WO2022130918A1

WO2022130918A1 - 美容用積層シート

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Publication number: WO2022130918A1
Application number: PCT/JP2021/043026
Authority: WO
Inventors: 真里上田; 優人南; 勇人榎本
Original assignee: パナソニックＩｐマネジメント株式会社
Priority date: 2020-12-18
Filing date: 2021-11-24
Publication date: 2022-06-23
Also published as: EP4205961A1; CN116710271A; EP4205961A4; US20230255859A1; JPWO2022130918A1

Abstract

本発明の一局面は、厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下であり、且つ、透水性を有する、薄膜シートと、吸水性を有する支持体とを備え、前記支持体の含水可能量は、支持体１ｇに対し４．４ｇ以上である、美容用積層シートに関する。

Description

美容用積層シート

　本発明は、美容用積層シートに関する。

　美容目的で、美容成分をシート状基材に含浸させたフェイスマスクで、簡便に顔をパックすることはよく知られる美容方法である。例えば、特許文献１では、化粧液を含有する液体含浸基材と液体遮断フィルムが重ね合わされていることを特徴とするフェイスマスクが開示されている。

　また、近年、ナノファイバーで構成されるシートを、医療分野や化粧料分野に応用することも報告されている。例えば、特許文献２では、皮膚に対する密着性が高く、皮膚が視認できる透明な被膜を形成する方法として、（１）１種または２種以上の油剤を２質量％以上含有するシート透明化剤を皮膚に施す工程（１）、及び、（２）水不溶性ポリマーを主成分とする白色のナノファイバーシートを工程（１）適用後の皮膚に転写する工程（２）を有するナノファイバーシートを用いて皮膚表面に被膜を形成する方法が開示されている。

　また、特許文献３には、優れた貼付性を有するフィブロインナノ薄膜として、フィブロインを含有し、水に対する接触角が３０°以上である、フィブロインナノ薄膜が開示されている。

　上記特許文献１に記載されているようなフェイスマスクは、不織布等を基材として化粧成分を含浸させ、顔に貼り付けるようになっている。しかし、このような従来のフェイスマスクは着用可能時間が約５～１５分程度と限られており、長時間着用したままにすると、不織布が乾燥すると肌から水分を吸収し、表面から蒸発させてしまうため、肌の元々の水分も奪われてしまうという難点があった。

　また、前記フェイスマスクは、顔全体を覆う形状となっているため、不自然な外観となり、かつ、フェイスマスクを着けたまま動くと重みでマスクが剥がれるおそれもあるため、着用中は動きが制限されてしまう。さらに、顔全体に貼るタイプとなっているので、化粧成分の浸透はどうしても広く浅くなってしまい、例えば、目元や口元等に局所的に集中して美容成分を浸透させることが難しかった。

　一方で、特許文献２および特許文献３に記載されている薄膜ナノシートは、非常に薄いことから、シワ等を生じさせることなく肌に貼り付けることが難しい。よって、貼り付け操作が煩雑であり、ユーザがナノシートをうまく肌に貼り付けることができないという問題があった。例えば、特許文献３では、皮膚表面を化粧等で湿らせてから薄膜を貼付しているが、そのような方法ではナノシートが水分でよれやすく、うまく貼り付けることができないことがわかっている。

　本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、長時間使用や局所集中使用が可能であり、着用中の活動にも支障がなく、ユーザが比較的容易な操作で被貼付面に貼り付けることができる美容用積層シートを提供することを主な目的とする。

特開２００３－１３５１４６号公報特開２０１８－１７７８０４号公報特開２０１９－１４２２３８号公報

　本発明者等は、鋭意検討した結果、下記構成の美容用積層シートによって上記課題を解消し得ることを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。

　すなわち、本発明の一つの局面に関する美容用積層シートは、厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下であり、且つ、透水性を有する薄膜シートと、前記薄膜シートに積層され、吸水性を有する支持体とを備え、前記支持体の含水可能量は、支持体１ｇに対し４．４ｇ以上であることを特徴とする。

図１は、本発明の実施形態に係る美容用積層シートの貼り付け方法の一例を示す概略断面図である。図２は、実施例の試験例１の試験結果を示すグラフである。図３は、実施例の試験例２で行った試験において、皮膚インピーダンスを測定した箇所を示す概略図である。

　以下、本発明に係る実施形態について具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。

　（美容用積層シート）
　上述の通り、本実施形態の美容用積層シートは、厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下であり、且つ、透水性を有する薄膜シートと、前記薄膜シートに積層され、吸水性を有する支持体とを備え、前記支持体の含水可能量は、支持体１ｇに対し４．４ｇ以上である。もしくは、支持体の面積で計算する場合には、１０ｍｇ／ｃｍ^２以上１７ｍｇ／ｃｍ^２以下である。

　このように吸水性があり、含水可能量が前記範囲である支持体を備えることで、従来のフェイスマスクと比べても長い時間の間、美容成分を所望する箇所に浸透させることができる。また、本実施形態の薄膜シートは厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下であるため、肌などに貼り付けていても違和感もなく、自重で剥がれ落ちる恐れもない。よって、シートを貼り付けている間も活動は特に制限されず、シートを貼り付けたまま、日常活動を行うことができるという利点もある。

　よって、本発明によれば、長時間使用や局所集中使用が可能であり、着用中の活動にも支障がなく、ユーザが比較的容易な操作で被貼付面に貼り付けることができる美容用積層シートを提供できる。

