JP2001247916A - 裸耐候性に優れた低降伏比高Ti系鋼板の製造方法 - Google Patents
裸耐候性に優れた低降伏比高Ti系鋼板の製造方法Info
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Abstract
な耐候性を達成すると共に、Tiの添加にも拘わらず変
態後におけるTiCの析出を抑制して低降伏比を実現す
ることが可能な、必要によって優れた溶接性をも発揮で
きる様な低降伏比高Ti系鋼板を製造するための有用な
方法を提供する。 【解決手段】 C:0.2%以下、Si:0.1〜1
%、Mn:2.5%以下(0%を含まない)、Ti:
0.025〜0.5%およびN:0.01%以下(0%
を含なまい)を夫々含有する鋼材を用い、その表面温度
が、下記(1)式で規定される温度T(℃)の±50℃
の温度域において、累積で30%以上の圧下を加える。 T(℃)=1500+([Ti]-[N]×3.4)+800-板厚(mm) ……(1) 但し、[Ti]および[N]は、夫々TiおよびNの含有量
(質量%)を示し、また[Ti]>0.1%のときには[Ti]
=0.1%とする。
Description
に塗替え塗装を含めた維持管理業務の日常的遂行が困難
な鋼構造物に適用される鋼板を製造する為の方法に関す
るものであり、殊にTiを比較的多く添加することによ
って良好な耐候性を発揮させると共に、Tiの添加にも
拘わらず変態後におけるTiCの析出を抑制して低降伏
比を実現することが可能な低降伏比高Ti系鋼板を製造
するための有用な方法に関するものである。
や融雪塩が飛来する塩分腐食環境下にある道路橋等の橋
梁構造物に使用する鋼材は、耐食性向上の為に従来から
塗装されて使用されている。しかしながら、この塗装塗
膜は必ず経時劣化するので、耐食性を維持するために、
一定期間で塗装しなおす維持管理の必要性がある。
の多数桁橋梁に代わり2主桁橋梁に代表される様な主桁
の数が少ない少数主桁橋梁が多く用いられる様になって
いる。この少数主桁橋梁は、多数桁橋梁に比べて使用鋼
材量(鋼量)や橋材片数の削減が可能で、施工性も良好
で、環境 保護や工期の短縮が図れるという点で利点を
有する。そして、この様な少数主桁橋梁には、橋梁設置
後の維持管理の負荷やコストの最小化と、橋梁自体の高
寿命化が強く求められている。こうしたことから、この
様な少数主桁橋梁の構造材に用いられる鋼材には、前記
塩分腐食環境下であっても、無塗装で使用(裸使用)可
能な、いわゆる裸耐候性が優れた鋼材が強く求められて
いる。
や工期の短縮の観点から、炭酸ガスアーク溶接やエレク
トロガスアーク溶接により、入熱量5KJ/mm以上、
場合によっては入熱量100乃至300KJ/mm以上
の大入熱溶接が施される。従って、こうした構造材に使
用される鋼材としては、予熱の必要がなく、これら大入
熱溶接等の高効率溶接が可能な、溶接性の優れた鋼材が
求められている。
材としては、橋梁用鋼材として要求される強度等の機械
的特性は勿論のこと、優れた裸耐候性と溶接性を併せ持
つ鋼材が要求されている。従来、この種の鋼材として
は、P:0.15%以下、Cu:0.2〜0.6%、C
r:0.3〜1.25%、Ni:0.65%以下に規定
した高耐候性圧延鋼材(JIS G 3125)が規格
化されている。また、同様の観点から化学成分組成を規
定した溶接構造用耐候性熱間圧延鋼材(JISG 31
14)も知られている。これらの耐候性鋼材は、前記微
量元素の作用によって、鋼表面に生成する錆が、裸耐候
性に代表される高い耐候性を有する緻密な「安定錆層」
となる自己防食機能を有している。そして、この様な性
質によって、上記耐候性鋼はこれまで種々な構造物のメ
ンテナンスフリーの構造材として、基本的に無塗装で使
用されてきた。
常の腐食環境下では良好な耐候性を発揮するものの、前
記の様な塩分腐食環境下においては塩分の影響によって
