JP2001079317A

JP2001079317A - 消臭性フィルタ

Info

Publication number: JP2001079317A
Application number: JP25662799A
Authority: JP
Inventors: Hideo Nojima; 秀雄野島
Original assignee: Sharp Corp
Current assignee: Sharp Corp
Priority date: 1999-09-10
Filing date: 1999-09-10
Publication date: 2001-03-27

Abstract

(57)【要約】【課題】優れた消臭性能をもつフィルタを提供する。【解決手段】ポリエステルまたはレーヨンのマルチフ
ィラメントで形成された２枚以上のネット１１をナイロ
ンのモノフィラメント１２で連結した立体編物１０を形
成する。この立体編物１０に遷移金属キレート化合物で
ある鉄フタロシアニン誘導体を含浸させて、消臭性フィ
ルタを得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、消臭性材料を担持
させた消臭性フィルタに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、住環境の高気密化に伴い、室内で
発生する不快な臭気、たとえば、タバコ臭、生活臭（生
ゴミ、調理、ペット等の匂い）を取り除き、快適な生活
を送りたいという要望がますます強くなっている。この
要望に応えるため、消臭性フィルタを設置することによ
り消臭機能を付加した高性能な空気調和機が開発されて
いる。消臭性のフィルタには、現在、消臭性材料とし
て、活性炭、光触媒、金属触媒等が採用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
消臭性フィルタは、消臭性材料にそれぞれ欠点があり、
このため、消臭の性能が十分でないという問題があっ
た。

【０００４】すなわち、消臭性材料として活性炭を用い
た消臭性フィルタは、代表的な生活臭（生ゴミ、調理、
ペット等の匂い）における悪臭物質である硫化水素に対
して消臭能力が十分でないという欠点があった。

【０００５】また、光触媒は、生活臭の硫化水素を分解
除去する能力はあるが、分解速度が遅いため、実際の空
気調和機に搭載する場合は吸着剤と併用する必要があ
る。この場合、十分な消臭性能を得るには、大量の吸着
剤を必要とし、空気抵抗が大きくなって空気調和機の圧
力損失が大きくなり、空気調和機のファンに負担をかけ
る問題があった。さらに、光触媒は高価であるうえ紫外
線ランプを必要とするため、使用できる空気調和機も限
定されるという問題があった。

【０００６】また、金属触媒（白金、モリブデン酸化物
等）は、消臭性能を発揮するためには１００℃以上の温
度が必要なため、これらの材料も使用できる用途は限定
されていた。

【０００７】近年、生活悪臭物質である硫化水素の除去
に有効な消臭性材料として金属キレート化合物が開発さ
れてきた。これまで、ナイロンのネットや、レーヨンの
不織布に金属キレート化合物が担持されたフィルタが開
発されてきたが、これらのフィルタでは、空気と接触す
るフィルタの面積が小さく、十分な消臭性能が得られて
いなかった。

【０００８】このため、紫外線ランプ等を使用せず、簡
便な構造で、室温で十分な消臭性能を発揮する消臭性フ
ィルタは実現していなかった。

【０００９】本発明は、従来の消臭性フィルタの上述し
た課題を克服し、生活悪臭物質である硫化水素の消臭能
力に優れ、十分な消臭性能を有する消臭性フィルタを提
供することを目的とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明による消臭性フィルタは、マルチフィラメン
トで形成された少なくとも２枚のネットをモノフィラメ
ントで連結して形成した立体編物に、遷移金属キレート
化合物を主成分とする消臭性材料が保持されていること
を特徴とする。マルチフィラメントのネットをモノフィ
ラメントで連結した立体織物では、遷移金属キレート化
合物を主成分とする消臭性材料と空気との接触面積が従
来に比べて大きくなり、優れた消臭性能が実現する。

【００１１】また、本発明による消臭性フィルタの立体
編物において、モノフィラメントは、たとえば、ナイロ
ンを主成分とすることが好ましい。ナイロンは、金属キ
レート化合物を強く担持することができ、消臭性能の向
上に寄与し得る。

【００１２】また、本発明による消臭性フィルタの立体
編物において、ネットを形成するマルチフィラメントは
ポリエステルまたはレーヨンを含むことが好ましい。ポ
リエステルまたはレーヨンは、それぞれ遷移金属キレー
ト化合物を強く担持することができ、消臭性能の向上に
寄与し得る。

