WO2022219879A1 - 乗物用内外装品及び乗物用内外装品の製造方法 - Google Patents

Abstract

乗物用内外装品（１０）は、基材層（１１）と吸音層（１５）を有する。基材層（１１）は、熱可塑性合成樹脂（１２）を含んだ繊維成形体である。吸音層（１５）は、熱可塑性合成繊維（１８）を含んで交絡された繊維ウェブ（１６）と、熱可塑性合成繊維（１８）を含む不織布であるカバー層（１７）が積層される。基材層（１１）の一方の面に吸音層（１５）の繊維ウェブ（１６）が積層される。吸音層（１５）は、接着部（２１）と吸音部（２２）と圧着部（２３）を有する。接着部（２１）は、基材層（１１）と接している面の熱可塑性合成繊維（１８）と基材層（１１）の熱可塑性合成樹脂（１２）が熱接着された状態で固化されている。吸音部（２２）は、熱可塑性合成繊維（１８）が溶融せずに繊維ウェブ状態が維持されている。圧着部（２３）は、基材層（１１）と繊維ウェブ（１６）とカバー層（１７）が厚さ方向に圧縮された状態で熱圧着されている。

Description

乗物用内外装品及び乗物用内外装品の製造方法

　本開示は、乗物用内外装品及び乗物用内外装品の製造方法に関する。

　従来、乗物用内外装品は、インジェクション成形品、ポリエステル繊維素材、ガラス繊維基材等を用いて作られており、乗物の室内の静穏化等を目的として、内外装品の裏側に吸音材が取り付けられる場合がある。吸音材には、反毛やポリエステル繊維のフェルト、ポリプロピレンのメルトブローン繊維を主体としたフェルト等が用いられている。また、吸音材の取り付けは超音波によるスポット溶着等が用いられている。

　例えば、特許第６４４４５６９号公報には、ポリエチレンテレフタレートとポリプロピレンを含むニードルパンチ不織布、及びポリプロピレンを含むメルトブローン不織布をラミネートした、自動車用の吸音材が開示されている。

　乗物用内外装品に用いる吸音材は、水や砂、風圧等に対する保護の観点から、薄い不織布がラミネートされている。吸音材は、さらに毛羽立ちやほつれを防止するため、端末部において熱間プレスにより潰し加工が施される場合がある。この場合、内外装品の製造工程において、吸音材のカットされた端末部をあらかじめ潰し加工する前処理の工程が必要となる。また、成形された内外装品の本体に後加工として吸音材を接着（溶着）するため、スポット溶着が施される。しかしこの溶着した部分において吸音材が内外装品から剥がれる懸念があった。

　そこで、改良された乗物用内外装品と、その製造方法が必要とされていた。

　本開示の第１側面として、乗物用内外装品は、基材層と吸音層を有する。基材層は、熱可塑性合成樹脂を含んだ面状の繊維成形体である。吸音層は、熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブと、前記繊維ウェブの少なくとも一方の面において熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布であるカバー層とが積層されている。前記吸音層は、前記基材層の一方の面に前記繊維ウェブが積層される。吸音層は、接着部と、吸音部と、圧着部を有する。接着部は、前記基材層と接している面の前記熱可塑性合成繊維と前記基材層の前記熱可塑性合成樹脂が熱接着された状態で固化されている。吸音部は、前記接着部より前記基材層から離間した位置において、前記熱可塑性合成繊維が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持されている。圧着部は、前記基材層と、前記繊維ウェブ、前記カバー層とが、厚さ方向に圧縮された状態で熱圧着されている。

　したがって、乗物用内外装品は、基材層と吸音層の表面同士が所定箇所において接着されている。基材層と吸音層の接する面は、広範囲に亘り接着されている。乗物用内外装品は、積層された基材層と吸音層が一体的に成形され、接着部と圧着部を有することにより、基材層と吸音層が強固に接着されている。よって、吸音層の毛羽立ちやほつれ、乗物用内外装品からの剥がれを防止することができる。

　本開示の第２側面として、乗物用内外装品の前記圧着部は、積層された前記基材層と前記吸音層の平面において点状又は線状に複数個所設けられている。

　したがって乗物用内外装品は、このように圧着部の数を増やすことにより、吸音層のほつれや剥がれ防止の機能向上を図ることができる。また、吸音部における圧縮の程度を調整しつつ、製品の接着部の接着強度を維持できる。例えば、吸音部の圧縮の程度を小さくすることによって、基材層と吸音層の厚さをより厚くすることができる。この場合、吸音層の熱可塑性合成繊維の溶融が少なくなるため吸音部における接着部の接着強度は小さくなるが、吸音率の低下を抑制できる。一方で圧着部においては基材層と吸音層が好適に圧縮されて熱圧着し、接着強度が担保される。

