JP2001355036A - 成形性に優れた高強度鋼管とその製造方法 - Google Patents
成形性に優れた高強度鋼管とその製造方法Info
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Abstract
を有する高強度鋼管およびその製造方法を提供する 【解決手段】 体積分率で50%以上のフェライトと、
体積分率で3%以上の残留オーステナイトを含む第2相
との複合組織であり、鋼板1/2板厚での板面の{11
0}<110>〜{332}<110>の方位群のX線
ランダム強度比の平均が2.0以上および/または鋼板
1/2板厚での板面の{110}<110>のX線ラン
ダム強度比が3.0以上である成形性に優れた高強度鋼
管とその製造方法。
Description
廻り、メンバーなどに用いられる鋼材で特にハイドロフ
ォーム等に用いられる成形性に優れた高強度鋼管および
その製造方法に関するものである。
強度化が望まれている。高強度化することで板厚減少に
よる軽量化や衝突時の安全性向上が可能となる。また、
最近では、複雑な形状の部位について、高強度鋼の素鋼
板または鋼管からハイドロフォーム法を用いて成形加工
する試みが行われている。これは、自動車の軽量化や低
コスト化のニーズに伴い、部品数の減少や溶接フランジ
箇所の削減などを狙ったものである。
0−175026号公報参照)などの新しい成形加工方
法が実際に採用されれば、コストの削減や設計の自由度
が拡大されるなどの大きなメリットが期待される。この
ようなハイドロフォーム成形のメリットを充分に生かす
ためには、これらの新しい成形法に適した材料が必要と
なる。例えば、第50回塑性加工連合講演大会(199
9、447頁)にあるようにハイドロフォーム成形に及
ぼすr値の影響が示されている。しかしここでは、シユ
レーションによる解析が主で、実際の材料と1対1対応
するものではない。
ロフォーム成形に適した材料開発は実用レベルではほと
んど行われておらず、既存の高r値鋼板や高延性鋼板が
ハイドロフォーム成形に使用されつつある状況と言え
る。本発明では、このようなハイドロフォーム成形に適
した優れた成形性を有する鋼管およびその製造方法を提
供するものである。
組織とミクロ組織を制御することでハイドロフォーム成
形性に優れた材料を提供するものである。即ち、本発明
の要旨とするところは、 (1)ミクロ組織が体積分率で50%以上のフェライト
と、体積分率で3%以上の残留オーステナイトを含む第
2相との複合組織であり、鋼板1/2板厚での板面の
{110}<110>〜{332}<110>の方位群
のX線ランダム強度比の平均が2.0以上、あるいは鋼
板1/2板厚での板面の{110}<110>のX線ラ
ンダム強度比が3.0以上の何れかまたは双方であるこ
とを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管。
以上0.3%以下含みむことを特徴とする前記(1)記
載の成形性に優れた高強度鋼管。
%以下含むことを特徴とする前記(2)記載の成形性に
優れた高強度鋼管。
〜3%、 Al:3%以下の一方または双方を合計で
0.5%以上3%以下含むことを特徴とする前記(2)
または(3)記載の成形性に優れた高強度鋼管。
〜0.2%、B :0.0002〜0.001%、の一
方または双方を含むことを特徴とする前記(2)〜
(4)の何れか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼
管。
0.3%以下含むことを特徴とする前記(2)〜(5)
の何れか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼管。
5〜0.005%、Rem:0.001〜0.02%の
一方または双方を含むことを特徴とする前記(2)〜
(6)の何れか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼
管。
記載の鋼管を製造するにあたり、前記(2)〜(7)の
何れか1項に記載の成分を有する鋳造スラブを、鋳造ま
まもしくは一旦冷却した後に1000℃〜1300℃の
範囲に再度加熱し、熱間圧延して冷却後巻取った熱延鋼
板を造管し、鋼材の化学成分で決まる(2×Ac1 変態
温度+Ac3 変態温度)/3以上1050℃以下に加熱
した後縮径加工を行い、その後、空冷もしくは150℃
/秒以下の冷却速度で300℃以上600℃以下まで冷
却し、その後15℃/秒以下の冷却速度で室温まで冷却
することを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管の製造
方法。但し、 Ac1(℃) =723-10.7×Mn%-16.9×Ni%+29.1×Si%+16.9×
Cr% Ac3(℃) =910-203×(C%)1/2-15.2×Ni%+44.7×Si%+31.
