JP2001118525A - カラー陰極線管 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレス加工により成形されるマスクフレーム
の対角部付近の絞りの余肉の逃げにより生ずる側壁部の
変形を防止して色純度の劣化やシャドウマスク組立ての
作業性を低下させないカラー陰極線管を構成することを
目的とする。 【解決手段】 有効面の周辺にスカート部が設けられた
ほぼ矩形状のマスク本体と、側壁部26の一端部側に内側
張出し部27が設けられ、その側壁部の内面にマスク本体
のスカート部が溶接されるほぼ矩形状のマスクフレーム
とからなるシャドウマスクを有するカラー陰極線管にお
いて、マスクフレームの各側壁部の他端部側に外側方に
突出しかつ一端部に達しない高さの凸部31が少なくとも
１つ形成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、カラー陰極線管
に係り、特にシャドウマスクのほぼ矩形状のマスクフレ
ームのプレス成形時の絞り加工による歪の影響を抑制し
たカラー陰極線管に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般にカラー陰極線管は、ほぼ矩形状の
パネルの内面に設けられた３色蛍光体層からなる蛍光体
スクリーンに対向してほぼ矩形状のシャドウマスクが配
置され、ファンネルのネック内に設けられた電子銃から
放出される３電子ビームを偏向ヨークにより偏向し、こ
の電子ビームをシャドウマスクにより選別して上記３色
蛍光体層に入射させることにより、カラー画像を表示す
る構造に形成されている。

【０００３】一般に上記シャドウマスクは、図７に示す
ように、蛍光体スクリーンと対向する有効面１に３電子
ビームを選別する多数の電子ビーム通過孔２が形成さ
れ、この有効面１の周辺部にスカート部３が折曲げ形成
されたほぼ矩形状のマスク本体４と、側壁部５の一端部
側にほぼ直角に内側張出し部６が設けられ、その側壁部
５の内側面または外側面に上記マスク本体４のスカート
部３が溶接されるほぼ矩形状のマスクフレーム７からな
る。

【０００４】従来このようなシャドウマスクは、マスク
本体４、マスクフレーム７をともに冷間圧延鋼板から形
成されていたが、高輝度画像を表示する高密度電子ビー
ムの衝突により加熱され、局部的にマスク本体４が熱膨
張するために生ずる色純度の劣化を抑制するために、マ
スク本体４のみをアンバーなどの低熱膨張材で形成し、
これに冷間圧延鋼板からなるマスクフレーム７を取付け
たシャドウマスクが実用化されている。従来このシャド
ウマスクは、マスク本体４のスカート部３をマスクフレ
ーム７の側壁部５の内側にして、この側壁部５の内側面
に溶接されている。

【０００５】上記のように低熱膨張のマスク本体４を高
熱膨張のマスクフレーム７の側壁部５の内側面に取付け
られるシャドウマスクでは、マスクフレーム７の内径が
マスク本体４の外径より大幅に大きいと、シャドウマス
クがカラー陰極線管の製造工程での加熱時、高熱膨張の
マスクフレーム７が低熱膨張のマスク本体４を引張るた
めに局部的に塑性変形し、色純度の劣化をおこす。また
長時間カラー陰極線管を動作させた場合、電子ビームの
衝突により加熱されたマスク本体４の熱がマスクフレー
ム７に伝わり、マスク本体４が熱膨張したマスクフレー
ム７により引張られて変形し、色純度の劣化をおこす。
また、マスクフレーム７の内径とマスク本体４の外径の
差が小さいと、マスク本体４のスカート部３をマスクフ
レーム７の側壁部５の内側への挿入が容易でなく、作業
性が低下する。

【０００６】つまり、低熱膨張のマスク本体４を高熱膨
張のマスクフレーム７の側壁部５の内側面に取付けられ
るシャドウマスクでは、マスク本体４のスカート部３と
マスクフレーム７の側壁部５との間隔を適性にすること
が重要である。

