JP2001120259A - 微生物によるカルボン酸アミド類の製法 - Google Patents

微生物によるカルボン酸アミド類の製法

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JP2001120259A
JP2001120259A JP30252299A JP30252299A JP2001120259A JP 2001120259 A JP2001120259 A JP 2001120259A JP 30252299 A JP30252299 A JP 30252299A JP 30252299 A JP30252299 A JP 30252299A JP 2001120259 A JP2001120259 A JP 2001120259A
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Yasushi Aoki
裕史 青木
Harumi Kamaike
晴美 蒲池
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ニトリル化合物から変異微生物を用いて高収
率でカルボン酸アミド類を製造する方法、特に、芳香族
ポリニトリルの特定のシアノ基を変異微生物を用いて加
水分解し、高収率でシアノカルボン酸アミドを製造する
方法を提供すること。当該製法に適用される変異微生物
を提供すること。 【解決手段】 ニトリル化合物のシアノ基を微生物を用
いて加水分解し、カルボン酸アミド類を製造する方法に
おいて、カルボン酸アミドをカルボン酸に変換する能力
を欠損または低減した変異微生物を用いることを特徴と
するカルボン酸アミド類の製法を提供する。ロドコッカ
スsp.SD818(FERM○○○○)株を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明により得られるカルボン酸
アミド類は、医薬、農薬、染料、その他化学品の合成原
料として有用である。
【0002】
【発明の属する技術分野】本発明は、微生物の作用によ
りニトリル化合物のシアノ基を加水分解し対応するカル
ボン酸アミド類を製造する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】ニトリル化合物のシアノ基を加水分解し
対応するカルボン酸アミド類を得る反応は、簡便にカル
ボン酸アミド類を得る方法として検討がなされてきた。
例えば、化学合成的には、ニトリル化合物を金属触媒存
在下、高温で強アルカリで水和することにより、対応す
るカルボン酸アミドが得られる。しかしながらこうした
方法では、カルボン酸アミドがさらに加水分解されたカ
ルボン酸の生成を抑制することが難しく、高収率でカル
ボン酸アミドを得ることが困難である。
【0004】また、1分子中に複数のシアノ基を有する
ポリニトリル化合物の特定のシアノ基のみを選択的に加
水分解し対応するシアノカルボン酸アミドを化学合成的
に得るには、上記のごときシアノ基の水和反応の制御に
加え、未反応のまま残すべきシアノ基が加水分解を受け
ないよう保護する必要がある。このため、工程は多段階
かつ複雑なものとならざるを得ず、工業的に実施するに
は好ましい方法ではない。
【0005】このような背景から、当該技術分野におい
て、生物反応の選択性を生かした、微生物によるシアノ
基加水分解反応の応用が種々検討されてきた。ポリニト
リル化合物の特定のシアノ基を生物的に選択的に加水分
解し、対応するシアノカルボン酸アミドを得る反応、特
に、芳香族ポリニトリル化合物の特定のシアノ基を選択
的に加水分解することにより、芳香族シアノカルボン酸
アミドを得る方法については、米国特許第4,629,700号
に、ロドコッカス(Rhodococcus)属の微生物を用いた
方法が開示されている。また、欧州特許第178,106号で
は、ロドコッカス(Rhodococcus)属を含む4属のグラム
陽性細菌を用いた、ポリニトリル化合物からの選択的シ
アノ基加水分解によるシアノカルボン酸類及びシアノカ
ルボン酸アミド類の製法が開示されている。
【0006】しかしながら、これらの方法で得られる主
