JP2000265101A - 電気凝固印刷インキおよびその利用 - Google Patents

電気凝固印刷インキおよびその利用

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JP2000265101A
JP2000265101A JP7432799A JP7432799A JP2000265101A JP 2000265101 A JP2000265101 A JP 2000265101A JP 7432799 A JP7432799 A JP 7432799A JP 7432799 A JP7432799 A JP 7432799A JP 2000265101 A JP2000265101 A JP 2000265101A
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温 別当
Kazuhiro Shirouchi
一博 城内
Shigeto Hashimoto
繁人 橋本
Atsushi Katsuya
敦 勝屋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 階調再現性に優れた電気凝固印刷インキを提
供すること。 【解決手段】 電解凝固可能なポリマー、可溶性電解
質、着色剤および液状媒体を含む電気凝固印刷インキに
おいて、電圧一定条件下においてコンデンサーと抵抗か
らなる電気回路の時定数が0.02秒のときの電気凝固
率と前記時定数が0.09秒のときの電気凝固率との比
が1:1.5〜1:3.0であるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電気凝固印刷分野
における改良に関するものであり、特に、階調再現性に
優れた電気凝固印刷インキ、およびそれを用いた印刷
物、ならびに電気凝固印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】電気凝固印刷は、コンピュータからのデ
ジタル画像印刷で直接印刷物を得ることができる、全く
版を必要としない印刷方式である。その印刷方法及び装
置は、アメリカ特許第4,895,629号(登録日:
1990年1月23日)、第5,538,601(登録
日:1996年7月23日)、第5,693,206号
(登録日1997年12月2日)等に記載されている。
【0003】電気凝固印刷には、電解凝固可能なポリマ
ー、可溶性電解質、着色剤および液状媒体の各成分を少
なくとも含む電気凝固印刷インキが用いられる。また、
その全体の印刷プロセスは、通常、工程(a)と(e)
を任意の工程として、以下の工程(a)〜(f)を含ん
でいる。 (a)洗浄工程:陽極(回転シリンダ)表面を洗浄す
る。 (b)被覆工程:陽極表面を油性物質を含む被覆剤で被
覆する。 (c)充填工程:陰陽電極間(ギャップ)に電気凝固印
刷インキを充填する。 (d)凝固工程:選択された陰極と陽極との間に電圧を
印加して、陽極表面に所望の画像を表わす凝固インキの
ドットを形成する。 (e)除去工程:陽極表面に残存する非凝固インキをス
キージにより除去する。 (f)転写工程:凝固インキのドットを被印刷体に接触
・転写させて、被印刷体に画像を形成する。
【0004】この電気凝固印刷における「インキの電気
凝固」とは、上記プロセス(d)の凝固工程において、
電極間への電圧印加により陽極表面上の不動態酸化被膜
が破壊されて陽極表面から多価金属イオンが溶出し、こ
の多価金属イオンと電気凝固印刷インキ中に含まれる電
解凝固可能なポリマーとの反応によりインキが凝固する
ことであり、それにより、陽極表面上に凝固インキのド
ットが形成される。すなわち、通電の際に陽極から放出
される多価金属イオンが、ポリマー分子とイオン結合や
配位結合を形成することによりポリマー分子同士を架橋
し、水に難溶の凝固物(ドット)を形成することであ
る。ここで、陽極表面から溶出する多価金属イオンは、
たとえばステンレス鋼またはアルミニウムからなる陽極
が用いられる場合、3価の鉄イオンまたは3価のアルミ
ニウムイオンなどである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】通常のオフセット印刷
やグラビア印刷と同様、電気凝固印刷により得られる印
刷物にも、濃淡を滑らかに表現する階調再現性(階調表
現性)と、実用上十分な印刷濃度とが望まれる。
【0006】上記階調再現性は、電圧の印加時間に応じ
てどれだけの量のインキが電気凝固するかによって決ま
るものである。すなわち、陽極への通電量に応じた電気
凝固印刷インキの凝固性が、階調再現性と密接に関連し
ており、通電量に応じて陽極から放出される多価金属イ
オンの量に対する電気凝固率のリニアな応答性が問題に
なると考えられる。
【0007】しかしながら、現実には、この多価金属イ
オン量はあまりに微量で実測することができないため、
これまで、電気凝固印刷インキの電気凝固率と刷り上が
った印刷物の階調再現性との関係性が明らかではなく、
したがって、階調再現性に優れた電気凝固印刷インキを
提供することが困難であった。
【0008】一方、印刷物の印刷濃度は、一般にインキ
中に含まれる顔料濃度にも影響されるが、電気凝固印刷
方式においては特に、(d)の電気凝固によって形成さ
れたドットの大小に大きく依存する。そして、このドッ
トの大きさも、上記のように陽極から放出される多価金
属イオン量に対する電気凝固率の大小に依存するのであ
るが、単にドットの大きさを大きくして印刷濃度を上げ
たのでは濃淡、すなわち階調再現性を表すことはできな
