JP2002003987A - 溶接性と低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼およびその製造方法 - Google Patents

溶接性と低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼およびその製造方法

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JP2002003987A
JP2002003987A JP2000191513A JP2000191513A JP2002003987A JP 2002003987 A JP2002003987 A JP 2002003987A JP 2000191513 A JP2000191513 A JP 2000191513A JP 2000191513 A JP2000191513 A JP 2000191513A JP 2002003987 A JP2002003987 A JP 2002003987A
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toughness
weldability
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Yoshiyuki Watabe
義之 渡部
Yoshio Terada
好男 寺田
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Nippon Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 耐震性能を要求される建築用鋼や異種液化ガ
スを混載する各種タンク用鋼などとして、溶接性と低温
靭性に優れた低降伏比高張力鋼およびその製造方法を提
供する。 【解決手段】 板厚方向断面1/4厚位置の鋼組織が、
マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト
混合相を一定量含み、その相の個々の90%以上が円相
当直径で4μm以下、かつ、アスペクト比が4以上であ
って、引張試験において降伏点が出ないこと、また、こ
れを実現するために、C、Si、Mn、P、S、Nb、
Ti、Al、を含み、必要に応じCu、Ni、Cr、M
o等を含有し、かつ、PCMが0.25%以下の鋳片また
は鋼片を、1000〜1250℃の温度に加熱し、オー
ステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上
として720点以上の温度で熱間圧延を終了した後、6
80℃以上の温度からの冷却を制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐震性の観点から
高靭性と低降伏比を要求される建築用鋼や、各種タンク
用鋼として、搭載される内容物が複数にわたる場合、内
容物に応じた複合特性として、低温靭性と低降伏比とを
同時に要求される高張力鋼およびその製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】建築用鋼材は、弾性設計(許容応力度設
計)から、1981年6月に施行された新耐震設計基準
に基づく終局耐力設計への移行に伴い、低降伏比が求め
られている。低降伏比化を達成するため、一般に、鋼組
織の二相(Dual phase)化、すなわち、降伏
を支配する軟質相(通常、フェライト)と引張強さを確
保するための硬質相(パーライト、ベイナイト、マルテ
ンサイトなど)を形成させる方法が広く用いられてい
る。具体的には、制御圧延を含む熱間圧延後の鋼または
焼入後の鋼を、フェライトとオーステナイトの二相域温
度に再加熱して、フェライトとCが濃化されたオーステ
ナイトとし、その後空冷以上の冷速で冷却(、さらにそ
の後焼き戻し処理)する方法が特開平2−266378
号公報などに開示されている。このとき、成分的には、
C量が高いほど二相組織化が容易となるばかりでなく、
硬質相がより硬化し、低降伏比化が容易となる。しか
し、高C化は、溶接性や低温靭性には不利となるという
問題があった。それに対して、低温靭性を改善するため
には、低C化や制御圧延が有効ではあるが、いずれも降
伏比が上昇するため、低温靭性向上と低降伏比化とは相
容れず、両立がきわめて困難であった。従来、建築用途
では、靭性要求レベルが低く、低降伏比化に有利な高C
鋼でも特に問題となることはなかったが、阪神大震災を
契機とした近年の耐震性能への要求の厳格化傾向には、
必ずしも十分に対応できないという問題があった。
【0003】また、液化ガス貯槽用タンクに使用される
鋼材では、液化ガスの種類によって異なるが、ガスの液
化温度は一般に常圧では低温(LPGの場合、−48
℃)であるため、母材はもちろん溶接継手部においても
優れた低温靭性が要求される。これに対し、特開昭63
−290246号公報には6.5〜12.0%のNiを
添加する方法や、特開昭58−153730号公報には
特定組成の鋼を焼入れ焼戻し処理を行って、焼戻しマル
