JP2000072749A - キノリン誘導体を用いるアポトーシス誘導剤 - Google Patents
キノリン誘導体を用いるアポトーシス誘導剤Info
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Abstract
アポトーシス誘導作用又はアポトーシス誘導増強作用を
有し、癌、リウマチ、SLE等の自己免疫疾患、動脈硬
化、各種腎炎、ウィルス等の各種感染症に対し有効で安
全性の高い医薬組成物を提供する。 【解決手段】 下記一般式(1)で示されるキノリン誘
導体またはその生物学的に許容される塩を用いることを
特徴とするアポトーシス誘導剤およびアポトーシス誘導
増強剤。 【効果】 本発明によるアポトーシス誘導剤は、それ単
独または、制癌剤、各種免疫抑制剤、放射線、各種サイ
トカインなどの刺激剤との併用によって癌、リウマチ、
SLE等の自己免疫疾患、動脈硬化、各種腎炎、ウィル
ス等の各種感染症等に有効でかつ安全性の高い薬剤であ
る。よってこれらの医療領域で新しい治療法を提供し、
有益性が高い。
Description
身性エリテマトーデス(SLE)等の自己免疫疾患、動
脈硬化症、各種腎炎さらにはウイルス感染症等に広範に
みられる細胞増殖を伴う病態に対する新しい治療剤、詳
しくはアポトーシス誘導剤およびアポトーシス誘導増強
剤に関する。
で、細胞増殖制御系の中に組み込まれた情報に従って生
理的プロセスとして死んでいく細胞死であり、通常の受
動的な外因性の死であるネクローシスとは区別される。
アポトーシスは、細胞核内の染色体の凝集、染色体DN
Aの断片化等の生理的、生化学的変化を伴うことが特徴
である。このアポトーシスは、発生過程での形態、組織
形成時のプログラム細胞死にみられる発生過程の不必要
な細胞の除去機能に関わっている。さらには、生体のホ
メオスタシス維持のための機能は、細胞の増殖とアポト
ーシスの2つの過程によってバランスが取られ、生体の
恒常性が維持されている。また、細胞内外からの侵襲に
よるダメージを受けた細胞の除去を行う生体防御機能も
アポトーシスが有している。このようにアポトーシスは
生物固体の成長と恒常性維持には不可欠で、生体内で
は、非常に複雑な情報伝達系によって制御されている。
に関する生体内物質としてスフィンゴ脂質が注目されて
いる。スフィンゴ脂質は、グリセロリン脂質などと共に
細胞膜の構成成分であり、その構造は、セラミドに糖鎖
あるいはホスホコリンなどが結合したものである。最近
の研究において、セラミドがアポトーシス誘導のメッセ
ンジャー物質として中心的な役割を担っていることが判
明した。すなわち、TNFα、Fas、放射線、抗癌剤
などのアポトーシス誘導刺激によりセラミドが増加する
こと、また、このセラミドによりアポトーシスが誘導さ
れることなどが報告されている(Hannun,Y.A.:Science,
Vol.274, p.1885 (1996)、Okazaki,T.etal: J.Biol.Che
m.,Vol.264,p.19076,(1989)、岡崎、他 実験医学,Vol.
