JP2002218980A - 新規フェリチン - Google Patents
新規フェリチンInfo
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Abstract
ノ末端からの6残基の配列がAla-Ser-Asn-Ala-Pro-Ala
である分子量28kDaのサブユニットをコードする植
物由来のまたは遺伝子組換えによるフェリチン遺伝子。 【効果】 従来の28kDaサブユニットと異なり容易
に切断されないため鉄の含有が持続できる。
Description
するものである。
物、細菌等の微生物まで生物界に広く存在する鉄貯蔵タ
ンパク質であり、貯蔵している鉄を他の鉄結合酵素など
に供給すること、および生体に障害を及ぼすような過剰
な無機鉄を取り込み、解毒して細胞を保護することを主
要な生理的役割としている。このタンパク質は非常に巨
大であり(分子量540kDa)、外径が約13nmも
あり、24個のサブユニットが対称性を持って積み重な
り、あたかも袋のような構造をしている。この袋状構造
の中に鉄を最大で4500原子も貯蔵すると推定されて
いる。本発明者らはこのような大量の鉄を貯蔵できるフ
ェリチンの遺伝子を外来遺伝子として植物に導入するこ
とにより、植物の鉄含量を増加させ得ることを見出し、
先に特許出願を行った(特開平9−201190号公報
参照)。従来の植物フェリチンは1つの遺伝子由来のサ
ブユニット(28kDa)から形成されていると考えら
れていた。そして、この28kDaのサブユニットは鉄
放出時に延長ペプチド(EP:Extension Peptide )が
切断されることにより26.5kDaサブユニットに容
易に転化するとされていた。28kDaサブユニットが
鉄含有形態であることは報告されているが、26.5k
Daサブユニットの鉄含有については知られていない。
したがって、鉄を放出してのこの転化がなければより効
率的に植物体に鉄分を貯蔵させることができるものと考
えられる。
鉄分を植物に貯蔵させることができるフェリチンを求め
て種々研究した結果、従来のものとは異なるサブユニッ
トを有するフェリチンを見いだして本発明を完成した。
易に切断されない分子量28kDaのサブユニットを含
むフェリチン及びフェリチン遺伝子に関する。より具体
的には、植物、特にダイズ由来のフェリチンである。本
発明において「容易に切断されない」とは、従来知られ
ている植物由来のフェリチンの28kDaサブユニット
が26.5kDaサブユニットに転化する条件下では切
断されない意味で用いられる。本発明のフェリチン遺伝
子は、トランジット・ペプチド(TP:Transit Peptid
e )を除くアミノ末端からの6残基の配列がAla-Ser-As
n-Ala-Pro-Ala である分子量28kDaのサブユニット
をコードすることを特徴とするものである。また、従来
の大豆フェリチンの28kDaのサブユニットではカル
ボキシル(C−)末端残基の234番目がアルギニンで
あるのに対して、本発明のフェリチン遺伝子ではロイシ
ンで置換されていることを特徴とする。この相違によ
り、本発明の28kDaサブユニットは容易に切断され
ない。これら本発明の特定の配列は、遺伝子組換え手法
によって得ることができる。従って本発明は、植物由来
の及び遺伝子組換えによるフェリチン及びフェリチン遺
伝子を包含する。
フェリチンの28kDaサブユニットの確認のために以
下の各実験を行った。 A.実験方法 1.自然の大豆フェリチンの精製 乾燥大豆種子(Kitano−shiki 変種)500gを粉砕機によ
り細粉化した。大豆種子粉は、1mM EDTA(エチレ
ンジアミン四酢酸)と10mM 2−ME(2−メルカプ
トエタノール)含有の50mM Tris-HCl バッファーに懸
濁し、均質化し、10,000×gで10分間遠心分離した。上
清を20%飽和の硫酸アンモニュウムで分画した。琥珀色
の沈殿物を遠心分離により集め、50mM Tris-HCl (pH
7.5)バッファー中で透析した。透析後の試料は、前もっ
て1mM EDTA含有の50mMTris-HClバッファーで平
