JP2002011349A - 水素吸蔵剤、水素吸蔵方法および水素吸蔵炭素 - Google Patents

水素吸蔵剤、水素吸蔵方法および水素吸蔵炭素

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JP2002011349A
JP2002011349A JP2000199345A JP2000199345A JP2002011349A JP 2002011349 A JP2002011349 A JP 2002011349A JP 2000199345 A JP2000199345 A JP 2000199345A JP 2000199345 A JP2000199345 A JP 2000199345A JP 2002011349 A JP2002011349 A JP 2002011349A
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hydrogen
carbon
carbon fiber
hydrogen storage
fiber
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Application number
JP2000199345A
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English (en)
Inventor
Yukinori Kude
幸徳 久手
Osamu Kato
攻 加藤
Tsutomu Kihara
勉 木原
Yoshiho Hayata
喜穂 早田
Masahiro Toyoda
昌宏 豊田
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Eneos Corp
Original Assignee
Nippon Mitsubishi Oil Corp
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/30Hydrogen technology
    • Y02E60/32Hydrogen storage

Abstract

(57)【要約】 【課題】 効率的な水素吸蔵技術を提供する。 【解決手段】 炭素繊維を酸性溶液中にて電気化学処理
してなる、広角X線回折分析による回折ピーク位置(2
θ)が9°〜14°に現れる炭素構造を含有する炭素繊
維層間反応生成物に、水素を接触させて炭素繊維層間反
応生成物に水素を吸蔵させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は新規な水素吸蔵剤、
水素吸蔵方法および水素吸蔵炭素に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から水素吸蔵用炭素材料としては、
活性炭やカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ
ー等のナノマテリアル炭素材料が知られている。活性炭
は比較的安価な材料で工業的にも各種吸着剤に用いられ
ているが、水素吸蔵材料としては水素吸着量が少なく、
性能が不十分である。またカーボンナノチューブ、カー
ボンナノファイバー等のナノマテリアル炭素材料が比較
的高い水素吸着量が得られ、実用化の可能性の高い水素
吸蔵材料であるが、製造、精製にコストがかかり、未の
ところ価格的に利用困難である。ナノマテリアル炭素材
料の製造方法としては、特開平3−174018号公
報、特公平3−64606号公報、特許第298281
9号等に示されるカーボンナノチューブや炭素フィブリ
ルの製造方法、ChambersらJ.Phys.Ch
em.B,122,4253(1998)やFanらC
arbon,37,1649(1999)等に示される
カーボンナノファイバーの製造方法が知られているが、
いずれも金属微粉末を触媒とした、気相法による合成法
であるために、量産が容易でなかったり、触媒除去のた
めに手間がかかり、またコストがかかる点が問題であっ
た。一方近年カーボンナノチューブに関して、Dark
rimらJ.Chem.Phys.,109, 498
1(1998),WangらJ.Phy.Chem.
B.,103, 4809(1999)等に示されるよ
うに、計算による水素吸蔵のための最適サイズとして、
カーボンナノチューブ直径1.174nmすなわち内径
0.7nmの時に最も高い吸蔵密度を示すことが推測、
推定されている。しかしながらいかにして0.7nmに
近い孔サイズを有する炭素材料を作製し、水素吸蔵に用
いるかに関しては、何ら具体的手段が見出されていな
い。この場合通常の黒鉛や黒鉛化繊維の層間距離は0.