生成物はいずれの場合もシアノカルボン酸であり、シア
ノカルボン酸アミドは微量の副生物として得られるのみ
である。
【0007】芳香族ジニトリルから主生成物としてシア
ノカルボン酸アミドを取得した例としては、L.Biotechn
ology Letter,17(11),1219(1995、L.Martinikovaら)
の、ロドコッカス属微生物を用いた反応の報告が知られ
ている。しかしながら本報告によれば反応はごく低濃度
域で実施されたものであり、しかもニトリルがカルボン
酸に至る反応の過程で、反応が未進行の初期の段階でご
く短時間に一過的に生成するアミド体を回収しているに
過ぎず、工業的に適した方法ではない。
【0008】以上のように、ポリニトリル化合物の特定
のシアノ基を選択的に水和し、シアノカルボン酸アミド
化合物を主生成物として、かつ反応液中で高濃度でシア
ノカルボン酸アミド化合物を得るための工業的に適した
方法は確立されていない。
【0009】また、従来のカルボン酸アミド類を得る製
造方法は、得られるカルボン酸アミド類が単に副生物で
あったり、または反応液中での濃度が薄く工業的生産に
適さないという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ニトリル化
合物のシアノ基を変異微生物を用いて加水分解すること
による高収率のカルボン酸アミド類の製法、特に、芳香
族ポリニトリルの特定のシアノ基を変異微生物を用いて
選択的に加水分解することによる高収率のシアノカルボ
ン酸アミド類の製法を提供することを課題とする。また
当該製法に適用される新規な変異微生物を提供すること
を課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】発明者らは、まず、ポリ
ニトリル化合物からのシアノカルボン酸の生成反応に関
して、詳細に検討を重ねた。特に、フタロニトリル類か
ら、シアノ安息香酸類を得る公知方法において生じる副
生物を詳細に解析し、シアノ安息香酸が生成する過程
で、シアノベンズアミドが微量検出されることに着目し
た。さらに、シアノベンズアミドを加水分解しシアノ安
息香酸を生成させる能力を欠損または低下された微生物
を創出しフタロニトリル類に作用させることにより、シ
アノベンズアミドの蓄積を大幅に増大することを見出
し、本発明に至った。
【0012】小林らの報告(日本農芸化学会誌 Vol.71,
No.12,1997)などにより、微生物がニトリル化合物のシ
アノ基をカルボン酸まで加水分解する経路としては、ニ
トリラーゼによる一段階の反応経路と、ニトリルヒドラ
ターゼとアミダーゼの二つの酵素による、一旦アミド体
を経由する二段階の反応経路、の2種類が存在すること
が知られている。
【0013】発明者らは、公知のシアノ基変換微生物で
あるロドコッカスsp. ATCC39484株を用いて、本菌株
がポリニトリル化合物をシアノカルボン酸に変換する反
応経路に関する詳細な検討を行った。すなわち、フタロ
ニトリルを本菌株の菌体懸濁反応に供すると、主産物と
してシアノ安息香酸を生成するが、同時に副生物として
シアノベンズアミドを生成することを見出した。本微生
物のシアノ安息香酸生成には、少なくともシアノベンズ
アミドを経由する2段階反応経路が寄与していると推測
した。そして、用いる微生物のシアノベンズアミドをシ
アノ安息香酸に加水分解する活性を欠損または低下させ
ることで、シアノベンズアミドの状態で蓄積させ、これ
を主生成物とすることができるとの考えに至った。ATCC
39484株を親株として、NTG(N-メチル-N'-ニトロ-N-ニ
トロソグアニジン)を用い常法に従い変異株集団を作成
した。本菌株がベンゾニトリル、ならびにベンズアミド
を唯一炭素・窒素源として良好に生育することを利用
し、ベンズアミドを唯一炭素・窒素源として生育できな
くなることを指標に、これら変異株集団より鋭意スクリ
ーニングを行った。多数の非生育株を取得し実際にニト
リル化合物との反応に供した結果、フタロニトリルとの
反応においてシアノベンズアミド蓄積量が著しく増大し
た変異微生物株を取得したことで本発明を完成した。
【0014】すなわち本発明は、以下に示すものであ
