JP2000256066A - 窒化珪素質焼結体とその製造方法およびこれを用いた耐摩耗性部材 - Google Patents

窒化珪素質焼結体とその製造方法およびこれを用いた耐摩耗性部材

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JP2000256066A
JP2000256066A JP11059266A JP5926699A JP2000256066A JP 2000256066 A JP2000256066 A JP 2000256066A JP 11059266 A JP11059266 A JP 11059266A JP 5926699 A JP5926699 A JP 5926699A JP 2000256066 A JP2000256066 A JP 2000256066A
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silicon nitride
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sintered body
oxide
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Takehiro Oda
武廣 織田
Takeshi Kato
剛 加藤
Takami Sakamoto
隆己 坂元
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Original Assignee
Kyocera Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】寿命が長く信頼性に富んだ窒化珪素質耐摩耗部
材を提供する。 【解決手段】非晶質化した粒界相を有する窒化珪素質焼
結体であって、少なくとも表面より深さ1mm以内表層
部において、窒化珪素粒子間の粒界相欠落部の集合部の
大きさを300μm以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、窒化珪素質焼結体
からなる耐摩耗性部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】窒化珪素質焼結体は、高強度で耐摩耗性
や剛性に優れているため構造用機械部品の材料として期
待されており、近年ではこれらの特性を利用してベアリ
ングの転動体であるボールやローラーに使用されてい
る。
【0003】上記窒化珪素質焼結体の焼結に際しては、
上記窒化珪素質焼結体の原材料である窒化珪素に自己焼
結性がないため焼結助剤を添加して焼結を行っている。
上記焼結助剤としては、一般にY2 3 などの希土類酸
化物や、Al2 3 、MgO、CaOなどの酸化物が組
み合わされて用いられている。そして、窒化珪素粉末に
これらの焼結助剤を混合して成形した後、焼結を行うこ
とにより窒化珪素質焼結体を得ている。上記焼結する方
法としては、常圧下で行う常圧焼結や窒素等による雰囲
気加圧焼結などがあり、さらに、上記常圧焼結により得
られる焼結体においては、焼結体内部の残留気孔を排除
するために高温で高いガス圧力で処理して機械的強度を
向上させるために、HIP(熱間静水圧加圧)処理を行
っている。
【0004】特に、軸受材料として用いる場合は、材料
に内在する微少な欠陥(気孔等)が転がり疲労によって
表面で剥離を起こす原因となるため、雰囲気加圧焼結や
HIP処理が用いられている。このようにして得られた
焼結体は、製品として精密加工された後、軸受部品とし
て使用される。
【0005】転動体は、表面ないしはその近傍の表層に
高い引っ張り応力を受けるために、表面ないしはその近
傍の表層に欠陥が存在しないことが重要であり、軸受部
品材料として用いる焼結体には、特に、欠陥(気孔、介
在物、組織の異常など)がないことが要求されている。
【0006】さらに、近年はセラミックベアリンクの主
用途である工作機械の高速化、及び、航空機、宇宙産業
への市場展開により、より高温環境化での高負荷用セラ
ミック軸受のニーズが高まっている。また、高速回転の
HDD用としてセラミック軸受のニーズが高まってい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
ようにして得られる窒化珪素質焼結体を用いた軸受材料
は、特に、光学顕微鏡で観察すると、条件によっては焼
結体のラップ断面に図2に示すように、窒化珪素粒子1
の粒界2に粒界相欠落部3が生じ、この集合部が樹脂状
白色模様4として発生し、製品に加工するまでに除去で
きずに製品の表面に残る場合がある。表面に残った模様
は、製品表面の蛍光探傷検査において明確な欠陥指示模
様ではないが微弱に発色する。
【0008】特開平6−329472号公報でも、この
ような模様を有する窒化珪素質焼結体は、軸受材料とし
て要求されている転がり寿命に対して、下記に示すよう
な問題が記載されている。
【0009】上記表面からの深さが1mmを越えると、
該模様を構成している粒界相欠落部の集合部の大きさが
0. 3μmを越える傾向があり、転がり疲労による剥離
を起こす。また、窒化珪素質焼結体が有する上記模様を
構成している上記粒界相欠落部の集合部の大きさは、
0. 3μm以下であっても使用温度が高い軸受について
はその粒界相欠落部が集まり、その群の大きさが0.5
mm以上になると、短時間で転がり疲労による剥離を生
じるという問題がある。
【0010】特開平6−329472号公報の中には、
上記のような問題も示されているが、欠陥サイズを0.
