JP2001035262A - 導電膜付きガラス板とその製造方法、およびこれを用いた光電変換装置 - Google Patents
導電膜付きガラス板とその製造方法、およびこれを用いた光電変換装置Info
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Abstract
伴い、導電膜の光透過性能のさらなる向上が求められて
いる。導電膜中のフッ素濃度、カーボン濃度、成膜時の
酸素濃度などを制御することにより、導電膜の吸収係数
を低減する。 【解決手段】 ガラス板35上に、適宜下地層31,3
2を形成した後、酸化錫を主成分とする導電膜33を成
膜する。導電膜の吸収係数は1.2×103cm-1以下
である。この導電膜33中のフッ素濃度は0.03重量
%以上0.1重量%以下、炭素濃度は錫原子に対する炭
素原子の比率により表示して0.015以下が好まし
い。導電膜33は、酸素濃度を10体積%以上とした雰
囲気における熱分解酸化反応により形成できる。導電膜
33上に光電変換ユニット37を積層し、さらに裏面電
極39を形成した光電変換装置とする。
Description
板とその製造方法に関し、またこれを用いた太陽電池な
どの光電変換装置に関する。さらに詳しくは、光吸収能
が低い導電膜を有し、光電変換装置に好適な導電膜付き
ガラス板とその製造方法に関する。
板上に、酸化錫を主成分とする透明導電膜、光電変換層
である薄膜シリコン層、アルミニウムなどからなる裏面
電極を、この順に形成した構成を有する。このような構
成において、光電変換層に光を取り込む窓側に位置する
透明導電膜には、高い光透過性能が要求される。また、
電極としての機能から、高い導電性(低い抵抗値)も要
求される。
酸化錫(以下、「SnO2:F」という)膜が多用され
ている。この膜は、錫をドープした酸化インジウム(I
TO)膜よりも耐プラズマ性などの化学的安定性に優れ
ており、プラズマCVD法が適用される光電変換層(薄
膜シリコン層)の成膜時にも劣化が少ない。フッ素をド
ーピングすることにより、低抵抗化が図られているもの
の、電極として望ましい値にまで抵抗値を下げるため
に、SnO2:F膜はある程度の膜厚を有するように成
膜される。このため、光電変換装置の光電変換効率を向
上させるためには、SnO2:F膜の単位膜厚当たりの
光透過性能を向上させる必要がある。
O2:F膜を成膜する際に膜中に取り込まれる塩素濃度
を0.40重量%以下とすることにより、透明導電膜の
光吸収を抑制する方法が開示されている。なお、ここで
用いられているガラス板は、予め所定寸法に切断された
ソーダライムガラス板である。
2:F膜など導電膜の光透過性能に対する、成膜条件や
塩素以外の微量成分の影響は明らかにされてない。そこ
で、本発明は、これら成膜条件や塩素以外の微量成分も
調整し、従来よりも高い光透過性能を備えた導電膜を備
えたガラス板と、この導電膜付きガラス板の製造方法を
提供することを目的とする。また、この導電膜付きガラ
ス板を用いて光電変換装置の特性を改善することを目的
とする。
に鋭意研究した結果、本発明者は、導電膜中のフッ素お
よび炭素の濃度が、酸化錫を主成分とする導電膜の光透
過性能に影響を及ぼすことを見い出した。また、上記導
電膜を成膜する際の雰囲気中の酸素濃度が上記光透過性
能に影響を及ぼすことも見い出した。これらの条件を適
切に制御すれば、酸化錫を主成分とする導電膜の吸収係
数は従来よりも低減される。すなわち、本発明の導電膜
付きガラス板は、ガラス板と、前記ガラス板上に形成し
た酸化錫を主成分とする導電膜とを含み、400nm以
上1100nm以下の波長域において前記導電膜の吸収
係数が1.2×103cm-1以下であることを特徴とす
る。
入射した強度I0の光が、膜厚方向に距離d[cm]だ
け進んで強度Iとなったとき、IとI0とをI=I0・e
-kdの関係式により表示したときの係数k[cm-1]で
ある。
900nm以下の波長域において0.7×103以下で
あることが好ましく、400nm以上900nm以下の
さらに広い波長域において0.7×103cm-1以下で
あることが特に好ましい。
%以下が好ましく、0.08重量%以下がさらに好まし
い。フッ素濃度が高すぎると導電膜の吸収係数が過大と
なるからである。一方、上記導電膜中のフッ素濃度は、
0.03重量%以上が好ましく、0.05重量%以上が
さらに好ましい。フッ素濃度が低すぎると導電膜の比抵
抗が過小となるからである。
する炭素原子の比率(C/Sn原子比)により表示し
