JP2001012343A - 両頭ピストン式圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 大型化することなしに吐出ガスの圧力脈動を
効果的に減衰可能な両頭ピストン式圧縮機を提供するこ
と。 【解決手段】 規定壁３８は、フロント側及びリヤ側の
各吐出室２７における吐出冷媒ガスの流れを一方向に規
定する。フロント側の吐出室２７の空間形状とリヤ側の
吐出室２７の空間形状とは一致されている。フロント側
及びリヤ側の各吐出室２７の出口２７ｂからマフラ室２
４までの距離が同じに設定されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、車両空調
装置に用いられ、両頭型のピストンの往復運動によって
冷媒ガスの圧縮を行なう両頭ピストン式圧縮機に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】この種の圧縮機としては、例えば、図７
に示すようなものが存在する。すなわち、一対のシリン
ダブロック101,102 は、対向端部において互いに接合固
定されている。フロントハウジング103 は、フロント
（図面左方）側のシリンダブロック101 の端部に接合固
定されている。リヤハウジング104 は、リヤ（図面右
方）側のシリンダブロック102 の端部に接合固定されて
いる。

【０００３】駆動軸105 は、前記シリンダブロック101,
102 からフロントハウジング103 にかけて回転可能に配
設されている。シリンダボア106 は各シリンダブロック
101,102 に形成されている。両頭型のピストン107 は、
各シリンダボア106 に収容され、斜板108 を介して駆動
軸105 に連結されている。吸入室109 及び吐出室110
は、各ハウジング103,104 内にそれぞれ区画形成されて
いる。

【０００４】そして、前記駆動軸105 の回転運動が、斜
板108 を介してピストン107 の往復運動に変換されるこ
とで、吸入室109 の冷媒ガスのシリンダボア106 への吸
入、吸入冷媒ガスの圧縮、及び圧縮済み冷媒ガスの吐出
室110 への吐出の一連の圧縮サイクルが繰り返される。
吐出室110 に吐出された冷媒ガスは外部冷媒回路へ排出
される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、一般的にピ
ストン式圧縮機においては、各シリンダボア106 からの
間欠的な吐出に基づく吐出冷媒ガスの圧力脈動に起因し
て、外部冷媒回路の配管に生じる振動や騒音が問題とな
っている。このような問題を解決するために上記構成の
圧縮機においては、マフラ室118 がシリンダブロック10
1,102 の外郭部に区画形成されている。フロント側及び
リヤ側の各吐出室110 からの吐出冷媒ガスはマフラ室11
8 で合流され、このマフラ室118 による膨張型のマフラ
作用によって圧力脈動が減衰されて外部冷媒回路に排出
される。しかし、吐出冷媒ガスの圧力脈動の減衰効果を
さらに高めようとすると、マフラ室118 の容積を大きく
しなくてはならず、これは圧縮機の大型化につながる。

【０００６】本発明は、上記従来技術に存在する問題点
に着目してなされたものであってその目的は、大型化す
ることなしに吐出ガスの圧力脈動を効果的に減衰可能な
両頭ピストン式圧縮機を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に請求項１の発明では、一対が対向端部において接合固
定されたシリンダブロックと、前記フロント側のシリン
ダブロックの端部に接合固定されたフロントハウジング
と、前記リヤ側のシリンダブロックの端部に接合固定さ
れたリヤハウジングと、前記シリンダブロックからフロ
ントハウジングにかけて回転可能に配設された駆動軸
と、前記各シリンダブロックに形成されたシリンダボア
と、前記駆動軸に対して一体回転可能に連結されたカム
体と、前記各シリンダボアに前後が往復動可能に収容さ
れるとともに、カム体に連結された両頭型のピストン
と、前記フロントハウジング及びリヤハウジング内にそ
れぞれ区画形成された吸入室と、前記フロントハウジン
グ及びリヤハウジング内のそれぞれに、駆動軸の軸線周
りにおいて環状に区画形成された吐出室と、前記シリン
ダブロックと各ハウジングとの間でそれぞれ狭持配置さ
れるとともに、シリンダボアと吸入室との間に配設され
る吸入ポート及び吸入弁と、シリンダボアと吐出室との
間に配設される吐出ポート及び吐出弁とをそれぞれ備え
た弁・ポート形成体とからなり、前記駆動軸の回転によ
りカム体を介してピストンが往復運動されることで、吸
入室からシリンダボアへの吸入ポート及び吸入弁を介し
たガスの吸入、吸入ガスの圧縮、圧縮済みガスの吐出ポ
ート及び吐出弁を介した吐出室への吐出を行なう構成の
両頭ピストン式圧縮機において、前記フロントハウジン
グ及びリヤハウジングのそれぞれには、各吐出室を区画
することで吐出ポートから吐出室の出口までの駆動軸の
軸線周りにおける吐出ガスの流れを一方向に規定する規
定壁が設けられていることを特徴とする両頭ピストン式
圧縮機である。

