JP2000337431A - ダイナミックダンパ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダイナミックダンパの軸方向のゴム弾性体の
ばね特性を柔らかくすると共に、質量金具の首振りを抑
制する。 【解決手段】 ダイナミックダンパは、内筒金具１１
と、内筒金具の外方に同心状に配設された外筒金具１２
と、内筒金具と外筒金具の対向面間に配設され、軸方向
中央部で両金具間を弾性的に連結する連結部１５と共に
周方向の複数箇所にて軸方向に貫通する貫通孔１６を有
するゴム弾性体１３とを備える。質量金具２０の中心孔
内に外筒金具が圧入されることにより、質量金具が外筒
金具の外周側同心位置に固定される。内筒金具の軸孔に
挿通されるボルトにより、内筒金具の一端側においてそ
の軸方向が鉛直方向になるように車両の取付部側に固定
されることにより取付部側に片持ち支持され、一方、内
筒金具の他端側には、外筒金具の内径より外径が大きい
環状の座金部材２５がボルトナットにより係止されてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、車両等のメンバー
に取り付けられるダイナミックダンパに係り、特に低周
波数領域での振動を減衰させるのに適したダイナミック
ダンパに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種のダイナミックダンパは、
例えば、図５に示すように、平板状の取付金具１と、そ
の一平面と所定距離を隔てて対向する円柱形状の質量金
具２と、取付金具１と質量金具２間を連結する略円柱形
のゴム弾性体製の連結部３とを備えており、自動車のエ
ンジンを支持する車体側メンバーに、取付金具１を固定
することにより取り付けられる。このダイナミックダン
パは、車体側メンバー等の車両上下方向（鉛直方向）の
振動を低減するのに用いられるもので、連結部３の圧縮
方向または剪断方向をチューニング方向としてばね特性
を合わせて、所望の共振周波数に設定されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、車両上下方向
（鉛直方向）に対する上記ダイナミックダンパの共振周
波数を１００Ｈｚ以下の低周波数に設定している場合に
は、連結部３の剪断方向(図５の左右方向)のばね特性が
低く（柔らかく）なり、質量金具２が左右方向に振れる
首振り状態となり易い。そのため、ゴム弾性体製の連結
部３の耐久性が低下するという問題がある。また、質量
金具２の首振りにより、質量金具２と周囲に設けられた
相手部材との干渉が起こり易くなり、相手部材に損傷を
与えるおそれがある。さらに、質量金具２の首振りが顕
著になると、質量金具２の脱落を防止するための脱落防
止ピン４の取付金具及び質量金具への取付けが困難にな
る。

【０００４】本発明は上記した問題を解決しようとする
もので、車両上下方向（鉛直方向）のゴム弾性体のばね
特性を柔らかくすると共に、質量金具の首振りを抑制で
きるダイナミックダンパを提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、上記請求項１に記載の発明の構成上の特徴は、内筒
金具と、内筒金具の外方に同心状に配設された外筒金具
と、内筒金具と外筒金具の対向面間に配設され、軸方向
中央部にて内筒金具及び外筒金具間を弾性的に連結する
と共に周方向の複数箇所にて軸方向に貫通する貫通孔を
有するゴム弾性体とを備えたゴムブッシュと、ゴムブッ
シュの外筒金具が中心孔内に圧入されることにより外筒
金具の外周側同心位置に固定される筒状の質量金具とを
備え、内筒金具の軸孔に挿通される取付軸部材により、
内筒金具の一端側においてその軸方向が鉛直方向になる
ように車両等の取付部に固定されることにより取付部に
片持ち支持され、一方、内筒金具の他端側には、外筒金
具の内径と同等以上の外径で環状の座金部材が取付軸部
材に係止されていることにある。なお、車両等の取付部
への固定としては、車体メンバー等の相手部材へ直接固
定の場合と、かかる相手部材に取り付けられる平板状取
付部材を介しての間接的な固定の場合のいずれかが該当
する。