335〜0.349nm程度であり、このままでは水素
吸蔵材料として用いても良好な水素吸蔵体とはなり得な
い。また通常の黒鉛の層間にアルカリ金属、ハロゲン、
酸、アンモニア等を挿入して形成した黒鉛層間化合物は
加工が難しいという問題がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は上記従
来技術の問題点を解決した新しい水素吸蔵技術を提供す
ることにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、炭素繊維を酸
性溶液中にて電気化学処理してなる、広角X線回折分析
による回折ピーク位置(2θ)が9°〜14°に現れる
炭素構造を含有する炭素繊維層間反応生成物からなるこ
とを特徴とする水素吸蔵剤に関する。更に本発明は、上
記の水素吸蔵剤に水素を接触させることを特徴とする水
素吸蔵方法及びそれによって得られる水素吸蔵炭素に関
する。更に本発明は、炭素繊維を酸性溶液中にて電気化
学処理してなる、広角X線回折分析による回折ピーク位
置(2θ)が9°〜14°に現れる炭素構造を含有する
炭素繊維層間反応生成物に水素を接触させることを特徴
とする水素吸蔵方法に関する。更に本発明は、炭素繊維
を酸性溶液中にて電気化学処理してなる、広角X線回折
分析による回折ピーク位置(2θ)が9°〜14°に現
れる炭素構造を含有する炭素繊維層間反応生成物に水素
を接触させて多繊維性炭素繊維内部に水素を吸蔵させて
水素吸蔵炭素をつくり、該水素吸蔵炭素を加熱及び/又
は減圧処理して吸蔵した水素を放出させることを特徴と
する水素の吸蔵放出方法に関する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明は炭素繊維層間反応生成物
を形成した新しい構造特性をもつ炭素繊維からなる水素
吸蔵剤、それを用いる水素吸蔵方法およびこの方法によ
り得られる水素吸蔵炭素を提供するものである。本発明
において原料として使用する炭素繊維とは、炭素繊維前
駆体を800℃を超える温度、好ましくは1000℃以
上の温度で焼成した繊維をいい、2000℃以上、より
好ましくは2600℃以上、更に好ましくは2900〜
3200℃の高温で処理したようないわゆる黒鉛構造の
発達したあるいは黒鉛構造部分をより多く、いわゆる黒
鉛化繊維を原料として使用することが特に好ましい。該
炭素繊維としては、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニ
トリル系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの炭素繊維
があるが、ピッチ系炭素繊維が焼成時に黒鉛構造が発達
しやすいため好ましい。
【0006】ピッチ系炭素繊維の原料としては、石油系
ピッチ、石炭系ピッチ、さらには合成系ピッチなどが好
ましく用いることができる。石油系ピッチの具体例とし
ては、デカントオイルピッチ、エチレンタールピッチが
あり、石炭系ピッチの具体例としては、コールタールピ
ッチ、石炭液化ピッチがある。合成系ピッチの具体例と
しては、ナフタレンピッチ等の各種ピッチがある。
【0007】本発明では上記のようなピッチのうちで
も、特に光学的異方性相を含むピッチ即ちメソフェーズ
ピッチが好ましく用いられ、通常光学的異方性相が50
〜100%、好ましくは80〜100%、より好ましく
は90〜100%のピッチが用いられる。本発明におい
てメソフェーズピッチとは、偏光顕微鏡でピッチの断面
を観察した際に見ることができる光学的異方性を示すピ
ッチであり、その含有量は光学的異方性の面積分率で示
す。
【0008】ピッチの紡糸は通常の溶融紡糸法により行
われる。紡糸形態としては、溶融したメソフェーズピッ
チをノズル孔を通過させて紡糸するが、引取り方法の違
いにより種々の方法を選択することができる。具体的に
は、連続長繊維を得る方法、ピッチ繊維を紡糸直後に切
断してチョップド繊維を得る方法、ノズルにガスを導入
することによりピッチ短繊維を得る方法(いわゆるメル
トブロー法)があるが、いずれの紡糸法も用いうる。
【0009】ピッチ繊維の糸径は7〜50μm、好まし
くは7〜20μmである。得られたピッチ繊維はケンス
缶あるいはコンベアーに採取され、引き続き焼成処理が
行われる。紡糸粘度は焼成時の黒鉛構造の発達を促進す
る意味から、なるべく低粘度が望ましく、具体的には6
0Pa・s以下、好ましくは10〜30Pa・sの粘度
