JP2001032376A - 床スラブ用架構および躯体の構築方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリー
ト造の建物の建築に要する時間を低減し、また、鉄筋コ
ンクリート造の建物について空中からの躯体構築を可能
とすること。 【解決手段】空中に設置される本発明の床スラブ用架構
（１０）は、地盤に建て込まれた複数の柱用の鉄骨（１
２）と、鉄骨に支持された鉄骨またはプレキャストコン
クリート部材からなる複数の大梁（１４）とを含む。建
物の躯体は、床スラブ用架構（１０）上に床スラブの一
部を形成し、これを足場として建物の躯体の一部を構築
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鉄骨鉄筋コンクリ
ート造または鉄筋コンクリート造の建物、特に高層建物
の躯体の構築方法およびこれに適用される床スラブ用架
構の構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、鉄骨鉄筋コンクリート造の高層建
物の建築に要する期間を短縮するため、空中に床スラブ
用の架構を設け、該架構および地上の双方から前記建物
の躯体の構築を進めることが行われている。

【０００３】前記床スラブ用架構は、地盤に複数の柱用
の鉄骨を建て込み、これらの柱用鉄骨間に複数の大梁を
形成することにより構築される。

【０００４】前記大梁の形成は、前記柱用鉄骨に大梁用
鉄骨を接合した後、前記大梁用鉄骨を支持手段とする仮
設足場を設置して、前記大梁用鉄骨の周囲への配筋、型
枠の配置、コンクリートの打設、コンクリート養生後の
前記仮設足場の解体等の作業を通して行われている。

【０００５】したがって、これらの作業を不要にするこ
とができれば、前記建物の建築に要する時間をより一層
軽減することができると考えられる。

【０００６】また、前記仮設足場や型枠を空中に支持す
るために必要な大梁用鉄骨を有しない鉄筋コンクリート
造の建物については、空中からの躯体構築は不可能であ
った。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、鉄骨
鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造の建物の
建築に要する時間を低減することにある。また、本発明
の他の目的は、鉄筋コンクリート造の建物について空中
からの躯体構築を可能とすることにある。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明は、鉄骨鉄筋コン
クリート造または鉄筋コンクリート造の建物の躯体の構
築のために空中に設けられる床スラブ用架構の構造であ
って、地盤に建て込まれた複数の柱用の鉄骨と、該鉄骨
に支持された鉄骨またはプレキャストコンクリート部材
からなる複数の大梁とを含む。前記床スラブ用架構は、
さらに、鉄骨からなる複数の小梁を含むものとすること
ができる。

【０００９】前記建物の躯体は、複数の柱用の鉄骨を建
て込み、前記柱用の鉄骨に鉄骨またはプレキャストコン
クリート部材からなる複数の大梁を接合し、これによ
り、空中に床スラブ用架構を構築し、前記床スラブ用架
構上に床スラブの一部を形成し、前記床スラブの一部を
足場にして前記建物の躯体の一部を構築することができ
る。

【００１０】

【発明の作用および効果】本発明によれば、鉄骨鉄筋コ
ンクリート造の建物の躯体構築のために空中に設けられ
る床スラブ用架構について、その大梁を鉄骨またはプレ
キャストコンクリート部材をもって構成したことから、
前記従来における床スラブ用架構の構成部材である大梁
の形成に必要とされた仮設足場の設置、大梁用鉄骨の周
囲への配筋、型枠の配置、コンクリート打設、コンクリ
ート養生後の前記仮設足場の解体等の作業およびこれら
の作業に要する労力・時間を不要とし、したがって、鉄
骨鉄筋コンクリート造建物の建築に要する期間（工期）
の短縮を図ることができる。

【００１１】小梁についても、これを鉄骨で構成するこ
とにより、前記大梁と同様、小梁の形成に要する時間お
よび労力を削減することができる。

【００１２】また、鉄筋コンクリート造の建物の躯体の
構築にあっては、鉄骨を含む前記床スラブ用架構を前記
躯体の一部としたことから、前記鉄骨鉄筋コンクリート
造の建物におけると同様、前記架構を短時間でまた少な
い労力で構築し、前記架構を足場としての前記建物の躯
体の構築を行うことができる。

【００１３】前記鉄骨鉄筋コンクリート造または前記鉄
筋コンクリート造の建物のいずれについても、前記床ス
ラブ用架構上に床スラブの一部を形成し、該床スラブの
一部を足場として前記建物の躯体の一部を構築すること
ができる。

