JP2001322828A - 光学素子用成形型及びその製造方法 - Google Patents

光学素子用成形型及びその製造方法

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JP2001322828A JP2000140399A JP2000140399A JP2001322828A JP 2001322828 A JP2001322828 A JP 2001322828A JP 2000140399 A JP2000140399 A JP 2000140399A JP 2000140399 A JP2000140399 A JP 2000140399A JP 2001322828 A JP2001322828 A JP 2001322828A
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Yuji Horino
裕治 堀野
Akiyoshi Chatanihara
昭義 茶谷原
Manabu Tomitani
学 富谷
Seiji Isogawa
征史 五十川
Takeshi Hidaka
猛 日高
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 型母材の成形面がが非球面や自由曲面などの
3次元形状であっても、均一にイオンを注入する。 【解決手段】 真空容器3内に設置された型母材1の周
囲にプラズマを発生させ、型母材1にパルス電圧を印加
することにより型母材周囲のプラズマからイオンのみを
引き出し、このイオンを型母材3の表面に注入若しくは
付着又は注入及び付着の双方を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学機器等に用い
るガラスからなる光学素子を押圧成形によって成形する
ために使用する光学素子用成形型及びその製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】光学ガラス材料を加熱、押圧することに
より所望形状に成形して、光学素子とする方法は従前よ
り行われている。一方、近年は、光学系の高性能化に伴
って非球面形状のみならず自由曲面形状等の複雑な形状
の光学素子を大量に、しかも安価で生産できることが望
まれている。光学素子を安価に生産するためには、成形
を行う成形型の長寿命化が必須の条件となる。
【0003】これに対し、光学素子の製造では、種々の
金属酸化物やアルカリ成分などを含む反応性の高いガラ
スを高温下で使用するため、型の劣化が激しい。特に、
ガラスと接触する成形面の劣化が型の寿命を左右してい
る。このため、型の成形面に硬質膜を被覆する等の処理
が行われている。このようなガラス成形に用いる成形型
に成膜する方法として、特公平3−61614号公報に
は、スパッタリング法によって白金合金を成膜すること
が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】成膜される成形型の成
形面は、光学素子の成形用であるところから非球面や自
由曲面などの複雑な形状を有している。スパッタリング
法によって成形型に成膜する場合、膜がターゲット方向
に厚さが増加して成膜されるため、曲率半径の非常に小
さい凹面型や、非球面形状の成形型を固定したまま処理
するのでは曲面に対して垂直方向に均一な厚さに成膜す
ることができない。そのためスパッタリング法を用いた
型では成形面の中心付近と外周付近での厚さや応力分布
が異なってくる。このような成形型によって実際にガラ
スを成形すると、成形面の外周付近での劣化が激しく、
ガラス成形時の熱サイクルにより膜剥離が生ずることが
確認されている。
【0005】このような問題を解決する方法として成形
型を成形面の曲率に合わせて回転させる方法が考えられ
るが、この回転を非球面形状や自由曲面に合わせて制御
することが難しいと共に、非常に大がかりな設備が必要
となる。また形状が多様化している光学素子に対応させ
る必要性からも製造費用の増大や検討期間の延長につな
がっている。
【0006】本発明は、このような従来の問題点を考慮
してなされたものであり、非球面や自由曲面等の複雑な
3次元形状であっても、垂直及び均一にイオンを注入、
付着させることが可能光学素子成型用型及びその製造方
法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1の発明の光学素子用成形型の製造方法は、
真空容器内に設置された型母材の周囲にプラズマを発生
させ、型母材にパルス電圧を印加することにより型母材
周囲の前記プラズマからイオンのみを引き出し、このイ