衡化したDEAE−トヨパール(Toyopearl )(TOS
OH社)コラムに付加した。コラムは0.15M塩化ナ
トリウム含有のバッファーで洗浄され、琥珀色のフェリ
チンが溶離された。大豆フェリチンを含有する該溶液
は、再度20%飽和の硫酸アンモニュウムで分画した。
遠心分離により集められた上清は、ブチルトヨパール
(TOSOH社)コラムに付加し、20−0%飽和密度
勾配の硫酸アンモニウムにより溶離された。大豆フェリ
チンを含有する画分はプールされ、1 mM EDTA含有
の50mM Tris-HCl バッファー(pH 7.5)中で透析さ
れ、Q−セファロースコラム(Amersham-Pharmacia社)
に付加された。蛋白は0から0.7M密度勾配の塩化ナ
トリウムにより溶離された。大豆フェリチン含有の画分
はプールされ、濃縮され、最終的には20mM Tris-HC
l (pH 7.5)バッファーで平衡化したスーパーデックス
75pgゲル濾過コラム(Amersham-Pharmacia社)に付
加された。
により得た。精製されたフェリチンは、1%チオグリコ
ール酸含有の50mM ヒープス(Hepes )/NaOH・バ
ッファー(pH 7.0)中で透析され、続いて連続的に0.1
%と0%チオグリコレート含有ヒープス・バッファーに
て透析した。その後蛋白は13g/リッターのChilex-100
(Bio-Rad 社)及び0.2M塩化ナトリウム含有のヒー
プス・バッファー中で透析し、最後に脱イオン水中で透
析した。精製された蛋白濃度は蛋白アッセイキット(Bi
o-Rad 社)とデンシトメーター(Pharmacia 社)により
決定した。
リルアミドゲルを使ったSDS−PAGEにより分離さ
れ、PVDF膜に転移された。膜は2%(V/V)酢酸
に溶解した0.1%のポンソー−S(Sigma 社)により
染色された。膜上の2個所の特徴的なバンドが各々膜か
ら切り取られた。両蛋白のアミノ末端アミノ酸配列は、
アプライド・バイオシステムのモデル477Aパルス−
液体アミノ酸配列分析器(シークエンサー)による自動
化エドマン分解した。26.5kDaサブユニットのカ
ルボキシル(C−)末端アミノ酸配列は、このサブユニ
ットをリジルエンドペプチダーゼにより消化し、C−末
端を含有するペプチド断片はDITC−ガラス(SIG
MA)により単離した。その後、C−末端断片の配列を
自動化エドマン分解により決定した。
NA(相補的DNA)のクローニング ジーンバンク(遺伝子銀行)に登録済みの大豆EST
(発現配列タグ:Expressed Sequence Tag )配列(AW185
525, AI966037, AW397605, AI443722, AI900240)をプラ
イマーの設計に使用した。5’race (rapid amplificat
ion of cDNA ends) と3’raceは、発芽後1週間の種苗
から抽出した総RNAを鋳型(テンプレート)とする製
造方法にて実施した。Lサブユニットをコードする標的
配列に関する10個の候補配列を決定した。
した。−TP及びCは各々NdeIサイト(位置)及び
BamHIサイトを含んでいた。そこで得られたTP配
列を含有しない断片をNdeIとBamHIにより消化
し、発現ベクターpET3a(Novagen )上のNdeI
とBamHI間に挿入して、プラスミドpESFを得
た。発現プラスミドpESFは Escherichia coli (大
腸菌)BL21(DE3)pLys株に形質転換され
た。発現プラスミドを含むE.coli株は、37℃で
アンピシリン(50 μg/ml) 補助LB(Luria-Bertani )
培地で培養した。A600 (吸光度)=0.6まで増殖し
た時に、最終濃度が1mMになるようにイソプロピル−
β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し
た。細菌は遠心により収穫し、蛋白はバッグバスター
(BugBuster )蛋白抽出試薬(Novagen) により抽出し
た。完全な成熟領域を含む組換え体フェリチンの精製過
