JP2002194462A - 耐摩耗性銅基合金 - Google Patents

耐摩耗性銅基合金

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JP2002194462A
JP2002194462A JP2000390742A JP2000390742A JP2002194462A JP 2002194462 A JP2002194462 A JP 2002194462A JP 2000390742 A JP2000390742 A JP 2000390742A JP 2000390742 A JP2000390742 A JP 2000390742A JP 2002194462 A JP2002194462 A JP 2002194462A
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copper
atmosphere
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JP2000390742A
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Minoru Kawasaki
稔 河崎
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Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】耐摩耗性を高めるのに有利な、殊に、減酸化雰
囲気、減潤滑雰囲気、無酸化雰囲気、無潤滑雰囲気等の
雰囲気において用いられる場合であっても、耐摩耗性を
高めるのに有利であり、殊に、肉盛処理を行うのに適す
る耐摩耗性銅基合金を提供する。 【解決手段】耐摩耗性銅基合金は、重量%で、ニッケ
ル:10.0〜30.0%、シリコン:0.5〜5.0
%、鉄:2.0〜15.0%、クロム:0.9〜15.
0%、コバルト:2.0〜15.0%、銀:0.01〜
15.0%、並びに、モリブデン、タングステン、ニオ
ブ及びバナジウムの1種または2種以上:2.0〜1
5.0%、不可避不純物を含むと共に、残部が銅の組成
からなる。耐摩耗性銅合金は、高密度エネルギ熱源で形
成した肉盛層15とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性銅基合金に
関する。本発明は、例えば、内燃機関のバルブシートや
バルブなどの動弁系部材に代表される摺動部材の摺動部
分を構成する銅基合金に適用することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、耐摩耗性銅基合金として、銅にベ
リリウムを添加した合金、コルソン合金として知られる
銅−ニッケル−シリコン合金、銅基マトリックスにSi
2,Cr23,BeO等の硬質酸化物粒子を分散させ
た分散強化型の合金が知られている。しかしこれらの合
金は凝着の問題があり、耐摩耗性必ずしも充分な特性を
有するものではない。
【0003】そこで本出願人は、銅よりも酸化し易い亜
鉛、スズを含有した耐摩耗性銅基合金を開発した。この
ものでは亜鉛やスズの酸化物の生成により耐凝着性が改
善され、銅基合金の耐摩耗性が向上する。しかしながら
亜鉛、スズは銅よりも融点がかなり低いため、必ずしも
満足できるものではない。殊に、レーザビーム等の高密
度エネルギ熱源を用いて上記した銅基合金の肉盛層を形
成する際には、肉盛の際には亜鉛やスズが蒸発し易く、
合金元素の目標濃度を維持するのが容易ではなかった。
そこで、近年、重量%で、ニッケル:10.0〜30.
0%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜1
5.0%、クロム:1.0〜10.0%、コバルト:
2.0〜15.0%、並びに、モリブデン、タングステ
ン、ニオブ及びバナジウムの1種または2種以上:2.
0〜15.0%を含む組成からなる耐摩耗性銅基合金が
本出願人により開発されている(特開平8−22586
8号公報)。この合金は厳しい条件で使用されたとして
も、優れた耐凝着性を示し、耐摩耗性が高い。更に、亜
鉛、スズが積極的元素として用いられておらず、合金元
素の蒸発の不具合が少なく、ヒューム等の発生が少な
い。よって、殊にレーザビーム等の高密度エネルギ熱源
を用いて肉盛層を形成する肉盛用合金として適する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記したように特開平
8−225868号公報に係る合金は、厳しい条件で使
用されたとしても、優れた耐摩耗性を示す。殊に、酸化
雰囲気や大気中においては、良好なる固体潤滑性を示す
酸化物が生成するため、優れた耐摩耗性を示す。しかし
ながら近年、耐摩耗性銅基合金は様々な環境で使用され
つつあり、様々な環境においても優れた耐摩耗性を発揮
できることが要請されている。
【0005】殊に、近年、燃料事情等の要請により、燃
料をガソリンとする内燃機関に代えて、LPGやCNG
等の天然ガスを燃料する内燃機関の開発が進められてい
る。この種の内燃機関は、従来の動弁系部品の技術を有
効に利用できる等の利点が得られるため、着目されてい
る。しかしこの種の内燃機関の燃焼雰囲気は、減酸化雰
囲気や減潤滑雰囲気、または、無酸化雰囲気や無潤滑雰
囲気を誘発し易い。このため上記した公報に係る耐摩耗
性銅基合金では、十分に満足できる耐摩耗性を発現する
には限界がある。上記した公報に係る耐摩耗性銅基合金
では、耐摩耗性銅基合金に含まれる元素が酸化すること
によって生成される酸化膜の固体潤滑性を利用すること
により、耐摩耗性を高める機構となっているため、酸化
雰囲気が低減されると、上記した機構の利用が十分に得
られないためであると推察される。
【0006】本発明は上記した実情に鑑みてなされたも
のであり、耐摩耗性を高めるのに有利な、殊に、減酸化
雰囲気、減潤滑雰囲気、無酸化雰囲気、無潤滑雰囲気等