　本開示の第３側面として、乗物用内外装品の前記圧着部は、前記吸音層の周縁に沿って点状若しくは線状に複数個所、又は全周に亘って設けられている。

　したがって、吸音層は周縁において基材層とより強固に熱圧着されるため、吸音層の端末から繊維がこぼれ落ちることを防止できる。さらに、吸音層の端末におけるほつれや剥がれの防止と、塵や砂、水などに対する製品保護の強化を図ることができる。

　本開示の第４側面として、乗物用内外装品の製造方法は、熱可塑性合成樹脂を含んだ面状の繊維成形体である基材層を加熱する加熱工程と、熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブと前記繊維ウェブの少なくとも一方の面において熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布であるカバー層とが積層された非加熱の吸音層を、加熱された前記基材層と積層させて、互いに接する面において前記基材層の前記熱可塑性合成樹脂と前記繊維ウェブの前記熱可塑性合成繊維を熱接着する接着工程と、積層した前記基材層と前記吸音層を、上型と下型を有する一対の成形型により両面から挟んで冷却しながら加圧し、成形する成形工程と、前記基材層と前記繊維ウェブ、前記カバー層を厚さ方向に圧縮し熱圧着させて圧着部を成形することにより、前記吸音層を前記基材層に圧着する圧着工程とを含み、前記接着工程と前記圧着工程は前記成形工程と併せて行うことができる。

　したがって接着工程において、熱可塑性合成樹脂を含む予め加熱された基材層と熱可塑性合成繊維を含む吸音層が、積層された状態で成形型により両面から加圧される。基材層の熱により、基材層に含まれる熱可塑性合成樹脂と吸音層に含まれる熱可塑性合成繊維が熱接着されるため、基材層と吸音層は接する表面同士が広範囲において接着される。また、成形工程において基材層と吸音層が一対の成形型に挟まれることにより、所定の形状に成形される。さらに、圧着工程において、吸音層の所定の箇所における基材層と繊維ウェブ、カバー層を厚さ方向に圧縮することにより、吸音層に含まれる熱可塑性合成繊維の一部が基材層の熱により溶融して潰れ、圧着部が成形される。これらの工程を合わせて行うことにより、吸音層を基材層に接着する加工と吸音層の潰し加工を、乗物用内外装品を成形する工程において一度に行うことができると共に、吸音材が剥がれ難い乗物用内外装品を成形することができる。

　本開示の第５側面として、乗物用内外装品の製造方法において、前記一対の成形型のうち一方の成形型は、凹部と凸部を有する。前記一対の成形型を閉じたときに対向する前記上型と前記下型の隙間が、凹部では前記基材層の厚さ寸法より大きく、凸部では前記基材層の厚さ寸法より小さくなる。前記凹部において前記熱可塑性合成繊維が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持される吸音部が成形され、前記凸部において前記圧着部が成形される。前記一対の成形型を開放した後、前記吸音部は前記繊維ウェブに含まれる繊維の反発力で厚さが前記圧着部の厚さよりも復元する。

　したがって、積層した基材層と吸音層が成形型により両面から挟まれると、吸音層は凸部に接する箇所において、基材層と共に圧縮される。そのため基材層の熱によって吸音層に含まれる熱可塑性合成繊維の一部が溶融し、圧着部が成形される。吸音層が凹部に接する箇所においては、吸音層の圧縮が相対的に小さく基材層の熱が伝わり難くなる。そのため吸音層に含まれる熱可塑性合成繊維が溶融せず、交絡された繊維ウェブ状態が維持される吸音部が成形される。これにより、一対の成形型を開放した後、吸音部は繊維ウェブに含まれる繊維の反発力で厚さが復元し、成形後も必要な吸音材の厚さを維持することができる。

　本開示の第６側面として、乗物用内外装品の製造方法における前記圧着工程は、前記圧着部に別の熱源による溶着がさらに施される。

したがって、乗物用内外装品の圧着部はさらに熱が加えられて溶着されるため、基材層と吸音層の接着結合をより強固にすることができる。

　本開示の構成または工程により、吸音材の前処理および内外装品成形後の後加工を施すことなく、内外装品の本体と吸音材が一体化された状態で成形された、吸音材が剥がれ難い乗物用内外装品と、その製造方法を提供することができる。