て、0.015以下が好ましく、0.010以下がさら
に好ましく、0.007以下が特に好ましい。炭素濃度
が高すぎると導電膜の吸収係数が過大となるからであ
る。
%以上とした雰囲気における熱分解酸化反応により成膜
されたものであることが好ましい。膜中に錫原料中の炭
素が分解されずに残存すると、導電膜の吸収係数の低下
には不利だからである。すなわち、本発明の導電膜付き
ガラス板の製造方法は、酸素濃度を10体積%以上とし
た雰囲気における熱分解酸化反応により、酸化錫を主成
分とし、400nm以上1100nm以下の波長域にお
いて吸収係数が1.2×103cm-1以下である導電膜
をガラス板上またはガラス板製造工程におけるガラスリ
ボン上に形成することを特徴とする。
体積%以上とした雰囲気における熱分解酸化反応によ
り、上記導電膜を形成することが好ましい。この好まし
い例によれば、500nm以上900nm以下の波長域
において、導電膜の吸収係数を0.7×103cm-1以
下とすることができる。
ラス板上またはガラスリボン上における熱分解酸化反応
により、導電膜を形成することが好ましい。
ては、ガラス板上に下地膜を介して導電膜を形成するこ
とが好ましい。ガラス板に含まれているアルカリ成分が
導電膜中に拡散すると、導電膜の導電性などの特性を劣
化させることがある。下地膜を形成すれば、アルカリ成
分含有ガラス板から導電膜へのアルカリ成分の侵入を抑
制できるから、導電膜における光透過性能と導電性との
両立にも有利となる。
た光電変換装置も提供する。この光電変換装置は、上記
導電膜付きガラス板の導電膜上に、少なくとも1つの光
電変換ユニットおよび裏面電極がこの順に積層されてい
ることを特徴とする。この光電変換装置は、ガラス板側
を光線入射側として使用される。
について説明する。上記導電膜は、酸化錫を主成分とす
れば特に限定されないが、具体的には、フッ素が上記範
囲の濃度となるようにドープされた酸化錫膜(Sn
O2:F膜)であることが好ましい。この導電膜は、上
記吸収係数が得られる範囲内であれば、他の微量成分を
含んでいても構わない。例えば、導電性を向上させるた
めに、アンチモンを添加してもよい。また、導電膜に
は、シリコン、アルミニウム、亜鉛、銅、インジウム、
ビスマス、ガリウム、ホウ素、バナジウム、マンガン、
ジルコニウムなどが含まれていても構わない。ただし、
これらフッ素以外の微量成分の濃度は、0.02重量%
以下とすることが好ましい。
化反応による酸化錫膜の形成に好適に用い得る錫原料に
含まれているが、所定限度を超えて導電膜中に取り込ま
れないようにすることが好ましい。導電膜中の好適な塩
素濃度は、0.15重量%以下、特に0.10重量%以
下である。なお、塩素濃度は、原料の熱分解温度を上げ
たり、原料中に水蒸気を混入することにより低減するこ
とができる。
/スクエア(Ω/□)以上40Ω/スクエア以下、特に
30Ω/スクエア以下が好ましい。このシート抵抗値の
好ましい範囲を考慮すると、導電膜の膜厚は、好ましく
は300nm以上1200nm以下、さらに好ましくは
400nm以上1000nm以下である。
電膜以外に他の膜を含んでいてもよい。上記のように、
ガラス板としてソーダライムガラス板などのアルカリ成
分含有ガラス板を用いる場合には、ガラス中のナトリウ
ムなどのアルカリ成分が導電膜中に拡散して導電性を低
下させないように、ガラス板と導電膜との間に、下地膜
を形成することが好ましい。下地膜としては、例えばシ
リコン、アルミニウム、錫、チタンおよびジルコニウム
から選ばれる少なくとも一つの金属の酸化物を主成分と
する膜が好ましい。下地膜としては酸化シリコンを主成
分とする膜または酸化アルミニウムを主成分とする膜が
好適である。下地膜は、例えば珪素と錫の酸化物(Si
SnO)のように2以上の金属を含む酸化物を主成分と
していてもよい。下地膜の別の好ましい例としては、例
えば酸炭化珪素(SiOC)のような上記金属の酸炭化
物や酸窒化物を主成分とする膜が挙げられる。炭素や窒
素の導入により、酸炭化物膜や酸窒化物膜では酸化物膜
よりも屈折率がやや高くなる。下地膜の膜厚は、5nm
以上100nm以下が好ましい。
い。下地膜を複層とする場合には、例えば、ガラス板側
から順に、酸化錫を主成分とする第1の下地層と、上記
に例示した金属の酸化物を主成分とする第2の下地層を
形成した構成が好ましい。このような2層構成の下地膜
を含む導電膜付きガラス板の断面図を図1に示す。ガラ
ス板5上に形成された、第1の下地層1(例えば酸化錫
