくなるためaPO2.5 */LPはスラグ中(PO2.5)濃度が変
化しても、常に無視できるほどに小さい。
【0013】2)スラグ中(PO2.5)濃度が変化しても、
(PO2.5)は界面活性成分のため脱炭に伴うCO気泡の核
発生を抑制する作用があり、脱燐中の脱炭を抑制し(T・
Fe)を高く保つことができる。このため、(PO2.5)濃度
の増加に伴い溶銑とスラグの接触界面での酸素活量が増
加するため、aPO2.5 */LPはスラグ中(PO2.5)濃度が変
化しても全く変化しない。ここで、(T.Fe)はスラグ中の
酸化鉄としての全鉄濃度を示す。
【0014】このことが、脱燐処理後のスラグには(PO
2.5)は含まれているものの、再度利用しても、さらに脱
燐が可能であることの原理である。
【0015】さらに、脱燐滓を用いると脱燐中の脱炭を
抑制し(T・Fe)を高く保つことができるため、(PO2.5)
を含む脱燐滓を用いた脱燐処理では脱炭が少なく、次工
程である転炉での熱裕度を大幅に増大させることができ
る。
【0016】請求項1は、これを利用したものであり、
2基の転炉を用い、片炉を溶銑脱燐炉、他炉を脱炭炉と
する製鋼方法において、溶銑脱燐炉においては、当該溶
銑脱燐炉で生成した脱燐スラグを全量又は一部を残留さ
せたまま高炉溶銑、又は、脱珪処理及び/もしくは脱硫
処理を施した溶銑を精錬し、脱炭炉においては、当該脱
炭炉で生成した脱炭スラグを全量又は一部を残留させた
まま溶銑脱燐炉で精錬された溶銑を脱炭精錬する工程を
少なくとも1回以上実施することを特徴とする溶鉄の精
錬方法にある。
【0017】溶銑脱燐炉では、前記のように、脱燐処理
で生成したスラグは、さらに再度の脱燐処理に利用可能
な脱燐能力を有するという原理に基づいて、脱燐スラグ
を溶銑脱燐工程で繰り返し使用することができる。
【0018】溶銑脱燐炉で生成した脱燐スラグは、全量
残留させても、一部を排滓し残部を残留させても良い。
次チャージ溶銑の[Si]濃度によっては脱燐処理中にSiO2
が多量に生成しスラグ量が大幅に増加する場合がある。
このような低塩基度のスラグは脱燐処理中に激しくスラ
グフォーミングをするため、その場合には一部を排滓し
た方が良い。次チャージ溶銑の[Si]濃度が低い場合に
は、全量残留させて良い。また、フォーミングの抑制さ
せ反応効率をあげるために石灰を投入することも可能で
ある。
【0019】生石灰を添加したスラグを、新たな生石灰
を添加せずに1回以上繰り返し使用するこ場合は、図1
に示すように、スラグ中のfreeCaO(スラグに溶解して
いないCaO)濃度が大きく低減され、スラグを利用す
る場合に問題となる膨張・粉化が起こらなくなる。
【0020】これは、たとえ状態図上は溶解できるスラ
グ組成であっても、塊状の生石灰は溶解速度が遅いた
め、完全には溶解できないためである。特に、溶銑脱燐
精錬のように低温で短時間の処理の場合には顕著であ
る。この効果を得るには、繰り返し数は少なくとも1回
は必要である。
【0021】ここで、繰り返し数とは、以下のように定
義する。生石灰などの副材添加前に、当該精錬の前に同
一炉で精錬したスラグは残留していない状態で(不可避
的に混入するスラグを除く)、新たな生石灰を添加して
行う精錬の繰り返し数を0回、0回の精錬後のスラグの
全量又は一部を用いて行う精錬の繰り返し数を1回とす
る。以降はこの例に従い、2回、3回…とする。
【0022】脱炭炉と脱燐炉を分離することで、燐酸濃
度の高い脱燐滓が脱炭炉へ混入することを防げるため、
脱炭炉では脱燐のために造滓する必要が無くなる。従っ
て、脱炭炉では耐火物溶損が小さく、ダスト発生量が増
えないという条件でスラグ量を決めることができ、ま