の雰囲気において用いられる場合であっても、耐摩耗性
を高めるのに有利であり、殊に、肉盛処理を行うのに適
する耐摩耗性銅基合金を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る耐摩耗性銅
基合金は、重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
ものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に係る耐摩耗性銅基合金に
よれば、一般的には、硬質相を有する硬質粒子がマトリ
ックスに分散している組織が得られる。硬質粒子の平均
硬度はマトリックスの平均硬度よりも高い。硬質粒子は
シリサイド(珪化物)を含む形態を採用できる。マトリ
ックスもシリサイド(珪化物)を含む形態を採用でき
る。ここで、硬質粒子は、モリブデン、タングステン、
ニオブ及びバナジウムの1種または2種以上を主要成分
とするシリサイド(珪化物)を含むことが好ましい。例
えば、前記した硬質粒子は、Moを主要成分とするシリ
サイドと、Ni−Co系の固溶体とを主要素として形成
されている形態を採用できる。前記したマトリックス
は、Cu−Ni系の固溶体と、ニッケルを主要成分とす
るシリサイドとを主要素として形成されている形態を採
用できる。
【0009】本発明に係る耐摩耗性銅基合金によれば、
一般的には、マトリックスの硬度(マイクロビッカー
ス)はHv130〜250程度、殊にHv150〜20
0にでき、硬質粒子の硬度はHv250〜700程度、
殊にHv300〜500にできる。硬質粒子の体積比は
適宜選択されるが、耐摩耗性銅基合金を100%とした
とき100%のうち、体積比で例えば10〜60%程
度、12〜55%程度とすることができる。硬質粒子の
粒径は組成や凝固速度等にも影響されるが、一般的には
20〜3000μm、40〜600μm、50〜500
μmとすることができる。
【0010】本発明に係る耐摩耗性銅基合金に係る組成
の限定理由ついて説明を加える。
【0011】・ニッケル:10.0〜30.0% ニッケルは一部が銅に固溶して銅基のマトリックスを強
化し、他の一部はニッケルを主要成分とする硬質なシリ
サイド(珪化物)を形成して分散強化により耐摩耗性を
高める。またニッケルはコバルト、鉄、モリブデン等と
共に硬質相を形成する。上記した含有量の下限値未満で
は、銅−ニッケル系合金の有する特性、特に良好なる耐
食性及び耐摩耗性が発現しにくくなり、更に、上記した
効果が十分に得られない。更にコバルト、鉄、モリブデ
ンを添加できる量が少なくなる。上記した含有量の上限
値を越えると、靱性が低くなり、肉盛層としたとき割れ
が発生し易くなり、対象物に対する肉盛性が低下する。
上記した事情を考慮し10.0〜30.0%としてお
り、好ましくは、ニッケルは10.5〜27.5%、殊
に11.0〜26.0%とすることができる。なお、本
発明に係る耐摩耗性銅基合金に要請される諸性質の重視
の程度に応じて、ニッケルの含有量の下限値としては1
1.0%、12.0%を例示でき、その下限値に対応す
る上限値としては例えば25.0%、20.0%を例示
できるが、これらに限定されるものではない。本明細書
では特に断らない限り、%は重量%を意味する。
【0012】・シリコン:0.5〜5.0% シリコンはシリサイド(珪化物)を形成する元素であ
り、ニッケルを主要成分とするシリサイド、または、モ
リブデン(タングステン、ニオブ、バナジウム)を主要
成分とするシリサイドを形成し、更に銅基のマトリック
スの強化に寄与する。殊に、モリブデン(またはタング
ステン、ニオブ、バナジウム)を主要成分とするシリサ
イドは、本発明に係る耐摩耗性銅基合金の高温潤滑性を
維持する働きがある。上記した含有量の下限値未満で
は、上記した効果が十分に得られない。上記した上記し
た含有量の上限値を越えると、耐摩耗性銅基合金の靱性
が低下し、肉盛層としたとき割れが発生し易くなり、対
象物に対する肉盛性が低下する。上記した事情を考慮
し、0.5〜5.0%としており、好ましくは、シリコ
ンは0.7〜4.7%、殊に1.5〜4.0%とするこ
とができる。本発明に係る耐摩耗性銅基合金に要請され
る諸性質の重視の程度に応じて、シリコンの含有量の下
限値としては0.8%、1.0%を例示でき、その下限
値に対応する上限値としては4.5%、4.0%を例示
できるが、これらに限定されるものではない。
【0013】・コバルト:2.0〜15.0% コバルトは銅中にはほとんど固溶せず、モリブデンと共
にシリサイドを生成し、シリサイドを安定化させる働き
をする。またコバルトは融液状態における液相分離傾向
を高める。マトリックスとなる液相部分から分離された
液相が主として硬質粒子を生成すると考えられる。上記
した含有量の下限値未満では、上記した効果が十分に得
られない。上記した上記した含有量の上限値を越える
と、硬質相の粗大化が激しくなり、相手攻撃性が高ま
り、耐摩耗性銅基合金の靱性が低くなり、更に対象物に
肉盛する場合には割れが発生し易くなる。上記した事情
を考慮し2.0〜15.0%としており、好ましくは、
コバルトは2.5〜14.5%、殊に2.0〜14.0
%とすることができる。本発明に係る耐摩耗性銅基合金
に要請される諸性質の重視の程度に応じて、コバルトの
含有量の上限値としては14.0%、13.0%を例示
でき、その上限値に対応する下限値としては3.0%、
4.0%を例示できるが、これらに限定されるものでは
ない。
【0014】・鉄:2.0〜15.0% 鉄はコバルトと同様な働きをし、コスト高なコバルトと
置き換えることができる。鉄は銅基のマトリックスには
ほとんど固溶せず、主に、硬質相中に存在し、融液状態
における液相分離傾向を高める。上記した含有量の下限
値未満では、上記した効果が十分に得られない。上記し
た上記した含有量を越えると、硬質相の粗大化が激しく
なり、相手攻撃性が高まる。上記した事情を考慮し2.