いため、両者のバランスのとれたインキを提供すること
は、依然大きな課題となっていた。
【0009】本発明は、上記に鑑みてなされたものであ
って、通電量に応じた適切な電気凝固性を備え、印刷物
における階調再現性や印刷濃度に優れた電気凝固印刷イ
ンキ、および、それを用いて得られる高品位な印刷画質
の印刷物ならびに当該インキを用いた電気凝固印刷方法
を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために鋭意検討した結果、電圧一定条件下に
おけるコンデンサー(C)と抵抗(R)からなる電気回
路の時定数とそのときの電気凝固率が、印刷物の階調再
現性ならびに印刷濃度に大きく相関していることを見出
した。そして、電気凝固印刷インキが、時定数と電気凝
固率との以下に述べる関係性を満たすことにより、通電
量に応じた電気凝固性を備え階調再現性に優れたインキ
となることを見出し、さらには階調再現性が良好である
と共に充分な印刷濃度をも備えた電気凝固印刷インキの
実現も可能となることを見出し、本発明を完成させるに
至った。
【0011】すなわち、本発明に係る電気凝固印刷イン
キは、電解凝固可能なポリマー、可溶性電解質、着色剤
および液状媒体を含む電気凝固印刷インキであって、電
圧一定条件下においてコンデンサーと抵抗からなる電気
回路の時定数が0.02秒のときの電気凝固率と前記時
定数が0.09秒のときの電気凝固率との比が、1:
1.5〜1:3.0であることを特徴とするものであ
る。
【0012】上記において、時定数(T)はコンデンサ
ー容量Cと抵抗Rの積RCで定義される。また、電気凝
固印刷において実測される抵抗Rは、陰陽電極間に電気
凝固印刷インキが充填されることで形成される。そし
て、コンデンサーからの放電により、電極間の電気凝固
印刷インキが架橋され、水に難溶の凝固体が形成され
る。ここで、電気凝固率(%)は、[(凝固インキの乾
燥重量)/(電極間に充填されたインキの乾燥重量)×
100]で表わされる。
【0013】時定数が0.02秒とは、実際の印刷物で
は中間調の濃度領域に対応し、時定数が0.09秒と
は、ベタに近いシャドー部の濃度領域に対応している。
したがって、電気凝固印刷インキが上記のような時定数
と電気凝固率との相関性を有することにより、通電量に
対する電気凝固率を示したグラフの中間調部からシャド
ー部までの「傾き」が適切なものとなり、その結果、ハ
イライト部から中間調部までの「傾き」も適切な範囲と
なって、全体的な階調再現性に優れた印刷物を提供する
ことができる。
【0014】具体的には、上記の時定数が0.02秒の
ときの電気凝固率に対する時定数が0.09秒のときの
電気凝固率の比が1.5に満たない場合は、中間調部か
らシャドー部にかけて充分な階調が得られず、濃度差を
鮮明に表現することができない。一方、その比が3を超
える場合は、ハイライト部から中間調部までの階調再現
性が乏しく、ハイライト部からシャドー部にかけての階
調が滑らかさに欠けるものとなって、望ましいグラデー
ションが表現できない。
【0015】本発明の電気凝固印刷インキは、陽極と陰
極との電極間に充填し前記電極間に所定の電圧を印加し
て電気凝固させたときに、前記陽極がステンレス鋼から
なるものであって前記電圧が50Vであれば、前記時定
数が0.02秒のときの電気凝固率が2重量%以上であ
り、かつ、前記時定数が0.09秒のときの電気凝固率
が5重量%以上であることが好ましい。
【0016】上記電圧下、ステンレス鋼から放出される
3価の鉄イオン量に応じて上記所定の電気凝固率が得ら
れる電気凝固印刷インキでは、通電量に対する電気凝固
率を示したグラフの「傾き」ばかりでなく「立ち上が
り」も適切なものとなって、印刷物の階調再現性に優れ
るとともに充分な印刷濃度(すなわち凝固量)を備えた
印刷物を提供することができる。さらに、このような電
気凝固特性を有する電気凝固印刷インキは、凝固の形成
速度が充分に速いので、実用的な印刷速度を達成するこ
ともできる。
【0017】また、上記のような電気凝固特性を達成す
るために、本発明の電気凝固印刷インキに用いられる電
解凝固可能なポリマーの酸価は30〜200mgKOH
/gであり、その重量平均分子量は10万〜80万であ
ることが好ましい。さらに、本発明の電気凝固印刷イン
キの電気伝導率は80〜180mS/cmであり、pH
は3〜8であることが好ましい。
【0018】本発明に係る印刷物は、上記の本発明に係
る電気凝固印刷インキにより印刷されていることを特徴
とする。本発明に係る電気凝固印刷インキを用いること
により、階調再現性に優れた高品質の印刷物を得ること
が可能となる。
【0019】さらに、本発明に係る電気凝固印刷方法
は、上記の本発明に係る電気凝固印刷インキを用いるこ
とを特徴とするものであり、階調再現性に優れた高品質
の印刷物を作成することが可能となる。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明の電気凝固印刷イン
キについて、詳しく説明する。なお、以下の説明におい
て、「インキ」とは「電気凝固印刷インキ」を示す。
【0021】本発明のインキには、少なくとも、電解凝
固可能なポリマー、可溶性電解質、着色剤および液状媒
体が配合される。
【0022】このポリマーは、多価金属イオンと化学結
合可能なポリマーであり、カルボキシル基、スルホン
基、リン酸基、硝酸基などの酸基を有していることが好
ましく、特にカルボキシル基、スルホン基を有している
ことが好ましい。具体的には、ポリアクリル酸とその変
性物、ポリアクリルアミドの加水分解物、ポリアクリル