オンを型母材の表面に注入若しくは付着又は注入及び付
着の双方を行うことを特徴とする。
【0008】この発明は、型母材の周りを覆ったプラズ
マ雰囲気下から、パルス電圧を用いてイオンを取り出
し、型母材表面にイオンを注入、付着させる方法であ
る。これはパルス電圧を印加すると型母材周辺のプラズ
マ中の電子が型母材表面から遠くに追いやられる一方、
陽イオンは型母材の表面に加速されて注入、付着する作
用からなる。
【0009】従来、型母材に印加できる電圧は、型母材
からプラズマへのアーク放電が起こるため、数百V程度
以下であった。これに対し、本発明のようにパルス電圧
とすることによりアーク放電が発生する直前に電圧が下
がり、アーク放電を未然に防止できることが判明した。
本発明ではプラズマ雰囲気中であっても1kV以上の高
い電圧を型母材に印加することができる。これによって
生じる電圧差により加速されたプラズマ中の陽イオンを
型母材の表面に注入または付着させることができる。
【0010】この方法では、型母材の表面近傍の雰囲気
にあるプラズマに作用するため、型を固定的に保持した
まま状態のままでも、光学素子用成形型として望まれる
非球面、自由曲面などの複雑な3次元形状に対して、垂
直にかつ均一にイオンを注入、付着することが可能とな
る。そのため型母材の表面に処理された層は、表面に対
して垂直方向への厚さが均一であり、イオンの付着によ
って形成される膜の応力、密着強度も面形状の影響を受
けずに均一となる。
【0011】本発明では、イオンの注入後にイオンの付
着を行うことにより、密着強度を全体として高めること
ができる。
【0012】プラズマ雰囲気下から取り出したイオンが
型母材に注入されるか、付着するかは、イオンの種類や
型母材の材質が関係するが、イオンの加速エネルギーに
依存するところが大きい。本発明において、イオンの加
速エネルギーはパルス電圧に相当する。パルス電圧が高
いとイオンが注入され、低いと付着する。この注入と付
着の境界は明確に分けることができないが、パルス電圧
を数10kV印加した場合は、イオン注入が主となって
付着が少なく、数kV〜数100Vの印加では注入と付
着の双方が見られ、100V以下ではわずかに注入も確
認されるもののほとんどが付着となる。イオンが付着す
る条件では、テポジットと表現される型母材表面への成
膜が行われる。このパルス電圧を増減させることによ
り、注入と付着を容易に操作でき、従って、注入操作後
に成膜することも可能である。
【0013】型母材に印加されるパルス電圧の長さは1
μs以上である必要がある。これはパルスの長さが1μ
s未満では型母材の「表面に電界がかからないためイオ
ンを全く動かすことができず、イオンを注入させたり付
着させたりすることができないためである。実用上効率
的なパルス電圧は10μs〜100μsの範囲内であ
る。100μs以上ではパルスの効果が薄れてしまうた
め、あまり実用的ではない。
【0014】光学素子の光学面を形成するためには成形
型の成形面に非常に滑らかな面が要求されるが、本発明
ではイオンレベルでの注入又は/及び付着による成膜の
ため、処理前の型母材の状態をほとんど損なうことな
く、その表面を処理することができる。
【0015】型母材としては、パルス電圧が印加される
ように導電性の材料を用いることが必要である。特に光
学ガラスを軟化させてプレスするため高い温度領域内で
変形しないような高い硬度を有し、かつ容易に分解した
り化学反応しない材料である耐熱金属、超硬合金、炭化
ケイ素、タングステン合金が望ましい。
【0016】請求項2の発明は、請求項1記載の発明で
あって、前記プラズマが、金属又は炭素からなる導電性
の固体のターゲットに電圧を印加して発生させたアーク
プラズマであることを特徴とする。
【0017】このようにプラズマ源として、金属または
炭素よりなる固体の導電体を用いる場合には、これらの
導電体に電圧を与えてアークプラズマを発生させ、発生
するアークプラズマの中に型母材を設置することによ
り、プラズマによって型母材を覆うことが可能となる。
【0018】請求項3の発明は、請求項1記載の発明で
あって、前記プラズマが、窒素又は酸素のいずれかを含
む雰囲気ガス中に設置された型母材に高周波電流を通電
して発生させたプラズマであることを特徴とする。
【0019】このようにプラズマ源として窒素又は酸素
からなるガスを用いる場合には、雰囲気ガス中に設置さ
れた型母材に高周波電流を通電することにより、プラズ
マを発生させ型母材を覆うことが可能となる。
【0020】請求項4の発明は、請求項1記載の発明で
あって、前記プラズマが、金属又は炭素からなる導電性