で紡糸される。
【0010】得られたピッチ繊維は、酸化性ガス雰囲気
下、通常100〜360℃、好ましくは130〜320
℃の温度で通常10分〜10時間、好ましくは1〜6時
間保持し、不融化処理を行うことができる。酸化性ガス
としては酸素、空気、オゾンもしくはこれらに二酸化窒
素、塩素等を混合したものが通常用いられる。
【0011】不融化処理した繊維は窒素、アルゴン等の
不活性ガス雰囲気下で2000℃以上、好ましくは26
00℃以上、より好ましくは2900℃〜3200℃の
温度で黒鉛化処理を行うことで、炭素繊維を得ることが
できる。該焼成処理前に不活性ガス雰囲気中300〜8
00℃で一次炭化処理を行うこともできる。なおチョッ
プド炭素繊維は、上記の紡糸直後に切断を行う方法の他
に、一次炭化後処理もしくは黒鉛化処理後に切断を行う
方法によっても製造できる。
【0012】本発明での処理に特に好ましく用いられる
炭素繊維は、広角X線回折測定により知ることができる
結晶子サイズ(Lc)が通常20〜100nm、好まし
くは25〜70nm、更に好ましくは30〜70nmで
あり、d002面間距離が0.33〜0.4nm,好ま
しくは0.33〜0.36nmであるような黒鉛構造の
発達した炭素繊維である。本発明の炭素繊維層間反応生
成物は、上記した炭素繊維を繊維内部に亘り層間反応が
行われるに十分な時間酸性液中にて電気化学処理する工
程を用いることによって得られる。
【0013】ここで炭素繊維層間反応生成物とは、一本
の炭素繊維を想定した場合、炭素繊維を構成する炭素構
造の層間に、酸を含有させ、酸含有層間反応物を形成さ
せ、炭素繊維を構成する炭素構造の層間を拡張させた繊
維の集合体となった状態のものをいう。上記の酸含有層
間反応物の形成は、広角X線回折装置を用いて測定した
(002)面に相当する回折ピーク位置(2θ)が、電
気化学処理前の炭素繊維の値である25〜27°(層間
距離換算0.33〜0.36nm)の強度が低下し、よ
り低角側に新たな回折ピークが生じることにより確認す
ることができ、例えば酸として硝酸を使用した場合は、
新たな回折ピーク位置(2θ)が9〜14°(層間距離
換算0.63〜0.98nm)、好ましくは10〜13
°(層間距離換算0.68〜0.88nm)が生じるこ
とによって該反応を確認しうる。ただし、得られる広角
X線回折による新たな回折線の形状から該層間反応物の
三次元的な規則性は低いと推測され、電気化学処理によ
り層間反応した炭素繊維の層間距離が全て前記範囲内で
あるということはできない。
【0014】本発明では上記の酸含有層間化合物の形成
は、酸性溶液中で炭素繊維を電気化学処理して繊維内部
において層間反応させて層間に反応化合物を形成させる
ことによって得ることができる。上記の電気化学処理に
供する炭素繊維の形態としては、例えば織物、フェル
ト、マット、チョップド炭素繊維、二次元織物、三次元
織物あるいは一方向材などの繊維成形品が挙げられる。
該繊維成形品にさらに樹脂を含浸させたプリプレグや該
繊維成形品にさらにピッチ、樹脂、黒鉛粉などのバイン
ダーを加えた後もしくは加えることなく加圧成形しさら
に必要に応じて炭化焼成したものなどが含まれ、ピッチ
や樹脂の炭化物、熱分解炭素などをマトリックスとする
ようないわゆる炭素繊維強化炭素複合材料なども含まれ
る。
【0015】上記の繊維成形品に用いられる炭素繊維と
しては、連続長繊維、短繊維のいずれを用いることもで
きる。また上記の炭素繊維成形品は炭素繊維と他の繊
維、例えば無機繊維もしくは有機繊維との混紡、混繊も
しくは混織品であってもよい。有機繊維などこれら他の
繊維の選択によっては後で焼成や薬品処理などによりこ
れら他の繊維を除去することができ、また本発明に利用
することができる最終的な多繊維性繊維(膨張繊維)が
取り扱い容易なようにこれら他の繊維を除去しないでそ
のまま使用することもできる。
【0016】無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ
繊維、炭化珪素繊維、金属繊維などを用いることができ
る。有機繊維としては、天然繊維、合成繊維を使用する
ことができ、具体的には綿糸、絹糸、ナイロン繊維、ケ
ブラー繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、ポリエステ
ル繊維、ポリエチレン繊維などを用いることができる。
【0017】本発明の電気化学処理いおいて使用する電