【０００６】上記のように構成した請求項１の発明にお
いては、ゴム弾性体には軸方向に貫通した複数の貫通孔
を有し、軸方向略中央部にて内筒金具と外筒金具とを連
結しているため、連結部にせん断方向の振動が加わるこ
ととなり、その軸方向のばね特性が柔らかくされてい
る。また、質量金具は軸線に対して軸直角方向に対称に
配置され、かつゴム弾性体の連結部が質量金具の軸方向
中央部に設けられているため、首振り方向の振動を抑制
することができる。そのため、ゴム弾性体の耐久性が損
なわれることはない。さらに、このダイナミックダンパ
は、首振り動作が抑制されていると共に片持ち支持され
るため、その取り付けスペースを少なくすることができ
る。また、ゴム弾性体の損傷による質量金具の抜けに対
しては、環状の座金部材を設けたことにより抜けを確実
に防止できる。

【０００７】また、上記請求項２に記載の発明の構成上
の特徴は、貫通孔が、周方向の３箇所に等間隔に配設さ
れていることにある。このように、ゴム弾性体の周方向
の等間隔位置に貫通孔を３つ設けたことにより、周方向
のいずれの位置からの径方向の振動に対してもゴム弾性
体に均等に作用する結果になる。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図面を用いて説明すると、図１，図２は、同実施形態で
ある自動車のエンジンを支持する車体側メンバーに取り
付けられるダイナミックダンパを軸方向断面図及び平面
図により示したものである。

【０００９】このダイナミックダンパは、内筒金具１
１、外筒金具１２及び両金具間を弾性的に連結するゴム
弾性体１３からなるゴムブッシュ１０と、外筒金具の外
周面に外嵌される筒状の質量金具２０と、内筒金具１１
に挿通されるボルト２２及びボルト先端に螺着されるナ
ット２３とによって内筒金具１１一端側に取り付けられ
る平板状の取付金具３０と、内筒金具１１他端にてボル
ト２２に挿通されると共にナット２３と内筒金具１１端
部間に挟持される環状の座金部材２５とを備えている。

【００１０】内筒金具１１は、金属製の厚肉パイプであ
る。外筒金具１２は、金属製の薄肉パイプであり、軸方
向長さが内筒金具１１よりわずかに短く、かつその内径
が内筒金具１１外径よりわずかに大きくされており、内
筒金具１１の外方にてその軸方向両端間にて軸方向に対
称にかつ同軸的に径方向に所定寸法を隔てて配置されて
いる。

【００１１】ゴム弾性体１３は、内筒金具１１及び外筒
金具１２の対向面間にゴム加硫接着により一体で形成さ
れるもので、図３及び図４に示すように、両金具と共に
ゴムブッシュ１０を構成している。ゴム弾性体１３は、
内筒金具１１の外周面にその軸方向両端を除いて設けら
れた薄肉の内側ゴム部１４と、内側ゴム部１４の外周と
外筒金具１２内周面間に、周方向に等間隔な３箇所にお
いて周方向に所定角度広がると共に軸方向中央の所定範
囲に配置された３つの連結部１５とを有している。従っ
て、各連結部１５の軸方向両側が空間部であると共にそ
の周方向の間はそれぞれ軸方向両端間を貫通する３つの
貫通孔１６になっている。このように、ゴム弾性体１３
に貫通孔１６を設けたことにより、ゴム弾性体部分に水
やほこり等が溜まり、耐久性が損なわれるという不具合
を回避できる。

【００１２】質量金具２０は、厚肉の円筒形の金具であ
り、その内径が外筒金具１２の外径よりわずかに小さ
く、かつ軸方向長さが外筒金具１２の軸方向長さと同等
ないしわずかに大きくされている。この質量金具２０内
に上記ゴムブッシュ１０の外筒金具１２を圧入すること
により、質量金具２０は外筒金具１２の外周面に密着状
態で固定されている。