の固体のターゲットに電圧を印加して発生させたアーク
プラズマと、窒素又は酸素のいずれかを含む雰囲気ガス
中に設置された型母材に高周波電流を通電して発生させ
たプラズマとからなることを特徴とする。
【0021】このように複数の金属や、金属とガスの双
方のプラズマを混合して、合金、化合物を作成すること
も可能である。特に反応性が高い酸素ガスや窒素ガスを
プラズマ化して用いることにより、型母材の表面にガラ
スとの離型性が良好な金属酸化物膜や金属窒化物膜を容
易に形成できる。
【0022】請求項5の発明は、ガラスよりなる光学素
子のプレス成形に用いる光学素子用成形型において、型
母材の少なくとも成形面に白金、イリジウム、レニウ
ム、オスミニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム
のいずれかの貴金属イオンが注入された注入層を有する
ことを特徴とする。
【0023】この発明では、型母材の表面に対して貴金
属イオンが垂直且つ均一に注入されているため、注入層
が耐久性を備えたものとなる。
【0024】請求項6の発明は、請求項5記載の発明で
あって、前記型母材の表面に形成された注入層上に、白
金、イリジウム、レニウム、オスミニウム、ルテニウ
ム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオンを
付着した膜を有することを特徴とする。
【0025】この発明では、貴金属イオンの注入層の上
に、貴金属イオンが付着するため、膜が剥離することの
ない耐久性を備えたものとなる。
【0026】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)本発明の実施の
形態1を図1及び図2を用いて説明する。図1はこの実
施の形態で使用する型母材1であり、全体が超硬合金で
形成されている。型母材1の成形面2は開口径が直径8
mm、曲率半径(R)が5mmであり、鏡面研磨が施さ
れている。
【0027】図2は成膜を行う装置を示す。成膜を行う
真空容器3はグランドに接続されており、真空容器3内
の上部に導電性の試料ホルダ5が配置されている。成膜
対象となる型母材1は試料ホルダ5に保持されており、
試料ホルダ5を介して直流パルスバイアス電源6に接続
されている。
【0028】試料ホルダ5の下方にはプラズマを発生さ
せる固体のターゲット4と、プラズマを発生させるため
の初期放電を起こさせるトリガー電極7と、固体のター
ゲット4に放電してプラズマを発生させるアーク電極8
とが設置されている。トリガー電極7は固体のターゲッ
ト4と電気的に導通しておらず、かつ高電圧がかかった
とき放電により導通させるように固体のターゲット4の
極近傍に図示しない絶縁体を介して設置してある。トリ
ガー電極7はトリガー電源9に接続され、アーク電極8
はアーク電源10に接続されている。直流パルスバイア
ス電源6は、アーク電極8の放電が始まると同時、又は
遅延して負の電圧を発生させるように図示しないコンピ
ューターにより制御されている。3a、3bは真空容器
3内を排気するための排気口である。
【0029】この実施の形態では、固体のターゲット4
として純度99.999%の白金を使用した。試料ホル
ダ5に型母材1をセットした後、真空容器3内の気圧を
排気口3a及び3bより排気して1×10−4Pa以下
に減圧する。そして、アーク電極8に60Vの電圧を印
加し、トリガー電極7に4.5kVの電圧を瞬間的に印
加してトリガー放置を起こさせた。
【0030】このトリガー放電を引き金に、アーク電極
8から固体のターゲット4に放電が起こり、固体のター
ゲット4の表面から白金のプラズマが発生する。その瞬
間、プラズマは真空容器3内の型母材1の周囲へ到達す
る。同時に直流パルスバイアス電源6により型母材1に
12μsec幅、13μsecのインターバルで−15
kVの直流パルスバイアス電圧を100回加える。これ
により、型母材1周囲のプラズマ中に含まれるイオンが
直流パルスバイアス電圧により引き出され、型母材1へ
注入される。この注入操作を100回繰り返した。この
とき、引き出されるイオンは電気的な力によるので、3
次元形状であっても全ての面でその面の垂直方向に注入
される。
【0031】さらに直流パルスバイアス電圧を−0.2
kVに下げて同様の操作を10000回繰り返した。パ
ルスバイアス電圧を下げたことにより、イオンのエネル
ギーが小さくなり、このためイオンの注入ではなく付着
が生じるようになる。そのため型母材1の表面に白金の
イオンがデポジットされた白金の膜が形成された。形成
された白金の膜は、成形面2の全面にわたりほぼ均一
