JP2002100506A - 強磁性金属粉末及びこれを用いた磁気記録媒体 - Google Patents

強磁性金属粉末及びこれを用いた磁気記録媒体

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JP2002100506A
JP2002100506A JP2000290657A JP2000290657A JP2002100506A JP 2002100506 A JP2002100506 A JP 2002100506A JP 2000290657 A JP2000290657 A JP 2000290657A JP 2000290657 A JP2000290657 A JP 2000290657A JP 2002100506 A JP2002100506 A JP 2002100506A
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magnetic layer
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Koichi Masaki
幸一 正木
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】熱揺らぎが小さい強磁性金属粉を生成し、これ
を使用して、保存性等の実用特性に優れ、且つ短波長出
力とC/Nが良好で、熱揺らぎ特性が劣化しない磁気記
録媒体を提供すること。 【解決手段】鉄を主成分とし、金属部分とその周りに存
在する酸化物層とからなる強磁性金属粉末であって、該
強磁性粉末は、平均長径が30〜65nmであり、その
変動係数が3〜25%であり、平均針状比が4.0〜
8.0であり、かつ、強磁性金属粉末の結晶子サイズと
金属部分の平均短径の比が1〜4であり、該強磁性金属
粉末の抗磁力が135〜240kA/mであり、飽和磁
化(σs)が90〜155A・m2/kgであることを
特徴とする強磁性金属粉末およびこれを用いた磁気記録
媒体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、強磁性金属粉末、
及び、それを使用した磁気テープ等の磁気記録媒体に関
するものであり、特に強磁性金属粉末や結合剤を主体と
する磁性塗料を非磁性支持体上に塗布して磁性層を形成
した塗布型の磁気記録媒体に関し、短波長領域における
ノイズ、出力、C/N比、オーバーライト特性、及び高
温高湿環境を含む保存での減磁が優れ、且つ、耐久性、
スチル、摩擦係数が優れた磁気記録媒体に関する。特
に、再生に磁気抵抗効果を利用した磁気抵抗型(MR)
ヘッドを使用したシステムに最適な、強磁性金属粉末及
びそれを使用した磁気記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】磁気記録技術は、媒体の繰り返し使用が
可能であること、信号の電子化が容易であり周辺機器と
の組合せによるシステムの構築が可能であること、信号
の修正も簡単にできること等の他の記録方式にはない優
れた特長を有することから、ビデオ、オーディオ、コン
ピューター用途等を始めとして様々な分野で幅広く利用
されてきた。
【0003】そして、機器の小型化、記録再生信号の質
の向上、記録の長時間化、記録容量の増大等の要求に対
応するために、記録媒体に関しては、記録密度、信頼
性、耐久性をより一層向上させることが常に望まれてき
た。
【0004】例えば、音質及び画質の向上を実現するデ
ジタル記録方式の実用化、ハイビジョンTVに対応した
録画方式の開発に対応するために、従来のシステムより
も一層、短波長信号の記録再生ができかつヘッドと媒体
の相対速度が大きくなっても信頼性、耐久性が優れた磁
気記録媒体が要求されるようになっている。またコンピ
ューター用途も増大するデータを保存するために大容量
のデジタル記録媒体が開発されることが望まれている。
塗布型の磁気記録媒体の高密度記録化のために、従来よ
り使用されていた磁性酸化鉄粉末に代えて、鉄又は鉄を
主体とする合金磁性粉末を使用したり、磁性粉末の微細
化等磁性体の改良及びその充填性と配向性を改良して磁
性層の磁気特性を改良すること、強磁性金属粉末の分散
性を向上させること、磁性層の表面性を高めること等の
観点から種々の方法が検討され提案されてきた。
【0005】例えば、磁気特性を高めるために強磁性金
属粉末に強磁性体強磁性金属粉末や六方晶系フェライト
を使用する方法が特開昭58−122623号公報、特
開昭61−74137号公報、特公昭62−49656
号公報、特公昭60−50323号公報、US4629
653号、US4666770号、US4543198
号等に開示されている。
【0006】また、強磁性金属粉末の分散性を高めるた
めに、種々の界面活性剤(例えば特開昭52−1566
06号公報、特開昭53−15803号公報、特開昭5
3−116114号公報等に開示されている。)を用い
たり、種々の反応性のカップリング剤(例えば、特開昭
49−59608号公報、特開昭56−58135号公
報、特公昭62−28489号公報等に開示されてい
る。)を用いることが提案されている。
【0007】更に、磁性層の表面性を改良するために、
塗布、乾燥後の磁性層の表面形成処理方法を改良する方
法(例えば、特公昭60−44725号公報に開示され
ている。)が提案されている。
【0008】磁気記録媒体の高記録密度を達成するた
め、使用する信号の短波長化が強力に進められている
が、信号を記録する領域の長さが使用されている磁性体
の大きさと比較できる程度の大きさになると明瞭な磁化
遷移状態を作り出すことができないので、実質的に記録
不可能となる。このため使用する最短波長に対し充分小
さな粒子サイズの磁性体を開発する必要があり、磁性体
の微粒子化が長年にわたり指向されている。
【0009】従って、高密度記録のために強磁性金属粉
を微細化し得られる媒体の表面粗さを小さくする必要が
あることは、当業者によく知られたことであるが、磁気
記録用金属粉は、微細化にともない針状比が低下し形状
異方性が損なわれるため、所望の抗磁力が得られなくな
るという問題がある。また、磁気記録用強磁性金属粉末
の表面に形成される酸化物膜についても、高密度記録を
達成することを目的として、種々の方法で研究されてお
り、酸化膜厚、酸化物の構造、酸化物の磁化について報
告されている。例えば、酸化物組成については、スピネ
ル型酸化鉄(FeOx 1.33≦x≦1.5)、また
鉄酸化物の飽和磁化については約40A・m2/kgが
報告されている。
【0010】最近、コンピュ−タ−用デ−タ記録システ
ムには、磁気抵抗効果を利用した高感度な再生ヘッド
(MRヘッド)が使用されているが、このシステムにおい
て、システムノイズは磁気記録媒体に由来するノイズに
支配されている。そこで、本発明者は、媒体ノイズを低
減させるために強磁性粒子を微細化することを検討した
が、強磁性金属粉の微細化にともない熱揺らぎの影響を
受け、磁化遷移領域の安定性が問題となるという、問題
が生じることにつき当たった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来技
術の問題点に鑑みなされたものであり、熱揺らぎが小さ
い強磁性金属粉を生成し、これを使用して、保存性等の
実用特性に優れ、且つ短波長出力とS/Nが良好で、熱
揺らぎ特性が劣化しない磁気記録媒体を提供することを
目的としている。
【0012】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、微粒子強
磁性金属粉末の製法を種々検討し、また熱揺らぎを小さ
くすべく強磁性金属粉の徐酸化条件等を検討した結果、
強磁性金属粉末の結晶子サイズと金属部短径の関係にお
いて、結晶子サイズ/金属部短径が1〜4であるとき、
強磁性金属粉末は微粒子であるにもかかわらず、熱揺ら
ぎが少ないことを見出した。更には、表層の酸化物層中
にMAl24(Mは遷移金属)を含む強磁性金属粉末を合
成し、徐酸化条件を検討し薄い酸化膜を形成させたとこ
ろ、この様な強磁性金属粉末は粒子表面に存在する非磁
性の焼結防止剤及びMAl24がほとんど磁化を有しな
いため、粒子間の相互作用が小さくなり、高充填しても
抗磁力が低下しないこと、粒子間の相互作用が小さいこ
とを反映し、媒体のノイズレベルが低下することをも見
いだした。
【0013】即ち、本発明は、鉄を主成分とし、金属部
分とその周りに存在する酸化物層とからなる強磁性金属
粉末であって、前記強磁性金属粉末は、平均長径が30
〜65nmであり、その変動係数が3〜25%であり、
強磁性金属粉末の平均針状比が4.0〜8.0であり、
かつ、強磁性金属粉末の結晶子サイズと金属部分の平均
短径の比が1〜4であり、該強磁性金属粉末の抗磁力が
135〜240kA/mであり、飽和磁化(σs)が9
0〜155A・m2/kgであることを特徴とする。ま
た、本発明は、支持体上に、少なくとも1層以上の磁性
層が設けられた磁気記録媒体において、該磁性層が上記
記載の強磁性金属粉末を含有することを特徴とする磁気
記録媒体をも提供する。
【0014】本発明においては、以下の態様が特に好ま
しい。 (1)鉄を主成分とし、金属部分とその周りに存在する
酸化物層とからなる強磁性金属粉末であって、該酸化物
層にMAl24(Mは遷移金属)を含み、前記強磁性金属
粉末は、平均長径が30〜65nmであり、その変動係
数が3〜25%であり、強磁性金属粉末の平均針状比が
4.0〜8.0であり、かつ、強磁性金属粉末の結晶子
サイズと金属部分の平均短径の比が1〜4であり、該強
磁性金属粉末の抗磁力が135〜240kA/mであ
り、飽和磁化(σs)が90〜155A・m2/kgで
ある強磁性金属粉末。 (2)強磁性金属粉末が、Coを含有し、Co含有量が
強磁性金属粉末に含有される鉄に対して、5〜45モル
%であることを特徴とする、強磁性金属粉末。 (3)強磁性金属粉末が、焼結防止効果を有する、Al
化合物と希土類元素成分(希土類としてYを含める)化
合物を含有することを特徴とする、強磁性金属粉末。 (4)強磁性金属粉末全体中に存在する水溶性アニオン
の総和が、質量基準で0〜50ppm/gであり、水溶
性カチオンの総和が、質量基準で0〜100ppm/g
であることを特徴とする、強磁性金属粉末。 (5)磁性層の残留磁束密度×磁性層厚みが10〜10
0mT・μmであり、磁性層厚みが0.5μm以下であ
り、かつ磁性層の表面粗さが、光干渉表面粗さ計による
中心面平均表面粗さで1.0〜3.0nmであることを
特徴とする、磁気記録媒体。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明において、強磁性金属粉末
とは、出発原料のサイズや形態に起因する粒子の最大の
外形を構成する粒子を指し、粒子を構成する一番大きい
外形を強磁性金属粉末の長軸長としてとらえている。即
ち、下記に詳述する通りの、高分解能透過型電子顕微鏡
で粒子写真を撮影した際、粒子の最大の外形を構成する
粒子を強磁性金属粒子といい、外径に長軸と短軸が存在
する。ここで針状比とは長軸/短軸である。強磁性金属
粉末の金属部分とは、高分解能透過型電子顕微鏡で強磁
性金属粉末の格子像を観察し、強磁性金属粉末全体から
強磁性金属粉末の内部を占める金属部分の周りに存在す
る酸化物層を除いた部分を指す。金属部分の平均長径と
は、金属部分を構成する長軸の長さの平均を示し、金属
部分の平均短径とは、該金属部分の短軸の長さ(長軸に
対して直角方向の最大長)の平均を示し、金属部分の平
均針状比とは針状比(長径/短径)の平均値を指す。針
状比の変動係数とは、針状比の標準偏差を平均針状比で
除した値を指す。長径の変動係数とは、長径の標準偏差
を平均長径で除した値を指す。短径の変動係数とは、短
径の標準偏差を平均短径で除した値を指す。結晶子サイ
ズとは、X線回折法で求め、鉄の(110)面、(22
