JP2002004014A - 磁気シールド用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

磁気シールド用鋼板およびその製造方法

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JP2002004014A
JP2002004014A JP2000190996A JP2000190996A JP2002004014A JP 2002004014 A JP2002004014 A JP 2002004014A JP 2000190996 A JP2000190996 A JP 2000190996A JP 2000190996 A JP2000190996 A JP 2000190996A JP 2002004014 A JP2002004014 A JP 2002004014A
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magnetic
rolling
temperature
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JP2000190996A
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Reiko Sugihara
玲子 杉原
Hideki Matsuoka
秀樹 松岡
Tatsuhiko Hiratani
多津彦 平谷
Yasushi Tanaka
靖 田中
Kenji Tawara
健司 田原
Yasuyuki Takada
康幸 高田
Kenichi Mitsuzuka
賢一 三塚
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い非履歴透磁率を有し、地磁気ドリフトに
よる色ずれを抑制して高精細な画像を得るために有効な
磁気シールド用鋼板およびその製造方法を提供するこ
と。 【解決手段】 磁気シールド用鋼板は、重量%で、C:
0.005%以上0.025%未満、Si:0.3%未
満、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:
0.04%以下、Sol.Al:0.1%以下、N:
0.01%以下を含み、残部が実質的にFeからなり、
板厚が0.05mm以上0.5mm以下の鋼板であっ
て、調質圧延相当歪みが0.1%以上1.5%以下、保
磁力が238.8A/m(3.0Oe)未満、非履歴透
磁率が8500以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー陰極線管の
内部または外部にあって、電子線の通過方向に対して側
面から覆うように設置される磁気シールド部品の素材と
して好適な磁気シールド用鋼板およびその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】カラー陰極線管の基本構成は、電子線を
射出する電子銃および電子線照射により発光して映像を
構成する蛍光面からなる。電子線は地磁気の影響によっ
て偏向し、その結果映像に色ずれを生じさせるため、偏
向を防止するための手段として、一般的に内部磁気シー
ルド(インナーシールド、インナーマグネティックシー
ルドとも称する)が設置されている。また、外部磁気シ
ールド(アウターシールド、アウターマグネティックシ
ールドとも称する)が、カラー陰極線管外部に設置され
る場合もある。以下、これらの内部磁気シールドおよび
外部磁気シールドを総称して磁気シールドと称する。
【0003】近年、民生用TVは大型化、ワイド化が進
められ、電子線の飛行距離および走査距離が大きくな
り、地磁気による影響を受けやすくなっている。すなわ
ち、地磁気により偏向した電子線の蛍光面到達地点の、
本来到達すべき地点からのずれ(地磁気ドリフトと称さ
れる)が従来より大きくなっている。また、パーソナル
コンピュータ用の陰極線管では、より高精細の静止画像
が求められるため、地磁気ドリフトによる色ずれは極力
抑制しなければならない状況である。
【0004】このような中で、従来は、上記磁気シール
ド用として使用される鋼板の特性については、ほぼ地磁
気に相当する低磁場での透磁率や、保磁力、残留磁束密
度を指標として評価される場合が多かった。
【0005】磁気シールド用鋼板の特性を改善する方法
として、特開平10−168551号公報では、特定の
組成の鋼を用いてフェライト結晶粒度番号を3〜20μ
mとすることにより磁気特性を改善する技術が開示され
ており、シールド用冷延鋼板として求められる磁気特性
として、保磁力が3.0Oe(239A/m)以上、残
留磁束密度が9kG(0.9T)以上の調質圧延の圧延
歪みを持たない磁気シールド材およびその製造方法が開
示されている。
【0006】また、電子情報通信学会論文誌、Vol.J79-
C-II No.6, p311〜319, ’96.6では、磁気シールド
性向上のため、非履歴透磁率と磁気シールド性の関係に