る。 [1] ニトリル化合物のシアノ基を微生物を用いて加
水分解し、カルボン酸アミド類を製造する方法におい
て、カルボン酸アミド類をカルボン酸類に変換する能力
を欠損または低減した変異微生物を用いることを特徴と
するカルボン酸アミド類の製法。 [2] 用いる変異微生物がロドコッカス属微生物の変
異株であることを特徴とする、[1]に記載のカルボン
酸アミド類の製法。 [3] 上記ロドコッカス属微生物の変異株がロドコッ
カスsp.ATCC39484の変異株である[2]に記載のカ
ルボン酸アミド類の製法。 [4] 上記ロドコッカスsp.ATCC39484の変異株が
ロドコッカスsp.SD828(FERM P-17599)である
[3]に記載のカルボン酸アミド類の製法。
【0015】[5] ニトリル化合物がポリニトリル化
合物であり、カルボン酸アミド類がシアノカルボン酸ア
ミド類である[1]〜[4]に記載のカルボン酸アミド
類の製法。 [6] ポリニトリル化合物が芳香族ポリニトリル化合
物であり、シアノカルボン酸アミド類が芳香族シアノカ
ルボン酸アミド類である[5]に記載のカルボン酸アミ
ド類の製法。 [7] 芳香族ポリニトリル化合物がo−フタロニトリ
ル、イソフタロニトリルまたはテレフタロニトリルであ
り、芳香族シアノカルボン酸アミド類が対応するo−シ
アノベンズアミド、m−シアノベンズアミドまたはp−
シアノベンズアミドである[6]に記載のカルボン酸ア
ミド類の製法。 [8] カルボン酸アミド類をカルボン酸類に変換する
能力を欠損または低減したロドコッカス属微生物の変異
株。 [9] ロドコッカスsp.ATCC39484を親株とする
[8]に記載の変異株。 [10] ロドコッカスsp.SD828(FERM P-1759
9)株。
【0016】なお、表記変異株 ロドコッカスsp.S
D828は、公知微生物であるロドコッカスsp.ATCC394
84(米 American Type Culture Collectionより分譲)
から発明者らにより創出された変異微生物であり、工業
技術院生命工学研究所に生命研寄託第FERM P-17599号
として寄託されているものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明す
る。本発明に用いられる、カルボン酸アミドをカルボン
酸に変換する能力を欠損または低減した変異微生物は、
ニトリル化合物のシアノ基を加水分解する能力を持つ微
生物、特に、ニトリル化合物を水和しシアノ基をカルボ
ン酸アミドに変換し、更に生じたカルボン酸アミドを加
水分解しカルボン酸に変換する能力を持つ微生物を親株
として、以下のようにして創出することができる。
【0018】ニトリル加水分解能を有することが知られ
る微生物の例としては、ロドコッカス(Rhodococcus)、
ロドトルラ(Rhodotorulla)、フザリウム(Fusarium)、シ
ュードモナス(Pseudomonas)、アシネトバクター(Acinet
obacter)、バチルス(Bacillus)、ブレビバクテリウム(B
revibacterium) 、クレブシエラ(Klebsiella)、ミクロ
コッカス(Micrococcus)、バークホルデリア(Burkholder
ia)、アエロモナス(Aeromonas)、アグロバクテリウム(A
grobacterium)、アクロモバクター(Achromobacter)、ア
スペルギルス(Aspergillus)、リゾビウム(Rhizobium)
等に属する微生物がある。
【0019】例えば、ロドコッカス エスピー ATCC39
484株を、通常知られるような微生物の培養方法にて培
養し、得られた菌体にNTG(N-メチル-N’-ニトロ-N-
ニトロソグアニジン)、EMS(エチルメタンスルホン
酸)等のアルキル化剤、5-ブロモウラシル等の塩基アナ
ログ、アザセリンやアクリジンオレンジ等のインターカ
レーション剤など、一般に知られる変異誘起化合物、ま
たは紫外線を作用させ、変異微生物集団を調製する。こ
の変異微生物集団から、アミド化合物を加水分解する能
力が低下あるいは欠損した変異株を選抜する。変異株