テンサイトとベイナイトの強靭性を利用する方法が開示
されている。一方で、液体アンモニアは鋼材の応力腐食
割れ(SCC)を引き起こすことが知られ、IGC C
ODE 17.13(International C
ode for the Construction
and Equipment of Ships Ca
rrying LiquefiedGases in
Bulk)では、酸素分圧、温度などの貯槽時の操業条
件を規制するとともに、鋼材のNi含有量を5%以下に
制限することや実降伏強さを440N/mm2以下に抑
えることなどを規定している。このため、特開平4−1
7613号公報では表層のみ軟化処理した鋼板や、特開
昭57−139493号公報では軟鋼クラッド鋼と軟質
溶接最終層によるタンク製造方法などが開示されてい
る。
【0004】しかし、上記LPGと液体アンモニアを混
載するタンクでは、当然のことながら両者に要求される
仕様を満足する必要がある。一方、タンクの大容量化や
船舶に搭載されることの多いこの種のタンクにおいては
高張力化が求められており、LPGからの優れた低温靭
性と液体アンモニアからの降伏強さの上限規制に伴う低
降伏比化の同時達成が大きな課題となっていた。
【0005】さらに、マルテンサイトまたはマルテンサ
イト−オーステナイト混合相(M−A constit
uents)は、硬く、脆いために、低温靭性上有害と
され、極力生成しないよう鋼成分、製造条件を限定する
か、生成した場合には焼き戻しなど熱処理により分解す
ることが、半ば常識とされており、積極的にマルテンサ
イトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(M
−A constituents)が利用されることは
なかった。なお、本発明で規定するマルテンサイトまた
はマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A c
onstituents)は、島状マルテンサイトある
いはM*などとも呼ばれるもので、その相(組織)の識
別のための現出法(エッチング法)については後述す
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、優れた溶接
性、低温靭性と同時に高強度で低降伏比を図るために、
鋼組織中のマルテンサイトまたはマルテンサイト−オー
ステナイト混合相(M−A constituent
s)の組織分率、サイズなどの存在形態を限定し、引張
試験において降伏点が出ないこととし、これを実現する
ために鋼成分や製造条件を限定することを特徴とする。
【0007】本発明によれば、耐震性に優れた建築用鋼
や、液体アンモニアとLPGなどとの混載タンク用とし
て低温靭性と低降伏比とを両立した鋼を大量かつ安価に
供給でき、特に高強度化も可能としたため、該タンクの
船舶への搭載も容易となった。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の基本的な考え方
は、これまで靭性上有害とされたマルテンサイトまたは
マルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A co
nstituents)の分率、サイズ、形状などの存
在形態を規定し、引張試験時に降伏点を出ないようにす
ることで、低温靭性を損ねずに低降伏比化するもので、
このために、Nbを含有する特定の成分の鋼を、制御圧
延−加速冷却することで組織を微細化して強度、靭性を
確保するとともに、その加速冷却を比較的低温で停止す
ることでマルテンサイトまたはマルテンサイト−オース
テナイト混合相(M−A constituents)
を微細に生成させるというものである。
【0009】本発明の要旨は、以下に示す通りである。
【0010】(1) 板厚方向断面1/4厚位置の鋼組
織において、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オ
ーステナイト混合相(M−A constituent
s)を観察断面の面積分率で1〜10%を含み、その相
の個々の90%以上が、円相当直径で4μm以下、か
つ、アスペクト比が4以上であって、引張試験において
降伏点が出ないことを特徴とする溶接性と低温靭性に優
れた低降伏比高張力鋼。
【0011】(2) 鋼成分が質量%で、C:0.03
〜0.15%、Si:0.4%以下、Mn:1.0〜
2.0%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、
Nb:0.005〜0.05%、Ti:0.005〜
0.025%、Al:0.06%以下、N:0.001
〜0.005%、かつ PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni
/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B が0.25%以下、残部が鉄および不可避的不純物から
なることを特徴とする上記(1)記載の溶接性と低温靭
性に優れた低降伏比高張力鋼。
【0012】(3) 質量%で、Cu:0.05〜0.