ついて述べられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
10−168551号公報記載の技術においては、実際
のカラー陰極線管に適用された磁気シールド用鋼板は地
磁気中で消磁されるのが一般的であり、地磁気中消磁に
より鋼板の磁気特性が変化するにも関わらず、その特性
変化を考慮に入れていないため、磁気シールド性が不十
分であるという問題があった。また、特開平10−16
8551号公報記載の技術においては、調質圧延の圧延
歪みを持たないことが磁気特性を確保するために必要で
あるとしているが、全く圧延歪みを持たない鋼板は、通
板時あるいは磁気シールド部品加工時に腰折れ等の欠陥
を生じやすいという問題があった。
【0008】また、電子情報通信学会論文誌、Vol.J79-
C-II No.6, p311〜319, ’96.6では、上記の非履歴
透磁率と磁気シールド性能の関係について検討がなされ
ているが、どのような鋼板が高い非履歴透磁率を有する
のか等の詳細な検討については、明らかにされていな
い。
【0009】このようにいずれの技術も、近年の民生用
TVの大型化、ワイド化に伴う色ずれによる映像劣化に
対して対応しきれていない。また、パーソナルコンピュ
ータ用の陰極線管に対する色ずれも抑制しきれていな
い。
【0010】このような理由から、より高性能の磁気シ
ールド性を有する磁気シールド用鋼板が強く求められて
いるのが現状である。
【0011】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたも
のであって、高い非履歴透磁率を有し、地磁気ドリフト
による色ずれを抑制して高精細な画像を得るために有効
な磁気シールド用鋼板およびその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】一般にカラー陰極線管で
は、使用環境における外部磁気の影響を一定の条件とす
るため、消磁を行っており、消磁を行う方法としては、
電源投入時等に、陰極線管外部に巻かれた消磁コイルに
交流通電する方法が採用されている。この方法では、地
磁気中で消磁されるため、陰極線管内部の磁気シールド
には、地磁気に対する磁化よりも高いレベルの磁化が残
留することになる。この現象により、磁気シールドは完
全消磁された状態よりもさらに高性能なシールド特性を
有する。したがって、電子情報通信学会論文誌、Vol.J7
9-C-II No.6, p311〜319, ’96.6に述べられているよ
うに、磁気シールド用途に適した鋼板とは、地磁気中で
消磁後の残留磁化を地磁気で除した「非履歴透磁率」が
高い鋼板なる。そこで、本発明者等は、上記知見をもと
に種々の成分を有する鋼板について、直流バイアス磁界
27.9A/m(0.35Oe)における非履歴透磁率
を調査し、磁気シールド用として優れた鋼板について検
討した。
【0013】その結果、 従来は、評価指標の一つである低磁場(たとえば2
7.9A/m(0.35Oe))での比透磁率(以下μ
0.35と称する)が比較的高い極低炭素系の鋼板が磁気シ
ールドとして多く用いられてきたが、μ0.35の高い極低
炭素鋼板が必ずしも非履歴透磁率が高いとは限らないこ
と 従来ほとんど使用されていなかった、比較的C量が大
きい鋼板(C量:0.005〜0.025%)であって
も、セメンタイト(FeC)が存在する場合に、高い
非履歴透磁率が得られること 鋼板を磁気シールドとして使用する時には、非履歴透
磁率が8500以上であれば、色ずれを実用上問題ない
レベルまで低減できること C量の増大は、保磁力を増大し、消磁方法(消磁電流
の大きさ、消磁振幅の大きさ等)によっては消磁が完全
に行われず、非履歴透磁率が十分に高い鋼板であっても
消磁後の磁化が不十分となり、色ずれを抑制できない場
合があること。そして、従来の消磁方法で完全に消磁を
行うためには、保磁力238.8A/m(3.0Oe)
未満が必要であること を見出した。そして本発明者等はこのような知見にさら
に検討を加え、本発明を完成するに至った。
【0014】すなわち、第1発明は、重量%で、C:
0.005%以上0.025%未満、Si:0.3%未
満、Mn:1.5%以下、P:0.05%以下、S:
0.04%以下、Sol.Al:0.1%以下、N:
0.01%以下を含み、残部実質的にFeからなり、板
厚が0.05mm以上0.5mm以下の鋼板であって、
調質圧延相当歪みが0.1%以上1.5%以下、保磁力
が238.8A/m(3.0Oe)未満、非履歴透磁率
が8500以上であることを特徴とする磁気シールド用
鋼板を提供する。
【0015】第2発明は、重量%で、C:0.005%
以上0.025%未満、Si:0.3%未満、Mn:
1.5%以下、P:0.05%以下、S:0.04%以
下、Sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以
下、B:0.0003%以上0.01%以下を含み、残
部実質的にFeからなり、板厚が0.05mm以上0.