酸ヒドラジド、アクリル酸とアクリルアミドを構成要素
とする共重合体などを好ましく用いることができる。な
お、変性物とは、エステル化、アミド化、あるいは加水
分解反応等により、あるいは一部に別のモノマーを共重
合させる共重合反応により、物理的・化学的性質を変え
たものを意味する。これらは、単独で、または2種以上
を混合して用いることができる。
【0023】上記ポリマーの酸価は、30〜200mg
KOH/gであることが好ましい。さらに好ましくは、
50〜130mgKOH/gが選ばれる。酸価が30m
gKOH/g未満であると、電気凝固速度が小さく、一
方、酸価が200mgKOH/gを超えると電気凝固速
度が大きくなりすぎて、いずれの場合も時定数が0.0
2秒のときと0.09秒のときの所定の電気凝固率比
(1:1.5〜1:3.0)が達成されず、インキの濃
淡差が充分に得られない恐れがある。また、印刷濃度と
の関係では、30mgKOH/g未満であると、時定数
が0.02秒のときの電気凝固率が2重量%より小さ
く、時定数が0.09秒のときの電気凝固率が5重量%
より小さくなって、充分な印刷濃度が得られなくなる恐
れがある。一方、酸価が200mgKOH/gを超える
と、時定数が0.02秒のときの電気凝固率は2重量%
以上であるが、時定数が0.09秒のときの電気凝固率
が5重量%未満となって、全体的に印刷物の濃度が低
く、その結果、階調再現が平坦になる恐れがある。これ
は恐らくは、酸価が高くなりすぎると陽極付近のポリマ
ーと多価金属イオンの多くが反応して陽極付近に密なポ
リマー凝固体が形成され、多価金属イオンの拡散が妨げ
られるため、結果的に凝固インキの容積が小さくなって
しまうためではないかと考えられる。
【0024】また、上記ポリマーの重量平均分子量は、
10万〜80万であることが好ましい。さらに好ましく
は、20万〜50万の範囲が選ばれる。10万を下回る
と、電気凝固率が小さくなって、上記所定の時定数が
0.02秒のときと0.09秒のときの所定の電気凝固
率比が得られず、必要とされる階調再現性が達成できな
い恐れがあるとともに、印刷濃度も不足する恐れがあ
る。また、重量平均分子量が80万を超えると、インキ
の粘度が高くなりすぎて操作性が低下する恐れがあり、
あえて使用する場合はインキの粘度を下げるための水の
添加量が増える結果、基材への転写性が低下する傾向が
みられる。この重量平均分子量は、通常のゲル濾過クロ
マトグラフィー法や粘度法により求めることができる。
【0025】こうしたポリマーは、インキの総重量に対
して、約1〜約13重量%の量、さらに好ましくは約3
〜約11重量%の量で配合されていることが好ましい。
ポリマーの配合量が約1重量%を下回ると、凝固体中の
顔料を固着する力が弱くなり、非凝固インキを除去する
ためのスキージにより凝固インキが一部かき取られてし
まって、画質が低下する恐れがある。また、約13重量
%を超えると、インキの粘度が高くなりすぎて、操作性
が低下する恐れがある。粘度を下げるために水の添加量
を増加させると、顔料の含有率が低くなりすぎて印刷物
の濃度が実用性能以下になる恐れがあると共に、基材へ
のインキの転写性が低下する傾向がみられる。
【0026】インキに配合される可溶性電解質は、イン
キの電気伝導性を高め、さらに陽極表面における不動態
酸化被膜に所望の破壊を生じさせるためのものである。
好ましい電解質は、ハロゲン化物であり、特に塩化物が
好ましい。たとえば、アルカリ金属のハロゲン化物、ア
ルカリ土類金属のハロゲン化物として、塩化リチウム、
塩化ナトリウム、塩化カリウム、および塩化カルシウム
などが挙げられ、また、塩化アンモニウム、塩化ニッケ
ル、塩化銅、塩化マンガンなども好ましく使用すること
ができる。これらは、単独で、または2種以上を混合し
て用いることができる。
【0027】こうした可溶性電解質は、インキに所望の
電気伝導率(後述)を与える必要性から、インキの総重
量に対して、約3〜約18重量%の量、さらに好ましく
は約6〜約15重量%の量で配合されていることが好ま
しい。
【0028】インキに配合される着色剤としては、一般
の印刷インキ、塗料、または記録剤などに使用されてい
る有機系あるいは無機系顔料、および各種染料を使用す
ることができる。これらの着色剤は、単独で、または、
色相や濃度の調整のために2種以上を混合して用いるこ
とができる。
【0029】有機系顔料としては、アゾ系、フタロシア
ニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、
キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イ
ソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチン系、ジ
ケトピロロピロール系、イソインドリン系等が挙げられ
る。
【0030】また、無機系顔料としては、カーボンブラ
ック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウ
ム、炭酸カルシウム、酸化クロムなどが挙げられる。
【0031】さらに具体的には、墨インキには、カーボ
ンブラック モナーク120(Carbon Blac
k Monarch(登録商標)120、キャボット
社;CABOT CORP.)等の無機顔料、藍インキ
には、ホスタパームブルー(Hostaperm Bl
ue)B2GまたはB3G(ヘキスト社)等の銅−フタ
ロシアニン系有機顔料、紅インキには、パーマネントル
ビン(Permanent Rubine)F6Bまた
はL6B(ヘキスト社)等のアゾ系有機顔料、また黄イ
