JP2000354612A - 床ずれ防止用ベッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自力で寝返りを打てない寝たきりの人が、介
護者による介助を受けずに寝返りを打つことができ、床
ずれの発生を防止することのできる床ずれ防止用ベッド
を提供する。 【解決手段】 床ずれ防止用ベッド１の床面は、ベッド
幅方向に並置させた複数の床面部材４によって形成され
ている。床面部材４の各々は、隣接する床面部材に対し
て任意の高さの段差を有し得るように、鉛直方向に昇降
可能に配設されている。床面部材４の各々は、互いに独
立して任意に昇降させることができるように構成しても
よく、あるいは、予めプログラムされた種々の凹凸形状
に自動的に順次、変化していくことができるように構成
してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自宅、老人ホー
ム、病院等において、寝たきり老人、長期療養者等の自
力で寝返りを打てない人によって用いられる床ずれ防止
用ベッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】寝たきりの人の多くは、いわゆる床ずれ
に悩まされている。床ずれは、体の特定の部分（特に体
重のかかる臀部等）が、長時間圧迫されて血行不良とな
り、その部分の組織が壊死することによって生ずる。床
ずれを防止するために、介護者は、夜間でも最低４時間
に一回位、寝たきりの人を寝返りさせなければならな
い。しかし、自分の意思で自由に寝返りを打てない寝た
きりの人にとって、４時間に一回程度の寝返りでは、快
適に過ごせないのが普通である。特に、寝返りを自力で
打てないことによる精神的及び肉体的苦痛は、健康な人
にはなかなか理解しづらいものであるが、非常に大きな
ものである。一方、介護者にとっても、寝たきりの人を
寝返りさせる作業は、昼夜を問わず一定時間毎に行わな
ければならない点で、大きな負担となっている。

【０００３】このような状況の中で、近年、寝たきりの
人を対象とした種々の床ずれ防止用のベッドが、提案さ
れている。実公平５−３０４３４号公報には、複数の帯
板状の分割床をベッドの長手方向に列設して床部を構成
すると共に、各々の分割床が、床面を互いに平行に保ち
つつ、ベッドの長手方向に揺動可能なように構成したベ
ッドが、記載されている。特開平８−１９６５７６号公
報には、人が寝ることが可能な床面と、床面を設置する
基体とを有するベッドであって、床面が、ベッドの短手
方向に並置された複数の床面部材から構成され、基体
が、ベッドの長手方向を軸として床面部材の全部または
一部を回動可能とする床面部材駆動手段を有することを
特徴とするベッドが、記載されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記２つの公報に記載
された技術では、いずれも、床面を分割する複数の床面
部材の各々が、回動可能に構成されているに留まってい
る。このため、床面部材の回動によって、寝ている人と
ベッドの床面の接触箇所を適宜変えることはできるもの
の、寝ている人の姿勢を変えること、すなわち、仰向け
に寝ている人を、右方や左方に寝返りさせることはでき
ない。本発明は、このような従来技術の問題点に鑑み
て、寝ている人が人力によらずに寝返りすることがで
き、かつ、寝ている人とベッドの床面の接触箇所が多様
に変動し、床ずれを防止することのできる床ずれ防止用
ベッドを提供することを課題とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明の床ずれ防止用ベ
ッドは、複数の床面部材を並置して床面を形成させたも
のであって、上記複数の床面部材の各々が、ベッドの床
面をベッドの長手方向に平行な方向に切断して分割した
長尺の上面形状を有するとともに、隣接する床面部材に
対し、任意の高さの段差を有し得るように、鉛直方向に
昇降可能に構成されていることを特徴とする（請求項
１）。本発明の床ずれ防止用ベッドの一実施態様とし
て、上記複数の床面部材の各々を互いに独立して任意に
昇降させることができるように、手動操作による床面制
御装置を備えたものを挙げることができる（請求項
２）。本発明の床ずれ防止用ベッドの他の実施態様とし
て、上記複数の床面部材で形成された床面を、予めプロ
グラムされた種々の凹凸形状に自動的に順次、変化させ
ていくことができるように、上記複数の床面部材の昇降
を制御するための床面制御装置を備えたものを挙げるこ
とができる（請求項３）。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明を説
明する。図１は、本発明の床ずれ防止用ベッドの一例を
示す斜視図、図２は、その平面図、図３は、床面部材の
高さ調整機構の一例を示すベッド短手方向の断面図、図
４は、床面部材の高さ調整機構の一例を示すベッド長手
方向の断面図、図５は、床面部材の高さ調整機構の他の
例を示すベッド長手方向の断面図である。

【０００７】図１中、床ずれ防止用ベッド１は、対向す
る一対の枠板２と、枠板２の間に架設される有孔の横板
３と、横板３の上方に位置する６個の床面部材４と、６
個の床面部材４の昇降を制御するための床面制御装置５
とを主要構成部とする。ここで、床面制御装置５は、中
央制御装置６、電動機７等を含む。