0〜15.0%としており、好ましくは、鉄は2.2〜
13.5%、殊に2.5〜12.0%とすることができ
る。本発明に係る耐摩耗性銅基合金に要請される諸性質
の重視の程度に応じて、鉄の含有量の上限値としては1
3.0%、10.0%を例示でき、その上限値に対応す
る鉄の下限値としては2.5%、3.0%を例示できる
が、これらに限定されるものではない。
【0015】・クロム:0.9〜15.0% クロムは鉄やコバルトと同様な働きをし、銅基のマトリ
ックスにはほとんど固溶せず、ニッケルの一部及びコバ
ルトの一部と合金化して、耐酸化性を高める。更にクロ
ムは、硬質相に存在し、更に融液状態における液相分離
傾向を高める。上記した含有量の下限値未満では、上記
した効果が十分に得られない。上記した上記した含有量
の上限値を越えると、硬質相の粗大化が激しくなり、相
手攻撃性が高まる。上記した事情を考慮して0.9〜1
5.0%としており、好ましくは、クロムは1.0〜1
5.0%、殊に1.0〜10.0%とすることができ
る。本発明に係る耐摩耗性銅基合金に要請される諸性質
の重視の程度に応じて、クロムの含有量の下限値として
は例えば1.1%、1.2%を例示でき、その下限値に
対応する上限値としては例えば13.0%、10.0
%、8.0%、5.0%を例示できるが、これらに限定
されるものではない。
【0016】・銀:0.01〜15.0% 銀は、本発明に係る耐摩耗性銅基合金を構成するマトリ
ックスに固溶し、固体潤滑効果を改善する。また、銀は
鉛と同様に他金属との親和性が低く、凝着摩耗現象を起
こしにくい諸性質を有する。銀は前述した親和性の低さ
が、特に無酸化雰囲気や減酸素雰囲気において効果を示
す。従って銀は本発明に係る耐摩耗性銅基合金の耐摩耗
性を高める。上記した含有量の下限値未満では、上記し
た効果が十分に得られない。上記した上記した含有量の
上限値を越えると、銀添加による改善効果も飽和し、本
発明に係る耐摩耗性銅基合金の価格も高くなる。上記し
た事情を考慮して0.01〜15.0%としており、好
ましくは、銀は0.05〜15.0%、殊に0.1〜1
5.0%、更には0.1〜12.0%、0.1〜11.
0%とすることができる。本発明に係る耐摩耗性銅基合
金に要請される諸性質の重視の程度に応じて、銀の含有
量の上限値としては14.0%、13.0%、12.0
%、11.0%、9.0%を例示でき、その上限値に対
応する下限値としては0.05%、0.1%、0.15
%、0.2%、0.3%、0.4%を例示できるが、こ
れらに限定されるものではない。
【0017】・モリブデン、タングステン、ニオブ及び
バナジウムの1種または2種以上:2.0〜15.0% モリブデンはシリコンと結合したシリサイドを硬質粒子
内に生成し、高温における耐摩耗性と潤滑性とを高め
る。モリブデンを主要成分とするシリサイドは、500
〜700℃程度の比較的低い温度領域においても、しか
も酸素分圧が低い環境においても、分解してモリブデン
を主要成分とする固体潤滑性に富む酸化物を生成し易
い。この酸化物は融点が低く、使用時に銅基のマトリッ
クスの表面を覆い、相手材とマトリックスとの直接接触
を避けるのに有利となる。これにより自己潤滑性が確保
される。タングステン、ニオブ及びバナジウムについて
も基本的にはモリブデンと同様の働きをする。モリブデ
ン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種または
2種以上が上記した含有量の下限値未満では、改善効果
が十分に発揮されず、また上限値を越えると、靱性が損
なわれ、割れが発生し易くなる。上記した事情を考慮し
て2.0〜15.0%としており、好ましくは、モリブ
デン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種また
は2種以上は、2.0〜14.0%、殊に3.0〜1
0.0%とすることができる。本発明に係る耐摩耗性銅
基合金に要請される諸性質の重視の程度に応じて、モリ
ブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種ま
たは2種以上の含有量の下限値としては2.2%、4.