た、そのスラグは燐酸を含まないため基本的には何回で
も繰り返し使用することができる。脱炭滓を繰り返し使
用することにより、新たに添加する石灰の使用量を削減
でき、さらにスラグ発生量も低減される。この効果を得
るには、繰り返し数は少なくとも1回は必要である。
【0023】脱炭炉でのスラグは全量残留させても一部
を排滓し残部を残留させても良い。つまり、脱炭炉にお
いては鉄鉱石やマンガン鉱石を使用することがあり、そ
の場合には脈石成分から不可避的にSiO2,Al2O3等が混入
しスラグ量が増加する。スラグ量が多くなりすぎると、
鉄分歩留まりが低下するため、必要に応じて、一部を排
滓し一定量以下としても良く、また、鉄鉱石やマンガン
鉱石を使用しない精錬を実施した場合には全量残留させ
て良い。また、混入するSiO2を補償するためにCaOを添
加することも可能である。
【0024】請求項2は炉の種類を規定したものであ
り、脱炭炉、溶銑脱燐炉とも、上底吹き転炉を用いるも
のである。ここで、溶銑脱燐炉を上底吹き転炉とした理
由は、反応が起こる溶銑とスラグの接触界面を、バルク
溶銑とスラグの界面ではなく、スラグ中に上吹きや底吹
きのエネルギーで懸濁した溶鉄粒子の表面を主体とさせ
るためである。また、脱炭炉を上底吹き転炉とした理由
は、脱炭スラグ量が繰り返し使用することで大きく変化
した場合にも、上吹きと底吹きの条件を制御することで
安定した吹錬ができるためである。
【0025】請求項3は、脱燐スラグを繰り返し実施す
る場合の条件を規定したもので、溶銑脱燐処理後のスラ
グの塩基度が0.7以上の間は溶銑脱燐炉で生成した脱
燐スラグを全量又は一部を残留させたまま、生石灰を添
加せずに高炉溶銑、又は、脱珪処理及び/もしくは脱硫
処理を施した溶銑を精錬する操作を繰り返し実施し、
0.7よりも低くなった時点で脱燐スラグを全量排出す
ることにある。塩基度を0.7とした理由は、塩基度が
0.7よりも低い場合にはスラグ中燐酸の活量が増大す
るため(PO2.5)が増加して(T・Fe)が増加したとしても
(6)式におけるaPO 2.5 */LPが無視できないほどに
大きくなり、図2に示すように脱燐速度が低下するため
である。塩基度が0.7以上の場合には脱燐能は十分に
高いため、脱燐処理において新たに生石灰を添加する必
要はない。一般的には脱燐工程を繰り返す毎に溶銑中
[Si]が酸化されて生成したSiO2が蓄積されるため、生
石灰を添加しないと塩基度は繰り返す毎に低下する。従
って、前チャージ脱燐滓を残留させない最初の脱燐吹錬
においては、塩基度を1.7〜2.3とし、脱燐滓を繰り
返し使用するにつれて塩基度が低下して行く操業が望ま
しい。
【0026】請求項4は溶銑脱燐炉に装入される溶銑中
[Si]の質量パーセントを0.25%以下としたもので
ある。[Si]濃度が0.25%よりも高い場合には1
回の脱燐精錬で蓄積されるSiO2が多いため、繰り返し回
数が少なく効率的でない。この点では、溶銑中[Si]の
質量パーセントは低いほど効率的ではあるが、前工程で
溶銑中[Si]を低減させなければならず、前工程の効
率は低下する。したがって、溶銑中[Si]の質量パー
セントの下限は特に規定しない。
【0027】請求項5は、溶銑脱燐炉での操業方法を示
したものであり、(1)式で決まるパラメータαを30
0〜1300とすることを特徴とする溶鉄の精錬方法で
ある。 α=(F/W)×τ/(L/L0) ・・・・・・・… (1) ここで、Fは上吹き送酸速度(Nm3/h)、Wは溶鉄質量
(t)、τは均一混合時間(s)、Lはキャビティー深さ
(m)、L0は浴深(m)である。
【0028】また、底吹き攪拌による均一混合時間
