WO2024111538A1 - 筆記具のインキカートリッジ、及び筆記具 - Google Patents

Abstract

中心軸（Ｏ）に沿って前後方向に延び、内部にインキが収容されるインキ収容筒（２６）と、インキ収容筒（２６）の前側に配置され、インキ収容筒（２６）と接続されるペン先ユニット（２７）と、を備え、インキ収容筒（２６）は、インキ収容筒（２６）の前端部の開口を封止する封止部（２８）を有し、ペン先ユニット（２７）は、ペン先ユニット（２７）の後側部分に配置されて前後方向に延び、内部にインキ収容筒（２６）の前端部が挿入される連結筒（２３）と、連結筒（２３）の内部に位置し、インキが貯留されるインキ貯留室（２４）と、連結筒（２３）の内部に配置され、連結筒（２３）内にインキ収容筒（２６）の前端部が挿入されたときに、インキ貯留室（２４）内で封止部（２８）を開封する開封手段（２５）と、を有する。

Description

筆記具のインキカートリッジ、及び筆記具

　本発明は、筆記具のインキカートリッジ、及び筆記具に関する。
　本願は、２０２２年１１月２５日に日本に出願された特願２０２２－１８８４７８号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。

　従来、例えばボールペンなどの筆記具として、軸筒と、軸筒の内部に配置される替芯等のインキカートリッジと、を備えたものが知られている。
　特許文献１に記載の筆記具用のカートリッジは、インキ収容筒と、ボール筆記部と、を有している。インキ収容筒の前端部は、封かん材（球体または薄膜体）により封止されている。このカートリッジでは、ボール筆記部の後端部がインキ収容筒の前端部内に圧入されるときに、封かん材が移動しまたは突き破られて、インキ収容筒内のインキがボール筆記部内に流入する。

実公昭５５－１３０８３号公報

　しかしながら、特許文献１では、インキ収容筒とボール筆記部とを接続する際に、インキ収容筒の内部にエア（気泡）が入り込みやすい。インキカートリッジ内にエアが入り込むと、筆記を行っている際に急にインキが出なくなるなどの不具合が生じて、円滑な筆記の妨げとなる。なお本明細書において「インキが出なくなる」とは、インキが出にくくなる現象を含む。

　本発明は、インキカートリッジ内にエアが入り込むことを抑制できる筆記具のインキカートリッジ、及びこれを備えた筆記具を提供することを目的の一つとする。

　本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。

〔本発明の態様１〕
　中心軸に沿って前後方向に延び、内部にインキが収容されるインキ収容筒と、前記インキ収容筒の前側に配置され、前記インキ収容筒と接続されるペン先ユニットと、を備え、前記インキ収容筒は、前記インキ収容筒の前端部の開口を封止する封止部を有し、前記ペン先ユニットは、前記ペン先ユニットの後側部分に配置されて前後方向に延び、内部に前記インキ収容筒の前端部が挿入される連結筒と、前記連結筒の内部に位置し、インキが貯留されるインキ貯留室と、前記連結筒の内部に配置され、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されたときに、前記インキ貯留室内で前記封止部を開封する開封手段と、を有する、筆記具のインキカートリッジ。

　本発明の筆記具のインキカートリッジ及びこれを備えた筆記具では、ペン先ユニットの連結筒の内部に、インキ貯留室及び開封手段が設けられている。インキ収容筒の前端部が連結筒内に挿入されるときに、インキ収容筒の封止部は、インキ貯留室のインキに浸漬された状態で開封手段により開封される。このため、インキ収容筒とペン先ユニットとを連結する際に、インキ収容筒の内部にエア（気泡）が入り込むことが抑えられる。

　本発明によれば、インキカートリッジ内にエアが入り込むことを抑制できる。このため、筆記を行っている際に急にインキが出なくなるなどの不具合が抑えられ、筆記を円滑に行うことができる。

〔本発明の態様２〕
　前記封止部は、フィルム状であり、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されたときに、前記開封手段は、前記インキ貯留室内で前記封止部を破断し開封する、態様１に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　上記構成では、インキ収容筒の前端部が連結筒内に挿入されたときに、開封手段が、フィルム状の封止部を突き破るなどにより破断し、開封する。封止部及び開封手段をそれぞれシンプルな構成とすることができ、かつ、封止部及び開封手段の各機能が安定する。また、封止部及び開封手段の各前後方向の寸法を小さく抑えることが可能となる。このため、インキカートリッジのコンパクト化を図ったり、インキカートリッジの外形寸法（特に前後方向の寸法）を増大させることなくインキ収容量を増やしたりすることができる。

〔本発明の態様３〕
　前記開封手段は、前記封止部を破断する破断部と、前記開封手段を前後方向に貫通する連通孔と、を有し、前記連通孔は、前記ペン先ユニットの内部のうち前記開封手段よりも前側に位置する部分と、前記インキ収容筒の内部とを連通する、態様２に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、開封手段は、破断部によって封止部を破断し、連通孔を通して、インキ収容筒内のインキをペン先ユニット内へ流通させる。開封手段による封止部の開封機能が安定して得られつつ、インキ収容筒からペン先ユニットへのインキの供給状態も安定する。筆記具による円滑な筆記が良好に維持される。

〔本発明の態様４〕
　前記インキ収容筒は、前記ペン先ユニットに着脱可能に接続される、態様１から３のいずれか１つに記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒内のインキが例えば所定の残量にまで減少したときに、インキ収容筒をペン先ユニットから取り外して、新しいものに交換することができる。例えば金属製部材と樹脂製部材の組合せ等により構成されるペン先ユニットを、本発明では廃棄することなく使用し続けることができるため、いわゆる「エコ」であり、資源の消費が抑えられ、地球環境にやさしい。

〔本発明の態様５〕
　前記インキ収容筒は、前記インキ収容筒の内部に配置されてインキの後側に位置し、前記ペン先ユニットへのインキの流動にともない前側へ移動するグリスと、前記インキ収容筒の内部に配置され、前記グリスよりも前側かつ前記封止部よりも後側に位置するグリスストッパーと、を有し、前記グリスストッパーは、前記グリスストッパーに後側から接触した前記グリスのそれ以上の前側へ向けた移動を規制し、前記インキ貯留室は、前後方向において前記開封手段と前記グリスストッパーとの間に位置する、態様４に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、筆記具の筆記によるインキの減少にともない、グリスが前側へ移動していき、グリスストッパーに後側から接触することで、それ以上のグリスの前側への移動が規制される。グリスの前側への移動が規制されることで、ペン先からインキが出なくなるため、筆記具の使用者はインキ収容筒が交換時期となったことを認識する。

　交換時期となったインキ収容筒をペン先ユニットから取り外す際、インキ貯留室には、グリスストッパーと開封手段との間の容積に応じた所定量のインキが残留している。そして、新しいインキ収容筒をペン先ユニットに接続する際には、このインキ収容筒の封止部がインキ貯留室のインキに浸漬された状態で、開封手段により開封される。したがって、インキカートリッジの製造時はもちろんのこと、使用者がインキ収容筒を交換する際においても、上述した本発明の作用効果が安定して奏功される。

〔本発明の態様６〕
　前記グリスストッパーは、前記中心軸と垂直な方向に広がる板状のストッパー本体と、前記ストッパー本体を前後方向に貫通する貫通孔と、を有する、態様５に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、グリスストッパーにグリスが接触するまでの間は、インキ収容筒内のインキが、貫通孔を通してペン先ユニットに安定して供給される。また、グリスストッパーにグリスが接触した後は、グリスのそれ以上の前側へ向けた移動がストッパー本体によって安定して規制される。

〔本発明の態様７〕
　前記連結筒は、前記インキ収容筒の前端部が周方向の全周にわたって液密に嵌合する嵌合部と、前記嵌合部よりも後側に配置され、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されて前記嵌合部に嵌合するまでの間、前記連結筒の内部と外部とを連通するエア抜き部と、を有する、態様１から６のいずれか１つに記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒の前端部を連結筒内に挿入していき、インキ収容筒の前端部と嵌合部とが嵌合するまでの間、エア抜き部を通して連結筒内のエアが外部へ効率よく排出される。連結筒内のインキ貯留室などにエアが残ることが安定して抑えられ、本発明による作用効果がより顕著なものとなる。

〔本発明の態様８〕
　前記エア抜き部は、前記連結筒の内周面から径方向外側に窪む通気溝を有し、前記通気溝は、前記嵌合部の後側に隣接配置されて前後方向に延び、前記連結筒の後端面に開口する、態様７に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒の前端部を連結筒内に挿入していき、インキ収容筒の前端部と嵌合部とが嵌合するまでの間、連結筒内のエアが、通気溝を通して外部に安定して排出される。

〔本発明の態様９〕
　前記エア抜き部は、前記連結筒の周壁を径方向に貫通する通気孔を有し、前記通気孔は、前記嵌合部の後側に隣接配置される、態様７または８に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒の前端部を連結筒内に挿入していき、インキ収容筒の前端部と嵌合部とが嵌合するまでの間、連結筒内のエアが、通気孔を通して外部に安定して排出される。