解質としては通常酸性溶液を用いることができ、該酸性
溶液は電気分解をおこすものであればその種類を特に問
わない。酸としては有機酸、無機酸またはこれらの混合
物があり、無機酸としては硫酸、濃硫酸、硝酸、濃硝
酸、燐酸など、有機酸としては酢酸などがあるが、濃硝
酸、濃硫酸が特に好ましく、この場合の酸濃度は通常5
〜20モル/リットル、好ましくは6〜20モル/リッ
トルである。
【0018】電気化学処理に用いる電極や装置などの条
件は従来知られた電解酸化に用いられている条件を適宜
適用できる。たとえば電気化学処理に使用する電極は特
に限定されず、典型例としては耐酸性を有する白金電極
を使用することができる。電気化学処理に使用する容器
についても特に限定されないが通常はガラス容器が使用
される。印加電圧も特に限定されず、通常0.5V以上
の適宜の電圧を用いうる。
【0019】本発明は繊維の表面処理ではなく繊維内部
に亘って層間反応を行うものであるため、前記の酸の種
類や濃度の選択に応じ、印加電圧、印加時間などの条件
を選定する必要があるが、これらの条件は当業者が簡単
な予備実験によって適宜選定しうるものである。また繊
維を連続的に電解酸化液に流通し、繊維を連続的に層間
反応を実施することもできる。
【0020】層間反応の生起は、広角X線回折装置を用
いて測定した(002)面に相当する回折ピーク位置
(2θ)が、電気化学処理前の炭素繊維の値である23
〜27°(層間距離換算0.33〜0.4nm)の強度
が低下し、より低角側に新たな回折ピークが生じること
により確認することができ、例えば酸として硝酸を使用
した場合は、新たな回折ピーク位置(2θ)が9〜14
°(層間距離換算0.63〜0.98nm)、好ましく
は10〜13°(層間距離換算0.68〜0.88n
m)が生じることによって該反応を確認しうる。前記の
ように生じた新たな回折線の半値幅は1〜3°、好まし
くは1〜2°の範囲である。
【0021】黒鉛結晶状態を形成している場合の層間距
離(d002面)は、広角X線回折装置を用いて測定さ
れ、通常次のブラッグの公式により算出される。すなわ
ち使用するX線の波長を一定に保ち、入射角、反射角
(通常は入射角=反射角)を測定すれば、層間距離を知
ることができる。 2d sinθ=n λ d:格子面間隔 θ:ブラッグ角 入射角=反射角=θ λ:使用したX線の波長(CuKα線:0.154n
m) n:反射次数 ただし、本発明でいう2θの値は全て、粉末法による広
角X線回折線図形の測定によるものである。その測定の
具体的条件は以下の通りである。すなわちメノウ乳鉢で
全試料が150メッシュ標準篩を全通するように粉砕し
た試料を、X線回折計付属の深さ0.2mmの試料板に
均一に充填したX線回折用試料を用い、X線はCuKα
線(CuKβ線はニッケルフィルターによって除いたも
の)を用い、X線管球への印可電圧および電流は40k
V,150mA,スリット幅は発散スリット1/2°,
散乱スリット1/2°,受光スリット0.15mm、計
数管の操作速度は1°/minの条件による測定値によ
るものである。
【0022】このようにして炭素繊維内部に亘って層間
反応を行って得た炭素繊維層間反応生成物は必要に応
じ、水、有機酸、有機酸エステルを添加した水などで洗
浄して繊維表面に付着した酸を除去し、脱水、乾燥する
ことができる。上記の有機酸もしくは有機酸エステルと
してはギ酸、酢酸、シュウ酸もしくはこれらのエステル
などを用いることができる。また必要に応じ、さらにア
ンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのア
ルカリ溶液、アルカリ性ガスなどで処理し、必要であれ
ばさらに水などで洗浄することもできる。
【0023】かくして得られた電気化学処理後の炭素繊
維(炭素繊維層間反応生成物)は従来の炭素層間反応生
成物よりも安定であり長期間保存することができる。該
炭素繊維層間反応生成物の電気抵抗率は通常20000
〜200000μΩm、好ましくは40000〜120
000μΩmであり、通常の炭素繊維と比較して、10
000〜100000倍と非常に大きい。また電気化学
処理後の炭素繊維の鮮度は処理前の炭素繊維が200〜
250g/kmで有るのに対し、300〜450g/k
mと増加する。上記からも理解できるように、本発明に
おいて「炭素繊維層間反応生成物」とは酸含有層間反応
物とも称しうるものである。
【0024】上記のようにして得られた炭素繊維層間反