(τ)は以下の各式で計算される。 τ=100×{(D2/L0)2/(εB+εT)}0.337 ・・・・ (2) εB=371×(Q/3600/W)×T×{ln(1+7×L0/10.33)+0.06×(1−298/T)} ・・・・ (3) εT=0.134/W×(F/3600)3×32/n2/d3/LG ・・・・ (4) ここで、Dは浴直径(m)、Qは攪拌ガス流量(Nm3/h)、
Tは溶銑温度(K)、nは上吹きランスノズル数、dは上
吹きランスノズル径(m)、LGは上吹きランス先端と静
止溶鉄面間距離(ランスギャップ;m)である。
【0029】また、L(m)は次式で計算する。 L=63×(F/(d×1000)/n)2/3× exp(−0.78×LG×1000/(63×(F/(d×1000)/n)2/3)) ・・・(5)
【0030】パラメータαは送酸速度とキャビティー深
さにより上吹き酸素によるFeO生成速度を代表し、均
一混合時間で溶銑によるFeOの還元速度を代表した指
標であり、この値が大きい方がスラグ中の(T・Fe)が高
くなる。このため脱燐滓を繰り返し使用しても(6)式
におけるaPO2.5/LPが小さく保ちやすいため有利とな
る。図3に示すように、αが300よりも小さいとスラ
グ中の(T・Fe)が高く保てないため、(6)式における
PO2.5/LPが小さく維持できず脱燐滓の繰り返し使用
回数が少ない。逆に、1300よりも大きい場合には(T
・Fe)が高くなりすぎるためスロッピングによる操業障
害を起こす。
【0031】パラメータαの300から1300までへ
の制御は、送酸速度、溶鉄質量、均一混合時間、ランス
高さ、キャビティ−深さ、浴深の制御により可能とな
る。
【0032】請求項6は脱炭炉での条件を規定したもの
であり、脱炭炉での吹錬において、脱炭スラグが20〜
40kg/tとなるように当該脱炭炉で生成した脱炭ス
ラグの一部を排滓するとしたものである。ここで、単位
のkg/tとは、溶銑1t当たりのスラグ重量(kg)であ
る。この時の溶銑重量(t)は、次の処理で脱炭炉に装
入される予定の溶銑の重量を用いる。
【0033】脱炭スラグが20kg/tよりも少ない場
合には、ダスト発生量が多く歩留まりが低下するととも
に、スラグ中の(T・Fe)の濃度が上がり易く耐火物溶
損が大きくなり易い。逆に40kg/tよりも多いと、
スラグ中への鉄ロスやMnロスが大きくなるため経済的
でない。
【0034】請求項7は脱炭炉での吹錬後に排滓された
脱炭スラグを、溶銑脱燐炉へリサイクルする方法であ
る。本発明で生成する脱炭スラグには(PO2.5)はほとん
ど含まれて無く、さらに一般には塩基度が3以上で、か
つ、(T・Fe)も高いため、低温処理である溶銑脱燐炉で
再利用しても、十分に脱燐能力がある。従って、脱炭炉
から排出されたスラグは、一旦、冷却固化した後、又
は、熱間のままで溶銑脱燐炉へリサイクルすることで、
新しい生石灰の使用量を大幅に減らすことができる。特
に、請求項3に示した操業において、脱燐スラグを全量
排滓後の最初の吹錬で脱炭スラグを用いれば、常に新し
い生石灰を使用せずに脱燐操業が可能となる。
【0035】
【実施例】実施例は280トン規模の上底吹き転炉を用
いて実施した。溶銑脱燐炉の上吹きランスは46φの7
孔ランスを用い酸素供給速度は20000Nm3/hとし、
ランスギャップは2.4〜2.6mとした。底吹きは小径
集合管羽口としCO2を1200Nm3/h供給した。この
条件ではパラメータαは850〜900となる。
【0036】溶銑脱燐炉に装入した予備脱硫処理を施し
た高炉溶銑の組成は、C:4.35〜4.65%、Si:
0.1〜0.2%、Mn:0.23〜0.35%、P:0.