〔本発明の態様１０〕
　前記インキ収容筒は、前後方向に延びる外容器と、前記外容器の内部に配置されて前後方向に延び、内部にインキが収容される内容器と、を有し、前記内容器は、前記ペン先ユニットへのインキの流動にともない萎み変形する、態様１から４及び７から９のいずれか１つに記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、筆記具の筆記によるインキの減少にともない、内容器が萎み変形する。筆記具の使用者は、内容器が一定以上に萎んだ状態を目視するなどにより、インキ収容筒が交換時期となったことを認識する。

　交換時期となったインキ収容筒をペン先ユニットから取り外す際、インキ貯留室には所定量のインキが残留している。そして、新しいインキ収容筒をペン先ユニットに接続する際には、このインキ収容筒の封止部がインキ貯留室のインキに浸漬された状態で、開封手段により開封される。したがって、インキカートリッジの製造時はもちろんのこと、使用者がインキ収容筒を交換する際においても、上述した本発明の作用効果が安定して奏功される。

〔本発明の態様１１〕
　前記破断部は、前記中心軸から偏心した位置で前記封止部を破断し、前記インキ収容筒の前端部は、前記連結筒内に螺着により挿入される、態様３に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒の前端部が連結筒内に螺着により挿入されていくと、開封手段の破断部が、中心軸上から径方向外側にずれた位置（偏心位置）において、封止部を破断する。この状態から、使用者がさらにインキ収容筒の前端部を連結筒内にねじ込んでいくと、破断部は、中心軸回りの周方向に沿って封止部をさらに広範囲に破断する。

　すなわち、使用者が、インキ収容筒を連結筒内に回転させつつ挿入する（螺着する）操作にともない、封止部が、破断部によって広く安定して開口させられる。具体的には、封止部が、例えば、破断部によって中心軸回りの全周にわたって開口させられる。これにより、インキ収容筒内のインキを、ペン先ユニットに向けてより確実に、かつ安定して供給することができる。

〔本発明の態様１２〕
　前記貫通孔は、内径寸法に比べて前後方向の寸法が大きい、態様６に記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、グリスストッパーに形成される貫通孔は、前後方向に細長く延びる孔となる。このため、グリスがグリスストッパーに接触したときに、貫通孔を通してグリスが前側へ滲み出すことが抑制される。グリスが意図せずインキ貯留室などに流入して筆記に影響するような不具合が抑えられる。

〔本発明の態様１３〕
　前記インキ収容筒は、前記インキ収容筒の前端部に配置される環状のシール部材と、前記インキ収容筒の前端部のうち、前記シール部材よりも前側に配置されるエア抜き部と、を有し、前記連結筒は、前記シール部材が周方向の全周にわたって液密に嵌合する嵌合部を有し、前記エア抜き部は、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されて、前記シール部材と前記嵌合部とが嵌合するまでの間、前記連結筒の内部と外部とを連通する、態様１から１２のいずれか１つに記載の筆記具のインキカートリッジ。

　この場合、インキ収容筒の前端部を連結筒内に挿入していき、シール部材と嵌合部とが嵌合するまでの間、エア抜き部を通して連結筒内のエアが外部へ効率よく排出される。連結筒内のインキ貯留室などにエアが残ることが安定して抑えられ、本発明による作用効果がより顕著なものとなる。

〔本発明の態様１４〕
　態様１から１３のいずれか１つに記載の筆記具のインキカートリッジと、前後方向に延びる筒状をなし、前記筆記具のインキカートリッジが内部に配置される軸筒と、を備える、筆記具。

　本発明の前記態様の筆記具のインキカートリッジ及び筆記具によれば、インキカートリッジ内にエアが入り込むことを抑制できる。このため、筆記を行っている際に急にインキが出なくなるなどの不具合が抑えられ、筆記を円滑に行うことができる。

図１は、第１実施形態（第２実施形態）の筆記具を示す断面図である。 図２は、第１実施形態の筆記具のインキカートリッジを示す斜視断面図である。 図３は、図２のIII部を拡大して示す斜視断面図である。 図４は、筆記具のインキカートリッジの一部を示す斜視断面図であり、具体的には、ペン先ユニットの連結筒からインキ収容筒を取り外した状態を表す。 図５は、第１実施形態の変形例の筆記具のインキカートリッジの一部（図３に対応する部分）を拡大して示す斜視断面図である。 図６は、第２実施形態の筆記具のインキカートリッジの一部を示す斜視断面図である。 図７は、第３実施形態の筆記具のインキカートリッジの一部を示す斜視断面図である。

＜第１実施形態＞
　本発明の第１実施形態の筆記具１０、及び、筆記具１０のインキカートリッジ２Ａについて、図１～図４を参照して説明する。本実施形態の筆記具１０は、例えばボールペン等であり、具体的には、ノック式ボールペン等である。なお以下の説明では、筆記具１０のインキカートリッジ２Ａを、単にインキカートリッジ２Ａまたはカートリッジ等と呼ぶ場合がある。また、インキカートリッジ２Ａは、替芯、レフィルまたは筆記部材等と言い換えてもよい。

　図１に示すように、筆記具１０は、中心軸Ｏを中心とする概略円柱状をなしている。筆記具１０は、中心軸Ｏに沿って延びる軸筒１と、軸筒１の内部に配置されるインキカートリッジ２Ａと、グリップ部３と、クリップ４と、付勢部材６と、押込み部５と、ノック機構７と、を備える。軸筒１、インキカートリッジ２Ａ、グリップ部３、付勢部材６、押込み部５及びノック機構７は、中心軸Ｏを共通軸として互いに同軸に配置されている。

　本実施形態で用いる方向の定義について、説明する。
　本実施形態では、筆記具１０の中心軸Ｏが延びる方向、つまり中心軸Ｏに沿う方向を、前後方向と呼ぶ。前後方向において、インキカートリッジ２Ａのペン先を構成するチップ２１と、押込み部５とは、互いに異なる位置に配置されている。前後方向のうち、押込み部５からチップ２１へ向かう方向を前側と呼び、チップ２１から押込み部５へ向かう方向を後側と呼ぶ。各図において前後方向は、Ｙ軸方向に相当する。前側は－Ｙ側に相当し、後側は＋Ｙ側に相当する。なお、前後方向は軸方向と言い換えてもよい。

　中心軸Ｏと直交する方向を径方向と呼ぶ。径方向のうち、中心軸Ｏに近づく方向を径方向内側と呼び、中心軸Ｏから離れる方向を径方向外側と呼ぶ。
　また、中心軸Ｏ回りに周回する方向を周方向と呼ぶ。

　筆記具１０の各構成要素について、説明する。
　図１に示すように、軸筒１は、前後方向に延びる筒状をなしている。具体的に、軸筒１は、中心軸Ｏを中心とする円筒状である。軸筒１は、例えば樹脂製等である。軸筒１は、例えば、複数の筒状部材を螺着、嵌合及び接着するなどにより組み合わせて構成されている。

　軸筒１は、前軸１ａと、前軸１ａの後側に配置される後軸１ｂと、後軸１ｂの後端部に取り付けられるクリップ支持筒１ｅと、を有する。前軸１ａ、後軸１ｂ及びクリップ支持筒１ｅは、それぞれ円筒状をなしており、前後方向に並んで配置される。前軸１ａの後端部と後軸１ｂの前端部とは、螺着等により着脱可能に固定されている。後軸１ｂの後端部とクリップ支持筒１ｅとは、アンダーカット嵌合等の嵌合や接着等により固定されている。

　軸筒１のうち、少なくとも、径方向から見てインキカートリッジ２Ａの後述するインキ収容筒２６と重なる部分は、透明な部材により構成されている。なお、前記透明な部材は、無色の透明な部材であってもよいし、所定の色が付与された透明な部材であってもよい。本実施形態において「透明」とは、「半透明」を含む広義の概念であり、以下の説明においても同様である。より詳しくは、本実施形態において「軸筒１が透明である」とは、軸筒１を径方向外側から見て、軸筒１の内部に収容されるインキカートリッジ２Ａが、軸筒１を通して目視により透けて見える場合を指す。
　本実施形態では、軸筒１のうち前軸１ａ及び後軸１ｂが、透明な部材により構成されている。またクリップ支持筒１ｅは、例えば黒色等の不透明な部材により構成されている。なお、クリップ支持筒１ｅは、透明な部材により構成されていてもよい。

　前軸１ａの前端部は、前側へ向かうに従い縮径するテーパ筒状である。前軸１ａの前端部は、テーパ筒部と言い換えてもよい。前軸１ａは、テーパ筒部に配置されて前側に開口する前端開口部１ｃを有する。後軸１ｂは、後軸１ｂの後端部に配置されて後側に開口する後端開口部１ｄを有する。

　本実施形態では、筆記具１０がノック式ボールペンである。このためインキカートリッジ２Ａは、チップ２１が軸筒１の前端開口部１ｃから前側に突出する使用位置と、チップ２１を含めたインキカートリッジ２Ａ全体が軸筒１内に収納される収納位置と、の間で前後方向に移動可能である。