が、アミド化合物を加水分解する能力を低下あるいは欠
損していることは、変異微生物株の培養菌体をニトリル
化合物に作用させ、得られた生成物を、HPLC等の分析方
法により解析し、ニトリル化合物の分解に伴い、対応す
るカルボン酸アミド体の蓄積の状況を観察することで知
ることができる。
【0020】また、親株とした微生物が栄養源として生
育することができるようなアミド化合物、例えばATCC39
484を親株とした場合にはベンズアミド等を資化し生育
する能力の欠失もしくは低下を以て、アミド分解能の欠
損または低下の指標とすることができる。この指標に基
づく種々の方法により、目的の変異微生物を変異微生物
集団より効率的に濃縮することができる。例えば、変異
微生物集団を通常の栄養寒天培地、例えば、LB寒天培地
等に塗沫し、生じたコロニーを個別に、ベンズアミドを
唯一炭素・窒素源とする寒天培地に移植し、そこでの生
育の良否を観察することで、ベンズアミド資化能の変化
した変異株を検知することができる。また、いわゆるペ
ニシリンスクリーニング法を適用し、ベンズアミドによ
る生育能が欠損または低下した変異微生物を濃縮するこ
とができる。
【0021】すなわち、ベンズアミドを唯一栄養源とし
た培地に、微生物が***、増殖する過程に作用し微生物
を死滅させるような薬剤、例えばペニシリンを添加し、
そこに変異微生物集団を接種し培養することで、ベンズ
アミドで良好に生育する株が死滅し、ベンズアミドを資
化し生育する能力の欠失もしくは低下した株が濃縮され
る。
【0022】このようにして創出された変異株の一例と
して、ロドコッカスsp.SD828株を挙げることがで
きる。ロドコッカスsp.SD828株は、公知微生物で
あるロドコッカスsp.ATCC39484(米 American Type
Culture Collectionより分譲)から発明者らにより創
出された株であり、工業技術院生命工学研究所に生命研
寄託第FERM P-17599号として寄託されているものであ
る。
【0023】本発明の反応は、通常のニトリル加水分解
活性を持つ微生物によるカルボン酸製法と同様の、一般
的な微生物を用いた変換反応として実施することができ
る。例えば、前記のごとき変異微生物の調製法に基づき
創出された、アミド分解能低下株であるロドコッカスs
p.SD828株を1%ペプトンなどの栄養培地で、20℃〜40
℃、望ましくは25℃〜30℃の温度で24時間程度培養し、
得られた培養液に、ニトリル化合物を1ppm〜50%、望ま
しくは10ppm〜10%添加し、引き続き同様の温度で1時間
〜200時間程度撹拌し続けることにより達せられる。な
お添加されるニトリル化合物は必ずしも全量が溶解して
いなくてもよいが、反応液中での溶解性や分散性を改善
するような溶媒、界面活性剤等を添加することもでき
る。また反応の進行によるニトリル化合物の消費に応じ
て、連続的あるいは間欠的にニトリル化合物を添加して
もよく、この場合のニトリル化合物の反応液中濃度は前
記の限りではない。
【0024】微生物を培養するための培地炭素源として
は、グルコースやシュークロース、フルクトース、廃糖
蜜等の糖類、エタノールや酢酸、クエン酸、コハク酸、
乳酸、安息香酸、脂肪酸などの有機物又はこれらのアル
カリ金属塩、n-パラフィンなどの脂肪族炭化水素類、芳
香族炭化水素類、また例えばペプトン、肉エキス、魚エ
キス、大豆粉、ふすま等の天然有機物を、単独、あるい
はこれらの組み合わせにより、通常0.01%〜30%、望ま
しくは0.1%〜10%程度の濃度で用いることができる。
【0025】微生物を培養するための培地窒素源として
は、例えば硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝
酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの無機窒素化合物、ま
た尿素、尿酸などの含窒素有機物、ペプトン、肉エキ
ス、魚エキス、大豆粉、等の天然有機物を単独、あるい
はこれらの組み合わせにより、通常0.01%〜30%、望ま
しくは0.1%〜10%程度の濃度で用いることができる。
【0026】さらに必要に応じて、リン酸2水素カリウ