【０００８】この構成においては、駆動軸の回転駆動に
よりピストンが往復運動され、吸入室のガスの吸入ポー
ト及び吸入弁を介したシリンダボアへの吸入、吸入ガス
の圧縮、圧縮済みガスの吐出ポート及び吐出弁を介した
吐出室への吐出の一連の圧縮サイクルが繰り返される。

【０００９】ここで、規定壁は、フロント側及びリヤ側
の各吐出室における吐出ガスの流れを一方向に規定す
る。従って、各吐出室において吐出ポートからの吐出ガ
スの流れが、規定壁による一方向規定によって整流さ
れ、この整流効果によって各吐出室からの吐出ガスの圧
力脈動は減衰されている。

【００１０】請求項２の発明では、前記フロント側の吐
出室の出口とリヤ側の吐出室の出口とを駆動軸の軸線周
りにおける同じ位置に設け、前記フロントハウジングの
規定壁とリヤハウジングの規定壁とを駆動軸の軸線周り
における同じ位置に設けたことを特徴としている。

【００１１】この構成においては、同じピストンに対応
するフロント側及びリヤ側の各吐出ポートから、対応す
る吐出室の出口までの距離を同じとすることができ、フ
ロント側及びリヤ側の各吐出室からの吐出ガスの圧力脈
動の波形を近似させることができる。

【００１２】請求項３の発明では、前記フロント側の吐
出室における空間形状とリヤ側の吐出室における空間形
状とを一致させ、各吐出室の出口から吐出ガスの合流部
までを等距離としたことを特徴としている。

【００１３】この構成においては、吐出室の空間形状を
一致させることで、フロント側及びリヤ側の各吐出室か
らの吐出ガスの圧力脈動の波形を同じとすることができ
る。そして、各吐出室から合流部までの距離を同じとす
ることで、各シリンダボアから吐出室への圧縮済みガス
の吐出シーケンス（順番）から、フロント側及びリヤ側
の各吐出室からの圧力脈動の波形が合流部において逆位
相となり、互いの干渉作用によって圧力脈動は大幅に減
衰される。

【００１４】請求項４の発明では、前記シリンダブロッ
クの外郭部にはマフラ室が区画形成され、このマフラ室
がフロント側の吐出室からの吐出ガスとリヤ側の吐出室
からの吐出ガスとの合流部をなしていることを特徴とし
ている。

【００１５】この構成においては、それほど大容量でも
ないマフラ室によっても、請求項１の発明によって、あ
たかも大容量としたかのごとく効果的なマフラ作用が全
体として奏される。従って、大型化することなしに吐出
ガスの圧力脈動を効果的に減衰することができる。

【００１６】請求項５の発明では、前記各ハウジングに
おいて吐出室内に延出形成され、シリンダブロックとの
間で弁・ポート形成体を押え込む押え込み部と、前記フ
ロントハウジング又はフロント側のシリンダブロックに
配設され、駆動軸を封止する軸封装置と、前記各吐出室
は、吸入室の内周側において押え込み部の周りに区画形
成されていることと、前記フロント側の吐出室を横断す
るようにして配設され、軸封装置付近とフロント側の吸
入室とを連通する給油通路と、前記リヤハウジングにお
いてリヤ側の吐出室内に突出形成され、フロントハウジ
ングにおける吐出室内での給油通路の横断を許容するの
と同じ突出形状をなすことで、リヤ側の吐出室の空間形
状をフロント側の吐出室の空間形状と一致させるための
空間形状合わせ部とを備えたことを特徴としている。