【０００７】しかし、一般にマスクフレーム７は、プレ
ス成形により形成されるため、ほぼ矩形状のマスクフレ
ーム７では、特に対角部付近に大きな絞りが加わる。そ
のため、絞り加工により生ずる余肉が対角部を挟む長短
辺の側壁部５方向に逃げ、図８に示すように、本来内側
張出し部６に対して垂直であるべき側壁部５が、図９に
示すように湾曲傾斜したり、あるいは図１０に示すよう
に波打ったりする変形が生ずる。このように側壁部５が
変形すると、マスク本体４のスカート部３とマスクフレ
ーム７の側壁部５との間隔が適性値からずれ、上述した
色純度の劣化やシャドウマスク組立ての作業性の低下を
まねく。

【０００８】上記側壁部の変形を防止する技術として、
特開昭６３−２５００３９号公報、特開平１０−７９２
３３号公報、特開平１１−４５６６４号公報などには、
側壁部にマスクフレームの内側に突出した突出部を設け
て、マスク本体のマスクフレーム内側へ挿入しやすく
し、またその突出部をマスク本体のスカート部に溶接す
ることにより、マスク本体が熱膨張したマスクフレーム
により引張られるために生ずるマスク本体の変形を防止
し、かつマスクフレーム自体の強度を高めたものが示さ
れている。しかし、このようなシャドウマスクは、高輝
度画像表示時、マスクフレームの熱膨張がマスク本体に
及ぼす影響が、マスク本体のスカート部に接している突
出部とスカート部に接しない部分とで異なるため、色純
度の劣化に差ができ、画面全域の色純度の劣化が一様で
なくなる。そのため、このようなシャドウマスクを用い
ると、色純度劣化の補正が非常に難しくなる。

【０００９】また、米国特許第１４，６４５，９６８号
明細書には、シャドウマスクの共振周波数を低減するた
めに、ほぼ矩形状マスク本体とマスクフレームとの溶接
点間の各辺側壁部の中央部および対角部に突起部を設け
たものが示されている。しかしこのようなシャドウマス
クでは、マスク本体のマスクフレームとの溶接点以外の
スカート部がマスクフレームから離れてしまうため、か
えって振動しやすくなり、かつ画面全域の色純度の劣化
が一様でなくなるなどの問題がある。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、低熱膨
張のマスク本体が高熱膨張のマスクフレームの側壁部の
内側面に取付けられたシャドウマスクでは、マスク本体
のスカート部とマスクフレームの側壁部との間隔を適性
にすることが重要である。しかし、一般にマスクフレー
ムは、プレス成形により形成されるため、対角部付近に
大きな絞りが加わり、その余肉の逃げにより内側張出し
部に対して垂直であるべき側壁部が湾曲傾斜したり、波
打ったりする変形が生ずる。そのため、マスク本体のス
カート部とマスクフレームの側壁部との間隔が適性値か
らずれ、色純度の劣化やシャドウマスク組立ての作業性
の低下をまねく。

【００１１】上記側壁部の変形を防止する技術として、
側壁部にマスクフレームの内側に突出した突出部を設け
て、マスク本体のマスクフレーム内側への挿入性を改善
し、またその突出部でマスク本体のスカート部に溶接す
るものが提案されている。しかし、このようなシャドウ
マスクは、高輝度画像表示時、マスクフレームの熱膨張
がマスク本体に及ぼす影響、がマスク本体のスカート部
に接している突出部とスカート部に接しない部分とで異
なるため、色純度の劣化に差ができ、画面全域の色純度
の劣化が一様でなくなる。そのため、色純度劣化の補正
が非常に難しくなる。

【００１２】また、シャドウマスクの共振周波数を低減
するために、ほぼ矩形状マスク本体とマスクフレームと
の溶接点間の各辺側壁部の中央部および対角部に突起部
を設けたものが提案されている。しかしこのようなシャ
ドウマスクでは、マスク本体のマスクフレームとの溶接
点以外のスカート部がマスクフレームから離れてしまう
ため、かえって振動しやすくなり、かつ画面全域の色純
度の劣化が一様でなくなるなどの問題がある。