ンキには、パーマネントイエロー(Permanent
Yellow)DGRまたはDHG(ヘキスト社)等
のアゾ系有機顔料を、それぞれ好適に用いることができ
る。
【0032】これらの顔料は、インキの電気凝固により
形成される凝固インキのドットの濃度と着色力を確保す
る量で使用され、好ましくは、インキの総重量に対し
て、約6.5〜約15重量%の量でインキ中に含まれ
る。
【0033】染料としては、酸性染料、塩基性染料、直
接染料、反応性染料、分散染料、含金属染料等を任意に
用いることができる。その配合量は、インキの総重量に
対して約1〜約7重量%、さらには約2〜約5重量%で
あることが好ましい。
【0034】また、インキの色相や濃度の調整などを目
的として、上記の顔料と染料とを併用することもでき
る。ただし、染料の使用は顔料の分散安定性を悪くした
り、印刷画像の耐水性、耐光性を低下させる場合もある
ので、その含有量は、顔料の約40重量%以下、さらに
は約25重量%以下であることが好ましい。
【0035】本発明のインキに用いられる着色剤が顔料
である場合、顔料を液状媒体に安定に分散させるため
に、分散剤を用いることができる。なお、分散剤を用い
ずに、あるいは分散剤を用いながら、上記電解凝固可能
なポリマーに予め顔料を分散させてから、液状媒体に分
散させることも可能である。
【0036】分散剤としては、アニオン性、カチオン
性、ノニオン性、両イオン性の界面活性剤等を使用する
ことができる。具体的には、ナフタレンスルホン酸ホル
ムアルデヒド縮合物のアルカリ金属塩、特に好ましく
は、縮合度が5〜12のナトリウム塩のものを用いるこ
とができる。これらは、花王(株)、三洋化成工業
(株)、サンノプコ(株)、第一工業製薬(株)、共栄
社化学(株)、東邦化学工業(株)、ボーム・フィラテ
ックス・カナダ社(Boehme Filatex C
anada Inc.)などから市販されているものを
用いることができる。たとえば、縮合度が7のナフタレ
ンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩
が、有効成分約42%の水溶液として、ボーム・フィラ
テックス・カナダ社からクロスパース(Closper
se)2500の商標で販売されている。
【0037】分散剤の配合量は、インキの総重量に対し
て、約0.05〜約5重量%であることが好ましく、さ
らに好ましくは、約0.1〜約2重量%が選ばれる。分
散剤の量が約0.05重量%を下回ると、インキの保存
安定性が充分に確保されず、約5重量%より多い場合は
被印刷体に転写された凝固ドットの濃度が低下する傾向
がある。
【0038】上記各配合成分(電解凝固可能なポリマ
ー、可溶性電解質、着色剤、必要に応じて分散剤等)を
溶解または分散させるための液状媒体としては、水が使
用されることが望ましい。
【0039】本発明のインキは、さらに多価金属イオン
と錯体を形成する金属イオン封鎖剤を含むことができ
る。多価金属イオンは、電気凝固印刷において凝固イン
キのドットを形成させる必須成分であるが、インキ中に
多価金属イオンが存在すると、インキが電気凝固する前
に、インキ中の電解凝固可能なポリマーと多価金属イオ
ンが化学結合し、インキの粘度が増加する。このインキ
の粘度は、多価金属イオンの濃度に応じて上昇し、多価
金属イオン濃度が高い場合は、電気凝固させる前にイン
キのゲル化が生じてしまう。具体的には、インキ中の多
価金属イオン、たとえば第二鉄イオン濃度が約25pp
mを超えると、通常の印刷に不適切なほどインキの粘度
が高くなり、約140ppmを超えるとインキのゲル化
が生じる。
【0040】こうした多価金属イオンは、インキに使用
される原材料に含まれていたり、インキの製造工程で混
入したりする場合がある。また、陽極表面から非凝固イ
ンキを除去して印刷インキ供給手段へ戻して再利用する
際、少量の凝固インキも非凝固インキと共に回収される
ため、再利用されるインキは陽極表面から溶出された多
価金属イオンを少量含んでいる。したがって、電気凝固
印刷時間が長くなるにつれて、印刷インキ供給手段から
供給されるインキ中の多価金属イオン濃度は増加する場
合がある。
【0041】そこで、こうした好ましくないインキの粘
度上昇を防ぐために、本発明のインキには、インキ中の
多価金属イオン濃度が約20ppm以下、好ましくは約
15ppm以下になるような状態を維持する量で、金属
イオン封鎖剤を配合することができる。なお、金属イオ
ン封鎖剤を大過剰で用いた場合は、多価金属イオンをほ
ぼ完全に錯体化したのちインキ中に錯形成可能な金属イ
オン封鎖剤が残ってしまい、これが電気凝固の際に、陽
極表面から溶出されて凝固インキのドットを形成させる
必須成分である多価金属イオンを錯体化するため、電解
凝固可能なポリマーの架橋を妨げて電気凝固率を低下さ
せてしまう恐れがある。したがって、金属イオン封鎖剤
は、このようなインキの電気凝固を妨げない量の範囲内
で使用される。
【0042】また、上記のように電気凝固印刷では、長
時間印刷を行う場合インキ中の多価金属イオンの量が徐
々に増加してくる場合があるので、印刷開始時に用いる
インキ(始動用インキ)と、印刷途中で追加するインキ
(補充用インキ)とでは、追加する金属イオン封鎖剤の
量を変える(すなわち、補充用インキの方により多量の
金属イオン封鎖剤を用いる)ことが好ましい。
【0043】金属イオン封鎖剤の含有量は、インキ中の
多価金属イオンの濃度の他、使用される金属イオン封鎖
剤の種類に依存し、さらに、インキに含まれる電解凝固
可能なポリマーの種類、量によっても変化するものであ