ム等のリン酸塩、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、酢酸
カルシウム、塩化マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸コ
バルト、硫酸ニッケルなどの金属塩が菌の生育改善のた
めに添加される。添加濃度は培養条件により異なるが、
通常、リン酸塩に関しては0.01%〜5%、マグネシウム
塩においては10ppm〜1%、他の化合物では0.1ppm〜1000
ppm程度である。また選択する培地により、ビタミン
類、アミノ酸、核酸などの供給源として例えば酵母エキ
ス、カザミノ酸、酵母核酸を1ppm〜100ppm程度添加する
ことにより、菌の生育を改善することができる。
【0027】また、菌のニトリルに対する反応性を向上
するために、ニトリル加水分解酵素の誘導源として培養
中にニトリル化合物、例えばベンゾニトリルなどを10pp
mから1%添加することは有用である。さらに、誘導源を
かねて、反応原料となるニトリル化合物を、培養開始時
点から添加しておくことも有用である。
【0028】いずれの成分を用いた場合も培地のpHは、
5〜9、望ましくは6〜8に調整されることが望ましい。ま
た以上のごとき培地であらかじめ培養された微生物菌体
を、遠心分離、膜ろ過などの方法により培養液から分取
し、反応原料であるニトリル化合物を含む水、生理食塩
水、または培養のpHと同様に調整されたリン酸、酢酸、
ホウ酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなど
とこれらの塩よりなる緩衝液等に再度懸濁し反応するこ
とは、反応液中の夾雑物を低減し、のちの生成物の単離
を簡便にするために有用である。反応中のpHは、十分な
濃度の緩衝液を用いる場合においては通常維持されうる
が、反応の進行により上記pHを逸脱する場合において
は、水酸化ナトリウム、アンモニアなどを用い適宜調整
することが望ましい。
【0029】反応液中に生成したカルボン酸アミド類
は、その反応液中での性状により、遠心分離、膜ろ過、
減圧乾燥、蒸留、溶媒抽出、塩析、イオン交換、各種ク
ロマトグラフィーなど通常用いられる方法で単離され
る。最も簡便には、反応液から有機溶媒によりカルボン
酸アミド類を抽出し、蒸留乾固することにより回収する
ことができる。なお反応生成物が水溶液として得られる
場合は、生成物が溶解した条件下で、遠心分離、膜ろ過
などの方法により、微生物菌体を除去しておくことが好
適である。また反応生成物が固形物として得られ、結晶
が十分に大きい場合はステンレス、ナイロン等のメッシ
ュを用いて生成物を分取することができる。結晶が微生
物との分別が困難な程度に微少な場合は、それらが溶解
するような条件、例えば有機溶媒共存下などにより一度
溶液として、遠心分離、膜ろ過等の方法により菌体を除
去し、しかる後に条件を回復し再度沈殿させ分取する方
法は好適である。ただし反応液の直接蒸留など、微生物
が除かれることが自明な手法をとることができる場合に
おいてはこの限りではない。
【0030】反応生成物の性質によっては、反応液中に
生成物が蓄積することにより、反応速度が低下する場合
がある。このような場合は、生成物の濃度に応じて反応
液中に、水、生理食塩水、反応緩衝液を追加し連続的に
希釈してゆく方法は好適である。また反応速度が低下し
た時点で菌を分取し、上清を生産物溶液として回収し、
分取した菌は再度反応原料を含む溶液あるいは懸濁液に
戻すことにより、反応速度を回復することができる。こ
れらの方法は、微生物のニトリル加水分解活性が維持さ
れる範囲において、何回でも繰り返すことができる。
【0031】本発明はさらに、本発明に用いられる微生
物の、無細胞抽出液、さらに無細胞抽出液から上記反応
を触媒する成分を濃縮・抽出したもの、等を用いても同
様に実施することができる。さらには、本反応に適用可
能な微生物もしくはその抽出液、抽出成分を、難溶性の
担体に固定化し、この固定化物を原料溶液に接触させる
ことによっても達成される。
【0032】このような固定化担体としては、ポリアク