で、かつ注入深さのばらつきも非常に少なくなってお
り、その厚さは0.20μmとなっていた。また白金膜
と型母材1の界面は連続的に組成の変化する傾斜層とな
っていた。
【0032】このようにして得られた白金膜の面粗さ
(Ra)は0.0010μmであり、成膜前の型母材鏡
面部分の面粗さ(Ra)0.0009μmよりも大きく
粗くなることはなく、光学素子用型の成形面として十分
の性能を有する粗さとなっていた。
【0033】こうして製造された1対の成形型を用い
て、酸化バリウム含有硝材(ガラス転移点:504℃)
を窒素雰囲気下で570℃に加熱し、100kgfの荷
重で連続成形したところ、1000ショット目まで膜の
剥がれやガラスの焼き付きなどの不具合がなく、100
0ショット以上の耐久性を得ることができた。
【0034】比較例1として本実施の形態と同様の型母
材にRFスパッタリングにより、白金膜を成膜した。こ
の膜は成形面の中心部分と外周部分では膜の厚さが異な
り、中心部分の厚さが0.20μmに対して外周部分で
は0.12μmであった。この比較例1の成形型を用い
て実施の形態1と同様の条件で成形したところ、比較例
1の成形型は286ショット目で外周付近の膜に膜剥が
れが生じた。さらに連続して成形したところ、外周付近
に略同輪体上で複数の膜剥がれが確認された。これはこ
の部分が他の部分に比べて弱いために起こった不具合で
ある。
【0035】このような実施の形態では、3次元形状の
成形面を有する成形型に対しても、均一に元素を注入し
さらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に優れ
た光学素子成型用型を得ることができる。
【0036】なお、この実施の形態では、固体のターゲ
ットとして白金を用いたが、ニッケル、クロムなどの耐
熱金属や、チタンアルミニウム、ニッケルクロム等の合
金や、白金、イリジウム、レニウム、オスミニウム、ル
テニウム、ロジウム、パラジウム等の貴金属およびこれ
らの合金を用いても同様な効果が得られる。また、型母
材として超硬合金を用いたが、ステンレス鋼、インコネ
ルなどの耐熱金属やタングステン合金を用いても同様の
効果が得られる。
【0037】(実施の形態2)この実施の形態では実施
の形態1と同様の装置およびプラズマ源を用いた。型母
材は実施の形態1の型母材1と同形状であり、その材料
のみを変更した。この実施の形態における型母材の材料
は、白金と比較的濡れ性が悪く、成膜が困難とされる炭
化ケイ素を用いるものである。
【0038】本実施の形態では、アーク電源10により
アーク電極8から固体ターゲット4に放電させてプラズ
マを発生させながら直流パルスバイアス電源6の電圧を
−15kVから段階的に下降させ、最終的に0Vにして
成膜した。
【0039】プラズマを発生させる方法は、実施の形態
1と同様にアーク電極8に60Vの電圧を与え、トリガ
ー電極7に4.5kVの電圧を瞬間的に印加してトリガ
ー放電を起こさせた。このトリガー放電を引き金に、ア
ーク電極8から固体のターゲット4に放電が起こり、固
体のターゲット4の表面から白金のプラズマが発生す
る。この瞬間的な放電を各パルスバイアス電圧に同期さ
せて行った。
【0040】この放電の回数よりなるプラズマの発生回
数を、パルスバイアス電圧の変化と同時に変え、−15
kVで100回、−10kVで200回、−5kVで3
00回、−1kVで1000回、−0.5kVで500
0回、−0.2kV、−0.1kV、−0.1kVおよ
び0kVで20000回の条件で白金の成膜を行った。
なお、アーク電極8による放電は、上述のように直流パ
ルス電圧と同期しているため、直流パルス電圧が0kV
のときであっても成膜は継続する。従って、この実施の
形態では、直流パルス電圧が0kVであっても、成膜が
継続している限りパルス電圧が印可されたという。
【0041】以上の方法において、パルスバイアス電源
の電圧が高い状態ではイオンのエネルギーが高いためイ
オン注入が主となるが、電圧を段階的に下降させたため
徐々にイオンの注入が少なくなり、最終的にはイオンの
表面への付着が主となって厚膜を得ることができた。な
お、ガラスよりなる光学素子用成形型表面の膜は、一般
的に厚いものでも数μm程度の厚さしかないため、ここ
での「厚膜」とは1μm程度以上の厚さを示唆してい
る。
【0042】この実施の形態によって成膜された成形型
の破断面を電子顕微鏡で観察して調べたところ、膜と型
母材の界面が非常に薄くなっており、型母材表面の注入
層から非常に滑らかに組成変化して、且つ均一な厚さで
成膜されていることが確認された。この膜の厚さを成形
面の中心と外周について測定したところ、いずれも1.