膜)の好ましい膜厚は5nm以上100nm以下であ
り、第2の下地層2(例えば酸化シリコン膜)の好まし
い膜厚は5nm以上100nm以下であり、導電膜3
(例えばSnO2:F膜)の好ましい膜厚は300nm
以上1200nm以下である。
オンプレーティング法、真空蒸着法などのいわゆる物理
蒸着法を用いてもよいが、化学気相法(以下、「CVD
法」という)やスプレー法などのいわゆる化学蒸着法を
用いることが好ましい。物理蒸着法では、膜厚の均一性
には優れているが、量産時の製造効率や被膜耐久性を考
慮すると、原料の熱分解酸化反応を伴う化学蒸着法が優
れている。
液を高温のガラス板上に噴霧する溶液スプレー法、上記
溶液に代えて金属化合物の微粒子を液体に分散させた分
散液を用いる分散液スプレー法、上記溶液に代えて金属
化合物の粉末を用いる粉末スプレー法などが挙げられ
る。これに対し、CVD法では、少なくとも錫を含む被
膜形成用の蒸気が用いられる。
きるという利点があるが、液滴の制御や排気されるべき
生成物(反応生成物、未分解生成物など)の制御が難し
いために均一な膜厚を得にくい。また、ガラスの歪みも
大きくなる。このため、酸化錫を主成分とする導電膜の
成膜法としては、総合的にはCVD法が優れている。
きさに切断し、加熱したガラス板にガス状の原料が吹き
つけることにより行うことができる。例えば、ガラス板
をメッシュベルトに載せて加熱炉を通過させる間に原料
を供給し、所定温度にまで加熱したガラス板の表面で原
料を反応させれば、導電膜を成膜できる。
フロート法によるガラス製造工程における高温のガラス
リボン上に導電膜を成膜して、ガラス成形時の熱エネル
ギーを利用することが好ましい。この好ましい製法は、
大面積の導電膜付きガラス板の製造には有利であり、屋
根材用などとして大面積のガラス板への成膜も求められ
る光電変換装置用導電膜の成膜には特に適している。特
に、CVD法を錫フロート槽空間で行えば、軟化点以上
の温度を有するガラス表面にも成膜が行えるので、膜の
性能および成膜反応速度、成膜反応効率の向上が可能と
なる。また、ピンホール(膜抜け)などの欠点も抑制さ
れる。
の温度は、590℃以上、特に615℃以上が好まし
い。このような高温での成膜は、ガラスリボン上におけ
る成膜を実施することにより容易に実現できる。
D法により成膜するための装置の一形態を図2に示す。
図2に示したように、この装置では、溶融炉(フロート
窯)11から錫フロート槽(フロートバス)12内に流
れ出し、錫浴15上を帯状に移動するガラスリボン10
の表面から所定距離を隔て、所定個数のコータ16(図
示した形態では3つのコータ16a,16b,16c)
が錫フロート槽内に配置されている。これらのコータか
らは、ガス状の原料が供給され、ガラスリボン10上に
連続的に被膜が形成されていく。また、複数のコータを
利用すれば、ガラスリボン10上に、下地膜と導電膜と
をCVD法により連続的に形成することもできる。導電
膜を含む被膜が形成されたガラスリボン10は、ローラ
17により引き上げられて、徐冷炉13へと送り込まれ
る。なお、徐冷炉13で徐冷されたガラスリボンは、図
示を省略する切断装置により、所定の大きさのガラス板
へと切断される。
法とスプレー法とを併用して行ってもよい。例えば、C
VD法とスプレー法とをこの順に実施することにより
(例えば、錫フロート槽空間内においてCVD法による
成膜を実施し、錫フロート槽空間よりガラスリボン進行
方向下流側においてスプレー法による成膜を実施するこ
とにより)、所定の積層構造を実現してもよい。
四塩化錫、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロ
ライド、テトラメチル錫、テトラブチル錫、ジオクチル
錫ジクロライド、モノブチル錫トリクロライド、ジブチ
ル錫ジアセテートなどが挙げられ、特に、ジメチル錫ジ
クロライド、ジブチル錫ジクロライドが好ましい。錫原
料から酸化錫を得るために用いられる酸化原料として
は、酸素、水蒸気、乾燥空気などが挙げられる。また、
フッ素原料としては、フッ化水素、トリフルオロ酢酸、
ブロモトリフルオロメタン、クロロジフルオロメタンな
どが挙げられる。また、アンチモンを添加する場合に
は、五塩化アンチモン、三塩化アンチモンなどを用いて
もよい。
D法で成膜する場合のシリコン原料としては、モノシラ
ン、ジシラン、トリシラン、モノクロロシラン、ジクロ
ロシラン、1,2-ジメチルシラン、1,1,2-トリメチルジシ