実施形態に係る乗物用内外装品の基材層と吸音層の積層状態を模式的に示す図である。 実施形態に係る製造工程において、基材層と吸音層を成形型の上型と下型の間に投入した状態を模式的に示す断面図である。 実施形態に係る製造工程において、基材層と吸音層が成形型により加圧、成形される状態を模式的に示す断面図である。 実施形態に係る製造工程において、成形型を開放した後の基材層と吸音層の状態を模式的に示す断面図である。 実施形態に係る乗物用内外装品の成形品を模式的に示す図である。 実施例１と比較例に係る乗物用内外装品の吸音率測定において、基材層と吸音層の積層状態を模式的に示す図である。 実施形態に係る乗物用内外装品の吸音性能を示す図である。

　以下に、本開示の実施形態について、図１から図７を用いて説明する。本実施形態の乗物用内外装品及び乗物用内外装品の製造方法として、乗物用内外装品のうち車両用外装材であるアンダーカバーを例示して説明する。本実施形態に係るアンダーカバー１０（車両用外装材）は、積層された基材層１１と吸音層１５を有する。

＜車両用外装材の構成＞
　図１、図５に示すように、基材層１１は、熱可塑性合成樹脂１２を含んだ多孔質繊維体であり、加熱後に冷間成形される面状の繊維成形体である。基材層１１は、繊維補強材を含んでいても良い。この基材層１１は、ニードルパンチによる乾式法、または湿式抄紙法など、公知の製造方法により製造できる。

　熱可塑性合成樹脂１２は、ポリプロピレンなどのオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミドなどが選択され得る。

　繊維補強材は、ガラス繊維、バサルト繊維、カーボン繊維のほか、ケナフ（洋麻）、竹等の天然繊維が適宜選択され得る。

　基材層１１の例としては、バインダー繊維として熱可塑性合成樹脂１２であるポリプロピレン繊維を用い、繊維補強材にガラス繊維を用いた繊維基材（ＬＷＲＴ＝Low Weight Reinforced Thermoplastics）が挙げられる。繊維補強材を含まない基材層１１の例として、ポリエチレンテレフタレート繊維と、低融点ポリエステル繊維などのバインダー繊維を用いたニードルパンチ不織布基材（成形不織布）が挙げられる。これらの基材は、意匠性・耐久性などの必要性に応じて、別途不織布やフィルムなどを貼り合わせた複層構造とすることができる。

　吸音層１５は、熱可塑性合成繊維１８を含んで交絡された面状の繊維ウェブ１６と熱可塑性合成繊維１８を含む面状の不織布であるカバー層１７を有している。吸音層１５は、基材層１１の一方の面に繊維ウェブ１６が積層され、さらにカバー層１７が積層された構成とされる。

　繊維ウェブ１６、カバー層１７における熱可塑性合成繊維１８として、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ポリエステル繊維等、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。繊維ウェブ１６は、例えばポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維などの積層フェルト、ニードルパンチマット、メルトブローン繊維体、これらの混合物などが挙げられる。また、シンサレート（登録商標）等の製品を用いても良い。ポリプロピレン繊維は、疎水性を有することから繊維間に水が侵入しにくく、使用中の吸音特性を維持することができるため好ましい。

　吸音層１５の密度、厚さは、車両に配される部位によって様々であってよい。密度が高く、厚い不織布を吸音層１５に用いた場合には、吸音層１５はより吸音性能を発揮する。また、繊維ウェブ１６に用いられる熱可塑性合成繊維１８は、繊維径、繊維長について適宜選択できる。

　カバー層１７は、熱可塑性合成繊維１８を含む面状の不織布であり、繊維ウェブ１６の基材層１１と接していない側の面に積層されている。カバー層１７は、吸音層１５の繊維ウェブ１６を保護する。カバー層１７として、ポリプロピレンのスパンボンド不織布が例示される。ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、化学的安定性に優れている。したがって、カバー層１７により吸音層１５の繊維ウェブ１６が保護された車両用外装材１０は、車外の大気、排気ガス、塩、腐食ガスなどへの曝露に対して高い耐久性を有する。カバー層１７に通気制御不織布を用いることにより、吸音層１５側からの音の入射に対して吸音性能を向上させることができる。

　カバー層１７は、繊維ウェブ１６の一方の面において積層された構成としても良く、両面においてそれぞれ積層された構成としても良い。カバー層１７を繊維ウェブ１６の両面に積層した構成とすることにより、基材層１１に対していずれの面が接しても良いため、左右を反転させた形状の車両用外装材１０に採用することができる。