15,p.1488,(1997))。さらには、癌化学療法で大きな問
題となっている多剤耐性の機構の1つとしてもこのセラ
ミド代謝系の関与が云われている。
ると、アポトーシス抑制が関わると思われる疾患では、
細胞増殖を伴う各種疾病すなわち癌、リウマチ、SLE
等の自己免疫疾患、動脈硬化、各種腎炎、ウィルス感染
症等の疾患が考えられ、反対にアポトーシスの促進が関
わる疾患としては、AIDS等のウィルス疾患、アルツ
ハイマー病やパーキンソン病のような神経変性疾患、脳
虚血、心筋梗塞、貧血等の血液循環器疾患、中毒性また
はアルコール性肝炎等が考えられる。
の探索が行われている。制癌剤の一部にアポトーシス誘
導作用のあることはよく知られているが、その作用の程
度や薬効との関係は殆ど解明されていない。またこれら
薬剤は毒性が強く、上記した広範な疾患に対しては、実
際には使用困難で、さらに良好な薬剤が望まれている。
患に対しては、実際には使用困難で、現在まで広範な疾
患に適用できる安全で効果の強いアポトーシス誘導体は
知られていない。
トーシス誘導作用又はアポトーシス誘導増強作用を有
し、安全で効果の高い医薬組成物を提供することにあ
る。
たはアポトーシス誘導増強作用を有する医薬組成物を提
供することにあり、該組成物は癌、リウマチ、SLE等
の自己免疫疾患、動脈硬化、各種腎炎、ウィルスなどの
各種感染症等の予防または治療剤であり、または、アポ
トーシス誘導作用を持った既存の薬物さらにはUVや各
種サイトカインなどのアポトーシス刺激剤と組み合わせ
ることによる上記疾患に対する該薬剤および該刺激剤の
誘導増強剤である。
誘導は、細胞増殖を伴う各種疾患の予防薬または治療薬
として期待されるが、本発明者等は、このアポトーシス
誘導作用を前に示したように細胞内のセラミド量を測定
すること、また直接核の形態を観察することにより評価
した。すなわち、アポトーシス誘導作用が確実に正確に
評価できるヒト白血病細胞株HL60またはその多剤耐
性亜株を用い、アポトーシス刺激剤である、ダウノマイ
シン、アドリアマイシン、タキソール等の制癌剤、サイ
トカインの1つであるTNFαさらには紫外線等で処理
した際の、セラミド量、細胞核の変性を指標に多くの化
合物を鋭意評価検討した。その中で、本発明に係るキノ
リン誘導体が、細胞内セラミドを著明に増進させ、強い
アポトーシス誘導作用を有することを見出し、本発明を
完成させた。
11)
接の結合であるC=Oまたは−(CH2)m−(mは0
〜3の整数)を表し、Cは、式(2)又は式(3)(化
12)
たはフェニル基をDは−(CH2)n−(nは0〜3の
整数)、−CH=CH−、又は式(4)(化13)
原子またはハロゲン原子を表す。)を表す。}を表
す。]で示されるキノリン誘導体またはその生物学的に
許容される塩を含有することを特徴とするアポトーシス
誘導剤およびアポトーシス誘導増強剤である。
する。本発明に係るキノリン誘導体は、深澤、鈴木等に
より特開平3−101662号公報,特開平6−176
8号公報、J.Med.Chem.Vol.40,p.2047,(1997).等に開示
された化合物であり、p−糖蛋白の働きを抑制すること
で耐性癌の耐性克服作用を示すことが知られている。し
かし、これら報告にはアポトーシス誘発作用には何ら言
及はなく、対象疾患も癌領域のみで、制癌剤との併用に
よる耐性克服作用であり、本発明とは基本的に概念を異
にするものである。
(1)に示した化合物であり、本発明においてはその生
物学的に許容される塩も効果を有するものとして発明の
範疇に含まれる。
(1)の代表的な化合物は、式(5)(化14)で表さ
れる化合物(フマル酸塩はMS−209と呼ぶこともあ
る)、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を表
し、生物学的に許容される塩としては特に限定はされな
いが、塩酸、硫酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、
フマル酸、マレイン酸、酒石酸等の有機酸による塩が挙
げられる。また、本発明化合物は不斉炭素を有し、光学
異性体が存在するが、当然これら異性体すべてを本特許
は包含する。
単独で誘導剤として、または既存薬剤と併用して誘導増