耐候性鋼の特徴である「前記安定錆層」が形成されにく
く、希望する耐候性が発揮されないという問題があっ
た。
の様に考えることができる。前記塩分の多い腐食環境下
では、鋼の腐食に伴って錆皮膜中のpHが特に低下する
ことに起因していると考えることができる。そして、通
常鋼の腐食がわずかでも始まると、まずFe→Fe2++
2e-と、これに続くFe2++2H2O→Fe(OH)2+
2H+なる反応により、鋼表面のpHは低下し、錆皮膜
中乃至錆皮膜と鋼の界面のpHも低下する。これらのp
Hが一旦低下すると、電気的中性を保つために錆皮膜中
の塩素イオンの輸送が増大し、塩素イオンの濃縮が錆皮
膜と鋼の界面で生じる。その結果、この界面部分に塩酸
雰囲気が形成され、鋼の腐食が促進されるのである。ま
た、これと同時に、錆皮膜中pHの低下によって、鉄イ
オンの溶解度が大きくなり、耐候性鋼等の耐食低合金鋼
における防食機構の要である前記「安定錆層」の形成を
阻害する現象も生じ、腐食加速状況が形成されるものと
考えることができる。
においても良好な耐候性を発揮すると共に、溶接性にお
いても優れた鋼材の実現を目指して、かねてより研究を
進めており、その研究の一環として例えば特開平11−
71632号の様な鋼材を提案している。この技術にお
いては、従来「安定錆層」の形成促進元素とされていた
Crは却ってpHを低下する元素であり、こうしたCr
の含有量を極力低減し、その代りに比較的多量のTiを
含有させるという新しい知見によって、塩分腐食環境下
においても優れた裸耐候性を発揮させると共に、所定の
関係式で表わされる炭素当量Ceqを適切な範囲に規定す
ることによって溶接性においても優れたものとしたので
ある。
よって、塩分腐食環境下においても良好な裸耐候性を発
揮すると共に、溶接性においても優れた鋼材が実現でき
たのであるが、こうした技術においても解決すべき若干
の問題が残されていた。
0MPa以上の強度が要求されるのであるが、良好な加
工性を発揮させる為には、降伏比(降伏応力/引張強
さ)が低いこと(例えば、高Ti系の場合には85%以
下)も重要である。
によって所定の強度を達成するものであり、こうした加
熱・圧延条件としては、加熱温度:1100〜1250
℃、圧延終了温度(鋼板表面):850〜1000℃
(その後空冷)で製造されるのが一般的である。
において製造した場合には、Ti含有量が比較的少ない
鋼材では基本的に降伏比が低いので問題になることはな
いが、上記の様にTi含有量が比較的高い高Ti系鋼材
では、変態後にFe母相にTiCが整合析出して析出硬
化を起こし、降伏応力が上昇して降伏比が上昇し、希望
する加工性が得られないという問題が生じる。
鋼(Ti含有量が多い鋼種も含む)では、降伏比が高い
のが一般的で、その組織を複相組織化することによって
低降伏比化がなされているのが実状である。しかしなが
ら、硬質相と軟質相の複相組織とすることで、靭性の劣
化が生じたり、逆に400MPa級や490MPa級の
それほど強度の高くない材料を製造するのが困難になる
という問題がある。
であって、その目的は、Tiを比較的多く添加すること
によって良好な裸耐候性を達成すると共に、Tiの添加
にも拘わらず変態後におけるTiCの析出を抑制して低
降伏比を実現することが可能な、必要によって優れた溶
接性をも発揮できる低降伏比高Ti系鋼板を製造するた
めの有用な方法を提供することにある。
のできた本発明方法とは、C:0.2%以下、Si:
0.1〜1%、Mn:2.5%以下(0%を含まな
い),Ti:0.025〜0.5%およびN:0.01
%以下(0%を含まない)を夫々含有する鋼材を用い、
その表面温度が、下記(1)式で規定される温度T
(℃)の±50℃の温度域において、累積で30%以上
の圧下を加える点に要旨を有するものである。 T(℃)=1500+([Ti]-[N]×3.4)+800-板厚(mm) ……(1) 但し、[Ti]および[N]は、夫々TiおよびNの含有量