【００１４】

【発明の実施の形態】図１を参照すると、本発明の床ス
ラブ用架構が全体に符号１０で示されている。

【００１５】床スラブ用架構１０は、鉄骨鉄筋コンクリ
ート造または鉄筋コンクリート造の複数階層の建物（通
常は高層の建物）の躯体を構築するため、空中に構築さ
れる。床スラブ用架構１０は、後に前記建物の一部とな
る。

【００１６】床スラブ用架構１０の構築により、該床ス
ラブ用架構と地上との双方から、前記建物の躯体の構築
を同時進行的に進めることができる。これにより、躯体
の構築を地上のみから進める場合と比べ、前記建物の建
築に要する期間を短縮することができる。

【００１７】床スラブ用架構１０は、前記建物の任意に
階層の一部として、例えば前記建物の半分の高さに位置
する一の階層の一部として構築される。必要に応じて、
２つの床スラブ用架構１０を、互いに間隔をおいて、２
以上の階層の一部として構築することができる。

【００１８】床スラブ用架構１０は、地盤（図示せず）
に建て込まれた複数の柱用の鉄骨１２と、これらの鉄骨
１２間に配置されかつ鉄骨１２に支持された複数の大梁
１４とを含む。

【００１９】柱用鉄骨１２は、後に前記建物の柱を形成
するために打設されるコンクリート中に埋没し、柱用鉄
骨１２の周囲に配置される鉄筋と共に、前記コンクリー
トの補強材をなす。柱用鉄骨１２は例えばＨ形鋼からな
る。鉄筋コンクリート造の建物のための柱用鉄骨は、仮
設の鉄骨として、鉄骨鉄筋コンクリート造の建物のため
の柱用鉄骨より小さい横断面を有するものを用いること
ができる。前記仮設の鉄骨は、後にコンクリートに埋設
し、前記鉄筋コンクリート造の建物の柱の主筋の一部と
することができる。

【００２０】また、前記建物は、鉄骨鉄筋コンクリート
造または鉄筋コンクリート造からなる単一の構造方式と
することに代えて、床スラブ用架構１０を境としてその
下方部分とその上方部分とが実質的に異なる構造方式の
もの、例えば、前記下方部分および前記上方部分が、そ
れぞれ、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリー
ト造からなるものであってもよい。

【００２１】大梁１４は、Ｈ形鋼のような鉄骨またはプ
レキャストコンクリート部材（図示せず）からなる。

【００２２】大梁１４は、クレーン（図示せず）の使用
により、前記鉄骨または前記プレキャストコンクリート
部材を所要の高さ位置まで吊り上げ、この間に柱用鉄骨
１２に接合することにより形成することができる。

【００２３】前記プレキャストコンクリート部材は、鉄
骨鉄筋コンクリート製または鉄骨コンクリート製のも
の、あるいは鉄筋コンクリート製のものからなる。前記
鉄骨鉄筋コンクリート製または鉄骨コンクリート製のプ
レキャストコンクリート部材は、その両端から突出する
鉄骨の一部（図示せず）を前記柱用鉄骨に溶接、ボルト
止め等により固定することにより接合することができ
る。また、前記鉄筋コンクリート製のプレキャストコン
クリート部材については、その成形時に埋め込まれその
両端から突出するプレート（図示せず）を介して前記柱
用鉄骨に接合することができる。これらのプレキャスト
コンクリートコンクリート部材は、コンクリートの打設
によって後に大梁１４上に形成される床スラブとの一体
性を図るため、鉄筋の上部（上端鉄筋）および／または
鉄骨の上部が露出している。

【００２４】床スラブ用架構１０の大梁１４を前記鉄骨
または前記プレキャストコンクリート部材をもって形成
することにより、これを場所打ちコンクリートによる鉄
骨鉄筋コンクリート製のものとする場合に不可欠である
仮設足場の設置、大梁用鉄骨の周囲への配筋、型枠の配
置、型枠のサポート部材、コンクリート打設、コンクリ
ート養生後の前記仮設足場の解体等の作業が不要とな
り、したがって、前記建物の躯体の構築および建築のた
めの工期をより一層短縮することができる。また、これ
らの仮設材、型枠用資材、作業不要に伴う労力および時
間等を不要とすることにより、前記建物の建築コストの
低減を図ることができる。

【００２５】また、これまで不可能とされてきた鉄筋コ
ンクリート造の建物についての工期短縮を実現すること
ができる。

【００２６】また、大梁１４相互間に小梁１６を配置す
る場合にも、大梁１４と同様、前記小梁をＨ形鋼のよう
な鉄骨または前記プレキャストコンクリート部材からな
るものとすることができる。前記鉄骨または前記プレキ
ャストコンクリート部材からなる小梁１６も、また、そ
の形成に、仮設足場の設置、小梁用鉄骨の周囲への配
筋、型枠の配置、コンクリート打設、コンクリート養生
後の前記仮設足場の解体等の作業を必要としない。