ラン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、テトラメチルオ
ルソシリケート、テトラエチルオルソシリケートなどが
挙げられる。また、この場合の酸化原料としては、酸
素、水蒸気、乾燥空気、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸
化窒素、オゾンなどが挙げられる。なお、シランを使用
した場合にガラス表面に到達するまでにシランの反応を
防止する目的で、エチレン、アセチレン、トルエンなど
の不飽和炭化水素ガスを併用しても構わない。
ム膜をCVD法で成膜する場合のアルミニウム原料とし
ては、トリメチルアルミニウム、アルミニウムトリイソ
ポプロポキサイド、塩化ジエチルアルミニウム、アルミ
ニウムアセチルアセトネート、塩化アルミニウムなどが
挙げられる。また、この場合の酸化原料としては、酸
素、水蒸気、乾燥空気などが挙げられる。
光電変換装置用基板として好適である。本発明の導電膜
付きガラス板を用いた薄膜シリコン系光電変換装置の一
形態の断面を図3に示す。この薄膜シリコン系光電変換
装置では、ガラス板35上に下地膜(第1、第2の下地
膜31,32)および導電膜33がこの順に形成された
導電膜付きガラス板30上に、光電変換ユニット37が
形成され、さらに裏面電極39が形成されている。
してもよいが、複数層を積層してもよい。光電変換ユニ
ットとしては、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン
系薄膜を光電変換層としたユニット(以下、各ユニット
を「非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニット」、「結晶
質シリコン系薄膜光電変換ユニット」のように光電変換
層の種類を引用して表記する)が挙げられる。
は、pin型の順にプラズマCVD法により各半導体層
を堆積して形成される。具体的には、例えば、導電型決
定不純物原子であるボロンが0.01原子%以上ドープ
されたp型微結晶シリコン系層、光電変換層となる真性
非晶質シリコン層、および導電型決定不純物原子である
リンが0.01%以上ドープされたn型微結晶シリコン
系層をこの順に堆積すればよい。しかし、これら各層は
上記に限定されず、例えばp型微結晶シリコン系層にお
いて不純物原子をアルミニウムなどとしてもよく、p型
層として非晶質シリコン系層を用いてもよい。また、p
型層として、非晶質または微結晶のシリコンカーバイ
ド、シリコンゲルマニウムなどの合金材料を用いてもよ
い。
ン系層の膜厚は、3nm以上100nm以下が好まし
く、5nm以上50nm以下がさらに好ましい。
法によって下地温度を450℃以下として形成すること
が好ましい。この層は、導電型決定不純物原子の密度が
1×1018cm-3以下である実質的に真性半導体である
薄膜として形成される。真性非晶質シリコン層の膜厚は
0.05μm以上0.5μm以下が好ましい。ただし、
非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニットでは、真性非晶
質シリコン層に代えて、合金材料である非晶質シリコン
カーバイド層(例えば10原子%以下の炭素を含有する
非晶質シリコンからなる非晶質シリコンカーバイド層)
や非晶質シリコンゲルマニウム層(例えば30原子%以
下のゲルマニウムを含有する非晶質シリコンからなる非
晶質シリコンゲルマニウム層)を形成してもよい。
も、非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニットと同様の手
順でpin型各半導体層をこの順にプラズマCVD法に
より堆積して形成されうる。
u,PtおよびCrから選ばれる少なくとも1つの材料
からなる少なくとも1層の金属層をスパッタリング法ま
たは蒸着法により形成することが好ましい。また、光電
変換ユニットと金属電極との間に、ITO、SnO2、
ZnOなどの導電性酸化物からなる層を形成しても構わ
ない。
系薄膜光電変換ユニットを含むことが好ましい。このユ
ニットは、非晶質シリコン系薄膜光電変換ユニットと比
較して発生する開放端電圧が低く、発生する短絡電流密
度が高いため、ガラス板上の導電膜のシート抵抗値より
も光線透過率が光電変換効率により大きく寄与するから
である。
んでいても体積結晶化分率50%以上であれば「結晶
質」に相当するものとする。また、「シリコン系」の材
料には、非晶質または結晶質のシリコンに加え、非晶質