程も自然フェリチンと同様である。
(減成)実験 大豆の葉200mgを抽出バッファー[50mM K2PO
4 、10mM 2−ME、0.1 %TritonX-100、0.1 %サ
ルコシン)1mLと海砂で均質化し、12000 rpmで遠
心分離して可溶性蛋白質を抽出した。上清を大豆フェリ
チンの減成実験に使用した。組換えフェリチンと自然の
フェリチンの各150ngを葉抽出液20μlに加え、
室温でインキュベートした。SDS−PAGE及びPV
DF膜に電気ブロットした後、蛋白質の免疫検出を行っ
た。大豆フェリチン(%)サブユニットに対して抗血清
が上昇した。大豆フェリチン抗体でのブロットの検出を
ビオニチル化ホースラディシュ・パーオキシダーゼと結
合したアンチ−ラビットIgGシープ・イムノグロブリ
ンを用いて行った。シグナルの視認化にはイムノステイ
ン(Immunostain )HRP−1000(コニカ社)を用い
た。
取り込み反応は、室温でFe2+/ フェリチン・モル比 1,0
00(1mM硫酸第一鉄と0.1μMフェリチン) により
100mM Hepes /NaOH・バッファー(pH 7.0)
で実施した。フェリチンへの鉄取り込みは吸光度310
nmで測定した。鉄遊離実験では、自然大豆及び組換え
体のアポ・フェリチン( 各々2μM)は、0.2M塩化
ナトリウムを含有する0.1M MOPSに溶解された
新鮮な硫酸第一鉄(1 mM)を添加することにより鉱化し、
続いて室温で2時間培養し、その後に一晩4℃で放置し
た。鉄遊離はナトリウムアスコルビン酸塩とフェロジン
(ferrozine )を各々最終濃度1mMと4mMになるよ
うに添加することにより反応を開始した。アスコルビン
酸塩はフェリチン殻からの鉄の還元型遊離を促進すると
報告されている。外来性Fe2+は、日立紫外線分光光度計
(Hitachi, Tokyo, Japan) を用いて、波長560nmで
のFe2+/ferrozine 複合体の吸光度により測定した。
クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー,及び
ゲル濾過により精製した。大豆フェリチンは、各々のク
ロマトグラフ段階で単一ピークとして溶離した。しかし
ながら精製されたフェリチンには、SDS−PAGE
(ドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル
電気泳動)分析によると、分子量が28kDaと26.
5kDaだと推定される二つのバンドを認めた(図1
A)。これ等のバンドの密度分析によると、精製された
フェリチンは28kDaと26.5kDaのサブユニッ
トを殆ど等量(28kDa/26.5kDa比が1/
1.09と推定された)含んでいることを示した。精製
された大豆フェリチンからは、分子量が約550−56
0kDa(図1B)だと推定される単一バンドのみが検
出された。
ンは、SDS−PAGEにより分析され、CBB( クー
マシー・ブリリアント・ブルー : Coomassie Brilliant
Blue)により染色された(レーン1)。図1Bは大豆フ
ェリチンの非変性PAGE分析結果を示す図で、レーン
1は、大豆種子から精製された自然の大豆フェリチン、
レーン2は、大腸菌にて発現された組換え体大豆フェリ
チンを示し、蛋白マーカー(M)は分子質量を表す。
を決定した。28kDaサブユニットの配列はAla-Ser-
Asn-Ala-Pro-Ala であり、26.5kDaサブユニット
はAla-Ser-Thr-Val-Pro-Leu であった。両方のサブユニ
ットの決定済みN−末端配列は互いに異なっており、ま
た28kDaサブユニットは今迄報告されていない新規
な配列であった。更に6残基目以降のN−末端配列もま
た、28kDaサブユニットは新規なサブユニットであ
ることを示唆していた(図2)。28kDaと26.5
kDaのバンドは完全に分離可能で、両方のサブユニッ
トの配列プロフィールには汚染ピークは検出されなかっ
た。他方、26.5kDaサブユニットのN−末端配列
は、既知配列のEP領域の配列と同一であった。26.