【００１７】この構成においては、圧縮機の軸線方向へ
の小型化を達成してなおかつ、フロント側の吐出室とリ
ヤ側の吐出室との空間形状の一致を達成できる。

【００１８】

【発明の実施の形態】以下、本発明を、車両空調装置に
用いられる両頭ピストン式圧縮機において具体化した一
実施形態について説明する。

【００１９】図１及び図４に示すように、一対のシリン
ダブロック１１，１２は、対向端縁において互いに接合
固定されている。フロントハウジング１３は、フロント
（図面左方）側のシリンダブロック１１の端部に弁・ポ
ート形成体１４を介して接合固定されている。リヤハウ
ジング１５は、リヤ（図面右方）側のシリンダブロック
１２の端部に弁・ポート形成体１４を介して接合固定さ
れている。

【００２０】駆動軸１６は、前記シリンダブロック１
１，１２の中央部に、前後一対のラジアルベアリング１
７を介して回転可能に支持されている。駆動軸１６はそ
のフロント側が、フロントハウジング１３の中央部を貫
通して外部に突出されている。駆動軸１６は、外部駆動
源としての図示しない車両エンジンに作動連結され、こ
の車両エンジンからの動力が伝達されることで回転駆動
される。軸封装置３５はフロントハウジング１３に配設
され、駆動軸１６を封止する。

【００２１】複数（５個所（図５））のシリンダボア１
８は、駆動軸１６の軸線Ｌと平行に延びるように、各シ
リンダブロック１１，１２の両端部間に同一円周上で所
定間隔おきに貫通形成されている。複数（図面には表れ
ないが５個）の両頭型のピストン１９は、各シリンダボ
ア１８内に往復動可能に嵌挿支持され、その前後の端面
と各弁・ポート形成体１４とで、各シリンダボア１８内
に冷媒ガスの圧縮のための空間を区画している。つま
り、本実施形態の圧縮機は片側５気筒であって、フロン
ト側及びリヤ側合わせて１０気筒の両頭ピストン式圧縮
機である。

【００２２】クランク室２０は、前記両シリンダブロッ
ク１１，１２の中間内部に区画形成されている。カム体
としての斜板２１は、クランク室２０において駆動軸１
６に嵌合固定され、その外周部には前記ピストン１９が
シュー２２を介して係留されている。駆動軸１６の回転
運動は、斜板２１及びシュー２２を介してピストン１９
の往復運動に変換される。

【００２３】マフラ部２３は、各シリンダブロック１
１，１２の外郭部にそれぞれ膨出形成されている。両マ
フラ部２３の内空間は、互いに対向するマフラ部２３に
向かって開口されている。両マフラ部２３の内空間は、
両シリンダブロック１１，１２の接合固定と同時に一体
化され、両マフラ部２３に跨ったマフラ室２４を形成し
ている。

【００２４】図２及び図３に示すように、吸入室２５
は、前記各ハウジング１３，１５内の外周側において円
環状に区画形成されている。各吸入室２５は吸入通路２
６を介してクランク室２０（図４）に連通されている。
隔壁２８は、フロントハウジング１３及びリヤハウジン
グ１５に設けられている。吐出室２７は、隔壁２８によ
り、各ハウジング１３，１５内において吸入室２５の内
周側に区画形成され、その一部は吸入室２５の円環状を
離断するようにしてハウジング１３，１５内の外周側に
膨出されている。この膨出部分が連絡副室２７ａをな
し、フロント側及びリヤ側の各連絡副室２７ａは、それ
ぞれ吐出通路２９を介してマフラ室２４（図１）に連通
されている。フロント側の連絡副室２７ａとリヤ側の連
絡副室２７ａとは、駆動軸１６の軸線Ｌ周りにおける同
じ位置に配置されている。