5%、Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜
0.5%、Mo:0.05〜0.5%、V:0.01〜
0.05%B:0.0002〜0.003%、Mg:
0.0002〜0.005%の範囲で1種または2種以
上をさらに含有することを特徴とする上記(2)に記載
の溶接性と低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼。
【0013】(4) 質量%で、Ca:0.0005〜
0.004%、REM:0.0005〜0.004%の
いずれか1種をさらに含有することを特徴とする上記
(2)または(3)に記載の溶接性と低温靭性に優れた
低降伏比高張力鋼。
【0014】(5) 上記(2)〜(4)のいずれか1
項に記載の鋼組成からなる鋳片または鋼片を、1000
〜1250℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶
温度域での累積圧下量を30%以上として720点以上
の温度で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度か
ら加速冷却を開始し、150〜350℃の温度で加速冷
却を停止した後放冷することを特徴とする、板厚方向断
面1/4厚位置の鋼組織において、マルテンサイトまた
はマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A c
onstituents)を観察断面の面積分率で1〜
10%を含み、その相の個々の90%以上が、円相当直
径で4μm以下、かつ、アスペクト比が4以上であっ
て、引張試験において降伏点が出ないことを特徴とする
溶接性と低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方
法。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明が、請求項の通りに鋼組
織、鋼組成および製造方法を限定した理由について説明
する。
【0016】鋼組織は、板厚方向断面1/4厚位置にお
いて、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステ
ナイト混合相(M−A constituents)を
観察断面の面積分率で1〜10%を含むことを第一の構
成要素とする。このマルテンサイトまたはマルテンサイ
ト−オーステナイト混合相(M−A constitu
ents)は、高転位密度で、Cが濃縮された非常に硬
い相であるため、この相の存在により引張試験時に低応
力で転位が動き始め、応力−歪み曲線上は、降伏点の存
在しないラウンドなカーブを描く。マルテンサイトまた
はマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A c
onstituents)の組織分率が上記限定範囲で
あっても、マトリックスの組織によっては(例えばフェ
ライト組織)、降伏点が出現するケースもあり、「引張
試験において降伏点が出ないこと」を構成要素の一つと
した。これは、具体的には、引張試験において、荷重−
伸び曲線がラウンドなカーブを描くことを意味し、降伏
点が出ないことが、高張力化と低降伏比化を両立するた
めには必須である。降伏点が出ない、ラウンドな荷重−
伸び曲線においては、降伏強さとして一般に0.2%耐
力が採られ、降伏点が出る同一の引張強さの鋼と比較し
た場合、降伏強さは低くなり、結果として降伏比も低く
なる。
【0017】引張試験において降伏点が出ないための条
件としてマトリックスの組織を規定することは、マルテ
ンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相
(M−A constituents)の硬さや構成分
率などにも依存するため一概に言えないばかりでなく、
それらの組織の記述があいまいであること(多種多様な
組織を正確に記述することが不可能)などの理由から、
発明の構成要素としては不適当と判断した。マルテンサ
イトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相(M
−A constituents)の構成分率(観察断
面の面積分率)の下限1%は、引張試験時に低応力で転
位が動き始めるのに必要な最低限の量で、上限の10%
は、靭性を必要以上に劣化させない限界量である。ただ
し、低温靭性の観点からは、マルテンサイトまたはマル
テンサイト−オーステナイト混合相(M−A cons
tituents)の構成分率(観察断面の面積分率)
を上記のように限定しただけでは不十分である。塊状に
大きな単位(サイズ)で存在した場合、破壊起点として
作用し、靭性が劣化するため、本発明では、板厚方向断
面1/4厚位置の観察断面において、マルテンサイトま
たはマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A
constituents)の個々の90%以上が円相
当直径で4μm以下で、かつ、その形状を定義する長軸
と短軸との比=アスペクト比が4以上に限定した。これ
らの数値は発明者らの実験事実に基づくものである。要