5kDaサブユニットのN−末端配列分析から、移送ペ
プチドは既知報告によるカルボキシル側49番目残基の
アラニンでは無くて、カルボキシル側の48番目残基の
システインで開裂されていた(図2参照)。ここでは、
28kDaと26.5kDaとを各々L(大)サブユニ
ットとS(小)サブユニットと定義する。
繹されたアミノ酸配列を示す図において、上の配列は、
既に知られている配列と同じであるSサブユニットのア
ミノ酸配列を示し、。下の配列は、本発明によるLサブ
ユニットのアミノ酸配列を示す。矢印はSサブユニット
の開裂サイト(Proteolytic cleavage)を示す。また、
実線で囲まれた部分はN−末端配列解析により決定され
たLサブユニットのN−末端32残基を示し、破線で囲
まれた部分はリジルエンドペプチダーゼによる消化によ
り形成された第17番断片を示す。この断片はSサブユ
ニットのカルボキシル末端に位置している。
サブユニットのカルボキシル(C−)末端アミノ酸配列
を分析した。C−末端残基を含むペプチド断片の配列
は、Ser-Glu-Tyr-Val-Ala-Gln-Leu-Arg-Arg であった
(図2)。この配列は既に知られている大豆フェリチン
配列にも認められるが、C−末端残基は234番目のア
ルギニンだと決定したが、これは大豆フェリチン配列の
C−末端に関する既存の報告からは18残基上流に位置
していた。これ等のデータは、大豆種子フェリチン中の
Sサブユニットは、C−末端17残基の蛋白質分解性の
開裂を伴うことを示した。
ノ酸配列 新しく同定された大豆フェリチンのLサブユニットに対
するcDNAは、PCRを基本とする戦略によりクロー
ン化した。cDNA配列から演繹されたアミノ酸配列
を、既存の報告例と一緒に図2に示す。前駆体からTP
が解離したLサブユニットの成熟領域は、209残基か
ら構成されており、これはSサブユニット(202残基
から成る)に比較して7残基長かった。Lサブユニット
の成熟領域のアミノ酸配列は、Sサブユニットと82%
の相同性を示した。成熟領域の高い相同性に反して、T
P配列はL及びS間で配列の低い相同性(41%)しか
示さなかった。成熟領域の配列では、演繹されたヘリカ
ル領域(AからEヘリックス(Helix ))では、BとC
へリックスを結合するループ領域では比較的に変異して
いたが、L及びSサブユニット間では高い相同性が保た
れていた;即ちヘリカル、ループ及びEP領域のアミノ
酸配列の相同性は、各々90%、81%及び63%であ
った。結果を表1に示す。
の内の4残基は塩基性又は酸性アミノ酸である電荷残
基)からなる延長部を持っていた。フェロオキシダーゼ
・サイトだと考えられる全ての残基は、両方のサブユニ
ットに保存されていた。鉄(III)-チロシン(tyrosinate)
複合体を形成すると考えられているチロシン残基もま
た、保存されていた。しかしながら、Sサブユニットの
配列では、カルボキシル側が開裂される231番目のア
ルギニン残基は、Lタイプのサブユニットではロイシン
により置換されていた。この置換により、Lサブユニッ
トはカルボキシル末端開裂を受けなくなっていると考え
られる。上記したように、大豆Sサブユニットの場合に
カルボキシル側が開裂されるアルギニン残基が、CP3
配列にも認められた。
ラデーション 大豆フェリチンSサブユニットの成熟全領域を E. col
i で発現した。非変性PAGE( ポリアクリルアミド・
ゲル電気泳動)(図1B参照)及びゲル濾過分析による
と、組換え体大豆フェリチンも自然蛋白と同様に24量
体に集合できることを示していた。組換え体Sサブユニ
ットのホモポリマーを大豆の葉抽出物と培養したものの
結果を図3に示す。Sサブユニットの約半分は10分以
内に26.5kDa型へと開裂された。しかしながら1
時間の培養の後には、28kDa型は消失し、少量の2
6.5kDa型のみ検出できた。2時間後には、26.
5kDa型は完全に分解していて検出できなかった。他
方、S及びLサブユニットを殆ど等量含有する自然の大
豆フェリチンでは、28kDa型は存在しなかったが、
培養2時間後にも26.5kDa型を検出することがで
きた。この実験では抗Sサブユニット抗体を使用してい
るので、自然のフェリチンのLサブユニットは完全には
検出できなかった。
のデグラデーションを示す図において、上記のとおり組
換え体及び自然の大豆フェリチンは、大豆の葉抽出物中
で培養されたもので、フェリチン・サブユニットは抗S
サブユニット抗体により検出された。図中、レーン1は
大豆の葉抽出物、レーン2は150ngの組換え体Sサ
ブユニット、レーン2からレーン8は150ngの組換
え体Sサブユニットを葉抽出物とそれぞれ0、1、1