　吸音層１５は、基材層１１と接している面において、接着部２１を有している。接着部２１は、基材層１１に含まれる熱可塑性合成樹脂１２と繊維ウェブ１６に含まれる熱可塑性合成繊維１８が熱接着された状態で固化されている。これにより、基材層１１と吸音層１５は互いに接する面同士が広範囲に亘って熱接着されている。接着部２１は、基材層１１と吸音層１５が接する面の全体において熱接着された構成としても良い。このように、面の広範囲に亘って接着することにより、吸音層１５をスポットで溶着する場合に比べてより剥がれ難い車両用外装材１０を成形することができる。

　吸音層１５は、吸音部２２と、圧着部２３を有している。吸音部２２は、接着部２１より基材層１１から離間した位置において、熱可塑性合成繊維１８が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持されている。圧着部２３は、基材層１１と、繊維ウェブ１６、カバー層１７とが、厚さ方向に圧縮された状態で熱圧着されている。具体的には、吸音層１５の繊維ウェブ１６とカバー層１７が熱溶融して潰れた状態で固化し、基材層１１と一体になって熱圧着されている。そのため、圧着部２３の厚さは、吸音部２２における基材層１１の厚さより薄くなっている。圧着部２３は、超音波溶着等さらに別の熱源による溶着が施された構成としても良い。これにより、圧着部２３においてより強固に圧着された車両用外装材１０を成形することができる。

　圧着部２３は、積層された基材層１１と吸音層１５の平面において点状又は線状に複数個所設けられている。さらに圧着部２３は、吸音層１５の周縁に沿って全周に亘って設けられている。したがって、吸音層１５の端部におけるほつれや剥がれを抑制し、塵や砂、水などの侵入を抑制できる。圧着部２３は、吸音層１５の周縁に沿って、点状若しくは線状に複数個所設けた構成としても良い。また、圧着部２３を細かい突起状の形状として複数個所に設けても良い。圧着部２３は製品の形状等に応じて任意の箇所に設けることができる。

　＜車両用外装材の製造工程＞
　次に、本実施形態に係る車両用外装材（乗物用内外装品）の製造方法を説明する。車両用外装材の製造方法は、加熱工程と、接着工程と、成形工程と、圧着工程とを有している。

　本実施形態において車両用外装材１０の成形に用いられる成形型３１，３２は一対であり、上型３１と下型３２を有している。下型３２には凹部３３と凸部３４が設けられている。凹部３３は、一対の成形型３１，３２を閉じたときに対向する上型３１と下型３２の隙間Ｌａが基材層１１の厚さ寸法より大きく、凸部３４は、上型３１と下型３２の隙間Ｌｂが基材層１１の厚さ寸法より小さい構成とされる（図３参照）。成形型の上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂは、基材層１１と吸音層１５の材質、目付に応じて適切な成形圧がかかるように設定される。例えば、凹部３３における隙間Ｌａを小さくしすぎた場合は、吸音層１５が過度に圧縮されて吸音性能が低下し、隙間Ｌａを大きくした場合は、基材層１１に対する成形圧が低下してしまう。したがって、必要な吸音性能を維持しながら適切な成形圧が掛かる範囲において隙間Ｌａの大きさが設定される。

　加熱工程では、基材層１１を遠赤ヒーター、オーブン等の方法で加熱する。

　次に、図２に示すように、繊維ウェブ１６とカバー層１７とが積層された非加熱の吸音層１５を、成形型の下型３２にセットする。セットされた吸音層１５は、カバー層１７が下型３２に接している。加熱された基材層１１は、成形型３１，３２の間において吸音層１５の上に積層される。基材層１１と吸音層１５は、互いに接する面において基材層１１の熱可塑性合成樹脂１２と繊維ウェブ１６の熱可塑性合成繊維１８が熱接着される。このようにして、積層された基材層１１と吸音層１５を互いに接する表面同士において熱接着させる工程が、本開示に係る「接着工程」に相当する。接着工程は、成形型３１，３２に吸音層１５をセットし基材層１１を積層させるため、成形工程と併せて行うことができる。

　図３に示すように、積層した基材層１１と吸音層１５を、成形型３１，３２により両面から挟んで冷却しながら加圧する。これにより、車両用外装材１０は所定の形状に成形される。凸部３４においては、上型３１と下型３２の隙間Ｌｂが基材層１１の厚さより小さいため、基材層１１、繊維ウェブ１６及びカバー層１７が、厚さ方向に圧縮される。これにより、隙間Ｌｂが十分に小さいときは、加熱された基材層１１の熱が繊維ウェブ１６及びカバー層１７に伝わり、これらに含まれる熱可塑性合成繊維１８の一部が熱溶融する。この熱溶融により吸音層１５は潰れた状態で基材層１１に熱圧着されて、圧着部２３が成形される。圧着部２３は、さらに超音波溶着が施されても良い。このように、圧着部２３に別の熱源による溶着を施すことによって、圧着がより強固になる。別の熱源による溶着は、例えば赤外線溶着、電熱ヒーター、熱風等による溶着であっても良い。