応は水素吸着、水素吸蔵に適した炭素層エッジ(あるい
は炭素ドメインエッジ)を多数有しており、X線構造的
に見て黒鉛のd002面の回折ピーク位置(2θ)23
〜27°(層間距離換算0.33〜0.4nm)に由来
する炭素構造が減少し、新たな回折ピーク位置(2θ)
9〜14°(層間距離換算0.63〜0.98nm)に
由来する新たな炭素構造を生じることから、水素吸蔵性
にも優れている。
【0025】かくして得られた炭素繊維層間反応生成物
は、従来の黒鉛層間化合物同様、種々の産業分野におい
て使用される材料の原料、電池材料、重合反応用触媒な
どにも好適に使用することができるが、本発明の重要な
意義は、本発明の炭素繊維層間反応生成物が、0.63
〜0.98nmの層間距離を有すると推定される炭素構
造部分を含有することから、該炭素構造部分が水素吸蔵
のための最適孔サイズと考えられている0.7nmに近
いと推定され、その結果水素に接触させれば容易に水素
を吸蔵することができるという水素吸蔵材料として優れ
た性能を見出したことである。同時に元々繊維の形状で
あることから、加工性に優れ、利用し易いという点も水
素吸蔵材料として用いるために重要な意味をもつ。
【0026】本発明によれば、従来は高圧ボンベ等で高
い圧力が必要であった水素貯蔵を、本発明の水素吸蔵材
を用いることによって比較的低い貯蔵圧力で済ませるこ
とができる。また原料に炭素繊維長繊維を用いることも
できることから、連続的に処理槽を通過させて電気化学
的処理を実施することも可能であり、従来の水素吸蔵用
炭素材料よりも製造が容易で安価でありながら、高い水
素吸蔵特性を有する等優れた特徴を有する。本発明の炭
素繊維層間反応生成物に水素を接触させるだけで該炭素
繊維層間化合物は水素を吸蔵することができる。例えば
圧力容器中に本発明の炭素繊維層間化合物を入れ、真空
脱気後、室温でそのまま圧力容器中で1〜10MPaと
なるように一定量の高圧水素ガスを導入することによ
り、水素を吸蔵させることができる。本発明の炭素繊維
層間化合物は通常1g当たり0.1〜0.3gの水素を
吸着あるいは吸蔵することができる。
【0027】本発明の炭素繊維層間反応生成物は減圧な
どの機械的方法により容易に水素ガスを放出することが
でき、同時に水素ガスが脱離した後の炭素繊維層間化合
物についても繰り返し水素吸蔵材料として利用すること
ができる。本発明の水素吸蔵方法は、水素吸蔵が容易で
かつ加熱、減圧等の処理により繰り返し水素の吸蔵、放
出ができるので水素ボンベ(高圧容器)内に充填するこ
とによって、既存の水素ボンベよりも軽量かつ高容量な
水素燃料貯蔵用途、ニッケル−水素電池等の水素貯蔵材
料など、現在水素吸蔵合金を用いて実用化されている用
途、あるいは実用化が検討されている用途の内、特に軽
量化が重要な各種の利用に供することができる。
【0028】
【実施例】次に実施例により本発明を例証する。 実施例1:ピッチ系炭素繊維を予め500℃以上で5時
間以上熱処理することでサイジング剤を取り除いた。サ
イジング剤が取り除かれた炭素繊維(Lc=50nm)
を約200cmの長さ分取り、図1に示すように約10
cm直径に白金線に沿わせて巻き取り、白金電極正極側
の先にぶら下げて固定し、濃硝酸溶液中浸漬した。この
際繊維を白金線に沿わせたのは、電気化学処理の際、繊
維各部所での電位を等電位とするためである。炭素繊維
を固定した白金電極正極と白金電極負極間に直流電流が
1A前後流れるように電流制御で電圧を3〜8V印加
し、炭素繊維の電気化学処理を開始した。この時の温度
は室温で電気分解時間は5時間とした。処理を終えたプ
ラス側の陽電極に固定された炭素繊維を硝酸溶液中から
取り出し、充分の水で繰り返し水洗をした後、ドラフト
内で風乾を行い乾燥させた。風乾を終えた試料をX線回
折装置にて解析を行い、処理前の炭素繊維の広角X線回
折プロファイル(図2)と電気化学処理後の広角X線回
折プロファイル(図3)を比較した結果、d002の回
折線の強度が弱まり、2θが11°付近に、新たな回折
ピークが生じており、層間反応生成物を形成しているこ
とが確認された(表1)。X線回折の測定条件は、メノ
ウ乳鉢で全試料が150メッシュ標準篩を全通するよう
に粉砕した試料を、X線回折計付属の深さ0.2mmの
試料板に均一に充填したX線用試料を用い、X線はCu
Kα線(CuKβ線はニッケルフィルターによって除い
たもの)を用い、X線管球への印可電圧および電流は4
0kV,150mA,スリット幅は発散スリット1/2