0、30、60及び120分間培養した後のSサブユニ
ット、レーン9は150ngの自然の大豆フェリチン、
レーン10及び11は、150ngの自然のフェリチン
を葉抽出物と各々60及び120分間培養したもの結果
を示す。
するために、自然の大豆フェリチン(50%L)と、組
換え体フェリチンの鉄取り込み及び遊離を試験した。自
然の大豆フェリチンは、28kDaと26.5kDaと
の両方のサブユニットを等量持っていたが、組換え体
は、C−末端の配列を含むサブユニットの成熟領域全域
から成っていた。C−末端が欠失しているSサブユニッ
トの26.5kDa型は、24量体には集合しなかっ
た。組換え体及び自然の大豆フェリチンの両方とも鉄取
り込み活性を示した(図4A)。連続曲線(プログレッ
ション・プロット)によると、自然の大豆フェリチンの
取り込み率は、全ての構成サブユニットはフェロオキシ
ダーゼ・サイトを保有しているにも係らず、組換え体よ
り取り込み率が低かった。両方の取り込み率はFe(II)自
動酸化率(コントロール)よりも高かった。
(図4B)。自然及び組換え体フェリチンの鉄核形成反
応は、一晩4℃でフェリチン/鉄モル比1/500で、
硫酸第一鉄をFe(II)源として培養して実施した。フェリ
チン外殻の外側の第一鉄(Fe(II))原子はフェロジンに
結合されるので、この複合体の吸光度を測定した。Fe(I
I)/ferrozine複合体の量は、どの時間コースを見ても組
換え体よりも、自然の大豆フェリチンの方が多かった。
両方のサブユニット間の鉄遊離率の差は、計算上はt検
定でp=0.05により統計的に有意であり、C−末端
16残基の開裂が蛋白外殻からの鉄遊離を促進している
ことが示された。
応の連続曲線プロットを示すグラフで、0.1Mフェリ
チン・サブユニット及び0.1mM硫酸第一鉄含有の
0.1Mヒープス−Na、pH7.0中で実施した各フ
ェリチンの結果を示す。コントロールは自動酸化率を示
す。図4Bは、集合されたフェリチンでのサブユニット
の共存の影響を示すグラフである。自然(Native)及び
組換え体(Recombinant )フェリチン(2μM)は、
0.1M MOPS(pH7.0)と0.2M塩化ナト
リウム中に溶解した1mM硫酸第一鉄と混合することに
より試験管中で鉱化した。鉱化されたフェリチンからの
鉄遊離は、内部の鉄からの還元的遊離を促進するため
に、1mMフェロジンと4mMナトリウム・アスコルビ
ン酸塩の添加により開始された。遊離された鉄は、Fe2+
/ferrozine 複合体の吸光度を560nmにてモニター
することにより検出した。結果は3回の実験から得た。
リチンの2つの異なったポリペプチド鎖を検出し、新規
なサブユニットをコードするcDNAを単離した。本発
明によって大豆種子では二種類の違ったフェリチンが殆
ど等量共存することが証明された。片方のサブユニット
は分子量28kDaの既知のアミノ酸配列だったが、C
−末端17残基の開裂により26.5kDa(Sサブユ
ニット)に簡単に転化された。他のサブユニットは新規
なアミノ酸配列を持ち、28kDa型(Lサブユニッ
ト)として残存していた。アミノ酸配列プロフィールに
よると、Sサブユニットは完全に26.5kDa型に転
化された。これ等のデータは、26.5kDaサブユニ
ットは、28kDaサブユニットのアミノ末端延長ペプ
チド(EP)の蛋白質分解性の開裂により生成し、28
kDaと26.5kDaサブユニットは原則的には同一
であると考えられている既存の仮説には反することであ
った。
ン実験では、Sサブユニットのホモ24量体は、自然の
大豆フェリチンに比較して不安定であった(図3)。S
サブユニットの不安定さは、SサブユニットのC−末端
17残基を欠失している変異株ではオリゴマーに集合で
きないことから、C−末端17残基の開裂に起因すると
思われる。他方、Lサブユニットは、C−末端領域の開
裂には影響を受けず、また葉抽出物では安定であった。
これ等のデータは、Lサブユニットは大豆種子ではフェ
リチンの24量体を安定化することを示した。
型への転化は、C−末端17アミノ酸残基の開裂に起因
することを示した。アミノ酸配列の整合データ、及び演
繹された植物フェリチンの三次元構造から、開裂された
17残基は“E−へリックス”に相当すると考えられ
る。この“E−へリックス”は動物などのフェリチン2
4量体において4回対称軸付近でのサブユニット間相互
作用に関与し、狭いチャンネルを形成している。E−ヘ
リックスの開裂により作られた大きな孔は、鉄が自由に
動き回れるだけの十分な孔径を持っていると期待され
る。自然の大豆フェリチンからの鉄遊離率は、組換え体