【００１３】また、本発明による消臭性フィルタにおい
て、遷移金属キレート化合物は、たとえば、金属フタロ
シアニン誘導体であることが好ましい。金属フタロシア
ニン誘導体は、触媒として硫化水素をより効果的に分解
し、フィルタに高い消臭性能を付与する。

【００１４】本発明に使用される立体編物は、マルチフ
ィラメントによるネットにより、広い吸着面積を確保
し、しかも、モノフィラメントよる該ネットの連結によ
り、耐衝撃性、耐弾性回復性を有するとともに大量の空
間を保持する、通気性に優れた立体構造を実現してい
る。この立体編物における編み構造は、任意であるが、
ダブルラッセルなどの編み構造を好ましく用いることが
できる。このような立体編物に消臭性材料を担持させる
ことにより、より多くの消臭性材料を保持し、しかも通
気性に優れたフィルタを提供することができる。

【００１５】立体編物のマルチフィラメントを構成する
各フィラメントの太さは、たとえば５０デニール〜２０
０デニールが好ましく、フィラメントの本数は、３０〜
６０が好ましい。マルチフィラメントは、ポリエステル
等の合成繊維、またはレーヨン等のセルロース系化学繊
維とすることが好ましい。立体編物のモノフィラメント
の太さは、たとえば、１００デニール〜２００デニール
が好ましい。モノフィラメントは、たとえば、ナイロン
等のポリアミド系合成繊維とすることが好ましい。立体
編物において、マルチフィラメントからなるネットの枚
数は、２枚またはそれ以上で任意である。

【００１６】消臭性材料としての遷移金属キレート化合
物には、金属フタロシアニン誘導体の他、金属キレート
樹脂、金属ポルフィリンなどがある。

【００１７】好ましい消臭性材料の１つである金属フタ
ロシアニン誘導体は、金属フタロシアニンの骨格を有す
る化合物であり、たとえば、金属フタロシアニンに適当
な置換基が導入された化合物である。フタロシアニンと
錯体を形成する好ましい金属には、Ｆｅ、Ｃｏ、Ｍｎな
どがある。金属フタロシアニン誘導体として、式（１）
または（２）で表される構造を有する化合物を挙げるこ
とができる。

【００１８】

【化１】

【００１９】

【化２】

【００２０】式中、Ａ¹、Ａ²、Ａ³、Ａ⁴、Ｂ¹、Ｂ²、Ｂ
³およびＢ⁴は、それぞれ、水素、カルボキシル基、ヒド
ロキシアルキル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、カ
ルボキシアルキル基、メルカプト基およびホスホノ基か
らなる群より選ばれ、ただし、Ａ¹、Ａ²、Ａ³、Ａ⁴、Ｂ
¹、Ｂ²、Ｂ³およびＢ⁴のうち少なくとも１つは水素原子
ではなく、ｍおよびｎは、それぞれ０、１、２、３また
は４の整数を表し、ただし、ｍ＋ｎは４以下であり、か
つＭは、フタロシアニンと配位結合し得る金属原子を表
す。Ｍは、好ましくはＦｅ、Ｃｏ、Ｍｎである。

【００２１】消臭性材料として金属フタロシアニン誘導
体等の遷移金属キレート化合物を保持する消臭性フィル
タは、たとえば、次の工程を経て製造することができ
る。必要な立体編物を用意し、この立体編物を遷移金属
キレート化合物が溶解されたアルカリ水溶液に浸漬す
る。これにより、遷移金属キレート化合物は立体編物の
内部まで侵入する。このようにして遷移金属キレート化
合物が含浸された立体編物を、酸で中和し、次いで洗浄
および乾燥を行なえば、消臭性材料として遷移金属キレ
ート化合物を担持する消臭性フィルタが得られる。

【００２２】

【発明の実施の形態】本発明による消臭性フィルタの基
体として、マルチフィラメントで形成された２枚のネッ
トをモノフィラメントで連結して形成した立体編物を使
用する。図１（ａ）〜（ｃ）に、立体編物の概略を示
す。立体編物１０は、マルチフィラメントで形成された
２枚のネット１１をモノフィラメント１２で連結して形
成されている。基体の厚さは５ｍｍである。モノフィラ
メントとしてナイロン繊維を使用し、ネット１１を形成
するマルチフィラメントとしてポリエステル繊維を使用
する。