【００２７】床スラブ用架構１０を土台として行う該床
スラブ用架構から上方の階層についての躯体の一部の構
築は、次のようにして行うことができる。なお、上方階
層の躯体構築のため、建て込まれた各柱用鉄骨１２は、
床スラブ用架構１０が規定する階層よりわずかに高い高
さ寸法を有する。

【００２８】まず、床スラブ用架構１０の大梁１４およ
び小梁１６上に、各柱用鉄骨１２の周囲の空間を残し
て、例えばデッキプレート１８を掛け渡し、デッキプレ
ート１８上に所要の配筋を行い、コンクリート２０を打
設することにより床スラブ２２の一部を形成する。これ
に代えて、大梁１４および小梁１６上にハーフプレキャ
ストコンクリート板（図示せず）を掛け渡し、前記デッ
キプレートにおけると同様、前記ハーフプレキャストコ
ンクリート板上に所要の配筋を行い、コンクリートを打
設することにより床スラブの一部を形成することもでき
る。

【００２９】各柱用鉄骨１２の周囲の空間は、各デッキ
プレート１８に接する椀状の塞ぎ板２３で覆われてい
る。塞ぎ板２３は各柱用鉄骨１２に接続された通常４つ
の大梁１４上に載置、固定され、その中央部を柱用鉄骨
１２が貫通している。塞ぎ板２３は、また、床スラブ２
２の一部についてその厚さを規定する堰板の作用をな
す。

【００３０】塞ぎ板２３は、後に、床スラブ用架構１０
の直下の階層の柱と、床スラブ２２の残りの一部とを同
時に形成するためのコンクリート打設の際に撤去され
る。

【００３１】コンクリート２０の固化後、床スラブ２２
を作業床として、場所打ちコンクリートによる直上階層
の大梁２４、小梁２６、床スラブ２８および柱３０の上
半部を形成するために用いられる型枠の配置、所要の配
筋等を行った後、複数のサポート３２をもって、前記型
枠を作業床２２上に支持することができる。

【００３２】床スラブ用架構１０から上の階層の構造が
鉄骨鉄筋コンクリート造である場合は、床スラブ用架構
１０の構築後、柱用鉄骨１２の上端４２にさらに柱用鉄
骨（図示せず）を継ぎ足す。また、前記型枠の設置およ
び配筋のほか、これらに先立ち、柱用鉄骨１２に大梁用
の鉄骨を接合し、該鉄骨に小梁用の鉄骨を接合する。

【００３３】図上、前記型枠は、前記場所打ちコンクリ
ートの養生後、柱３０の上半部をその下端で支える型枠
の一部３４と、大梁２４をその下端で支える型枠の一部
３６を残して、撤去されている。ここに、符号３８は、
互いに隣接する２つの大梁１２上に掛け渡されるように
塞ぎ板２３上に配置された、型枠の一部３４を支えるサ
ポート３２のための支持板を示す。また、符号４０は、
床スラブ用架構１０が規定する階層のほぼ中間の高さ位
置からその上方に向けて伸びる柱用鉄筋を示す。

【００３４】なお、前記地盤に建て込まれた柱用鉄骨１
２は、これらに対して加えられる地震加重、風力、施工
時荷重による水平力に対抗し得るように、仮設のブレー
ス（図示せず）により補強し、さらに仮設の梁材で連結
することが望ましい。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の床スラブ用架構並びにその直上階層の
大梁、小梁および床スラブの縦断面図である。

【符号の説明】

１０ 床スラブ用架構 １２ 柱用鉄骨 １４ 大梁 １６ 小梁 ２２ 床スラブ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コン
   クリート造の建物の躯体の構築のために空中に設けられ
   る床スラブ用架構の構造であって、地盤に建て込まれた
   複数の柱用の鉄骨と、該鉄骨に支持された鉄骨またはプ
   レキャストコンクリート部材からなる複数の大梁とを含
   む、床スラブ用架構。
2. 【請求項２】 さらに、前記大梁に支持された、鉄骨か
   らなる複数の小梁を含む、請求項１に記載の床スラブ用
   架構。
3. 【請求項３】 鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コン
   クリート造の建物の躯体の構築方法であって、複数の柱
   用の鉄骨を建て込むこと、前記柱用の鉄骨に鉄骨または
   プレキャストコンクリート部材からなる複数の大梁を接
   合し、これにより、空中に床スラブ用架構を構築するこ
   と、前記床スラブ用架構上に床スラブの一部を形成する
   こと、前記床スラブの一部を足場として前記建物の躯体
   の一部を構築することを含む、躯体の構築方法。