3μm以下の群集であると規定したのみで根本対策には
至っていない。また、特公昭63−46029号公報に
おいては、所定量のタングステン化合物を添加して、焼
結体組織中に所定比のWSi2 を生成させ、高密度、高
強度、かつ、耐熱衝撃性を改善できることについて述べ
られている。しかし、これでも、上記の問題を解決でき
ていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は前記課題に鑑
み、種々検討した結果、粒界相欠落部は粒界相の結晶化
に起因することが判明した。したがって、粒界相を非晶
質化することで粒界相欠落部の発生を小さくし、粒界相
欠落部の集合部である樹枝状白色模様が生じにくくなる
ことを見出し、本発明に至ったのである。
【0012】また、Wの珪化物を結晶粒界に点在させ、
特に、W5 Si3 あるいはWSi2を点在させることに
より、優れた機械的特性を有することを見出し、本発明
に至ったのである。
【0013】即ち、本発明の焼結体は、非晶質化した粒
界相を有する窒化珪素質焼結体であって、少なくとも表
面より深さ1mm以内の表層部における、窒化珪素粒子
間の粒界相欠落部の集合部である樹枝状白色模様の大き
さが300μm以下であることを特徴とするものであ
る。さらには平均粒径が3μm以下であるタングステン
珪化物を含有することを特徴とする。
【0014】また、かかる焼結体を作製する方法とし
て、窒化珪素を主成分とし、焼結助剤として希土類酸化
粉末および酸化アルミニウム粉末を添加し、さらに、タ
ングステンをWO3 換算で0.1重量%〜10重量%の
割合で添加した混合物を成形した後、非酸化物雰囲気中
で1600℃〜2000℃の温度で焼成した後、160
0〜800℃の温度域を3時間以内で冷却させて、粒界
相を非晶質化させることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】まず、本発明の窒化珪素質焼結体の組織を
図1を用いて説明する。短冊状の窒化珪素粒子1が絡ま
ったモザイク状の構造の中にタングステン珪化物粒子5
が点在し、これらの粒子の隙間を非晶質の粒界相2が埋
めている組織であり、粒界相2の欠落部が存在しないこ
とが特徴である。
【0017】本発明の窒化珪素質焼結体は、粒界相を非
晶質化することで粒界相欠落部の発生を小さくし、樹枝
状白色模様として現れる粒界相欠落部の集合部が生じ難
くなることを見出し、本発明に至ったのである。すなわ
ち、粒界相欠落部の発生は次のように説明される。
【0018】焼成中に液相となっている焼結助剤を主と
する成分が冷却に伴い熱収縮するが、その一部または全
てが結晶化すると、結晶化に伴う急激な体積収縮(体積
収縮で数%)が生じ、隣接する粒界の結晶あるいは過冷
却状態の非晶質部との間に隙間が生じ粒界相の欠落部が
発生する。
【0019】種々検討の結果、粒界相が結晶化すると前
記樹枝状白色模様として現れる粒界層欠落部の集合部の
大きさが300μm以上となり、転がり疲労による剥離
が発生しやすくなるが、粒界相の結晶化が少なければ粒
界相欠落部の集合部の大きさが300μm以下、望まし
くは、100μm以下、さらに望ましくは10μm以下
となり、転がり疲労による剥離が生じないことが判明し
た。
【0020】さらには、表面より1mm以内の表層部が
重要である理由は、セラミック部品、特に軸受材等の耐
摩耗性部品は表面を研削したり、研削しない場合でも表
面近傍に応力がかかるため、表面より1mmの範囲内が
特に重要であり、この部分における粒界相欠落部の集合
部の大きさが300μm以下であることが特に重要であ
る。
【0021】また、焼結助剤としては希土類元素酸化物
を用いた場合の方が、酸化マグネシウムや酸化カルシウ
ムなどを用いる場合より破壊靭性値が高く転動体として
は好ましい。理由は明確ではないが、粒界相の性質が異