(質量%)を示し、また[Ti]>0.1%のときには[Ti]
=0.1%とする。
5〜3%およびNi0.05〜6%を夫々含有すると共
に、P:0.03%未満(0%を含む),Cr:0.0
5%未満(0%を含む)に夫々抑制し、且つ下記(2)
式で規定される炭素当量Ceq(%)が0.41%以下
である鋼板を用いることも好ましく、こうした化学成分
組成を満足させることによって、優れた溶接性をも発揮
させることができる。 Ceq(%)=[C]+[Si]/22+[Mn]/6+[P]−[Cu]/20−[Ni]/24+[Cr]/2…(2) 但し、[C],[Si],[Mn],[P],[Cu],[Ni]および[Cr]は、夫
々C,Si,Mn,P,Cu,NiおよびCrの含有量
(質量%)を示す。
材として、(a)Ca:0.01%以下(0%を含まな
い)、(b)Al:0.5%(0%を含まない)、
(c)B:0.005%以下(0%を含まない)、
(d)La:0.05%以下(0%を含まない),C
e:0.05%(0%を含まない)およびMg:0.0
5%(0%を含まない)よりなる群から選ばれる1種以
上等を含有することも有用であり、含有させる成分の種
類に応じて鋼板の特性を更に改善することができる。
は、上記の様な通常の加熱・圧延条件下においては降伏
応力が上昇するが、こうした現象が生じる原因は、次の
様に考えることができた。即ち、通常の加熱・圧延条件
下においては変態後(熱間圧延後)にFe母相にTiC
が整合析出して析出硬化を起こし、これが原因となって
降伏応力(即ち、降伏比)が上昇することになる。
の整合析出を抑制すれば、降伏比の上昇を抑制できるの
ではないかとの観点からその具体的手段について様々な
角度から検討した。その結果、化学成分組成を適切に調
整した鋼板の表面温度が、[Ti],[N]および板厚をパラメ
ータとした上記(1)式で示される温度T(℃)の±5
0℃の温度域で、累積で30%以上の圧下を加えれば、
変態後におけるTiCのFe母相への整合析出が防止さ
れ、その結果として降伏比の上昇が抑制されることを見
出し、本発明を完成した。
明する。この(1)式は鋼板表面温度の回帰式であり、
この(1)式で規定される温度T(℃)の±50℃の温
度域では、オーステナイト相(γ相中)にTiCが析出
し易いことを意味する。そしてこの温度域(以下、「T
iC析出容易温度域」と呼ぶことがある)にて、所定の
圧下量で圧延することによって変態前にTiCを積極的
に析出させることができる。この様にして、変態前にT
iCを積極的に析出させることによって、変態後にTi
CのFe母相への析出が抑制され、降伏応力(即ち、降
伏比)の上昇を抑えることができたのである。
や板厚等によって異なることから、[Ti],[N]および板厚
をパラメータとして規定したものである。また、この温
度域にてTiCを積極的に析出させる為には、この温度
域にて累積で30%以上の圧下量で圧延を行なう必要が
ある。
[Ti]からN含有量[N]のTi当量分を差引いたのは、T
iC析出による降伏比上昇に直接関与するのは、Nと結
合してTiNとして析出するTiではないので、その分
(Nと結合するTi量)を除外したものである。但し、
後述する様に、Nは余り過剰に含有させるとTiNの粗
大化による靭性劣化という不都合を生じるので余り多量
に含有させることができす、一方Tiはその添加による
耐候性を発揮させるという観点からして、N含有量がT
iの含有量よりも多くなることはない。また、上記Ti
含有量[Ti]に関連して、[Ti]>0.1のときは[Ti]=
0.1と統一したのは、[Ti]>0.1では[Ti]が変化し
ても「TiC析出容易温度域」が変化しないという理由
からである。
組成を適切に調整する必要があるが、基本成分である
C,Si,Mn,TiおよびN等の各元素の範囲限定理
由は下記の通りである。