0))面よりシェラーの式を用い求めた結晶子サイズの
平均値を指し、結晶子サイズと金属部平均短径の比と
は、上記によって定義される結晶子サイズと金属部平均
短径の比を指す。上述の統計値を得るためのサンプル数
は、約300個である。更に、上記サイズ規定は、他の
針状粉体についても適用される。上記サンプルの測定法
としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0016】高分解能透過型電子顕微鏡で粒子写真を撮
影し、撮影した高分解能電顕写真の各強磁性金属粒子の
輪郭を画像解析装置でなぞり、強磁性金属粉末の長軸
長、短軸長(長軸に対して直角方向の最大長)、及び針
状比(長軸長/短軸長)を求めることができる。また、
高分解能透過型電子顕微鏡で酸化物層を撮影し、撮影し
た高分解能電顕写真の各強磁性金属粒子の酸化物層の輪
郭を画像解析装置でなぞり、強磁性金属粉末の酸化物層
厚みを計測することができる。同じ写真より、金属部分
をなぞり強磁性金属粉末の金属部分の長径、短径、及び
針状比(長径/短径)を求める。強磁性金属粉末の金属
部分は金属の結晶子からなり、通常、強磁性金属粉末の
金属部分は、1〜数個の金属の結晶子からなる。
【0017】本発明は、鉄を主成分とし、金属部分とそ
の周りに存在する酸化物層とからなる強磁性金属粉末で
あって、平均長径が30〜65nmであり、その変動係
数が3〜25%であり、平均針状比が4.0〜8.0で
あり、かつ、強磁性金属粉末の結晶子サイズと金属部分
の平均短径の比が1〜4であり、該強磁性金属粉末の抗
磁力が135〜240kA/mであり、飽和磁化(σ
s)が90〜155A・m2/kgにすることによっ
て、その結果熱揺らぎを抑え、低ノイズ、高Hcが要求
される磁気抵抗型(MR)ヘッド搭載システムに好適な
磁気記録媒体を提供することができるものである。
【0018】本発明において、強磁性金属粉末の平均長
径は、30〜65nmであり、好ましくは35〜65n
mである。強磁性金属粉末の平均長径が下限より小さい
場合には、目的の抗磁力が得られないだけでなく、磁気
塗料を作成する時分散が困難であり、かつ磁場配向して
も配向の効果があらわれにくく、安定化のために形成し
た酸化膜の影響で高密度記録に必要な飽和磁化σsを確
保することが困難になる。逆に、強磁性金属粉末の平均
長径が上限を越えると、目的とする超平滑な表面を実現
することができない。
【0019】本発明において、強磁性金属粉末の金属部
分の平均長径の変動係数は3〜25%、好ましくは3〜
23%である。この変動係数が上限より大きい場合に
は、Hc分布が大きくなり、高記録密度特性が劣化する
という問題が生じる。
【0020】本発明において、金属部分の平均針状比は
4.0〜8.0、好ましくは4.5〜8.0である。針
状比の変動係数は小さいことが好ましく、Hc分布が小
さく、高抗磁力成分が少なく、SFD(switching-fiel
d distribution)が小さくなる傾向が認められた。従っ
て、この変動係数が小さいと、Hc分布が小さく、特
に、高Hc成分(Hc238.7kA/m以上で磁化反
転する成分の割合/Hc)が減少するので、オ−バ−ラ
イト特性上好ましいが、この平均針状比が上記した下限
より小さいときには、形状異方性に立脚した抗磁力Hc
が小さくなり、高密度記録に不利になる
【0021】本発明において、強磁性金属粉末の結晶子
サイズと金属部分の平均短径の比は1〜4、好ましくは
1.5〜4であり、下限未満であると、熱ゆらぎ特性が
劣化するという問題が、逆に上限を超えると媒体のノイ
ズが増加するという問題が生じる。
【0022】本発明において、強磁性金属粉末の抗磁力
は、135〜240kA/m、好ましくは145〜22
5A/mである。先に述べたように強磁性金属粉粒子の
金属部分の平均長径、及び、変動係数を規定すること
で、形状異方性により立脚したHcの発現、かつHc分
布を小さくでき、本発明の微粒子を用いて磁性層厚みを
薄くすることにより出力、C/N比が優れた磁気記録媒
体得られたと推定している。
【0023】本発明において、強磁性金属粉末の飽和磁
化(σs)は90A・m2/kg以上、好ましくは90
〜155A・m2/kg、より好ましくは90〜150
A・m2/kgである。飽和磁化σsが上記下限より低
いと、SFDが大幅に劣化するだけでなく、Hcも小さ
くなり、高密度記録に不利となる。一方飽和磁化σsが
高くなりすぎると、残留磁束密度が高くなり、磁性層厚
みを薄くしても、媒体の残留磁束(Φr)が高くなって
しまい、MRヘッドを飽和して、波形歪みやパルスの非
対称性が発生する等の悪影響を及ぼす傾向がある。
【0024】尚、磁性層のBr(残留磁束密度)は通
常、100〜500mT、好ましくは150〜450m
T、更に好ましくは、200〜450mTである。磁性
層の残留磁束(Φr){残留磁束密度(Br)×磁性層
の平均厚み(δ)}は、10〜100mT・μmが好ま
しい。磁性層の残留磁束(Φr)はMRヘッドの性能に
より最適値を設定することが望ましく、MRヘッドが飽
和しない範囲で高めに選ぶことが好ましい。Hc、B
r、Φrが下限値より小さいと短波長出力を十分に得る
ことができない場合があり、また、それらが上限値より
大きいと記録に使用するヘッドが飽和してしまうので出
力を確保することができない場合がある。
【0025】本発明において、強磁性金属粉末は上記構
造及び物性を有するものであれば、その製造法は特に制
限されるものではなく、任意の方法を用いることができ
るが、好ましくは以下の方法が例示される。粒度がよく
揃った(長径と針状比も揃っているのがより好まし
い。)出発原料に焼結防止処理を行い、不純物を除去
後、脱水反応を行う。尚、脱水反応は、窒素流量を多く
し、生成する水蒸気を滞留させることなく系外へ排出さ
せるのが好ましい。脱水反応完了後に、熱処理温度を高
くし、ヘマタイトの結晶性を高め、次いで水素還元する
ときに金属酸化物(例、FeOx:1≦x≦1.5、例
えばFe23、Fe34)から金属(例、Fe)の核生
成数を制御する方法である。
【0026】尚、出発原料は、粒子に枝分かれのない粒
度分布の揃った単分散ゲータイトあるいは単分散ヘマタ
イトが好ましく、出発原料の平均粒子長は40〜100
nm、針状比が3〜12、長軸長の変動係数25%以下
が好ましい。平均粒子長が40nm以下の原料を使用し
た場合には、Hc、σsを目的の範囲とすることができ
にくく、100nm以上の原料を使用した場合には、所
望の微粒子強磁性金属粉が得られにくくなる傾向があ
る。また、針状比が12を超えると、脱水、還元の熱処
理過程において、その形状を保持することが困難となる
傾向があり、針状比が3未満の場合には強磁性金属粉と
したときの抗磁力が小さく高密度記録用媒体には使用す
ることが難しくなる傾向がある。
【0027】本発明において使用し得る強磁性金属粉末
の元素組成としては、Feを主成分とするものであれ
ば、特に制限はなく、Co又はNi等との合金であるの
が好ましく、特にはCoはσsを大きくしかつ緻密で薄
い酸化膜を形成することができるので好ましい。ここ
で、主成分とは、金属部分の全質量に対して、75質量
%以上であることを意味する。強磁性金属粉末の金属部
分がCoを含有する場合、Coの含有量は強磁性金属粉
末に含有される鉄に対して、5〜45モル%が好まし
く、より好ましくは10〜40モル%である。Coは、
上述のように一部を原料中にドープし次に必要量を表面
に被着し原料に添加し、還元により合金化することが好
ましい。
【0028】本発明で使用できる上記の強磁性金属粉末
には、Fe、Co以外に、鉄に対して質量比で20重量
%以下の割合で、Al、Si、S、Ti、V、Cr、C
u、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、
Ba、Sr、W、Au、Pb、Bi、La、Ce、P
r、Nd、P、Mg、Mn、Zn、Sr、B、Ca等の
原子を含むことが好ましい。これらの元素は出発原料の
形状制御の他に、粒子間の焼結防止と還元の促進及び還
元した強磁性金属粉末の形状と粒子表面の凹凸制御に効
果がある。
【0029】単分散ゲータイトあるいは単分散ヘマタイ
トを最終的に金属に還元するためには純水素にて、約3
50〜650℃で還元する。またαFe23よりFe3
4、FeOに還元するときは、純水素ではなく各種還
元ガスを使用することができ、その方が好ましい。還元
の際に水分は、焼結に関係することが知られているの
で、生成核の生成をできるだけ一つに抑制し、かつ結晶
率を高めるために、還元により発生する水を短時間に系
外へ除去することあるいは還元により生成する水の量を
制御することが好ましい。このような水の制御は、還元
ガスの分圧を制御したり、還元ガス量を制御することに
より行うことができる。
【0030】徐酸化の初期に使用されるガス中の水分量
は、厳しく管理されることが好ましく、露点を−40℃
以下とすることが好ましい。また徐酸化の時に使用する
ガス中に炭酸ガスが含有されていると、強磁性金属粉末
表面の塩基性点に吸着するので、このような炭酸ガスが
含まれていてもよい。本発明では薄い酸化膜を形成する
ため、徐酸化する前に強磁性金属粉末を冷却した不活性
ガスを用いて室温以下に冷却し、徐酸化の際に発生する
熱の影響を小さくすることが好ましい。徐酸化中の発熱
による強磁性金属粉の温度上昇に注意し、強磁性金属粉
の温度が40℃を超えないように制御することが好まし
い。より好ましくは30〜35℃を超えることなく徐酸
化することが好ましい。
【0031】本発明の強磁性金属粉末は、水溶性イオン
量が低いことが好ましい。強磁性金属粉末の水溶性イオ
ンの中で、アルカリ金属、アルカリ土類金属イオンは磁
気記録媒体の磁性層内の脂肪酸と反応し、脂肪酸金属塩
を形成するので、高温高湿で長期保管した時、磁性層の
摩擦係数を増加させたり、磁気記録媒体の再生出力を低
下させる原因となることがある。また脂肪酸アルカリ塩
は、磁性層等の層内に存在する鉄イオン(ベンゾヒドロ
キサム酸と鉄錯体を形成するので定量できる)とも反応
し脂肪酸鉄を形成する。脂肪酸鉄は粘着性が顕著なので
特に摩擦係数を増加させる原因となる場合がある。一
方、水溶性アニオンは、硫酸イオン、燐酸イオン、フツ
素イオン、塩素イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン等で
あり、これらアニオンが多いと、強磁性金属粉末に作用
し、金属鉄をイオン化させやすくしたり、層内の脂肪酸
エステルの分解、ウレタンバインダ−の分解を促進させ
てしまったり、また極性基含有バインダ−の粒子表面へ
の吸着を妨げるので分散性を劣化させてしまう傾向があ
る。更に金属ヘッド、金属ガイド、金属ガイドポ−ル等
を腐食させる傾向がある。
【0032】即ち、保存性、金属ヘッドの腐食防止が優
れた単層及び多層構造の磁気記録媒体を得るべく、水溶
性イオンの種類と量に関し好ましい範囲を検討した結
果、強磁性金属粉末1g当り、存在する水溶性アニオン
の総和が質量基準で0〜50ppmの範囲であり、水溶
性カチオンの総和が質量基準で0〜100ppmの範囲
であるのが好ましいことが判った。分散性改良のために
酸性の官能基をもつ化合物を吸着させる場合は、水溶性
アニオンの中で、硫酸イオン、燐酸イオン、硝酸イオン
を減少させることが好ましい。硫酸イオンの好ましい範
囲は0〜10ppm/g、より好ましくは0〜5ppm
/g、燐酸イオンの好ましい範囲は0〜8ppm/g、
より好ましくは0〜4ppm/g、硝酸イオンの好まし
い範囲は0〜10ppm/g、より好ましくは0〜5p
pm/gである。水溶性カチオンは、脂肪酸金属塩の形
成を抑制するためにアルカリ金属、アルカリ土類金属イ
オンを減少させるのに有効である。特にアルカリ金属イ
オンを減少させるのに有効であり、好ましくは0〜30
ppm/g、より好ましくは0〜20ppm/gであ