0%を例示でき、その下限値に対応する上限値としては
13.0%、12.0%、11.0%を例示できるが、
これらに限定されるものではない。
【0018】本発明に係る耐摩耗性銅基合金は、次の少
なくとも一つの実施形態を採用することができる。
【0019】・本発明に係る耐摩耗性銅基合金は、対象
物に肉盛される肉盛合金として用いることができる。肉
盛方法としては、レーザビーム、電子ビーム、アーク等
の高密度エネルギ熱源を用いて溶着して肉盛する方法が
挙げられる。肉盛の場合には、本発明に係る耐摩耗性銅
基合金を粉末化し、その粉末を被肉盛部に集合させた状
態で、上記したレーザビーム、電子ビーム、アーク等の
高密度エネルギ熱源を用いて溶着して肉盛することがで
きる。また上記した耐摩耗性銅基合金は、粉末化に限ら
ず、ワイヤ化、棒状化しても良い。レーザビームとして
は炭酸ガスレーザビーム、YAGレーザビーム等の高エ
ネルギ密度をもつものが例示される。肉盛される対象物
の材質としてはアルミニウム、アルミニウム系合金、鉄
または鉄系合金、銅または銅系合金等が例示される。対
象物を構成するアルミニウム合金の基本組成としては鋳
造用のアルミニウム合金、例えば、Al−Si系、Al
−Cu系、Al−Mg系、Al−Zn系等を例示でき
る。対象物としては内燃機関等の機関が例示される。内
燃機関の場合には動弁系材料が例示される。この場合に
は、排気ポートを構成するバルブシートに適用しても良
いし、吸気ポートを構成するバルブシートに適用しても
良い。この場合には、本発明に係る耐摩耗性銅基合金で
バルブシート自体を構成しても良いし、本発明に係る耐
摩耗性銅基合金をバルブシートに肉盛することにしても
良い。但し、内燃機関などの機関の動弁系材料に限定さ
れるものではなく、耐摩耗性が要請される他の系統の摺
動材料、摺動部材にも使用できるものである。本発明に
係る耐摩耗性銅基合金は、亜鉛やスズを積極的元素とし
て含まないため、肉盛する場合であっても、ヒュームな
どの発生を抑えることができる。
【0020】・本発明に係る耐摩耗性銅基合金は、減酸
化雰囲気、減潤滑雰囲気、無酸化雰囲気、無潤滑雰囲気
等の雰囲気において用いられる耐摩耗性銅基合金に適用
できる。減酸化雰囲気、減潤滑雰囲気は、固体潤滑性を
もつ酸化物(一般的には酸化膜)を生成する作用が少な
い雰囲気を意味する。無潤滑雰囲気は、固体潤滑性をも
つ酸化物を生成する作用が実質的にない雰囲気を意味す
る。代表的な減酸化雰囲気、減潤滑雰囲気としては、ガ
ソリンを燃料とする内燃機関の燃焼形態よりも酸化性が
低い雰囲気を例示することができる。従って、本発明に
係る耐摩耗性銅基合金は、LPGやCNG等の天然ガス
を燃料する内燃機関の動弁系材料として用いることがで
きる。但しこれに限定されるものではなく、ガソリンを
燃料とする内燃機関に搭載される銅基の動弁系材料、更
には、他の用途に使用される銅基の摺動部材、摺動部材
にも適用することもできる。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0022】本実施例で用いた耐摩耗性銅基合金に係る
試料a〜試料hの組成(配合組成)を表1に示す。更に
比較例として、銀が含まれていない耐摩耗性銅基合金の
試料iの組成(配合組成)も表1に示す。配合組成は基
本的には分析後の目標組成と整合する。
【0023】
【表1】
【0024】試料a〜試料iは、表1に示す組成となる
ように配合して高真空中で溶解した合金溶湯をガスアト
マイズ処理して製造した粉末である。粉末の粒度は5μ
m〜300μmである。ガスアトマイズ処理は、高温の
溶湯をノズルから非酸化性雰囲気(アルゴンガスまたは
窒素ガスの雰囲気)において噴出させることにより行っ
た。上記した粉末はガスアトマイズ処理で形成されてい
るため、成分均一性が高い。
【0025】そして図1に示すように、肉盛の対象物で
あるアルミニウム合金(材質:AC2C)で形成された
基体50を用い、上記した試料aを基体50の被肉盛部
51に載せて粉末層53を形成した状態で、炭酸ガスレ
ーザのレーザビーム55をビームオシレータ57により
揺動させると共に、レーザビーム55と基体50とを相
対的に移動させ、これによりレーザビーム55を粉末層
53に照射処理し、以て粉末層53を溶融凝固させて肉
盛層60(肉盛厚み:2.0mm、肉盛幅:6.0m
m)を基体50の被肉盛部51に形成した。このときガ
ス供給管65からシールドガス(アルゴンガス)を肉盛
箇所に吹き付けつつ行った。上記した照射処理では、ビ
ームオシレータ57によりレーザビーム55を粉末層5
3の幅方向(矢印W方向)に振った。上記した照射処理
では、炭酸ガスレーザのレーザ出力を4.5kW、レー
ザビーム55の粉末層53でのスポット径を2.0m
m、レーザビーム55と基体50との相対走行速度を1
5.0mm/sec、シールドガス流量を10リットル
/minとした。試料b〜試料iについても同様に肉盛
層を形成した。