6μm±0.05μm以内で均一に成膜されていること
が確認された。
【0043】比較例2としてスパッタリング法により白
金を1.6μm成膜した。この成形型の白金の厚さを測
定したところ中心付近が1.8μmであるのに対し、外
周付近は1.1μmと0.5μmも厚さが異なってい
た。
【0044】以上のようにして製造された1対の成形型
を用いて、ランタン系硝材(ガラス転移点:675℃)
を窒素雰囲気下で715℃に加熱し、100kgfの荷
重で連続成形したところ、比較例2の成形型は1ショッ
ト目で膜剥がれが生じた。これに対し、本実施の形態の
成形型は1000ショット目まで膜の剥がれやガラスの
焼き付き等の不具合がなく、1000ショット以上の耐
久性を得ることができた。
【0045】このように、この実施の形態では、炭化ケ
イ素に対して濡れ性が困難とされる白金を1μm以上の
厚膜で成膜したにも関わらず、パルスバイアス電源の電
圧を段階的に変えて成膜したことにより球面でも均一な
厚さや応力で成膜された。このことによって、700℃
以上の高温にも耐えることができた。また膜厚であるた
め、高温における反応性の高いガラス成分の拡散による
成形型の劣化も発生しない。
【0046】(実施の形態3)本実施の形態を図3及び
図4を用いて説明する。図3はこの実施の形態で使用す
る型母材12であり、全体が金属クロムによって形成さ
れている。又、その成形面11は平面であり、且つ鏡面
に研磨されている。
【0047】図4はこの実施の形態で使用する成膜装置
を示し、図2の装置と同一の要素は同一の符号を付して
対応させてある。この実施の形態の装置は、実施の形態
1で使用した装置に加え、導電性の試料ホルダ5に高周
波発信装置21が接続されている。又、真空容器3に
は、原料ガス導入管23を介して原料ガスボンベ22が
接続されている。
【0048】この実施の形態では、原料ガスボンベ22
として窒素ガスボンベを用いている。そして、真空容器
3内を1×10−4Paに減圧し、ついで原料ガスボン
ベ22からの窒素ガスをガス導入管23内を通して真空
容器内の圧力が1Pa程度となるように真空容器3内に
導入する。窒素ガスの圧力が安定した後、高周波発信装
置21から型母材12に高周波電流を加えると、型母材
12が高周波発信のアンテナとなり周囲の窒素ガスがプ
ラズマ化する。
【0049】窒素ガスのプラズマが発生したとき、瞬時
に高周波発信装置21を直流パルスバイアス電源6と切
り替え、型母材12に10μsecの幅、10μsec
のインターバルで−15kVの直流パルスバイアス電圧
を200回加える。これにより、窒素ガスプラズマ中に
含まれるイオンが直流パルスバイアス電圧により引き出
され、型母材12へ注入される。
【0050】型母材12の表面のクロムは、窒素と反応
し窒化クロムを形成する。この操作を1000回繰り返
す。このとき、引き出されるイオンは電気的な力による
ので、3次元形状であっても型母12の全ての面で垂直
方向に注入されるため、成形面11以外の面である側面
にも注入される。形成された窒化クロムの層をRBS
(ラザフォード後方散乱分光法)を用いて分析したとこ
ろ、成形面11は全面にわたりほぼ均一であるだけでな
く側面にも同様の厚さで窒化クロムが形成され、注入深
さのばらつきも非常に少ないことが確認された。
【0051】このようにして製造された1対の成形型を
用いて、酸化バリウム含有硝材(ガラス転移点:504
℃)を窒化雰囲気下で570℃に加熱し、100kgf
の荷重で連続成形した。この成形では、1000ショッ
ト目まで膜の剥がれやガラスの焼き付き等の不具合がな
く、1000ショット以上の耐久性を得ることができ
た。
【0052】このように、この実施の形態では、3次元
形状の成形面を有する成形型にも、均一に元素を注入
し、さらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に
優れた光学素子成形用型を得ることができた。又、複雑
形状に対して成膜困難であった窒化クロム膜を、1工程
で成形面のみならず成形面以外の面にも容易に且つ均一
に製造することが可能となった。
【0053】なお、この実施の形態では真空容器内に窒
素ガスを導入したが、酸素ガスを導入しても同様にプラ
ズマを発生させることにより同様のイオン注入効果が得
られる。この場合、型母材の表面には、クロムが酸素イ
オンの注入により酸化され酸化クロムが形成される。
【0054】(実施の形態4)この実施の形態では、実
施の形態3と同じ装置を用いた。ただし試料ホルダ5に
は、断面形状が図5に示す形状の型母材25をセットし
た。この型母材25は全体が超硬合金によって形成され
ており、その成形面24は非球面となるように磨かれて
いる。さらに、原料ガスボンベ22として酸素ガスボン
ベを使用し、固体のターゲット4には純度99.99%
の金属クロムを使用した。