リルアミド、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニル
ホルムアミド、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミ
ン、メチルセルロース、グルコマンナン、アルギン酸
塩、カラギーナン等、更にこれらの重合、架橋化物な
ど、微生物もしくはその抽出成分を包合した水難溶性の
固形分を形成するような化合物を単独、もしくは混合し
て用いることができる。また、活性炭、多孔質セラミッ
クス、グラスファイバー、多孔質ポリマー成型体、ニト
ロセルロース膜など、あらかじめ固形物として形成され
た物体上に微生物もしくはその抽出液、抽出成分を保持
させたものを用いることもできる。
【0033】本発明の方法によるシアノ基の加水分解反
応の基質特異性は広く、通常知られる種々のニトリル化
合物、例えば脂肪族ニトリル、芳香族ニトリル、複素環
式ニトリル、等を対象とし、高い選択率で対応するカル
ボン酸アミドを得ることができる。脂肪族ニトリルとし
ては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、n-ブ
チロニトリル、イソブチロニトリル、n-バレロニトリ
ル、イソバレロニトリル、カプロニトリル、マロノニト
リル、サクシノニトリル、アジポニトリル、グルコノニ
トリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙
げられる。また芳香族ニトリルとしてはベンゾニトリ
ル、トルニトリル、オルトフタロニトリル、テレフタロ
ニトリル、イソフタロニトリル、及びこれら芳香族ニト
リル化合物の置換体、例えば塩素化物、フッ素化物、ニ
トロ化物、アミノ化物、等が挙げられる。また複素環式
ニトリルとしては、3-シアノピリジン、4-シアノピリジ
ン、シアノインドール類、等が挙げられる。
【0034】また本発明は、1分子中に複数のシアノ基
を有するポリニトリル化合物の特定のシアノ基のみを高
い選択率で加水分解し、対応するシアノカルボン酸アミ
ドを得ることができる。このような化合物としては、例
えば脂肪族ニトリルとしては、マロノニトリル、サクシ
ノニトリル、アジポニトリル、グルコノニトリル等、ま
た芳香族ニトリルとしてはオルトフタロニトリル、テレ
フタロニトリル、イソフタロニトリル、及びこれら芳香
族ニトリル化合物の置換体、例えば塩素化物、フッ素化
物、ニトロ化物、アミノ化物等を挙げることができる。
【0035】
【実施例】以下に本発明の実施例を記載する。これら実
施例は本発明の範囲を規定するものではない。
【0036】(実施例1) 変異微生物の取得 ロドコッカス エスピー ATCC39484(米 American Ty
pe Culture Collectionより入手)を、LB寒天培地に画
線し、30℃恒温槽中で24時間培養した。生じたコロニー
より1白金耳掻き取り、LB液体培地5mlに接種、30℃の振
盪培養器にて6時間振盪培養した。菌体を10,000gの遠心
により回収し、等容の50mM リン酸カリウム/ナトリウ
ム緩衝液(pH7.0)で3回洗浄した後、等容の同緩衝液に再
度懸濁した。菌懸濁液に、2000ppm NTG(N-メチル-N'-
ニトロ-N-ニトロソグアニジン)溶液を、終濃度にして1
00ppmとなるよう添加しよく撹拌後、室温で30分間放置
した。菌体を10,000gの遠心により回収し、同緩衝液で1
回洗浄後、菌体を少量の同緩衝液に再度懸濁し、全量
を、0.1% ベンズアミドを含む無機塩液体培地5mlに接
種した。無機塩培地の組成を以下に示す。 (無機塩培地)
【0037】30℃、1.5時間の振盪培養の後、1mg/Lとな
るように、アンピシリンを添加し、更に30℃、12時間振
盪培養した。得られた培養液を500倍に希釈し、希釈液
を、LB固体培地(直径90mmシャーレ上)に各0.1mlず
つ、300枚に塗布した。30℃、48時間培養し、コロニー
が生じた段階で、高圧滅菌したベルベットにコロニーを
写し取り、各シャーレごとに0.1% ベンズアミド、1.5
%寒天を含む上記組成の無機塩固体培地(直径90mm)に
転写し、30℃、48時間培養した。転写元のLB固体培地