る。
【0033】本発明でいう水溶性イオンは、強磁性金属
粉末5gに蒸留水50mlを添加し25℃で1時間撹拌
した抽出液からイオンクロマトを使用し測定され、水溶
性カチオンの総和とは、(Na+、NH4 +、K+、M
2+、Ca2+)の総和を、アニオンの総和とは、
(F-、Cl-、NO2 -、Br-、NO3 -、PO4 3-、SO
4 2-)の総和を各々意味する。アニオンとカチオンの電
荷がバランスしないこともあるが、これは溶液のpH
(水の解離状態)が異なるためである。
【0034】強磁性金属粉末には後述する分散剤、潤滑
剤、界面活性剤、帯電防止剤等で分散前にあらかじめ処
理を行うこともできる。具体的には、特公昭44−14
090号公報、特公昭45−18372号公報、特公昭
47−22062号公報、特公昭47−22513号公
報、特公昭46−28466号公報、特公昭46−38
755号公報、特公昭47−4286号公報、特公昭4
7−12422号公報、特公昭47−17284号公
報、特公昭47−18509号公報、特公昭47−18
573号公報、特公昭39−10307号公報、特公昭
48−39639号公報、米国特許3026215号、
同3031341号、同3100194号、同3242
005号、同3389014号等に記載されている。
【0035】強磁性金属粉末の含水率は0.1〜2質量
%とするのが望ましい。後述する結合剤の種類によって
強磁性金属粉末の含水率は最適化されるのが望ましく、
通常0.5〜1.5%程度ととするのが好ましい。
【0036】強磁性金属粉末のタップ密度は0.2〜
0.8g/cm3が望ましい。0.8g/cm3より大きい
と、該粉末を徐酸化するときに均一に徐酸化されないの
で、該粉末を安全にハンドリングすることが困難であっ
たり、得られたテープの磁化が経時で急速に減少する傾
向がある。逆に0.2g/cm3より小さいと、分散が不
十分になりやすい。
【0037】尚、本発明において、得られた強磁性金属
粉は、X線回折のリ−トベルグ法等を使用して、酸化物
層中にMAl24が存在するかどうかを確認することが
できる。即ち、酸化物の格子定数及びスピネル構造の元
素位置に対し、M(Feを使用)、Alに対する散乱因子
を仮定し、X線回折で得られた回折強度を満足するよう
に元素量をフィッティングさせる。しかしながら、X線
回折の散乱因子が類似していると、Mが、Feであるの
か、Coであるのか、又はFe−Coであるのか、若し
くは、金属組成中に含有される他の遷移金属であるのか
は特定できない。また、本発明で酸化物層の厚みを増加
させると、MAl24の他にFeOx(1.33≦x≦
1.5)も検出されることがあった。MAl24とMF
24の存在比率は、MAl24/(MAl24+MF
24)で表わし、0.1〜1.0であった。MAl2
4/(MAl24+MFe24)が0.2以上、より好ま
しくは0.4以上のとき、ノイズが低くS/Nが良好であ
った。
【0038】次に、上記した強磁性金属粉末を用いた磁
気記録媒体について説明する。本発明の磁気記録媒体の
層構成は、基本的に支持体の上に磁性層を設けてなり、
該磁性層を支持体面の一方側又は両側に設けたものであ
れば、特に制限されない。また、磁性層は単層であって
も2層以上から構成してもよく、後者の場合、それら層
同士の位置関係は目的により隣接して設けても間に磁性
層以外の層を介在させて設けてもよく、公知の層構成が
採用できる。尚、本発明において、磁性層の平均厚みと
は、複層の場合は最上層の磁性層の乾燥厚みを言う。
【0039】磁性層を複層で構成する例としては、強磁
性酸化鉄、強磁性コバルト変性酸化鉄、CrO2粉末、
六方晶系フェライト粉末及び各種強磁性金属粉末等から
選択した強磁性金属粉末を結合剤中に分散した磁性層を
組み合わせたものが挙げられる。尚、この場合、同種の
強磁性金属粉末であってもよいし、元素組成、粉体サイ
ズ等の異なる強磁性金属粉末を含む磁性層を組み合わせ
てもよい。
【0040】本発明においては、強磁性金属粉末を含む
磁性層と支持体との間に非磁性層を設けた磁気記録媒体
が好ましいが、この様な層構成の層の位置関係におい
て、磁性層を上層、非磁性層を下層ともいう。非磁性層
である下層は、実質的に非磁性であれば、その構成は、
特に制限されるべきものではないが、非磁性粉末と結合
剤を含む構成が好ましい。また、下層は実質的に非磁性
である範囲で磁性粉末も使用され得るものである。下層
が実質的に非磁性であるとは、上層の電磁変換特性を実
質的に低下させない範囲で下層が磁性を有することを許
容するということである。
【0041】この場合、磁性層の厚みは、0.5μm以
下、好ましくは0.04〜0.25μm、更に好ましく
は0.05〜0.22μmである。また、記磁性層の表
面粗さは、光干渉表面粗さ計による(3D−MIRAU
法による)中心面平均表面粗さで、好ましくは1.0〜
3.0nmであり、更に好ましくは1.0〜2.5nm
である。更には、残留磁束密度×磁性層厚みが、10〜
100mT・μmであるのが好ましく、より好ましくは
20〜100mT・μmである。非磁性層の厚みは、好
ましくは0.3〜5μm、より好ましくは0.5〜4μ
mである。
【0042】本発明の磁気記録媒体における磁性層に用
いられ得る結合剤は、従来公知の熱可塑系樹脂、熱硬化
系樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用できる。熱
可塑系樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜15
0℃、数平均分子量が1000〜200000、好まし
くは10000〜100000、重合度が約50〜10
00程度のものである。
【0043】熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル、酢酸
ビニル、ビニルアルコ−ル、マレイン酸、アクルリ酸、
アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリ
ル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、
ブタジエン、エチレン、ビニルブチラ−ル、ビニルアセ
タ−ル、ビニルエ−テル、等を構成単位として含む重合
体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂等
が挙げられる。
【0044】また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂として
は、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化
型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アク
リル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコ−ン樹
脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイ
ソシアネ−トプレポリマ−の混合物、ポリエステルポリ
オ−ルとポリイソシアネ−トの混合物、ポリウレタンと
ポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。
【0045】前記の結合剤に、より優れた強磁性金属粉
末の分散効果と磁性層の耐久性を得るために、必要に応
じて、−COOM、−SO3M、−OSO3M、−P=O
(OM)2、−O−P=O(OM)2、(以上につきMは
水素原子、又はアルカリ金属塩基)、−OH、−N
2、−N+3(Rは炭化水素基)、エポキシ基、S
H、CN等から選ばれる、少なくとも1つ以上の極性基
を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好
ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/
gであり、好ましくは10-2〜10-6モル/gである。
【0046】本発明の磁気記録媒体の磁性層に用いられ
る結合剤(硬化剤を含む)は、強磁性金属粉末に対し、
5〜50質量%の範囲、好ましくは10〜30質量%の
範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は5
〜100質量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は2〜
50質量%、ポリイソシアネートを用いる場合は2〜1
00質量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好
ましい。
【0047】本発明において、ポリウレタンを用いる場
合は、ガラス転移温度が−50〜100℃、破断伸びが
100〜2000%、破断応力は0.05〜10Kg/
mm 2(0.49〜98MPa)、降伏点は0.05〜
10Kg/mm2(0.49〜98MPa)であるのが
好ましい。
【0048】本発明に用いるポリイソシアネートとして
は、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル
メタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネ
ート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレン−1,
5−ジイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネー
ト、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタン
トリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これ
らのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、ま
た、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソ
シアネート等を使用することができる。これらのイソシ
アネート類の市販されている商品名としては、日本ポリ
ウレタン社製、コロネートL、コロネートHL、コロネ
ート2030、コロネート2031、ミリオネートM
R、ミリオネートMTL、武田薬品社製、タケネートD
−102、タケネートD−110N、タケネートD−2
00、タケネートD−202、住友バイエル社製、デス
モジュールL、デスモジュールIL、デスモジュール
N、デスモジュールHL等があり、これらを単独又は硬
化反応性の差を利用して二つもしくはそれ以上を組合せ
て用いることができる。
【0049】また、磁性層の強磁性金属粉末の充填度
は、使用する強磁性金属粉末の最大飽和磁化量σs及び
最大磁束密度Bmから計算でき(Bm/4πσs)とな
り、本発明においてはその値は、望ましくは1.8g/
cm3以上であり、更に望ましくは2.0g/cm3以上、
最も好ましくは2.2g/cm3以上である。
【0050】本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、通
常、潤滑剤、研磨剤、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、防
黴剤等を始めとする種々の機能を有する素材をその目的
に応じて含有させることができる。
【0051】潤滑剤としては、ジアルキルポリシロキサ
ン(アルキルは炭素数1〜5個)、ジアルコキシポリシ
ロキサン(アルコキシは炭素数1〜4個)、モノアルキ
ルモノアルコキシポリシロキサン(アルキルは炭素数1
〜5個、アルコキシは炭素数1〜4個)、フェニルポリ
シロキサン、フロロアルキルポリシロキサン(アルキル
は炭素数1〜5個)等のシリコンオイル;グラファイト