は、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナ
イト混合相(M−A constituents)の分
率とサイズのみ規定しても、その形状が適正でないと低
温靭性を劣化させることになる。マルテンサイトまたは
マルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A co
nstituents)は、同一のサイズ(円相当直
径)であれば、塊状よりもアスペクト比が大きい状態で
存在する方が低温靭性上有利で、究極的には、厚みのほ
とんどないフィルム状が最も好ましいが、実質的には、
アスペクト比が4以上であれば低温靭性上の劣化は少な
い。なお、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オー
ステナイト混合相(M−A constituent
s)の識別のための組織現出法は、LePera氏によ
って開発されたエッチング法(Journal of
Metals、March、1980、p.38)をベ
ースとする方法が最適であり、このエッチングにより、
マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイト
混合相(M−A constituents)は、白く
現出される。
【0018】次に、本発明のように限定されたマルテン
サイトまたはマルテンサイト−オーステナイト混合相
(M−A constituents)を得、引張試験
において降伏点が出ないようにする上で、最適な鋼成分
の限定理由について説明する。
【0019】Cは鋼材の特性に最も顕著に効くもので、
下限0.03%は強度確保や溶接などの熱影響部が必要
以上に軟化することのないようにするための最小量であ
る。しかし、C量が多すぎると焼入性が必要以上に上が
り、鋼材が本来有すべき強度、靭性のバランス、溶接性
などに悪影響を及ぼすため、上限を0.15%とした。
【0020】Siは脱酸上鋼に含まれる元素であるが、
多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上
限を0.4%に限定した。鋼の脱酸はTi、Alのみで
も十分可能であり、HAZ靭性、焼入性などの観点から
低いほど好ましく、必ずしも添加する必要はない。
【0021】Mnは強度、靭性を確保する上で不可欠な
元素であり、その下限は1.0%である。しかし、Mn
量が多すぎると焼入性が上昇して溶接性、HAZ靭性を
劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助
長するので上限を2.0%とした。
【0022】Pは本発明鋼においては不純物であり、P
量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向が
あるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、
溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.02%と
した。
【0023】SはPと同様本発明鋼においては不純物で
あり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好まし
い。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させ
るため上限を0.01%とした。
【0024】Nbはオーステナイトの未再結晶温度を上
昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮す
る上で必須元素で、最低0.005%の添加が必要であ
る。また、焼入れの際の加熱オーステナイトの細粒化に
も寄与する。さらに、析出硬化として、強度向上効果も
有する。しかし、過剰な添加は、溶接部の靭性劣化を招
くため上限を0.05%とした。
【0025】Tiは母材およびHAZ靭性向上のために
必須である。なぜならばTiは、Al量が少ないとき
(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi23
主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の
核となりHAZ靭性を向上させる。また、TiはNと結
合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ
粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また
鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時にHAZ組織を
細粒化するためである。これらの効果を得るためには、
Tiは最低0.005%必要である。しかし多すぎると
TiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、
その上限は0.025%である。
【0026】Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素で
あるが、脱酸はSiまたはTiだけでも十分であり、本
発明鋼においては、その下限は限定しない。しかし、A