【0026】試料a〜試料iを用いて形成した肉盛層に
ついて割れ発生状況を調べたところ、割れは認められな
かった。肉盛層の付着状態も良好であった。肉盛層につ
いて調べたところ、硬質相を有する硬質粒子がマトリッ
クスに分散していた。硬質粒子の体積比は、耐摩耗性銅
基合金を100%としたとき100%のうち5〜60%
程度内に収まっていた。
【0027】更に、上記した肉盛層に対して耐凝着試験
を行い、各肉盛層の凝着量を試験した。試験は図2に示
すように、板バネ30に保持したチップホルダ32にチ
ップ34(材質:SUE50+軟窒化)を保持した。そ
して、肉盛層60を被覆した試験片21を試験片ホルダ
34に保持した状態で、チップホルダ32を矢印Y方向
に往復移動させることにより、試験片21の肉盛層60
にチップ34を繰り返して衝突させて行った。この耐凝
着試験では、内燃機関の動弁系の環境(バルブシートと
バルブとの衝突環境)を再現すべく、加熱装置40を内
蔵するノズル42を用い、加熱した高温の不活性ガス
(アルゴンガス)をノズル42から衝突部分に吹き付け
つつ行った。上記した耐凝着試験では、試験温度を50
0℃、チップ34の叩き速度を1000rpm、試験時
間を60分、全体の面圧を5.75kgf、雰囲気をア
ルゴンガス雰囲気とした。
【0028】実施例に係る各試料a〜試料hで形成した
各肉盛層、比較例に係る試料iで形成した肉盛層につい
て、その組成と共に肉盛層の凝着量を表1に示す。表1
に示すように、凝着量の単位は10-13nm3とした。
【0029】凝着量の単位を略すると、表1に示すよう
に、試料aを用いた実施例1では12.8であり、試料
bを用いた実施例2では3.5であり、試料cを用いた
実施例3では12.0であり、試料dを用いた実施例4
では3.0であり、試料eを用いた実施例5では12.
5であり、試料fを用いた実施例6では3.2であり、
試料gを用いた実施例7では11.5であり、試料hを
用いた実施例8では2.5であった。同様に凝着量の単
位を略すると、試料iを用いた比較例では20.0であ
り、実施例1〜実施例8に比較して凝着量が大きかっ
た。凝着量についての試験結果から理解できるように、
本発明に係る耐摩耗性銅基合金(試料a〜試料h)は耐
凝着性に優れており、ひいては耐摩耗性に優れているこ
とがわかる。殊に高温雰囲気における耐摩耗性に優れて
いることがわかる。
【0030】更に上記した比較材である試料iの組成を
基本組成とし、この基本組成において重量比で銀を0
%、0.1%、1%、5%、10%、15%、20%に
変化させた粉末を用い、この粉末で形成した粉末層に炭
酸ガスレーザのレーザビームを同様な条件で照射するこ
とにより肉盛層を形成した。この場合には銀の増量分は
実質的に銅で対応した。この肉盛層についても同様に凝
着量を試験した。試験結果を図3に示す。図3から理解
できるように、銀の含有量が増加するにつれて、耐摩耗
性銅基合金の凝着量は低減されると共に、相手材の凝着
量も低減されることがわかった。殊に銀が0.1%含有
されただけでも、耐摩耗性銅基合金の凝着量は大きく低
減される。銀の含有量が14%、15%を越えたあたり
から、銀添加による耐摩耗性銅基合金の改善効果はほぼ
飽和する。更に銀の含有量が15%を越えたあたりか
ら、相手攻撃性が増加し、相手材の凝着量が増加してい
た。このことから、銀の含有量は15.0%以下に設定
すれば、本発明に係る耐摩耗性銅基合金の価格の高騰を
抑えつつ、耐摩耗性銅基合金の自己耐摩耗性を改善で
き、更に相手材の凝着量も抑えることができることがわ
かる。
【0031】更に別の比較例として、鉄系の焼結材料
(組成:Fe:残部、C:0.25〜0.55%、N
i:5.0〜6.5%、Mo:5.0〜8.0%、C
r:5.0〜6.5%)で試験片を形成し、同様に耐凝
着試験を行った。この場合に凝着量の単位を略すると、
凝着量は55であり大きく、更に相手材の凝着量も10
であり、相手攻撃性が大きかったにもかかわらず、自己
耐摩耗性は充分ではなかった。上記した試験結果によれ
ば、本発明に係る耐摩耗性銅基合金の肉盛層で内燃機関
の動弁系部品であるバルブシート自体を形成したり、本
発明に係る耐摩耗性銅基合金の肉盛層をバルブシートに
積層したりすれば、バルブシートの耐凝着性を改善で
き、ひいてはバルブシートの自己耐摩耗性を改善でき、
更に相手材であるバルブの凝着量も抑えることができる
ことがわかる。
【0032】殊に、LPGやCNG等の天然ガスを燃料
する内燃機関の場合であっても、本発明に係る耐摩耗性
銅基合金の肉盛層でその内燃機関の動弁系部品であるバ
ルブシート自体を形成したり、本発明に係る耐摩耗性銅
基合金の肉盛層をバルブシートに積層したりすれば、上
記したLPGやCNG等の天然ガスを燃料する内燃機関
の雰囲気が減酸化雰囲気、減潤滑雰囲気であるとして
も、バルブシートの耐凝着性を改善でき、ひいてはバル
ブシートの自己耐摩耗性を改善でき、更に相手材である