　インキカートリッジ２Ａは、軸筒１の内部に着脱可能に取り付けられる。インキカートリッジ２Ａは、軸筒１を複数のパーツに分解することにより、軸筒１の内部から取り外して交換可能である。本実施形態では、前軸１ａと後軸１ｂとの螺着を解除しこれらを分解することにより、軸筒１に対してインキカートリッジ２Ａを装着したり取り外したりすることができる。

　図２に示すように、インキカートリッジ２Ａは、中心軸Ｏに沿って前後方向に延び、内部にインキ（図示省略）が収容されるインキ収容筒２６と、インキ収容筒２６の前側に配置され、インキ収容筒２６と接続されるペン先ユニット２７と、を備える。なお本実施形態では、筆記具１０がボールペンであり、ペン先がチップ２１により構成されることから、ペン先ユニット２７は、チップユニット２７などと言い換えてもよい。

　ペン先ユニット２７は、中心軸Ｏを中心とする多段円筒状をなしている。ペン先ユニット２７は、後側へ向かうに従い段階的に拡径する。
　ペン先ユニット２７は、チップ（ペン先）２１と、チップホルダ２２と、連結筒２３と、インキ貯留室２４と、開封手段２５と、を有する。

　チップ２１は、インキカートリッジ２Ａのうち前端部に配置される。チップ２１は、例えば金属製等である。チップ２１は、チップ２１の前端部に配置されるボール２１ａと、ボール２１ａを保持するボール保持筒２１ｂと、を有する。

　チップホルダ２２は、チップ２１の後側に配置される。チップホルダ２２は、チップ２１の後端部に接続されて、チップ２１を保持する。チップホルダ２２は、例えば樹脂製又は金属製等である。チップホルダ２２は、小径部２２ａと、小径部２２ａよりも後側に配置される大径部２２ｂと、前後方向において小径部２２ａと大径部２２ｂとの間に位置する中径部２２ｃと、フランジ部２２ｄと、を有する。

　小径部２２ａは、前後方向に延びる円筒状である。小径部２２ａの外径寸法は、チップ２１の外径寸法よりも大きい。小径部２２ａの前側を向く開口内には、ボール保持筒２１ｂの後端部が嵌合する。

　大径部２２ｂは、前後方向に延びる円筒状である。大径部２２ｂの外径寸法は、小径部２２ａの外径寸法よりも大きい。

　中径部２２ｃは、前後方向に延びる円筒状である。中径部２２ｃの外径寸法は、小径部２２ａの外径寸法よりも大きく、大径部２２ｂの外径寸法よりも小さい。中径部２２ｃの前端部は、小径部２２ａの後端部と接続される。中径部２２ｃの後端部は、大径部２２ｂの前端部と接続される。

　フランジ部２２ｄは、中心軸Ｏを中心とする円環板状である。フランジ部２２ｄは、チップホルダ２２の外周面から径方向外側に突出し、周方向に延びる。具体的に、本実施形態ではフランジ部２２ｄが、チップホルダ２２の外周面のうち、大径部２２ｂの前端部、または、中径部２２ｃと大径部２２ｂとの接続部分に設けられている。フランジ部２２ｄは、チップホルダ２２のうち最も外径寸法が大きい部分である。

　連結筒２３は、例えば樹脂製等である。連結筒２３は、チップホルダ２２の後側に配置される。連結筒２３は、ペン先ユニット２７の後側部分に配置されて前後方向に延びる。連結筒２３は、中心軸Ｏを中心とする筒状であり、具体的には、円筒状である。連結筒２３の前側を向く開口（前側開口）内には、チップホルダ２２の大径部２２ｂが嵌合する。連結筒２３の前端面は、フランジ部２２ｄに対して後側から接触する。

　連結筒２３は、インキ収容筒２６と並んで、インキ収容筒２６の前側に配置される。連結筒２３の後側を向く開口（後側開口）内、すなわち連結筒２３の内部には、インキ収容筒２６の前端部が挿入される。連結筒２３は、例えば不透明な部材により構成されている。

　図３に示すように、連結筒２３は、内周フランジ２３ａと、嵌合部２３ｂと、エア抜き部２３ｃと、を有する。

　内周フランジ２３ａは、中心軸Ｏを中心とする円環板状である。内周フランジ２３ａは、連結筒２３の内周面から径方向内側に突出し、周方向に延びる。内周フランジ２３ａは、大径部２２ｂの後端面よりも後側に位置する。

　嵌合部２３ｂは、連結筒２３の内周面のうち前後方向の一部を構成している。嵌合部２３ｂは、中心軸Ｏを中心とする円筒面状であり、内周フランジ２３ａよりも後側に位置する。嵌合部２３ｂには、インキ収容筒２６の前端部（具体的には、後述する挿入筒部２６ａ）が、周方向の全周にわたって液密に嵌合する。

　エア抜き部２３ｃは、嵌合部２３ｂよりも後側に配置される。エア抜き部２３ｃは、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されて嵌合部２３ｂに嵌合するまでの間、連結筒２３の内部と外部とを連通する。図３に示すように、インキ収容筒２６の前端部が嵌合部２３ｂに嵌合した状態では、エア抜き部２３ｃを通した連結筒２３の内部と外部との連通は遮断される。

　本実施形態では、エア抜き部２３ｃが、連結筒２３の内周面から径方向外側に窪む通気溝２３ｄを有する。通気溝２３ｄは、嵌合部２３ｂの後側に位置し、嵌合部２３ｂと隣接して配置されている。通気溝２３ｄは、前後方向に延びる溝状であり、連結筒２３の後端面に開口する。本実施形態では通気溝２３ｄが、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられており、具体的には、周方向に等ピッチで２つ設けられている。

　インキ貯留室２４は、連結筒２３の内部に位置している。インキ貯留室２４には、インキ（図示省略）が貯留される。インキ貯留室２４は、略円柱状の空間である。インキ貯留室２４は、ペン先ユニット２７の内部（内部空間）の一部を構成する。インキ貯留室２４を介して、ペン先ユニット２７の内部とインキ収容筒２６の内部とが連通している。

　開封手段２５は、連結筒２３の内部に配置される。開封手段２５の一部または全部は、インキ貯留室２４に配置される。前記一部には、後述する破断部２５ａ及び連通孔２５ｂが含まれる。開封手段２５は、例えば金属製または樹脂製等である。

　開封手段２５は、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されたときに、インキ貯留室２４内において、インキ収容筒２６の前端部の後述する封止部２８を開封する。本実施形態において、封止部２８は破断可能なフィルム状であり、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されたときに、開封手段２５は、インキ貯留室２４内で封止部２８を破断により開封する。

　本実施形態では開封手段２５が、中心軸Ｏを中心とする略円板状をなしており、連結筒２３の内部に固定されている。具体的に、開封手段２５の外周面は、連結筒２３の内周面のうち、前後方向において内周フランジ２３ａと嵌合部２３ｂとの間に位置する部分に嵌合する。また、開封手段２５の前端面は、内周フランジ２３ａに対して後側から接触する。これにより開封手段２５は、連結筒２３に対する前側への移動が規制されている。

　開封手段２５は、封止部２８を破断する破断部２５ａと、開封手段２５を前後方向に貫通する連通孔２５ｂと、を有する。

　破断部２５ａは、開封手段２５の後端面から後側に突出する錐状である。具体的に、本実施形態の破断部２５ａは、中心軸Ｏを中心とする円錐状であり、後側へ向かうに従い縮径する。ただしこれに限らず、特に図示しないが破断部２５ａは、後側へ向けて突出する角錐状、針状、刃物形状等であってもよい。すなわち、破断部２５ａは、後側へ向けて尖った形状を有している。

　連通孔２５ｂは、開封手段２５を前後方向に貫通する孔である。連通孔２５ｂは、ペン先ユニット２７の内部（内部空間）のうち開封手段２５よりも前側に位置する部分２７ａと、インキ収容筒２６の内部とを連通する。具体的に、連通孔２５ｂは円孔状であり、周方向に並んで複数設けられる。本実施形態では連通孔２５ｂが、周方向に等ピッチに配列して７つ設けられる。連通孔２５ｂの前端部は、開封手段２５の前端面に開口している。連通孔２５ｂの後端部は、破断部２５ａの外周面（テーパ面）に開口している。

　図２に示すように、インキ収容筒２６は、中心軸Ｏを中心とする円筒状である。インキ収容筒２６の前後方向の寸法は、ペン先ユニット２７の前後方向の寸法よりも大きい。インキ収容筒２６の前端部は、連結筒２３の後側開口内に着脱可能に嵌合する。すなわち、インキ収容筒２６は、ペン先ユニット２７に着脱可能に接続される。