l量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶
接金属の靭性が劣化するので上限を0.06%とした。
【0027】Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれ
るものであるが、Nbと結合して炭窒化物を形成して強
度を増加させ、また、TiNを形成して前述のように鋼
の性質を高める。このため、N量として最低0.001
%必要である。しかしながら、N量の増加はHAZ靭
性、溶接性にきわめて有害であり、本発明鋼においては
その上限は0.005%である。
【0028】次に必要に応じて含有することができるC
u、Ni、Cr、Mo、V、B、Mgの添加理由につい
て説明する。
【0029】基本となる成分に、さらにこれらの元素を
添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なう
ことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためであ
る。したがってその添加量は自ずと制限されるべき性質
のものである。
【0030】CuはNiとほぼ同様の効果、現象を示
し、上限の0.5%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は
熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるた
め規制される。下限は実質的な効果が得られるための最
小量とすべきで0.05%である。これは後述するC
r、Moについても同様である。
【0031】Niは過剰に添加しなければ、溶接性、H
AZ靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を
向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なく
とも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な
添加は高価なだけでなく、溶接性に好ましくない。ま
た、Niを多く添加すると液体アンモニア中で応力腐食
割れ(SCC)を誘起する可能性が指摘されている。発
明者らの実験によれば、1%までの添加は溶接性や液体
アンモニア中でのSCCを大きく劣化させず、強度、靭
性向上効果の方が大きいため、上限を1.0%とした。
【0032】Cr、Moは、母材の強度、靭性をともに
向上させるため、それぞれ0.05%以上必要である。
しかし添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶
接性を劣化を招き、また後述する組織制御が困難となっ
て好ましくないためそれぞれ上限を0.5%とした。
【0033】Vは、Nbとほぼ同様の作用を有するもの
であるが、Nbに比べてその効果は小さい。また、Vは
焼入れ性にも影響を及ぼし、上記元素と同様組織制御の
観点から添加するものである。Nbと同様の効果は0.
01%未満では効果が少なく、上限は0.05%まで許
容できる。
【0034】Bは、オーステナイト粒界に偏析し、フェ
ライトの生成を抑制することを介して、焼入性を向上さ
せ、強度向上に寄与する。この効果を享受するため、最
低0.0002%以上必要である。しかし、多すぎる添
加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、靭性上有害
となるB析出物を形成する可能性もあるため、上限を
0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応
力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱
影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例え
ば、硫化物応力腐食割れ(SCC)防止のためにはHR
C≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのよう
なケースでは焼入性を増大させるB添加は好ましくな
い。
【0035】Mgは、溶接熱影響部においてオーステナ
イト粒の成長を抑制し、細粒化する作用があり、溶接部
の強靭化が図れる。このような効果を享受するために
は、Mgは0.0002%以上必要である。一方、添加
量が増えると添加量に対する効果代が小さくなるため、
コスト上得策ではないので上限は0.005%とした。
【0036】さらに、CaおよびREMは、MnSの形
態を制御し、母材の低温靭性を向上させるほか、湿潤硫
化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SO
HIC)感受性を低減させる。これらの効果を発揮する
ためには、最低0.0005%必要である。しかし、多
すぎる添加は、鋼の清浄度を逆に高め、母材靭性や湿潤
硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、S
OHIC)感受性を高めるため、添加量の上限は0.0
04%に限定した。CaとREMは、ほぼ同等の効果を
有するため、いずれか1種を上記範囲で添加すればよ
