JP2002060242A - 陰極線管用ファンネルおよびこれを用いた陰極線管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ファンネルの耐衝撃性、耐圧性等を損なうこ
となくＣＲＴ全体の軽量化を図ること。 【解決手段】 本発明の陰極線管用ファンネルは、重量
％で、４５％〜６０％のＳｉＯ₂、０．１％〜１５％の
Ａｌ₂Ｏ₃、５％〜２０％のＮａ₂Ｏ、１５％〜３０％の
ＰｂＯを含有するガラスを化学強化して得られたもので
ある。また、このような陰極線管用ファンネルを用いた
陰極線管でもある。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、高強度の陰極線管
用ファンネルおよびこれを用いた陰極線管に関する。

【０００２】

【従来の技術】近年、テレビモニターの大画面化が進
み、それに伴い陰極線管（以下、単に「ＣＲＴ」と言
う。）の重量増加が顕著になってきている。この重量が
増大する最大の原因はガラスの重量である。ＣＲＴセッ
トのうち、ガラス部材が重量全体の約６割を占める。

【０００３】ＣＲＴ用ガラス部材は大きく分けて、画面
を映写するパネルと、背面のファンネル、電子銃部分の
ネックの３つの部分から構成されている。そのガラス重
量の中で約６割がパネル、約３割がファンネルである。

【０００４】例えば、３６インチのＣＲＴパネルの厚さ
は２０ｍｍ以上、重量は４０ｋｇ程度であり、テレビセ
ットは７０ｋｇ程度になる。このため、特に日本の住宅
環境では大画面テレビセットの設置が困難であるばかり
でなく、このような重たいＣＲＴを移送するための配送
運搬にも大きなエネルギーやコストが必要となる。

【０００５】このようなＣＲＴ用ガラス部材のうち、従
来のファンネルは所望のＸ線吸収係数を得るためＰｂＯ
を多く含有した母材ガラスが用いられている。また、内
部が真空状態のＣＲＴには十分なガラス強度が必要であ
り、荷重が一部分に集中しないようファンネルは丸みを
帯びた形状にされている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかし、この種のファ
ンネル用ガラスの曲げ強度は１００ＭＰａ程度であり、
耐衝撃性を確保するためにはガラスの厚みを３ｍｍ〜１
０ｍｍと厚くする必要がある。これによってファンネル
の重量が増加し、ＣＲＴの軽量化が困難となっている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、このような課
題を解決するために成されたものである。すなわち、本
発明の陰極線管用ファンネルは、重量％で、４５％〜６
０％のＳｉＯ₂、０．１％〜１５％のＡｌ₂Ｏ₃、５％〜
２０％のＮａ₂Ｏ、１５％〜３０％のＰｂＯを含有する
ガラスを化学強化して得られたものである。また、この
ような陰極線管用ファンネルを用いた陰極線管でもあ
る。

【０００８】このような本発明では、陰極線管用ファン
ネルとして、十分なＸ線吸収係数を得ながら、化学強化
によって深い応力歪み層を得て十分な強度をもたせるこ
とができるようになる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。本実施形態に係るＣＲＴ用ファンネルは、
主としてＣＲＴの軽量化を図る観点から、厚さを薄くし
ても所望の特性を確保できる点に特徴がある。

【００１０】本実施形態に係るＣＲＴ用ファンネルは、
重量％で、４５％〜６０％のＳｉＯ ₂、０．１％〜１５
％のＡｌ₂Ｏ₃、５％〜２０％のＮａ₂Ｏ、１５％〜３０
％のＰｂＯを含有するガラスを化学強化して得られたも
のである。また、この化学強化は、表面をイオン交換す
ることによって行われる。

【００１１】このようなＣＲＴ用ファンネルでは、ガラ
スとしてＰｂＯを１５％〜３０％含有するので、６２／
ｃｍ以上のＸ線吸収係数を得ることができる。また、上
記組成によって、溶融性、化学強化特性に優れたガラス
を構成できる。

【００１２】また、上記組成のほか、Ｌｉ₂Ｏ、Ｋ₂Ｏ、
ＭｇＯ、ＣａＯ、ＳｒＯ、ＢａＯ、ＺｎＯ、ＴｉＯ₂、
ＺｒＯ₂、Ｓｂ₂Ｏ₃、ＣｅＯ₂からなる群より選ばれた少
なくとも１種または複数種のガラス成分を任意成分とし
て用いてもよい。

【００１３】これら任意成分を含むことにより、イオン
交換効率の向上、熱膨張係数、ガラス転移点、歪み点、
軟化点などの調整、Ｘ線吸収係数の調整、ガラスの溶融
性、溶融ガラスの粘度、化学的耐久性、電気的特性の向
上を図ることができる。

【００１４】本実施形態のＣＲＴ用ファンネルのガラス
では、従来の未強化ガラスに比べて約４倍の曲げ強度を
有する。そのため、本実施形態のＣＲＴ用ファンネルを
用いることでファンネルの耐圧性が大幅に向上するだけ
でなく、薄くして軽量化を図ることができる。