5mm以下の鋼板であって、調質圧延相当歪みが0.1
%以上1.5%以下、保磁力が238.8A/m(3.
0Oe)未満、非履歴透磁率が8500以上であること
を特徴とする磁気シールド用鋼板を提供する。
【0016】第3発明は、第1発明または第2発明にお
いて、鋼板の表面に、Crめっき層および/またはNi
めっき層を有することを特徴とする磁気シールド用鋼板
を提供する。
【0017】第4発明は、第1発明または第2発明に記
載の成分組成を有する鋼スラブを、直接、または再加熱
し、仕上温度がAr変態点以上で熱間圧延を行い、7
00℃以下の温度で巻き取り、酸洗し、70%以上94
%以下の圧延率で冷間圧延し、540℃以上780℃以
下の温度で焼鈍し、圧延率0.1%以上1.5%以下の
調質圧延を施すことを特徴とする磁気シールド用鋼板の
製造方法を提供する。
【0018】第5発明は、第1発明または第2発明に記
載の成分組成を有する鋼スラブを、直接、または再加熱
し、仕上温度がAr変態点以上で熱間圧延を行い、7
00℃以下の温度で巻き取り、酸洗し、70%以上94
%以下の圧延率で冷間圧延し、540℃以上780℃以
下の温度で焼鈍し、圧延率0.1%以上1.5%以下の
調質圧延を行い、Crめっきおよび/またはNiめっき
を施すことを特徴とする磁気シールド用鋼板の製造方法
を提供する。
【0019】なお、本発明において、「残部実質的にF
eからなる」とは、不可避不純物、および本発明の効果
に影響を与えない他の微量添加元素を含むことを許容す
るものである。また、以下の説明において、鋼の成分を
示す%はすべて重量%である。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。まず、鋼の成分組成について説明する。本発明
の磁気シールド用鋼板は、重量%で、C:0.005%
以上0.025%未満、Si:0.3%未満、Mn:
1.5%以下、P:0.05%以下、S:0.04%以
下、Sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以
下、またはこれらに加えてB:0.0003%以上0.
01%以下とする成分組成を有する。以下、各成分をこ
のように規定した理由について説明する。
【0021】C:0.005%以上0.025%未満 Cは、その含有量規定が最も重要な元素である。一般的
にはFeCが析出するとμ0.35を下げるため磁気シー
ルド用鋼板には有害な元素とされている。しかしなが
ら、上記のように、本発明者等が検討した結果、Fe
Cが存在することにより低磁場での透磁率は劣化する
が、非履歴透磁率は向上することが明らかになった。し
たがって、従来のように炭素量を極微量(例えば0.0
030%以下)に制御する必要はなく、下限はFe
を析出し始める0.005%とする。一方、C量が過剰
に大きい場合、保磁力が増大し、非履歴透磁率を発揮さ
せるに十分な消磁条件に制約が生じるので好ましくな
く、保持力を238.8A/m(3.0Oe)未満とす
るために、上限については0.025%未満とする。
【0022】Si:0.3%未満 Siは焼鈍時に表面に濃化しやすく、めっきの密着性を
劣化させるので望ましくなく、0.3%未満とする。
【0023】Mn:1.5%以下 Mnは、鋼板の強度を高めて鋼板のハンドリング性を改
善するのに有効な元素であるが、過度に添加するとコス
トが増大するので1.5%以下とする。
【0024】P:0.05%以下 Pは、鋼板の強度を高めるのに有効な元素であるが、添
加量が多すぎると、偏析によって製造中に割れが生じや
すくなるため0.05%以下とする。
【0025】S:0.04%以下 Sは、少ない方が陰極線管内部の真空度を保つ観点から
望ましく、0.04%以下とする。
【0026】Sol.Al:0.1%以下 Alは、脱酸に必要な元素であるが、過度に多量に添加
すると介在物が増加するため望ましくなく、Sol.A
l量の上限を0.1%とする。
【0027】N:0.01%以下 Nは、多量に添加すると鋼板表面に欠陥が発生しやすく
なるため、0.01%以下とする。
【0028】B:0.0003%以上0.01%以下 Bは、非履歴透磁率を増大させる重要な元素であり、添
