JP2002088173A - 乳酸系ポリマーフィルム - Google Patents

乳酸系ポリマーフィルム

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JP2002088173A
JP2002088173A JP2000283425A JP2000283425A JP2002088173A JP 2002088173 A JP2002088173 A JP 2002088173A JP 2000283425 A JP2000283425 A JP 2000283425A JP 2000283425 A JP2000283425 A JP 2000283425A JP 2002088173 A JP2002088173 A JP 2002088173A
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lactic acid
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acid
film
polymer film
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Akio Toyoda
明男 豊田
Masao Kamikura
正雄 上倉
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Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 一般包装分野、特に柔軟性を必要
とする包装用フィルムあるいはシュリンク用フィルムに
おいて、フィルム巻き取り、あるいは製袋機等での製
袋、更にはフィルム一般を取り扱う作業に要求される優
れた滑性を有し、かつ包装袋等への加工後も優れた透明
性等の外観を有する生分解性のある乳酸系ポリマーフィ
ルムを提供すること。 【解決手段】 ジカルボン酸成分(a)とジオー
ル成分(b)とを脱水縮合したポリエステル構造単位
(A)、及び/又はジカルボン酸成分(a)とポリエー
テルポリオール成分(c)を脱水縮合したポリエーテル
構造単位(B)、これら構造単位と乳酸構造単位(C)
からなる乳酸系ポリマー(I)に脂肪酸アマイド(I
I)を0.1〜3重量部含有させ溶融混練りして得られ
る乳酸系ポリマー組成物からなる乳酸系ポリマーフィル
ムが動摩擦係数が0.3以下の優れた滑性を有し、ヘイ
ズ値3%以下の良好な透明性を呈する乳酸系ポリマーフ
ィルムを提供できることを見いだし本発明を完成した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、野菜包装、菓子等
の小包装またはひねり包装、日用品の包装、電気部品、
雑貨等の内容物の保護、集約を目的とした一般に使用さ
れる包装フィルム、更には梱包を目的としたシュリンク
包装あるいはシュリンクラベルに関し、フィルムの巻き
取り、あるいは包装機械による自動包装と包装に係る作
業が円滑に行える動摩擦係数が0.3以下の良好な滑性
を有し、溶断シール性等のシール性があり、また良好な
透明性と外観を有する、更には改質剤のブリードによる
フィルムあるいは包装機械等への汚れの付着がない生分
解性乳酸系ポリマーからなる乳酸系ポリマーフィルムに
関する。
【0002】
【従来の技術】従来、各種の食品、飲料、薬品、雑貨用
等の液状物、粉粒物、固形物の包装または収納材とし
て、紙や、合成樹脂を加工したフィルムあるいはアルミ
箔等が用いられている。特に合成樹脂よりなるフィルム
は耐水性、透明性、強度、軽量、低コスト性等々に優れ
た特徴を持っているため、包装、収納または集約を目的
とした袋として多くの用途に使用されている。
【0003】フィルムは通常、一定幅で、一定の長さに
連続的に巻き取られ、ロール状に巻いた状態で取り扱わ
れることが多い。加工時等にロールからフィルムを繰り
出したり、またそれを巻き取る時にフィルムに皺が発生
したり、フィルム間の剥離が悪く容易にフィルムが繰り
出せないと、目的の加工が安定して行えないばかりか、
フィルムの折り曲がり跡を多数残す等の不都合を生じ
る。更にはロール状に巻き取られた合成樹脂フィルムは
製袋機により連続的に袋に加工される事が多いが、該機
械は高速で運転されるため、フィルムが機器内で詰まら
ないようにフィルムには一定以上の滑り性能いわゆる滑
性が要求される。
【0004】滑性の評価方法としてASTM−D189
4がある。一般に該方法によるフィルム間の測定では動
摩擦係数が0.3以下であればフィルムの滑性は良好と
考えられる。合成樹脂フィルムあるいは該フィルムを加
工した袋は多数枚重ね合わせたり、該積層物を切断した
り、袋に被包装物を収納したりする作業が行われる。該
作業においてもフィルムあるいは袋に滑性がなければ作
業は滞ってしまう。
【0005】一方、近年、合成樹脂はフィルム用途等に
膨大な量が使用されているが、その廃棄物は埋立地不
足、景観阻害、海洋生物への脅威及び環境汚染等の地球
的環境問題を引き起こしている。従来、一般に使用され
ている汎用樹脂と言われる合成樹脂は、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ
エチレンテレフタレート等であり、これら樹脂の処分方
法として焼却、埋立が行われている。
【0006】しかし、これらの処分方法には問題があ
り、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の
樹脂を焼却する場合は、それら樹脂の燃焼カロリーが高
いため、炉を痛め易く、炉の寿命を短くする。一方、ポ
リ塩化ビニルにおいては、燃焼カロリーは低いが焼却時
に有害なガスを発生することが知られている。埋立にお
いても、これらの汎用樹脂は、化学的安定性が高いた
め、分解せず原形をとどめたまま半永久的に残ることが
知られており、埋立地不足が深刻化する原因の一つにな
っている。
【0007】また、無造作に自然環境中に廃棄された場
合、その安定性のために美観を損ねたり、海洋生物、鳥
類等が誤って補食し、貴重な生物資源が減少するなど環
境破壊の一因となっている。
【0008】これらの問題を解決するため、最近、生分
解性ポリマーの研究が盛んに行われている。生分解性ポ
リマーで注目されている樹脂の1つに、乳酸系ポリマー
と称するポリ乳酸及びそのコポリマーがある。これら乳
酸系ポリマーは、一般プラスチックと異なり容易に完全
分解し、最終的には水と二酸化炭素になる。
【0009】また燃焼カロリーが低いため、焼却した場
合も炉を痛めることがなく、さらに燃焼時に有害なガス
を発生しない特徴を有する。出発原料に再生容易な植物
資源を利用出来るため、枯渇する石油資源から脱却でき
る。これらの利点から、汎用樹脂の代替として期待され
ている。
【0010】乳酸を主成分とする乳酸系ポリマーは一般
的に硬い物理特性を有している。この為、フィルム用途
等の柔軟性が必要な分野には種種の柔軟性を有すると考
えられる組成が選択されて、ポリ乳酸とのブレンド、あ
るいはポリ乳酸もしくは乳酸との共重合により乳酸系ポ
リマーに柔軟性を付与することが試みられている。
【0011】しかしながらほとんどの場合、改質剤のブ
リードアウトあるいはブリーミングと呼ばれる現象によ
り成形物の外観を著しく損ねてしまう。またはポリ乳酸
の特長である透明性を失うことになる。特に物性の向上
あるいは、耐熱温度の向上を図る為に延伸を伴う処理を
する場合、ブリードアウトが顕著に発生する。また、組
み合わせる改質剤の種類、量によっては成形物同士を接
着してしいまい、取り扱いを著しく困難にする。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、一般包装分野、特に柔軟性を必要とする包
装用フィルムあるいはシュリンク用フィルムにおいて、
フィルム巻き取り、あるいは製袋機等での製袋、更には
フィルム一般を取り扱う作業に要求される優れた滑性を
有し、かつ包装袋等への加工後も優れた透明性等の外観
を有する生分解性のある乳酸系ポリマーフィルムを提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果、ジカルボン酸成
分(a)とジオール成分(b)とを脱水縮合したポリエ
ステル構造単位(A)、及び/又はジカルボン酸成分
(a)とポリエーテルポリオール成分(c)を脱水縮合
したポリエーテル構造単位(B)、これら構造単位と乳
酸構造単位(C)からなる乳酸系ポリマー(I)に脂肪
酸アマイド(II)を0.1〜3重量部含有させ溶融混