　さらに、凹部３３においては、上型３１と下型３２の隙間Ｌａが基材層１１の厚さより大きいため、吸音層１５の圧縮の割合は相対的に小さくなり、基材層１１の熱が吸音層１５に伝わり難くなる。これにより、熱可塑性合成繊維１８は溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持され、吸音部２２が成形される。凹部３３における上型３１と下型３２の隙間Ｌａに合わせて圧縮された吸音部２２は、図４に示すように、一対の成形型３１，３２を開放した後、繊維ウェブ１６に含まれる繊維の反発力で厚さが復元する。吸音部２２の厚さは、元の厚さよりは薄くなる。このようにして吸音部２２の厚さを一定以上に維持することにより、吸音性能の低下を抑制することができる。

　上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂの寸法は任意に設定される。下型３２の凹部３３における隙間Ｌａを小さくすると、吸音層１５の厚さの復元が小さくなると共に、基材層１１の厚さが薄くなる。一方で、凹部３３における隙間Ｌａを大きくすると、吸音層１５の圧縮が少なくなり、吸音層１５と基材層１１の厚さをより厚くできるが、接着部２１の接着強度は弱くなる。凹部３３における隙間Ｌａを過剰に大きくすると、基材層１１に掛かる成形圧の不足により、基材層１１を適正な形状に成形できない。そのため、必要な吸音性能を維持しながら適切な成形圧が掛かる範囲において隙間Ｌａの大きさが設定される。ここで、下型３２の凸部３４における隙間Ｌｂを十分に小さくして吸音層１５を圧縮すると、吸音層１５と基材層１１が強固に圧着された圧着部２３が成形される。このように圧着部２３を設けることにより、吸音層１５と基材層１１の接着強度を担保できる。

　上記のように、積層された基材層１１と吸音層１５を一対の成形型３１，３２で両面から挟み、加圧して車両用外装材１０を成形する工程が、本開示に係る「成形工程」に相当する。基材層１１と吸音層１５を厚さ方向に圧縮し、圧着部２３を成形する工程が本開示に係る「圧着工程」に相当する。圧着工程は、成形型３１，３２により挟まれた基材層１１と吸音層１５に対して圧着部２３を成形するため、成形工程と併せて行うことができる。そのため、吸音層１５を基材層１１に熱接着する加工、吸音層１５を潰して基材層１１に熱圧着する加工、及び車両用外装材１０の成形を一度に行うことができる。

　本実施形態に係る車両用外装材の製造工程により、基材層１１と吸音層１５が一体的に成形された車両用外装材１０を得る。車両用外装材１０は、図５に示すように上下の向きを反転させた状態で、アンダーカバーとして車両に取り付けられる。

　このように、上記実施形態に係る車両用外装材１０によれば、熱可塑性合成樹脂１２を含む面状の繊維成形体である基材層１１と、熱可塑性合成繊維１８を含む面状の繊維ウェブ１６とカバー層１７を有する吸音層１５が積層され、これらの表面同士が所定箇所において熱接着されている。接着部２１においては、吸音層１５の基材層１１と接している面における熱可塑性合成繊維１８と基材層１１の熱可塑性合成樹脂１２が熱接着された状態で固化している。これにより、基材層１１と吸音層１５の接する面は広範囲に亘り接着されている。車両用外装材１０は、基材層１１と、繊維ウェブ１６、カバー層１７とが、厚さ方向に圧縮された状態で熱圧着された圧着部２３が成形されていると共に、熱可塑性合成繊維１８が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持された吸音部２２が成形されている。このように、積層された基材層１１と吸音層１５が一体的に成形された製品は、接着部２１と圧着部２３を有することにより、基材層１１と吸音層１５が強固に熱接着されている。よって、吸音層１５の毛羽立ちやほつれ、車両用外装材１０からの剥がれを防止することができる。

　車両用外装材１０は、圧着部２３が基材層１１と吸音層１５の平面における複数個所に、点状又は線状に設けられている。このように圧着部２３の数を増やすことにより、吸音層１５のほつれや剥がれ防止の機能向上を図ることができる。また、吸音部２２における圧縮の程度を調整しつつ、製品の接着部２１の接着強度を維持できる。例えば、吸音部２２の圧縮の程度を小さく、すなわち成形型３１，３２の凹部３３における隙間Ｌａを大きくすることによって、基材層１１と吸音層１５の厚さをより厚くすることができる。この場合、吸音層１５の熱可塑性合成繊維１８の溶融が少なくなるため吸音部２２の接着部２１の接着強度は小さくなるが、吸音率の低下を抑制できる。一方で圧着部２３においては基材層１１と吸音層１５が好適に圧縮されて熱圧着し、接着強度が担保される。