等の導電性微粉末;二硫化モリブデン、二硫化タングス
テン等の無機粉末;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポ
リエチレン塩化ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエ
チレン等のプラスチック微粉末;α−オレフィン重合
物;常温で固体の飽和脂肪酸(炭素数10から22);
常温で液状の不飽和脂肪族炭化水素(n−オレフィン二
重結合が末端の炭素に結合した化合物、炭素数約2
0);炭素数12〜20個の一塩基性脂肪酸と炭素数3
〜12個の一価のアルコールから成る脂肪酸エステル
類、フルオロカーボン類等が使用できる。
【0052】上記の中でも飽和脂肪酸と脂肪酸エステル
が好ましく、両者を併用することがより好ましい。脂肪
酸エステルの原料となるアルコールとしてはエタノー
ル、ブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、2
−メチルブチルアルコール、2−ヘキシルデシルアルコ
ール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチ
レングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリ
コールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
ブチルエーテル、s−ブチルアルコール等のモノアルコ
ール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
ネオペンチルグリコール、グリセリン、ソルビタン誘導
体等の多価アルコールが挙げられる。同じく脂肪酸とし
ては酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、2−エチルヘキ
サン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パ
ルミチン酸、ベヘン酸、アラキン酸、オレイン酸、リノ
ール酸、リノレン酸、エライジン酸、パルミトレイン酸
等の脂肪族カルボン酸又はこれらの混合物等が挙げられ
る。
【0053】脂肪酸エステルとしての具体例は、ブチル
ステアレート、s−ブチルステアレート、イソプロピル
ステアレート、ブチルオレエート、アミルステアレー
ト、3−メチルブチルステアレート、2−エチルヘキシ
ルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、ブ
チルパルミテート、2−エチルヘキシルミリステート、
ブチルステアレートとブチルパルミテートの混合物、ブ
トキシエチルステアレート、2−ブトキシ−1−プロピ
ルステアレート、ジプロピレングリコールモノブチルエ
ーテルをステアリン酸でアシル化したもの、ジエチレン
グリコールジパルミテート、ヘキサメチレンジオールを
ミリスチン酸でエステル化してアシル化としたもの、グ
リセリンのオレエート等の種々のエステル化合物を挙げ
ることができる。
【0054】更に、磁気記録媒体を高湿度下で使用する
ときしばしば生ずる脂肪酸エステルの加水分解を軽減す
るために、原料の脂肪酸及びアルコールの分岐/直鎖、
シス/トランス等の異性構造、分岐位置を選択すること
がなされる。これらの潤滑剤は、結合剤100質量部に
対して0.2〜20質量部の範囲で添加される。
【0055】潤滑剤としては、更に以下の化合物を使用
することもできる。即ち、シリコンオイル、グラファイ
ト、二硫化モリブデン、窒化ほう素、弗化黒鉛、フッ素
アルコール、ポリオレフィン、ポリグリコール、アルキ
ル燐酸エステル、二硫化タングステン等である。
【0056】本発明の磁性層に用いられ得る研磨剤とし
ては、一般に使用される材料でαアルミナ、γアルミ
ナ、溶融アルミナ、コランダム、人造コランダム、炭化
珪素、酸化クロム(Cr23)、ダイヤモンド、人造ダ
イヤモンド、ザクロ石、αFe 23等が使用される。こ
れらの研磨剤はモース硬度が6以上である。具体的な例
としては住友化学社製、AKP−10、AKP−15、
AKP−20、AKP−30、AKP−50、AKP−
1520、AKP−1500、HIT−50、HIT6
0A、HIT60G、HIT70、HIT80、HIT
82、HIT−100、日本化学工業社製、G5、G
7、S−1、酸化クロムK、上村工業社製UB40B、
不二見研磨剤社製WA8000、WA10000、LA
NDS社製LS600F 0/−1/4、東名ダイヤ社
製 MD−200、MD−150、MD−100、MD
−70、IRM 0−1/4F、IRM 0−1/4F
F、GE社製 0−1/10、0−1/4、DuPon
t社製 マイポレックス 1/10QG、同 1/8Q
G、戸田工業社製TF100、TF140、TF180
等が挙げられる。平均粒子径が0.05〜1μmの大き
さのものが効果的であり、好ましくは0.05〜0.5
μmである。
【0057】これら研磨剤は、単体で使用するだけでな
く、2種類以上の研磨剤を併用することも好適で、微粒
子ダイヤモンドの場合は他の研磨剤と併用することで、
磁性体に対する添加量を0.1%程度に減らすことがで
きる。これら研磨剤の合計量は、磁性体100質量部に
対して1〜20質量部、望ましくは1〜15質量部の範
囲で添加される。1質量部より少ないと十分な耐久性が
得られない傾向にあり、20質量部より多すぎると表面
性、充填度が劣化する傾向にある。これら研磨剤は、あ
らかじめ結合剤で分散処理したのち磁性塗料中に添加し
てもよい。
【0058】本発明の磁気記録媒体の磁性層中には、前
記磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有す
ることもできる。支持体と磁性層の間に非磁性層を設け
た磁気記録媒体は、上層の飽和磁束密度を最大限に増加
させるためには、帯電防止剤はできるだけ上層への添加
を少なくし、上層以外の塗布層に添加するのが好まし
い。帯電防止剤としては特にカーボンブラックが、媒体
全体の表面電気抵抗を下げる点で好ましい。
【0059】本発明に使用できるカーボンブラックとし
ては、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブ
ラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック
等が挙げられる。比表面積(SBET)は、5〜500m2
/g、DBP吸油量は10〜1500ml/100g、
平均粒子径は5〜300nm、pHは2〜10、含水率
は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/m
l、であるのが好ましい。
【0060】本発明に用いられるカーボンブラックの具
体的な例としては、キャボット社製、BLACKPEA
RLS2000、1300、1000、900、80
0、700、VULCAN XC−72、旭カーボン社
製、#80、#60、#55、#50、#35、三菱化
学社製、#3030B、#3040B、#3050B、
#3230B、#3350B、#9180B、#270
0、#2650、#2600、#2400B、#230
0、#950B、#900、#1000、#95、#3
0、#40、#10B、MA230、MA220、MA
77、コロンビアンカーボン社製、CONDUCTEX
SC、RAVEN150、50、40、15、ライオ
ンアグゾ社製ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラ
ックECDJ−500、ケッチェンブラックECDJ−
600等が挙げられる。
【0061】尚、これらカーボンブラックを分散剤等で
表面処理したり、カーボンブラックを酸化処理したり、
樹脂でグラフト化して使用してもよいし、表面の一部を
グラファイト化したものを使用してもよい。また、カー
ボンブラックを、磁性塗料に添加する前に予め結合剤で
分散させてもよい。磁性層にカーボンブラックを使用す
る場合は、磁性粉末に対して、0.1〜30質量%で用
いるのが好ましい。更に、後記する通り、非磁性層にカ
ーボンブラックを使用する場合は、非磁性粉末(但し、
非磁性粉末にはカーボンブラックは含まれない)に対し
3〜20質量%含有させるのが好ましい。
【0062】一般的にカーボンブラックは帯電防止剤と
してだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向
上等の働きがあり、これらは用いるカーボンブラックに
より異なる。従ってカーボンブラックを使用する場合に
は、これらのカーボンブラックは、その種類、量、組合
せを変え、粉体サイズ、吸油量、電導度、pH等の先に
示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることは勿
論可能である。使用できるカーボンブラックは、例えば
「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参
考にすることができる。
【0063】磁気記録媒体として非磁性層を設ける場合
には、上記した通り非磁性層は、非磁性粉末と結合剤を
含有するのが好ましく、この非磁性粉末としては、例え
ば、金属酸化物、金属炭酸塩、金属窒化物、金属炭化物
等の無機化合物から選択することができる。無機化合物
としては例えばα化率90%以上のα−アルミナ、β−
アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ、ベーマイト、
炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、α−酸化鉄、
ゲータイト、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイ
ド、二酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜
鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、
炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙
げられ、それらから単独又は組合せて使用し得る。
【0064】特に好ましいのは、粒度分布の小ささ、機
能付与の手段が多いこと等から、二酸化チタン、酸化亜
鉛、α−酸化鉄、硫酸バリウムであり、更に好ましいの
はα−酸化鉄、ゲータイト、二酸化チタン、酸化亜鉛、
ベーマイトである。α−酸化鉄は、粒子サイズがそろっ
た磁性酸化鉄やメタル用原料を加熱脱水、アニ−ル処理
し空孔を少なくし、必要により表面処理をしたものが好
ましい。通常、二酸化チタンは光触媒性を持っているの
で、光があたるとラジカルが発生しバインダー、潤滑剤
と反応する懸念がある。このため、本発明し使用する二
酸化チタンは、Al、Fe等を1〜10%固溶させ光触
媒特性を低下させることが好ましい。更に表面をAl、
Si化合物で処理し、触媒作用を低下させることが好ま
しい。
【0065】これら非磁性粉末の粒子サイズは0.01
〜1μmが好ましいが、必要に応じて粒子サイズの異な
る非磁性粉末を組み合わせたり、単独の非磁性粉末でも
粒径分布を広くして同様の効果をもたせることもでき
る。特に、非磁性粉末が粒状金属酸化物である場合は、
平均粒子径が0.08μm以下であるのが好ましく、針
状金属酸化物である場合は、平均長軸長が0.3μm以
下であるのが好ましく、0.2μm以下が更に好まし
い。タップ密度は通常、0.3〜1.5g/ml、好ま
しくは0.4〜1.3g/mlである。非磁性粉末の含
水率は通常、0.1〜5質量%、好ましくは0.3〜2
質量%、更に好ましくは0.4〜1.5質量%である。
非磁性粉末のpHは通常、2〜11であるが、4〜9.