なるものと思われる。
【0022】特に希土類元素酸化物は焼結助剤として重
要であり、その量は1〜30重量%が望ましい。この範
囲を選んだ理由は、1重量%未満では緻密化させるため
に焼成温度を高温にする必要があるため、機械的特性が
低下する傾向にあるからであり、また、30重量%を越
えると窒化珪素の本来の特性、即ち機械的特性が低下す
る傾向にあるからである。
【0023】また、窒化珪素質磁器を分析する事によっ
て求めた酸素量から、SiO2 以外の添加した酸化物の
含有する酸素量を差し引き、残りの酸素がSiO2 とな
っていると仮定して計算したときに、SiO2 :希土類
元素酸化物の重量比が1:0.3〜1:15となるよう
にすると、耐摩耗性が良好な窒化珪素質セラミック焼結
体を得ることができる。なお、添加物を酸化物以外の形
態で添加したものは、焼成中に酸化物に変化したものと
して酸化物換算の酸素量を差し引き計算した。
【0024】これは、重量比が1:0.3未満であれ
ば、粒界相がSiO2 に富んだ相を分離して白い模様
(粒界の脱落した組織)が発生しやすい傾向にあり、ま
た、1:15以上であれば、SiO2 −希土類元素酸化
物の反応による低融点組成から大幅に外れるため液相生
成が十分ではなく、焼結不良が発生して機械的特性の低
い焼結体になる傾向にあるためである。
【0025】なお、SiO2 は窒化珪素原料中に最初か
ら含まれていたものに加え、場合によっては焼結助剤と
して加えても構わないし、製造工程中で原料の酸化等に
よる増加や焼成分解等による減少が生じても構わない。
【0026】なお、本発明に用いられる希土類元素とし
て、Y、Er、Yb、Luが望ましい。これらの元素中
で、白い模様(粒界の脱落した組織)が発生し難くなる
点で特にYb、Er等の重希土類元素が最も望ましい。
【0027】さらに、副成分としてアルミニウム化合
物、好ましくは酸化アルミニウムを添加する方が焼結性
の面及び粒界相を非晶質化する点で望ましい。粒界相が
酸化アルミニウムを含有することにより、粒界の非晶質
相が安定になるからである。好ましい酸化アルミニウム
量は、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物の重量比が
1:0.5〜1:10、さらに好ましくは、1:1〜
1:5の範囲に選ばれる。その理由は、酸化アルミニウ
ム:希土類元素酸化物が(1:0.5)以上になると、
破壊靭性値が低下する傾向にある。また、酸化アルミニ
ウム:希土類元素酸化物が(1:10)以下になると、
粒界相の非晶質化が不十分で焼結性が悪くなり、圧砕荷
重が低くなる傾向にある。また、粒界相が非晶質化し難
くなり、粒界相欠落部が発生しやすくなる。
【0028】なお、酸化アルミニウムの一部を窒化アル
ミニウムに置き換えても構わないが、窒化アルミニウム
は粒界相の結晶化を助長するので、酸化アルミニウムの
10重量%程度に留めた方がよい。
【0029】本発明によれば、上記の焼結体中に、平均
粒径が3μm以下であるタングステン珪化物を含有させ
ることが重要である。もともと窒化珪素原料中には微量
のFeが不純物として含まれており、焼成後Feが偏在
して破壊源となることがあり、強度低下が生じ、また耐
摩耗性部材として用いたときに、圧砕荷重の低下と、転
がり寿命が短くなる。タングステン珪化物はFeを固溶
する性質を持つため、焼成後のFeの偏在を少なくし、
機械的特性を向上させる。
【0030】本発明で、これらのW珪化物の粒径を3μ
m以下に限定したのは、タングステン珪化物が3μmよ
り大きいと粒界相中での分散が不十分となり、それ自身
が破壊源となり焼結体の強度を低下させてしまい、目的
の強度が得られないためである。
【0031】また、窒化珪素質焼結体中にW5 Si3
WSi2 を生成させるには、平均粒径が3μm以下のW
の珪化物、炭化物、酸化物、窒化物の1種類以上を0.