級、乃至はそれ以上の要求強度を確保するするために必
要な元素であるが、その含有量が過剰になって0.2%
を超えると鋼の溶接性や耐食性を劣化させる。従って、
C含有量は、0.2%以下で前記要求強度を確保できる
量とする。尚、強度確保という観点から、C含有量の好
ましい下限は0.03%である。
り、また緻密な「安定錆層」の形成を促進し、裸耐候性
を向上させる効果も発揮する。また、溶接性の向上にも
寄与する。こうした効果を発揮させるためには、Si含
有量は0.1%以上とする必要があるが、その含有量が
過剰になって1%を超えると溶接性が低下することにな
る。尚、Si含有量の好ましい上限は0.40%であ
る。
れ以上の要求強度を確保するするために必要な元素であ
るが、その含有量が過剰になって2.5%を超えるとM
nSが鋼中に多量に生成して裸耐候性を劣化させる恐れ
がある。従って、Mn含有量は、2.5%以下とする必
要がある。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.4%で
あり、好ましい上限は2.0%である。
わる前記「安定錆層」の形成促進元素として重要な元素
であり、Crの如き前記pHの低下の原因となる様な耐
候性への悪影響はない。また、Tiは鋼材組織の結晶粒
微細化による生成錆の微細化、或は靭性向上や溶接性向
上効果も有する。即ち、Tiの含有によって、溶接部の
冷却過程において強力なフェライト変態核となるTiC
やTiN等を鋼中に分散析出させ、溶接熱影響部の組織
のフェライト微細化に大きく寄与する。こうした効果を
発揮させるためには、0.025%以上含有させる必要
があるが、0.5%を超えてもその効果は飽和し経済的
でない。従って、Tiの含有量は0.025〜0.5%
と規定した。
に生成した錆の緻密化を図って鋼板の塩分腐食環境下で
も塗装無しで使用できる程度の良好な裸耐候性を確保す
るには、X線回折法によって求めた非晶質成分の分率が
30%以上で、β−FeOOH成分の分率が20%以下
であることが好まく、こうした観点からしてTi含有量
の好ましい下限は0.05%である。またTiの含有量
が0.2%を超えると、鋼の脆化が問題となる場合もあ
り、前述した通り経済的でもない。こうした観点から、
Ti含有量の好ましい上限は0.2%程度である。
し、「結晶粒成長の抑制」や、「溶接部の熱影響におい
て、フェライト生成核になることで、靭性を改善する」
等の寄与をするが、0.01%を超えて含有されるとT
iNが粗大化し、靭性を劣化させる。こうした観点か
ら、N含有量は0.01%以下とする必要がある。
成分は上記の通りであるが、必要によって、Cu:0.
05〜3%およびNi:0.05〜6%を夫々含有する
と共に、P:0.03%未満(0%を含む)およびC
r:0.05%未満(0%を含まない)に夫々抑制し、
且つ上記(2)式で規定される炭素当量Ceq(%)が0.4
1%以下である鋼板を用いることも好ましく、こうした
化学成分組成を満足させることによって、裸耐候性を更
に高める共に優れた溶接性をも発揮させることができ
る。この化学成分組成において、各元素の好ましい範囲
および上記(2)式を規定した理由は下記の通りであ
る。
に生成する錆を緻密化して、「安定錆層」の形成を促進
し、裸耐候性を向上させる効果を有する。また、溶接性
の向上にも寄与する。こうした効果を発揮させるために
は、Cu含有量は0.05%以上とすることが好ましい
が、3%を超えて過剰に含有させてもその効果が飽和す
るばかりか、熱間圧延等の加工の際に、素材の脆化を引
き起こす可能性がある。こうしたことから、Cu含有量
は0.05〜3%とするのが好ましいが、より好ましい
下限は0.3%であり、より好ましい上限は2.0%で
ある。
する元素である。またCu含有による熱間加工脆性を抑
制する効果も有する。従って、Cuと併せて含有させる
と、耐食性向上効果と熱間加工脆性抑制効果の相乗効果