5の範囲であるのが特に好ましい。非磁性粉末のBET
法による比表面積(SBET)は、5〜150m2/gが好
ましく、より好ましくは10〜120m2/g、更に好
ましくは15〜100m2/gである。非磁性粉末の結
晶子サイズは40〜1000Åが好ましく、40〜80
0Åが更に好ましい。比重は通常、1.5〜7、好まし
くは3〜6である。形状は針状、球状、多面体状、板状
のいずれでも良い。非磁性粉末のSA(ステアリン酸)
吸着量は1〜20μmol/m2、好ましくは2〜15
μmol/m2、更に好ましくは3〜8μmol/m2
ある。ステアリン酸吸着量が多い非磁性粉末を使用する
場合は、表面に強く吸着する有機物で表面修飾してから
使用するのが好ましい。
【0066】これらの非磁性粉末は、使用する結合剤と
の相互作用を大きくし、分散性を向上させるために、表
面処理されるのが好ましい。表面処理は、Si、Al、
Mg、Si、Ti、Zr、Sn、Sb、Zn、Y等の元
素を含む無機化合物を用いて行ってもよいし、カップリ
ング剤を用いて行ってもよい。この表面処理によりその
表面に形成される酸化物として、特に分散性に好ましい
のはAl23、SiO 2、TiO2、ZrO2、MgO及
びこれらの含水酸化物であるが、更に好ましいのはAl
23、SiO2、ZrO2及びこれらの含水酸化物であ
る。これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で用
いることもできる。また、目的に応じて共沈させた表面
処理層を用いても良いし、先ずアルミナを形成した後に
その表層にシリカを形成する方法、又はその逆の方法を
採ることもできる。また、表面処理層は目的に応じて多
孔質層にしても構わないが、均質で密である方が一般に
は好ましい。これら非磁性粉末の形状は、特に制限され
るものではなく、例えば球状、サイコロ状、板状等が挙
げられる。
【0067】非磁性層に用いられる非磁性粉末の具体的
な例としては、昭和電工製ナノタイト、住友化学製HI
T−100、HIT−80、戸田工業製α−酸化鉄DP
N−250BX、DPN−245、DPN−270B
X、DPN−550RX、DBN−450BX、DBN
−650RX、DAN−850RX、石原産業製酸化チ
タンTTO−51B、TTO−55A、TTO−55
B、TTO−55C、TTO−55S、TTO−55
D、SN−100、チタン工業製酸化チタンSTT−4
D、STT−30D、STT−30、STT−65C、
テイカ製酸化チタンMT−100S、MT−100T、
MT−150W、MT−500B、MT−600B、M
T−100F、MT−500HD、堺化学製FINEX
−25、BF−1、BF−10、BF−20、ST−
M、同和鉱業製酸化鉄DEFIC−Y、DEFIC−
R、日本アエロジル製AS2BM、TiO2P25、宇
部興産製100A、500A、及びそれを焼成したもの
等が挙げられる。
【0068】また、非磁性層(下層)に使用され得る結
合剤、並びに、任意に使用可能な他の物質、例えば下層
の結合剤(種類と量)、潤滑剤・分散剤・添加剤の量、
種類、溶剤、分散方法に関しては上層にて説明したもの
を適用することができる。例えば、非磁性層にもカーボ
ンブラックを含有させることが可能であり、カ−ボンブ
ラックを混合させて公知の効果である表面電気抵抗Rs
を下げること、光透過率を小さくすること、所望のマイ
クロビッカース硬度を得ることができる。尚、本発明に
おいて、下層に使用するカーボンブラックは上記非磁性
粉末として含んでも良い。また、下層にカーボンブラッ
クを含ませることで潤滑剤貯蔵の効果をもたらすことも
可能である。下層のカーボンブラックは所望する効果に
よって、以下のような特性を最適化すべきであり、併用
することでより効果が得られることがある。
【0069】下層のカーボンブラックのSBETは通常、
50〜500m2/g、好ましくは70〜400m2
g、DBP吸油量は通常、20〜400ml/100
g、好ましくは30〜400ml/100gである。カ
−ボンブラックの平均粒子径は通常、5〜80nm、好
ましくは10〜50nm、更に好ましくは10〜40n
mである。カーボンブラックのpHは2〜10、含水率
は0.1〜10質量%、タップ密度は0.1〜1g/m
lであるのが好ましい。
【0070】また下層には有機質粉末を目的に応じて、
添加することもできる。例えば、アクリルスチレン系樹
脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン系樹脂粉
末、フタロシアニン系顔料が挙げられるが、ポリオレフ
ィン系樹脂粉末、ポリエステル系樹脂粉末、ポリアミド
系樹脂粉末、ポリイミド系樹脂粉末、ポリフッ化エチレ
ン樹脂も使用することができる。その製法は特開昭62
−18564号、特開昭60−255827号の各公報
に記されているようなものが使用できる。
【0071】本発明の磁気記録媒体として、支持体上に
2層以上の塗布層を形成させてなることは、高記録密度
の磁気記録媒体を製造する上で有効であり、その場合の
形成手段としては、逐次塗布方式(ウェット・オン・ド
ライ方式)及び同時塗布方式(ウェット・オン・ウェッ
ト方式)が挙げられる。中でも、後者が超薄層の磁性層
を作り出すことができるので特に優れている。その同時
塗布方式、即ちウェット・オン・ウェット方式の具体的
な方法としては、
【0072】(1) 磁性塗料で一般的に用いられるグ
ラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルー
ジョン塗布装置によりまず下層を塗布し、その層がまだ
湿潤状態にあるうちに、例えば、特公平1−46186
号公報、特開昭60−238179号公報及び特開平2
−265672号公報に開示されている、非磁性支持体
加圧型エクストルージョン塗布装置により上層を塗布す
る方法、
【0073】(2) 特開昭63−88080号公報、
特開平2−17971号公報及び特開平2−26567
2号公報に開示されているような塗布液通液スリットを
二つ内蔵した塗布ヘッドにより、下層の塗布液及び上層
の塗布液をほぼ同時に塗布する方法、
【0074】(3) 特開平2−174965号公報に
開示されているバックアップロール付きエクストルージ
ョン塗布装置により、上層及び下層をほぼ同時に塗布す
る方法、等が挙げられる。
【0075】ウェット・オン・ウェット方式で塗布する
場合、磁性層用塗布液と非磁性層用塗布液の流動特性は
できるだけ近い方が、塗布された磁性層と非磁性層の界
面の乱れがなく厚さが均一な厚み変動の少ない磁性層を
得ることができる。塗布液の流動特性は、塗布液中の粉
体と結合剤の組み合わせに強く依存するので、特に、非
磁性層に使用する非磁性粉末の選択に留意することが重
要である。
【0076】尚、本発明で使用される支持体には特に制
限はなく、通常使用されているものを用いることができ
る。支持体を形成する素材の例としては、ポリエチレン
テレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
カーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミ
ド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポ
リエーテルサルホン等の各種合成樹脂のフィルム、及び
アルミニウム箔、ステンレス箔等の金属箔を挙げること
ができる。
【0077】本磁気記録媒体の支持体の厚みは、通常、
3〜100μm、テープ状で使用する時は、望ましくは
2〜15μm、フレキシブルディスクとして使用する場
合は、20〜80μmが好ましく、支持体に設ける非磁
性層は通常、0.5〜5.0μm、好ましくは0.5〜
3μmである。
【0078】また、前記磁性層及び前記非磁性層以外の
他の層を、目的に応じて形成することができる。例え
ば、支持体と下層の非磁性層の間に密着性向上のための
下塗り層を設けてもよい。その場合の下塗り層の厚みは
通常、0.01〜2μm、好ましくは0.05〜0.5
μmである。また、支持体の磁性層側と反対側にバック
コート層を設けてもよい。その場合のバックコート層の
厚みは通常、0.1〜1.0μm、好ましくは0.2〜
1.0μmである。尚、これらの下塗り層、バックコー
ト層は公知のものが使用できる。円盤状磁気記録媒体の
場合、片面もしくは両面に上記層構成を設けることがで
きる。
【0079】本発明の目的を有効に達成するには、支持
体の表面粗さは、中心面平均表面粗さ(Ra)(カット
オフ値0.25mm)で0.03μm以下、好ましくは
0.02μm以下、更に好ましくは0.01μm以下で
ある。また、これらの支持体は単に前記中心面平均表面
粗さが小さいだけではなく、1μm以上の粗大突起がな
いことが好ましい。また表面の粗さ形状は必要に応じて
支持体に添加されるフィラーの大きさと量により自由に
コントロールされるものである。これらのフィラーの一
例としては、Ca、Si、Ti等の酸化物や炭酸塩の
他、アクリル系等の有機樹脂微粉末等が挙げられる。本
発明に用いられる支持体のウエブ走行方向のF−5値は
好ましくは5〜50Kg/mm2(49〜490MP
a)、ウエブ幅方向のF−5値は好ましくは3〜30K
g/mm2(29.4〜294MPa)であり、ウエブ
走行(長手)方向のF−5値がウエブ幅方向のF−5値
より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高く
する必要があるときはその限りでない。
【0080】また、支持体のウエブ走行方向及び幅方向
の100℃、30分での熱収縮率は、好ましくは3%以
下、更に好ましくは1.5%以下であり、80℃、30
分での熱収縮率は、好ましくは1%以下、更に好ましく
は0.5%以下である。破断強度は、両方向とも5〜1
00Kg/mm2(49〜980MPa)であり、弾性
率は、100〜2000Kg/mm2(0.98〜1
9.6GPa)であるのが好ましい。
【0081】本発明の磁気記録媒体は、通常、前記強磁
性金属粉末と結合剤樹脂、及び必要に応じて他の添加剤
と共に有機溶媒を用いて、下記に詳細する通りに混練分
散し、磁性層用の磁性塗料を作成し、それを支持体上に