練りして得られる乳酸系ポリマー組成物からなる乳酸系
ポリマーフィルムが動摩擦係数が0.3以下の優れた滑
性を有し、ヘイズ値3%以下の良好な透明性を呈する乳
酸系ポリマーフィルムを提供できることを見いだし本発
明を完成した。
【0014】即ち、本発明は、
【0015】(1) ジカルボン酸成分(a)とジオー
ル成分(b)とを脱水縮合したポリエステル構造単位
(A)、及び/又はジカルボン酸成分(a)とポリエー
テルポリオール成分(c)とを脱水縮合したポリエーテ
ル構造単位(B)と、乳酸構造単位(C)とからなる乳
酸系ポリマー(I)に脂肪酸アマイド(II)を0.1〜
3重量部含有させ溶融混練りして得られる乳酸系ポリマ
ー組成物からなる乳酸系ポリマーフィルムであり、該フ
ィルム間の動摩擦係数が0.3以下である乳酸系ポリマ
ーフィルム、
【0016】(2) 乳酸系ポリマー組成物を延伸して
なることを特徴とする(1)に記載の乳酸系ポリマーフ
ィルム、
【0017】(3) ジカルボン酸成分(a)が必須成
分として不飽和結合を有していてもよい炭素数20〜4
5の脂肪族ジカルボン酸(a1)及び/又は1,4−シ
クロヘキサンジカルボン酸を含むことを特徴とする
(1)又は(2)に記載の乳酸系ポリマーフィルム、
【0018】(4) 炭素数20〜45の脂肪族ジカル
ボン酸(a1)がダイマー酸であることを特徴とする
(1)〜(3)のいずれか一つに記載の乳酸系ポリマー
フィルム、
【0019】(5) ジオール成分(b)が必須成分と
して不飽和結合を有していてもよい炭素数20〜45の
脂肪族ジオール(b1)を含むことを特徴とする(1)
〜(4)のいずれか一つに記載の乳酸系ポリマーフィル
ム、
【0020】(6) 不飽和結合を有していてもよい炭
素数20〜45の脂肪族ジオール(b1)がダイマージ
オールであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれ
か一つに記載の乳酸系ポリマーフィルム、
【0021】(7) 乳酸系ポリマー(I)が、ポリエ
ステル構造単位(A)及び/又はポリエーテル構造単位
(B)3〜60重量%と、乳酸構造単位(C)40〜9
7重量%とからなる乳酸系ポリマー(I)であることを
特徴とする(1)〜(6)のいずれか一つに記載の乳酸
系ポリマーフィルム、
【0022】(8) 脂肪酸アマイド(II)が、炭素
数15〜40の脂肪酸アマイドであることを特徴とする
(1)〜(7)のいずれか1つに記載の乳酸系ポリマー
フィルム、
【0023】(9) 延伸が、面倍率で1.4〜16倍
であることを特徴とする請求項2〜8のいずれか一つに
記載の乳酸系ポリマーフィルム、
【0024】(10) 乳酸系ポリマーフィルムがヘイ
ズ値3%以下であることを特徴とする(1)〜(9)の
いずれか一つに記載の乳酸系ポリマーフィルム、
【0025】(11) 溶断シールが可能である、
(1)〜(10)のいずれか一つに記載の乳酸系ポリマ
ーフィルム、を提供するものである。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の乳酸系ポリマーフィルム
は、ジカルボン酸成分(a)とジオール成分(b)とを
脱水縮合したポリエステル構造単位(A)、及び/又は
ジカルボン酸成分(a)とポリエーテルポリオール成分
(c)とを脱水縮合したポリエーテル構造単位(B)
と、乳酸構造単位(C)とからなる乳酸系ポリマー
(I)に脂肪酸アマイド(II)を0.1〜3重量部含有
させ溶融混練りして得られる乳酸系ポリマー組成物から
なる乳酸系ポリマーフィルムであり、該フィルム間の動
摩擦係数が0.3以下のフィルムである。
【0027】まずはじめに、乳酸系ポリマーフィルムを
構成する乳酸系ポリマー組成物について説明し、次に該
組成物から得られる乳酸系ポリマーフィルムについて説
明する。
【0028】本発明の乳酸系ポリマー組成物は、ジカル
ボン酸(a)とジオール(b)とを脱水縮合したポリエ
ステル構造単位(A)、及び/又はジカルボン酸(a)
とポリエーテルポリオール(c)を脱水縮合したポリエ
ーテル構造単位(B)と、乳酸成分(C)とからなる乳
酸系ポリマー(I)に脂肪酸アマイド(II)を0.1〜
3重量部含有させ溶融混練りして得られるものである。
【0029】ここで、乳酸系ポリマー組成物を構成する
乳酸系ポリマー(I)について説明する。乳酸系ポリマ
ー(I)は、ジカルボン酸成分(a)とジオール成分
(b)とを脱水縮合したポリエステル構造単位(A)、
及び/又はジカルボン酸成分(a)とポリエーテルポリ
オール成分(c)とを脱水縮合したポリエーテル構造単
位(B)と、乳酸構造単位(C)とからなる乳酸系ポリ
マー又はその混合物である。
【0030】乳酸系ポリマー(I)の構成比は特に限定
されないが、一般的には重量比で、(A)及び/又は
(B):(C)=3:97〜60:40が好ましい。
(A)及び/又は(B)が(C)に対して3重量部以下
では乳酸系ポリマーからなる成形物の物性が改善を見な
い。即ち、フィルムに加工して使用する場合に十分な柔
軟性が得られない。また、60重量部を超えるとフィル
ム間の滑性が低くなる場合がある。
【0031】また、乳酸系ポリマー(I)の重量平均分
子量は特に限定されるものではないが、好ましくは1〜
50万である。
【0032】ここで、さらに乳酸系ポリマー(I)を構
成するポリエステル構造単位(A)、及びポリエーテル
構造単位(B)について説明する。
【0033】ポリエステル構造単位(A)は、ジカルボ
ン酸(a)とジオール(b)とを脱水縮合してえられる
構造単位である。また、ポリエーテル構造単位(B)
は、ジカルボン酸(a)とポリエーテルポリオール
(c)とを脱水縮合してえられる構造単位である。
【0034】これらポリエステル構造単位(A)を構成
するポリエステル(A1)、又は、ポリエーテル構造単
位(B)を構成するポリエーテル(B1)は、公知慣用
の方法により製造することができる。下記にその一例を
説明する。
【0035】ポリエステル(A1)は、ジカルボン酸成
分(a)とジオール成分(b)とをモル比で1.2〜
1.5:1で不活性ガス雰囲気下にて130〜220℃
まで1時間に5〜10℃の割合で徐々に昇温させながら
撹拌して水を留去する。6〜12時間反応後、0.1〜
10KPaで徐々に減圧度を上げながら、過剰のジオー
ル成分を留去する。2〜3時間減圧後、エステル交換触
媒及び必要に応じて酸化防止剤を添加して1KPa以下
で減圧しながら210〜230℃で4〜12時間反応す
ることによって、ポリエステル(A1)を得ることがで
きる。
【0036】同様に、ポリエーテル(B1)は、ジカル
ボン酸成分(a)とポリエーテルポリオール成分(c)
とをモル比で1.2〜1.5:1で不活性ガス雰囲気下
にて130〜220℃まで1時間に5〜10℃の割合で
徐々に昇温させながら撹拌して水を留去する。6〜12
時間反応後、0.1〜10KPaで徐々に減圧度を上げ
ながら、過剰のポリエーテルポリオール成分を留去す
る。2〜3時間減圧後、エステル交換触媒及び必要に応
じて酸化防止剤を添加して1KPa以下で減圧しながら
210〜230℃で4〜12時間反応することによっ
て、ポリエーテル(B1)を得ることができる。
【0037】但し、ここでジカルボン酸成分(a)とし
ては不飽和結合を有していても良い炭素数3〜45の脂
肪族ジカルボン酸(a1)、即ち、炭素数3〜45の脂
肪族不飽和ジカルボン酸、及び炭素数3〜45の脂肪族
飽和ジカルボン酸、及び炭素数20〜45のダイマー酸
が挙げられ、このうちダイマー酸が好ましく挙げられ
る。
【0038】脂肪族飽和ジカルボン酸として具体的には
メチレン鎖長が2〜12のもの、例えばアジピン酸、コ
ハク酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバ
シン酸、デカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0039】また、脂肪族不飽和ジカルボン酸としては
具体的には、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0040】本発明においては上述したジカルボン酸成
分を必要に応じて組み合わせて使用しても良いし、単独
で使用しても良い。更には炭素数が20以上、好ましく
は20〜45の脂肪族ジカルボン酸成分を組合わせて使
用すると成形物からのポリエステル及び/又はポリエー
テル成分の成形物の表面への移行を抑制でき、また優れ
た透明性を呈することができるので好適に用いることが
できる。