095〜0.110%、S:0.009〜0.014%
で、温度は1325〜1365℃であった。脱燐精錬時
間は約9分間であり、脱燐中には温度調整のため鉄鉱石
を10〜16kg/t上部バンカーから投入した。処理後は
C:4.05〜3.8%、Si:0.02%以下、Mn:
0.03〜0.08%、P:0.019〜0.028%、
S:0.010〜0.015%で温度は1345〜136
5℃であった。
【0037】表1に結果を示すが、最初の溶銑脱燐処理
では、上記溶銑とスクラップを溶銑脱燐炉へ装入し、吹
錬中には上記鉄鉱石に加えて生石灰を11.2kg/t添加
した。最初の溶銑脱燐処理終了後、炉を傾動し溶銑を出
銑後、溶銑脱燐滓は全量炉内に残したまま、次チャージ
の高炉溶銑とスクラップを装入した。次チャージ以降の
吹錬中は生石灰は添加しなかった。脱燐スラグを全量残
したままで、繰り返し使用吹錬を5回実施した結果、ス
ラグ塩基度が0.7よりも低くなったため、その時点で
脱燐スラグを全量排滓した。表1からわかるように、こ
の間、生石灰を使用しなくとも良好な脱燐挙動であっ
た。生石灰は最初のチャージで用いただけのため、全脱
燐溶銑処理量1680tの溶銑(280(t)×6(c
h.))に対して3136kgの石灰(11.2(kg
/t)×280(t))のみしか用いなかったことにな
り、6chを通した原単位は(280×11.2)/
(280×6)=1.87kg/tとなった。
【0038】
【表1】
【0039】また、5回の繰り返しにより6チャージを
吹錬した結果、炉外発生スラグ量は49.1kg/tに過ぎ
ず、全脱燐溶銑処理量を分母とした炉外発生スラグ量は
8.2kg/tに過ぎなかった。また、最初のチャージで投
入された生石灰は繰り返し利用される間に十分にスラグ
へ溶解することができるため、炉外発生スラグ中のfree
CaOは0.1%以下と極めて低かった。
【0040】また、上記の脱燐処理後の溶銑を逐次、脱
炭炉に装入し、処理した。脱炭炉の上吹きランスは46
φの5孔ランスを用い酸素供給速度は45000Nm3/h
とした。底吹きは小径集合管羽口としCO2を1200N
m3/h供給した。
【0041】繰り返し数0回の脱燐溶銑の脱炭精錬時に
は、脱炭炉には前の精錬のスラグは残っておらず、生石
灰を8kg/t、鉄鉱石を7kg/t上部バンカーから投入し
た。脱炭精錬後には脱炭スラグは排滓せずに全量残した
まま、次チャージ(上記繰り返し数1)の脱燐溶銑を装
入した。同様に脱炭精錬後、脱炭スラグは排滓せずに全
量残したまま上記の脱燐溶銑の脱燐処理を5回繰り返し
て行った。繰り返し数1回以降の脱燐溶銑の脱炭吹錬で
は、鉄鉱石の添加量は5〜8kg/tとし、脈石成分を補償
するために、生石灰の添加量は0〜3kg/t添加した。
【0042】脱炭時間は約12分間であり、処理後は
C:0.15〜0.35%、Si:0.01%以下、M
n:0.03〜0.06%、P:0.015〜0.023
%、S:0.010〜0.015%で温度は1635〜1
665℃であった。
【0043】脱炭スラグを全量残したままで、繰り返し
使用吹錬を5回実施した結果、スラグ量が40kg/tより
も多くなったため、半量を排滓した。この間、ダスト発
生量は20kg/t程度と少なく、吹き止めスラグ中(T・F
e)も15〜25%と低かった。さらに、6チャージを
平均した生石灰原単位は3.3kg/tとなり、6チャージ
を平均した炉外発生スラグ量は3.7kg/tに過ぎなかっ
た。また、溶銑脱燐と同様に生石灰は繰り返し利用され
る間に十分にスラグへ溶解することができるため、炉外
発生スラグ中のfreeCaOは0.1%以下と極めて低か
った。
【0044】さらに5回の脱炭精錬で繰り返し使用さ
れ、半量排滓された脱炭スラグを熱間のまま脱燐炉に装
入し、繰り返し数0回の脱燐精錬の副材として使用し
た。その結果、新しい生石灰の使用無しに上記繰り返し
数0回の脱燐精錬と同等の精錬を行うことができた。
【0045】(比較例)比較例も実施例と同一条件の2
80トン規模の上底吹き転炉を用いて実施した。比較例
では、溶銑脱燐後のスラグは常に全量排滓したが、その
結果、生石灰は総てのチャージで用いるため、生石灰原
単位は11.2kg/tと多かった。また、スラグも毎チャ
ージ排滓されるため炉外発生スラグ量は20.4kg/tと
多かった。また、生石灰は9分間の脱燐精錬中には十分
にスラグへ溶解することができず、炉外発生スラグ中の
freeCaOは3.8%と高かった。脱炭炉においても処
理後のスラグは毎チャージ全量排滓したため、生石灰は
総てのチャージで必要となり、生石灰原単位は8.5kg/
tと多かった。また、スラグも毎チャージ排滓されるた
め炉外発生スラグ量は20.3kg/tと多かった。さら