1〜10.0重量%を添加する。これらのW化合物は焼
成中に窒化珪素やSiO2 と反応し、3μm以下のW5
Si3 やWSi2 を生成する。
【0032】なお、本発明の焼結体においては、W成分
以外に、Ti、Ta、Mo、Nb、V、Mnなどの周期
率第4a、5a、6a族金属や、それらの珪化物、炭化
物、酸化物、窒化物、また、SiCなどの分散粒子やウ
イスカーとして本発明の焼結体に分散させても特性を劣
化させるような影響が少ないことから、これらを周知技
術に基づき、適量添加して複合材料として特性の改善を
行うことも当然可能である。
【0033】さらに、Wの珪化物のうち、W5 Si3
子はWSi2 粒子よりも耐熱性が高いと考えられるため
5 Si3 粒子を含有する場合の方が、転がり寿命が優
れる。W5 Si3 とWSi2 との比率(W5 Si3 /W
Si2 )が0.1以上で構成されるセラミック焼結体が
好適である。好ましくは、上記比率が0.3〜1.5と
するのが望ましい。W5 Si3 /WSi2 比が0.1以
下になると、耐熱性が低下する。
【0034】WSi2 又はW5 Si3 は粒界に単分散
し、外部より応力がかかった際に、応力を緩和する効
果、また、同時に焼結助剤としても効果があり、その結
果、破壊靭性が5.6MPa√m以上、かつ、Hv10
硬度が14.5GPa以上の高靭性、かつ、高硬度の機
械的特性を有することができる。つまり、本発明による
と、白い樹枝状に観察される模様がなくなり、高信頼性
であり、変質層が少ないため研削代の少なく、かつ高破
壊靭性、高硬度である窒化珪素質焼結体を得ることが可
能となる。
【0035】本発明の窒化珪素質焼結体の製造方法を説
明する。
【0036】原料粉末を所定量秤量し、公知の混合方
法、例えば回転ミルや振動ミル、バレルミルでIPAや
メタノール、水等を溶媒として混合する。場合によって
は、溶媒を使わない乾式混合でも構わない。
【0037】できあがった混合粉末を所望の成形手段、
例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成
形、射出成形、鋳込み成形等により任意の形状にする。
成型手段によっては、スプレードライ等による造粒や、
水、有機バインダーと共にある一定粘度の杯土を作製す
るなどの準備も必要であるが、通常のセラッミクスの成
形手順に従えばよい。
【0038】成形後、乾燥、脱脂が必要な場合、窒素中
や真空中、大気中で、50℃〜1400℃の温度で加熱
処理する。
【0039】焼成は、窒素を含有した非酸化物雰囲気中
で1600℃〜2000℃で行う。1800℃以上で焼
成を行う場合は、窒化珪素の分解が生じるので、1気圧
以上の窒素分圧下で焼成する必要がある。さらにこれら
の焼成後、熱間静水圧焼成(HIP)等で焼成すること
によりより緻密な焼結体を得る。焼成温度は、高すぎる
と主相である窒化珪素結晶が粒成長し強度が低下するた
め、1650〜1850℃で行うことが望ましい。ま
た、HIP温度は1500〜1750℃が望ましい。
【0040】また、成形体をガラス浴HIP法で焼成す
ると低温短時間で緻密な焼結体が作製できるので、特に
高強度を必要とするセラミック部品や、耐摩耗性部品に
は好適である。
【0041】また粒界相を非晶質化させるためにも冷却
速度は速いほうが良く、特に1600〜800℃の温度
領域を3時間、望ましくは1時間、さらに望ましくは3
0分以内で冷却させる方がよい。
【0042】この焼成により窒化珪素は、原料がα、β
のいずれの場合においても主相β−Si3 4 となる。
【0043】この焼成により最終的にはβ−窒化珪素主
結晶相と粒界相を含む焼結体が得られる。特に希土類元
素酸化物、酸化アルミニウムを焼結助剤として用いた場
合は、希土類元素、アルミニウム、酸素および窒素を含