【００２５】前記フロント側及びリヤ側の各吐出室２７
からは、連絡副室２７ａ及び吐出通路２９を介してマフ
ラ室２４で冷媒ガスの流路が合流されている。前記クラ
ンク室２０とマフラ室２４とは、図示しない凝縮器や蒸
発器等を備えた外部冷媒回路（図４）で接続され、この
外部冷媒回路と圧縮機とで車両空調装置の冷凍回路が構
成されている。

【００２６】図５に示すように、前記弁・ポート形成体
１４は、吸入弁形成板３１、ポート形成板３２、吐出弁
形成板３３及びリテーナ形成板３４が、シリンダブロッ
ク１１，１２側からハウジング１３，１５側に向かって
同順に重合配置されてなる。なお、図５はリヤ側の弁・
ポート形成体１４について示しているが、フロント側の
弁・ポート形成体１４についても、駆動軸１６の挿通を
許容するための構成（挿通孔１４ａ（図１））を中央部
に有すること以外は、リヤ側の弁・ポート形成体１４と
同様な構成である。

【００２７】複数の吸入ポート３２ａはポート形成板３
２の外周側に貫通形成され、各シリンダボア１８と吸入
室２５とを連通している。リード弁よりなる複数の吸入
弁３１ａは吸入弁形成板３１に形成され、対応する吸入
ポート３２ａを開閉可能である。複数の吐出ポート３２
ｂはポート形成板３２の内周側に貫通形成され、各シリ
ンダボア１８と吐出室２７とを連通している。リード弁
よりなる複数の吐出弁３３ａは吐出弁形成板３３に形成
され、対応する吐出ポート３２ｂを開閉可能である。

【００２８】前記吐出弁形成板３３は、円盤状をなす基
板３３ｂの外縁部から複数の吐出弁３３ａが放射方向
（それぞれが対応する吐出ポート３２ｂ方向）に延出さ
れてなる。吐出弁形成板３３は、シリンダブロック１
１，１２とハウジング１３，１５との接合により、各吐
出弁３３ａがリード弁として変形するための基部となる
基板３３ｂが、ポート形成板３２とリテーナ形成板３４
との間で狭持されて各吐出弁３３ａにリード弁としての
変形能が持たせられている。複数のリテーナ３４ａはリ
テーナ形成板３４に形成され、吐出弁３３ａの最大開度
を規定する。

【００２９】図１〜図４に示すように、押え込み部３７
は、前記駆動軸１６の軸線Ｌを中心とした円環状の壁体
よりなり、各ハウジング１３，１５において吐出室２７
の内壁面から弁・ポート形成体１４に向かって一体に延
出形成されている。押え込み部３７は、その先端面を以
って弁・ポート形成体１４（リテーナ形成板３４）の中
央部に、軸線Ｌを中心とした円環状の領域で当接され、
シリンダブロック１１，１２との間で弁・ポート形成体
１４の中央部を狭持している。押え込み部３７の外径
は、吐出弁形成板３３の基板３３ｂの外径より若干小さ
い程度である。従って、吐出弁形成板３３において基板
３３ｂの外周部は、押え込み部３７とシリンダブロック
１１，１２とによって、弁・ポート形成体１４内のポー
ト形成板３２とリテーナ形成板３４との間で強固に狭持
され、各吐出弁３３ａのリード弁としての変形能が安定
して発揮されるようになっている。

【００３０】なお、フロントハウジング１３に設けられ
た押え込み部３７は、前述した弁・ポート形成体１４の
中央部を押え込む役目以外にも、駆動軸１６のフロント
ハウジング１３での挿通を許容して、この駆動軸１６か
らフロント側の吐出室２７を遮断する区画壁としての役
目もなしている。

【００３１】次に、上記構成のピストン式圧縮機の作用
について説明する。前記駆動軸１６の回転によりピスト
ン１９が往復運動されると、吸入室２５の冷媒ガスの吸
入ポート３２ａ及び吸入弁３１ａを介したシリンダボア
１８への吸入、吸入冷媒ガスの圧縮、圧縮済み冷媒ガス
の吐出ポート３２ｂ及び吐出弁３３ａを介した吐出室２
７への吐出の一連の圧縮サイクルが繰り返される。