　圧着部２３を吸音層１５の周縁に沿って点状若しくは線状に複数個所設けることにより、吸音層１５は周縁において基材層１１とより強固に熱圧着される。したがって、吸音層１５の端末におけるほつれや剥がれの防止と、塵や砂、水などに対する製品保護の強化を図ることができる。さらに、圧着部２３を吸音層１５の周縁に沿って全周に亘って設けることにより、吸音層１５の端末から繊維がこぼれ落ちることを防止できる。

　上記実施形態に係る車両用外装材１０の製造工程は、接着工程において、熱可塑性合成樹脂１２を含む予め加熱された基材層１１と熱可塑性合成繊維１８を含む吸音層１５が、積層された状態で成形型３１，３２により両面から加圧される。基材層１１の熱により、基材層１１に含まれる熱可塑性合成樹脂１２と吸音層１５に含まれる熱可塑性合成繊維１８が熱接着されるため、基材層１１と吸音層１５は接する表面同士が広範囲において接着される。成形工程において、基材層１１と吸音層１５が一対の成形型３１，３２に挟まれ、所定の形状に冷間成形される。さらに、圧着工程において、吸音層１５の所定の箇所における基材層１１と繊維ウェブ１６、カバー層１７を厚さ方向に圧縮される。圧縮された箇所は、吸音層１５に含まれる熱可塑性合成繊維１８の一部が基材層１１の熱により溶融して潰れ、圧着部２３が成形される。これらの工程を合わせて行うことにより、吸音層１５を基材層１１に接着する加工と吸音層１５の潰し加工を、車両用外装材１０を成形する工程において一度に行うことができると共に、吸音層１５が剥がれ難い車両用外装材１０を成形することができる。

　成形型の下型３２は、凹部３３と凸部３４を有している。凹部３３においては、一対の成形型３１，３２を閉じたときに対向する上型３１と下型３２の隙間Ｌａが基材層１１の厚さ寸法より大きく、凸部３４においては、隙間Ｌｂが基材層１１の厚さ寸法より小さくなる。積層した基材層１１と吸音層１５が成形型３１，３２により両面から挟まれると、吸音層１５は凸部３４に接する箇所において、基材層１１と共に圧縮される。そのため基材層１１の熱によって吸音層１５に含まれる熱可塑性合成繊維１８の一部が溶融し、圧着部２３が成形される。吸音層１５が凹部３３に接する箇所においては、吸音層１５の圧縮が相対的に小さく基材層１１の熱が伝わり難くなる。そのため吸音層１５に含まれる熱可塑性合成繊維１８が溶融せず、交絡された繊維ウェブ状態が維持される吸音部２２が成形される。これにより、一対の成形型３１，３２を開放した後、吸音部２２は繊維ウェブ１６に含まれる繊維の反発力で厚さが復元し、成形後も必要な吸音層１５の厚さを維持することができる。

　成形型３１，３２は、基材層１１と吸音層１５の素材や目付に応じて上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂの寸法が設定される。適切な範囲において隙間Ｌａ，Ｌｂの寸法を設定することにより、吸音層１５が過度に圧縮され吸音性能が低下するのを防ぐと共に、基材層１１に対して適切な成形圧をかけることができる。そのため、十分な吸音性能と圧着の強度が維持された車両用外装材１０を成形することができる。

　車両用外装材１０の圧着部２３は、さらに超音波溶着等の別の熱源によって溶着されることにより、基材層１１と吸音層１５の接着結合をより強固にすることができる。そのため、基材層１１、吸音層１５の目付のバラつき、形状などがあっても、圧着が不十分な部位が生じるのを抑制することができる。

　上記実施形態に係る車両用外装材１０の構成、製造工程により、吸音層１５の前処理および外装材成形後の後加工を施すことなく、車両用外装材１０の基材層１１と吸音層１５が一体化された状態で成形された、吸音層１５が剥がれ難い車両用外装材１０と、その製造方法を提供することができる。