るため、一律に定まるものではないが、目安としては、
インキの総重量に対して約0.01〜約0.3重量%で
あることが好ましい。インキが上記始動用インキとして
使用される場合、金属イオン封鎖剤は、インキの総重量
に対して、好ましくは0〜約0.2重量%の量、より好
ましくは約0.01〜約0.15重量%でインキ中に含
まれる。一方、補充用インキの場合は、印刷中に増加す
る多価金属イオンを錯体化することを考慮し、インキの
総重量に対して好ましくは約0.05〜約0.3重量%
の量、より好ましくは約0.1〜約0.3重量%の量
で、金属イオン封鎖剤がインキ中に含まれる。
【0044】金属イオン封鎖剤として具体的には、金属
イオンとの結合の安定性の観点から、金属イオンを中心
金属原子として組み込んだ環状構造を形成することがで
きる化合物を用いることが好ましく、エチレンジアミン
四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸(IDA)、ヒドロ
キシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、エチレンビス
(ヒドロキシフェニル)グリシン(EHPG)、ヒドロ
キシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニ
トリロ三酢酸(NTA)、エチレン−ビス(オキシエチ
レンニトリロ)四酢酸(EGTA)、シクロヘキサンジ
アミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五
酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(T
THA)などのポリアミノカルボン酸とその塩類を好適
に用いることができる。これらは、単独で、または2種
以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】本発明のインキは、さらに必要に応じて、
その他の各種添加剤を含んでいてもよい。たとえば、菌
類、カビ等の発生を防ぐための防腐・防かび剤を含むこ
とが好ましい。好ましい防腐・防かび剤としては、デヒ
ドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピ
リジンチオン−1−オキサイド、ジンクピリジンチオン
−1−オキサイド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3
−オン、1−ベンズイソチアゾリン−3−オンのアミン
塩などが挙げられ、これらを単独で、または2種以上を
混合して用いることができる。より具体的には、たとえ
ば、パルメトールK−50(PARMETOL K−5
0)の商標でグレイプロダクツ社(GRAY PROD
UCTS)により販売されているものを用いることがで
きる。この防腐・防かび剤は、インキの総重量に対し
て、約0.01〜約2.0重量%の量で使用されること
が好ましい。
【0046】その他にも、本発明のインキは、必要に応
じて、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、酸化防止
剤、消泡剤、シランカップリング剤、可塑剤、難燃剤、
保湿剤、有機溶剤などを含むことができる。
【0047】以上のような各成分を、分散機を用いて均
一に分散させて、本発明のインキを製造することができ
る。分散機としては、一般に使用されるもの、たとえ
ば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライ
ター、サンドミルなどを用いることができる。なお、着
色剤として顔料を用いる場合は、顔料をあらかじめ分散
剤および/または電解凝固可能なポリマーにより液状媒
体に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散
体に、可溶性電解質等の残りの成分を加えるようにする
ことが好ましい。この顔料分散体中の顔料の粒度は、分
散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、
分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘
度などを適宜調節することにより、調整することができ
る。また、インキ中に気泡や予期せぬ粗大粒子などが含
まれている場合は、インキの電気凝固を妨げ画像品質を
低下させるため、脱泡装置、濾過器などを用いた従来公
知の方法でこれらを取り除くことが好ましい。
【0048】このようにして得られる本発明のインキの
電気凝固率は、陽極と陰極との電極間に充填し電極間に
所定の電圧を印加して電気凝固させたときに、その陽極
がステンレス鋼からなるものであって電圧が50Vであ
れば、時定数が0.02秒のときは2重量%以上であっ
て、かつ、時定数が0.09秒のときは5重量%以上で
あることが好ましい。時定数が0.09秒のときの電気
凝固率が5重量%に満たないと濃度階調における高濃度
部の濃度が低く、また、時定数が0.02秒のときの電
気凝固率が2重量%を下回ると中間調から低濃度部の濃
度が低くなって、その結果、充分な印刷濃度が得られな
い恐れがあるとともに、全体的な階調再現性も低下する
傾向がみられる。
【0049】インキの電気伝導率は、80〜180mS
/cmであることが好ましく、100〜160mS/c
mであることが一層好ましい。電気伝導率が80mS/
cmを下回ると、電気凝固率が小さくなって、充分な階
調再現性、さらには印刷濃度が得られなくなる恐れがあ