【０００８】床面部材４は、床ずれ防止用ベッド１の床
面（人が寝る面）を、ベッドの長手方向に平行な方向に
切断して分割した長尺の上面形状を有する。隣接する床
面部材４同士の間は、寝ている人の寝心地に支障を与え
ない程度の若干の隙間を形成させてもよく、あるいは、
床面部材４が互いに上下方向に摺動可能でありさえすれ
ば、床面部材４同士を当接させた状態としてもよい。図
示しないが、床面部材４の上にマット、敷布団等を敷
き、さらにシーツを被せれば、実際の使用に供すること
ができる。

【０００９】床面部材４の縦断面（床ずれ防止用ベッド
１の短手方向）は、通常、長方形に形成される（図３参
照）が、他の形状としてもよい。例えば、隣接する床面
部材４同士の間に形成される段差によって、寝たきりの
人が不快感を感ずることのないように、床面部材の上面
の両縁部に対し、丸くまたは斜めに切り欠き部を形成さ
せてもよい。特に、床面部材４の材質が堅固なものであ
る場合には、丸く縁取りを付けることが好ましい。

【００１０】床面部材４の材料として、適度な弾性を有
するものを用いた場合には、床面部材４の上に直接シー
ツを被せてもよい。弾性を有する材料としては、敷布団
の材料として通常用いられるもの（綿等）の他、合成樹
脂製の袋の中に水等の流体を充填したもの（いわゆるウ
ォーターベッド）を用いてもよい。床面部材４の上に直
接シーツを被せる場合、シーツは、床面全体を覆う通常
のシーツを用いてもよく、あるいは、床面部材４毎に装
着させるものを用いてもよい。床面部材毎に装着させる
場合、シーツは、床面部材の上面と両側面とに亘って被
着できるものが好ましい。

【００１１】床面部材４の個数が多ければ多いほど、床
面の凹凸形状を滑らかにすることができる反面、床面部
材４毎に配設される高さ調整機構の数が多くなり、床面
の制御装置全体が、大型化及び複雑化する。したがっ
て、床面部材４の個数は、一般的には４〜１０個であ
り、好ましくは６〜８個である。床面の傾斜は、任意の
角度とすることができる。ただし、寝ている人に不安感
を与えないように、傾斜の角度（床面部材の上面の中央
点を結ぶ直線と、水平面とで作られる角度）を局部的に
最大で２０度程度とするのが好ましい。水平状態にある
床面が、２０度の傾斜を有する床面に変化するまでの時
間は、例えば１〜３分程度にすることが好ましい。それ
によって、寝ている人は、徐々に姿勢が変化することに
なり、体に負担がかからず、また、心理的な不安感が生
じることもない。

【００１２】床面部材４の下面には、図２中の点線部で
示す箇所に、図３及び図４に示すような支持板８が固着
されている。これらの支持板８の下面には、ロッド９が
固着されている。ロッド９は、横板３の貫通孔内に挿通
されて、下方に垂下するとともに、下端部に水平板１０
が固着されている。なお、横板３は、枠板２を固定する
とともに、床面部材４の位置を定めるためのものであ
る。

【００１３】水平板１０は、適宜の厚みを有するととも
に、鉛直方向に穿設され、かつ内周面が螺刻された貫通
孔を有する。この貫通孔に対して下方から、外周面が螺
刻された棒状のスライドネジ１１が螺合している。スラ
イドネジ１１は、下方に配設された電動機７の回転軸と
連結されており、随時、所望の回転数だけ回転できるよ
うになっている。また、同じ床面部材４の他方の支持板
８に対しても、同様に、別の電動機７等が配設されてい
る。一つの床面部材４に対して配設されたこれら一対
（２個）の電動機７の回転軸は、互いに同様な回転をす
るように中央制御装置６によって制御されている。それ
によって、床面部材４は、その上面を常に水平に保ちな
がら、上下に動いて、任意の高さに調整される。

【００１４】各床面部材４毎に配設された全部で１２個
（６個×２）の電動機７は、中央制御装置６によって制
御されている。そして、床面部材４は、各々、中央制御
装置６からの指示によって互いに異なる高さに昇降可能
となっている。なお、本明細書中において、床面制御装
置とは、複数の床面部材の高さを制御する手段全体をい
う。図１中、床面制御装置５は、中央制御装置６と、中
央制御装置６に接続された複数の電動機７と、各電動機
７に連結されたスライドネジ１１とを含む。

【００１５】床面制御装置５としては、種々の態様があ
る。床面制御装置５の一つの態様は、複数の床面部材４
の各々が、互いに独立して任意の高さとなるように、手
動でスイッチの操作を行なうものである。この場合、中
央制御装置６に対して指示をする携帯用の遠隔操作装置
を備えることが望ましい。それによって、寝たきりの人
または介護者は、単に遠隔操作装置上のスイッチを操作
するだけで、床面部材４の各々の高さを調整することが
でき、床ずれ防止用ベッド１の床面に所望の傾斜をつけ
ることができる。多数の寝たきり老人を預かる福祉施設
等においては、複数のベッドを一ヶ所で集中的に管理
し、一人の職員が、各ベッドの動作を遠隔操作で管理し
てもよい。