む非晶質粒界相からなり、その粒界中に図1に示すよう
な平均粒径が3μm以下であるW5 Si3 あるいはW5
Si3 +WSi2 を含有した焼結体を得ることができ
る。
【0044】さらに、WSi2 又はW5 Si3 は粒界に
単分散し、外部より応力がかかった際に、応力を緩和す
る効果、また、同時に焼結助剤としても効果があり、そ
の結果、高破壊靭性、かつ、高硬度の機械的特性を有す
ることができる。つまり、本発明によると、白い樹枝状
に観察される模様として現れる粒界相欠落部の集合体が
なくなり、高信頼性であり、変質層が少ないため研削代
の少なく、かつ高破壊靭性、高硬度である窒化珪素質焼
結体を得ることが可能となる。
【0045】以上の本発明の窒化珪素質焼結体は種々の
セラミックス部品、特に、転動体、ピストンピン、ロー
ラーピン、ロッカーアームチップ、ローラーブッシュ、
カムローラー、バルブ等の耐摩耗性部品に使用する事が
可能である。
【0046】
【実施例】実施例 1 以下、実施例を説明する。
【0047】まず窒化珪素粉末(BET比表面積9m2
/g)粉末に表1に示す焼結助剤を添加し、IPAとと
もにバレルミルで40Hr混合した。混合後#500メ
ッシュを通してスラリーから異物を除去後、乾燥した。
この混合粉末に水、有機バインダーを加え、20Hr混
合後、スプレードライにより原料顆粒を得た。この原料
顆粒を用いて、プレス成形により球状成形体及び強度測
定用の試験片を作製した。
【0048】次にこの成形体を10torr以下の減圧
中800〜1400℃の温度域で加熱後、1750〜1
850℃で窒素雰囲気の下、相対比重99%以上まで緻
密化させた。さらに、2000気圧の加圧下にて160
0℃でHIP処理を施し、1600〜800℃までの冷
却時間を1または6時間として直径3/8インチの本発
明球状セラミックス焼結体および強度測定用試験片を得
た。
【0049】球状セラミックスの圧砕荷重は、同じ寸法
の2個の球を重ねて圧縮荷重を加えるもので、JIS−
B−1501に準じ、インストロン万能試験機によりク
ロスヘッドスピード5mm/分で測定した。
【0050】寿命(転がり疲労試験)はスラスト型軸受
試験機を用いて、SUJ板上で3個のセラミックス製ボ
ールを荷重400kg回転数1200rpmで回転させ
試験した。
【0051】強度測定は、3×4×35mmの形状に加
工した試験片をJIS R1601に準じた四点曲げ試
験にて行った。
【0052】粒界相欠落部のサイズは、焼結体を研削し
1μmのダイヤモンドペーストで鏡面研磨した面につい
て、光学顕微鏡100倍で観察した後、SEM像によっ
て測定した。樹枝状白色模様としれ現れる粒界相欠落部
の集合部のサイズは、光学顕微鏡100倍の写真より測
定した。
【0053】粒界相の非晶質化の判断は、焼結体を粉砕
した粉末のX線回折により判断し、さらに同一ロットの
球状セラミックス体を20μmに薄片加工し、偏光顕微
鏡によって非晶質化の確認を行った。
【0054】また、HV10硬度の測定は、サンプル表
面を1μmのダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨し
た後、JIS B7725に準じて測定した。
【0055】これらの評価結果を表1にまとめた。
【0056】
【表1】
【0057】表1から明らかなように、樹枝状白色模様
として現れる粒界相欠落部の集合部が300μm以下で
あって、かつ粒界相が完全に非晶質化している試料1、
3、5は高強度であり、かつ圧砕荷重と転がり寿命に優
れていた。
【0058】実施例 2 実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。焼
成温度、HIP温度、冷却時間は表2に示した。得られ
た焼結体を実施例1と同様の手法により評価した。