強剤として投与される。投与方法としては、経口的また
は非経口的に投与する事が可能である。
ば特に制限はないが、アドリアマイシン、ダウノマイシ
ン、アクラシノマイシンA等のアンスラサイクリン系抗
生物質、アクチノマイシンC、アクチノマイシンC等の
アクチノマイシン系抗生物質、ビンクリスチン、ビンブ
ラスチン等のビンカアルカロイド系物質、フルオロウラ
シル、カルモフール、テガフール、フルツロン、メソト
レキセート等の代謝拮抗剤、タキソール、タキソテール
等のタキサン誘導体、シスプラチン、カルボプラチン等
の白金製剤、さらには、エトポシド、ネオカルチノスタ
チン、マイトマイシンC、ナベルビン、等広範な制癌剤
が使用される。制癌剤以外にも、アレルギー薬、リウマ
チ薬等の自己免疫疾患治療薬、抗生物質、化学療法剤、
抗ウィルス剤、腎疾患治療薬、抗炎症剤等広範な薬物の
効果増強作用が期待される。
患者の症状、年齢、性別等により異なるが、成人1日あ
たり1から2000mgであり、この量を1日に1回ま
たは数回に分けて投与する。
散剤、懸濁剤、カプセル剤、シロップ剤等の剤形が可能
である。例えば、錠剤とする場合には、吸着剤として結
晶性セルロース、軟質無水ケイ酸等を、賦形剤として
は、トウモロコシデンプン、乳糖、リン酸カルシウム、
結晶性セルロース等を、また必要に応じて結合剤、保湿
剤、滑沢剤等を用いることが出来る。
皮下注射剤、筋肉注射剤、座剤、経皮剤等の形態が可能
である。例えば、注射剤とする場合は、化合物を等張
化、無菌化等を施した水溶液または綿実油、トウモロコ
シ油、オリーブ油等を用いた懸濁性水溶液、あるいはH
CO−60等の界面活性剤を用いた乳濁液として使用さ
れる。また、本発明化合物は急性毒性がラット、イヌで
経口的にLD50が1000mg/kg以上と極めて低
毒性であり、安全性の高い有用な薬剤である。
るが、本発明はこれに限定されるものではない。
−{4−(2,2−ジフェニルアセチル)ピペラジン−
1−イル}−2−ヒドロキシプロピル]キノリンのフマ
ル酸塩(MS−209)を用いた。他の化合物において
も以下に示すと同様な結果が得られた。
ン耐性株を10%牛胎児血清含有RPMI1640培地
にて5%CO2下培養し、実験前日に牛胎児血清を2%
に変更して使用した。本細胞の培地中に最終薬物濃度が
ダウノマイシンは3μMに、MS−209は10μM濃
度になるよう調製し実験した。薬物添加後6時間での細
胞内セラミド量を以下のように測定した。先ず、遠心分
離した細胞から、BlighとDyerの常法(Can.J.Biochem.P
hysiol.Vol.37,P.911,(1959))により脂質を抽出した。
次にE.coliのdiacylglycerol k
inaseを用いて、抽出した脂質中のセラミドを32P
−ATPでラベルしTLCで分離した。資料中のセラミ
ド含量は既知量のセラミドを同様にラベルした対照と比
較定量し、細胞内リン脂質量で標準化した。 (2)結果:結果を表1(表1)に示す。ダウノマイシ
ンは、一般的にはセラミド量を増加させることが知られ
ているが、HL60ビンクリスチン耐性株では細胞内セ
ラミド量に影響を与えなかった。MS−209は、単独
で同細胞株のセラミド量を約3倍に増加させ、ダウノマ
イシンと共存させると約5倍の増加を認めた。
激時) (1)方法:薬物としてはMS−209、刺激剤として
はUVを使用して以下の実験を行った。すなわち、ヒト
白血病細胞株HL60wild株を10%牛胎児血清含
有RPMI1640培地にて5%CO2下培養し、実験
前日に牛胎児血清を5%に変更して使用した。MS−2
09は最終濃度が10μMとなるよう調節し、UV照射
は5秒間とした。それぞれ単独および併用時のUV照射
後1時間後の細胞をグルタールアルデヒド固定し、2μ
g/mlDAPI(4'、6-Diamidino-2-phenylindole di
hidorochloride)で核を染色し、蛍光顕微鏡観察により
クロマチン凝集像を示す核の割合を測定した。1回の測
定では100個の核を観察し、平均で表した。 (2)結果:結果を表2(表2)に示す。UVとMS−
209併用群でアポトーシスを起こした細胞数が大いに
増加しており、本発明化合物のアポトーシス誘導作用が
示された。
α刺激時) (1)方法:薬物としてはMS−209、刺激剤として