5×Mo%+13.1×W%-30×Mn%-11×Cr%-20×Cu%+70×P%+40
×Al%
記載の鋼管を製造するにあたり、前記(2)〜(7)の
何れか1項に記載の成分を有する熱延鋼板を酸洗し冷延
した後に焼鈍した鋼板を造管し、鋼材の化学成分で決ま
る(2×Ac1 変態温度+Ac3 変態温度)/3以上1
050℃以下に加熱した後縮径加工を行い、その後、空
冷もしくは150℃/秒以下の冷却速度で300℃以上
500℃以下まで冷却し、その後15℃/秒以下の冷却
速度で室温まで冷却することを特徴とする成形性に優れ
た高強度鋼管の製造方法。但し、 Ac1(℃) =723-10.7×Mn%-16.9×Ni%+29.1×Si%+16.9×
Cr% Ac3(℃) =910-203×(C%)1/2-15.2×Ni%+44.7×Si%+31.
5×Mo%+13.1×W%-30×Mn%-11×Cr%-20×Cu%+70×P%+40
×Al%
であることを特徴とする前記(8)もしくは(9)記載
の成形性に優れた高強度鋼管の製造方法。にある。
強度鋼管おその製造方法について詳細に述べる。ハイド
ロフォーム成形では鋼管を素材とした成形加工が行われ
る。この際、鋼管の軸方向への押し込み量と内圧の関係
を適正に設定することが重要である。内圧のみを増加さ
せた通常の液圧成形と異なり、ハイドロフォーム成形で
は軸押しによる強制的な材料供給によってより厳しい成
形にも耐えることができる。本発明者らは、種々の材料
を用いたハイドロフォーム成形試験を元に、鋼材の結晶
集合組織の制御と適正なミクロ組織形成によって初めて
非常に高いハイドロフォーム成形性が確保できることを
見出した。
0}<110>〜{332}<110>の方位群および
/または{110}<110>のX線ランダム強度比が
ハイドロフォーム成形等を行う上で最も質量な特性値で
ある。板厚中心位置での板面のX線回折を行い、ランダ
ム結晶に対する各方位の強度比を求めたときの、{11
0}<110>〜{332}<110>の方位群での平
均が2.0以上とした。この方位群に含まれる主な方位
は{110}<110>、{661}<110>、{4
41}<110>、{331}<110>、{221}
<110>、{332}<110>、{443}<11
0>、{554}<110>および{111}<110
>である。これらの各方位のX線ランダム強度比は{1
10}極点図よりベクトル法により計算した3次元集合
組織や{110},{100},{211},{31
0}極点図のうち、複数の極点図を基に級数展開法で計
算した3次元集合組織から求めればよい。例えば、後者
の方法から各結晶方位のX線ランダム強度比を求めるに
は、3次元集合組織のΦ2=45゜断面における(11
0)[1−10]、(661)[1−10]、(44
1)[1−10]、(331)[1−10]、(22
1)[1−10]、(332)[1−10]、(44
3)[1−10]、(554)[1−10]、(11
1)[1−10]の強度で代表させられる。
0>方位群の平均X線ランダム強度比とは、上記の各方
位の相加平均である。上記方位のすべての強度が得られ
ない場合には{110}<110>、{441}<11
0>、{221}<110>の方位の相加平均で代替し
ても良い。中でも、{110}<110>は重要であ
り、この方位のX線ランダム強度比が3.0以上、好ま
しくは3.5以上であることが特に望ましい。{11
0}<110>〜{332}<110>方位群の平均強
度比が2.0以上でかつ{110}<110>の強度比
が3.0以上であれば特にハイドロフォーム用鋼管とし
てはさらに好適であることは言うまでもない。また、成
形困難な場合には上記方位群の平均強度比が3.5以上
であること、{110}<110>の強度比が5.0以
上であることのうち少なくとも1つを満たすことが望ま
しい。
2=45°断面において上記の方位群の範囲内に最高強
度を有し、この方位群から離れるにしたがって徐々に強
度レベルが低下するが、X線の測定精度の問題や鋼管製