塗布し、必要に応じて配向、乾燥して得られる。尚、非
磁性層も同様に作成、塗布され得る。
【0082】本発明で用いられる有機溶媒は任意の比率
でアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケ
トン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホ
ロン、テトラヒドロフラン、等のケトン類、メタノ−
ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、イソブチ
ルアルコ−ル、イソプロピルアルコール、メチルシクロ
ヘキサノール等のアルコ−ル類、酢酸メチル、酢酸ブチ
ル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、
酢酸グリコ−ル等のエステル類、グリコ−ルジメチルエ
ーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等
のグリコールエーテル系、ベンゼン、トルエン、キシレ
ン、クレゾール、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素
類、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化
炭素、クロロホルム、エチレンクロルヒドリン、ジクロ
ルベンゼン等の塩素化炭化水素類、N,N−ジメチルホ
ルムアミド、ヘキサン等が使用できる。これら有機溶媒
は必ずしも100%純粋ではなく、主成分以外に異性
体、未反応物、副反応物、分解物、酸化物、水分等の不
純分が含まれていてもよい。しかしながら、これらの不
純分は30%以下が好ましく、更に好ましくは10%以
下である。本発明で用いる有機溶媒は、必要ならば磁性
層と非磁性層とでその種類及び量を変えてもよい。例え
ば、非磁性層に揮発性の高い溶媒を用いて表面性を向上
させてもよいし、非磁性層に表面張力の高い溶媒(シク
ロヘキサノン、ジオキサン等)を用いて塗布の安定性を
上げてもよいし、磁性層に溶解性パラメータの高い溶媒
を用いて充填度を上げてもよいが、本発明はこれらの例
に限られたものではないことは勿論である。
【0083】本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造す
る工程は、少なくとも混練工程、分散工程、及びこれら
の工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。
個々の工程は、それぞれ2段階以上にわかれていてもよ
い。磁性塗料を製造するのに使用される磁性粉末、結合
剤、カ−ボンブラック、研磨剤、帯電防止剤、潤滑剤、
溶剤等の全ての原料は、いずれかの工程の最初又は途中
で添加してもよい。また、個々の原料を2つ以上の工程
で分割して添加してもよい。例えば、ポリウレタンを混
練工程、分散工程、分散後の粘度調整のための混合工程
で分割して投入してもよい。
【0084】非磁性塗料、磁性塗料磁性塗料の混練分散
に当たっては各種の混練機が使用される。例えば、二本
ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミ
ル、トロンミル、サンドグラインダー、ゼグバリ(Sz
egvari)、アトライター、高速インペラー分散
機、高速ストーンミル、高速衝撃ミル、ディスパー、ニ
ーダ、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機等
を用いることができる。
【0085】本発明の目的を達成するためには、これま
でに公知である製造技術を一部の工程として用いること
ができることは勿論であるが、混練工程では連続ニ−ダ
や加圧ニ−ダ等強い混練力を持つものを使用することが
好ましい。連続ニ−ダ又は加圧ニ−ダを用いる場合は、
磁性粉末と結合剤の全て又はその一部(ただし全結合剤
の30%以上が好ましい)及び磁性粉末100質量部に
対し15〜500質量部の範囲で混練処理される。これ
らの混練処理の詳細については特開平1−106338
号公報、特開昭64−79274号公報等に記載されて
いる。本発明では、特開昭62−212933号公報に
開示されるような、同時重層塗布方式を用いることによ
って、より効率的に生産することが出来る。
【0086】本発明の磁気記録媒体の磁性層中に含まれ
る残留溶媒は好ましくは100mg/m2以下、更に好
ましくは10mg/m2以下であり、磁性層に含まれる
残留溶媒が非磁性層に含まれる残留溶媒より少ないほう
が好ましい。
【0087】磁性層が有する空隙率は、磁性層がいずれ
の層として用いられる場合でも、好ましくは30容量%
以下、更に好ましくは10容量%以下である。非磁性層
の空隙率は、磁性層の空隙率より大きいほうが好ましい
が、非磁性層の空隙率が5容量%以上であれば小さくて
もよい。
【0088】本発明の磁気記録媒体は下層と最上層を有
するが、目的に応じ下層と最上層でこれらの物理特性を
変えることができるのは容易に推定されることである。
例えば、最上層の弾性率を高くし走行耐久性を向上させ
ると同時に下層の弾性率を磁性層より低くして磁気記録
媒体のヘッドへの当りを良くする等である。
【0089】このような方法により、支持体上に塗布さ
れた磁性層は必要により層中の強磁性金属粉末を配向さ
せる処理を施したのち、形成した磁性層を乾燥する。又
必要により表面平滑化加工を施したり、所望の形状に裁
断したりして、本発明の磁気記録媒体を製造する。以上
の最上層用の組成物及び下層用の組成物を溶剤と共に分
散して、得られた塗布液を非磁性支持体上に塗布し、配
向乾燥して、磁気記録媒体をえる。
【0090】磁性層の0.5%伸びでの弾性率は、ウエ
ブ塗布方向、幅方向とも望ましくは100〜2000k
g/mm2(0.98〜19.6GPa)、破断強度は
望ましくは1〜30kg/cm2(9.8〜294MP
a)であり、磁気記録媒体の弾性率は、ウエブ塗布方
向、幅方向とも望ましくは 100〜1500kg/m
2(0.98〜14.7GPa)、残留のびは望まし
くは0.5%以下、100℃以下のあらゆる温度での熱
収縮率は望ましくは1%以下、更に望ましくは0.5%
以下、もっとも望ましくは0.1%以下である。
【0091】本発明の磁気記録媒体は、ビデオ用途、オ
ーディオ用途等のテープであってもデータ記録用途のフ
ロッピー(登録商標)ディスクや磁気ディスクであって
もよいが、ドロップ・アウトの発生による信号の欠落が
致命的となるデジタル記録用途の媒体に対しては特に有
効である。更に、下層を非磁性層とし、下層上の磁性層
の厚さを0.25μm以下とすることにより、電磁変換
特性が高い、オーバーライト特性が優れた、高密度で大
容量の磁気記録媒体を得ることができる。
【0092】
【実施例】本発明の新規な特長を以下の実施例で具体的
に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0093】〔実施例1〕 (強磁性金属粉の製法)撹拌機つきの150リットルタ
ンクに1.7mol/lの炭酸アンモニウム35リット
ルと2.0mol/lのアンモニア水15リットルの混
合溶液を窒素でバブリングしつつ液温を20℃とし、別
のタンクで窒素をバブリングさせながら溶解した液温2
0℃の硫酸第一鉄、硫酸コバルト及び硫酸アルミニウム
を含有する水溶液(Fe2+濃度が1.35mol/l、
Co濃度が0.15mol/l、Al濃度が0.04m
ol/l)40リットルを添加し混合した。10分間撹
拌した後、懸濁液の温度を25℃とし第一鉄を主成分と
する沈殿物を生成させた。窒素をバブリングし、60分
沈殿を熟成した。窒素にかえて空気を導入し沈殿物を酸
化し、ゲータイト核晶を生成させた。懸濁液中のFe2+
濃度が0.70mol/lとなったとき、空気酸化を中
断し窒素に切り換え、懸濁液の温度を35℃に加熱し2
時間保持した後、窒素を空気に切り換え酸化反応を進め
Alを固溶させた紡錘状を呈したゲータイトを生成させ
た。得られた粒子を瀘過、水洗した。一部を乾燥し透過
型電子顕微鏡写真を撮影し、粒子サイズを求めたとこ
ろ、平均長軸長が85nm、平均針状比が7であった。
また窒素中で120℃で30分加熱脱水後に比表面積を
測定すると、145m2/gであった。
【0094】得られたゲータイトを水中で2%スラリー
とし撹拌しつつ、表1に示す硫酸コバルト水溶液(Co
換算10部:ゲータイト中の鉄とCoのモル数合計を1
00部とした時のモル数を部で表示)、塩化マグネシウ
ム水溶液(Mg換算0.5部:ゲータイト中の鉄とCo
のモル数合計を100部とした時のモル数を部で表示)
を添加し、アンモニア水で中和し、コバルト化合物とマ
グネシウム化合物を粒子表面に沈着させた。スラリーを
濾過水洗後再度2%水スラリーとし、硫酸アルミニウム
水溶液(Al換算8.0部:ゲータイト中の鉄とCoの
モル数合計を100部とした時のモル数を部で表示)と
硫酸第2鉄水溶液(Fe3+換算4.0部:ゲータイト中
の鉄とCoのモル数合計を100部とした時のモル数を
部で表示)を添加した。20分撹拌した後、希釈したア
ンモニア水を添加し、スラリーを中和した。瀘過水洗し
た後、2%スラリーとし硝酸イットリウム水溶液(Y換
算6.0部:ゲータイト中の鉄とCoのモル数合計を1
00部とした時のモル数を部で表示)を添加し、アンモ
ニア水でpHを8.5とした。濾過水洗し5%水スラリ
ーとし、150℃で1時間加熱した。その後、濾過水洗
し得られたケーキを成形機を通し、次いで乾燥し焼結防
止処理した紡錘形を呈したゲータイトを得た。
【0095】得られた紡錘型ゲータイトを静置式焼成炉
にいれ、窒素中で350℃で30分加熱し脱水処理し、
次に温度700℃で2時間加熱して、ヘマタイトの結晶
性を高めた。温度を400℃とし、ガスを窒素から水
素:窒素=20:80のガスに切り換えて、0.5時間
還元した。窒素に置換した後、純水素に切り換え更に5
時間還元した。水素を流しつつ冷却し、300℃で窒素
に切り換え室温まで冷却した。徐酸化装置に移し、5℃
に冷却した窒素を流し、強磁性金属粉を5℃に冷却し
た。空気と窒素の混合比率をかえ、酸素濃度を0.1
%、ガスの露点を−45℃とし、強磁性金属粉の温度を