【００２３】遷移金属キレート化合物を含浸させた消臭
性フィルタは、以下の手順により、式（３）で表される
オクタカルボキシ鉄フタロシアニンを立体編物の基体に
含浸させることによって作製する。

【００２４】

【化３】

【００２５】まず、純水１００ｍｌに対して水酸化カリ
ウムを１ｇの比で溶解させてアルカリ水溶液を調製す
る。このアルカリ水溶液のｐＨは１１程度である。これ
に、基体となる立体編物を一晩浸漬して膨潤させる。次
に、オクタカルボキシ鉄フタロシアニン（日清製粉株式
会社）を１重量％の割合でアルカリ水溶液に溶解させ
る。このときのアルカリ水溶液には、純水１００ｍｌに
対して水酸化カリウムを０．６ｇの比で溶解させたｐＨ
１０〜１１程度のものを用いる。このようにして調製
し、約７０℃に保持したオクタカルボキシ鉄フタロシア
ニンのアルカリ水溶液に、上記のアルカリ水溶液で膨潤
させた基体を２時間浸漬させ、取り出した後、濡れた状
態で１００℃の熱風を１０分間送風して乾燥させる。乾
燥後、基体に付着した過剰の水酸化カリウムを中和する
ため、基体を希塩酸（純水１００ｍｌに対して塩酸を
０．５ｍｌの比で調製）に１０分間浸漬して中和処理を
行なう。この後、基体を取り出し、十分に純水で洗浄し
た後に再度乾燥して、基体をオクタカルボキシ鉄フタロ
シアニンで染色した消臭性フィルタを得る。

【００２６】次に、本発明の実施形態の消臭性フィルタ
とそれを用いた特性実験の結果を従来技術による比較例
とともに説明する。

【００２７】＜第１実施形態＞図２は、本発明に係る第
１実施形態の消臭性フィルタを設置した空気清浄機の概
略図である。空気清浄機２０において、上述したように
遷移金属キレート化合物を立体編物に含浸させて形成し
た消臭性フィルタ１（３０ｃｍ×４０ｃｍ、厚さ５ｍ
ｍ)が、空気吸込み口２のほぼ全面にわたって設置され
ている。この状態で空気清浄機を運転させると、送風フ
ァン３が作動して室内の空気は空気吸込み口２から吸い
込まれる。吸い込まれた空気は、フィルタ１を通過した
後、送風ファン３によって吹き出し口４から吹き出され
る。空気とともに吸込み口２から吸い込まれた臭気は、
消臭性フィルタ１を通過する際に除去されるようになっ
ている。

【００２８】このようにしてフィルタを取り付けた空気
清浄機について、代表的な生活悪臭物質である硫化水素
の消臭性能の評価を実施した。すなわち、空気清浄機を
容積１ｍ³のアクリル製ボックス内に設置し、温度２５
℃、湿度６０％の状態で、硫化水素を初期濃度として１
０ｐｐｍ程度に調整し、ボックス内に設けたファンでボ
ックス内の空気を攪拌するとともに、空気清浄機を５ｍ
³／分の流速で運転して消臭性能を試験した。この試験
において、３０分後の硫化水素の濃度を検知管によって
測定した。空気清浄機運転前の測定値と３０分運転後の
測定値との比較から、３０分後の硫化水素の除去率
（％）を算出した。

【００２９】＜第２実施形態＞２枚のネットを形成する
マルチフィラメントとしてレーヨンを用いた以外は、第
１実施形態と同様にして形成した消臭性フィルタについ
て消臭性能の評価を行った。試験方法は第１実施形態に
準ずる。

【００３０】＜比較例１＞比較例として、基体として立
体編物を使用せず、鉄フタロシアニンを平たいナイロン
のネットに含浸して形成した消臭性フィルタを空気清浄
機に取り付け、消臭性能の評価を同様に行った。