造時の軸周りのねじれの問題、X線試料作製の精度の問
題などを考慮すると、最高強度を示す方位がこれらの方
位群から±5°ないし10°程度ずれる場合も有りう
る。
弧状試験片を切り出し、これをプレスして平板としX線
解析を行う。また、弧状試験片から平板とするときは、
試験片加工による結晶回転の影響を避けるため極力低歪
みで行うものとし、加えられる歪み量の上限を10%以
下で行うこととした。このようにして得られた板状の試
料について機械研磨によって所定の板厚まで減厚した
後、化学研磨などによって板厚中心付近まで研磨し、バ
フ研磨によって鏡面に仕上げた後、電解研磨や化学研磨
によって歪みを除去すると同時に板厚中心層が側定面と
なるように調整する。なお、鋼板の板厚中心層に偏析帯
が認められる場合には、板厚の3/8〜5/8の範囲で
偏析帯のない場所について測定すればよく、またこの範
囲外でも前述の条件を満たしていることは何ら鋼管の成
形性を落とすものではない。
法でX線用試料を採取したとき、板面に垂直な結晶方位
が<hkl>で鋼管の長手方向が<uvw>であること
を意味する。
逆極点図や正極点図だけでは表すことができないが、例
えば鋼管の半径方向の方位を表す逆極点図を板厚の中心
付近に関して測定した場合、各方位のX線ランダム強度
比は以下のようになることが好ましい。<100>:2
以下、<411>:2以下、<211>:4以下、<1
11>:15以下、<332>:15以下、<221
>:20.0以下、<110>:30.0以下。また、
軸方向を表す逆極点図においては、<110>:10以
上で、<100>、<411>、<211>、<111
>、<332>、<221>の全ての方位:3以下。
工まで成形可能となることから、一旦鋼管のある位置に
くびれが生じると、その場所での変形が加速的に進み、
破断(バースト)に至る。従って、極力このような歪み
の集中に起因するくびれを発生させないことも非常に重
要となる。歪みの集中を回避する方法としては鋼材の加
工硬化指数(n値)を高めることが効果的であり、本発
明者らは、特に鋼材中に残留させたオーステナイトの加
工誘起マルテンサイト変態(TRIP効果)を利用する
ことが最も効果的に歪みの分散を達成できることを見出
した。但し、この残留オーステナイト量が3%未満の場
合にはその効果は非常に小さいのでこれを残留オーステ
ナイト体積分率の最小値とした。
は上述の結晶集合組織を得ることができないためフェラ
イト体積分率の最小値を50%と限定した。残留オース
テナイト体積分率は多いほどその効果が大きいが、残留
オーステナイトを確保するためにはベイナイトの生成が
必須となり、一般的には得られるオーステナイト体積分
率は高々ベイナイト体積分率と同程度であるため、残留
オーステナイト体積分率は25%以下であることが望ま
しい。歪み分散への残留オーステナイトの寄与はオース
テナイトの安定性に依存し、オーステナイトが安定なほ
どその効果が大きい。
された合金元素とオーステナイトに濃化したC濃度によ
って決まることから、最終的に得られるオーステナイト
体積分率は鋼材のC質量%の100倍以下であることが
望ましい。
留オーステナイト以外に、マルテンサイトおよび一部パ
ーライトを含んでいても何ら最終的な鋼管の成形性を劣
化させるものではない。
る。良好なハイドロフォーム成形性を得るためには鋼材
の最大強度TSと加工硬化指数nの積TS×nが45M
Pa以上であることが望ましい。
試験(JIS11号)または軸方向に切り出した弧状引
張り試験(JIS12号B)等で得ることができ、強度
は最大強度TS、n値は5%〜10%もしくは3%〜8
%の歪み範囲での加工硬化率として定義する。
C:Cはオーステナイトを室温で安定化させて残留させ
るために必要なオーステナイトの安定化に貢献する最も
安価な元素であるために、本発明において最も重要な元
素といえる。鋼材の平均C量は、室温で確保できる残留
オーステナイト体積分率に影響を及ぼすのみならず、製