モニターしつつ、25〜30℃で2時間徐酸化し、発熱
がおさまると酸素濃度を0.5%とし10時間徐酸化し
た。この時徐酸化装置の温度を45℃に維持し、強磁性
金属粉の温度が40℃を越えないように徐酸化した。こ
のあと強磁性金属粉に対し水分が1%となるように、蒸
留水を気化させつつ空気と搬送し、調湿するとともに安
定化させて強磁性金属粉末を得た。最後の強磁性金属粉
末の特性を表1に示す。
【0096】〔実施例2〜5〕実施例1において、ゲー
サイトを生成させる際に使用した物質の添加量、並び
に、焼結防止処理に使用した物質の添加量を表1に記載
される通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、
強磁性金属粉末を調製した。尚、それぞれの物質の添加
量は、表1中においては、元素に換算した値として記載
した。
【0097】〔実施例6〕実施例3と同様に脱水、還元
処理した金属粉の徐酸化条件を次のように変更した。徐
酸化装置に移し、空気と窒素の混合比率を変え、酸素濃
度を0.1%、ガスの露点を−45℃とし、強磁性金属
粉の温度をモニターしつつ40℃以下で2時間徐酸化
し、発熱がおさまると酸素濃度を1%とし10時間徐酸
化した。この時徐酸化装置の温度を50℃に維持し、強
磁性金属粉の温度が50℃を越えないように徐酸化し
た。この後強磁性金属粉に対し水分が1%となるように
蒸留水を気化させつつ空気と搬送し、調湿するとともに
安定化させて強磁性金属粉末を得た。
【0098】〔実施例7〕 核晶作り 密閉可能な2リットルのガラス容器に、2mol/l
FeCl3水溶液500mlに5.94mol/l N
aOH水溶液500mlを撹拌しながら5分間で添加
し、添加終了後更に20分間撹拌し、容器を完全に密栓
した。予め100℃に加熱してあるオ−ブンに入れ、7
2時間保持した。72時間後、流水で急冷し、反応液を
分取して、遠心分離装置にて15000rpmで15分
間遠心分離し上澄みを捨てた。これに蒸留水を加えて再
分散させて、再度遠心分離し上澄みを捨てた。このよう
に遠心分離機を使用して、水洗を3回繰り返した。水洗
が終了したヘマタイト粒子(平均粒子径約80nm)の
沈殿物を乾燥させた。この乾燥粉末50gに5mlの蒸
留水を加えて、ライカイ機にて30分間粉砕した。50
0mlの蒸留水を使用しビーカーに洗いだし、100m
lに分け、これをスチールビーズ入りの200mlマヨ
ネーズビンに入れ、10時間分散させた。分散物を集
め、蒸留水でマヨネーズビンを洗浄し分散物を回収し
た。蒸留水を加えて全液量を1200mlとし、更に3
0分間超音波分散させた。この分散物を分取し、100
00rpmで30分間遠心分離して、超微粒子ヘマタイ
ト(平均粒子径:約70オングストローム)が分散して
いる上澄み液を取りだし、核晶液を得た。核晶液中の鉄
濃度は2000ppmであった。
【0099】単分散紡錘型ヘマタイトの結晶子サイズの
制御 撹拌機つき反応容器に1mol/lの硝酸第2鉄180
mlを入れ、冷却して、溶液の温度を5℃とする。撹拌
しつつ、2.4mol/lの水酸化ナトリウム溶液18
0mlを5分間かけて添加する。添加後更に5分間撹拌
を継続し、核晶溶液180mlを添加し10分間撹拌し
た。得られた液を60mlずつ採取し、形態制御イオン
として、0.048mol/lのNaH2PO4 10m
lを添加し、H2O 10mlを添加し密栓した。予め
120℃に加熱してあるオーブン中に72時間保持し
た。流水で急冷し、反応液を遠心分離装置にて1800
0rpmで15分間遠心分離し、上澄みを捨てた。これ
に蒸留水を加えて再分散させて、再度遠心分離し上澄み
を捨てた。このように遠心分離機を使用して、水洗を3
回繰り返した。次に1mol/lのアンモニア水を加
え、再分散させて、遠心分離し、上澄みを捨てた。これ
に蒸留水を加えて再分散させて、再度遠心分離し上澄み
を捨てた。このように遠心分離機を使用して、水洗を3
回繰り返した。生成物の一部を取り出し、乾燥した粒子
を透過型電子顕微鏡で観察したところ、平均長軸長が7
0nm、針状比(長軸/短軸)が5.0、長軸長の変動
係数(長軸長の標準偏差/平均長軸長)が7%と、極め
て粒度分布が優れたαFe23が得られた。
【0100】得られた単分散紡錘型ヘマタイトを、蒸留
水中にヘマタイト濃度が2%となるように分散させ、硫
酸コバルトをヘマタイト中のFeを100原子%とし、
Coが10原子%となるように添加し、充分撹拌混合し
た。この懸濁液を撹拌しつつ、pHをモニターしながら
懸濁液中にアンモニア水を添加し、pHを8.5とし
て、ヘマタイト表面にCo化合物を被着した。濾過、水
洗し、ヘマタイト濃度が2%となるように分散させ、撹
拌しつつ硫酸アルミニウムと硫酸第2鉄の水溶液(ヘマ
タイト中のFeを100原子%とし、Alが8.0原子
%、Fe3+が4.0原子%)を添加し、希釈したアンモ
ニア水を添加しpHを8.5とした。ヘマタイト中のF
eを100原子%としYが6原子%となるように撹拌し
つつ、この懸濁液中に硝酸イットリウム溶液を添加し、
アンモニア水を添加してpHを8.5とした。懸濁液を
濾過、蒸留水で洗浄し、不純物を除去した。得られた表
面処理紡錘型ヘマタイトを、直径3mmの成型板を通過
させ円柱状に成型し、乾燥させた。表面処理された単分
散紡錘型ヘマタイト500gを、静置式還元炉に入れ、
窒素中で350℃で30分加熱し、次いで650℃で3
時間アニール処理した。次に温度を350℃とし、ガス
を窒素から水素:窒素=20:80のガスに切り換え1
時間還元した。窒素に置換した後、温度を475℃と
し、純水素に切り換え5時間還元した。水素中で冷却し
300℃となった時、窒素に切り換え、室温まで冷却し
た。実施例1の除酸化条件と同様に、徐酸化した。この
後、強磁性金属粉に対し水分が1%となるように蒸留水
を気化させつつ空気と搬送し、調湿するとともに安定化
させて強磁性金属粉末を得た。
【0101】〔実施例8〕実施例7の硝酸イットリウム
にかえて、硝酸ネオジウム(ヘマタイト中のFeを10
0原子%としてNdとして5原子%)を使用し、同様の
条件で強磁性金属粉末を作成した。
【0102】〔実施例9〕実施例1で調製した、焼結防
止処理後の紡錘型ゲータイトを、静置式の還元炉に入
れ、窒素中で350℃で60分加熱し、脱水処理し、温
度を450℃とし、ガスを窒素から純水素に切り換え6
時間還元した。これ以降は、実施例1と同様の処理を行
った。
【0103】〔実施例10〕実施例2で調製した、焼結
防止処理後の紡錘型ゲータイトを、静置式の還元炉にい
れ、窒素中で350℃で60分加熱し、脱水処理し、温
度を450℃とし、ガスを窒素から純水素に切り換え6
時間還元した。これ以降は実施例6と同様の処理を行っ
た。
【0104】〔比較例1〕上記実施例1〜実施例10及
び比較例1で得られた強磁性金属粉末の磁気特性、強磁
性金属粉末の各種サイズ、比表面積、結晶子サイズ、強
磁性金属粉末の水溶性イオンの量、及び、強磁性金属粉
末の酸化物層中のMAl24及びMFe24の存在比
率、並びに、格子定数を下記の通り測定し、表1に合わ
せて記載した。
【0105】磁気特性:振動試料型磁力計(東英工業
製)で外部磁場10kOe(796kA/m)で測定し
た。 強磁性金属粉末の各種サイズ:得られた強磁性金属粉末
の高分解能透過型電子顕微鏡写真を撮影し、500個の
粒子より強磁性金属粉末の金属部分の平均長径と長径の
変動係数、平均短径及び平均針状比を求めた。 比表面積:窒素中250℃で30分加熱脱水し、カンタ
ーソーブ(カンタークロム社製)で比表面積を測定し
た。 結晶子サイズ:得られた強磁性金属粉末のX線回折法
(50kV−150mA:CuKβ線使用)により、α
−Feに相当する(110)面、(220))面よりシ
ェラーの式を使用して、それぞれ結晶子サイズを求め、
平均値をとり、強磁性金属粉末の結晶子サイズを求め
た。 水溶性イオン:強磁性金属粉末5gに蒸留水50mlを
添加し、25℃で1時間撹拌した抽出液を、イオンクロ
マトを使用して、カチオン(Na+、NH4+、K+、Mg
2+、Ca2+)、及び、アニオン(F-、Cl-、NO2-
Br-、NO3-、PO4 3-、SO4 2-)を測定した。MA
24及びMFe24の存在比率、並びに、格子定数:
X線回折リートベルグ法(例えば、「第5回X線分析講
習会−粉末X線リートベルト解析」、21頁(日本分析
化学会、X線分析懇談会)に示されているように、測定
されたX線パターンを元にして、X線回折装置に起因す
るパラメーターと結晶に関係するパラメーターを精密化
計算して、結晶系および結晶構造解析を行うものであ
る。メタル磁性体結晶の解析にはリガク製X線回折装置
RINT2500Hに付属させた「リートベルト解析」
ソフトを用いた。結晶系をINTERNATIONAL TABLES FOR C
RYSTALLOGRAPHY Volume AのNo.227のフェライト結晶
の2相とし、それぞれの結晶相について、その量的比お
よび格子定数、元素あるいはイオン位置サイトでの成分
比、各ピークの半値幅等のパラメーターを求めた。)
【0106】
【表1】
【0107】〔実施例21〜26、比較例21〕 磁気記録媒体の製法 実施例3、4、5、6、7、8、9、10、及び、比較
例1で得られた強磁性金属粉末を使用した、重層構成の
磁気テープを作成するために、以下の磁性層の組成物と
下層用非磁性層の組成物を作成した。
【0108】 (磁性層の組性物) 強磁性金属粉末 100部 結合剤 塩化ビニル共重合体 13部 (−SO3Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、 −SO3Na基を1×10-4eq/g含有) α−アルミナ(平均粒子径0.13μm) 4部 カーボンブラック(平均粒子径 50nm) 1部 フェニルフォスフォン酸 3部 ブチルステアレート 3部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 360部