【0059】これらの評価結果を表2にまとめた。
【0060】
【表2】
【0061】表2から明らかなように、表面より1mm
までの領域において、樹枝状白色模様として現れる粒界
相欠落部の集合部が300μm以下であって、かつ粒界
相が完全に非晶質化している試料1、2は高強度であ
り、かつ圧砕荷重と転がり寿命に優れていた。
【0062】実施例 3 実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。焼
成温度、HIP温度、冷却時間は表2に示した。
【0063】得られた焼結体を実施例1と同様の手法に
より評価した。
【0064】破壊靭性値はJIS R1607に準じ
た。
【0065】磁器の組成は、原子吸光法により各金属成
分を、また別途磁器中の酸素量を定量し、Al、希土類
元素、不可避不純物元素についてはこれらを酸化物換算
して酸素量を差し引き、残りの酸素がSiO2 とみなし
て、Al2 3 、SiO2 量を換算した。
【0066】磁器を粉砕した粉末のX線回折により検出
した窒化物、炭化物等については、それぞれの金属成分
を窒化物、炭化物等と換算して計算した。
【0067】これらの評価結果を表3にまとめた。
【0068】
【表3】
【0069】表3から明らかなように、添加成分として
希土類元素酸化物を含む試料2〜9は、粒界相欠落部の
集合である樹枝状白色模様が300μm以下であって、
かつ粒界相が完全に非晶質化しており、機械的特性に優
れていた。また、希土類元素酸化物が1〜30重量%
で、SiO2 :SiO2 以外の希土類元素酸化物の重量
比が1:0.3〜1:15である試料2、3、5、6、
7、9は特に機械的特性が優れていた。
【0070】また、同じ重量比の希土類元素酸化物を添
加した試料2、3、6、9において、Er、Ybを使用
した試料3、6は強度、転がり寿命が特に優れていた。
【0071】実施例 4 実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。焼
成温度、HIP温度、冷却時間は表4に示した。得られ
た焼結体を実施例1〜3と同様の手法により評価した。
【0072】これらの評価結果を表4にまとめた。
【0073】
【表4】
【0074】表4から判るように1750℃で焼成した
試料1〜11において、酸化アルミニウム:希土類酸化
物が(1:10)以下の試料1、3、5は焼結不足であ
ったが、酸化アルミニウム:希土類酸化物が1:0.5
〜1:10の試料2、4、6〜10は、焼結性に優れて
おり、かつ、粒界相が非晶質であり、樹枝状白色模様と
して現れる粒界相欠落部の集合部が300μm以下であ
り、優れた機械的特性を有していた。
【0075】実施例 5 実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。焼
成温度、HIP温度、冷却時間は表5に示した。
【0076】得られた焼結体を実施例1〜4と同様の手
法により評価した。
【0077】Hv10硬度はJIS B7725に準じ
た。タングステン珪化物については、W5 Si3 及びW
Si2 の生成量を、粉末X線回折の強度比を用いて下記
式で表した。
【0078】 W5化合物生成率(%)=W5生成率/W2生成率 ここで、 W2生成率=W2/βSN×100 W5生成率=W5/βSN×100 W2:WSi2 の(101)面+(103)面のX線強
度 W5:W5 Si3 の(411)面+(321)面のX線
強度 βSN:β相窒化珪素の(210)面のX線強度
【0079】
【表5】
【0080】表5から明らかなように、平均粒径3μm
以下のタングステン珪化物を含む試料2、4、5、7〜
14は強度、圧砕荷重が高く、転がり疲労に優れてい
る。
【0081】さらには、W5 Si3 とWSi2 の両方を