【0041】脂肪族ポリエステル及び/又はポリエーテ
ル構造単位とポリ乳酸は、相溶性が低いものが多く、こ
れらからなる乳酸系ポリマーはカップ、トレー等の軽量
容器の成形又は延伸フィルムの成形のように延伸を伴う
加工を施したり、長期間、高温多湿の条件下で、該乳酸
系ポリマーからなる成形物を保存すると、脂肪族ポリエ
ステル及び/又はポリエーテル成分や環状オリゴマー又
はポリエステル及び/又はポリエーテル成分を多く含ん
だコポリマーが成形物の表面に移行し、成形物の外観を
損なうブリードアウトあるいはブルーミングと一般に呼
ばれている不良現象が発生する場合がある。このような
不良現象は、成形物の保存時や流通時のべとつき、ブロ
ッキング、不透明化などの問題を伴う。
【0042】上述した炭素数が20以上、好ましくは2
0〜45の脂肪族ジカルボン酸成分の代表例はダイマー
酸が挙げられ、本発明のジカルボン酸成分(a)として
は、炭素数20以上、好ましくは20〜45のダイマー
酸が特に好ましいものとして挙げられる。
【0043】ダイマー酸としては、炭素数12以上の不
飽和脂肪酸の熱2量化反応などによって生成する炭素数
24以上のジカルボン酸が挙げられる。該ダイマー酸は
出発原料としてオレイン酸やトール油脂肪酸のものが挙
げられる。
【0044】反応機構は様々なものが提案されている
が、加熱によるDiels−Alder環化反応が主な
機構であると考えられおり、分子内に脂環構造を含むも
のが多い。分子内に不飽和二重結合を持つものと水添に
よって飽和化された脂肪酸がある。本発明においては、
不飽和のダイマー酸、飽和のダイマー酸のいずれを用い
てもよい。
【0045】市販のダイマー酸は、モノマー酸やトリマ
ー酸を若干含むものが多く、そのようにモノマー酸やト
リマー酸を若干含んでいてもよい。用いるダイマー酸の
純度は90%〜100%、好ましくは95%〜100%
である。該ダイマー酸は毒性が低いため食品包装材料へ
の使用が認められている。入手容易なダイマー酸の具体
例は、コグニス社製の炭素数18の脂肪族不飽和カルボ
ン酸の2量体(製品名;エンポール1061、106
2)、更に同社製の炭素数18の脂肪族飽和カルボン酸
の2量体(製品名;エンポール1008)等が挙げられ
る。
【0046】またダイマー酸と同様に1,4−シクロヘ
キサンジカルボン酸は乳酸系ポリマーのブリードアウト
を抑制できることから、本発明のジカルボン酸成分
(a)として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸も好
ましいものとして挙げられる。1,4−シクロヘキサン
ジカルボン酸にはシス型、トランス型の異性体が存在す
るが、いずれも本発明に用いることができ、工業的には
価格の安い両異性体の混合物が好ましく用いられる。
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸はダイマー酸で代
表される炭素数20以上の脂肪族ジカルボン酸と特に量
比の制限無く使用することができる。
【0047】ジカルボン酸成分中の炭素数20以上の脂
肪族ジカルボン酸の構成比率は20〜100%が好まし
く、50〜100の範囲が更に好ましい。これは炭素数
20以上の脂肪族ジカルボン酸成分がジカルボン酸全体
の20%未満になると、ブリードアウト開始までの日数
が短くなり、即ち、耐ブリードアウト性が低下する為で
ある。
【0048】一方、ジオール成分(b)としては、主鎖
の炭素数が2〜12のもの、例えば、エチレングリコー
ル、1、3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオー
ル、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオ
ール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジ
オール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジ
オール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ド
デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノー
ル、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,
3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、ネオペ
ンチルグリコール、3,3−ジエチル−1,3−プロパ
ンジオール、3,3−ジブチル−1,3−プロパンジオ
ール、
【0049】1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタ
ンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,3−ペン
タンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,4−ペ
ンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−
ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5
−ヘキサンジオール、n−ブトキシエチレングリコール
などのジオール等が挙げられる。
【0050】ポリエステルポリオール成分(c)として
は、エーテル酸素を有するジエチレングリコール、ジプ
ロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエ
ーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポ
リプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポ
リテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0051】本発明のジオール成分(b)としては、炭
素数が20以上の脂肪族ジオールを使用すると成形物か
らのポリエステル及び/又はポリエーテル成分の成形物
の表面への移行を抑制できるため好ましい。例えば、ダ
イマージオールが好ましく挙げられる。安価に入手でき
るものとしては炭素数36のダイマージオールが具体的
に挙げられる。本発明に用いるダイマージオールは、ダ
イマー酸と同様、安全性の高いモノマー成分である。ダ
イマージオールとしては、さらに具体的には例えば東亞
合成化学社製等の炭素数18の脂肪族不飽和カルボン酸
の2量体の還元体などが用いることができる。
【0052】ジオール成分中の炭素数20以上の脂肪族
ジオールの構成比率は20〜100%が好ましく、50
〜100%の範囲が更に好ましい。これは炭素数20以
上の脂肪族ジオール成分がジオール全体の20%未満に
なると、ブリードアウト開始までの日数が短くなる為で
ある。
【0053】次に、本発明の乳酸系ポリマー(I)を構
成する乳酸構造単位(C)について説明する。乳酸構造
単位(C)を構成する乳酸成分(C1)としてはラクタ
イドが挙げられる。ラクタイドは、乳酸2分子が脱水縮
合で環状2量化した化合物で、立体異性体を有するモノ
マーで、L−乳酸2分子からなるL−ラクタイド、D−
乳酸2分子からなるD−ラクタイド、及びD−乳酸とL
−乳酸からなるmeso−ラクタイドがあげられる。
【0054】本発明の乳酸系ポリマーフィルムにおいて
良好な耐熱性を得る場合、結晶化が可能な融点120〜
300℃の乳酸系ポリマーを用いる事が好ましい。この
ためL体とD体の比(L/D)が100/0〜95/
5、若しくは0/100〜5/95が好ましい。
【0055】乳酸系ポリマー(I)の製造方法として
は、乳酸系コポリマーの場合は、ポリエステル(A1)
及び/又はポリエーテルポリオール(B1)と乳酸成分
(C1)とを、これらの合計重量に対して15〜30重
量部のトルエンと混合し、不活性ガス雰囲気下140〜
180℃で開環重合触媒、例えば、オクタン酸錫をこれ
らの合計重量に対して50〜2000ppm添加するこ
とにより得ることができる。また、この際、芳香族ポリ
エステル、カプロラクトン、酢酸ビニル、エチレンテレ
フタレート重合体、エチレンビニルアルコール等の一種
以上の副成分を加え重合を行ってもよい。
【0056】また、重合の際、どの段階でも良いが多価
カルボン酸及び/またはその酸化無水物、多価イソシア
ネート等の高分子量化剤を加えることにより、乳酸系ポ