が期待できる。こうした効果を発揮させるためには、N
i含有量は0.05%以上とすることが好ましい。しか
しながら、Ni含有量が過剰になると、完全オーステナ
イト組織における固液凝固温度範囲を広げて、低融点不
純物元素のデンドライト界面への偏析を助長すると共
に、Sと反応して溶接金属の粒界に低融点のNiS化合
物を析出させ、凝固金属の粒界の延性を劣化させる。こ
うしたことから、Niの過剰な含有は、耐溶接高温割れ
に悪影響を与えるので、その含有量の上限は6%とする
ことが好ましい。尚、Ni含有量のより好ましい下限は
0.2%であり、より好ましい上限は4%である。
イオンの進入を阻止し、緻密な「安定錆層」を形成し
て、耐候性を向上させる効果を有する特徴的な元素であ
る。そして、従来の耐候性鋼では、この効果を発揮させ
るために、0.05%程度以上0.15%程度以下の含
有を必須としている。しかしながら、本発明で対象とす
る鋼板においては、Pを比較的多く含有させると、溶接
性を著しく阻害し、前記少数桁橋梁の施工上重要な、予
熱なし(予熱フリー)で高効率の大入熱溶接ができる溶接
性の要求特性を満たすことができなくなる。
有によって緻密な「安定錆層」の形成が達成できるの
で、Pの過剰な含有は必要でない。従って、本発明で対
象とする鋼板は、Pの含有量を極力低減することが良
く、P含有量低減の経済性も考慮して、0.03%未満
に抑制することが好ましい。また、P含有量をこの様に
低減することによって、溶接性の向上にも大きく貢献す
ることになる。尚、P含有量は、より好ましくは、0.
015%以下に低減するのが良い。
おけるpHの低下の原因となり、欠陥内での凝縮水分の
酸化性を促進し、腐食を誘発する作用がある、鋼材の裸
耐候性を劣化させる。従って、本発明で用いる鋼板とし
ては、Crを0.05%未満に抑制することが好まし
い。
当量Ceq(%)が0.41%以下と低く規定すること
が好ましい。これは、特に少数桁橋梁等の構造物用の鋼
材に優れた耐候性を発揮させると共に、板厚が厚くても
良好な溶接性を確保するためである。具体的には、50
mm厚み以上、更には80mm厚み以上の厚板でも、予
熱なしでしかも溶接割れ等の溶接不良を生じないで、入
熱量5KJ/mm以上、場合によっては100乃至30
0KJ/mm以上の大入熱溶接等の高効率溶接施工を可
能とする溶接性を確保するためである。この鋼の低炭素
当量化は、鋼マトリックスの焼入れ性を低下させ、溶接
時における溶接熱影響部組織のフェライトの微細化にも
有効である。従って、上記(2)式で表わされる鋼材の
炭素当量Ceq(%)が0.41%を超えた場合には、
溶接性が悪くなり、50mm以上の厚板で、予熱なしで
入熱量5KJ/mm以上の大入熱溶接等の高効率溶接施
工ができなくなり、本発明で製造される鋼板で特に対象
とする少数桁橋梁用途には使用できなくなる。
によって、(a)Ca:0.01%以下(0%を含まな
い)、(b)Al:0.5%以下(0%を含まない)、
(c)B:0.005%以下(0%を含まない)、
(d)La:0.05%以下(0%を含まない),C
e:0.05%以下(0%を含まない)およびMg:
0.05%以下(0%を含まない)よりなる群から選ば
れる1種以上等を含有することも有用であり、含有させ
る成分の種類に応じて鋼板の特性を更に改善することが
できる。また、Sの含有量を0.02%以下に抑制する
ことも、耐食性の改善という点から有効である。これら
各成分の範囲規定理由は下記の通りである。
接性の向上効果も有する。Caによる耐候性向上作用の
一つは、耐候性に有害なSを固定して、鋼マトリックス
を清浄化することである。また他の作用として、鋼中に
微量固溶したCaが鋼表面やミクロ的な欠陥部での腐食
進行過程において、鉄の腐食反応に伴い微量溶解してア
ルカリ性を呈する。従って、腐食(アノード)先端部の
溶液pH緩衝効果を有し、腐食先端部での腐食を抑制す