【００１３】この発明は、上記問題点に鑑みてなされた
ものであり、プレス成形により形成されるマスクフレー
ムの対角部付近の絞りの余肉の逃げにより生ずる側壁部
の変形を防止して色純度の劣化やシャドウマスク組立て
の作業性を低下させないカラー陰極線管を構成すること
を目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】パネルの内面に設けられ
た蛍光体スクリーンと対向する有効面に多数の電子ビー
ム通過孔が形成され、この有効面の周辺にスカート部が
設けられたほぼ矩形状のマスク本体と、側壁部の一端部
側に内側張出し部が設けられ、その側壁部の内側面にマ
スク本体のスカート部が溶接されるほぼ矩形状のマスク
フレームとからなるシャドウマスクを有するカラー陰極
線管において、マスクフレームの各側壁部の他端部側に
外側方に突出しかつ一端部に達しない高さの凸部が少な
くとも１つ形成した。

【００１５】また、上記カラー陰極線管において、凸部
の高さをｈc 、マスク本体のスカート部の高さをｈm と
するとき、 ｈc ＜ｈm に形成した。

【００１６】

【発明の実施の形態】以下、図面を参照してこの発明の
実施の形態について説明する。

【００１７】図１にその一形態であるカラー陰極線管を
示す。このカラー陰極線管は、ほぼ矩形状のパネル１０
と漏斗状のファンネル１１からなる外囲器を有する。そ
のパネル１０の内面に、青、緑、赤に発光する３色蛍光
体層からなる蛍光体スクリーン１２が設けられている。
また、この蛍光体スクリーン１２に対向して、その内側
にほぼ矩形状のシャドウマスク１３が配置され、後述す
るマスクフレームに取付けられた弾性支持体１４をパネ
ル１０に設けられたスタッドピン１５に係止することに
より支持されている。一方、ファンネル１１のネック１
７内に３電子ビーム１８B ，１８G ，１８R を放出する
電子銃１９が配設されている。そして、上記電子銃１９
から放出される３電子ビーム１８B ，１８G ，１８R を
ファンネル１１の外側に装着された偏向ヨーク２０によ
り偏向し、シャドウマスク１３を介して蛍光体スクリー
ン１２を水平、垂直走査することにより、カラー画像を
表示する構造に形成されている。

【００１８】このシャドウマスク１３は、蛍光体スクリ
ーン１２と対向する曲面からなる有効面２２に多数の電
子ビーム通過孔が形成され、この有効面２２の周辺部に
スカート部２４が設けられたアンバー材からなるほぼ矩
形状のマスク本体２５と、側壁部２６の一端部側に内側
張出し部２７、他端部側に傾斜した外側張出し部２８が
設けられ、その側壁部２６の他端部側の内側面に上記マ
スク本体２５のスカート部２４が溶接された冷間圧延鋼
板からなるほぼ矩形状のマスクフレーム２９とで構成さ
れている。

【００１９】特にこの実施の形態では、図２に示すよう
に、上記マスクフレーム２９の長短辺の側壁部２６の他
端部側にそれぞれ外側方に突出した少なくとも１個の凸
部３１が設けられている。この凸部３０は、図３（ａ）
に示すように、その高さをｈc 、マスクフレーム２９の
側壁部２６の高さ（他端部端縁から一端部端縁までの高
さ）をｈs 、マスク本体２５のスカート部２４の高さを
ｈm とするとき、 ｈc ＜ｈs かつ ｈc ＜ｈm に形成されている。

【００２０】このような凸部３０は、１９インチカラー
陰極線管の一例では、図２に示したように、各対角部に
接近して短辺側壁部に２個、長辺側壁部に４個形成さ
れ、それぞれ幅ｗ２０mm、高さｈc １０mm、突出長ｄ
０．５mmの大きさに形成されている（図３（ｂ）参
照）。