リマー(I)を更に高分子量化することができる。多価
カルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、
酸化無水物としては無水コハク酸、無水トリメリット
酸、無水ピロメリット酸等であり、多価イソシアネート
としては2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−
トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシ
アネートの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレン
ジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイ
ソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−
トリイソシアネート等がある。添加量としては乳酸系ポ
リマーに対し0.01〜5重量%程度加えればよく、通
常30万程度までしか上がらない重量平均分子量を60
〜70万程度に上げることができる。
【0057】また、乳酸系ポリマー(I)の製造に用い
る重合触媒が乳酸系ポリマー(I)に残存すると熱安定
性が悪く、フィルムやその原料の組成物の製造において
加熱、成形加工の際に乳酸系ポリマー(I)中の乳酸構
造単位がラクタイドの形で再生され、製造したフィルム
の強度、貯蔵安定性が低下する。
【0058】このため乳酸系ポリマー(I)に触媒失活
剤を添加したり、重合触媒を除去することにより、これ
らの点が著しく改善される。即ち、乳酸系ポリマー
(I)の重合時及び/または重合終了後に、失活剤とし
て、キレート剤、及び酸性リン酸エステル類を添加する
ことにより、ポリマーの熱安定性、貯蔵安定性を向上さ
せることが出来る。キレート剤はポリマー鎖の切断を最
小に抑えることができ、また、有機系キレート剤と無機
系キレート剤を混合して使用しても差し支えない。
【0059】酸性リン酸エステル類による安定性向上の
機構としては、ポリヒドロキシカルボン酸と、ジカルボ
ン酸成分とジオール成分からなるポリエステル及び高分
子量化剤から構成される組成物中に含まれている触媒中
の金属イオンと錯体を形成し、その活性を消失させ、そ
の組成物の熱安定性、貯蔵安定性を大幅に改善させるも
のである。
【0060】使用されるキレート剤としては、有機系キ
レート剤と無機系キレート剤がある。有機系キレート剤
としては、特に、限定されないが、アミノ酸、フェノー
ル類、ヒドロキシカルボン酸、ジケトン類、アミン類、
オキシム、フェナントロリン類、ピリジン化合物、ジチ
オ化合物、配位原子としてN含有フェノール、配位原子
としてN含有カルボン酸、ジアゾ化合物、チオール類、
ポルフィリン類などが挙げられる。
【0061】それらは、ヒドロキシカルボン酸系ポリエ
ステル組成物中に含有される触媒の金属イオンと錯体を
形成して触媒活性を失わせるものである。無機系キレー
ト剤は、吸湿性が高く、吸湿すると効果がなくなるため
取り扱いに注意が必要である。具体的には、リン酸、亜
リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸などのリン酸類を挙げ
ることができる。
【0062】キレート剤の有機系キレート剤あるいは無
機系キレート剤の添加量は、その種類、ポリヒドロキシ
カルボン酸や、ジカルボン酸成分及びジオール成分から
なるポリエステル中に含まれる触媒の種類、量によって
異なるが、ポリヒドロキシカルボン酸と、ジカルボン酸
成分及びジオール成分からなるポリエステルの合計量に
対して0.001重量部〜5重量部、あるいは、使用触
媒1重量部に対して0.1〜100重量部を添加するこ
とが好ましい。
【0063】酸性リン酸エステル類としては、酸性リン
酸エステル、ホスホン酸エステル、アルキルホスホン酸
等及びその混合物を指すもので、その一般式を下記に示
す。
【0064】
【化1】
【0065】(式中、R1はアルキル基またはアルコキ
シル基、R2はアルキル基またはアルコキシル基または
ヒドロキシル基を表す。)
【0066】酸性リン酸エステル類では、とりわけ酸性
リン酸エステルが触媒失活に大きな効果を示す。酸性リ
ン酸エステル類の添加量は、その種類、使用触媒の種
類、混練条件によって異なるが、ポリエステル(A1)
及び/又はポリエーテル(B1)並びに乳酸成分(C
1)との合計量に対して、0.001重量部〜5重量
部、あるいは、使用触媒1重量部に対して、0.1〜1
00重量部を添加することが好ましい。
【0067】本発明に用いる乳酸系ポリマー(I)は、
重合触媒の失活剤により重合触媒を失活させた乳酸系ポ
リマー、及び/又は、脱揮及び/又は再沈することによ
り残留モノマーを低減させた乳酸系ポリマーであること
が好ましい。
【0068】即ち、乳酸系ポリマーの重合後に重合触媒
を失活剤により失活させた乳酸系ポリマー及び/又は、
脱揮及び/又は再沈することにより、残留モノマーやオ
リゴマーを減少させた乳酸系ポリマーは、ポリマー中の
残留モノマー及びオリゴマーが減少し溶断シール等の熱
融着を行う場合その接着強度が向上する。
【0069】本発明に用いる乳酸系ポリマー(I)は、
脱揮及び/又は再沈することにより、残留モノマー及び
オリゴマー量を2重量%以下、より好ましくは1重量%
以下、更に好ましくは、0.1重量%以下にすることが
好ましい。残留モノマー及びオリゴマーを減少させるこ
とにより、保存安定性を増すことができ、更に加熱成形
する際の冷却ロール、成形ダイへの残留モノマー及びオ
リゴマーの付着を防ぎ、成形物の外観を損ねるのを防止
できる。
【0070】上述のように、重合触媒の失活剤により重
合触媒を失活させる以外に、残留モノマー及びオリゴマ
ーを物理的に減少させる方法として、乳酸系ポリマーを
減圧下において加熱、脱揮する脱揮法がある。具体的な
脱揮方法としては、1軸あるいは2軸の押出機、薄膜蒸
留機、ポット型減圧装置等で行う。
【0071】脱揮条件としては、重合後に減圧下、加熱
しながら乳酸系ポリマーの取り出しを行う方法が好まし
い。乳酸系ポリマーの分子量を低下させない為の脱揮条
件は、脱揮時間が10秒〜10分、温度が100〜23
0℃、減圧度が0.1〜50Torr、より好ましくは
0.1〜10Torr、更に好ましくは0.1〜5To
rrである。また、重合終了後に、乳酸系共重合体をペ
レット化、又は粉砕し、減圧下、加熱しながら取り出し
を行う方法がある。この場合も乳酸系ポリマーの分子量
を低下させない目的で、脱揮時間は2〜400分、温度
は60〜200℃、減圧度は0.1〜50Torr、よ
り好ましくは0.1〜10Torr、更に好ましくは
0.1〜5Torrである。
【0072】更に、重合終了後に乳酸系ポリマーを取り
出してから、1軸あるいは2軸の押出機等を用いてフィ
ルムへの熱成形等をする際に押出機にベント口等を設置
して脱揮をしても同様の脱揮効果が得られる。この場合
も乳酸系共重合体の分子量を低下させない目的で、脱揮
時間は10秒〜10分、温度は145〜230℃、減圧
度は0.1〜50Torr、好ましくは0.1〜10T
orr、更に好ましくは0.1〜5Torrである。
【0073】また、重合反応終了後に、乳酸系ポリマー
を溶剤に溶解し、貧溶剤に加えることによって乳酸系ポ
リマーを得る再沈法がある。乳酸系ポリマーを溶解する
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、
キシレン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、メチ
ルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサ
ン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、イ
ソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、
四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリ
クロロベンゼン、クロロナフタレン等が挙げられる。こ
れら溶剤は単独で使用しても良いが混合して使用しても
良い。貧溶剤としては水、メタノール、エタノール、プ
ロパノール、ブタノール、ペンタン、オクタン、ノナ
ン、デカン、ジエシルエーテル等とこれらの混合溶剤が
挙げられる。
【0074】再沈法は、室温または加温しながら溶剤に