【００１５】この表面のイオン交換によって応力歪み層
を形成する化学強化ガラスは、薄板でも高強度が得られ
るというメリットがある。また、物理強化とは異なり、
ファンネルのような複雑な形状のガラスであっても均一
に表面の応力歪み層を形成することができる。

【００１６】また、本実施形態では、同じ強度を得るに
も従来と比べてファンネルの厚さを薄くでき、耐熱衝撃
性を高めることができる。したがって、例えばパネルと
ファンネルとのフリット接合の際、加熱あるいは冷却速
度を速められるので、生産タクトが向上し、生産コスト
の削減を図ることができる。

【００１７】本実施形態のＣＲＴ用ファンネルで適用さ
れるガラスは、Ｘ線吸収係数が６２／ｃｍ以上であり、
かつイオン交換で応力歪み層が得られるようアルカリ成
分を適宜含有している。

【００１８】ここで、本実施形態で適用されるガラスの
各種成分と好ましい組成範囲について説明する。

【００１９】ＳｉＯ₂はガラスの基本成分であり、４５
％未満では化学的耐久性が悪化するうえ、ガラスが失透
しやすくなる。逆に６０％を越えると、ガラスの粘度が
高くなり溶融が困難となる。したがって、ＳｉＯ₂の含
有量は、４５％〜６０％、好ましくは５０％〜５５％と
なる。

【００２０】Ａｌ₂Ｏ₃は、ガラスの耐失透性、化学的耐
久性、イオン交換効率を向上させる成分であるが、０．
１％未満ではこれらの効果がなく、逆に１５％を越える
と失透しやすくなる。したがって、Ａｌ₂Ｏ₃の含有量
は、０．１％〜１５％、好ましくは５％〜１０％とな
る。

【００２１】Ｎａ₂Ｏは、ガラスの溶融性を改善し、か
つガラス表層部でイオン交換処理中の主としてＫイオン
とイオン交換されることにより、ガラス表面に応力歪み
層を形成し、ガラスを強化するための成分である。Ｎａ
₂Ｏが５％未満では溶融性が悪化し、１５％を越えると
耐失透性と化学的耐久性が低下する。したがって、Ｎａ
₂Ｏの含有量は、５％〜１５％、好ましくは５％〜１０
％となる。

【００２２】ＰｂＯは、Ｘ線吸収係数が大きく、かつガ
ラスの溶融性を向上させる成分であるが、１５％未満で
はＸ線吸収係数が小さくなり、３０％を越えると耐失透
性と曲げ強度が低下する。したがって、ＰｂＯの含有量
は、１５％〜３０％、好ましくは２０％〜２５％とな
る。

【００２３】Ｌｉ₂Ｏ、Ｋ₂Ｏ、ＭｇＯ、ＣａＯ、Ｓｒ
Ｏ、ＢａＯ、ＺｎＯ、ＴｉＯ₂、ＺｒＯ₂、Ｓｂ₂Ｏ₃、Ｃ
ｅＯ₂は、ガラスの溶融性、ガラス粘度、耐失透性、Ｘ
線吸収係数、イオン交換効率の向上、熱膨張係数、ガラ
ス転移点、歪み点、軟化点などの調整、清澄の目的のた
めに適宜含有することができる。

【００２４】好ましくは、Ｌｉ₂Ｏ＋Ｋ₂Ｏが５％〜１０
％、ＭｇＯ＋ＣａＯ＋ＳｒＯ＋ＢａＯ＋ＺｎＯが５％〜
１０％、ＴｉＯ₂＋ＺｒＯ₂が０％〜５％、Ｓｂ₂Ｏ₃が
０．１％〜０．５％である。

【００２５】イオン交換は、ガラスをアルカリ溶融塩中
に浸漬して行う。イオン交換で使用する溶融塩の組成と
処理温度は、イオン交換の対象となるガラスの組成に応
じて適宜選択する。そして、所定の時間保持した後、ガ
ラスを取り出して洗浄する。

【００２６】なお、化学強化されているか否かは、ガラ
ス表面近傍に含まれる金属イオンの分布を調べることで
分かる。すなわち、よりイオン半径が大きな金属イオン
（例えば、アルカリ金属イオン）と、よりイオン半径が
小さな金属イオン（例えば、アルカリ金属イオン）の深
さの分布を調べる。

【００２７】そして、（よりイオン半径が大きな金属イ
オンの密度）／（よりイオン半径が小さな金属イオンの
密度）がガラスの深層部（例えば、ガラスの厚みの半分
の深さの部分）よりも表面に近い部分の方が大きく、曲
げ強度も大きくなっていれば、イオン交換による化学強
化が行われたものであると分かる。