　以下、実施例及び比較例によって本開示を具体的に説明する。

　［実施例１］
　基材層１１として、ガラス繊維とポリプロピレン繊維のニードルパンチによる繊維基材に、別途ニードルパンチ不織布を貼り合わせた複層繊維基材である、車両用アンダーカバー材（目付量１４００ｇｓｍ）を用いた。吸音層１５として、ポリプロピレン繊維のメルトブローン繊維を主体とした吸音材（目付量２３０ｇｓｍ、厚さ約２５ｍｍ）を用いた。吸音層１５の両面には、カバー層１７としてポリプロピレンのスパンボンド不織布がラミネートされている。
　基材層１１のみ表面温度２１０℃に加熱し、非加熱の吸音層１５を積層させ、常温で圧縮、成形した。４か所に圧着部２３を設けた。
　成形型の上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂを、凹部３３において８ｍｍ、凸部３４において２ｍｍとした。
　車両用外装材１０の成形品は、吸音部２２において基材層１１の厚さ約５ｍｍ＋吸音層１５の厚さ約１５ｍｍとなった。また、圧着部２３の厚さは、基材層１１と吸音層１５が圧縮されて２ｍｍとなり、適切に圧着されている。

　［比較例］
　基材層４１として、実施例１と同様の車両用アンダーカバー材を用い、厚さ７ｍｍに成形した。吸音層４５として、ポリプロピレンのメルトブローン繊維を主体とした吸音材（目付量１５０ｇｓｍ、厚さ約１３ｍｍ）を用いた（図６参照）。吸音層４５の両面には、カバー層１７としてポリプロピレンのスパンボンド不織布がラミネートされている。
　吸音層４５は基材層４１に積層させたのみで、圧着部は設けない。積層された繊維層４０（吸音部）の厚さは、基材層４１の厚さ７ｍｍ＋吸音層４５の厚さ約１３ｍｍである。

　＜吸音率について＞
　実施例１に係る車両用外装材１０の成形品と比較例に係る繊維層４０の吸音率を測定して比較する。具体的には、アンダーカバーとしてのロードノイズの吸音性能評価を想定して、基材層１１，４１側から吸音率を測定する。この吸音率は、ＪＩＳ　Ａ　１４０９の基準に従い、残響室法吸音率によって測定される。図６に示すように、スペーサー５１を配置して、基材層１１，４１の表面の位置を床面から２０ｍｍの高さに設定した。図７は、実施例１と比較例のそれぞれの吸音率を示したものである。実施例１の音域ごとの吸音率は、音域３１５～２５００Ｈｚにおいて比較例と同じ傾向で推移する。実施例１は、音域３１５～６３０Ｈｚ、及び４０００～６３００Ｈｚにおいて比較例より高い吸音率を示している。実施例１の吸音率は、８００Ｈｚから３１５０Ｈｚにおいて、比較例に対して１３％程度までの低下に収まっており、８００～１０００Ｈｚにおいては８％程度の低下にとどまっている。よって、実施例１に係る車両用外装材１０の吸音性能の大幅な低下は抑えられている。

　［実施例２］
　基材層１１として、ポリエチレンテレフタレート繊維と、低融点ポリエステル繊維などのバインダー繊維を用いたニードルパンチ不織布基材（成形不織布）である車両用アンダーカバー材（目付量１２００ｇｓｍ）を用いた。吸音層１５として、ポリプロピレン繊維のメルトブローン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維のフェルト（目付量３４０ｇｓｍ、厚さ約２０ｍｍ）を用いた。吸音層１５の両面にはカバー層１７として、ポリプロピレンのスパンボンド不織布がラミネートされている。
　基材層１１のみ表面温度２１０℃に加熱し、非加熱の吸音層１５を積層させ、常温で圧縮、成形した。４か所に圧着部２３を設けた。
　成形型の上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂを、凹部３３において５．５ｍｍ、凸部３４において１．５ｍｍとした。
　車両用外装材１０の成形品は、吸音部２２において基材層１１の厚さ約３．５ｍｍ＋吸音層１５の厚さ約１３ｍｍとなった。圧着部２３の厚さは、基材層１１と吸音層１５が圧縮されて１．５ｍｍとなり、適切に圧着されている。

　［実施例３］
　基材層１１、吸音層１５として、実施例２と同様の構成である車両用アンダーカバー材（目付量１２００ｇｓｍ）とフェルト（目付量３４０ｇｓｍ、厚さ約２０ｍｍ）を用いた。吸音層１５の両面にはカバー層１７として、ポリプロピレンのスパンボンド不織布がラミネートされている。
　基材層１１のみ表面温度２１０℃に加熱し、非加熱の吸音層１５を積層させ、常温で圧縮、成形した。４か所に圧着部２３を設けた。
　成形型の上型３１と下型３２の隙間Ｌａ，Ｌｂを、凹部３３において４ｍｍ、凸部３４において１．５ｍｍとした。
　車両用外装材１０の成形品は、吸音部２２において基材層１１の厚さ約２．５ｍｍ＋吸音層１５の厚さ約１０ｍｍとなった。圧着部２３の厚さは、基材層１１と吸音層１５が圧縮されて１．５ｍｍとなり、適切に圧着されている。