【0055】この実施の形態では、真空容器13内の気
圧を1×10−4Pa以下に減圧した後、酸素ガスを原
料ガスボンベ22からガス導入管23内を通して真空容
器3内に導入する。酸素ガス導入後の真空容器13内の
圧力は0.1Paとした。
【0056】そして、アーク電極8に60Vの電圧を印
加し、トリガー電極7に4.5kVの電圧を瞬間的に印
加してトリガー放電を起こさせた。このトリガー放電を
引き金に、アーク電極8から固体のターゲット4に放電
が起こり、固体のターゲット4の表面から青紫色のクロ
ムのプラズマが発生する。さらに、酸素ガス圧力が安定
した後、高周波発信装置21により型母材25に高周波
電流を加えると、型母材25が高周波発信のアンテナと
なり周囲の酸素ガスがプラズマ化する。
【0057】以上のようにして発生させたクロムと酸素
のプラズマに対し、酸素ガスのプラズマが発生したとき
瞬時に高周波発信装置21と直流パルスバイアス電源6
を切り替え、型母材25に15μsecの幅、10μs
ecのインターバルで−5kVの直流パルスバイアス電
圧を200回加える。これにより、酸素ガスプラズマ中
に含まれるイオンとクロムプラズマに含まれるイオン
が、共に直流パルスバイアス電圧により引き出され、型
母材25へ注入されると同時に結合する。
【0058】この操作を10000回行うことにより、
型母材25の成形面に酸化クロムの膜を成膜できた。こ
の膜は厚さが0.4μmで成形面のどの部分でも均一な
厚さであった。
【0059】このようにして製造された非球面成形用の
成形型を用いて、酸化バリウム含有硝材(ガラス転移
点:504℃)を窒素雰囲気下で570℃に加熱し、1
00kgfの荷重で連続成形した。この成形では、10
00ショット目まで膜の剥がれやガラスの焼き付き等の
不具合がなく、1000ショット以上の耐久性を得るこ
とができた。
【0060】なお、この実施の形態では真空容器内に酸
素ガスを導入したが、窒素ガスを導入しても同様にプラ
ズマを発生させることにより、同様のイオン注入効果が
得られる。この場合、型母材の表面には、クロムイオン
と窒素イオンの結合により窒化クロムが形成される。ま
た、この実施の形態では、固体ターゲット4の材料とし
てクロムを用いた場合について説明したが、クロムを炭
素に置き換えても、炭素イオンと窒素イオンの結合によ
り窒化炭素が形成され、同様の効果を有する。
【0061】(実施の形態5)この実施の形態では、実
施の形態1と同様の装置及び型母材を用い、プラズマ源
の材料だけを変えたものであり、固体のターゲットに炭
素の純度が99%以上のガラス状炭素をプラズマ源の材
料として用いた。
【0062】成膜の条件も実施の形態1と同条件で行っ
た。これにより、超硬合金上に炭素イオンが注入され、
さらに0.13μmの均一な厚さの炭素膜が得られた。
この膜のX線回折を測定したところ非結晶性で示した。
又、XPSを用いた元素分析では炭素のみの組成となっ
ており、ラマンスペクトルを測定したところ、ダイヤモ
ンド状炭素に適合するスペクトルであった。
【0063】このようにして製造された1対の成形型を
用いて、酸化バリウム含有硝材(ガラス転移点:504
℃)を窒素雰囲気下で570℃に加熱し、100kgf
の荷重で連続成形した。成形では、1000ショット目
まで膜の剥がれやガラスの焼き付き等の不具合がなく、
1000ショット以上の耐久性を得ることが可能となっ
た。
【0064】このような実施の形態では、3次元形状の
成形面を有する型母材に対しても、均一に元素を注入
し、さらに均一な厚さで成膜することができ、耐久性に
優れた光学素子成形用型とすることができた。又、プラ
ズマ源となる固体のターゲットに加工が容易で、貴金属
などに比べて非常に安価な炭素を用いることにより、一
度に大量の消費を必要とする場合においても安いコスト
で生産することが可能となる。
【0065】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、3次元形状の
成形面を有する成形型に対しても、成形型を固定したま
まで均一に元素を注入したり、また均一な厚さで成膜す
ることができ、成形面の形状に起因する欠陥がなくな
り、耐久性に優れた光学素子成形用型を得ることができ
ると共に、膜と型母材の界面に傾斜層を設けることによ
り、型母材からの膜の剥離をなくすことができる。
【0066】請求項2の発明によれば、3次元形状の表
面に対し、均一で強固な金属の膜が形成された光学素子
用成形型を容易に製造することができる。
【0067】請求項3の発明によれば、3次元形状の表
面に対し、酸素または窒素のイオンを均一に注入された
光学素子用成形型を容易に製造することができる。
【0068】請求項4の発明によれば、3次元形状の表
面に対し、酸素化合物または窒素化合物膜が均一に形成
された光学素子用成形型を容易に製造することができ