　インキ収容筒２６の周壁は、例えば樹脂製等の透明な部材により構成されている。なお、前記透明な部材は、無色の透明な部材であってもよいし、所定の色が付与された透明な部材であってもよい。より詳しくは、本実施形態において「インキ収容筒２６の周壁が透明である」とは、インキ収容筒２６を径方向外側から見て、インキ収容筒２６の内部に収容されるインキが、前記周壁を通して目視により透けて見える場合を指す。

　インキ収容筒２６は、図示しないインキと、挿入筒部２６ａと、段差面２６ｂと、封止部２８と、グリス２９と、グリスストッパー３０と、栓部３１と、を有する。本実施形態のインキは、例えば、ゲルインキ等である。

　図３に示すように、挿入筒部２６ａは、インキ収容筒２６の前端部に配置される。挿入筒部２６ａは、インキ収容筒２６の周壁の前端部を構成する。挿入筒部２６ａの外径寸法は、インキ収容筒２６の周壁のうち前端部以外の部分（挿入筒部２６ａ以外の部分）の外径寸法よりも小さい。挿入筒部２６ａは、連結筒２３の後側開口内に挿入される。挿入筒部２６ａの外周面のうち前端部は、嵌合部２３ｂに嵌合する。

　段差面２６ｂは、インキ収容筒２６の周壁のうち、挿入筒部２６ａと、挿入筒部２６ａ以外の部分との間に配置される。段差面２６ｂは、中心軸Ｏを中心とする円形リング状の平面であり、中心軸Ｏと垂直な方向に広がる。段差面２６ｂは、前側を向く。段差面２６ｂには、連結筒２３の後端面が接触する。

　封止部２８は、インキ収容筒２６の前端部の開口を封止する。具体的に、封止部２８は、挿入筒部２６ａの前端部に配置されており、挿入筒部２６ａの前側開口を封止している。本実施形態では封止部２８が、中心軸Ｏと垂直な方向に広がるフィルム状である。封止部２８は、中心軸Ｏを中心とする円形薄膜状である。

　より詳しくは、封止部２８は、インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入され、開封手段２５によって開封されるまでの間、インキ収容筒２６の前側開口を封止する。インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入されたときに、封止部２８は、インキ貯留室２４に配置された状態で開封手段２５により破断され、開封される。封止部２８が開封されることで、インキ収容筒２６の内部とペン先ユニット２７の内部とが連通し、インキ収容筒２６内のインキがペン先ユニット２７へ流動可能となる。

　図２に示すように、グリス２９は、インキ収容筒２６の内部に配置されており、インキの後側に位置する。グリス２９は、インキの後側に隣接して配置されており、インキの蒸発や逆流（後側への流動）を抑える機能を有する。グリス２９は、ペン先ユニット２７へ向けたインキの前側への流動にともない、インキとともに前側へ移動する。

　グリスストッパー３０は、インキ収容筒２６の内部に配置され、グリス２９よりも前側かつ封止部２８よりも後側に位置する。グリスストッパー３０は、グリスストッパー３０を通したインキの前側への流動、つまりインキの通過を許容する。またグリスストッパー３０は、グリスストッパー３０に後側から接触したグリス２９のそれ以上の前側へ向けた移動を規制する。すなわち、グリスストッパー３０は、グリスストッパー３０を通したグリス２９の前側への流動、つまりグリス２９の通過を許容しない。

　図３に示すように、グリスストッパー３０は、インキ収容筒２６の前端部に配置される。具体的に、グリスストッパー３０は、挿入筒部２６ａの内部に配置される。本実施形態ではグリスストッパー３０が、インキ収容筒２６の周壁と単一の部材により一体に形成されている。グリスストッパー３０は、封止部２８及び開封手段２５から後側に所定の間隔をあけて配置されている。インキ貯留室２４は、前後方向において開封手段２５とグリスストッパー３０との間に位置する部分を含む。

　グリスストッパー３０は、中心軸Ｏを中心とする円板状をなしている。グリスストッパー３０の外周部は、挿入筒部２６ａの内周面と接続される。グリスストッパー３０は、中心軸Ｏと垂直な方向に広がる板状のストッパー本体３０ａと、ストッパー本体３０ａを前後方向に貫通する貫通孔３０ｂと、を有する。

　ストッパー本体３０ａは、中心軸Ｏを中心とする円板状である。貫通孔３０ｂは、ストッパー本体３０ａに複数設けられる。本実施形態では貫通孔３０ｂが、周方向または径方向に互いに間隔をあけて、８つ設けられている。各貫通孔３０ｂは、前後方向に延びる円孔状をなしている。

　図２に示すように、栓部３１は、インキ収容筒２６の後端部に配置される。栓部３１は、インキ収容筒２６の後側開口を塞ぐ。栓部３１は、栓部３１を前後方向に貫通する空気孔３１ａを有する。空気孔３１ａは、インキ収容筒２６の内部と外部とを連通する。具体的に、空気孔３１ａは、インキ収容筒２６の内部のうちグリス２９よりも後側に位置する空間部分と、インキ収容筒２６の外部とを連通している。

　ここで、インキ収容筒２６の交換方法について説明する。
　本実施形態ではインキ収容筒２６が、ペン先ユニット２７に着脱可能に取り付けられており、例えばインキが所定量にまで減少したときに、インキ収容筒２６を取り外して新しいものに交換することができる。

　本実施形態においては、図４に示すように、インキ収容筒２６内のグリス２９がグリスストッパー３０に接触したときに、それ以上のインキの前側への流動が抑えられ、チップ２１からインキが出なくなる。これにより、インキ収容筒２６が使い終わり（使用済み）とされる。なお、図４においては、ペン先ユニット２７の構成要素の一部（チップ２１など）の図示を省略している。

　インキ収容筒２６が使い終わりとなったときに、グリスストッパー３０の前側に位置するインキ貯留室２４は、インキが貯留された状態となっている。図４に示すように、ペン先ユニット２７から使用済みのインキ収容筒２６を後側へ抜き出したときに、連結筒２３内のインキ貯留室２４には、インキが表面張力等により保持された状態とされる。図４に示す符号ＬＳは、使用済みのインキ収容筒２６を取り外したときに、インキ貯留室２４に残ったまま保持されるインキの後側を向く液面（界面）を表している。

　また、使用済みのインキ収容筒２６を抜き出すときに、このインキ収容筒２６の前端部には、破断された封止部２８が保持された状態となっている。このため、使用済みのインキ収容筒２６と一緒に、破断後の封止部２８もペン先ユニット２７から抜き出されることとなる。したがって、破断後の封止部２８が、次に連結筒２３内に挿入される新しいインキ収容筒２６の機能を阻害するような不具合は抑制される。

　使用済みのインキ収容筒２６を取り外したら、新しいインキ収容筒２６の前端部（挿入筒部２６ａ）を連結筒２３内に挿入していく。このとき、インキ貯留室２４のインキ内において、開封手段２５により封止部２８が開封され、インキ収容筒２６内のインキがペン先ユニット２７に流動可能となる。

　図１に示すように、グリップ部３は、中心軸Ｏを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。グリップ部３は、軸筒１の外周面に嵌合する。本実施形態ではグリップ部３が、前軸１ａの外周面に嵌合する。具体的に、グリップ部３は、前軸１ａの外周面のうち、前後方向の両端部（テーパ筒部及び雄ネジ部）間に位置する中間部分に嵌合する。

　グリップ部３は、例えばエラストマーやゴム等の弾性変形可能な弾性部材により構成される。ただしこれに限らず、グリップ部３は、弾性部材以外の樹脂部材等により構成されていてもよい。

　クリップ４は、軸筒１の前後方向の後端部に接続され、軸筒１の外周面よりも径方向外側に突出する。具体的に、クリップ４は、クリップ支持筒１ｅの外周面に接続されており、この接続部分から前側に向けて、前後方向に延びている。クリップ４は、クリップ支持筒１ｅ及び後軸１ｂの各外周面、すなわち軸筒１の外周面に、径方向外側から対向して配置されている。クリップ４の一部（例えば前端部付近）は、軸筒１の外周面に接触していてもよい。

　本実施形態ではクリップ４が、クリップ支持筒１ｅと単一の部材により一体に形成されている。なおクリップ４は、クリップ支持筒１ｅとは別体に形成され、クリップ支持筒１ｅに組み付けられていてもよい。クリップ４は、弾性変形可能な樹脂製または金属製等である。クリップ４を利用することにより、使用者は、筆記具１０を衣服などのポケット等に引っ掛けて保持することができる。また、クリップ４が設けられることで、筆記具１０が机上等において意図せず転がるようなことが抑えられる。

　付勢部材６は、例えば圧縮コイルバネ等である。付勢部材６は、中心軸Ｏを中心とする螺旋状をなす。付勢部材６は、軸筒１の内部に配置され、インキカートリッジ２Ａを後側へ向けて付勢する。本実施形態では付勢部材６が、前軸１ａの内部に収容される。付勢部材６の内部には、ペン先ユニット２７の一部が挿入される。付勢部材６の前端部は、前軸１ａのテーパ筒部内の段部に対して、後側から接触する。付勢部材６の後端部は、ペン先ユニット２７の大径部２２ｂの前端面またはフランジ部２２ｄの前端面に対して、前側から接触する。