に、生石灰は十分にスラグへ溶解することができず、炉
外発生スラグ中のfreeCaOは2.1%と高かった。
【0046】
【発明の効果】本発明により、スラグを再利用すること
で生石灰原単位、系外スラグ排出量を極限まで少なくす
るとともに、未滓化生石灰が極めて少ないスラグのみを
系外へ排出させることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】生石灰添加スラグの繰り返し使用回数とfreeCa
O濃度の関係を示す実験結果。
【図2】脱燐処理における塩基度と脱燐速度との関係を
示す実験結果。
【図3】脱燐処理における繰り返し回数と脱燐速度の関
係に対するパラメータαの影響。
フロントページの続き (72)発明者 佐々木 直人 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社技 術開発本部内 Fターム(参考) 4K014 AA03 AB03 AB04 AC03 AC11 AC16 AC17 AD00 AD27 AE01 4K070 AA10 AB03 AB06 AB11 AC03 AC13 AC14 BA07 BA10 BB02 BB05 BC02 BC12 BD13 BD14 BD15 EA01 EA03 EA30

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2基の精錬炉を用い、片炉を溶銑脱燐
    炉、他炉を脱炭炉とする精錬方法において、溶銑脱燐炉
    においては、当該溶銑脱燐炉で生成した脱燐スラグを全
    量又は一部を残留させたまま高炉溶銑、又は、脱珪処理
    及び/もしくは脱硫処理を施した溶銑を精錬し、脱炭炉
    においては、当該脱炭炉で生成した脱炭スラグを全量又
    は一部を残留させたまま溶銑脱燐炉で精錬された溶銑を
    脱炭精錬する工程を、どちらの炉においても、少なくと
    も1回以上実施することを特徴とする溶鉄の精錬方法。
  2. 【請求項2】 請求項1の方法において、溶銑脱燐炉、
    脱炭炉とも、上底吹き転炉を用いることを特徴とする溶
    鉄の精錬方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2の方法において、溶銑
    脱燐処理後のスラグの塩基度が0.7以上の間は溶銑脱
    燐炉で生成した脱燐スラグを全量又は一部を残留させた
    まま、生石灰を添加せずに高炉溶銑、又は、脱珪処理及
    び/もしくは脱硫処理を施した溶銑を精錬する操作を実
    施し、0.7よりも低くなった時点で脱燐スラグを全量
    排出することを特徴とする溶鉄の精錬方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかの方法におい
    て、溶銑脱燐炉に装入される溶銑中[Si]濃度を0.2
    5質量%以下とすることを特徴とする溶鉄の精錬方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかの方法におい
    て、溶銑脱燐炉での吹錬において、(1)式で決まるパ
    ラメータαを300〜1300とすることを特徴とする
    溶鉄の精錬方法。 α=(F/W)×τ/(L/L0) ・・・・・・・… (1) ここで、Fは上吹き送酸速度(Nm3/h)、Wは溶鉄質量
    (t)、τは均一混合時間(s)、Lはキャビティー深さ
    (m)、L0は浴深(m)。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの方法におい
    て、脱炭炉での吹錬において、脱炭スラグが20〜40
    kg/tとなるように当該脱炭炉で生成した脱炭スラグ
    の一部を排滓することを特徴とする溶鉄の精錬方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかの方法におい
    て、脱炭炉での吹錬後に排滓された脱炭スラグを、溶銑
    脱燐炉へリサイクルすることを特徴とする溶鉄の精錬方
    法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008223095A (ja) * 2007-03-13 2008-09-25 Jfe Steel Kk 高燐スラグの製造方法
JP2015017323A (ja) * 2013-06-14 2015-01-29 Jfeスチール株式会社 溶銑の予備処理方法

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