【００３２】フロント側及びリヤ側の各吐出室２７に吐
出された吐出冷媒ガスは、連絡副室２７ａ及び吐出通路
２９を介してマフラ室２４で合流される。この合流され
た吐出冷媒ガスは、マフラ室２４による膨張型のマフラ
作用によって圧力脈動が減衰されて外部冷媒回路に排出
される。従って、吐出冷媒ガスの圧力脈動に起因して、
外部冷媒回路の配管に生じる振動や騒音は低減される。

【００３３】次に、本実施形態の特徴的な構成について
詳述する。図２及び図３に示すように、規定壁３８は、
フロントハウジング１３及びリヤハウジング１５のそれ
ぞれに、隔壁２８と押え込み部３７とを橋絡するように
して設けられている。従って、各規定壁３８は、押え込
み部３７の周りでの円環状を離断するようにして各吐出
室２７を区画する。フロントハウジング１３の規定壁３
８とリヤハウジング１５の規定壁３８とは、駆動軸１６
の軸線Ｌ周りにおける同じ位置に配置されている。

【００３４】前記各規定壁３８は、連絡副室２７ａ近傍
の隣接する二つの吐出ポート３２ｂを遮断するようにし
て配設されている。従って、この二つの吐出ポート３２
ｂのうち、規定壁３８に対して連絡副室２７ａとは反対
側（図２では右側、図３では左側）となる吐出ポート３
２ｂは、連絡副室２７ａに対する連通距離が複数（５個
所）の吐出ポート３２ｂのうちで最遠方となっている。
つまり、各吐出室２７内において各ポート３２ｂから連
絡副室２７ａへは、押え込み部３７の周りを一方向（図
２においては時計周り方向、図３においては反時計周り
方向、つまり、軸線Ｌ周りにおいて同じ方向）へ向かう
吐出冷媒ガスの流路が規定されている。

【００３５】そして、本実施形態においては、前記フロ
ント側の吐出室２７の空間形状とリヤ側の吐出室２７の
空間形状とを一致させている。つまり、フロント側の吐
出室２７とリヤ側の吐出室２７とは同じ容積であって、
さらには、同じピストン１９に対応するフロント側及び
リヤ側の各吐出ポート３２ｂから、連絡副室２７ａで開
口される各吐出室２７の出口２７ｂまでの距離が同じで
あるとともに、この各吐出ポート３２ｂから出口２７ｂ
まで行く間における同じ距離位置での通過断面積が同じ
となるように構成されている。

【００３６】また、前記吐出通路２９の長さ、つまり、
各吐出室２７の出口２７ｂから合流部であるマフラ室２
４までの距離が同じに設定されている。従って、同じピ
ストン１９に対応するフロント側及びリヤ側の各吐出ポ
ート３２ｂから、マフラ室２４までの距離が同じとなっ
ている。

【００３７】図２及び図４に示すように、一対の給油通
路３９は、フロントハウジング１３において吸入室２５
と軸封装置３５付近（押え込み部３７の内空間）とを連
通する。給油通路３９はフロント側の吐出室２７を横断
するようにして配設され、例えば、吐出室２７を避けて
給油通路３９を軸線Ｌ方向にオフセットした場合と比較
して、フロントハウジング１３の軸線Ｌ方向への小型
化、ひいては圧縮機の軸線Ｌ方向の小型化が達成されて
いる。そして、フロント側の吸入室２５の冷媒ガスは給
油通路３９を介して軸封装置３５付近に供給され、主と
してこの冷媒ガス中にミスト状として含まれる潤滑油に
よって、軸封装置３５の潤滑や冷却が行われる。

【００３８】ここで、図２に示すように、前記フロント
側の吐出室２７には、各給油通路３９の横断を許容する
通路形成部４０が内壁面に膨出形成されている。ところ
が、軸封装置３５が存在しない、つまり、給油通路３９
を必要としないリヤハウジング１５においては、この給
油通路３９に対応した通路形成部４０の膨出形成の必要
性は当然ない。しかし、それでは上述したフロント側の
吐出室２７とリヤ側の吐出室２７との空間形状の一致を
達成することができない。このため、図３に示すよう
に、リヤハウジング１５においては、フロントハウジン
グ１３の通路形成部４０と同じ膨出形状をなす一対の空
間形状合わせ部４１が、軸線Ｌ周りでの同じ位置に膨出
形成されている。