い。
【0037】鋼の個々の成分を限定しても、成分系全体
が適切でないと優れた特性は得られない。このため、P
CMの値を0.25%以下に限定する。下記式により規定
されるPCMは溶接性を表す指標で、低いほど溶接性は良
好である。本発明鋼においては、PCMが0.25%以下
であれば、優れた溶接性の確保が可能である。 PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni
/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
【0038】優れた溶接性と低温靭性を確保しつつ、上
述したような、引張試験において、荷重−伸び曲線がラ
ウンドなカーブを描き、降伏点を出さないため、本発明
の通り製造条件を限定することがきわめて有効である。
以下、その理由について説明する。
【0039】圧延に先立つ加熱温度を1000〜125
0℃に限定した理由は、加熱時のオーステナイト粒を小
さく保ち、圧延組織の微細化を図るためである。125
0℃は加熱時のオーステナイトが極端に粗大化しない上
限温度であり、加熱温度がこれを超えるとオーステナイ
ト粒が粗大混粒化し、変態後の組織も粗大化するため鋼
の靭性が著しく劣化する。一方、加熱温度が低すぎる
と、後述する圧延終了温度(Ar3点以上)の確保が困
難となるばかりでなく、オーステナイトの未再結晶温度
を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発
揮させたり、析出硬化を発現させるためのNbの溶体化
の観点から下限を1000℃に限定した。上述のような
条件で加熱した鋳片または鋼片を、オーステナイト未再
結晶温度域での累積圧下量を30%以上とし、720℃
以上で熱間圧延を終了した後、680℃以上の温度から
加速冷却する。
【0040】オーステナイト未再結晶温度域での圧延を
行うことによって、オーステナイト粒を顕著に細粒化す
るため、少なくとも30%以上の累積圧下量が必要であ
る。圧延終了温度が720℃を下回ると、フェライトが
変態析出し、フェライトを加工(圧延)する恐れがあ
り、低降伏比化や低温靭性確保の点で好ましくない。こ
のため、圧延終了温度は、720℃以上に限定する。
【0041】720℃以上で熱間圧延を終了した後、6
80℃以上の温度から加速冷却を開始するのは、変態域
の冷速を早めることで組織を微細化し、強度と靭性を同
時に向上させるためである。また、組織を微細化するこ
とは、C濃縮相であるマルテンサイト−オーステナイト
混合相(M−A constituents)を本発明
の通り微細に生成させる上でも必須である。組織を68
0℃を下回ると、粗大なフェライトが析出し始め、強度
低下や靭性を劣化させるため、680℃以上からの加速
冷却に限定した。この加速冷却は、150〜350℃の
温度で停止しなければならない。350℃を超える温度
では、加速冷却停止後の放冷が実質上の焼き戻しとな
り、強度低下とともに、マルテンサイト−オーステナイ
ト混合相(M−A constituents)が分解
され、結果として降伏点が出るようになり低降伏比化が
できない。一方、加速冷却停止温度が150℃を下回る
と、必要以上にマルテンサイト−オーステナイト混合相
(M−A constituents)が生成する可能
性が高いのに加え、溶接やガス切断などの熱影響による
軟化が顕著になるため、使用性能上好ましくない。この
ため、加速冷却停止温度の下限温度を150℃とした。
【0042】なお、加速冷却時の冷速は、鋼成分や意図
する降伏比、低温靭性レベルによっても変わるため一概
には言えないが、板厚1/4厚位置の加速冷却開始温度
から350℃までの平均冷速で、少なくとも3℃/秒以
上とすることが望ましい。
【0043】
【実施例】転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の
鋼板(厚さ15〜80mm)を製造し、その強度、降伏
比(YR)、靭性および溶接性(斜めy形溶接割れ試
験)を調査した。
【0044】表1に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分
を、表2に鋼板の製造条件と諸特性を示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】本発明法にしたがって製造した鋼板(本発
明鋼)は、すべて良好な特性を有する。これに対し、本
発明によらない比較鋼は、いずれかの特性が劣る。
【0048】比較鋼11は、C量が低く、またNb、T
iが添加されていないのに加え、γ未再結晶温度域にお
ける累積圧下量も小さいために、溶接性は良好であるが
組織の微細化が不十分となって強度が低めで、かつ塊状
のマルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナイ
ト混合相(M−A constituents)比率が
高いこともあって靭性にも劣る。比較鋼12は、成分的
には本発明範囲内にあるものの、水冷停止温度が高いた
め、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステナ
イト混合相(M−A constituents)が生