シリコンゲルマニウムなどシリコンを50原子%以上含
む半導体材料も該当するものとする。
明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものでは
ない。
のフッ素等元素濃度の測定方法について説明する。 (吸収係数の測定)ガラス板上に成膜された導電膜上
に、屈折率が1.79のヨウ化メチレンを塗布し、さら
にその上に厚さ1mmのカバーガラス(コーニング社製
#7059)を密着させて導電膜の表面凹凸による散乱
ロスを解消したサンプルを作製した。このサンプルの可
視光域における透過率および反射率を分光光度計を用い
て測定し、その結果から吸収率を求めた。一方、導電膜
を形成しない上記ガラス板にヨウ化メチレンを塗布し、
その上から上記カバーガラスを密着させて参照用サンプ
ルとし、この参照用サンプルについても上記と同様に可
視光域における吸収率を求めた。なお、下地膜を介して
導電膜を形成した場合は、参照用サンプルには同条件で
下地膜を形成したものを用いた。サンプルの吸収率から
参照用サンプルの吸収率を差し引き、さらに多重反射を
考慮した方程式を解くことによって、導電膜の吸収係数
を求めた。
濃度は、電子線マイクロアナライザーの特性X線の強度
から算出した。また、錫原子に対する炭素原子の比率
は、X線光電子分光分析によって、Sn3d5/2とC1
sとのピークエリアから相対感度係数を用いて算出した
原子濃度(%)から求めた。
なガラスリボン上への成膜装置を用い、CVD法によ
り、導電膜を含む各膜を成膜した。なお、錫フロート槽
内が槽外よりもやや高圧に維持されるように、錫フロー
ト槽空間内には98体積%の窒素と2体積%の水素とを
供給し、槽内を非酸化性雰囲気に保持した。また、この
錫フロート槽内には、溶融炉で溶融した通常の板ガラス
組成のソーダライムシリカガラスを流し込んだ。なお、
徐冷炉で徐冷したガラスリボンは、さらに下流側で所定
の大きさに切断した。以下、具体的な成膜法について説
明する。
ら、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からなる混
合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約30nm
の酸化シリコン膜を成膜した。続いて、下流側のコータ
から、ジメチル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、水蒸
気、窒素、ヘリウム、メチルアルコールおよびフッ化水
素からなる混合ガスを供給し、酸化シリコン膜上に、膜
厚が約700nmのSnO2:F膜を成膜した。なお、
混合ガス中、メチルアルコールは、水蒸気と同様、錫原
料の反応を制御して膜中の塩素濃度を調整するために混
合した。SnO2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は
約650℃であった。
下地膜の成膜は行わず、下流側のコータから、モノブチ
ル錫トリクロライド(蒸気)、酸素、水蒸気、窒素、ヘ
リウムおよびトリフルオロ酢酸からなる混合ガスを供給
して行った。SnO2:F膜の膜厚は約600nmとな
った。SnO2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約
650℃であった。
チル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒素か
らなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約
30nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側のコー
タから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約30nm
の酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流側
のコータからジメチル錫クロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、フッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜
厚が約600nmのSnO2:F膜を成膜した。Sn
O2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約635℃で
あった。