含有し、両者の比率(W5 Si3 /WSi2 )が0.1
以上である試料9〜14はより高特性である。
【0082】また、破壊靭性値が5.6MPa√m以
上、かつ、Hv10硬度が14.5以上である試料2、
4、5、7〜14は圧砕荷重が高く、転がり疲労に優
れ、耐摩耗性部材として良好である。
【0083】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、非
晶質化した粒界相を有する窒化珪素質焼結体において、
少なくとも表面より深さ1mm以内の表層部における、
窒化珪素粒子間の粒界相欠落部の集合部の大きさを30
0μm以下としたことによって、高い機械的特性を有す
る窒化珪素質焼結体と、研削代の少ない長寿命の耐摩耗
性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素質焼結体の結晶構造を示した
模式図である。
【図2】従来の窒化珪素質耐磨耗性部材における粒界相
欠落部の結晶構造と粒界相欠落部の集合である樹枝上白
色模様を示す模式図である。
【符号の説明】
1:窒化珪素粒子 2:粒界相 3:粒界相欠落部 4:樹脂状白色模様 5:タングステン珪化物粒子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G001 BA03 BA04 BA06 BA07 BA08 BA09 BA32 BB03 BB04 BB06 BB08 BB09 BB32 BB48 BC13 BC43 BC52 BC57 BD12 BD14 BD16 BE21 BE26

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】非晶質化した粒界相を有する窒化珪素質焼
    結体であって、少なくとも表面より深さ1mm以内の表
    層部における、窒化珪素粒子間の粒界相欠落部の集合部
    の大きさが300μm以下であることを特徴とする窒化
    珪素質焼結体。
  2. 【請求項2】添加成分として少なくとも酸化物換算で1
    〜30重量%の希土類元素化合物を含み、酸化物換算し
    た酸化珪素:希土類元素酸化物の重量比が1:0.3〜
    1:15であることを特徴とする請求項1記載の窒化珪
    素質焼結体。
  3. 【請求項3】添加成分としてアルミニウム化合物を含
    み、酸化物換算した酸化アルミニウム:希土類元素酸化
    物の重量比が1:0.5〜1:10であることを特徴と
    する請求項2記載の窒化珪素質焼結体。
  4. 【請求項4】平均粒径が3μm以下であるタングステン
    珪化物の結晶粒子が、窒化珪素粒子間の粒界相の一部に
    存在していることを特徴とする請求項1〜3記載の窒化
    珪素質焼結体。
  5. 【請求項5】上記タングステン珪化物がW5 Si3 とW
    Si2 であり、W5Si3 /WSi2 の比率が0.1以
    上であることを特徴とする請求項4記載の窒化珪素質焼
    結体。
  6. 【請求項6】破壊靭性(JIS R1607)が5.6
    MPa√m以上、かつ、HV10硬度(JIS B77
    25)が14.5GPa以上であることを特徴とする請
    求項1〜5記載の窒化珪素質焼結体。
  7. 【請求項7】窒化珪素を主成分とした粉末を成形した
    後、非酸化雰囲気中で1600〜2000℃の温度で焼
    成した後、1600〜800℃の温度域を3時間以内で
    冷却させて粒界層を非晶質化させることを特徴とする窒
    化珪素質焼結体の製造方法。
  8. 【請求項8】請求項1〜6記載の窒化珪素質焼結体から
    なることを特徴とする耐摩耗性部材。
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