2〜20重量%の濃度で乳酸系ポリマーを溶解後、攪拌
しながら2〜15倍量の貧溶剤に除々に加え、10〜1
80分間、静置し沈殿を生成させ取り出しを行う。取り
出した沈殿物は減圧下及び/又は加熱下で残留溶剤を取
り除く。残留モノマー及びオリゴマーを減少させる方法
には、重合触媒の失活剤により残留モノマー及びオリゴ
マーの発生を防止する方法や、脱揮法や再沈法の如く、
機械的に残留モノマー及びオリゴマーを除く方法があ
る。本発明に用いる乳酸系ポリマーは、これらのいずれ
か一つの方法により、残留モノマー及びオリゴマーを減
少させた乳酸系ポリマーを用いることが好ましく、ま
た、これらを組合せて処理した乳酸系ポリマーを用いて
も良い。
【0075】本発明の乳酸系ポリマーは必要に応じて第
二、三成分として他のポリマーや可塑剤、安定剤、酸化
防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、着色剤等の添加
剤を含んでも良い。ポリマーには脂肪族ポリエステル、
ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシブチレート−ヒ
ドロキシバリレート、スターチ系ポリマー等を含んでも
良い。
【0076】添加剤としては1,3−ブタンジオールと
アジピン酸等のポリエステル系可塑剤やフタル酸ジオク
チル、ポリエチレングリコールアジピン酸等の可塑剤、
エポキシ化大豆油、カルボジイミドの様な安定剤、2,
6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール(BH
T)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)の様な
酸化防止剤、シリカ、タルクの様なブロッキング防止
剤、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリ
ルの様な防曇剤、酸化チタン、カーボンブラック、群青
の様な着色剤等を含んでもかまわない。
【0077】一方、本発明に用いられる脂肪酸アマイド
(II)としては、高級脂肪酸アマイドである、例えばス
テアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、オレイン酸ア
マイド、ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、
ベヘニン酸アマイド、オキシステアリン酸アマイド、エ
ルシン酸アマイド、メチロールアマイドが挙げられる。
また、高級脂肪酸のモノアマイドである、例えばエチレ
ンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスステアリン
酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、エチレ
ンビスラウリン酸アマイドが挙げられる。
【0078】更に高級脂肪酸のビスアマイド型である、
例えばステアリル・オレイルアマイド等が挙がられる。
これら脂肪酸アマイドは単独で使用しても、組み合わせ
て使用しても差し支えない。乳酸系ポリマーフィルムの
透明性を考えるなら高級脂肪酸アマイドを使用するのが
好ましい。中でもステアリン酸アマイド、エルカ酸アマ
イドが好ましい。更に脂肪酸アマイドのブリードアウト
の抑制を考慮するならステアリン酸アマイドが好まし
い。
【0079】脂肪酸アマイドの乳酸系ポリマーへの添加
量は0.1重量部以上、3重量部以下が好ましい。0.
1重量部未満では乳酸系ポリマーフィルムに良好な滑性
は生じないし、3重量部を越えると脂肪酸アマイドがフ
ィルム表面にブリードしフィルム外観を著しく損ねるこ
とになる。更に好ましくは0.2重量部以上、2.5重
量部以下であり、より好ましくは0.2重量部以上、2
重量部以下である。脂肪酸アマイドの乳酸系ポリマーへ
の添加は乳酸系ポリマーの重合後に行うが、重合過程、
ポリマー性能あるいは乳酸系ポリマーフィルム性能に差
し支えなければ乳酸系ポリマー重合時に行っても良い。
一般には脂肪酸アマイドと乳酸系ポリマーからマスター
バッヂを作製しておいてフィルム成形時に所望の濃度に
なるように脂肪酸アマイドの添加量を調整すると加工が
しやすい。
【0080】続いて、乳酸系ポリマー組成物の製造方法
について説明する。
【0081】乳酸系ポリマー(I)と脂肪酸アマイド(I
I)からなる乳酸系ポリマー組成物は押出機等を用いた
溶融混練り法で行われる。脂肪酸アマイドの添加量を調
整しやすく経済的であり、乳酸系ポリマーの初期の性状
を損なわずに済むので確実性がある。所望の成形物を得
るには都合が良い。溶融混練りはラボプラストミルの様
な非連続的なバッチ式の混練り機を用いても良いし、連
続的に乳酸系ポリマー組成物を作製できる単軸押出機、
2軸押出機等を用いても良い。
【0082】乳酸系ポリマーは、吸湿性が高く、加水分
解性も強いため水分管理が必要である。除湿装置を持た
ない溶融混練り装置を用いる場合は、加工前に真空乾燥
機または除湿型乾燥機等により除湿乾燥する必要があ
る。また、除湿装置を有するベント式押出機、2軸押出
機による溶融混練りは溶融した樹脂から強制的に脱水を
行えるので乾燥工程を省略できる。
【0083】乳酸系ポリマー組成物を溶融混練りする温
度は特に制限されないが乳酸系ポリマーの融点以上の温
度、通常150〜250℃の範囲である。混練り時間は
1分から20分が適当である。フィルム作製以前に溶融
混練り法を用いて脂肪酸アマイドと乳酸系ポリマーから
マスターバッチを作製しておくと、脂肪酸アマイドの単
軸押出機等を用いたフィルム加工時への厚み変動等の直
接の影響が小さく、扱いやすい。
【0084】その際の脂肪酸アマイドの乳酸系ポリマー
への添加量は1〜50重量部が適当である。マスターバ
ッチ内の脂肪酸アマイドはフィルム加工時に乳酸系ポリ
マーで更に薄められてフィルム内の脂肪酸アマイド量が
所望の量になるように調整される。
【0085】乳酸系ポリマー組成物を成膜する際の溶融
押出温度は、特に制限されないが、通常150〜250
℃の範囲である。
【0086】次ぎに乳酸系ポリマーフィルムについて説
明する。まず初めに乳酸系ポリマーフィルムの作製方法
である押出成膜方法及びその条件について述べ、続いて
乳酸系ポリマーフィルムについて述べる。
【0087】乳酸系ポリマー組成物を成膜する際の溶融
押出温度は、特に制限されないが、通常150〜250
℃の範囲である。溶融押出されたフィルムは所定の厚み
になるようにキャスティングされ、必要により冷却され
る。その際フィルムの厚みが厚い場合はタッチロール、
エアーナイフ、薄い場合には静電ピンニングを使い分け
ることにより均一な厚みとする。溶融押出を行うリップ
の間隔は、0.2〜3.0mmとするが、成膜性を考え
るならば0.2〜1.5mmが好ましい。
【0088】本発明の乳酸系ポリマー組成物は乳酸系ポ
リマーフィルムに効率的に滑性を発現するために延伸処
理を行うことが好ましい。延伸処理の方法としては従来
公知の方法でよく、特に制限されないが、乳酸系ポリマ
ー組成物を溶融押出した直後、若しくは保存後のシ−ト
に圧延、縦一軸延伸、横一軸延伸、同時二軸延伸、逐次
二軸延伸のいずれかにより行うことができる。使用用途
により延伸方法を選べるが、方向による物性の均一性を
求めるなら二軸延伸法が好ましい。
【0089】延伸を行う際の加熱温度条件としては、乳
酸系ポリマー組成物のガラス転移温度(Tg)から融点
未満が好ましく、特にガラス転移温度(Tg)からガラ
ス転移温度(Tg)より50℃高い温度までの範囲が好
ましいが、ガラス転移温度(Tg)より10〜40℃高
い温度範囲がシ−トの面状態が良いことから特に好まし
い。延伸処理が可能であることは乳酸系ポリマーフィル
ムの物性を向上できる事からも好ましい。例えば延伸処
理をする事で乳酸系ポリマーフィルムの衝撃性が延伸処
理をしないものに比べ10倍以上向上する。延伸倍率と
しては面倍率が1.4〜16倍の範囲で面状態、透明性
が良好であるが2〜16倍の範囲が更に好ましい。
【0090】更に延伸処理後に熱セット処理を行えば乳
酸系ポリマー組成物の結晶化速度を速められ、5〜30
秒程度の短い加熱処理時間で結晶化を促進できる。結晶
化を促進した乳酸系ポリマー組成物は耐熱温度が向上
し、より実用的になる。更にこれは配向による結晶化を
伴うため、乳酸系ポリマー組成物の良好な透明性を保持
したまま耐熱性を向上できる。
【0091】その熱セット法を説明する。温度、時間に
ついては特に限定されないが、適正な結晶化速度を得る