造の加工熱処理中に未変態オーステナイト中に濃化する
ことで、残留オーステナイトの加工に対する安定性を向
上させることができる。しかしながら、この添加量が
0.04質量%未満の場合には、最終的に得られる残留
オーステナイト体積分率が3%以上を確保することがで
きないので0.04%を下限とした。一方、鋼材の平均
C量が増加するに従って確保可能な残留オーステナイト
体積分率は増加し、残留オーステナイト体積率を確保し
つつ残留オーステナイトの安定性を確保することが可能
となる。しかしながら、鋼材のC添加量が過大になる
と、必要以上に鋼材の強度を上昇させ、最終的に得られ
る鋼管の成形性をするのみならず、成形後の組立工程に
おいて重要となる溶接性を大きく劣化させる。従って鋼
材のC質量%の上限を0.3%とした。
o,Sn:Mn,Ni,Cr,Cu,Mo,W,Co,
Snは全て変態挙動を制御するためには有効な元素であ
る。特に、溶接性の観点からCの添加量が制限される場
合には、このような元素を適量添加することによって効
果的にオーステナイトを残留させることが可能となる。
また、これらの元素はAlやSi程ではないがセメンタ
イトの生成を抑制する効果があり、オーステナイトへの
Cの濃化を助ける働きもする。さらに、これらの元素は
Al,Siと共にマトリックスであるフェライトやベイ
ナイトを固溶強化させることによって、鋼材の強度を高
める働きも持つ。しかしながら、これらの元素の1種も
しくは2種以上の添加の合計が0.5質量%未満の場合
には、必要な残留オーステナイトの確保ができなくなる
とともに、鋼材の強度が低くなり、有効な車体軽量化が
達成できなくなることから、下限を0.5質量%とし
た。一方、これらの合計が3.5質量%を超える場合に
は、母相であるフェライトもしくはベイナイトの硬質化
を招き、最終的に得られる鋼管の成形性の低下、靭性の
低下、さらには鋼材コストの上昇を招くために、上限を
3.5質量%とした。
の安定化元素であり、フェライト体積率を増加させるこ
とによって鋼材の加工性を向上させる働きがある。ま
た、Al,Si共にセメンタイトの生成を抑制すること
から、効果的にオーステナイト中へのCを濃化させるこ
とを可能とすることから、室温で適当な体積分率のオー
ステナイトを残留させるためには不可避的な添加元素で
ある。このような機能を持つ添加元素としては、Al,
Si以外に、PやCu,Cr,Mo等があげられ、この
ような元素を適当に添加することも同様な効果が期待さ
れる。しかしながら、AlとSiの一種もしくは双方の
合計が0.5質量%未満の場合には、セメンタイト生成
抑制の効果が十分でなく、オーステナイトの安定化に最
も効果的な添加されたCの多くが炭化物の形で浪費さ
れ、本発明に必要な残留オーステナイト体積率を確保す
ることができないかもしくは残留オーステナイトの確保
に必要な製造条件が大量生産工程の条件に適しない。従
って下限を0.5質量%とした。また、AlとSiの一
種もしくは双方の合計が3%を超える場合には、母相で
あるフェライトもしくはベイナイトの硬質化や脆化を招
き、最終的に得られる鋼管の成形性の低下、靭性の低
下、さらには鋼材コストの上昇を招き、また化成処理性
等の表面処理特性が著しく劣化するために、3質量%を
上限値とした。
鋼材の高強度化や前述のように残留オーステナイトの確
保に有効ではあるが、0.2質量%を超えて添加された
場合には体積分率最大の相であるフェライトの変形抵抗
を必要以上に高め、最終的に得られる鋼管の成形性の低
下、靭性の低下、さらには鋼材コストの上昇を招く。さ
らに、耐置き割れ性の劣化や疲労特性、靭性の劣化を招
くことから、0.2質量%をその上限とした。但し、P
の添加の効果を得るためには、0.005質量%以上含
有することが好ましい。
界の強化や鋼材の高強度化に有効ではあるが、その添加
量が0.01質量%を超えるとその効果が飽和するばか
りでなく、必要以上に鋼材強度を上昇させ、最終的に得
られる鋼管の成形性の低下を招くことから、上限を0.