バルブの凝着量も抑えることができる。
【0033】本実施例に係る耐摩耗性銅基合金(試料a
〜試料h)は、融液状態において液相分離傾向が高く、
互いに混じり合いにくい複数種類の液相が生成し易く、
分離した液相がそれぞれの比重差、伝熱状況等により上
下に分離し易い性質をもつと考えられる。この場合、粒
状となった液相が急冷凝固すると、粒状の液相が粒状の
硬質粒子を生成するものと考えられる。
【0034】ところで、上記した比較例である試料iの
組成をもつ銅基合金に銀が重量%で5%含有されるよう
に製造された粉末材料を用い、この粉末材料をアルミニ
ウム合金系の基体に集合させた状態で、この粉末材料に
炭酸ガスレーザのレーザビームを照射することによって
肉盛層を形成した。図4及び図5はこの肉盛層の顕微鏡
組織を示す。図4は倍率10倍、図5は倍率100倍を
示す。図4及び図5に示すように、硬質相を有する多数
の硬質粒子がマトリックスの全体に分散していた。硬質
粒子の粒径は10〜350μm程度であり、また拡大組
織を示す図5では、硬質粒子の内部に、比較例(試料
i)では見られないMoを高濃度に含むシリサイド(X
線回折で確認)が形成されていた。これは、銀の融点が
低いため、本発明に係る耐摩耗性銅基合金の特徴である
融液状態における液相分離傾向が大きくなったためであ
ると推察される。
【0035】本発明者等がEPMA分析装置を用いて上
記組織を調べたところ、硬質粒子は、Moを主要成分と
するシリサイドと、Ni−Co系の固溶体とを主要素と
して形成されていた。肉盛層を構成するマトリックス
は、Cu−Ni系の固溶体と、ニッケルを主要成分とす
る網目状のシリサイドとを主要素として形成されてい
た。またマトリックスの硬度(マイクロビッカース)は
Hv200〜250程度であり、硬質粒子の硬度は30
0〜400程度であった。
【0036】また、比較例である試料iの組成をもつ銅
基合金に銀が重量%で1%含有されるように製造された
粉末材料を用い、前述したように、この粉末材料をアル
ミニウム合金系の基体に集合させた状態で、この粉末材
料に炭酸ガスレーザのレーザビームを照射することによ
って肉盛層を形成した。図6及び図7はこの肉盛層の顕
微鏡組織を示す。図6は倍率10倍、図7は倍率100
倍を示す。この場合には、硬質粒子の粒径は50〜20
0μm程度であり、銀5%を含む組織の場合よりも、M
oを主要成分とするシリサイドは少なかったが、その分
散状態は一層均一であった。
【0037】また、比較例である試料iの組成をもつ銅
基合金に銀が重量%で20%含有されるように製造され
た粉末材料を用い、前述したように、この粉末材料をア
ルミニウム合金系の基体に集合させた状態で、この粉末
材料に炭酸ガスレーザのレーザビームを照射することに
よって肉盛層を形成した。図8及び図9はこの肉盛層の
顕微鏡組織を示す。図8は倍率10倍、図9は倍率10
0倍を示す。このように銀が20%と過剰である場合に
は、融液状態における液相分離傾向が大きくなりすぎ、
基体を構成する母材と肉盛層との界面において、肉盛層
の底部の大部分にわたるかなり粗大偏平型の硬質粒子が
形成されていた。このような粗大な硬質粒子が生成する
と、肉盛層の内部における成分が不均一化し易いため、
肉盛層の耐摩耗性の均一化の面では好ましくない。この
意味においても銀の含有量は15%以下が好ましいとい
える。なお図4〜図9に係る粉末材料においては、銀含
有量相当するぶんは銅で調整した。
【0038】
【表2】
【0039】また、上記した耐摩耗性銅基合金における
モリブデン(Mo)をタングステン(W)に置き換えた
粉末を用い、この粉末で形成した粉末層についても同様
に、炭酸ガスレーザのレーザビームを照射することによ
り、実施例11〜実施例18に係る肉盛層を形成した。
この肉盛層についても同様に凝着量を試験した。表2
は、実施例11〜実施例18に係る耐摩耗性銅基合金の
組成、肉盛層の凝着量の試験結果を示す。このようにモ
リブデン(Mo)をタングステン(W)に置き換えた場
合についても、同様に、耐摩耗性銅基合金の自己耐摩耗
性を改善でき、更に相手材の凝着量も抑えることができ
た。従って、モリブデン(Mo)をタングステン(W)
に置き換えた耐摩耗性銅基合金を用いて、LPGやCN
G等の天然ガスを燃料する内燃機関の動弁系部材品であ
るバルブシート自体を形成したり、バルブシートに被覆
した場合であっても、バルブシートの耐凝着性を改善で
き、ひいてはバルブシートの自己耐摩耗性を改善でき、
更に相手材であるバルブの凝着量も抑えることができ
た。上記したようにモリブデン(Mo)をタングステン
(W)に置き換えた耐摩耗性銅基合金の肉盛層について
も、硬質相で形成された多数の硬質粒子がマトリックス
の全体に分散していた。
【0040】更にモリブデンの一部をタングステンに置
き換えた耐摩耗性銅基合金、モリブデンの一部をタング
ステン、ニオブ及びバナジウムに置き換えた耐摩耗性銅
基合金で形成された肉盛層、タングステンの一部をニオ