　押込み部５は、中心軸Ｏを中心とする筒状であり、前後方向に延びる。押込み部５は、例えば、後端部が閉じられた有頂筒状等である。押込み部５は、軸筒１の後端開口部１ｄ内に挿入される。押込み部５の少なくとも一部（後端部）は、後端開口部１ｄから後側に突出する。

　ノック機構７は、軸筒１の内部に設けられる。使用者が、付勢部材６の付勢力に抗して押込み部５を前側へ押し込み、この押し込みを解除する操作（ノック操作）を行うことにより、ノック機構７は、インキカートリッジ２Ａを上述した使用位置と収納位置とに切り替え可能に構成されている。詳しくは、使用者がノック操作を一回行う毎に、インキカートリッジ２Ａは、使用位置と収納位置とに交互に前後方向に移動する。本実施形態のノック機構７は、回転カム７１等を含んでおり、具体的には、従来のノック式ボールペンが備えるノック機構と同様の構造を備える。

　以上説明した本実施形態のインキカートリッジ２Ａ及びこれを備えた筆記具１０では、ペン先ユニット２７の連結筒２３の内部に、インキ貯留室２４及び開封手段２５が設けられている。インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入されるときに、インキ収容筒２６の封止部２８は、インキ貯留室２４のインキに浸漬された状態で開封手段２５により開封される。このため、インキ収容筒２６とペン先ユニット２７とを連結する際に、インキ収容筒２６の内部にエア（気泡）が入り込むことが抑えられる。

　本実施形態によれば、インキカートリッジ２Ａ内にエアが入り込むことを抑制できる。このため、筆記を行っている際に急にインキが出なくなる（出にくくなる）などの不具合が抑えられ、筆記を円滑に行うことができる。

　より詳しくは、本実施形態では、インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入されたときに、開封手段２５が、フィルム状の封止部２８を突き破るなどにより破断し、開封する。封止部２８及び開封手段２５をそれぞれシンプルな構成とすることができ、かつ、封止部２８及び開封手段２５の各機能が安定する。また、封止部２８及び開封手段２５の各前後方向の寸法を小さく抑えることが可能となる。このため、インキカートリッジ２Ａのコンパクト化を図ったり、インキカートリッジ２Ａの外形寸法（特に前後方向の寸法）を増大させることなくインキ収容量を増やしたりすることができる。

　また本実施形態では、開封手段２５が、破断部２５ａによって封止部２８を破断し、連通孔２５ｂを通して、インキ収容筒２６内のインキをペン先ユニット２７内へ流通させる。開封手段２５による封止部２８の開封機能が安定して得られつつ、インキ収容筒２６からペン先ユニット２７へのインキの供給状態も安定する。筆記具１０による円滑な筆記が良好に維持される。

　また本実施形態では、インキ収容筒２６が、ペン先ユニット２７に着脱可能に接続される。
　この場合、インキ収容筒２６内のインキが例えば所定の残量にまで減少したときに、インキ収容筒２６をペン先ユニット２７から取り外して、新しいものに交換することができる。例えば金属製部材と樹脂製部材の組合せ等により構成されるペン先ユニット２７を、本実施形態では廃棄することなく使用し続けることができるため、いわゆる「エコ」であり、資源の消費が抑えられ、地球環境にやさしい。

　また本実施形態では、インキ収容筒２６が、ペン先ユニット２７へのインキの流動にともない前側へ移動するグリス２９と、グリス２９よりも前側かつ封止部２８よりも後側に位置するグリスストッパー３０と、を有している。インキ貯留室２４は、前後方向において開封手段２５とグリスストッパー３０との間に位置する。
　この場合、筆記具１０の筆記によるインキの減少にともない、グリス２９が前側へ移動していき、グリスストッパー３０に後側から接触することで、それ以上のグリス２９の前側への移動が規制される。グリス２９の前側への移動が規制されることで、チップ（ペン先）２１からインキが出なくなるため、筆記具１０の使用者はインキ収容筒２６が交換時期となったことを認識する。

　交換時期となったインキ収容筒２６をペン先ユニット２７から取り外す際、インキ貯留室２４には、グリスストッパー３０と開封手段２５との間の容積に応じた所定量のインキが残留している。そして、新しいインキ収容筒２６をペン先ユニット２７に接続する際には、このインキ収容筒２６の封止部２８がインキ貯留室２４のインキに浸漬された状態で、開封手段２５により開封される。したがって、インキカートリッジ２Ａの製造時はもちろんのこと、使用者がインキ収容筒２６を交換する際においても、上述した本実施形態の作用効果が安定して奏功される。

　また本実施形態では、グリスストッパー３０が、板状のストッパー本体３０ａと、ストッパー本体３０ａを前後方向に貫通する貫通孔３０ｂと、を有する。
　この場合、グリスストッパー３０にグリス２９が接触するまでの間は、インキ収容筒２６内のインキが、貫通孔３０ｂを通してペン先ユニット２７に安定して供給される。また、グリスストッパー３０にグリス２９が接触した後は、グリス２９のそれ以上の前側へ向けた移動がストッパー本体３０ａによって安定して規制される。

　また本実施形態では、連結筒２３が、嵌合部２３ｂと、エア抜き部２３ｃと、を有する。嵌合部２３ｂには、インキ収容筒２６の前端部が周方向の全周にわたって液密に嵌合する。エア抜き部２３ｃは、嵌合部２３ｂよりも後側に配置され、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されて嵌合部２３ｂに嵌合するまでの間、連結筒２３の内部と外部とを連通する。
　この場合、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内に挿入していき、インキ収容筒２６の前端部と嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、エア抜き部２３ｃを通して連結筒２３内のエアが外部へ効率よく排出される。連結筒２３内のインキ貯留室２４などにエアが残ることが安定して抑えられ、本実施形態による作用効果がより顕著なものとなる。

　また本実施形態では、エア抜き部２３ｃが、連結筒２３の内周面から径方向外側に窪む通気溝２３ｄを有しており、通気溝２３ｄは、嵌合部２３ｂの後側に隣接配置されて前後方向に延び、連結筒２３の後端面に開口する。
　この場合、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内に挿入していき、インキ収容筒２６の前端部と嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、連結筒２３内のエアが、通気溝２３ｄを通して外部に安定して排出される。

　ここで、図５を参照し、第１実施形態の変形例について説明する。なお、変形例の図示においては、前述の実施形態と同じ構成要素には同一の符号を付し、下記では主に異なる点について説明する。

　図５は、第１実施形態の変形例のインキカートリッジ２Ａの一部を拡大して示す斜視断面図であり、具体的には、前述の図３に対応する図を表す。この変形例では、インキ収容筒２６の挿入筒部２６ａが、第１筒部２６ｃと、第１筒部２６ｃよりも後側に配置される第２筒部２６ｄと、を有する。

　第１筒部２６ｃは、挿入筒部２６ａのうち前側部分に配置される。第１筒部２６ｃは、中心軸Ｏを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。第１筒部２６ｃの外周面と、連結筒２３の内周面との間には、周方向の全周にわたって隙間が設けられている。封止部２８は、第１筒部２６ｃの前端部に配置され、第１筒部２６ｃの前側開口を封止する。

　第２筒部２６ｄは、挿入筒部２６ａのうち後側部分に配置される。第２筒部２６ｄは、中心軸Ｏを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。第２筒部２６ｄの外径寸法は、第１筒部２６ｃの外径寸法よりも大きい。嵌合部２３ｂは、第２筒部２６ｄの前端部に、周方向の全周にわたって液密に嵌合する。

　この変形例ではエア抜き部２３ｃが、前述した通気溝２３ｄの代わりに、通気孔２３ｅを有する。通気孔２３ｅは、連結筒２３の周壁を径方向に貫通する。通気孔２３ｅは、嵌合部２３ｂの後側に位置し、嵌合部２３ｂと隣接して配置されている。図示の例では通気孔２３ｅが、径方向に延びる円孔状である。また、通気孔２３ｅは、周方向に互いに間隔をあけて複数設けられており、具体的には、周方向に等ピッチで２つ設けられている。

　この変形例において、通気孔２３ｅ（エア抜き部２３ｃ）は、嵌合部２３ｂよりも後側に配置されており、連結筒２３の後側開口内に挿入筒部２６ａが挿入されて、第２筒部２６ｄの前端部が嵌合部２３ｂに嵌合するまでの間、連結筒２３の内部と外部とを連通する。
　すなわち、この変形例では、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内に挿入していき、インキ収容筒２６の前端部と嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、連結筒２３内のエアが、通気孔２３ｅを通して外部に安定して排出される。したがって、前述の第１実施形態と同様の作用効果が得られる。

＜第２実施形態＞
　次に、本発明の第２実施形態の筆記具２０について、図１及び図６を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。