【００３９】なお、本明細書においては、製造公差程度
の誤差は「同じ（一致）」とみなすものとする。つま
り、例えば、実際にはフロント側の吐出室２７の空間形
状とリヤ側の吐出室２７の空間形状とが完全に一致して
いなくとも、その誤差が製造公差の範囲内であれば、一
致されているものとみなしている。

【００４０】次に、本実施形態の特徴的な作用について
説明する。さて、上述したフロント側の吐出室２７とリ
ヤ側の吐出室２７との空間形状の一致、及び、各吐出室
２７の出口２７ｂからマフラ室２４までが等距離である
ことは、マフラ室２４によるマフラ作用をより効果的に
奏させることとなる。つまり、吐出室２７の空間形状を
一致させることで、フロント側及びリヤ側の各吐出室２
７からの吐出冷媒ガスの圧力脈動の波形を同じとするこ
とができる。そして、各吐出室２７からマフラ室２４ま
での距離を同じとすることで、各シリンダボア１８から
吐出室２７への圧縮済み冷媒ガスの吐出シーケンス（順
番）から、フロント側及びリヤ側の各吐出室２７からの
圧力脈動の波形がマフラ室２４において逆位相となり、
互いの干渉作用によって圧力脈動は大幅に減衰されるの
である。

【００４１】また、各吐出室２７内において吐出冷媒ガ
スの流れは、規定壁３８によって一方向に規定されてい
る。従って、図２及び図３に矢印で示すように、フロン
ト側及びリヤ側の各吐出ポート３２ｂから、対応する吐
出室２７に吐出された冷媒ガスは、押え込み部３７の周
りを一方向へ向かって流動され、連絡副室２７ａ及び吐
出通路２９を介してマフラ室２４に流入される。このよ
うに、各吐出室２７内において吐出冷媒ガスの流動を一
方向に規定することで、各吐出室２７からの吐出冷媒ガ
スは、マフラ室２４に流入される前段階である程度にま
で圧力脈動が減衰されることとなる。

【００４２】その理由の一つとしては、各吐出ポート３
２ｂからの吐出冷媒ガスの流れが、前述した一方向規定
によって整流されることが挙げられる。また、他の理由
としては、例えば、連絡副室２７ａに対して連通関係で
最も遠い位置にある吐出ポート３２ｂからの吐出冷媒ガ
スは、押え込み部３７の周りをほぼ一周することとな
り、この一周する間において吐出室２７の容積自体が効
果的な膨張型のマフラ作用を奏することが挙げられる。
これは、連絡副室２７ａに対して連通関係で二番目に遠
い位置にある、つまり押え込み部３７の周りを半周を超
えて回る、吐出ポート３２ｂからの吐出冷媒ガスについ
ても言える。

【００４３】さらに、フロント側においては通路形成部
４０の存在が、リヤ側においては空間形状合わせ部４１
の存在が、それぞれ吐出室２７における吐出冷媒ガスの
通過断面積の変化度合を大きくすることとなる。従っ
て、前述した吐出室２７による膨張型のマフラ作用がよ
り効果的に奏される。

【００４４】図６のグラフは、本実施形態のマフラ構造
による効果を示す実験結果であり（実線）、比較例の圧
縮機については点線にて示している。比較例の圧縮機
は、規定壁３８を備えないこと以外は本実施形態の圧縮
機と同様な構成である。吐出冷媒ガスの圧力脈動の周波
数は、圧縮機を駆動する車両エンジンの回転速度に応じ
て決定される。車両エンジンの回転速度がある領域に入
ると、吐出冷媒ガスの圧力脈動の周波数が、外部冷媒回
路の配管の固有振動数に基づく共振領域に入り込み、こ
の配管の振動レベルが急激に上昇される（矢印にて示
す）。しかし、本実施形態にあっては、この共振領域に
おける配管の振動レベルの急激な上昇が、比較例の圧縮
機を用いた場合よりも緩和されていることがグラフから
解る。