加することが好ましい。B量が0.0003%未満では
その効果が有効に発揮されず、0.01%を超えて過剰
に添加した場合には、非履歴透磁率向上効果が飽和する
一方で、再結晶温度を上昇させたり、鋼板が過度に硬質
化するなどの問題を生じる。このため、Bを添加する場
合には、その添加量を0.0003%以上0.01%以
下とする。
【0029】次に、板厚について説明する。本発明にお
ける鋼板の板厚は、0.05mm以上0.5mm以下と
する。磁気シールド鋼板としての板厚下限は、薄肉化し
すぎると非履歴透磁率の高い鋼板であっても磁気シール
ド性が不十分となること、また、磁気シールド部品とし
ての剛性が得られなくなることから、0.05mmとし
た。一方、磁気シールド性を高めるためには板厚は大き
い方が望ましいが、昨今のカラーテレビの大型化、ワイ
ド化に伴い、テレビセットの軽量化が望まれているた
め、上限を0.5mmとした。
【0030】次に、調質圧延相当歪みについて説明す
る。本発明では鋼板の調質圧延相当歪みを0.1%以上
1.5%以下とする。通板時あるいは磁気シールド部品
加工時に腰折れ等の欠陥を生じないためには、鋼板が調
質圧延相当歪みを有することが必要である。その効果は
調質圧延相当歪みが0.1%以上のときに得られる。し
かしながら、調質圧延相当歪みが過度に大きいと非履歴
透磁率が劣化するため、上限を1.5%とする。さらに
望ましくは1.0%以下である。
【0031】次に、保磁力について説明する。保磁力
は、過度に大きくなると、十分な磁気シールド性を発揮
するために必要な消磁電力や消磁振幅を大きくし、消磁
方法が限定される場合があるため、小さい方が望まし
く、238.8A/m(3.0Oe)未満とすることが
必要である。したがって、鋼板の保磁力を238.8A
/m(3.0Oe)未満とする。
【0032】次に、非履歴透磁率について説明する。磁
気シールド材の非履歴透磁率はカラー陰極線管の色ずれ
を評価するのに有効な指標である。非履歴透磁率は以下
の方法により求められる。 1)励磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を完
全消磁する。 2)バイアス磁界用コイルに直流電流を流してH(A
/m)の直流バイアス磁界を発生させた状態で、再度励
磁コイルに減衰する交流電流を流して試験片を消磁す
る。 3)H(A/m)の直流バイアス磁界中で消磁した状
態での磁束密度と、直流バイアス磁界なしで完全消磁し
た状態での磁束密度との差ΔB(T)を測定する。 4)以下の式〔1〕により非履歴透磁率を算出する。 非履歴透磁率=79.6×10×ΔB/H・・・式〔1〕 本願明細書中では、式〔1〕において、Hを27.9
A/m(0.35Oe)としたときの値を非履歴透磁率
と記述する。なお、式〔1〕において定数79.6×1
を乗じるのは、磁気シールド性能の指標として従来
から広く用いられている比透磁率との比較を容易にする
ためである。上述の方法で求められた非履歴透磁率が8
500以上の磁気シールド材を用いれば、大型あるいは
高精細のカラー陰極線管であっても、色ずれを実用上問
題のない範囲に低減することができる。したがって、鋼
板の非履歴透磁率は8500以上とする。
【0033】次に、めっきについて説明する。Crめっ
き層および/またはNiめっき層を有することが錆防止
の観点から望ましい。めっき層は単層であっても複層化
してもよく、めっき層を形成する面は鋼板の一方の面で
あっても両方の面であってもよい。めっき層は、錆発生
を抑制するばかりでなく、陰極線管に組み込まれたとき
に鋼板からのガス発生を抑制する上でも有効である。付
着量については特に規定する必要はなく、鋼板表面を実
質的に被覆することができる程度の付着量を適宜選択す
ればよい。また、部分的にまたは全面にNiめっきを施
した後にクロメート処理を施して鋼板表面を被覆しても
よい。
【0034】次に、製造方法について説明する。最初
に、上記成分組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造し
て得られた鋼スラブを熱間圧延する。熱間圧延は、鋼ス