01質量%とした。但し、Bの添加効果を得るために
は、0.0002質量%以上含有することが好ましい。
するNb,Ti,Vは、炭化物、窒化物もしくは炭窒化
物を形成することによって鋼材を高強度化することがで
きるが、その合計が0.3%を超えた場合には母相であ
るフェライトやベイナイト粒内もしくは粒界に多量の炭
化物、窒化物もしくは炭窒化物として析出し、最終的に
得られる鋼管の成形性の低下、靭性の低下、さらには鋼
材コストの上昇を招く。また、炭化物の生成は、本発明
にとって最も重要な残留オーステナイト中へのCの濃化
を阻害し、Cを浪費することから上限を0.3質量%と
した。但し、これらの元素の添加によって高強度化する
ためには、Nb,Ti,Vの合計で0.005質量%以
上添加することが好ましい。
に有効な元素で、Caは0.0005質量%以上、Re
mは0.001%以上の添加により熱間加工性を向上さ
せるが、Caは0.005%超、Remは0.02%超
の添加は逆に熱間脆化を助長させるため、上記の範囲と
した。ここで、希土類元素とは、Y,Scおよびランタ
ノイド系の元素を指し、工業的には、これらの混合物で
あるミッシュメタルとして添加することがコスト的に有
利である。
安定化することができるが、同時に鋼材の靭性や延性を
劣化させる傾向があるために0.01質量%以下とする
ことが望ましい。
材の加工性、特に伸びフランジ成形性に代表されるよう
な極限変形能や鋼材の疲労強度、靭性を劣化させること
から、0.01質量%以下に制御することが望ましい。
造後直接もしくは一旦Ar3 変態温度以下まで冷却され
た後に再加熱された後に熱間圧延される。この時の再加
熱温度が1000℃未満の場合には、熱間圧延を完了す
るまでに、何らかの加熱装置必要となるためにこれを下
限とした。また再加熱温度が1300℃を超える場合に
は、加熱時のスケール生成による歩留まり劣化を招くと
同時に、製造コストの上昇も招くことから、これを再加
熱温度の上限値とした。
れば良く、熱延終了温度が鋼のAr3 変態温度以下とな
っていても良い。但し、最終的に得られる鋼管の集合組
織を好ましいものとするためには、熱延鋼板での集合組
織発達を回避することが有効であり、このためにAr3
変態温度+50℃以上で熱延を完了することが望まし
い。一方、スケール生成に起因する表面特性の劣化を抑
制するためには、仕上げ温度を980℃以下とすること
が好ましい。
のまま造管し縮径加工を行っても良いが、必要に応じて
酸洗後冷延し、焼鈍後に造管し縮径加工を行っても良
い。この時の冷延−焼鈍条件は特に規定しない。
に巻きながら、もしくは前もって所定のサイズに切断さ
れた鋼板を巻いた後に溶接もしくは固相拡散接合等の方
法によって行われる。
造された鋼管を縮径加工によって所定のサイズに調整す
る際に、縮径加工開始前の加熱温度が鋼材の化学成分に
よって決まる(2×Ac1 変態温度+Ac3 変態温度)
/3未満の場合には、最終的に得られる残留オーステナ
イト体積分率が3%未満となり、鋼管の成形性を劣化さ
せることから、これを加熱温度の下限値とした。一方、
この加熱温度が1050℃超となった場合には、最終的
に得られる鋼管において{110}<110>〜{33
2}<110>の方位群が発達せず、結果として鋼管の
成形性が劣化するために、これを加熱温度の上限値とし
た。
り、縮径の温度範囲を特に定めることなく本発明の効果
を得ることができるが、最終的なミクロ組織中にマルテ
ンサイトを得るために、縮径の仕上げ温度は鋼の成分で
決まるAr3 変態温度−100℃以上とすることが、ま
た、2相分離を十分に進めるためにはAr3 変態温度+
150℃以下とすることが好ましい。但し、 Ar3=901−325×C%+33×Si%+287
×P%+40×Al%−92×(Mn%+Mo%+Cu
%)−46×(Cr%+Ni%) とする。
径、板厚を変化させることができるが、これらを全て独
立に変化させることができないために、この中の1つに
着目して制御することで縮径加工時に導入された全歪み
量を評価することができる。ここではその代表値として
鋼管の外径の変化に着目する。この縮径の程度は縮径率
(={縮径加工前の鋼管の外径−縮径加工後の鋼管の外
径}/縮径加工前の鋼管の外径×100%)で表現さ
れ、この縮径率が25%未満の場合には鋼材に導入され
る歪み量が十分でないために集合組織の発達が不十分と
なり鋼管の成形性を劣化させる。従ってこれを縮径率の
最小値とした。この縮径率は大きければ大きいほど良
く、望ましくは45%以上、さらに非常に高い加工性が
要求される場合には70%以上とすることが望ましい。
織が制御される。この時の冷却は空冷でも良いが、ブロ
ワーや気水冷却、水冷等の設備を配して加速冷却しても
良い。但しこの時に、冷却速度を150℃/秒超とする
ためには過大の設備投資を必要とするためにこれを冷却
速度の上限とした。空冷される場合には、冷却は室温ま
で連続的に行われても良いが、加速冷却される場合に
は、冷却完了温度が300℃未満になると、鋼材中の残
留オーステナイトが非常に不安定となり、最終的に得ら
れる鋼管の成形性を劣化させるためにこれを冷却停止温
度の下限値とした。また、冷却停止温度が500℃超の
場合には、加速冷却する効果は全くなくなるために、こ
れを冷却停止温度の上限とした。縮径加工後に加速冷却
される場合に、300℃〜500℃で冷却が停止され後
にさらに鋼管は室温まで冷却される。この時の冷却速度
が15℃/秒超の場合には鋼材中の残留オーステナイト
の安定性が低くなり、最終的に得られる鋼管の成形性を
劣化させるためにこれを冷却速度の上限値とした。ここ
での冷却速度は遅いほど有効であるが、冷却速度を0.