　本開示に係る乗物用内外装品は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本開示の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。

　上記実施形態に係る乗物用内外装品は、乗物用内装品及び乗物用外装品いずれも含み得るものである。乗物用内装品は、例えば、ラゲージトリム、ドアトリム、リヤパーセルシェルフ、デッキボード、トランクトリム、ピラーガーニッシュ、ルーフトリムなどに適用し得る。また、乗物用外装品は、例えば、車両用床下のアンダーカバー（エンジンアンダーカバー、フロアカバーなど）、ホイールハウスプロテクターに適用し得る。

　添付の図面を参照して詳細に上述した種々の実施例は、本発明の代表例であって本発明を限定するものではない。詳細な説明は、本教示の様々な態様を作成、使用および／または実施するために、当業者に教示するものであって、本開示の範囲を限定するものではない。更に、上述した各付加的な特徴および教示は、改良された乗物用内外装品および／またはその製造方法と使用方法を提供するため、別々にまたは他の特徴および教示と一緒に適用および／または使用され得るものである。

Claims (6)

1. 　乗物用内外装品であって、
   　熱可塑性合成樹脂を含んだ面状の繊維成形体である基材層と、
   　熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブと、前記繊維ウェブの少なくとも一方の面において熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布であるカバー層とが積層された吸音層と、を有し、
   　前記吸音層は、
   　前記基材層の一方の面に前記繊維ウェブが積層されるとともに、前記基材層と接している面の前記熱可塑性合成繊維と前記基材層の前記熱可塑性合成樹脂が熱接着された状態で固化された接着部と、
   　前記接着部より前記基材層から離間した位置において、前記熱可塑性合成繊維が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持された吸音部と、
   　前記基材層と、前記繊維ウェブ、前記カバー層とが、厚さ方向に圧縮された状態で熱圧着された圧着部と、を有する乗物用内外装品。
2. 　請求項１に記載の乗物用内外装品であって、
   　前記圧着部は、積層された前記基材層と前記吸音層の平面において点状又は線状に複数個所設けられている、乗物用内外装品。
3. 　請求項１または請求項２に記載の乗物用内外装品であって、
   　前記圧着部は、前記吸音層の周縁に沿って点状若しくは線状に複数個所、又は全周に亘って設けられている、乗物用内外装品。
4. 　乗物用内外装品の製造方法であって、
   　熱可塑性合成樹脂を含んだ面状の繊維成形体である基材層を加熱する加熱工程と、
   　熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブと前記繊維ウェブの少なくとも一方の面において熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布であるカバー層とが積層された非加熱の吸音層を、加熱された前記基材層と積層させて、互いに接する面において前記基材層の前記熱可塑性合成樹脂と前記繊維ウェブの前記熱可塑性合成繊維を熱接着する接着工程と、
   　積層した前記基材層と前記吸音層を、上型と下型を有する一対の成形型により両面から挟んで冷却しながら加圧し、成形する成形工程と、
   　前記基材層と前記繊維ウェブ、前記カバー層を厚さ方向に圧縮し熱圧着させて圧着部を成形することにより、前記吸音層を前記基材層に圧着する圧着工程と、を含み、
   　前記接着工程と前記圧着工程は前記成形工程と併せて行うことができる、乗物用内外装品の製造方法。
5. 　請求項４に記載の乗物用内外装品の製造方法であって、
   　前記一対の成形型のうち一方の成形型は、前記一対の成形型を閉じたときに対向する前記上型と前記下型の隙間が前記基材層の厚さ寸法より大きい凹部と、前記隙間が前記基材層の厚さ寸法より小さい凸部とを有しており、
   　前記凹部において前記熱可塑性合成繊維が溶融せずに交絡された繊維ウェブ状態が維持される吸音部が成形され、前記凸部において前記圧着部が成形され、
   　前記一対の成形型を開放した後、前記吸音部は前記繊維ウェブに含まれる繊維の反発力で厚さが前記圧着部の厚さよりも復元する、乗物用内外装品の製造方法。
6. 　請求項４または請求項５に記載の乗物用内外装品の製造方法であって、
   　前記圧着工程は、前記圧着部に別の熱源による溶着がさらに施される、乗物用内外装品の製造方法。

Images