ラブを直接あるいは若干加熱して圧延してもよいし、一
旦冷却したスラブを再加熱してから圧延してもよい。再
加熱する場合の加熱温度は1050℃以上1300℃以
下が望ましい。1050℃未満では熱間圧延時に仕上温
度をAr変態点以上とすることが困難となる。また、
1300℃を超えると、スラブ表面に発生する酸化物量
が多くなり、望ましくない。熱間圧延の仕上温度は、熱
間圧延後の結晶粒径を均一にするため、Ar変態点以
上とする。巻取温度は700℃以下とする。巻取温度が
700℃を超えると、熱間圧延後の結晶粒界にFe
がフィルム状に析出し、均一性を損なうため好ましくな
い。
【0035】次いで、熱間圧延した鋼板を酸洗し、70
%以上94%以下の圧延率で冷間圧延する。70%未満
では焼鈍後の結晶粒が粗大になり、鋼板が過度に軟質化
して望ましくない。また冷間圧延率が高すぎると、非履
歴透磁率が劣化するため好ましくなく、上限を94%と
する。さらに望ましくは90%以下である。
【0036】次いで540℃以上780℃以下の温度で
焼鈍(再結晶焼鈍)する。焼鈍方法としては、連続焼鈍
法、箱形焼鈍法のいずれの方法でも良い。焼鈍温度が5
40℃未満では完全に再結晶が終了せず、冷間圧延歪み
が残留するため好ましくない。連続焼鈍法を適用する場
合、箱形焼鈍法に比べ焼鈍時間が短いため、焼鈍温度が
低いと完全に再結晶を終了させるためにライン速度を低
速に調整する必要が生じ、生産効率を低下させるので好
ましくない。したがって、連続焼鈍法では焼鈍温度を6
00℃以上とすることが好ましい。また、焼鈍温度が過
度に高いと、非履歴透磁率が劣化するので好ましくな
く、上限を780℃とする。
【0037】次いで、焼鈍後、圧延率0.1%以上1.
5%以下の調質圧延を施す。通板時あるいは磁気シール
ド部品加工時に腰折れ等の欠陥を生じないためには、鋼
板に0.1%以上の調質圧延相当歪みを導入する必要が
あるため、調質圧延の圧延率は0.1%以上とする。調
質圧延相当歪みが1.5%を超えると非履歴透磁率が劣
化するため、圧延率の上限を1.5%とする。さらに望
ましくは1.0%以下である。
【0038】
【実施例】表1に示す成分を有する供試鋼を溶製後、連
続鋳造して鋼スラブとした後、鋼A、Bは仕上温度89
0℃、巻取温度620℃で、鋼C、D、Eは仕上温度8
70℃、巻取温度620℃で各々熱間圧延し、酸洗し、
冷間圧延率75〜94%で冷間圧延を行い板厚を0.1
〜0.5mmとした。次いで540〜850℃で再結晶
焼鈍し、そのまま、または一部についてはさらに0.1
〜2.0%の調質圧延を施した鋼の両面にCrめっきを
施して供試材を得た。Crめっきは下層が付着量95〜
120mg/m2の金属Cr層、上層が付着量(金属C
r換算)12〜20mg/m2の水和酸化物Cr層とし
た。
【0039】以上のようにして得られた供試材につい
て、非履歴透磁率、比透磁率(μ0.35)、残留磁束密度
および保磁力を評価した。これらの性能評価は、リング
状試験片に励磁コイル、検出コイルおよび直流バイアス
磁界用のコイルを巻いて、非履歴透磁率、27.9A/
m(0.35Oe)における比透磁率(μ0.35)、最大
印可磁界796A/m(10Oe)のときの残留磁束密
度、保磁力を測定して行った。鋼種、板厚、冷間圧延
率、焼鈍温度、調質圧延相当歪み、腰折れ欠陥の有無お
よび磁気特性評価結果を併せて表2に示す。なお、非履
歴透磁率測定方法については前述した通りである。
【0040】表2に示すように、鋼の成分組成、板厚、
冷間圧延率、焼鈍温度および調質圧延相当歪みを全て本
発明の範囲内とした実施例であるNo.3〜8,10〜
14,16〜20,22の供試材においては、いずれも
非履歴透磁率が8500以上であり、かつ保磁力が23
8.8A/m(3.0Oe)未満となり、消磁後の磁気
シールド性は十分であり、かつ、腰折れ欠陥を生じるこ
とがなくハンドリング性も良好であった。
【0041】これに対して、いずれかの条件を本発明の
範囲外とした比較例であるNo.1,2,9,15,2
1,23の供試材は、いずれかの特性が劣っていた。具
体的には、調質圧延を施さず、調質圧延相当歪みを0.