【００２１】上記シャドウマスクは、マスク本体および
マスクフレームをそれぞれプレス成形により形成したの
ち、そのマスク本体をマスクフレームの側壁部内側に挿
入して、マスク本体のスカート部にマスクフレームの側
壁部の内側面に溶接することにより組立てられる。特に
マスク本体については、あらかじめフォトエッングによ
り電子ビーム通過孔の形成された平板状マスクをプレス
成形により曲面に張出し加工して有効面を成形したの
ち、絞り加工によりスカート部を成形することにより形
成される。このようなプレス加工により成形すると、図
４に示すように、高張力のアンバー材からなるマスク本
体２５は、有効面２２に対してスカート部２４を直角に
折曲げても、スプリングバックによりスカート部２４の
遊端部側が外側に開く。そのため、そのシャドウマスク
組立て前のマスク本体２５の最大寸法、すなわちスカー
ト部２４の遊端間寸法をＬm 、マスクフレーム２９の内
径寸法をＬw 、マスクフレーム２９の最大外径寸法、す
なわち他端部端縁外径寸法をＬr とすると、 Ｌw ＜Ｌm ＜Ｌr となる。

【００２２】したがって、上記マスク本体２５をマスク
フレーム２９の側壁部２６の内側に挿入して溶接する
と、図５に示すように、ΔＬp 圧縮された状態で側壁部
２６に溶接される。この場合、上記のようにマスクフレ
ーム２９の側壁部２６に凸部３０を設けると、プレス成
形の絞り加工による側壁部２６の不所望な変形を吸収し
て、マスク本体２５のスカート部２４のほぼ全周をマス
クフレーム２９の側壁部２６の内側面に密着でき、従来
マスクフレーム２９の側壁部２６が変形するために生じ
た色純度の劣化やシャドウマスク組立ての作業性の低下
を防止できる。

【００２３】すなわち、プレス成形によりマスクフレー
ムを形成すると、対角部付近に大きな絞りが加わるた
め、その余肉が長短辺側壁部方向に逃げ、従来のマスク
フレームでは、図９および図１０に示したように、側壁
部が湾曲傾斜したり波打ったりする変形が生じたが、こ
の実施の形態のように側壁部に凸部３１を設けると、そ
の余肉を吸収して、上記側壁部の変形を防止することが
できる。この余肉の吸収は、凸部３１の大きさ（幅×高
さ×突出長さ）および個数によって変化する。したがっ
て、これら大きさおよび個数を調整ことによりすべての
マスクフレームに適用して側壁部の変形を効果的に防止
することができる。

【００２４】一方、図６（ａ）に示したように、マスク
本体２５のスカート部２４を矢印方向に引張ると、ある
点で一点鎖線で示したように塑性変形し、元の状態に戻
らなくなる。この時点でのスカート部２４の引張り量を
ΔＬm1、同（ｂ）に示したように加熱によるマスク本体
２５の熱膨張量をΔＬm2、同（ｃ）に示したように加熱
によるマスクフレーム２９の熱膨張量をΔＬr とする
と、 ΔＬr ＞ΔＬm1＋ΔＬm2 の場合にマスク本体２５の変形が生ずる。

【００２５】これに対して、上記のようにシャドウマス
ク１３を組立てるとき、マスク本体２５のスカート部２
４をΔＬp 圧縮された状態でマスクフレーム２９の側壁
部２６の内側に挿入して溶接すると、マスクフレーム２
９の熱膨張量ΔＬr がΔＬm1＋ΔＬm2を上回っても、マ
スク本体２５のスカート部２４が圧縮量ΔＬp だけ広が
るため、ΔＬr がΔＬm1＋ΔＬm2を上回らないかぎり、
マスク本体２５の変形を防止できる。