【００２８】次に、本発明のＣＲＴ用ファンネルにおけ
る実施例および比較例を示す。図１は、実施例１〜６お
よび比較例１を説明する図である。

【００２９】（実施例１〜６、比較例１）酸化物、水酸
化物、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硫酸塩などの原料を図
１に示す組成になるように秤量して混合した調合原料
を、白金坩堝などの耐熱容器に入れ、１４００℃に加
熱、溶融、攪拌し、均質化、清澄を行った後、鋳型に流
し込んだ。ガラスが固化した後、ガラスの徐冷点近くに
加熱しておいた電気炉に移し、室温まで徐冷した。

【００３０】得られたガラスブロックからテストピース
を作製し、イオン交換を行った。イオン交換は、３８０
℃〜４６０℃で保持した硝酸カリウム溶融塩中に、前記
ガラス試料を所定時間浸漬した後、取り出して洗浄し
た。

【００３１】図１に、ガラス組成と対応した各種ガラス
試料（実施例１〜６、比較例）における各種測定データ
を示す。

【００３２】Ｘ線吸収係数は、ガラスに波長０．０６ｎ
ｍのＸ線を入射し、入射と反対面から５０ｍｍ離れた位
置の透過線量を測定し、吸収係数を計算したものであ
る。また、曲げ強度は、イオン交換した試料をＪＩＳ−
Ｒ１６０１の３点曲げ試験に準じて測定した。

【００３３】実施例１〜６のガラス試料では、いずれも
曲げ強度が２５０ＭＰａ以上であり、十分な強度を持ち
ながら、Ｘ線吸収係数が６０／ｃｍ以上となっている。
これにより、ＣＲＴ用として必要なＸ線吸収係数を備え
るとともに、十分な強度を得ることができる。

【００３４】これに対し、比較例１のガラス試料では、
曲げ強度は３００ＭＰａと高い値を有するものの、Ｘ線
吸収係数が２８／ｃｍと低く、陰極線管用ファンネルと
しての使用に耐えうるものではない。

【００３５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば次
のような効果がある。すなわち、陰極線管用ファンネル
の高強度の実現によって耐衝撃性を向上させることがで
き、また耐圧性の向上を生かしてガラス肉厚を薄くする
ことで軽量化を図ることが可能となる。これにより、陰
極線管全体の重量を軽量化することが可能となる。ま
た、フリットシール工程におけるガラスの耐熱衝撃性を
高めて陰極線管の生産性向上を図ることも可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例および比較例を説明する図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三徳 正孝 東京都品川区北品川６丁目７番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 岡田 正道 東京都品川区北品川６丁目７番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 橋本 光生 東京都品川区北品川６丁目７番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 渡邉 格 東京都新宿区中落合２丁目７番５号 ホー ヤ株式会社内 (72)発明者 蜂谷 洋一 東京都新宿区中落合２丁目７番５号 ホー ヤ株式会社内 Ｆターム(参考） 4G059 AA07 AC16 HB03 HB14 4G062 AA03 BB01 BB04 DA05 DA06 DB02 DB03 DB04 DC01 DD01 DE01 DE02 DF04 EA02 EB03 EB04 EC01 EC02 EC03 ED01 ED02 ED03 EE01 EE02 EE03 EF01 EF02 EF03 EG01 EG02 EG03 FA01 FA10 FB01 FB02 FC01 FC02 FC03 FD01 FE01 FF01 FG01 FH01 FJ01 FK01 FL01 FL02 GA01 GA10 GB01 GC01 GD01 GE01 HH01 HH03 HH05 HH07 HH09 HH11 HH13 HH15 HH17 HH20 JJ01 JJ03 JJ05 JJ07 JJ10 KK01 KK03 KK05 KK07 KK10 MM25 NN14 NN33 5C032 AA02 BB10

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 重量％で、 ４５％〜６０％のＳｉＯ₂、 ０．１％〜１５％のＡｌ₂Ｏ₃、 ５％〜２０％のＮａ₂Ｏ、 １５％〜３０％のＰｂＯ、 を含有するガラスを化学強化して得られたことを特徴と
   する陰極線管用ファンネル。
2. 【請求項２】 前記化学強化はイオン交換により前記ガ
   ラスの表面に応力歪み層を形成するものであることを特
   徴とする請求項１記載の陰極線管用ファンネル。
3. 【請求項３】 前記ガラスは、Ｘ線吸収係数が６２／ｃ
   ｍ以上であることを特徴とする請求項１記載の陰極線管
   用ファンネル。
4. 【請求項４】 請求項１〜３のいずれか一項に記載の陰
   極線管用ガラスパネルを構成する成分の他、Ｌｉ₂Ｏ、
   Ｋ₂Ｏ、ＭｇＯ、ＣａＯ、ＳｒＯ、ＢａＯ、ＺｎＯ、Ｔ
   ｉＯ₂、ＺｒＯ₂、Ｓｂ₂Ｏ₃、ＣｅＯ₂からなる群より選
   ばれた少なくとも１種または複数種のガラス成分を含む
   ことを特徴とする陰極線管用ファンネル。
5. 【請求項５】 請求項１〜４のいずれか一項に記載の陰
   極線管用ファンネルを用いたことを特徴とする陰極線
   管。