と、転写先の無機塩固体培地でのコロニー形成を比較
し、LBで良好に生育し、無機塩固体培地で生育しない約
400株を、転写元のLBから、滅菌した爪楊枝にて、新し
いLB固体培地に移植し、30℃、24時間培養した。生じた
全てのコロニーについてそれぞれ上記の無機塩培地5ml
に接種し、さらにイソフタロニトリル0.1%を添加し30
℃、48時間反応した。同時に親株ATCC39484についても
同様に培養し接種、反応を行った。それぞれの株につい
て得られた反応液の上清を100倍に希釈し、逆相HPLC
(カラム:Shodex DS-613、溶離液:50%アセトニトリ
ル/5mMリン酸カリウム緩衝液pH3.0、流速1mL/min、検
出:UV 210nm)に供した。うち1株(SD828株)は、3-シア
ノベンズアミドを著量蓄積していることを確認した。目
的とする、アミド加水分解活性が欠損した株が得られた
と考えられた。以下詳細に、反応の特性について検証し
た。
【0038】(実施例2)ロドコッカス エスピー S
D828を、LB寒天培地に画線し、30℃の恒温槽で24時間
培養した。形成されたコロニーから、1白金耳をかきと
り、500mL容のバッフル付きフラスコ中の LB液体培地1
00mLに懸濁した。フラスコを、30℃の恒温回転振盪培養
器に設置し、毎分120回転、24時間培養した。得られた
微生物菌体を、10,000gの遠心により回収し、培養液と
等容の50mM リン酸ナトリウム/カリウム緩衝液(pH=
7)に懸濁した。菌懸濁液にイソフタロニトリルを5%
(質量/体積)相当添加し、30℃の恒温回転振盪培養器に
設置し、毎分120回転、48時間反応した。得られた反応
液に、反応液と等容の酢酸エチルを添加し撹拌、抽出を
行った。
【0039】得られた酢酸エチル層を適宜希釈し、逆相
HPLC(カラム:Shodex DS-613、溶離液:50%アセトニ
トリル/5mMリン酸カリウム緩衝液pH3.0、流速1mL/mi
n、検出:UV 210nm)により分析した。反応液中に主成
分として3-シアノベンズアミド標品と保持時間が一致す
るピークを認めた。ピーク成分を分取し、GC-マススペ
クトル解析に供試し、それぞれ標品と同一の構造を示唆
するフラグメントパターンを与えることを確認した。HP
LCにおける標品との吸光度の比較から、24時間における
反応液中の3-シアノベンズアミドの蓄積濃度は2.14%、
消費されたイソフタロニトリルに対する収率は70.3%と
算出された。なお、微生物をロドコッカスsp. ATCC394
84として、上記と同じ方法で培養・反応を試みたとこ
ろ、3-シアノベンズアミドの蓄積濃度は0.03%、消費さ
れたイソフタロニトリルに対する収率は1.0%であっ
た。
【0040】(実施例3)ロドコッカス エスピー SD
828を、LB寒天培地に画線し、30℃の恒温槽で24時間培
養した。形成されたコロニーから、1白金耳をかきと
り、500mL容のバッフル付きフラスコ中の LB液体培地1
00mLに懸濁した。フラスコを、30℃の恒温回転振盪培養
器に設置し、毎分120回転、24時間培養した。得られた
微生物菌体を、10,000gの遠心により回収し、培養液と
等容の50mM リン酸ナトリウム/カリウム緩衝液(pH=
7)に懸濁した。菌懸濁液にテレフタロニトリルを1%
(質量/体積)相当、及び誘導基質としてベンゾニトリル
を0.1%(質量/体積)添加し、30℃の恒温回転振盪培養器
に設置し、毎分120回転、48時間反応した。得られた反
応液に、等容の酢酸エチルを添加し撹拌、抽出を行っ
た。得られた酢酸エチル層を適宜希釈し、逆相HPLC(カ
ラム:Shodex DS-613、溶離液:50%アセトニトリル/5
mMリン酸カリウム緩衝液pH3.0、流速1mL/min、検出:UV
240nm)により分析した。反応液中に4-シアノベンズア
ミド標品と保持時間が一致するピークを認めた。ピーク
成分を分取し、GC-マススペクトル解析に供試し、それ
ぞれ標品と同一の構造を示唆するフラグメントパターン
を与えることを確認した。HPLCにおける標品との吸光度
の比較から、24時間における反応液中の4-シアノベンズ