°,散乱スリット1/2°,受光スリット0.15m
m、計数管の操作速度は1°/minとしたものであ
る。また表2,3に示したように、電気化学処理前後
で、電気抵抗率、繊度等も変化している。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】乾燥を終えた試料を用いて次に炭素繊維層
間反応生成物の水素吸蔵材としての性能を評価した。容
量が予め既知の圧力容器中に炭素繊維層間化合物を入
れ、真空脱気した。処理後、室温にて、吸着量が0の場
合圧力容器中で5MPaとなるように一定量の高圧水素
ガスを導入したところ、2.1MPaまでの圧力降下が
認められた。導入水素量と圧力降下量から、炭素繊維層
間化合物1g当たり0.20gの水素を吸着したことが
わかった。吸着した水素は炭素繊維層間化合物の入った
圧力容器を減圧することにより、回収することができ
た。水素吸着量の約80%分は減圧により速やかに放出
され、吸着量の約20%分は回収されず、材料内にその
まま保持された。
【0033】比較例1:また実施例1と同様の炭素繊維
を用い、硫酸および過酸化水素水で処理し洗浄・乾燥し
て炭素繊維層間化合物を製造したところ、充分な層間化
合物形成は得られなかった。また水素吸着量を測定した
ところ、実施例1に記載したような圧力降下は認められ
ず、水素を吸着することはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で用いた電気化学処理装置の説明図。
【図2】電気化学処理前の炭素繊維の広角X線回折プロ
ファイル。
【図3】電気化学処理後の炭素繊維の広角X線回折プロ
ファイル。
【符号の説明】
1 炭素繊維
フロントページの続き (72)発明者 木原 勉 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日石三 菱株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 早田 喜穂 神奈川県横浜市中区千鳥町8番地 日石三 菱株式会社中央技術研究所内 (72)発明者 豊田 昌宏 福井県鯖江市下司町(番地なし) 国立福 井工業高等専門学校内 Fターム(参考) 4G040 AA33 AA42 4G046 CB01 CB08 CC00 4G066 AA04B AA53D AE01D BA16 BA31 CA38 FA11 GA01 GA14 4L031 AA27 AB01 CA02 CB10 DA21

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素繊維を酸性溶液中にて電気化学処理
    してなる、広角X線回折分析による回折ピーク位置(2
    θ)が9°〜14°に現れる炭素構造を含有する炭素繊
    維層間反応生成物からなることを特徴とする水素吸蔵
    剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の水素吸蔵剤に水素を接触
    させることを特徴とする水素吸蔵方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の水素吸蔵剤に水素を接触
    させて得られることを特徴とする水素吸蔵炭素。
  4. 【請求項4】 炭素繊維を酸性溶液中にて電気化学処理
    してなる、広角X線回折分析による回折ピーク位置(2
    θ)が9°〜14°に現れる炭素構造を含有する炭素繊
    維層間反応生成物に水素を接触させることを特徴とする
    水素吸蔵方法。
  5. 【請求項5】 炭素繊維を酸性溶液中にて電気化学処理
    してなる、広角X線回折分析による回折ピーク位置(2
    θ)が9°〜14°に現れる炭素構造を含有する炭素繊
    維層間反応生成物に水素を接触させて多繊維性炭素繊維
    内部に水素を吸蔵させて水素吸蔵炭素をつくり、該水素
    吸蔵炭素を加熱及び/又は減圧処理して吸蔵した水素を
    放出させることを特徴とする水素の吸蔵放出方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013100212A (ja) * 2010-11-29 2013-05-23 Sekisui Chem Co Ltd 炭素質材料

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