り、また電気伝導率が180mS/cmを超えると、イ
ンキに含まれる塩の濃度が高くなることにより印刷物の
耐水性が低下する傾向がみられる。
【0050】また、インキのpHは、25℃で測定した
ときに3〜8の範囲が好ましく、3〜6の範囲が一層好
ましい。pHが3を下回ると、電解凝固可能なポリマー
等の配合成分の溶解性が乏しくなってインキの粘度安定
性が損なわれる恐れがあり、またpHが8を超えると、
多価金属イオンの水和物が形成される結果、電気凝固率
が小さくなって、階調再現性、ならびに印刷濃度が低下
する傾向がみられる。インキのpHを調整するには、塩
酸、硫酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化アンモニウムなどの従来公知の酸・アルカリが用
いられる。
【0051】次に、本発明の電気凝固印刷方法について
説明する。本発明の電気凝固印刷方法とは、本発明のイ
ンキを用いる電気凝固印刷法であり、本発明のインキの
電気凝固によって画像が形成され、このようにして形成
された画像が被印刷体に転写される全印刷プロセスを意
味する。全印刷プロセスは、少なくとも以下の(b)、
(c)、(d)、(f)工程を含み、好ましくは以下の
全工程(a)〜(f)を含んでいる。 (a)洗浄工程:陽極(回転シリンダ)表面を洗浄す
る。 (b)被覆工程:陽極表面を油性物質を含む被覆剤のミ
クロ液滴で被覆する。 (c)充填工程:陰陽電極間(ギャップ)に電気凝固印
刷インキを充填する。 (d)凝固工程:選択された陰極と陽極との間に電圧を
印加して、陽極表面に所望の画像を表わす凝固インキの
ドットを形成する。 (e)除去工程:陽極表面に残存する非凝固インキを除
去する。 (f)転写工程:凝固インキのドットを被印刷体に接
触、転写させて、被印刷体に画像を形成する。
【0052】上記工程(b)で用いられる、陽極表面を
被覆するための被覆剤は、凝固インキが陽極表面から被
印刷体に転写されやすくなるように、インキの電気凝固
に先立って陽極表面に塗布されるものであり、不飽和脂
肪酸、不飽和植物油、脂肪酸モノエステル、イソステア
リン酸、シリコンオイル、エチレンオキサイド鎖を有す
るノニオン系界面活性剤などの油性物質を含んでいる。
また、被覆剤には、粘度を調整するための金属酸化物を
添加することもできる。
【0053】この電気凝固印刷は、たとえば図1に示す
ような電気凝固印刷装置を用いて実施することができ
る。図1にその概要をみるように、電気凝固印刷装置1
は、複数の足部3でベースプレート5が立設されてお
り、このベースプレート5上には複数のフレーム7が上
下方向へ延伸して立設されている。このフレーム7の上
部には一対の垂直プレート9が設けられ、各垂直プレー
ト9に駆動モータ(図示せず)によって回転自在なシリ
ンダ状陽極11が挟持されている。この陽極11は、図
1において紙面に対して垂直方向に延伸され、不動態酸
化被膜からなる不動態表面を備えている。
【0054】この電気凝固印刷装置1には、陽極11の
表面に沿って被覆剤を塗布し、陽極表面上に被覆剤のミ
クロ液滴を形成する被覆剤塗布手段13と、本発明のイ
ンキを陽極に供給する温度調節手段(図示せず)を備え
たインキ供給手段15と、本発明のインキの電気凝固に
よって所望の画像を表す凝固インキの複数のドットを前
記陽極表面上に形成するための複数の陰極17を有する
印刷ヘッド19が設けられ、さらに、非凝固インキを陽
極表面から除去するためのスキージのような非凝固イン
キ除去手段21が設けられている。そして、陽極表面上
に得られた所望の画像を表す凝固インキの複数のドット
と被印刷体Wとを接触させて、凝固インキのドットを陽
極表面から前記被印刷体Wへと転写させる(その結果、
被印刷体Wに画像が印刷される)手段として、圧胴23
が設けられている。
【0055】たとえば、上記陽極11はステンレス鋼ま
たはアルミニウムからなり、上記非凝固インキ除去手段
21は軟質ポリウレタン製スキージであり、上記圧胴2
3はポリウレタン製である。また、陽極11と複数の陰
極17との間隔は、約50〜約100μmであることが
好ましい。
【0056】また、陽極11の下方には、陽極表面上に
残留する転写されなかった凝固インキ、非凝固インキ、
被覆剤などを洗浄することで陽極表面から除去する、温
度調節手段(図示せず)を備えた陽極表面洗浄手段25
が設けられている。
【0057】このような構成により、回転している陽極
11の陽極表面に被覆剤塗布手段13により被覆剤が塗
布され、そのミクロ液滴が形成されたのち、インキ供給
手段15により、一定の距離に位置する陰極17と陽極
11との間の電極間に、本発明のインキが供給される。
供給されたインキは、選択された陰極と陽極との電極間
に電圧を印加することにより電気凝固して凝固インキの
ドットを形成し、非凝固インキは非凝固インキ除去手段
(スキージ)21により陽極表面から除去される。
【0058】次いで、陽極表面上に形成された凝固イン
キのドットは、陽極11と圧胴23との間で被印刷体W
が凝固インキのドットと接触することによって、被印刷
体Wに転写され、印刷される。
【0059】多色印刷の場合は、図1に示す電気凝固印
刷装置1を、用いる色の数に合わせた所望の台数用意
し、各電気凝固印刷装置1の陽極表面上に形成された所
望の色相の凝固インキのドットによる画像を、それぞれ
の転写位置で見当を合わせて転写することにより可能と
なる。たとえば、図1に示す電気凝固印刷装置1を4台
タンデムに配置して、4台の装置で黄、藍、紅、墨イン
キを順次印刷することにより、プロセス印刷が可能とな
る。
【0060】また、本発明のインキを使用して印刷を行