る効果を有する元素である。これらは、前記Crの様な
溶解時にpHを下げる元素の作用と全く逆の作用を有し
ている。
減による効果やTi等の「安定錆層」の形成促進効果と
併わせ、裸耐候性等の耐食性向上の相乗効果が生じる。
この相乗効果は、Caの含有量が多くなるに従って大き
くなるが、その量が過剰になるとその効果は飽和し、経
済的でない。特にCaが過剰に含有されると、鋼の清浄
度を悪くし、耐候性鋼の製造時、特に製鋼中の炉壁を損
傷する可能性がある。こうしたことから、Caを含有さ
せるときには、その含有量は、0.01%程度までとす
ることが好ましい。尚、Ca含有による上記効果を有効
に発揮させるためには、0.0001%以上含有させる
ことが好ましい。
の形成を促進し、裸耐候性を向上させる効果を有する。
また、溶接性の向上効果も有する。そして、この溶接性
向上効果は、Tiとの複合添加によって一層増すことに
なる。また、Alは、溶鋼の脱酸元素として、固溶酸素
を捕捉すると共に、ブローホールの発生を防止して、鋼
の靭性向上の為にも有効な元素である。
れて大きくなるが、過剰に含有させても上記効果は飽和
するばかりか、却って溶接性を劣化させたり、アルミナ
系介在物の増加によってを鋼の靭性を低下させるので
0.5%以下で含有させることが好ましい。尚、これら
の効果を有効に発揮させるためには、0.05%以上含
有させることが好ましい。
果を発揮する。こうした効果はその含有量が多くなるに
つれて大きくなるが、過剰に含有させるとB化合物を生
成して靭性を低下させるので0.005%以下で含有さ
せることが好ましい。尚、こうした効果を有効に発揮さ
せるためには、0.0003%以上含有させることが好
ましい。
い),Ce:0.05%以下(0%を含まない)および
Mg:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群か
ら選ばれる1種以上 La,CeおよびMgは、裸耐候性等の耐食性をより向
上させる観点から、必要によって選択的に含有される。
これらの元素は、鋼表面やミクロ的な欠陥部の腐食進行
過程において、鉄の腐食反応に伴い微量溶解してアルカ
リ性を呈する。従って、腐食(アノード)先端部の溶液
pH緩衝効果を有し、腐食先端部での腐食を抑制する効
果を有する元素である。これらは、Crの様な溶解時に
pHを下げる元素の作用とは全く逆の作用を持ってい
る。こうしたことから、上記Crの低減効果やTi等の
「安定錆層」の形成促進効果と併用することによって、
裸耐候性等の耐食性向上をより一層高める相乗効果が期
待できる。こうした効果は、La,CeおよびMgのう
ちの1種以上を含有させることによって発揮されるが、
過剰に含有させてもその効果が飽和して経済的でなく、
また機械的性質も悪くする恐れがある。こうしたことか
ら、上記元素はいずれも0.5%を限度として含有させ
ることが好ましい。また、上記効果を有効に発揮させる
ためには、各々の元素の含有量が0.0001%以上と
することが好ましい。
るFeS,MnSが鋼中に多量に生成して、裸耐候性等
の耐食性が低下する恐れがある。また、前述の如く、N
iを過剰に含有させた場合には、Sとの反応によって溶
接金属の粒界に低融点のNiS化合物を析出させ、凝固
金属の粒界の延性を劣化させ易くなる。
制すれば、低融点のNiS化合物を析出させずに、Ni
をより多量に含有させることが可能になる。例えば、S
含有量が0.02%を超えた場合には、Ni含有量は3
%以下とすべきであるが、S含有量を0.02%以下と
することによって、Ni含有量を6%まで高めることが
できる。尚、S含有量は、より好ましくは0.01%以
下とするのが良い。
組成は上記の通りであり、残部は実質的にFeからなる
ものである。ここで「実質的にFe」とは、本発明で対
象とする鋼板にはFe以外にその特性を阻害しない程度
の微量成分(許容成分)をも含み得るものであり、前記