には加熱温度を乳酸系ポリマー組成物の結晶化温度(T
c)より40℃低い温度から融点(Tm)未満の範囲と
することが好ましい。中でも熱セット温度は良好な面状
態、良好な耐熱性を得るために結晶化温度(Tc)から
それより40℃高い温度の範囲が特に好ましい。
【0092】熱セット方法には、強制対流させた空気あ
るいは赤外線ヒーター等の輻射熱で一定時間加熱する方
法、又は熱板、金型、ロール上に一定時間接触させて加
熱する方法が挙げられる。特にテンターと呼ばれる装置
を使用する方法は、加熱した空気を強制対流させ、シー
トもしくはフィルムに連続的に熱セットを行うことがで
き、生産性に優れる。この装置は延伸処理を目的とした
装置であるため、延伸・熱セットが短時間ででき生産性
に優れる。乳酸系ポリマーの結晶化を効率的に進めるこ
とができる。また延伸とテンターによる熱セットを併用
する事により乳酸系ポリマー組成物の透明性、物性を損
なわず、フィルムの結晶化を促進し、耐熱性を向上させ
ることができる。
【0093】本発明の乳酸系ポリマーフィルムはフィル
ムの透明性、滑性を損なわない範囲で必要に応じて第
二、三成分として他のポリマーや可塑剤、安定剤、酸化
防止剤、ブロッキング防止剤、防曇剤、着色剤等の添加
剤、滑剤を含んでも良い。ポリマーには脂肪族ポリエス
テル、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシブチレー
ト−ヒドロキシバリレート、スターチ系ポリマー等を含
んでも良い。
【0094】添加剤としては1,3−ブタンジオールと
アジピン酸等のポリエステル系可塑剤やフタル酸ジオク
チル、ポリエチレングリコールアジピン酸等の可塑剤、
エポキシ化大豆油、カルボジイミドの様な安定剤、2,
6−ジ−第三−ブチル−4−メチルフェノール(BH
T)、ブチル・ヒドロキシアニソール(BHA)の様な
酸化防止剤、シリカ、タルクの様なブロッキング防止
剤、グリセリン脂肪酸エステル、クエン酸モノステアリ
ル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル
の様な防曇剤、酸化チタン、カーボンブラック、群青の
様な着色剤、パラフィン、炭化水素樹脂、脂肪酸脂肪酸
エステル、脂肪アルコールの様な滑剤等を含んでもかま
わない。
【0095】本発明で言うガラス転移温度(Tg)、結
晶化温度(Tc)、融点(Tm)はJIS−K−712
1に準拠した方法で測定されたTig、Tpc、Tpm
であり、昇温速度は10℃/分で行う。
【0096】本発明の乳酸系ポリマーフィルムは厚み5
〜3000μmのフィルム又はシートを意味する。ただ
し、強度と経済性からフィルム厚みは5〜200μmが
より好ましい。更には包装用の目的を考慮するとできる
だけ軽量である方が良く5〜100μmの厚み範囲にす
ることが好ましい。
【0097】本発明の乳酸系ポリマーフィルムは、JI
S−K−7105法で測定するヘイズ値が3%以下、更
に好ましく0.1〜3%、更に好ましくは0.1〜2%
の良好な透明性を有する。ヘイズ値は曇価とも称し、透
明性の尺度として一般に使用される。その値が小さけれ
ば透明性はより良いとされる。フィルムで良好とされる
ヘイズ値は一般的に3%以下であると考えられる。
【0098】また、本発明の乳酸系ポリマーフィルムは
ASTM−D1894法で測定する動摩擦係数が0.3
以下である良好な滑性を有する。動摩擦係数は一定速
度:152±30mm/minで重錘:200±5gの
載ったフィルムを走らせ、均斉な走行になってから検出
した平均荷重を重錘の重さで除して求める。
【0099】更に本発明の乳酸系ポリマーフィルムは、
該フィルム外観を損ねるような共重合成分、脂肪酸アマ
イドのブリードアウトがない良好な外観を有する。一般
にプラスチックはその性能を改善しようとする時、改質
剤成分を化学反応を利用して付加するか、単に溶融混合
するかの処置がとられる。この時、改質剤とベースのプ
ラスチックに相溶性がない場合が多く、条件によっては
改質剤成分が成形物の表面に移行し成形物外観を損なう
不都合を生じることがある。この様にベース材中のある
成分がベース材表面に移行し、現れ出る現象を一般にブ
リードアウト呼ぶ。特に成形物の外観を損ねる場合に使
用される事が多い。
【0100】また、本発明の乳酸系ポリマーフィルム
は、包装又は収納を目的とした包装袋、シュリンクフィ
ルムに適する。
【0101】ここで包装袋とは一般に用いられている袋
であり、合成樹脂フィルムを折り曲げまたは接着等の方
法によりシールしたもので平面的、場合によっては立体
的な包装材形態である。これを使用した包装の対象とし
ては野菜、菓子、パン等の食品または雑貨あるいは米、
肥料等があるが、ここで得られた乳酸系ポリマーフィル
ムは折り曲げあるいは熱融着してなる包装袋としてこれ
ら各用途に使用できる。
【0102】フィルムを製袋するには各種の自動製袋機
が用いられる。例えば、サイドウエルド自動製袋機、三
方プレスシール自動製袋機、プレスセンターシール自動
製袋機、サイドシール自動製袋機等各種の自動製袋機が
挙げられる。これら製袋機により各種の規格袋、キャリ
ングバッグ、レジ袋等の袋が高速で作製される。製袋機
で製袋されるフィルムは一方を折り曲げ二方を熱融着す
るか、あるいは折り曲げずに三方を熱融着するかして平
面的に被収納物を収納する袋にされる。
【0103】フィルムから袋を作製する製袋には熱融着
を利用した接着方法ヒートシール法、インパルスシール
法、溶断シール法、インパルス溶断シール法、超音波シ
ール法、高周波シール法等が利用される。中でもヒート
シール法、インパルスシール法、溶断シール法が一般的
によく用いられる。本発明の乳酸系ポリマーは、フィル
ム等の成形物が非晶質であれば上述の各シール法を利用
でき、シール強度も良好であるが、延伸等の結晶化を伴
う処理を行う場合はインパルスシール法、溶断シール
法、インパルス溶断シール法、超音波シール法、高周波
シール法が利用できる。
【0104】この場合でも一般に必要とされるシール強
度10N/15mm以上の良好なシール強度が得られ
る。溶断シールにおいては溶断刃の先端の角度が製袋性
に大きく影響する。一般に先端の角度が鋭角であればフ
ィルムの切断がスムーズに行えるが、シール強度は弱く
なる。逆に、先端の角度が鈍角であればフィルムの切断
はしにくくなるがシール強度は強くなる。乳酸系ポリマ
ーフィルムを溶断シールする場合は溶断刃の先端の角度
は45度以上、120度以内が良い。更に好ましくは6
0度以上、90度以内である。
【0105】シュリンク包装とは加熱延伸処理したフィ
ルムで被包装物を覆い、該フィルムを加熱収縮して包装
する事である、また、シュリンクラベルとは、先のシュ
リンク包装と同様の原理で印刷等を施した延伸フィルム
を用いてラベリングする方法である。
【0106】本発明で得られた乳酸系ポリマーフィルム
は、フィルム滑性、熱溶断性が良好であるため、包装機
械適性、作業性に優れ、またフィルムの透明性が良好で
あるため、被収納物を収納した時に確認しやすく、収納
物を美麗に見せる事が可能な、各種の食品、飲料、薬
品、雑貨等の包装または収納を目的とした袋に好適に使
用できるものである。
【0107】
【実施例】本発明を実施例により詳細に説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。初めに本発明
に用いた乳酸系ポリマーの作製方法を示す。
【0108】(参考例1)(乳酸系ポリマーの作製) セバシン酸50モル%、1,6ヘキサンジオール20モ
ル%、エチレングリコール20モル%及び1,3ブタン
ジオール10モル%から作製した脂肪族系ポリエステル
(重量平均分子量:3.5万(ポリスチレン換算))3
重量部にラクタイド(L−ラクタイド99モル%、D−
ラクタイド1モル%)97重量部とを加えて、不活性ガ
スで雰囲気を置換し、170℃で1時間混合させ、エス
テル化触媒としてオクタン酸錫0.02重量部を加えて
8時間反応を行った。
【0109】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは無色透明な樹脂で、GPCの
測定結果から重量平均分子量は20.0万、ガラス転移
温度(Tg)は60℃、結晶化温度(Tc)は108
℃、融点(Tm)は170℃であった。このポリマーを
P1と称する。
【0110】(参考例2)(乳酸系ポリマーの作製) ダイマー酸(製品名エンポール1061;コグニス社
製)50モル%とプロピレングリコール50モル%から
作製した脂肪族系ポリエステル(重量平均分子量:6.