【００２６】また、マスク本体２５のスカート部２４の
遊端間寸法Ｌm よりも、マスクフレーム２９の他端部端
縁外径寸法Ｌr が大きく、 Ｌm ＜Ｌr かつマスクフレーム２９の他端部に傾斜した外側張出し
部が形成されているので、マスク本体２５を容易にマス
クフレーム２９の内側に挿入でき、シャドウマスクを容
易に組立てることができる。

【００２７】さらに、高輝度画像表示時、マスクフレー
ム２９が熱膨張しても、マスク本体２５のスカート部２
４のほぼ全周がマスクフレーム２９の側壁部２６に接し
ているので、局部的な色純度の劣化を防止できる。ま
た、共振による色純度の劣化も低減できる。

【００２８】なお、上記実施の形態では、マスク本体が
低熱膨張材からなるシャドウマスクについて説明した
が、この発明は、マスク本体、マスクフレームがともに
冷間圧延鋼板など、熱膨張の高い材料からなるシャドウ
マスクにも適用できる。

【００２９】

【発明の効果】上述のように、マスクフレームの側壁部
の他端部側に外側方に突出し、かつ一端部に達しない高
さの凸部を形成すると、プレス加工によりマスクフレー
ムを成形するときの対角部付近の絞りの余肉が長短辺側
壁部方向に逃げるため生ずる側壁部の変形を防止し、マ
スク本体のスカート部とマスクフレームの側壁部との間
隔が適正に保って、色純度の劣化やシャドウマスク組立
ての作業性の低下を防止できる。また、共振による色純
度の劣化も低減できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の実施の一形態であるカラー陰極線管
の構成を示す図である。

【図２】上記カラー陰極線管のマスクフレームの構造を
示す図である。

【図３】図３（ａ）および（ｂ）はそれぞれ上記マスク
フレームの凸部の大きさを説明するための図である。

【図４】図４（ａ）および（ｂ）はそれぞれ上記カラー
陰極線管のマスク本体とマスクフレームの寸法の関係を
示す図である。

【図５】上記カラー陰極線管のマスク本体とマスクフレ
ームとの関係を説明するための要部構成を示す図であ
る。

【図６】図６（ａ）はマスク本体の塑性変形を説明する
ための図、図６（ｂ）はマスク本体の熱膨張を説明する
ための図、図６（ｃ）はマスクフレームの熱膨張を説明
するための図である。

【図７】図７（ａ）は従来のシャドウマスクの構成を示
す斜視図、図７（ｂ）はその断面図である。

【図８】図８（ａ）は従来のマスクフレームの構成を示
す斜視図、図８（ｂ）はその断面図である。

【図９】従来のマスクフレームの変形を示す図である。

【図１０】従来のマスクフレームの異なる変形を示す図
である。

【符号の説明】

１０…パネル １２…蛍光体スクリーン １３…シャドウマスク ２２…有効面 ２４…スカート部 ２５…マスク本体 ２６…側壁部 ２７…内側張出し部 ２９…マスクフレーム ３１…凸部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 パネルの内面に設けられた蛍光体スクリ
   ーンと対向する有効面に多数の電子ビーム通過孔が形成
   され、この有効面の周辺にスカート部が設けられたほぼ
   矩形状のマスク本体と、側壁部の一端部側に内側張出し
   部が設けられ、上記側壁部の内側面に上記マスク本体の
   スカート部が溶接されるほぼ矩形状のマスクフレームと
   からなるシャドウマスクを有するカラー陰極線管におい
   て、 上記マスクフレームの各側壁部の他端部側に外側方に突
   出しかつ上記一端部に達しない高さの凸部が少なくとも
   １つ形成されていることを特徴とするカラー陰極線管。
2. 【請求項２】 凸部の高さをｈc 、マスク本体のスカー
   ト部の高さをｈm とするとき、 ｈc ＜ｈm に形成されていることを特徴とする請求項１記載のカラ
   ー陰極線管。