0%としたNo.2,9の供試材は、磁気特性は良好で
あるものの腰折れ欠陥が発生し、ハンドリング性が劣っ
ていた。また、調質圧延相当歪みが2.0%と大きいN
o.15の供試材は、非履歴透磁率が劣り磁気シールド
性が不十分であり、また、保磁力も本発明範囲を超えて
いて消磁特性も劣っていた。焼鈍温度が本発明範囲を超
えて高いNo.21の供試材は、非履歴透磁率が劣り磁
気シールド性が不十分であり、また、保磁力も本発明範
囲を超えていて消磁特性も劣っていた。C量が本発明範
囲よりも少量であるNo.1の供試材においては、非履
歴透磁率が低く、磁気シールド性が不十分であった。ま
た、C量が本発明範囲を超えて過剰に添加されたNo.
23の供試材は、保磁力が本発明範囲を超えており、消
磁特性が劣化していた。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば高い
非履歴透磁率を有し、保磁力が優れ、消磁後の磁気シー
ルド性に優れた鋼板を得ることができる。さらに、本発
明による鋼板をカラー陰極線管の磁気シールドとして用
いることによって、消磁後、十分な磁気シールド性が確
保され、さらに地磁気ドリフトによる色ずれが抑制され
る。よって、高精細な画像を得るために有効な磁気シー
ルド用鋼板が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C25D 5/26 C25D 5/26 A J 7/00 7/00 K 7/06 7/06 B H01F 1/16 H01F 1/16 Z (72)発明者 平谷 多津彦 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 田中 靖 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 田原 健司 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 高田 康幸 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 三塚 賢一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K024 AA02 AA03 AB01 AB02 BA03 BB09 BB14 BC01 GA16 5E041 AA11 AA19 BC01 CA06 HB07 HB11 HB14 NN01 NN06 NN12 NN14 NN17 NN18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.005%以上0.0
    25%未満、Si:0.3%未満、Mn:1.5%以
    下、P:0.05%以下、S:0.04%以下、So
    l.Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含み、
    残部実質的にFeからなり、板厚が0.05mm以上
    0.5mm以下の鋼板であって、調質圧延相当歪みが
    0.1%以上1.5%以下、保磁力が238.8A/m
    (3.0Oe)未満、非履歴透磁率が8500以上であ
    ることを特徴とする磁気シールド用鋼板。
  2. 【請求項2】 重量%で、C:0.005%以上0.0
    25%未満、Si:0.3%未満、Mn:1.5%以
    下、P:0.05%以下、S:0.04%以下、So
    l.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:
    0.0003%以上0.01%以下を含み、残部実質的
    にFeからなり、板厚が0.05mm以上0.5mm以
    下の鋼板であって、調質圧延相当歪みが0.1%以上
    1.5%以下、保磁力が238.8A/m(3.0O
    e)未満、非履歴透磁率が8500以上であることを特
    徴とする磁気シールド用鋼板。
  3. 【請求項3】 鋼板の表面に、Crめっき層および/ま
    たはNiめっき層を有することを特徴とする請求項1ま
    たは請求項2に記載の磁気シールド用鋼板。
  4. 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の成分組
    成を有する鋼スラブを、直接、または再加熱し、仕上温
    度がAr変態点以上で熱間圧延を行い、700℃以下
    の温度で巻き取り、酸洗し、70%以上94%以下の圧
    延率で冷間圧延し、540℃以上780℃以下の温度で
    焼鈍し、圧延率0.1%以上1.5%以下の調質圧延を
    施すことを特徴とする磁気シールド用鋼板の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1または請求項2に記載の成分組
    成を有する鋼スラブを、直接、または再加熱し、仕上温
    度がAr変態点以上で熱間圧延を行い、700℃以下
    の温度で巻き取り、酸洗し、70%以上94%以下の圧
    延率で冷間圧延し、540℃以上780℃以下の温度で
    焼鈍し、圧延率0.1%以上1.5%以下の調質圧延を
    行い、Crめっきおよび/またはNiめっきを施すこと
    を特徴とする磁気シールド用鋼板の製造方法。
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