　第２実施形態の筆記具２０は、軸筒１と、軸筒１の内部に配置されるインキカートリッジ２Ｂと、グリップ部３と、クリップ４と、付勢部材６と、押込み部５と、ノック機構７と、を備える。筆記具２０が備える構成要素のうち、軸筒１、グリップ部３、クリップ４、付勢部材６、押込み部５及びノック機構７については、前述の第１実施形態と同様であり、その説明を省略する（図１を参照）。

　図６は、第２実施形態の筆記具２０のインキカートリッジ２Ｂの一部を示す斜視断面図である。図６に示すように、本実施形態のインキカートリッジ２Ｂは、中心軸Ｏに沿って前後方向に延び、内部にインキ（図示省略）が収容されるインキ収容筒２６と、インキ収容筒２６の前側に配置され、インキ収容筒２６と接続されるペン先ユニット２７と、を備える。

　本実施形態のインキカートリッジ２Ｂのペン先ユニット２７は、前述の実施形態で説明したインキカートリッジ２Ａのペン先ユニット２７と、同様の構成を有する。なお図６においては、ペン先ユニット２７の構成要素の一部（チップ２１及びエア抜き部２３ｃなど）の図示を省略している。

　本実施形態のインキ収容筒２６は、グリス２９及びグリスストッパー３０を有していない。本実施形態においてインキ貯留室２４は、連結筒２３の内部に配置され、前後方向において、開封手段２５と、開封手段２５よりも後側へ所定寸法離れた部分と、の間に位置する。具体的に、例えば、インキ貯留室２４は、前後方向において、開封手段２５と、連結筒２３の後端面との間に位置する。

　インキ収容筒２６は、前後方向に延びる外容器２６ｅと、外容器２６ｅの内部に配置されて前後方向に延び、内部にインキ（図示省略）が収容される内容器２６ｆと、を有する。外容器２６ｅは、前述の第１実施形態で説明したインキ収容筒２６の周壁に相当する。内容器２６ｆは、可撓性を有する袋状の容器である。具体的に、内容器２６ｆは、前後方向に延びる筒形の袋状をなしており、その後端部が閉じられている。また内容器２６ｆの前側開口は、封止部２８により封止される。

　具体的に、封止部２８は、インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入され、開封手段２５によって開封されるまでの間、内容器２６ｆの前側開口を封止する。インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に挿入されたときに、封止部２８は、インキ貯留室２４に配置された状態で開封手段２５により破断され、開封される。封止部２８が開封されることで、インキ収容筒２６の内部とペン先ユニット２７の内部とが連通し、インキ収容筒２６内のインキがペン先ユニット２７へ流動可能となる。

　また、内容器２６ｆは、内容器２６ｆ内からペン先ユニット２７へのインキの流動にともない、萎み変形する。内容器２６ｆの萎み変形量は、透明な外容器２６ｅ及び軸筒１を通して、筆記具２０の外部から使用者が視認可能である。

　以上説明した本実施形態の筆記具２０においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。
　具体的に、本実施形態においては、筆記具２０の筆記によるインキの減少にともない、内容器２６ｆが萎み変形する。筆記具２０の使用者は、筆記具２０の外側から内容器２６ｆが一定以上に萎んだ状態を目視するなどにより、インキ収容筒２６が交換時期となったことを認識する。

　交換時期となったインキ収容筒２６をペン先ユニット２７から取り外す際、インキ貯留室２４には所定量のインキが残留している。そして、新しいインキ収容筒２６をペン先ユニット２７に接続する際には、このインキ収容筒２６の封止部２８がインキ貯留室２４のインキに浸漬された状態で、開封手段２５により開封される。したがって、インキカートリッジ２Ｂの製造時はもちろんのこと、使用者がインキ収容筒２６を交換する際においても、上述した作用効果が安定して奏功される。

＜第３実施形態＞
　次に、本発明の第３実施形態の筆記具５０について、図１及び図７を参照して説明する。なお本実施形態では、前述の実施形態と同じ構成については、同じ名称や符号を付すなどしてその説明を省略する場合がある。また方向の定義についても、特に説明しない限り、前述の実施形態と同様である。

　第３実施形態の筆記具５０は、軸筒１と、軸筒１の内部に配置されるインキカートリッジ２Ｃと、グリップ部３と、クリップ４と、付勢部材６と、押込み部５と、ノック機構７と、を備える。筆記具５０が備える構成要素のうち、軸筒１、グリップ部３、クリップ４、付勢部材６、押込み部５及びノック機構７については、前述の第１実施形態と同様であり、その説明を省略する（図１を参照）。

　図７は、第３実施形態の筆記具５０のインキカートリッジ２Ｃの一部を示す斜視断面図である。図７に示すように、本実施形態のインキカートリッジ２Ｃは、連結筒２３、開封手段２５及びインキ収容筒２６等の各構成要素が、前述の第１実施形態とは異なっている。

　本実施形態では、連結筒２３の嵌合部２３ｂが、連結筒２３の内周面のうち後端部に配置されている。図示の例では、嵌合部２３ｂの内径寸法が、連結筒２３のうち嵌合部２３ｂ以外の部分の内径寸法よりも大きい。
　また、本実施形態の連結筒２３は、さらに雌ネジ部２３ｆを有する。雌ネジ部２３ｆは、連結筒２３の内周面のうち、前後方向において内周フランジ２３ａと嵌合部２３ｂとの間に配置されている。

　本実施形態の開封手段２５は、さらに本体筒部２５ｃと、外周フランジ２５ｄと、を有する。本体筒部２５ｃは、中心軸Ｏを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。

　外周フランジ２５ｄは、本体筒部２５ｃの外周面から径方向外側に突出し、周方向に延びる。外周フランジ２５ｄは、中心軸Ｏを中心とする環状をなしており、具体的には、中心軸Ｏと垂直な方向に広がる円環板状をなしている。外周フランジ２５ｄの一対の板面のうち、前側を向く板面は、チップホルダ２２の大径部２２ｂの後端面と隙間をあけて対向し、または接触する。外周フランジ２５ｄの一対の板面のうち、後側を向く板面は、内周フランジ２３ａと隙間をあけて対向し、または接触する。すなわち、外周フランジ２５ｄは、前後方向において、チップホルダ２２の後端面と内周フランジ２３ａとの間に挟まれている。これにより、開封手段２５は、連結筒２３内での前後方向への移動が規制されている。また、開封手段２５は、連結筒２３内での中心軸Ｏ回りの回転移動が規制されていることが好ましい。

　また本実施形態では、開封手段２５の破断部２５ａが、前後方向に延びる柱状をなしている。破断部２５ａは、本体筒部２５ｃの後端面から後側へ突出している。破断部２５ａの後端部は、後側に向けて尖った形状とされている。破断部２５ａは、槍部などと言い換えてもよい。破断部２５ａの中心軸（図示省略）は、インキカートリッジ２Ｃの中心軸Ｏから径方向外側に偏心した位置に配置されている。このため、破断部２５ａは、中心軸Ｏから偏心した位置で封止部２８を破断し開封する。

　また破断部２５ａは、インキガイド溝２５ｅを有する。インキガイド溝２５ｅは、破断部２５ａの外周面のうち径方向内側（中心軸Ｏ側）を向く部分に配置されており、前後方向に延びている。インキガイド溝２５ｅの前端部は、連通孔２５ｂの後端部（後述する小径孔部）に連続するように滑らかに接続されている。インキガイド溝２５ｅは、インキ収容筒２６内のインキを連通孔２５ｂに案内する。

　また本実施形態では、開封手段２５の連通孔２５ｂが、多段孔状をなしている。連通孔２５ｂは、本体筒部２５ｃを前後方向に貫通している。連通孔２５ｂは、本体筒部２５ｃの後端部に位置する小径孔部と、本体筒部２５ｃのうち後端部以外の部分に位置し、小径孔部よりも内径寸法が大きい大径孔部と、を有する。

　本実施形態のインキ収容筒２６は、さらに収容筒本体２６ｇと、雄ネジ筒部２６ｈと、シール部材２６ｉと、エア抜き部２３ｃと、を有する。収容筒本体２６ｇは、中心軸Ｏを中心とする円筒状であり、前後方向に延びる。収容筒本体２６ｇは、インキ収容筒２６のうち前端部以外の部分に配置される。

　雄ネジ筒部２６ｈは、中心軸Ｏを中心とする筒状であり、前後方向に延びる。雄ネジ筒部２６ｈは、インキ収容筒２６の前端部に配置される。雄ネジ筒部２６ｈの後側部分は、収容筒本体２６ｇの前端部内に嵌合する。雄ネジ筒部２６ｈの前側部分は、収容筒本体２６ｇの前端面よりも前側に突出する。本実施形態では、封止部２８が雄ネジ筒部２６ｈの前端部に配置されており、雄ネジ筒部２６ｈの前側開口を封止している。