5万(ポリスチレン換算))15重量部にラクタイド
(L−ラクタイド96モル%、D−ラクタイド4モル
%)85重量部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を置換
し、170℃で1時間混合させ、エステル化触媒として
オクタン酸錫0.02重量部を加えて8時間反応を行っ
た。
【0111】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは透明な樹脂で、GPCの測定
結果から重量平均分子量は13.7万、ガラス転移温度
(Tg)は58℃、結晶化温度(Tc)は128℃、融
点(Tm)は152℃であった。このポリマーをP2と
称する。
【0112】(参考例3)(乳酸系ポリマーの作製) ダイマー酸(エンポール1061)30モル%、アジピ
ン酸20モル%及びエチレングリコール50モル%から
作製した脂肪族系ポリエステル(重量平均分子量:7.
8万(ポリスチレン換算))30重量部にラクタイド
(L−ラクタイド96モル%、D−ラクタイド4モル
%)70重量部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を置換
し、170℃で1時間混合させ、エステル化触媒として
オクタン酸錫0.02重量部を加えて8時間反応を行っ
た。
【0113】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは透明な樹脂で、GPCの測定
結果から重量平均分子量は19万、ガラス転移温度(T
g)は58℃、結晶化温度(Tc)は127℃、融点
(Tm)は151℃であった。このポリマーをP3と称
する。
【0114】(参考例4)(乳酸系ポリマーの作製) 1,4−シクロヘキサンジカルボン酸30モル%、アジ
ピン酸20モル%、エチレングリコール25モル%及び
ネオペンチルリグリコール25モル%から作製した脂肪
族系ポリエステル(重量平均分子量:7.5万(ポリス
チレン換算))50重量部にラクタイド(L−ラクタイ
ド98モル%、D−ラクタイド2モル%)50重量部と
を加えて、不活性ガスで雰囲気を置換し、170℃で1
時間混合させ、エステル化触媒としてオクタン酸錫0.
02重量部を加えて8時間反応を行った。
【0115】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは透明な樹脂で、GPCの測定
結果から重量平均分子量は13.7万、ガラス転移温度
(Tg)は52℃、結晶化温度(Tc)は110℃、融
点(Tm)は145℃であった。このポリマーをP4と
称する。
【0116】(参考例5)(乳酸系ポリマーの作製) セバシン酸50モル%とプロピレングリコール50モル
%から作製した脂肪族系ポリエステル(重量平均分子
量:6.5万(ポリスチレン換算))15重量部にラク
タイド(L−ラクタイド96モル%、D−ラクタイド4
モル%)85重量部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を
置換し、170℃で1時間混合させ、エステル化触媒と
してオクタン酸錫0.02重量部を加えて8時間反応を
行った。
【0117】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは透明な樹脂で、GPCの測定
結果から重量平均分子量は13.7万、ガラス転移温度
(Tg)は58℃、結晶化温度(Tc)は128℃、融
点(Tm)は152℃であった。このポリマーをP5と
称する。
【0118】(参考例6)(乳酸系ポリマーの作製) アジピン酸50モル%及びエチレングリコール50モル
%から作製した脂肪族系ポリエステル(重量平均分子
量:7.8万(ポリスチレン換算))30重量部にラク
タイド(L−ラクタイド96モル%、D−ラクタイド4
モル%)70重量部とを加えて、不活性ガスで雰囲気を
置換し、170℃で1時間混合させ、エステル化触媒と
してオクタン酸錫0.02重量部を加えて8時間反応を
行った。
【0119】この後、失活剤として酸性リン酸エステル
0.04重量部を加え混練した。更に2軸押出機で加
熱、減圧下で脱揮を行った。脱揮の条件は脱揮時間が1
20秒、温度は200℃、減圧度は5Torrである。
得られた乳酸系ポリマーは透明な樹脂で、GPCの測定
結果から重量平均分子量は19万、ガラス転移温度(T
g)は58℃、結晶化温度(Tc)は127℃、融点
(Tm)は151℃であった。このポリマーをP6と称
する。
【0120】(実施例1〜7)表1に示す乳酸系ポリマ
ーと、脂肪酸アマイドを同表に示した配合量において二
軸押出機(栗本鉄工所製)を用いて溶融混練りし、ペレ
ット化した。該ペレットから熱プレスにより220μm
のフィルムを作成した。熱プレス温度は200℃であ
る。次に単発2軸延伸機(岩本製作所社製)により延伸
温度65℃、予熱時間1分、延伸速度600mm/分、
延伸倍率2.5×2.5(縦×横)の条件で35μmの
延伸フィルムを作製した。その後フィルムを枠に挟み固
定し、140℃のエアーオーブン中で50秒間の熱セッ
トを行った。結果を表1に示す。
【0121】得られた乳酸系ポリマーフィルムにおいて
次の評価を行った。結果を表1に示す。
【0122】(1)フィルム同士の動摩擦係数:AST
M−D1894 (2)フィルムのヘイズ値:JIS−K−7105、結
果を表1に示す。 (3)フィルム外観:作製した延伸フィルムの表面に脂
肪酸アマイド、あるいは乳酸系ポリマー組成に取り入れ
たポリエステル構造単位、及び/又はポリエーテル構造
単位のブリードアウトによりフィルム外観が損なわれて
いないかを確認した。
【0123】フィルム表面に光沢、透明感があり、明ら
かなブリードアウト物が確認できないものは○、フィル
ムが薄曇り状になり、ブリードアウト物が払拭できるも
のは△。明らかにフィルムが透明性を失い、ブリードア
ウト物が払拭できるものは×。
【0124】(4)フィルムの生分解性評価:屋外コン
ポスト(容量100リットル)に生ゴミ5kgを入れ、
その上に得られた積層フィルムから切り出した10cm
四方の試験片を置いた。更に5cm程度の厚みの生ゴミ
を載せて1ヶ月後の試験片の状態を目視により評価し
た。尚、この試験は夏期に行った。評価基準は次の通
り。著しく物性の劣化があり、形状の維持が難しいもの
は○。変形、白化はあるが形状を維持しているものは
△。白化、変形等がなく試験開始前の状態を維持してい
るものは×とした。
【0125】
【表1】
【0126】脂肪酸アマイドの種類 A:エルカ酸アマイド B:ステアリン酸アマイド C:エチレンビスステアリン酸アマイド
【0127】(実施例8)先に作製した乳酸系ポリマー
(P2)に対してステアリン酸アマイドが1重量部にな
るようにTダイを有する単軸押出機(田辺プラスチック
製)と連続2軸延伸装置を用いて厚み35μm、幅40
0mmの延伸フィルムを連続的に作製し、その巻き取り
性とフィルム外観を確認した。またここで作製したロー
ル状の巻きサンプルを使用し自動製袋機での製袋性を確
認した。
【0128】押出しに係る温度はダイス出口の樹脂温度
で200℃である。延伸に係る温度は70℃、延伸倍率
は縦×横で2.5×2.5である。巻き取りは自動巻き
取り装置を用い、2m/minの一定の速度で巻き取り
を行った。製袋機はTIW BagMaking Machine (TYPE HK
40、トタニ技研工業株式会社製)を使用し、製袋スピー
ドは120bag/min、袋作製時の溶断シール温度
は250℃、溶断刃の先端の角度は90度である。シー
ル強度測定はJIS−Z−1707に依る。結果を次に
示す。製袋した袋は底面を折り曲げ、側面2方をシール
した縦×横:20cm×23cmの形状である。