許容成分としては例えば、Zr,V,Nb,Mo,W等
の元素やSn,Sb,As,O,H等の不可避的不純物
が挙げられる。
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
〜Dを用い、板厚:120mm→20mmに圧延するパ
ススケジュールにおいて、圧延温度を様々に変えた(即
ち、前記T(℃)±50℃での累積の圧下率を変えた)
製造条件にて圧延を行ない、製造条件が鋼板の機械的特
性(降伏応力YS,引張強さTSおよび降伏比YR)に
与える影響について調査した。
各パスでのT(℃)±50℃の値、および前記T(℃)
±50℃での累積の圧下率等と共に、下記2、3に示
す。例えば、鋼種Aの製造条件1においては、T(℃)
±50℃の温度領域(パススケジュールで53mm→2
5mm)において、圧下量53%[[(53−25)/
53]×100]の圧延を施したことを意味する。尚、
表2、3には、下記の方法によって評価した溶接性およ
び裸耐候性の評価結果についても示した。
熱溶接し、溶接部について、高温割れ、引張強さ、靭性
を評価した。本発明で好ましい溶接性とは、高温割れ:
無し、低温割れる防止予熱温度:25℃以下、引張強
さ:母材と同クラス、靭性vE-40≧100Jとした。
溶接は、入熱量35kJ/cmのサブマージアーク溶接
を行なった。高温割れ率は、JIS規格で制定されてい
るC型ジグ拘束突き合わせ溶接割れ試験(高温割れ試
験)で行なった。供試材の低温割れは、JIS規格で制
定されている斜めY型拘束突き合わせ溶接割れ試験(低
温割れ試験)にて割れの発生を防止できる供試材の予熱
温度で評価した。また、靭性は、溶接継手ボンド部の−
40℃における吸収エネルギーvE-40[J]で評価し
ている。
面に生々した錆が緻密な「安定錆層」で、1年間大気暴
露(週1回の5%塩水散布を含む)後の鋼材の屁金板圧
厚減少量が0.8mm以下、好ましくは0.5mm以下
とする錆であるかどうかの目安となる。そして、緻密な
「安定錆層」か否かの目安は錆の非晶質度(非晶質度合
い)と錆中のβ−FeOOH分率がある。即ち、鋼材表
面に生成する鉄錆の主要な成分は、α−FeOOH,β
−FeOOH,γ−FeOOHおよびFe3O4の結晶性
の錆と、非晶質の錆の5種類からなる。この内、非晶質
の錆は、緻密な「安定錆層」を形成し、鋼材の長期の裸
耐候性を保障する。従って、鉄錆の非晶質の錆の割合
(非晶質度)が高いほど、また結晶性錆の成分の内で特
に腐食を促進し易いβ−FeOOHの割合が少ないほ
ど、緻密な「安定錆層」といえる。本発明では、緻密な
緻密な「安定錆層」として、錆の非晶質成分の分率が3
0質量%以上で、β−FeOOH成分の分率が20質量
%以下と規定する。また、より裸耐候性をを向上させ、
鋼材の裸使用をより確実に補償するために、錆の非晶質
成分の分率が40質量%以上で、β−FeOOH成分の
分率が10質量%以下とすることがより好ましい。
の供試材の平均板厚をマイクロメータで測定し、密度を
考慮して平均板厚減少量[mm]を測定した。非晶質度
を測定する手段として、「腐食防食95C−306(3
04〜344頁)」の「粉末X線回折法による鉄錆成分
の定量化およびその応用」に開示された粉末X線回折法
が有効である。この文献では、耐候性鋼材を対象に粉末
X線回折法により、鋼材表面の前記鉄錆成分の定量化を
試み、鉄錆中の非晶質錆の割合(非晶質度)が高いほ
ど、緻密な「安定錆層」となる耐食改善モデルを裏付け
ている。
て、同文献では、内部標準として一定質量比のCaF2
或はZnO等を鋼材から採取した錆試料に混合し粉末化
したものを通常のX線回折法によって同定し、前記5種
類の錆各々に固有な回折ピークの積分強度比と、予め求
めた各々の錆成分の検量線から、各々の結晶性の錆成分
の定量化を行ない、錆の合計量からこれら各々の結晶性
の錆成分量を差し引いて非晶質成分の割合を算出してい