5℃/秒未満にするためには付加的な設備を必要とする
ために、300℃〜500℃からの冷却速度は0.5℃
/秒以上が好ましい。
フォーム成形する前に、表面の摩擦抵抗を小さくする目
的で、油脂や固体潤滑剤等を塗布しても良い。また、防
錆効果のために、これらの鋼管にZn等の表面処理を施
しても良い。
旦室温まで冷却した後に再度1200℃に加熱し900
℃以上で熱延を完了した後冷却し、電縫溶接した。この
ようにして製造した母管を所定の温度に加熱し縮径加工
を行った。
下の方法で行った。前もって鋼管に10mmΦのスクライ
ブドサークルを転写し、内圧と軸押し量を制御して、円
周方向への張り出し成形を行った。バースト直前での最
大拡管率を示す部位(拡管率=成形後の最大周長/母管
の周長)の軸方向の歪みεΦと円周方向の歪みεθを測
定した。この2つの歪みの比ρ=εΦ/εθと最大拡管
率をプロットし、ρ=−0.5となる拡管率Re(0.
5)をもってハイドロフォーム成形性の指標とした。
から弧状試験片を切り出し、プレスして平板としたサン
プルの1/2部に対して行った。また、X線の相対強度
はランダム結晶と対比することで求めた。
α線を用いたX線解析により、フェライトの(200)
面、(211)面およびオーステナイトの(200)
面、(220)面、(311)面の積分反射強度を測定
して、Journal of The Iron and Steel Institute, 206
(1968) p60 に示された方法にて算出した。
の1/4厚部において500倍の写真を撮影し、ポイン
トカウント法によって求めた。
縮径加工条件で加工し、得られた鋼管のハイドロフォー
ム成形性とミクロ組織、集合組織を調査した結果を示し
た。例1は縮径加工前の加熱温度が鋼材の化学成分で決
まるAc1=742℃、Ac3 =851℃で規定される
(2×Ac1 +Ac3 )/3=778℃未満であるため
に、最終的に得られる鋼管中にオーステナイトを残留さ
せることができないため、結果として鋼管の成形性が低
い。また例2は縮径率が25%未満であるために集合組
織の発達が十分でなく鋼管の成形性が低い。また、例6
は縮径加工後の加速冷却停止温度が300℃未満となっ
ているために、残留オーステナイト体積分率は確保でき
ているものの、残留オーステナイトの安定性が低いため
に鋼管の成形性は低い。その他の例は本発明の範囲内に
あり、良好な成形性を示すことがわかる。
て、表中に示した本発明の範囲内であ縮径加工を行った
鋼管の成形性評価結果を示した。縮径率はすべて55
%、縮径加工後の冷却は全て空冷とした。本発明の範囲
の化学成分であるP1〜P16の例は全て{110}<
110>〜{332}<110>の方位群のX線ランダ
ム強度比の平均が2.0以上および/または鋼板1/2
板厚での板面の{110}<110>のX線ランダム強
度比が3.0以上であり、かつ鋼材中の残留オーステナ
イト体積分率が3%以上となっており、その結果として
化学成分の中のどれかが本発明範囲からはずれているC
1〜C6の例に比較して良好なハイドロフォーム成形性
を示すことがわかる。
ことで、鋼管のハイドロフォーム成形性が著しく向上す
ることを以上に詳述した。本発明によって、複雑な形状
の部品へのハイドロフォーム加工が可能となり、自動車
車体の軽量化をより一層推進することができる。従っ
て、本発明は、工業的に極めて高い価値のある発明であ
る。
Claims (10)
- 【請求項1】 ミクロ組織が体積分率で50%以上のフ
ェライトと、体積分率で3%以上の残留オーステナイト
を含む第2相との複合組織であり、鋼板1/2板厚での
板面の{110}<110>〜{332}<110>の