チル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒素か
らなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約
40nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側のコー
タから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約15nm
の酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流側
のコータからジメチル錫クロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、フッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜
厚が約650nmのSnO2:F膜を成膜した。Sn
O2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約641℃で
あった。
チル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒素か
らなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約
35nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側のコー
タから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約20nm
の酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流側
のコータからジメチル錫クロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、フッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜
厚が約700nmのSnO2:F膜を成膜した。Sn
O2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約648℃で
あった。
チル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒素か
らなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約
45nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側のコー
タから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約30nm
の酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流側
のコータからジメチル錫クロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、フッ化水素からなる混合ガスを供給し、膜
厚が約750nmのSnO2:F膜を成膜した。Sn
O2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約637℃で
あった。
チル錫ジクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒素か
らなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約
35nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側のコー
タから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約25nm
の酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流側
のコータからジメチル錫クロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、トリフルオロ酢酸からなる混合ガスを供給
し、膜厚が約900nmのSnO2:F膜を成膜した。
SnO2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約651
℃であった。
ブチル錫トリクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、窒
素からなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚
が約85nmの酸化錫膜を成膜した。次いで、下流側の
コータから、モノシラン、エチレン、酸素および窒素か
らなる混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約7n
mの酸化シリコン膜を成膜した。引き続き、さらに下流
側のコータから、モノブチル錫トリクロライド(蒸
気)、酸素、水蒸気、窒素、ヘリウム、フッ化水素から
なる混合ガスを供給し、膜厚が約480nmのSn
O2:F膜を成膜した。SnO2:F膜成膜時のガラスリ
ボンの温度は約645℃であった。
シラン、エチレン、酸素および窒素からなる混合ガスを
供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約65nmの酸炭化
珪素(SiOC)膜を成膜した。ここでは、エチレンの
含有率を増やして膜に炭素を導入した。次いで、下流側
のコータから、ジメチル錫ジクロライド(蒸気)、酸
素、水蒸気、窒素、トリフルオロ酢酸からなる混合ガス
を供給し、膜厚が約550nmのSnO2:F膜を成膜
した。SnO2:F膜成膜時のガラスリボンの温度は約
640℃であった。
ノブチル錫トリクロライド(蒸気)、酸素、ヘリウム、
窒素、テトラエトシキシラン(蒸気)からなる混合ガス
を供給し、ガラスリボン上に、膜厚が約55nmの錫と
珪素の酸化物(SnSiO)膜を成膜した。次いで、下
流側のコータから、テトラエトシキシラン(蒸気)、酸
素、窒素、モノブチル錫トリクロライド(蒸気)からな
る混合ガスを供給し、酸化錫膜上に、膜厚が約35nm
の珪素と錫の酸化物(SiSnO)膜を成膜した。引き
続き、さらに下流側のコータから、ジメチル錫ジクロラ
イド(蒸気)、酸素、水蒸気、窒素、フッ化水素からな
る混合ガスを供給し、膜厚が約430nmのSnO2:
F膜を成膜した。SnO2:F膜成膜時のガラスリボン
の温度は約655℃であった。なお、SnSiO膜で
は、錫原子が珪素原子よりも多く、SiSnO膜では、
その逆となるように、原料比を調整した。
用せず、錫フロート槽と徐冷炉との間に設置したコータ
から、モノブチル錫トリクロライド(蒸気)、酸素、水
蒸気、窒素、ヘリウム、トリフルオロ酢酸、メタノール
からなる混合ガスを供給し、ガラスリボン上に、膜厚が
約650nmのSnO2:F膜を成膜した。SnO2:F
膜成膜時のガラスリボンの温度は約585℃であった。
の大きさに切断した通常の板ガラス組成を有するソーダ
ライムガラス板をメッシュベルトに載せて加熱炉を通過
させ、約570℃にまで加熱した。この加熱したガラス
板をさらに搬送しながら、ガラス搬送路上方に設置した
コータから、モノシラン、酸素および窒素からなる混合
ガスを供給し、膜厚が約30nmの酸化シリコン膜を成
膜した。さらに、ガラス搬送路下流側上方に設置した別
のコータから、モノブチル錫トリクロライド(蒸気)、
酸素、水蒸気、窒素、トリフルオロ酢酸からなる混合ガ
スを供給し、膜厚が約600nmのSnO2:F膜を成
膜した。
せた点を除いては、その他の条件が実施例3とほぼ同一
となるようにして、実施例3と同じ膜厚を備えた酸化錫
膜、酸化シリコン膜、およびSnO2:F膜をこの順に
成膜した。SnO2:F膜成膜時のガラスリボンの温度
は約615℃であった。
を低下させた点を除いては、その他の条件が比較例2と
ほぼ同一となるようにして、比較例2と同じ膜厚を備え
た酸化シリコン膜とSnO2:F膜とをこの順に成膜し
た。
点を除いては、比較例3とほぼ同一の条件により、比較
例3と同じ膜厚を備えた酸化錫膜、酸化シリコン膜、お
よびSnO2:F膜をこの順に成膜した。SnO2:F膜
成膜時のガラスリボンの温度は約612℃であった。
度を変化させ、メチルアルコール0.5体積%を添加し
た点を除いては、比較例2とほぼ同一の条件により、比
較例2と同じ膜厚を備えた酸化シリコン膜、およびSn
O2:F膜をこの順に成膜した。SnO2:F膜成膜時の
ガラスリボンの温度は約564℃であった。
電膜付きガラス板について、導電膜の吸収係数、導電膜
中のフッ素、塩素、メチルアルコール(MeOH)の濃
度およびC/Sn原子比、シート抵抗値、成膜ガス中の
酸素および水蒸気の濃度を、表1にまとめて示す。
との数値である。
り得た導電膜は、400nm〜1100nmの波長域