　雄ネジ筒部２６ｈは、突き当てフランジ２６ｊと、雄ネジ部２６ｋと、シール部材保持溝２６ｍと、を有する。
　突き当てフランジ２６ｊは、雄ネジ筒部２６ｈの外周面から径方向外側へ突出し、周方向に延びる。突き当てフランジ２６ｊは、中心軸Ｏを中心とする環状をなしており、具体的には、中心軸Ｏと垂直な方向に広がる円環板状をなしている。突き当てフランジ２６ｊの一対の板面のうち、後側を向く板面は、収容筒本体２６ｇの前端面と接触する。また図７に示すように、インキ収容筒２６がペン先ユニット２７の連結筒２３に装着された状態で、突き当てフランジ２６ｊの一対の板面のうち、前側を向く板面は、連結筒２３の後端面と接触する。

　雄ネジ部２６ｋは、雄ネジ筒部２６ｈの前側部分に配置されている。具体的に、雄ネジ部２６ｋは、雄ネジ筒部２６ｈの外周面のうち、突き当てフランジ２６ｊよりも前側に位置する部分に配置されている。雄ネジ部２６ｋは、連結筒２３の雌ネジ部２３ｆに螺着される。すなわち本実施形態では、インキ収容筒２６の前端部（雄ネジ筒部２６ｈ）が、連結筒２３内に螺着により挿入される。

　シール部材保持溝２６ｍは、雄ネジ筒部２６ｈの外周面から径方向内側に窪み、周方向に延びる。シール部材保持溝２６ｍは、中心軸Ｏを中心とする環状の溝である。シール部材保持溝２６ｍは、前後方向において、突き当てフランジ２６ｊと雄ネジ部２６ｋとの間に配置されている。

　シール部材２６ｉは、弾性変形可能なＯリング等である。シール部材２６ｉは、環状をなしており、シール部材保持溝２６ｍに配置される。シール部材２６ｉは、シール部材保持溝２６ｍに保持されることにより、前後方向への移動が規制されている。このようにしてシール部材２６ｉは、インキ収容筒２６の前端部（雄ネジ筒部２６ｈ）に配置される。図７に示すように、インキ収容筒２６が連結筒２３に装着された状態で、シール部材２６ｉは、シール部材保持溝２６ｍと嵌合部２３ｂとに、それぞれ周方向の全周にわたって接触する。シール部材２６ｉは、シール部材保持溝２６ｍ及び嵌合部２３ｂに周方向の全周にわたって液密に嵌合する。

　前述の第１実施形態では、エア抜き部２３ｃが連結筒２３に設けられる例を挙げたが、本実施形態ではエア抜き部２３ｃが、インキ収容筒２６の前端部（雄ネジ筒部２６ｈ）に設けられている。すなわち、エア抜き部２３ｃは、インキ収容筒２６の前端部及び連結筒２３のうち、少なくとも一方に備えられる。具体的に、本実施形態ではエア抜き部２３ｃが、インキ収容筒２６の前端部のうち、シール部材２６ｉよりも前側に配置されている。

　エア抜き部２３ｃは、平面部２３ｇを有する。平面部２３ｇは、雄ネジ筒部２６ｈの前側部分の外周面の一部（雄ネジ部２６ｋの周方向の一部）を切り欠くように形成されており、径方向外側を向く平面状をなしている。平面部２３ｇは、いわゆるＤカット面等である。連結筒２３の内周面と、平面部２３ｇとの間には、エアが流通可能な隙間が設けられている。

　エア抜き部２３ｃは、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されて、シール部材２６ｉと嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、連結筒２３の内部と外部とを連通する。

　また、前述の第１実施形態では、グリスストッパー３０が、インキ収容筒２６の周壁と単一の部材により一体に形成されている例を挙げた。本実施形態ではグリスストッパー３０が、インキ収容筒２６の周壁（収容筒本体２６ｇ及び雄ネジ筒部２６ｈ）とは別部材により別体に形成され、前記周壁内に組み付けられている。

　本実施形態のグリスストッパー３０は、中心軸Ｏを中心とする筒状をなしており、前後方向に延びる。グリスストッパー３０は、さらにストッパー筒３０ｃを有する。

　ストッパー筒３０ｃは、中心軸Ｏを中心とする円筒状をなしている。ストッパー筒３０ｃは、雄ネジ筒部２６ｈ内に嵌合している。具体的に、ストッパー筒３０ｃは、雄ネジ筒部２６ｈの後側部分の内部に、後側から挿入されている。

　本実施形態では、グリスストッパー３０のストッパー本体３０ａが、ストッパー筒３０ｃの後端部に接続されている。ストッパー本体３０ａは、ストッパー筒３０ｃの後側開口を塞ぐように設けられる。ストッパー本体３０ａの外径寸法は、ストッパー筒３０ｃの外径寸法よりも大きい。ストッパー本体３０ａの前側を向く板面は、雄ネジ筒部２６ｈの後端面と接触する。

　また、前述の第１実施形態では、グリスストッパー３０の貫通孔３０ｂが、ストッパー本体３０ａに８つ設けられている例を挙げた。本実施形態では、グリスストッパー３０の貫通孔３０ｂが、ストッパー本体３０ａに周方向に互いに間隔をあけて３つ設けられている。また、各貫通孔３０ｂは、内径寸法に比べて前後方向の寸法が大きい。具体的に、貫通孔３０ｂの前後方向の寸法は、貫通孔３０ｂの内径寸法の２倍以上であり、図示の例では２～３倍程度である。このように、本実施形態の貫通孔３０ｂは、前後方向に延びる長細い円孔状をなしている。

　以上説明した本実施形態の筆記具５０においても、前述の実施形態と同様の作用効果が得られる。

　また本実施形態では、開封手段２５の破断部２５ａが、中心軸Ｏから偏心した位置で封止部２８を破断し、インキ収容筒２６の前端部（雄ネジ筒部２６ｈ）は、連結筒２３内に螺着により挿入される。
　この場合、インキ収容筒２６の前端部が連結筒２３内に螺着により挿入されていくと、開封手段２５の破断部２５ａが、中心軸Ｏ上から径方向外側にずれた位置（偏心位置）において、封止部２８を破断する。この状態から、使用者がさらにインキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内にねじ込んでいくと、破断部２５ａは、中心軸Ｏ回りの周方向に沿って封止部２８をさらに広範囲に破断する。

　すなわち、使用者が、インキ収容筒２６を連結筒２３内に回転させつつ挿入する（螺着する）操作にともない、封止部２８が、破断部２５ａによって広く安定して開口させられる。具体的に本実施形態では、封止部２８が、破断部２５ａによって中心軸Ｏ回りの全周にわたって開口させられる。これにより、インキ収容筒２６内のインキを、ペン先ユニット２７に向けてより確実に、かつ安定して供給することができる。

　また本実施形態では、グリスストッパー３０の貫通孔３０ｂは、内径寸法に比べて前後方向の寸法が大きい。
　この場合、グリスストッパー３０に形成される貫通孔３０ｂは、前後方向に細長く延びる孔となる。このため、グリス２９がグリスストッパー３０に接触したときに（図４を参照）、貫通孔３０ｂを通してグリス２９が前側へ滲み出すことが抑制される。グリス２９が意図せずインキ貯留室２４などに流入して筆記に影響するような不具合が抑えられる。

　また本実施形態では、インキ収容筒２６が、インキ収容筒２６の前端部に配置される環状のシール部材２６ｉと、インキ収容筒２６の前端部のうち、シール部材２６ｉよりも前側に配置されるエア抜き部２３ｃと、を有している。また、連結筒２３は、シール部材２６ｉが周方向の全周にわたって液密に嵌合する嵌合部２３ｂを有している。そして、エア抜き部２３ｃは、連結筒２３内にインキ収容筒２６の前端部が挿入されて、シール部材２６ｉと嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、連結筒２３の内部と外部とを連通する。

　この場合、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内に挿入していき、シール部材２６ｉと嵌合部２３ｂとが嵌合するまでの間、エア抜き部２３ｃを通して連結筒２３内のエアが外部へ効率よく排出される。連結筒２３内のインキ貯留室２４などにエアが残ることが安定して抑えられ、本実施形態による作用効果がより顕著なものとなる。

　また本実施形態では、開封手段２５は、連結筒２３内での前後方向への移動が規制されている。
　この場合、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内に挿入するときに、破断部２５ａが未開封の封止部２８によって前側へ押し込まれるようなことが抑えられ、破断部２５ａによって封止部２８が安定して開封される。また、インキ収容筒２６の前端部を連結筒２３内から抜き出すときには、開封済みの封止部２８が破断部２５ａに引っ掛かるなどしても、開封手段２５が連結筒２３内から後側へ抜き出されるようなことが抑えられる。

　なお、本発明は前述の実施形態等に限定されず、例えば下記に説明するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の変更等が可能である。

　前述の第１実施形態及びその変形例、ならびに第３実施形態では、グリスストッパー３０が、板状のストッパー本体３０ａと、貫通孔３０ｂと、を有する例を挙げたが、これに限らない。グリスストッパー３０は、インキの通過を許容しグリス２９の通過を許容しない構成を備えていればよいことから、例えば、網状部材等であってもよい。