【0109】 (下層用非磁性層の組成物) 針状ヘマタイト 80部 (BET法による比表面積:62m2/g、 平均長軸長:0.08μm、針状比:7、 pH:8.7、表面にAl23として1質量%存在) カーボンブラック 20部 (平均一次粒子径:17nm、 DBP吸油量:80ml/100g、 BET法による表面積:240m2/g、pH:7.5) 結合剤 塩化ビニル共重合体 12部 (−SO3Na基を1×10-4eq/g含有、重合度 300) ポリエステルポリウレタン樹脂 5部 (ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI =0.9/2.6/1、 −SO3Na基を1×10-4eq/g含有) フェニルフォスフォン酸 3部 ブチルステアレート 3部 ステアリン酸 3部 メチルエチルケトンとシクロヘキサノン1:1混合溶剤 280部
【0110】上記の磁性塗料及び非磁性塗料のそれぞれ
について、顔料、ポリ塩化ビニル、フェニルフォスフォ
ン酸と処方量の50質量%の各溶剤をニーダで混練した
後、ポリウレタン樹脂と残りの成分を加えてサンドグラ
インダーで分散させた。得られた分散液にイソシアネー
トを非磁性層の塗布液には15部、磁性層の塗布液には
14部を加え、更にそれぞれにシクロヘキサノン30部
を加え、1μm の平均孔径を有するフィルターを用い
て濾過し、非磁性層形成用及び磁性層形成用の塗布液を
それぞれ調製した。
【0111】得られた下層非磁性層用の塗布液を乾燥後
の厚さが1.5μmとなるように塗布し、更にその直後
下層非磁性層用塗布層がまだ湿潤状態にあるうちに、そ
の上に磁性層の乾燥後の厚みが 0.15μmとなるよ
うに、厚さ7μmのポリエチレンテレフタレート支持体
上に湿式同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあ
るうちに配向装置を通過させ長手配向した。この時の配
向磁石は希土類磁石(表面磁束5000mT)を通過さ
せた後ソレノイド磁石(磁束密度500mT)中を通過
させ、ソレノイド内で配向が戻らない程度まで乾燥し、
更に磁性層を乾燥し巻き取った。その後、金属ロールよ
り構成される7段カレンダーでロール温度を90℃にし
てカレンダー処理を施して、ウェッブ状の磁気記録媒体
を得、それを8mm幅にスリットして8mmビデオテー
プのサンプルを作成した。得られたサンプルの磁気特性
(ただし、レマネンス曲線よりSFDr)、熱ゆらぎ磁
界(Hf)、磁性層厚み、表面粗さ(Ra)、電磁変換
特性を以下の通りに測定し、その結果を表2に示した。
【0112】磁気特性:振動試料型磁力計(東英工業
製)を使用し、外部磁場796kA/mで配向方向に平
行に測定した。東英工業製の振動試料型磁力計に磁気記
録媒体の測定サンプルの配向方向が磁場と同一方向にな
るようにセットし、−796kA/m印加しDC飽和さ
せた後に、磁場をゼロに戻し残留磁化(−Mrmax)
を測定する。逆方向に7.96kA/mの磁場を印加し
たのち磁場をゼロに戻し残留磁化Mrを測定し、7.9
6kA/mずつ印加磁界を変化させ、残留磁化を繰り返
し測定し、レマネンス曲線を測定した。レマネンス曲線
が磁化ゼロとなる磁界を、Hrとして求め、ピークの半
値幅/ピーク磁界よりSFDrを求めた。尚、SFDは
switching-field distributionを指す。(式中、kはボ
ルツマン定数、Tは絶対温度、Msは体積あたりの飽和
磁化を表わす。)
【0113】熱ゆらぎ磁界(Hf):上記磁気特性にお
けると同様、DC飽和磁化した後,テープHcと同じ磁
界を逆方向に印可し、磁化の減衰を10000秒測定
し、lnt(tは時間;秒)に対する10〜1000秒間
の磁化減衰の勾配(S)を求める。その後、上記磁気特
性で求めたレマネンス曲線より、非可逆帯磁率χirr
e(Hc付近の磁界強度の数値を使用)を求め、下記式
よりより熱揺らぎ磁界(Hf)を算出した。Hfは小さ
いと、熱揺らぎに対し安定なので好ましい。 Hf=S/χirre 尚、Hf値より活性化体積Vaが次式で算出できる。 Va=kT/(Ms*Hf)
【0114】磁性層の平均厚みの測定は、磁気記録媒体
の長手方向に渡ってダイアモンドカッターで約0.1μ
mの厚みに切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率3万倍で
観察し、その写真撮影を行った。写真のプリントサイズ
はA4版である。その後、磁性層、非磁性層の強磁性粉
末や非磁性粉末の形状差に着目して界面を目視判断して
黒く縁どり、かつ磁性層表面も同様に黒く縁どりした
後、画像解析装置(カールツァイス社製:KS400
0)にて縁どりした線の間隔を測定した。試料写真の長
さが21cmの範囲にわたり、測定点を点取って測定し
た。その際の測定値の単純加算平均を倍率で除して磁性
層の厚みとした。
【0115】表面粗さ(Ra):WYKO社(米国アリ
ゾナ州)製の光干渉3次元粗さ計「TOPO−3D」を
用いて、250μm角の試料面積を測定した。測定値の
算出に当たっては、傾斜補正、球面補正、円筒補正等の
補正をJIS−B601に従って実施し、得られた中心
面平均粗さRAIを表面粗さ(Ra)の値とした。
【0116】電磁変換特性:データー記録用8ミリデッ
キにMIGヘッド(ヘッドギャップ0.2μm、トラッ
ク幅17μm、飽和磁束密度1.5T、アジマス角20
°)と再生用MRヘッド(SALバイアス、MR素子は
Fe−Ni、トラック幅6μm、ギャップ長0.2μ
m、アジマス角20°)を搭載した。MIGヘッドを用
いて、テープとヘッドの相対速度を10.2m/秒と
し、1/2Tb(λ=0.5μm)の入出力特性から最
適記録電流を決め、この電流で信号を記録し、MRヘッ
ドで再生した。C/Nは再生キャリアのピークから消磁
ノイズまでとし、スペクトラムアナライザーの分解能バ
ンド幅は100kHzとした。比較例1を使用したテー
プに対する特性で比較した。また、得られたテープにつ
き摩擦係数を測定しこれを初期摩擦係数とし、60℃9
0%RHで7日間保存したテープの1パス目の摩擦係数
を測定し、これを経時変化摩擦係数として、表2に合わ
せて示した。尚、両摩擦係数は、得られたテープとステ
ンレスポールを50gの張力(T1)で巻きつけ角18
0度で接触させて、テープを3.3cm/sの速度で走
行させるのに必要な張力(T2)を測定し、これらの測
定値を使用し、次式から求めた。 摩擦係数(μ)=1/π・ln(T2/T1)
【0117】
【表2】
【0118】上記表2から、本発明による強磁性金属粉
を使用した磁気記録媒体は、出力が高くかつノイズが低
いことを反映してC/Nが良好であることが判る。ま
た、本発明による強磁性金属粉の熱揺らぎ磁界(Hf)
は、粒径の影響を受けて、粒径105nmの粒子より大
きな数値のものも存在するが、そのレベルであっても実
用的に磁化の減少が問題となるものではなく、微粒子化
した効果である高C/Nテープを作成することができ
る。
【0119】
【発明の効果】本発明の強磁性金属粉末は、特定の構造
及び特性を有するため、平均粒子サイズ長が30〜65
nmであっても、熱揺らぎ磁界が平均粒子長100nm
クラスの強磁性金属粉末と同程度を実現することができ
る。また、本発明による強磁性金属粉末を使用した磁気
記録媒体は、磁性体が微粒子であることを反映し高いC
/Nを示すものであり、保存性等の実用特性に優れ、且
つ短波長出力とC/Nが良好で、熱揺らぎ特性が劣化し
ない非常に優れたものである。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鉄を主成分とし、金属部分とその周りに
    存在する酸化物層とからなる強磁性金属粉末であって、
    該強磁性金属粉末は、平均長径が30〜65nmであ
    り、その変動係数が3〜25%であり、強磁性金属粉末
    の平均針状比が4.0〜8.0であり、かつ、強磁性金
    属粉末の結晶子サイズと金属部分の平均短径の比が1〜
    4であり、該強磁性金属粉末の抗磁力が135〜240
    kA/mであり、飽和磁化(σs)が90〜155A・
    2/kgであることを特徴とする強磁性金属粉末。
  2. 【請求項2】 該酸化物層にMAl24(Mは遷移金属)
    を含むことを特徴とする、請求項1に記載の強磁性金属
    粉末。
  3. 【請求項3】 強磁性金属粉末が、Coを含有し、Co
    含有量が強磁性金属粉末に含有される鉄に対して、5〜
    45モル%であることを特徴とする、請求項1又は2に
    強磁性金属粉末。
  4. 【請求項4】 強磁性金属粉末が、焼結防止効果を有す
    る、Al化合物と希土類元素成分(希土類としてYを含
    める)化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜
    3のいずれか一項に記載の強磁性金属粉末。
  5. 【請求項5】 強磁性金属粉末全体中に存在する水溶性
    アニオンの総和が、質量基準で0〜50ppm/gであ
    り、水溶性カチオンの総和が、質量基準で0〜100p
    pm/gであることを特徴とする、請求項1〜4のいず
    れか一項に記載の強磁性金属粉末。
  6. 【請求項6】 支持体上に、少なくとも1層以上の磁性
    層が設けられた磁気記録媒体において、該磁性層が請求
    項1〜5のいずれか一項に記載の強磁性金属粉末を含有
    することを特徴とする磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 磁性層の残留磁束密度×磁性層厚みが1
    0〜100mT・μmであり、磁性層厚みが0.5μm
    以下であり、かつ磁性層の表面粗さが、光干渉表面粗さ
    計による中心面平均表面粗さで1.0〜3.0nmであ
    ることを特徴とする、請求項6に記載の磁気記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7041398B2 (en) * 2004-03-25 2006-05-09 Fuji Photo Film Co., Ltd. Magnetic recording medium and magnetic recording and reproducing method using the same

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