【００１３】ボルト２２は、軸部２２ａの外径が内筒金
具１１の内径とほぼ同一であり、一端が頭部２２ｂにな
っており他端側にねじ部２２ｃが形成されている。ボル
ト２２は、内筒金具１１の軸孔１１ａには、その一端側
から挿通されそのねじ部２２ｃが他端側から突出してお
り、ねじ部２２ｃにはナット２３が螺合されるようにな
っている。

【００１４】取付金具３０は、菱形の各頂部を円弧形に
丸めて形成された対称形状の板状金具であり、互いに直
交する一方の中心線が他方の中心線に対して約２倍の長
さになっている。長辺側の中心線上の両端近傍位置には
それぞれ１個の取付孔３１が設けられている。また、取
付金具３０の中央部分は、短辺側の中心線の長さよりわ
ずかに短い直径の円形部分が、板面から一表面側に板面
に平行に膨出した凸部３３になっている。凸部３３は、
外周部分が中心側に略４５°に傾斜した傾斜部３３ａに
なっており、傾斜部３３ａの内側は円形の平面部３３ｂ
になっている。円形平面部３３ｂの中心位置には中心孔
３３ｃが設けられている。この凸部３３の反対面側は、
相対的に凹部３４になっており、この凹部３４側には、
上記ボルト２２が、中心孔３３ｃに挿入され、その軸部
２２ａが凸部３３側に平面に垂直に突出すると共にその
頭部２２ｂが凹部３４側に溶接により固着されている。
頭部２２ｂは、その高さが、凹部３４の深さより小さ
く、凹部３４内に収められており、他表面側から突出し
ないようにされている。

【００１５】座金部材２５は、その内径が内筒金具１１
内径よりわずかに大きくかつその外径が外筒金具１２の
内径と同等ないしは外筒金具１２の外径より僅かに小さ
くされており、内筒金具１１の他端側にて、突出したボ
ルト２２に先端のねじ部２２ｃに外挿されており、ねじ
部２２ｃに螺着されたナット２３に締め付けられて内筒
金具１１他端に挟着固定されている。

【００１６】このダイナミックダンパは、車両のエンジ
ンを支持する図示しない車体側メンバーの取付孔に取付
金具３０の一対の取付孔３１を位置合わせしてボルト及
びナット等により固定される。これにより、ダイナミッ
クダンパは、車体側メンバーによって片持ち支持される
ようになっている。

【００１７】以上に説明したように、上記実施形態にお
いては、ゴム弾性体１３には軸方向に貫通した３個の貫
通孔１６が設けられており、かつ軸方向略中央部にて内
筒金具１１と外筒金具１２とを連結する連結部１５が設
けられているため、軸方向の振動入力に対して連結部１
５がせん断方向に振動が加わることにより軸方向のばね
特性が柔らかくされている。その結果、車体側メンバー
から伝播する特に１００Ｈｚより低い周波数領域の振動
入力を有効に減衰させることができる。さらに、この質
量金具２０は、軸線に対して軸直角方向に対称に配置さ
れ、かつ連結部１５が質量金具２０の軸方向中央部に設
けられているため、径方向の振動に対し質量金具２０の
首振りを抑制することができる。その結果、ゴム弾性体
１３の耐久性が損なわれることはない。また、質量金具
２０の首振りを抑制できることにより、質量金具２０と
の干渉による周辺部材の損傷を防止できる。

【００１８】さらに、このダイナミックダンパは、首振
り動作が抑制されていると共に片持ち支持されるため、
その取り付けスペースを少なくすることができる。ま
た、ゴム弾性体１３の破損等による質量金具２０の内筒
金具１１からの抜けに対しては、座金部材２５を設けた
ことにより抜けを確実に防止できる。

【００１９】また、ゴム弾性体１３は、周方向の等間隔
位置に貫通孔を３つ設けていることにより、周方向のい
ずれの位置からの径方向の振動に対してもゴム弾性体１
３に対して均等に作用する結果になる。そのため、ゴム
ブッシュの取付金具３０への取り付けの方向性を考慮す
る必要が無く、取付作業を容易にすることができる。た
だし、貫通孔１６の数については、３つに限らず４つ以
上でもよい。また、貫通孔１６間の間隔も必ずしも等間
隔である必要はない。