の遊離率よりも高い(図4B)。これ等のデータは、鉄
遊離率はE−へリックスの開裂により促進されたことを
示唆した。E−へリックスの開裂の結果として形成され
る大きな孔は、フェリチンからの鉄遊離の新しい機作を
提供する。
伝子が発見されている。本発明者らは、成熟過程が既存
のフェリチンとは異なる新規な大豆フェリチンのサブユ
ニットを見出し、この新規なサブユニットは、大豆種子
フェリチンの主要なサブユニットの一つであることを示
した。新規なフェリチンのサブユニットの一次構造は、
既に報告されているサブユニットに近似していた(82
%の相同性)。しかしながら、成熟過程における違いが
“鉄遊離”の新しい機能の根拠になると認められる。大
豆種子フェリチンは、鉄分子を積極的に取り込んだり遊
離したりすることにより、細胞内での鉄の緩衝装置とし
て機能していると思われるている。28kDa及び部分
的に開裂された26.5kDaサブユニットは、エンド
ウや他のマメ科植物のフェリチンでも検出可能である。
本発明の知見に基づくアミノ酸置換により、大豆のLサ
ブユニットがC−末端残基の蛋白質分解性開裂に影響さ
れなくなるが、この現象は他のマメ科植物のフェリチン
にも適用できる。
は少なくともSとLの二つのタイプのサブユニットから
構成されている。28kDaの分子として存在するLサ
ブユニットは、蛋白外殻の安定性に関与しており、他
方、Sサブユニットは、E−へリックスの開裂により2
6.5kDa型に転化される。開裂はフェリチンからの
鉄遊離の作用機作に関係する可能性がある。異なった機
能を持つ多種のサブユニットの存在は、大豆以外のマメ
科植物でも発現すると推測される。
形成されるフェリチンは鉄の放出が少なくなり、フェリ
チン分子中により多くの鉄を蓄積できると容易に推測で
きる。従って、本発明のフェリチン遺伝子を植物に導入
すれば、本発明者らが先に提案した高鉄含量植物の作成
に多大な効果をもたらすことが期待できる。
PAG分析の結果を示す図である。 (A)精製された大豆フェリチンは、SDS−PAGE
により分析され、CBB( クーマシー・ブリリアント・
ブルー : Coomassie Brilliant Blue)により染色され
た。(レーン1) (B)大豆フェリチンの非変性PAGE分析。 レーン1:大豆種子から精製された自然の大豆フェリチ
ン、 レーン2:E.coliにて発現された組換え体大豆フ
ェリチン。 蛋白マーカー(M)は分子質量を表す。
ミノ酸配列を示す図である。 上:既に知られている配列と同じであるSサブユニット
のアミノ酸配列。 下:本発明によるLサブユニットのアミノ酸配列。 Sサブユニットの開裂サイトは矢印で表示。 実線で囲まれた部分:N−末端配列解析により決定され
たLサブユニットのN−末端32残基。 破線で囲まれた部分:リジルエンドペプチダーゼによる
消化により形成された第17番断片。この断片はSサブ
ユニットのカルボキシル末端に位置する。
ーションを示す図である。組換え体及び自然の大豆フェ
リチンは、大豆の葉抽出物中で培養された。フェリチン
・サブユニットは抗Sサブユニット抗体により検出され
た。 レーン1:大豆の葉抽出物、レーン2:150ngの組
換え体Sサブユニット、レーン2から8:150ngの
組換え体Sサブユニットを葉抽出物とそれぞれ0、1、
10、30、60及び120分間培養した後のSサブユ
ニット。レーン9:150ngの自然の大豆フェリチ
ン、レーン10及び11:150ngの自然のフェリチ
ンを葉抽出物と各々60及び120分間培養したもの。
曲線プロットを示すグラフである。 (B)集合されたフェリチンでのサブユニットの共存の
影響を示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 容易に切断されない分子量28kDaの
サブユニットを含むフェリチン。 - 【請求項2】 植物由来の容易に切断されない28kD
aのサブユニットを含む請求項1記載のフェリチン。 - 【請求項3】 植物が大豆である請求項2記載のフェリ
チン。 - 【請求項4】 TP(Transit Peptide )切断後のアミ
ノ末端からの6残基の配列がAla-Ser-Asn-Ala-Pro-Ala
である分子量28kDaのサブユニットをコードするフ
ェリチン遺伝子。 - 【請求項5】 植物由来の請求項4記載のフェリチン遺
伝子。 - 【請求項6】 遺伝子組換えによる請求項4記載のフェ
リチン遺伝子。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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