【0129】1)フィルム作製時の巻き取り性 延伸は良好に行え、フィルムの巻き取り時、皺の発生も
なく良好に行えた。巻き取り性は良好であった。また、
改質剤のブリードもなくフィルム外観は良好あった。実
施例1〜7と同様に測定したフィルムの動摩擦係数は
0.25、ヘイズ値は2%であり生分解性は○であっ
た。
【0130】2)製袋性 装置内でのフィルムの詰まりもなく製袋が行えた。袋の
溶断シール強度も、一般に必要とされている10N/1
5mmを上回り、19N/15mmと良好であった。
【0131】(比較例1〜4)表2に示す乳酸系ポリマ
ーと、脂肪酸アマイドを同表に示した配合量において二
軸押出機(栗本鉄工所製)を用いて溶融混練りし、ペレ
ット化した。該ペレットから熱プレスにより220μm
のフィルムを作成した。熱プレス温度は200℃であ
る。次に単発2軸延伸機(岩本製作所社製)により延伸
温度65℃、予熱時間1分、延伸速度600mm/分、
延伸倍率2.5×2.5(縦×横)の条件で35μmの
延伸フィルムを作製した。
【0132】その後フィルムを枠に挟み固定し、140
℃のエアーオーブン中で50秒間の熱セットを行った。
結果を表2に示す。得られた乳酸系ポリマーフィルムに
おいて実施例1〜7と同様の評価をした。結果を表2に
示すと共に次ぎに述べる。比較例1と3では動摩擦係数
が0.3を越えてしまい滑性は劣った。比較例2と4で
は脂肪酸アマイドのブリードが激しく見られフィルムの
外観を著しく損ねた。
【0133】
【表2】
【0134】(比較例5)先に作製した乳酸系ポリマー
(P2)に対してステアリン酸アマイドが0.05重量部に
なるようにTダイを有する単軸押出機(田辺プラスチッ
ク製)と連続2軸延伸装置を用いて厚み35μm、幅4
00mmの延伸フィルムを連続的に作製し、その巻き取り
性とフィルム外観を確認した。押出しに係る温度はダイ
ス出口の樹脂温度で200℃である。延伸に係る温度は
70℃、延伸倍率は縦×横で2.5×2.5である。巻
き取りは実施例8と同様に自動巻き取り装置を用いて行
った。結果を次に示す。
【0135】1)フィルム作製時の巻き取り性 延伸は良好に行えたが、フィルムの巻き取り時、皺が多
数発生し、巻き取りが行えなかった。
【0136】
【発明の効果】本発明は一般包装分野、特に柔軟性を必
要とする包装用フィルムあるいはシュリンク用フィルム
において、フィルム巻き取り、あるいは製袋機等での製
袋、更にはフィルム一般を取り扱う作業に要求される優
れた滑性を有し、かつ包装袋等への加工後も優れた透明
性等の外観を有する生分解性のある乳酸系ポリマーフィ
ルムを提供することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // B29K 67:00 B29K 67:00 B29L 7:00 B29L 7:00 Fターム(参考) 4F071 AA43 AC12 AF30 AH04 BB06 BB07 BC01 4F210 AA24 AB19 AG01 QC01 QC05 QC07 QG01 QG18 4J002 CF181 EP016 EP026 GG02 4J029 AA05 AC02 AE03 BA01 BA02 BA03 BA05 BA08 BA09 BA10 BD04A BF08 BF09 BF10 CA02 CA04 CA06 CA09 EH01 GA02 GA12 GA13 GA14

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ジカルボン酸成分(a)とジオール成分
    (b)とを脱水縮合したポリエステル構造単位(A)、
    及び/又はジカルボン酸成分(a)とポリエーテルポリ
    オール成分(c)とを脱水縮合したポリエーテル構造単
    位(B)と、乳酸構造単位(C)とからなる乳酸系ポリ
    マー(I)に脂肪酸アマイド(II)を0.1〜3重量部
    含有させ溶融混練りして得られる乳酸系ポリマー組成物
    からなる乳酸系ポリマーフィルムであり、該フィルム間
    の動摩擦係数が0.3以下である乳酸系ポリマーフィル
    ム。
  2. 【請求項2】 乳酸系ポリマー組成物を延伸してなるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の乳酸系ポリマーフィル
    ム。
  3. 【請求項3】 ジカルボン酸成分(a)が必須成分とし
    て不飽和結合を有していてもよい炭素数20〜45の脂
    肪族ジカルボン酸(a1)及び/又は1,4−シクロヘ
    キサンジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1又
    は2に記載の乳酸系ポリマーフィルム。
  4. 【請求項4】 炭素数20〜45の脂肪族ジカルボン酸
    (a1)がダイマー酸であることを特徴とする請求項1
    〜3のいずれか一項に記載の乳酸系ポリマーフィルム。
  5. 【請求項5】 ジオール成分(b)が必須成分として不
    飽和結合を有していてもよい炭素数20〜45の脂肪族
    ジオール(b1)を含むことを特徴とする請求項1〜4
    のいずれか一項に記載の乳酸系ポリマーフィルム。
  6. 【請求項6】 不飽和結合を有していてもよい炭素数2
    0〜45の脂肪族ジオール(b1)がダイマージオール
    であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に
    記載の乳酸系ポリマーフィルム。
  7. 【請求項7】 乳酸系ポリマー(I)が、ポリエステル
    構造単位(A)及び/又はポリエーテル構造単位(B)
    3〜60重量%と、乳酸構造単位(C)40〜97重量
    %とからなる乳酸系ポリマー(I)であることを特徴と
    する請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳酸系ポリマ
    ーフィルム。
  8. 【請求項8】 脂肪酸アマイド(II)が、炭素数15
    〜40の脂肪酸アマイドであることを特徴とする請求項
    1〜7のいずれか一項に記載の乳酸系ポリマーフィル
    ム。
  9. 【請求項9】 延伸が、面倍率で1.4〜16倍である
    ことを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の
    乳酸系ポリマーフィルム。
  10. 【請求項10】 乳酸系ポリマーフィルムがヘイズ値3
    %以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか
    一項に記載の乳酸系ポリマーフィルム。
  11. 【請求項11】 溶断シールが可能である、請求項1〜
    10のいずれか一項に記載の乳酸系ポリマーフィルム。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006076576A (ja) * 2004-09-07 2006-03-23 Unitika Ltd ひねり包装用フィルム
JP2006124662A (ja) * 2004-09-29 2006-05-18 Toray Ind Inc 二軸延伸ポリ乳酸フィルムおよびそれからなる成形体、基板

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JP2006076576A (ja) * 2004-09-07 2006-03-23 Unitika Ltd ひねり包装用フィルム
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