る。これは、非晶質成分自体の回折ピークの積分強度比
が求めにくく、定量化しにくいためである。因みに、同
文献にも開示されている通り、X線回折法以外の、赤外
分光分析法等の他の分析法では、錆成分の定性的な分析
は可能であるものの、定量的な分析は困難であり、錆成
分の確立された定量法がない。従って、本発明で言う鋼
材表面の錆の非晶質度とは、このX線回折法、特に前記
文献に開示された粉末X線回折法により定量的に測定し
たものを言う。
散布を含む1年間の大気暴露試験を行ない、その長期耐
久性を評価した。1年間の大気暴露試験の条件は、週1
回の5%塩水散布を行ない、供試材は南向き、水平に対
し30°の傾斜で設置した。
規定する要件を満足させつつ製造した鋼板では、Tiの
多量添加にも拘わらずTiCの析出を防止して低降伏比
が達成されていることが分かる。
iを比較的多く添加することによって良好な裸耐候性を
達成すると共に、Tiの添加にも拘わらず変態後のTi
Cの析出を抑制して低降伏比を実現することが可能で、
必要によって優れた溶接性をも発揮できる低降伏比高T
i系鋼板が製造できた。
Claims (6)
- 【請求項1】 C:0.2%以下(質量%の意味、以下
同じ)、Si:0.1〜1%、Mn:2.5%以下(0
%を含まない)、Ti:0.025〜0.5%および
N:0.01%以下(0%を含まない)を夫々含有する
鋼材を用い、その表面温度が、下記(1)式で規定され
る温度T(℃)の±50℃の温度域において、累積で3
0%以上の圧下を加えることを特徴とする耐候性に優れ
た低降伏比高Ti系鋼板の製造方法。 T(℃)=1500+([Ti]-[N]×3.4)+800-板厚(mm) ……(1) 但し、[Ti]および[N]は、夫々TiおよびNの含有量
(質量%)を示し、また[Ti]>0.1%のときには[Ti]
=0.1%とする。 - 【請求項2】 Cu:0.05〜3%,Ni0.05〜
6%を含有すると共に、P:0.03%未満(0%を含
む),Cr:0.05%未満(0%を含む)に夫々抑制
し、且つ下記(2)式で規定される炭素当量Ceq
(%)が0.41%以下である鋼板を用いる請求項1に
記載の製造方法。 Ceq(%)=[C]+[Si]/22+[Mn]/6+[P]/10−[Cu]/20−[Ni]/24+[Cr]/2…(2) 但し、[C],[Si],[Mn],[P],[Cu],[Ni]および[Cr]は、夫
々C,Si,Mn,P,Cu,NiおよびCrの含有量
(質量%)を示す。 - 【請求項3】 Ca:0.01%以下(0%を含まな
い)を含有する鋼板を用いる請求項1または2に記載の
製造方法。 - 【請求項4】 Al:0.5%以下(0%を含まない)
を含有する鋼板を用いる請求項1〜3のいずれかに記載
の製造方法。 - 【請求項5】 B:0.005%以下(0%を含まな
い)を含有する鋼板を用いるものである請求項1〜4の
いずれかに記載の製造方法。 - 【請求項6】 La:0.05%以下(0%を含まな
い),Ce:0.05%以下(0%を含まない)および
Mg:0.05%以下(0%を含まない)よりなる群か
ら選ばれる1種以上を含有する鋼板を用いるものである
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
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CN105537796A (zh) * | 2014-10-23 | 2016-05-04 | 株式会社神户制钢所 | 耐腐蚀性优异的船舶用焊接接头 |
-
2000
- 2000-03-07 JP JP2000062500A patent/JP3773745B2/ja not_active Expired - Lifetime
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