【００４５】上記構成の本実施形態においては次のよう
な効果を奏する。 （１）規定壁３８は、各吐出室２７における吐出冷媒ガ
スの流れを一方向に規定する。また、フロント側の吐出
室２７の空間形状とリヤ側の吐出室２７の空間形状とが
一致されている。さらには、各吐出室２７の出口２７ｂ
からマフラ室２４までの距離が同じに設定されている。
以上の構成により、それほど大容量でもないマフラ室２
４によっても、あたかも大容量としたかのごとく効果的
なマフラ作用が全体として奏される。その結果、大型化
することなしに、吐出冷媒ガスの圧力脈動を効果的に減
衰することができた。

【００４６】（２）空間形状合わせ部４１は、フロント
ハウジング１３における吐出室２７内での給油通路３９
の横断を許容する通路形成部４０と同じ膨出形状をなし
ている。従って、給油通路３９を備えることによって
も、圧縮機の軸線Ｌ方向への小型化を達成してなおか
つ、フロント側の吐出室２７とリヤ側の吐出室２７との
空間形状の一致を達成できた。

【００４７】（３）マフラ室２４は、各シリンダブロッ
ク１１，１２に形成されたマフラ部２３が、その対向端
面を以って互いに当接することでその内部に区画形成さ
れている。つまり、マフラ室２４は、フロント側のシリ
ンダブロック１１とリヤ側のシリンダブロック１２との
接合固定と同時に、マフラ部２３内に区画形成される接
合型である。従って、このマフラ空間２４を区画するた
めに、シリンダブロック１１，１２に対して取着する専
用の蓋体を必要とせず、圧縮機の製造コストを低減でき
た。

【００４８】なお、本発明の趣旨から逸脱しない範囲
で、例えば、次のような態様でも実施できる。 ○カム体としてのウエーブカムを備えた両頭ピストン式
圧縮機において具体化しても良い。

【００４９】○マフラ空間２４を、フロントハウジング
１３からフロント側のシリンダブロック１１にかけて形
成すること。 ○マフラ空間２４を、リヤ側のシリンダブロック１２か
らリヤハウジング１５にかけて形成すること。

【００５０】上記実施形態から把握できる技術的思想に
ついて記載すると、前記マフラ空間２４は、シリンダブ
ロック１１，１２及びハウジング１３，１５の接合固定
と同時に区画形成される接合型である請求項４又は５の
いずれかに記載の両頭ピストン式圧縮機。

【００５１】このようにすれば、シリンダブロック１
１，１２及びハウジング１３，１５の接合固定と同時に
マフラ空間２４を区画形成することができ、このマフラ
空間２４を区画するための専用の蓋体を必要とせず、ひ
いては圧縮機の製造コストを低減できる。

【００５２】

【発明の効果】上記構成の本発明によれば、大型化する
ことなしに吐出ガスの圧力脈動を効果的に低減すること
ができた。

【図面の簡単な説明】

【図１】 図３の１−１線断面図であり、両頭ピストン
式圧縮機の縦断面図。

【図２】 図１の２−２線断面図。

【図３】 図１の３−３線断面図。

【図４】 図３の４−４線断面図。

【図５】 弁・ポート形成体の分解斜視図。

【図６】 本実施形態の特徴的なマフラ効果を説明する
グラフ。

【図７】 従来の両頭ピストン式圧縮機の縦断面図。

【符号の説明】

１１…フロント側のシリンダブロック、１２…リヤ側の
シリンダブロック、１３…フロントハウジング、１４…
弁・ポート形成体、１５…リヤハウジング、１６…駆動
軸、１８…シリンダボア、１９…ピストン、２１…カム
体としての斜板、２５…吸入室、２７…吐出室、２７ｂ
…出口、３１ａ…吸入弁、３２ａ…吸入ポート、３２ｂ
…吐出ポート、３３ａ…吐出弁、３８…規定壁、Ｌ…駆
動軸の軸線。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川上 素伸 愛知県刈谷市豊田町２丁目１番地 株式会 社豊田自動織機製作所内 Ｆターム(参考） 3H076 AA07 BB02 CC20 CC43 CC46 CC93 CC95