(太陽光線領域)のいずれの波長においても、吸収係数
が1.2×103cm-1以下となった。この波長域にお
ける低い吸収係数は、結晶質シリコン系薄膜光電変換ユ
ニットを有する光電変換装置に特に適している。また、
実施例2〜10により得た導電膜は、500nm〜90
0nmの波長域において吸収係数が0.7×103cm
-1以下となった。さらに、実施例2,4〜10により得
た導電膜は、400〜1100nmの波長域において吸
収係数が0.7×103cm-1以下となった。
ス板の導電膜上に、非晶質シリコン光電変換ユニットか
らなる薄膜光電変換装置をプラズマCVD法により形成
した。非晶質シリコン光電変換ユニットに含まれるpi
n接合において、用いたp型非晶質シリコンカーバイド
層の厚さは15nm、n型非晶質シリコン層の厚さは3
0nmとした。また、真性非晶質シリコン層(i型)は
RFプラズマCVD法により形成した。成膜条件として
は、シランの反応ガス、約40Paの反応室内圧力、1
5mW/cm2のRFパワー密度、および150℃の成
膜温度を用いた。この成膜条件と同じ条件でガラス基板
上に直接300nmの厚さまで堆積された真性非晶質シ
リコン膜の暗導電率は5×10-10S/cmであった。
なお、真性非晶質シリコン層の膜厚は300nmとし
た。最後に、非晶質シリコン光電変換ユニット上に、裏
面電極として厚さ80nmのITO膜と厚さ300nm
のAg膜とをこの順にスパッタリング法により堆積し
た。
変換面積1cm2)に入射光としてAM1.5の光を1
00mW/cm2の光量で照射したときの出力特性を測
定した。その結果、開放端電圧が0.90V、短絡電流
密度が16.0mW/cm2、曲線因子が70.1%、
そして変換効率が10.1%であった。さらに48℃に
おいてAM1.5の光を100mW/cm2の光量で照
射して光劣化試験を行ったところ、550時間の照射後
に変換効率が8.3%まで劣化した。
従来よりも高い光透過性能を有する導電膜を備えたガラ
ス板を提供することができる。このガラス板は、高い光
透過性能と高い導電性との両立が求められる光電変換装
置に特に好適である。本発明により提供される光電変換
装置は、従来よりも光電変換特性に優れたものとなる。
もっとも、本発明の導電膜付きガラス板は、例えば画像
表示装置、複写機などの部品として、あるいは窓ガラス
などとしても、優れた効果を発揮できる。
断面図である。
に用い得る装置の構成を示す図である。
である。
Claims (9)
- 【請求項1】 ガラス板と、前記ガラス板上に形成した
酸化錫を主成分とする導電膜とを含み、400nm以上
1100nm以下の波長域において前記導電膜の吸収係
数が1.2×103cm-1以下であることを特徴とする
導電膜付きガラス板。 - 【請求項2】 導電膜中のフッ素濃度が0.03重量%
以上0.1重量%以下である請求項1に記載の導電膜付
きガラス板。 - 【請求項3】 導電膜中の錫原子に対する炭素原子の比
率が0.015以下である請求項1または2に記載の導
電膜付きガラス板。 - 【請求項4】 導電膜の吸収係数が、500nm以上9
00nm以下の波長域において0.7×103cm-1以
下である請求項1〜3のいずれかに記載の導電膜付きガ
ラス板。 - 【請求項5】 ガラス板上に下地膜を介して導電膜を形
成した請求項1〜4のいずれかに記載の導電膜付きガラ
ス板。 - 【請求項6】 酸素濃度を10体積%以上とした雰囲気
における熱分解酸化反応により、酸化錫を主成分とし、
400nm以上1100nm以下の波長域において吸収
係数が1.2×103cm-1以下である導電膜を、ガラ
ス板上またはガラス板製造工程におけるガラスリボン上
に形成することを特徴とする導電膜付きガラス板の製造
方法。 - 【請求項7】 590℃以上のガラス板上またはガラス
リボン上における熱分解酸化反応により、導電膜を形成
する請求項6に記載の導電膜付きガラス板の製造方法。 - 【請求項8】 請求項1〜5のいずれかに記載の導電膜
付きガラス板を含み、導電膜上に、少なくとも1つの光
電変換ユニットおよび裏面電極がこの順に積層されてい
ることを特徴とする光電変換装置。 - 【請求項9】 請求項6または7に記載の製造方法によ
り得た導電膜付きガラス板を含み、導電膜上に、少なく
とも1つの光電変換ユニットおよび裏面電極がこの順に
積層されていることを特徴とする光電変換装置。
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