ブ及びバナジウムに置き換えた耐摩耗性銅基合金で形成
された肉盛層についても、同様に、優れた耐摩耗性が得
られた。
【0041】図10及び図11は、車両用の内燃機関1
1の燃焼室に連通するポート13に耐摩耗性銅基合金を
肉盛してバルブシートを形成する過程を模式的に示す。
この場合には、アルミニウム合金で形成された内燃機関
11の燃焼室に連通する複数のポート13の内縁部に
は、リング形状をなす周縁面10が設けられている。散
布器100を周縁面10に接近させた状態で、本発明に
係る耐摩耗性銅基合金からなる粉末100aを周縁面1
0に堆積させて粉末層を形成すると共に、レーザ発振器
40から発振したレーザビーム41をビームオシレータ
58により揺動させつつ粉末層に照射することにより肉
盛層15を周縁面10に形成する。この肉盛層15はバ
ルブシートとなる。肉盛の際にはガス供給装置102か
らシールドガス(一般的にはアルゴンガス)を肉盛箇所
に供給し、肉盛箇所をシールドする。
【0042】(その他)上記した実施例ではガスアトマ
イズ処理により耐摩耗性銅基合金の粉末を形成している
が、これに限らず、溶湯を回転体に衝突させて粉末化す
るメカニカルアトマイズ処理などの粉末化処理、あるい
は、粉砕装置を用いた機械的粉砕処理により肉盛用の耐
摩耗性銅基合金の粉末を形成しても良い。上記した実施
例は、内燃機関の動弁系を構成するバルブシートに適用
した場合であるが、これに限られるものではない。場合
によっては、バルブシートの相手材であるバルブを構成
する材料、あるいは、バルブに肉盛される材料に適用す
ることができる。上記した実施例は肉盛する場合に適用
しているが、これに限らず、場合によっては溶製品など
にも適用できる。その他、本発明は上記し且つ図面に示
した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱
しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。実
施の形態、実施例に記載されている語句の形容は、一部
であっても各請求項に記載できるものである。なお、表
1及び表2に記載されている組成成分の含有量の数字
は、請求項または付記項に記載の組成成分の上限値また
は下限値として規定することができるものである。
【0043】(付記)上記した記載から次の技術的思想
も把握することができる。 (付記項1)重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
耐摩耗性銅基合金で形成された肉盛層。 (付記項2)重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
耐摩耗性銅基合金で形成された肉盛摺動部材。 (付記項3)付記項1または付記項2において、レーザ
ビーム、電子ビーム、アークから選択される高密度エネ
ルギ熱源により形成された肉盛層または肉盛摺動部材。 (付記項4)重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
耐摩耗性銅基合金で形成された肉盛層を有する内燃機関
用の動弁系部材(例えばバルブシート)。 (付記項5)重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
耐摩耗性銅基合金を用い、耐摩耗性銅基合金を基体に被
覆することを特徴とする摺動部材の製造方法。 (付記項6)重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
耐摩耗性銅基合金の粉末材料を用い、粉末材料を基体に
被覆して粉末層を形成し、粉末層を融液化した後に凝固
させることにより耐摩耗性に優れた肉盛層を形成するこ
とを特徴とする摺動部材の製造方法。 (付記項7)付記項6において、肉盛層は急熱、急冷に
より形成されることを特徴とする摺動部材の製造方法。 (付記項8)付記項6において、粉末層の融液化は、レ
ーザビーム、電子ビーム、アークから選択される高密度
エネルギ熱源により行われることを特徴とする摺動部材
の製造方法。 (付記項9)付記項5〜付記項8において、基体はアル
ミニウムまたはアルミニウム合金で形成されていること
を特徴とする摺動部材の製造方法。 (付記項10)付記項5〜付記項9において、基体は内
燃機関用の動弁系部品または動弁系部位(例えばバルブ
シート)であることを特徴とする摺動部材の製造方法。 (付記項11)請求項1に係る耐摩耗性銅基合金で形成
されたバルブシート合金。 (付記項12)マトリックスに硬質粒子が分散してお
り、硬質粒子は、Moを主要成分とするシリサイドと、
Ni−Co系の固溶体とを主要素としており、マトリッ
クスは、Cu−Ni系の固溶体と、ニッケルを主要成分
とするシリサイドとを主要素とすることを特徴とする請
求項1に記載の耐摩耗性銅基合金。 (付記項13)重量%で、ニッケル:10.0〜30.