う電気凝固印刷装置としては、上記アメリカ特許第5,
538,601号に記載されている種類のセンタードラ
ム式印刷装置であってもよい。この印刷方式は、陽極表
面洗浄手段、被覆剤塗布手段、インキ供給手段、陽極と
一定の距離に位置する複数の陰極、非凝固インキ除去手
段、および転写手段(圧胴)からなる印刷ユニットを、
不動態表面を有するシリンダ形状の回転する単一の陽極
のまわりに配置するシステムである。例えば、4つの印
刷ユニットを単一の陽極のまわりに配置し、4つの印刷
ユニットで本発明の黄、藍、紅、墨インキを順次印刷す
ることにより、プロセス印刷が可能となる。
【0061】被印刷体としては、非塗工印刷用紙、塗工
印刷用紙(コート紙、アート紙、キャストコート紙等)
が最適である。また、プラスチックからなる基材上に受
像層を設けた吸水性シートも、好ましく用いられる。受
像層は、特に限定されることはないが、たとえば、水系
の電気凝固印刷インキを吸収させるために、ポリビニル
アルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミ
ド等の吸水性樹脂層から構成することができる。
【0062】次に、本発明の印刷物について説明する。
本発明の印刷物は、上記のような任意の被印刷体上に本
発明のインキを用いた印刷がなされているものである。
特に限定はされないが、たとえば、上記のような電気凝
固印刷方法により、本発明の印刷物を好ましく得ること
ができる。
【0063】
【実施例】以上述べてきたように、電気凝固ポリマーを
中心とした配合成分、配合量等を様々に調整して、電気
伝導率、pH等の様々な特性を組み合わせることによ
り、所定の電気凝固特性を有する本発明のインキを製造
することができ、それを用いて本発明の印刷方法を実施
し、また、本発明の印刷物を得ることができる。そこ
で、以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明す
るが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこ
れらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、
「重量%」は単に「%」と記載する。
【0064】(1)電解凝固可能なポリマーの合成 [ポリマーAの合成]攪拌機、窒素導入管、冷却管を備
えた2Lのセパラブル4つ口フラスコに、イオン交換水
を669g、アクリルアミド95. 5g、アクリル酸
4. 5gおよび次亜りん酸0.2gを仕込み、窒素ガス
気流中30分間攪拌して窒素置換を行った。50℃に加
熱し、過硫酸アンモニウム0.4gを加え反応を開始し
た。その後80℃に昇温し、アゾ系重合開始剤(V−5
0;和光純薬)0.6gを加え5時間反応させて、ポリ
マーAを重合した。イオン交換水と水酸化カリウムまた
は塩酸を使用して、固形分12%、pH(25℃で電気
化学計器社製ガラス電極式水素イオン濃度計により測
定;以下同様)4.0に調整した。得られた水溶液の粘
度(30℃でトキメック社製B型粘度計を用いて測定;
以下同様)は1700cpsであり、ポリマーAの重量
平均分子量は25万(GPC法、ポリエチレングリコー
ル換算;以下同様)、酸価は30mgKOH/gであっ
た。
【0065】[ポリマーB、C、E〜Jの合成]上記ポ
リマーAの合成と同様に、表1に示した各成分を用い
て、ポリマーB、C、E〜Jを合成した。得られた結果
を、表1に併せて示す。
【0066】[ポリマーDの合成]上記得られたポリマ
ーCの水溶液500gに水酸化カリウムを2.0g加
え、80℃で2時間加熱して加水分解反応を行って、ポ
リマーDを合成した。その後、イオン交換水と塩酸を使
用して、固形分12%、pH4.0に調整した。結果を
表1に示す。
【0067】
【表1】 (2)インキの調製 [実施例1]以下の原料を用い、実施例1の墨のインキ
を調製した。 ポリマーA水溶液(固形分12%) 73.3% カーボンブラック顔料 8.8% (キャボット社;Carbon Black Monarch 120) アニオン性分散剤水溶液(有効成分約42%) 0.75% (ボーム・フィラテックス・カナダ社;Closperse 2500) 塩化カリウム 8.8% EDTA2ナトリウム2水和物 0.03% 防腐・防かび剤 0.1% (グレイプロダクツ社;Parmetol K−50) 脱イオン水 8.22% 合 計 100 % まず、サンドミルを用いて顔料を分散剤水溶液により水
中に分散させ、顔料分散体を得た。次に顔料分散体にポ
リマー水溶液を添加し、さらに塩化カリウムとEDTA
2ナトリウム2水和物を加え、その後防腐・防かび剤と
水を添加した。塩酸または水酸化ナトリウムにてpHが
4.2になるよう調整した。このようにして得られた印
刷インキの電気伝導率(25℃でHORIBA社製CO
NDUCTIVITY METER DS-12を用い
て測定;以下同様)は114mS/cm、比重1.1、
粘度は500cpsであった。
【0068】得られたインキの電気凝固率を、以下の操
作により求めた。すなわち、共にステンレス鋼からな
り、間隔が50μmに保たれた陽極と陰極との間隙に、
得られたインキを充填した。次に、容量が51.2μF
であるコンデンサーを用いて、50Vの電圧を陰陽電極
間に印加して通電させ、電極間のインキを電気凝固させ
た。その後、陰陽両極を純水にて水洗し、電気凝固物を
回収した。電気凝固物の乾燥重量を測定し、充填したイ
ンキの乾燥重量との比から、その電気凝固率を求めた。
その結果、時定数0.09秒の時の電気凝固率は、9.