【００２０】なお、上記実施形態に示したダイナミック
ダンパについては、質量金具の形状や重量を変更し、あ
るいはゴム弾性体の形状，種類等を変更することによ
り、その共振周波数特性を所望の周波数領域に調節する
ことができる。また、上記実施形態においては、ボルト
を取付金具に溶接により固定しているが、これに代えナ
ットを取付金具に固定し、内筒金具の他端からボルトを
挿入してゴムブッシュを取付金具に固定させるようにし
てもよい。

【００２１】さらに、上記実施形態において、取付金具
３０を用いることなく、ゴムブッシュ１０を直接相手部
材に取り付けるようにすることもできる。また、本発明
のダイナミックダンパは、車両に限らず、他の同様な用
途に使用可能である。その他、上記実施形態に示したダ
イナミックダンパについては、一例であり、本発明の要
旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施するこ
とができる。

【００２２】

【発明の効果】上記請求項１の発明によれば、ゴム弾性
体の連結部にせん断方向の振動が加わるため軸方向のば
ね特性が柔らかくされているため、低周波数の振動入力
を効果的に減衰させることができる。また、質量金具は
軸線に対して軸直角方向に対称に配置され、かつ連結部
が質量金具の軸方向中央部に設けられているため、首振
り方向の振動を抑制することができる。その結果、ゴム
弾性体の耐久性が損なわれることはない。また、座金部
材を設けたことにより、ゴム弾性体の損傷による質量金
具の抜けを確実に防止できる。さらに、ゴム弾性体に貫
通孔を設けたことにより、ゴム弾性体部分に水やほこり
が溜まる不都合を回避できる。なお、貫通孔を周方向に
等間隔で３つ設けたことにより、径方向の振動に対する
方向性が解消されるので、ゴムブッシュの取付部側への
取付の際に位置決めを行う必要が無く、その作業性が高
められる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施形態であるダイナミックダン
パを示す図２のＩ−Ｉ線方向の断面図である。

【図２】ダイナミックダンパを示す平面図である。

【図３】ダイナミックダンパのゴムブッシュを示す図４
のＩＩＩ−ＩＩＩ線方向の断面図である。

【図４】同ゴムブッシュを示す平面図である。

【図５】従来例であるダイナミックダンパを示す正面図
である。

【符号の説明】

１０…ゴムブッシュ、１１…内筒金具、１２…外筒金
具、１３…ゴム弾性体、１５…連結部、１６…貫通孔、
２０…質量金具、２２…ボルト２３…ナット、２５…座
金部材、３０…取付金具、３１…取付孔、３３…凸部。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内筒金具と、該内筒金具の外方に同心状
   に配設された外筒金具と、該内筒金具と外筒金具の対向
   面間に配設され、軸方向中央部にて該内筒金具及び外筒
   金具間を弾性的に連結すると共に周方向の複数箇所にて
   軸方向に貫通する貫通孔を有するゴム弾性体とを備えた
   ゴムブッシュと、 該ゴムブッシュの外筒金具が中心孔内に圧入されること
   により該外筒金具の外周側同心位置に固定される筒状の
   質量金具とを備えてなり、 前記内筒金具の軸孔に挿通される取付軸部材により、該
   内筒金具の一端側においてその軸方向が鉛直方向になる
   ように車両等の取付部に固定されることにより該取付部
   に片持ち支持され、一方、該内筒金具の他端側には、前
   記外筒金具の内径と同等以上の外径で座金部材が前記取
   付軸部材に係止されていることを特徴とするダイナミッ
   クダンパ。
2. 【請求項２】 前記貫通孔が、周方向の３箇所に等間隔
   に配設されていることを特徴とする前記請求項１に記載
   のゴムブッシュ。