　また、前述の第１実施形態及びその変形例、ならびに第３実施形態では、グリス２９がグリスストッパー３０に到達したときに、インキ収容筒２６が使い終わり（使用済み）となる例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、例えば、インキ収容筒２６または軸筒１に、使用済み表示目盛り等の表示部（判断部）を備える構成とする。そして、使用者が筆記具１０を外側から見て、インキの後端またはグリス２９の前後方向の位置が表示部（判断部）に達したときに、インキ収容筒２６を使用済みと判断することとしてもよい。

　また、前述の第１実施形態及びその変形例、第２実施形態、ならびに第３実施形態（以下、前述の実施形態等と呼ぶ）では、軸筒１のうち、少なくとも径方向から見てインキ収容筒２６と重なる部分が透明な部材により構成され、インキ収容筒２６の周壁または外容器２６ｅが透明な部材により構成されている。すなわち、使用者が筆記具１０，２０，５０を外部から見て、インキ収容筒２６内のインキ残量が視認可能である構成を例として挙げたが、これに限らない。軸筒１、インキ収容筒２６の周壁及び外容器２６ｅのいずれかが、不透明な部材により構成されていてもよい。

　また、前述の実施形態等では、封止部２８がフィルム状であり、開封手段２５は封止部２８を破断により開封する例を挙げたが、これに限らない。特に図示しないが、封止部は、例えば、インキ収容筒２６の前側開口を封止する球体や蓋体等であってもよく、開封手段は、球体や蓋体等を押し込んで開封するように構成されていてもよい。

　また、前述の実施形態等では、筆記具１０，２０，５０としてノック式ボールペンを例に挙げたが、これに限らない。筆記具１０，２０，５０は、ノック式ボールペン以外のボールペンや、あるいは、ボールペン以外のサインペン等のペンであってもよい。

　また、前述の実施形態等では、インキがゲルインキである例を挙げたが、これに限らない。インキ収容筒２６に収容されるインキは、例えば、油性インキや水性インキ等であってもよい。

　本発明は、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態等で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態等によって限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。

　本発明の筆記具のインキカートリッジ及び筆記具によれば、インキカートリッジ内にエアが入り込むことを抑制できる。このため、筆記を行っている際に急にインキが出なくなるなどの不具合が抑えられ、筆記を円滑に行うことができる。したがって、産業上の利用可能性を有する。

　また本発明の構成は、筆記具以外の技術分野にも適用可能である。この場合、本発明が備える各構成要素は、次のように、広義に言い換えてもよい。すなわち、筆記具は物品、インキは液体、インキカートリッジは液体カートリッジ、インキ収容筒は液体収容筒、ペン先ユニットは機能部、インキ貯留室は液体貯留室などである。

　具体的に、筆記具以外の物品としては、例えば、速乾性の白色等の修正液が収容される修正液塗布具、液状の接着剤が収容される水のり塗布具や接着剤容器、点滴などの薬液が収容される医療用器具、液体系（液状）の食品（例えば調味料など）が収容される液体用食品容器等が挙げられる。このような各種の物品において、液体をカートリッジ化して交換可能としつつ、このカートリッジの交換作業時に、液体中にエアが入り込むことを抑制できる。このため、液体の固化、変性、劣化、危険性の増加（人体への影響）などを抑えることが可能である。

　１…軸筒、２Ａ，２Ｂ，２Ｃ…筆記具のインキカートリッジ、１０，２０，５０…筆記具、２１…チップ（ペン先）、２３…連結筒、２３ｂ…嵌合部、２３ｃ…エア抜き部、２３ｄ…通気溝、２３ｅ…通気孔、２４…インキ貯留室、２５…開封手段、２５ａ…破断部、２５ｂ…連通孔、２６…インキ収容筒、２６ｅ…外容器、２６ｆ…内容器、２６ｈ…雄ネジ筒部（インキ収容筒の前端部）、２６ｉ…シール部材、２７…ペン先ユニット、２７ａ…ペン先ユニットの内部のうち開封手段よりも前側に位置する部分、２８…封止部、２９…グリス、３０…グリスストッパー、３０ａ…ストッパー本体、３０ｂ…貫通孔、Ｏ…中心軸

Claims (14)

1. 　中心軸に沿って前後方向に延び、内部にインキが収容されるインキ収容筒と、
   　前記インキ収容筒の前側に配置され、前記インキ収容筒と接続されるペン先ユニットと、を備え、
   　前記インキ収容筒は、前記インキ収容筒の前端部の開口を封止する封止部を有し、
   　前記ペン先ユニットは、
   　前記ペン先ユニットの後側部分に配置されて前後方向に延び、内部に前記インキ収容筒の前端部が挿入される連結筒と、
   　前記連結筒の内部に位置し、インキが貯留されるインキ貯留室と、
   　前記連結筒の内部に配置され、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されたときに、前記インキ貯留室内で前記封止部を開封する開封手段と、を有する、
   　筆記具のインキカートリッジ。
2. 　前記封止部は、フィルム状であり、
   　前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されたときに、前記開封手段は、前記インキ貯留室内で前記封止部を破断し開封する、
   　請求項１に記載の筆記具のインキカートリッジ。
3. 　前記開封手段は、
   　前記封止部を破断する破断部と、
   　前記開封手段を前後方向に貫通する連通孔と、を有し、
   　前記連通孔は、前記ペン先ユニットの内部のうち前記開封手段よりも前側に位置する部分と、前記インキ収容筒の内部とを連通する、
   　請求項２に記載の筆記具のインキカートリッジ。
4. 　前記インキ収容筒は、前記ペン先ユニットに着脱可能に接続される、
   　請求項１から３のいずれか１項に記載の筆記具のインキカートリッジ。
5. 　前記インキ収容筒は、
   　前記インキ収容筒の内部に配置されてインキの後側に位置し、前記ペン先ユニットへのインキの流動にともない前側へ移動するグリスと、
   　前記インキ収容筒の内部に配置され、前記グリスよりも前側かつ前記封止部よりも後側に位置するグリスストッパーと、を有し、
   　前記グリスストッパーは、前記グリスストッパーに後側から接触した前記グリスのそれ以上の前側へ向けた移動を規制し、
   　前記インキ貯留室は、前後方向において前記開封手段と前記グリスストッパーとの間に位置する、
   　請求項４に記載の筆記具のインキカートリッジ。
6. 　前記グリスストッパーは、
   　前記中心軸と垂直な方向に広がる板状のストッパー本体と、
   　前記ストッパー本体を前後方向に貫通する貫通孔と、を有する、
   　請求項５に記載の筆記具のインキカートリッジ。
7. 　前記連結筒は、
   　前記インキ収容筒の前端部が周方向の全周にわたって液密に嵌合する嵌合部と、
   　前記嵌合部よりも後側に配置され、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されて前記嵌合部に嵌合するまでの間、前記連結筒の内部と外部とを連通するエア抜き部と、を有する、
   　請求項１から３のいずれか１項に記載の筆記具のインキカートリッジ。
8. 　前記エア抜き部は、前記連結筒の内周面から径方向外側に窪む通気溝を有し、
   　前記通気溝は、前記嵌合部の後側に隣接配置されて前後方向に延び、前記連結筒の後端面に開口する、
   　請求項７に記載の筆記具のインキカートリッジ。
9. 　前記エア抜き部は、前記連結筒の周壁を径方向に貫通する通気孔を有し、
   　前記通気孔は、前記嵌合部の後側に隣接配置される、
   　請求項７に記載の筆記具のインキカートリッジ。
10. 　前記インキ収容筒は、
    　前後方向に延びる外容器と、
    　前記外容器の内部に配置されて前後方向に延び、内部にインキが収容される内容器と、を有し、
    　前記内容器は、前記ペン先ユニットへのインキの流動にともない萎み変形する、
    　請求項１から３のいずれか１項に記載の筆記具のインキカートリッジ。
11. 　前記破断部は、前記中心軸から偏心した位置で前記封止部を破断し、
    　前記インキ収容筒の前端部は、前記連結筒内に螺着により挿入される、
    　請求項３に記載の筆記具のインキカートリッジ。
12. 　前記貫通孔は、内径寸法に比べて前後方向の寸法が大きい、
    　請求項６に記載の筆記具のインキカートリッジ。
13. 　前記インキ収容筒は、
    　前記インキ収容筒の前端部に配置される環状のシール部材と、
    　前記インキ収容筒の前端部のうち、前記シール部材よりも前側に配置されるエア抜き部と、を有し、
    　前記連結筒は、前記シール部材が周方向の全周にわたって液密に嵌合する嵌合部を有し、
    　前記エア抜き部は、前記連結筒内に前記インキ収容筒の前端部が挿入されて、前記シール部材と前記嵌合部とが嵌合するまでの間、前記連結筒の内部と外部とを連通する、
    　請求項１から３のいずれか１項に記載の筆記具のインキカートリッジ。
14. 　請求項１から３のいずれか１項に記載の筆記具のインキカートリッジと、
    　前後方向に延びる筒状をなし、前記筆記具のインキカートリッジが内部に配置される軸筒と、を備える、
    　筆記具。

Images