はサイトカインの1つであるTNFαを使用して以下の
実験を行った。すなわち、ヒト白血病細胞株HL60w
ild株を10%牛胎児血清含有RPMI1640培地
にて5%CO2下培養し、実験前日に牛胎児血清を5%
に変更して使用した。MS−209は最終濃度が10μ
Mとなるよう、TNFαは最終濃度が200ng/ml
となるよう調節し、それぞれ単独および併用時の薬剤処
理後3時間後の細胞をグルタールアルデヒド固定し、2
μg/mlDAPI(4'、6-Diamidino-2-phenylindole
dihidorochloride)で核を染色し、蛍光顕微鏡観察によ
りクロマチン凝集像を示す核の割合を測定した。1回の
測定では100個の核を観察し、平均で表した。 (2)結果:結果を表3(表3)に示す。MS−209
単独および併用でのアポトーシスを起こした細胞数の増
加が認められており、MS−209のアポトーシス誘導
作用が示された。
ーシス抑制を解除する作用があり、癌、リウマチ、SL
E等の自己免疫疾患、動脈硬化、各種腎炎、ウィルス感
染症等の予防薬または治療薬として期待される。本発明
のアポトーシス誘導増強剤は、既存の治療薬または放射
線、各種サイトカイン等のアポトーシス誘導刺激剤に対
する効果増強作用を有する。
Claims (6)
- 【請求項1】 下記一般式(1)(化1) 【化1】 [式中、Aは窒素原子、または炭素原子を表し、Bは直
接の結合であるC=Oまたは−(CH2)m−(mは0
〜3の整数)を表し、Cは、式(2)又は式(3)(化
2) 【化2】 {式中、R1,R2,R3は互いに独立して、水素原子ま
たはフェニル基をDは−(CH2)n−(nは0〜3の
整数)、−CH=CH−、又は式(4)(化3) 【化3】 (式中、R4、R5はお互いに独立して、水素原子または
ハロゲン原子を表す。)を表す。}を表す。]で示され
るキノリン誘導体またはその生物学的に許容される塩を
含有することを特徴とするアポトーシス誘導剤。 - 【請求項2】 キノリン誘導体が下記式(5)(化4)
で表される化合物である請求項1に記載のアポトーシス
誘導剤。 【化4】 - 【請求項3】 キノリン誘導体が下記式(6)(化5)
で表される化合物である請求項1に記載のアポトーシス
誘導剤。 【化5】 - 【請求項4】 下記一般式(1)(化6) 【化6】 [式中、Aは窒素原子、または炭素原子を表し、Bは直
接の結合であるC=Oまたは−(CH2)m−(mは0
〜3の整数)を表し、Cは、式(2)又は式(3)(化
7) 【化7】 {式中、R1,R2,R3は互いに独立して、水素原子ま
たはフェニル基をDは−(CH2)n−(nは0〜3の
整数)、−CH=CH−、又は式(4)(化8) 【化8】 (式中、R4、R5はお互いに独立して、水素原子または
ハロゲン原子を表す。)を表す。}を表す。]で示され
るキノリン誘導体またはその生物学的に許容される塩を
含有することを特徴とするアポトーシス誘導増強剤。 - 【請求項5】 キノリン誘導体が下記式(5)(化9)
で表される化合物である請求項4に記載のアポトーシス
誘導増強剤。 【化9】 - 【請求項6】 キノリン誘導体が下記式(6)(化1
0)で表される化合物である請求項4に記載のアポトー
シス誘導増強剤。 【化10】
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10237713A JP2000072749A (ja) | 1998-08-24 | 1998-08-24 | キノリン誘導体を用いるアポトーシス誘導剤 |
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ID=17019405
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2000072749A (ja) |
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-
1998
- 1998-08-24 JP JP10237713A patent/JP2000072749A/ja active Pending
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