成されず、結果として降伏点が出現し、降伏強さが高く
なり、降伏比が高い。比較鋼13は、個々の元素の添加
量は本発明範囲内にあるものの、PCMが高いため溶接性
に劣る。また、粗大であったり塊状のマルテンサイトま
たはマルテンサイト−オーステナイト混合相(M−A
constituents)が多く、靭性に劣る。比較
鋼14は、Ti量が高く、製造条件も圧延温度が低く、
水冷開始温度も低いため、降伏点が出現し、降伏強さ、
降伏比ともに高くなり、低温靭性にも劣る。なお、Ti
量の高い比較鋼14では、HAZ靭性も劣ることが確認
されており、使用性能上好ましくない。比較鋼15は、
C量が高く、PCMも高いため溶接性に劣り、加速冷却停
止温度が低いこともあって、マルテンサイトまたはマル
テンサイト−オーステナイト混合相(M−A cons
tituents)分率が高く、また、その粗大なもの
や塊状のものの比率も高いため、靭性が劣っている。さ
らに、加速冷却停止温度の低い本比較鋼15は、溶接時
のHAZ軟化が顕著であることも確認されており、使用
性能上好ましくない。
【0049】
【発明の効果】本発明により、溶接性、低温靭性に優れ
た低降伏比高張力鋼の製造が可能となった。その結果、
耐震性能の優れた建築用、あるいは液体アンモニアとL
PGなどとの混載タンク用として溶接性の優れた鋼材を
大量かつ安価に供給できるようになった。特に高強度化
も可能としたため、該タンクの船舶への搭載も容易とな
った。
フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA00 AA01 AA02 AA04 AA05 AA08 AA11 AA14 AA16 AA19 AA21 AA22 AA23 AA27 AA29 AA31 AA35 AA36 AA40 BA01 CA02 CA03 CC02 CC03 CD05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 板厚方向断面1/4厚位置の鋼組織にお
    いて、マルテンサイトまたはマルテンサイト−オーステ
    ナイト混合相(M−A constituents)を
    観察断面の面積分率で1〜10%を含み、その相の個々
    の90%以上が、円相当直径で4μm以下、かつ、アス
    ペクト比が4以上であって、引張試験において降伏点が
    出ないことを特徴とする溶接性と低温靭性に優れた低降
    伏比高張力鋼。
  2. 【請求項2】 鋼成分が質量%で、C:0.03〜0.
    15%、Si:0.4%以下、Mn:1.0〜2.0
    %、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Nb:
    0.005〜0.05%、Ti:0.005〜0.02
    5%、Al:0.06%以下、N:0.001〜0.0
    05%、かつ PCM=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni
    /60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B が0.25%以下、残部が鉄および不可避的不純物から
    なることを特徴とする請求項1記載の溶接性と低温靭性
    に優れた低降伏比高張力鋼。
  3. 【請求項3】 質量%で、Cu:0.05〜0.5%、
    Ni:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜0.5
    %、Mo:0.05〜0.5%、V:0.01〜0.0
    5%B:0.0002〜0.003%、Mg:0.00
    02〜0.005%の範囲で1種または2種以上をさら
    に含有することを特徴とする請求項2に記載の溶接性と
    低温靭性に優れた低降伏比高張力鋼。
  4. 【請求項4】 質量%で、Ca:0.0005〜0.0
    04%、REM:0.0005〜0.004%のいずれ
    か1種をさらに含有することを特徴とする請求項2また
    は3に記載の溶接性と低温靭性に優れた低降伏比高張力
    鋼。
  5. 【請求項5】 請求項2〜4のいずれか1項に記載の鋼
    組成からなる鋳片または鋼片を、1000〜1250℃
    の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累
    積圧下量を30%以上として720点以上の温度で熱間
    圧延を終了した後、680℃以上の温度から加速冷却を
    開始し、150〜350℃の温度で加速冷却を停止した
    後放冷することを特徴とする、板厚方向断面1/4厚位
    置の鋼組織において、マルテンサイトまたはマルテンサ
    イト−オーステナイト混合相(M−A constit
    uents)を観察断面の面積分率で1〜10%を含
    み、その相の個々の90%以上が、円相当直径で4μm
    以下、かつ、アスペクト比が4以上であって、引張試験
    において降伏点が出ないことを特徴とする溶接性と低温
    靭性に優れた低降伏比高張力鋼の製造方法。
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