る。
【0069】請求項5の発明によれば、光学素子用成形
型の型母材から膜の剥離を防止することができ、耐久性
に優れたものとすることができる。
【0070】請求項6の発明によれば、型母材からの貴
金属膜の剥離をなくすことができ、耐久性のある光学素
子用成形型となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1、2及び5の型母材の斜視図であ
る。
【図2】本発明に用いる成膜装置の断面図である。
【図3】実施の形態3の型母材の斜視図である。
【図4】別の成膜装置の断面図である。
【図5】実施の形態4の型母材の正面図である。
【符号の説明】
1 12 25 型母材 2 11 24 成形面 3 真空容器
フロントページの続き (72)発明者 茶谷原 昭義 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 工業技 術院大阪工業技術研究所内 (72)発明者 富谷 学 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 五十川 征史 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 (72)発明者 日高 猛 東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリ ンパス光学工業株式会社内 Fターム(参考) 4G015 HA01 4K029 AA09 BA02 BA13 CA03 DD06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 真空容器内に設置された型母材の周囲に
    プラズマを発生させ、型母材にパルス電圧を印加するこ
    とにより型母材周囲の前記プラズマからイオンのみを引
    き出し、このイオンを型母材の表面に注入若しくは付着
    又は注入及び付着の双方を行うことを特徴とする光学素
    子用成形型の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記プラズマが、金属又は炭素からなる
    導電性の固体のターゲットに電圧を印加して発生させた
    アークプラズマであることを特徴とする請求項1記載の
    光学素子用成形型の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記プラズマが、窒素又は酸素のいずれ
    かを含む雰囲気ガス中に設置された型母材に高周波電流
    を通電して発生させたプラズマであることを特徴とする
    請求項1記載の光学素子用成形型の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記プラズマが、金属又は炭素からなる
    導電性の固体のターゲットに電圧を印加して発生させた
    アークプラズマと、窒素又は酸素のいずれかを含む雰囲
    気ガス中に設置された型母材に高周波電流を通電して発
    生させたプラズマとからなることを特徴とする請求項1
    記載の光学素子用成形型の製造方法。
  5. 【請求項5】 ガラスよりなる光学素子のプレス成形に
    用いる光学素子用成形型において、 型母材の少なくとも成形面に白金、イリジウム、レニウ
    ム、オスミニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム
    のいずれかの貴金属イオンが注入された注入層を有する
    ことを特徴とする光学素子用成形型。
  6. 【請求項6】 前記型母材の表面に形成された注入層上
    に、白金、イリジウム、レニウム、オスミニウム、ルテ
    ニウム、ロジウム、パラジウムのいずれかの貴金属イオ
    ンを付着した膜を有することを特徴とする請求項5記載
    の光学素子用成形型。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007270230A (ja) * 2006-03-31 2007-10-18 Olympus Corp 表面処理装置及び光学素子成形用型
JP2008001925A (ja) * 2006-06-20 2008-01-10 Ulvac Japan Ltd 成膜装置
JP2008075120A (ja) * 2006-09-20 2008-04-03 Ulvac Japan Ltd 成膜装置
JP2013203568A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Olympus Corp 光学素子成形用型の製造方法および光学素子の製造方法

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