方位群のX線ランダム強度比の平均が2.0以上、ある
いは鋼板1/2板厚での板面の{110}<110>の
X線ランダム強度比が3.0以上の何れかまたは双方で
あることを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管。 - 【請求項2】 質量%にて、Cを0.04%以上0.3
%以下含みむことを特徴とする請求項1記載の成形性に
優れた高強度鋼管。 - 【請求項3】 質量%で、さらに Mn:3%以下、 Ni:3%以下、 Cr:3%以下、 Cu:2%以下、 Mo:2%以下、 W :2%以下、 Co:3%以下、 Sn:0.5%以下 の中の1種または2種以上を合計で0.5%以上3.5
%以下含むことを特徴とする請求項2記載の成形性に優
れた高強度鋼管。 - 【請求項4】 質量%で、さらに Si:0.003〜3%、 Al:3%以下 の一方または双方を合計で0.5%以上3%以下含むこ
とを特徴とする請求項2または3記載の成形性に優れた
高強度鋼管。 - 【請求項5】質量%で、さらに P :0.001〜0.2%、 B :0.0002〜0.001% の一方または双方を含むことを特徴とする請求項2〜4
の何れか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼管。 - 【請求項6】質量%で、さらに Ti:0.3%以下、 Nb:0.3%以下、 V :0.3%以下 の中の1種または2種以上を合計で0.005%以上
0.3%以下含むことを特徴とする請求項2〜5の何れ
か1項に記載の成形性に優れた高強度鋼管。 - 【請求項7】質量%で、さらに Ca:0.0005〜0.005%、 Rem:0.001〜0.02% の一方または双方を含むことを特徴とする請求項4〜6
の何れか1項に記載の成形性に優れた高強度鋼管。 - 【請求項8】 請求項1〜7の何れか1項に記載の鋼管
を製造するにあたり、請求項2〜7の何れか1項に記載
の成分を有する鋳造スラブを、鋳造ままもしくは一旦冷
却した後に1000℃〜1300℃の範囲に再度加熱
し、熱間圧延して冷却後巻取った熱延鋼板を造管し、鋼
材の化学成分で決まる(2×Ac1 変態温度+Ac3 変
態温度)/3以上1050℃以下に加熱した後縮径加工
を行い、その後、空冷もしくは150℃/秒以下の冷却
速度で300℃以上600℃以下まで冷却し、その後1
5℃/秒以下の冷却速度で室温まで冷却することを特徴
とする成形性に優れた高強度鋼管の製造方法。但し、 Ac1(℃) =723-10.7×Mn%-16.9×Ni%+29.1×Si%+16.9×
Cr% Ac3(℃) =910-203×(C%)1/2-15.2×Ni%+44.7×Si%+31.
5×Mo%+13.1×W%-30×Mn%-11×Cr%-20×Cu%+70×P%+40
×Al% - 【請求項9】 請求項1〜7の何れか1項に記載の鋼管
を製造するにあたり、請求項2〜7の何れか1項に記載
の成分を有する熱延鋼板を酸洗し冷延した後に焼鈍した
鋼板を造管し、鋼材の化学成分で決まる(2×Ac1 変
態温度+Ac3 変態温度)/3以上1050℃以下に加
熱した後縮径加工を行い、その後、空冷もしくは150
℃/秒以下の冷却速度で300℃以上500℃以下まで
冷却し、その後15℃/秒以下の冷却速度で室温まで冷
却することを特徴とする成形性に優れた高強度鋼管の製
造方法。 - 【請求項10】 縮径加工後時の縮径率が25%以上で
あることを特徴とする請求項8もしくは請求項9記載の
成形性に優れた高強度鋼管の製造方法。
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