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一対が対向端部において接合固定された
   シリンダブロックと、 前記フロント側のシリンダブロックの端部に接合固定さ
   れたフロントハウジングと、 前記リヤ側のシリンダブロックの端部に接合固定された
   リヤハウジングと、 前記シリンダブロックからフロントハウジングにかけて
   回転可能に配設された駆動軸と、 前記各シリンダブロックに形成されたシリンダボアと、 前記駆動軸に対して一体回転可能に連結されたカム体
   と、 前記各シリンダボアに前後がそれぞれ往復動可能に収容
   されるとともに、カム体に連結された両頭型のピストン
   と、 前記フロントハウジング及びリヤハウジング内にそれぞ
   れ区画形成された吸入室と、 前記フロントハウジング及びリヤハウジング内のそれぞ
   れに、駆動軸の軸線周りにおいて環状に区画形成された
   吐出室と、 前記シリンダブロックと各ハウジングとの間でそれぞれ
   狭持配置されるとともに、シリンダボアと吸入室との間
   に配設される吸入ポート及び吸入弁と、シリンダボアと
   吐出室との間に配設される吐出ポート及び吐出弁とをそ
   れぞれ備えた弁・ポート形成体とからなり、 前記駆動軸の回転によりカム体を介してピストンが往復
   運動されることで、吸入室からシリンダボアへの吸入ポ
   ート及び吸入弁を介したガスの吸入、吸入ガスの圧縮、
   圧縮済みガスの吐出ポート及び吐出弁を介した吐出室へ
   の吐出を行なう構成の両頭ピストン式圧縮機において、 前記フロントハウジング及びリヤハウジングのそれぞれ
   には、各吐出室を区画することで吐出ポートから吐出室
   の出口までの駆動軸の軸線周りにおける吐出ガスの流れ
   を一方向に規定する規定壁が設けられている両頭ピスト
   ン式圧縮機。
2. 【請求項２】 前記フロント側の吐出室の出口とリヤ側
   の吐出室の出口とを駆動軸の軸線周りにおける同じ位置
   に設け、前記フロントハウジングの規定壁とリヤハウジ
   ングの規定壁とを駆動軸の軸線周りにおける同じ位置に
   設けた請求項１に記載の両頭ピストン式圧縮機。
3. 【請求項３】 前記フロント側の吐出室における空間形
   状とリヤ側の吐出室における空間形状とを一致させ、各
   吐出室の出口から吐出ガスの合流部までを等距離とした
   請求項２に記載の両頭ピストン式圧縮機。
4. 【請求項４】 前記シリンダブロックの外郭部にはマフ
   ラ室が区画形成され、このマフラ室がフロント側の吐出
   室からの吐出ガスとリヤ側の吐出室からの吐出ガスとの
   合流部をなしている請求項１〜３のいずれかに記載の両
   頭ピストン式圧縮機。
5. 【請求項５】 前記各ハウジングにおいて吐出室内に延
   出形成され、シリンダブロックとの間で弁・ポート形成
   体を押え込む押え込み部と、 前記フロントハウジング又はフロント側のシリンダブロ
   ックに配設され、駆動軸を封止する軸封装置と、 前記各吐出室は、吸入室の内周側において押え込み部の
   周りに区画形成されていることと、 前記フロント側の吐出室を横断するようにして配設さ
   れ、フロント側の吸入室と軸封装置付近とを連通する給
   油通路と、 前記リヤハウジングにおいてリヤ側の吐出室内に突出形
   成され、フロントハウジングにおける吐出室内での給油
   通路の横断を許容するのと同じ突出形状をなすことで、
   リヤ側の吐出室の空間形状をフロント側の吐出室の空間
   形状と一致させるための空間形状合わせ部とを備えた請
   求項３又は４に記載の両頭ピストン式圧縮機。