アミドの蓄積濃度は0.60%、消費されたテレフタロニト
リルに対する収率は66.1%と算出された。
【0041】なお、微生物をロドコッカスsp. ATCC394
84として、上記と同じ方法で培養・反応を試みたとこ
ろ、4-シアノベンズアミドの蓄積濃度は0.02%、消費さ
れたテレフタロニトリルに対する収率は2.2%であっ
た。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、ニトリル化合物を原料
として、簡便で効率よく、カルボン酸アミドを得ること
が出来る。また、ポリニトリル化合物、特に芳香族ポリ
ニトリル化合物を原料として、簡便で効率よく、シアノ
カルボン酸アミドを得ることが出来る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B064 AE02 CA03 CB11 CC03 CD12 DA16 4B065 AA45X AC12 AC14 BA18 BB12 CA16 CA60

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニトリル化合物のシアノ基を微生物を用
    いて加水分解し、カルボン酸アミド類を製造する方法に
    おいて、カルボン酸アミド類をカルボン酸類に変換する
    能力を欠損または低減した変異微生物を用いることを特
    徴とするカルボン酸アミド類の製法。
  2. 【請求項2】 用いる変異微生物がロドコッカス属微生
    物の変異株であることを特徴とする、請求項1に記載の
    カルボン酸アミド類の製法。
  3. 【請求項3】 上記ロドコッカス属微生物の変異株がロ
    ドコッカスsp.ATCC39484の変異株である請求項2に
    記載のカルボン酸アミド類の製法。
  4. 【請求項4】 上記ロドコッカスsp.ATCC39484の変
    異株がロドコッカスsp.SD828(FERM P-17599)であ
    る請求項3に記載のカルボン酸アミド類の製法。
  5. 【請求項5】 ニトリル化合物がポリニトリル化合物で
    あり、カルボン酸アミド類がシアノカルボン酸アミド類
    である請求項1乃至4のいずれかに記載のカルボン酸ア
    ミド類の製法。
  6. 【請求項6】 ポリニトリル化合物が芳香族ポリニトリ
    ル化合物であり、シアノカルボン酸アミド類が芳香族シ
    アノカルボン酸アミド類である請求項5に記載のカルボ
    ン酸アミド類の製法。
  7. 【請求項7】 芳香族ポリニトリル化合物がo−フタロ
    ニトリル、イソフタロニトリルまたはテレフタロニトリ
    ルであり、芳香族シアノカルボン酸アミド類が対応する
    o−シアノベンズアミド、m−シアノベンズアミドまた
    はp−シアノベンズアミドである請求項6に記載のカル
    ボン酸アミド類の製法。
  8. 【請求項8】 カルボン酸アミド類をカルボン酸類に変
    換する能力を欠損または低減したロドコッカス属微生物
    の変異株。
  9. 【請求項9】 ロドコッカスsp.ATCC39484を親株と
    する請求項8に記載の変異株。
  10. 【請求項10】 ロドコッカスsp.SD828(FERM P
    -17599)株。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011250731A (ja) * 2010-06-01 2011-12-15 Mitsubishi Rayon Co Ltd アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物

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JP2011250731A (ja) * 2010-06-01 2011-12-15 Mitsubishi Rayon Co Ltd アミダーゼ遺伝子及び/若しくはニトリラーゼ遺伝子を欠失又は不活性化させた微生物

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