【００１６】床面制御装置５の他の態様は、複数の床面
部材４の全体を統一的に制御するものである。すなわ
ち、床面の凹凸形状が連続的に変化していくように、予
めプログラム化しておき、寝たきりの人または介護者が
最初にスイッチを入れるだけで、床面の凹凸形状が、自
動的かつ周期的に変化していくものである。例えば、右
方への寝返り、仰向け、左方への寝返りの３つの姿勢
を、周期的（例えば、３０分〜３時間毎）に交互にとれ
るようにプログラムしておけば、寝たきりの人に対し、
人力に頼らずに一定時間毎に寝返りを打たせることがで
きる。

【００１７】この際、図３に示すように、床ずれ防止用
ベッド１からの落下防止のため、床面の両端部の床面部
材４が、それらに隣接する内方の床面部材４よりも常に
高くなるようにプログラムしておくことが望ましい。床
面部材４の制御は、床面の凹凸形状の変化を予めプログ
ラム化したものに対し、その変化の周期のみを適宜変え
られるようにしておくと好都合である。それによって、
日中は１時間毎、夜間は３時間毎に寝たきりの人の姿勢
を変えるように制御したり、あるいは、寝ている人の要
望に応じて変化の周期を短くしたり長くしたりすること
が可能になる。

【００１８】床面部材４の昇降機構としては、図４に示
すものの他に、任意の機構を採用することができる。例
えば、図５に示すように、リンク機構としてもよい。図
５中、床面部材４の下面には、金属製の支持板１２を介
して、電動のリンク装置１３が配設されている。リンク
装置１３は、電動機１４の軸に連結されたスライドネジ
１５が回転することによって、連結部１６に対して連結
部１７が近づいたり遠ざかったりし、その結果、連結部
１８と連結部１９の距離が変化し、床面部材４の高さを
変化させることができる。

【００１９】

【発明の効果】本発明の床ずれ防止用ベッドによれば、
寝たきりの人は、介護者に介助されずに、短い時間間隔
で寝返りを打つことが可能である。また、携帯用制御装
置等を用いて、個々の床面部材を任意に高さ調整できる
ように構成した場合には、寝たきりの人は、携帯用制御
装置のボタン操作のみによって、自ら、ベッドの床面に
所望の傾斜（凹凸形状）を形成させることができ、ベッ
ド上で所望の姿勢をとることができる。床ずれ防止用ベ
ッドの床面が、予めプログラム化した種々の凹凸形状に
自動的に変化していくように構成した場合には、寝たき
りの人または介護者は、最初に床面制御装置のスイッチ
を入れるだけでよく、以後の操作を行なう必要が一切な
いので、ベッドの床面の形状を調整する煩わしさから解
放される。

【００２０】このように、本発明の床ずれ防止用ベッド
を用いれば、寝たきりの人の姿勢を、随時または周期的
に変化させることができるので、長時間一定の姿勢をと
ることにより発生する床ずれを防止することができ、寝
たきりの人の肉体的及び精神的苦痛を、大幅に軽減する
ことができる。これからの高齢化社会において、寝たき
り老人の数の増大が予想される。それに伴い、寝たきり
老人でも快適に過ごせる療養ベッドが、強く要望されて
いる。本発明の床ずれ防止用ベッドは、このような社会
的ニーズに応えるものであり、極めて有用性が高いもの
である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の床ずれ防止用ベッドの一例を示す斜視
図である。

【図２】本発明の床ずれ防止用ベッドの一例を示す平面
図である。

【図３】床面部材の高さ調整機構の一例を示すベッド短
手方向の断面図である。

【図４】床面部材の高さ調整機構の一例を示すベッド長
手方向の断面図である。

【図５】床面部材の高さ調整機構の他の例を示すベッド
長手方向の断面図である。

【符号の説明】

１ 床ずれ防止用ベッド ２ 枠板 ３ 横板 ４ 床面部材 ５ 床面制御装置 ６ 中央制御装置 ７，１４ 電動機 ８，１２ 支持板 ９ ロッド １０ 水平板 １１，１５ スライドネジ １３ リンク装置 １６，１７，１８，１９ 連結部

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数の床面部材を並置して床面を形成さ
   せたベッドであって、上記複数の床面部材の各々が、ベ
   ッドの床面をベッドの長手方向に平行な方向に切断して
   分割した長尺の上面形状を有するとともに、隣接する床
   面部材に対し、任意の高さの段差を有し得るように、鉛
   直方向に昇降可能に構成された床ずれ防止用ベッド。
2. 【請求項２】 上記複数の床面部材の各々を互いに独立
   して任意に昇降させることができるように、手動操作に
   よる床面制御装置を備えた請求項１に記載の床ずれ防止
   用ベッド。
3. 【請求項３】 上記複数の床面部材で形成された床面
   を、予めプログラムされた種々の凹凸形状に自動的に順
   次、変化させていくことができるように、上記複数の床
   面部材の昇降を制御するための床面制御装置を備えた請
   求項１に記載の床ずれ防止用ベッド。