0%であった。また、同様にして、コンデンサー容量が
12.8μFのコンデンサーを使用し、電圧50Vで電
気凝固をさせた。その結果、時定数0.02秒の時の電
気凝固率は、5.1%であった。なお、時定数T1とT
2の計算表を表2に示す。
【0069】
【表2】 [実施例2〜9、比較例1〜4]実施例1と同様にし
て、表3に示した各配合成分を用いて、実施例2〜9、
比較例1〜4の各インキを製造した。結果を、表4に示
す。
【0070】
【表3】
【表4】 (3)電気凝固印刷 図1に示した種類の電気凝固印刷装置を使用して、上記
得られた各インキにより電気凝固印刷を行った。ここ
で、陽極および陰極として、ステンレス鋼シリンダ状陽
極と直径約50μmの複数の陰極とを用いた。両電極間
の間隔は、隙間ゲージで50μmに調整した。また、イ
ンキと、陽極を洗浄する装置に使用される洗浄液とを4
0℃に加温し、インキおよび陽極を40℃に保持して印
刷を行った。なお、インキ供給装置におけるインキの液
面が下がるとインキを追加して、液面を一定に保持する
ようにした。なお、被印刷体には、合成紙(ピーピージ
ーインダストリー社「テズリン」)を用いた。
【0071】得られた印刷物のシャドー部(電圧印加時
間:4μsec)の反射濃度と中間調部(電圧印加時
間:1μsec)の反射濃度を、X-Rite社製X-R
ite(登録商標)MODEL408を用いて測定し
た。また、階調再現性を、以下の評価基準に従って目視
評価した。 :高濃度部から低濃度部にかけて非常に滑らかに階調が
表現されている。 △:高濃度部から低濃度部にかけて濃淡差がやや乏し
く、あるいは、滑らかな階調が表現されず、階調再現性
はあまり良くない。 ×:高濃度部から低濃度部にかけて濃淡差がほとんどな
く、階調再現性は悪い。 以上の結果を、表4に示す。
【0072】表4にみるように、時定数が0.02秒の
ときと時定数が0.09秒のときとの電気凝固率の比
が、1:1.5〜1:3.0である実施例のインキで
は、中間調部とシャドー部における濃度差が大きく(O
D値差が概ね0.4以上)、良好な階調再現性が得られ
ていた。さらに、時定数が0.02秒のときの電気凝固
率が2重量%以上であり、時定数が0.09秒のときの
電気凝固率が5重量%以上である実施例1〜5のインキ
では、充分な階調再現性と共に充分な印刷濃度も得られ
ていたが、この要件を満たさない実施例6〜9のインキ
では、充分な階調再現性は得られているものの全体的に
印刷濃度が不足気味であった。
【0073】これに対し、上記電気凝固率の比の値が上
記範囲外である比較例のインキについてみると、比較例
1のインキは電気凝固が起こらないため印刷が行われ
ず、また、比較例2〜3のインキは階調再現性が悪く、
濃淡を明瞭に再現できないことが判明した。比較例4の
インキでは、中間調部とシャドー部の間の階調は得られ
ているものの、ハイライト部からシャドー部までの階調
の滑らかさに欠け、したがって、目視による階調再現性
の評価は悪いものとなった。
【0074】
【発明の効果】本発明の電気凝固印刷インキは、電解凝
固可能なポリマー、可溶性電解質、着色剤および液状媒
体を含み、電圧一定条件下においてコンデンサーと抵抗
からなる電気回路の時定数が0.02秒のときの電気凝
固率と前記時定数が0.09秒のときの電気凝固率との
比が1:1.5〜1:3.0となっているので、通電量
に応じた適切な電気凝固特性を備えていて、階調再現性
に優れた高品質の印刷物の提供を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の実施に用いられる電気凝固印
刷装置の一例を示した概略図である。
【符号の説明】
1 電気凝固印刷装置 11 陽極 13 被覆剤塗布手段 15 インキ供給手段 17 陰極 19 印刷ヘッド 21 非凝固インキ除去手段 23 圧胴 25 陽極表面洗浄手段 W 被印刷体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 橋本 繁人 東京都中央区京橋二丁目三番13号 東洋イ ンキ製造株式会社内 (72)発明者 勝屋 敦 東京都中央区京橋二丁目三番13号 東洋イ ンキ製造株式会社内 Fターム(参考) 4J039 AD09 AD12 BA04 BA10 BA13 BA16 BA17 BA18 BA29 BA30 BA31 BA35 BA36 BA38 BA39 BC39 BC54 BC60 BC64 BE01 BE03 BE04 BE05 BE08 BE29 CA01 CA06 DA02 EA15 EA16 EA17 EA19 EA42 EA48 FA02 GA34

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電解凝固可能なポリマー、可溶性電解
    質、着色剤および液状媒体を含む電気凝固印刷インキで
    あって、電圧一定条件下においてコンデンサーと抵抗か
    らなる電気回路の時定数が0.02秒のときの電気凝固
    率と前記時定数が0.09秒のときの電気凝固率との比
    が、1:1.5〜1:3.0であることを特徴とする電
    気凝固印刷インキ。
  2. 【請求項2】 陽極と陰極との電極間に充填し前記電極
    間に所定の電圧を印加して電気凝固させたときに、前記
    陽極がステンレス鋼からなるものであって前記電圧が5
    0Vであれば、前記時定数が0.02秒のときの電気凝
    固率が2重量%以上であり、かつ、前記時定数が0.0
    9秒のときの電気凝固率が5重量%以上である請求項1
    に記載の電気凝固印刷インキ。
  3. 【請求項3】 前記電解凝固可能なポリマーの酸価が3
    0〜200mgKOH/gである請求項1または2に記
    載の電気凝固印刷インキ。
  4. 【請求項4】 前記電解凝固可能なポリマーの重量平均
    分子量が10万〜80万である請求項1〜3のいずれか
    一に記載の電気凝固印刷インキ。
  5. 【請求項5】 電気伝導率が80〜180mS/cmで
    ある請求項1〜4のいずれか一に記載の電気凝固印刷イ
    ンキ。
  6. 【請求項6】 pHが3〜8である請求項1〜5のいず
    れか一に記載の電気凝固印刷インキ。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか一に記載の電気
    凝固印刷インキにより印刷されていることを特徴とする
    印刷物。
  8. 【請求項8】 請求項1〜6のいずれか一に記載の電気
    凝固印刷インキを用いることを特徴とする電気凝固印刷
    方法。
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