【００３１】＜比較例２＞他の比較例として、代表的な
消臭性材料である活性炭を用いて消臭性フィルタを形成
して空気清浄機に取り付け、消臭性能の評価を行った。

【００３２】以上、本発明の実施形態および比較例につ
いて、消臭性フィルタの消臭性能を測定した結果を表１
に示す。

【００３３】

【表１】

【００３４】表１に示すとおり、ポリエステルのマルチ
フィラメントで形成した２枚のネットをナイロンのモノ
フィラメントで連結して形成した立体編物にカルボキシ
鉄フタロシアニンを含浸させた消臭性フィルタ（第１実
施形態）は、３０分後の硫化水素除去率として９２％を
達成した。また、マルチフィラメントとしてレーヨンを
用いた消臭性フィルタ（第２実施形態）は、３０分後の
硫化水素除去率として９０％を達成した。

【００３５】一方、鉄フタロシアニンを平たいナイロン
ネットに含浸させた消臭性フィルタ（比較例１）の硫化
水素除去率は、４０％と低かった。また、従来の活性炭
フィルタを取り付けた場合（比較例２）の硫化水素除去
率は、２０％であり、不十分な値であった。

【００３６】＜第３実施形態＞次に、コバルトフタロシ
アニンを担持した立体編物を消臭性フィルタに用いた第
３実施形態について述べる。この消臭性フィルタの作製
方法は、遷移金属キレート化合物としてオクタカルボキ
シ鉄フタロシアニンの代わりにオクタカルボキシコバル
トフタロシアニン（日清製粉株式会社）を用いる他は、
上記第１実施形態の方法に準ずる。このようにして作製
したカルボキシコバルトフタロシアニンを担持するフィ
ルタを使用し、それ以外は第１実施形態と同様にして、
空気清浄機に取り付けて消臭性能の試験を行った。その
結果、３０分後の硫化水素除去率として９０％が得られ
た。この値は上記第１実施形態で得られた値と同等であ
り、消臭性能は金属フタロシアニンの中心金属の種類に
ほとんど依存しないことが認められる。

【００３７】さらに、立体編物にカルボキシ鉄フタロシ
アニンまたはカルボキシコバルトフタロシアニンを担持
させた上述の消臭性フィルタは、使用後、水洗いするこ
とにより消臭性能が再生され、５０回の水洗い後も初期
消臭性能を維持していることが確認された。

【００３８】これらの結果から明らかなように、本発明
による消臭性フィルタは、従来の消臭性フィルタよりも
優れた消臭性能を発揮することが認められた。

【００３９】以上、空気清浄機に消臭性フィルタを取り
付ける場合について説明したが、これに限らず、室内に
設置して空気を循環させる他の装置、例えば空気調和
機、除湿機等にこの消臭性フィルタを搭載してもよい。

【００４０】

【発明の効果】本発明によれば、優れた消臭性能を有す
るフィルタを提供することができる。特に、本発明によ
れば、消臭性材料との接触面積が広くかつ通気性の高い
フィルタを提供することができる。また、本発明によれ
ば、代表的な生活悪臭物質である硫化水素をより効率的
に除去することができるフィルタを提供することができ
る。このようなフィルタは、空気清浄機、空気調和機、
除湿機等の消臭性フィルタとして有用である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施形態である消臭性フィルタに
ついて、その基体である立体編物の概略を示す（ａ）斜
視図、（ｂ）平面図および（ｃ）側面図である。

【図２】本発明の一実施形態である消臭性フィルタを
取り付けた空気清浄機の概略図である。

【符号の説明】

１０立体織物、１１マルチフィラメントで形成され
たネット、１２モノフィラメント、１消臭性フィル
タ、２空気取り入れ口、３送風ファン、４空気吹き
出し口、２０空気清浄機。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】マルチフィラメントで形成された少なく
とも２枚のネットをモノフィラメントで連結して形成し
た立体編物に、遷移金属キレート化合物を主成分とする
消臭性材料が保持されていることを特徴とする、消臭性
フィルタ。
【請求項２】前記モノフィラメントがナイロンを主成
分とすることを特徴とする、請求項１に記載の消臭性フ
ィルタ。
【請求項３】前記ネットを形成する前記マルチフィラ
メントがポリエステルを含むことを特徴とする、請求項
１または２に記載の消臭性フィルタ。
【請求項４】前記ネットを形成する前記マルチフィラ
メントがレーヨンを含むことを特徴とする、請求項１ま
たは２に記載の消臭性フィルタ。
【請求項5】前記遷移金属キレート化合物が金属フタ
ロシアニン誘導体であることを特徴とする、請求項１〜
４のいずれか１項に記載の消臭性フィルタ。