0%、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜1
5.0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:
2.0〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並び
に、モリブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウム
の1種または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不
純物を含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴
とする耐摩耗性銅基合金で形成された粉末材料。 (付記項14)付記項13に記載の組成をもつ肉盛用の
粉末材料。 (付記項15)請求項1に記載の耐摩耗性銅基合金で形
成された肉盛層が基体に積層されていることを特徴とす
る摺動部材。 (付記項16)アルミニウムまたはアルミニウム合金を
基材とする基体に、請求項1に記載の耐摩耗性銅基合金
で形成された肉盛層が積層されていることを特徴とする
摺動部材。
【0044】
【発明の効果】本発明に係る耐摩耗性銅基合金によれ
ば、優れた自己耐摩耗性が得られる。更に相手材の凝着
量も抑えることができる。殊に、LPGやCNG等の天
然ガスを燃料する内燃機関の動弁系部材などの摺動部材
に代表されるように、減酸化雰囲気、減潤滑雰囲気、無
酸化雰囲気、無潤滑雰囲気等の雰囲気において使用され
る場合であっても、優れた自己耐摩耗性が得られると共
に、相手材の凝着量も抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】肉盛層を形成している状態を模式的に示す斜視
図である。
【図2】耐凝着試験を行っている状態を模式的に示す側
面図である。
【図3】耐摩耗性銅基合金の凝着量及び相手材の凝着量
と銀含有量との関係を示すグラフである。
【図4】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で5
%含有されるように製造された粉末材料で形成された肉
盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:10倍)である。
【図5】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で5
%含有されるように製造された粉末材料で形成された肉
盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:100倍)である。
【図6】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で1
%含有されるように製造された粉末材料で形成された肉
盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:10倍)である。
【図7】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で1
%含有されるように製造された粉末材料で形成された肉
盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:100倍)である。
【図8】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で2
0%含有されるように製造された粉末材料で形成された
肉盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:10倍)である。
【図9】試料iの組成をもつ銅基合金に銀が重量%で2
0%含有されるように製造された粉末材料で形成された
肉盛層の顕微鏡組織の写真(倍率:100倍)である。
【図10】内燃機関のポートに耐摩耗性銅基合金を肉盛
してバルブシートを形成する過程を模式的に示す概略図
である。
【図11】内燃機関のポートに耐摩耗性銅基合金を肉盛
してバルブシートを形成する過程を模式的に示す要部の
斜視図である。
【符号の説明】
図中、50は基体、55はレーザビーム、53は粉末
層、60は肉盛層を示す。
【手続補正書】
【提出日】平成13年2月7日(2001.2.7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図4
【補正方法】変更
【補正内容】
【図4】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図5
【補正方法】変更
【補正内容】
【図5】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正内容】
【図7】
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】
【手続補正6】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正内容】
【図9】

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、ニッケル:10.0〜30.0
    %、シリコン:0.5〜5.0%、鉄:2.0〜15.
    0%、クロム:0.9〜15.0%、コバルト:2.0
    〜15.0%、銀:0.01〜15.0%、並びに、モ
    リブデン、タングステン、ニオブ及びバナジウムの1種
    または2種以上:2.0〜15.0%、不可避不純物を
    含むと共に、残部が銅の組成からなることを特徴とする
    耐摩耗性銅基合金。
  2. 【請求項2】請求項1において、シリサイドが分散して
    いることを特徴とする耐摩耗性銅基合金。
  3. 【請求項3】請求項1または請求項2において、無酸化
    雰囲気または減酸化雰囲気において用いられることを特
    徴とする耐摩耗性銅基合金。
  4. 【請求項4】請求項1〜請求項3において、肉盛用合金
    として用いられることを特徴とする耐摩耗性銅基合金。
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