　本実施形態の美容用積層シート（以下、単に「積層シート」とも称す）は、少なくとも薄膜シートと支持体を備えている。

　本実施形態の美容用積層シートは一枚シートとなっていてもよいし、所望の大きさで切り取り線の入った、切り離しパッチタイプのシートとすることもできる。

　本実施形態の積層シートの各構成要素について、より詳細に説明する。

　（薄膜シート）
　本実施形態の美容用積層シートが備える薄膜シートは、肌に貼着するための厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下のシートである。薄膜シートの厚みが前記範囲であると、肌等の被貼付面に貼着した際に、違和感が無いという利点がある。前記薄膜シートの厚みは、さらに１００ｎｍ～１０００ｎｍであることがより好ましい。

　また、前記薄膜シートは美容用目的で使用されるため、美容成分を浸透できる、透水性を有する薄膜シートである。本実施形態において、透水性を有するとは、水を通す性質を有することを意味し、具体的には、水分子が透過可能な微細構造を持つことを意味する。薄膜シートが透水性を有することにより、水（液体美容成分）を後述する支持体の上から滴下し、薄膜シートを透過し肌に到達させることができる。

　本実施形態の薄膜シートは、人の肌に貼り付けても違和感が無く、生体適合性を有するシート状の部材であることが好ましい。また、薄膜は、通常、無色透明、または半透明であることが好ましい。

　前記薄膜シートの平面視形状は特に制限されず、薄膜シートの貼付部位の形状や、用途に応じて適宜選択される。なお、薄膜シートには貼付部位の形状に適合するように、外周部および／または面内に切り込みが形成されてもよい。

　ここで、薄膜シートは、スピンコート法もしくはロールツーロール法、ＬＢ法（ラングミュア・ブロジェット法）等で形成されるシートであってもよく、電界紡糸法等で生成されるファイバーが折り重なるファイバーシート等であってもよい。

　また、本実施形態の薄膜シートは細孔を有していることが好ましい。それにより、上述した透水性を十分に確保できると考えられる。前記細孔の孔径は、１ｎｍ以上１００μｍ以下であることが好ましい。ここで、細孔の孔径とは、前記微細孔の直径の平均値をさす。

　本実施形態の薄膜シートにおいて、「細孔」は、透水性を高めるため、貫通孔であることが好ましい。また、前記細孔の形状は、円形、楕円形、多角形（ハニカム構造を含む）、それらが不規則に混在する微細構造等の形状であってもよいが、加工性の観点から、円形であることが好ましい。

　前記細孔の最小孔径が１ｎｍ以上であることにより、水（分子）を十分に透過させることが可能となる。また、前記細孔の最大孔径が１００μｍ以下であることにより、十分な水を保持することが可能となると考えられる。すなわち、上述したような孔径を有する細孔を備えることによって、本実施形態の薄膜シートは、美容成分を確実に透過させ、かつ、表面からの美容成分の蒸発を防ぐ機能を合わせもつため、さらに長時間保持することができるという利点がある。

　前記細孔の孔径のより好ましい範囲は、１ｎｍ以上１０μｍ以下である。

　本実施形態の薄膜シートにおける開孔率（薄膜シートにおける細孔の占める割合）は、面積率において１％以上１０％以下である。

　さらに、本実施形態において薄膜シートは親水性であることが好ましい。ここで、親水性であるとは、前記薄膜シートの水との接触角が９０°以下であることをいう。より好ましい接触角は５０℃以下である。薄膜シートが親水性であることによって、薄膜シートの表面に水溶性の層が形成されやすく、美容成分をより長時間保持することができると考えられる。

　本明細書における水との接触角は、θ／２法あるいは液滴の左右端点と頂点を結ぶ直線の、固体表面に対する角度を求め、これを２倍することによって測定した値とすることができる。

　特に、水の肌に対する接触角が薄膜シートの接触角よりも大きく、その差分が３０～１２０°程度であると、美容成分をより確実に肌へ導入することができると考えられる。

　前記薄膜シートを構成する材料としては、生体適合性を有する材料であれば特に限定はないが、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらの共重合体に代表されるポリエステル類；ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールに代表されるポリエーテル類；ナイロン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、またはこれらの塩に代表されるポリアミド類；プルラン、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コーンスターチに代表される多糖類またはこれらの塩；アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸に代表されるシリコーン類；アクリル酸アルキル、アクリル酸シリコーン、アクリル酸アミドや、これらの共重合体に代表されるアクリル酸類；ポリビニルアルコール；ポリウレタン；ポリカーボネート；ポリ酸無水物；ポリエチレン；ポリプロピレン；多孔性層コーティングシート、ナノファイバーシート、等が挙げられる。

　これらの中でも、薄膜シートの材料が、ポリ乳酸、セルロース（例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等）、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸、コーンスターチ、またはポリウレタンであると、生体適合性や入手容易性、取り扱い性等が良好になるというメリットがあるため好ましい。生体適合性、入手容易性、および取り扱い性の観点で、さらにこれらの中でも特に好ましいのは、ポリ乳酸、セルロース（例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等）、デンプン、キチン、キトサン、またはポリウレタンである。

　また、好ましくは、親水性の薄膜シートとするために、ポリ乳酸、セルロース（例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等）、デンプン、キチン、キトサン等の材料を使用することが好ましい。

　（支持体）
　また、本実施形態の積層シートは、支持体を有する。支持体は、上述の薄膜シートの表面に配置される板状の部材であり、上述の薄膜シートを保護し、かつ、薄膜シートに美容成分を保持させるために用いられる。

　本実施形態で使用される支持体は、吸水性を有している。吸水性を有するとは、内部に水を保持可能な構造（例えば孔等）を有していることを意味する。このような支持体を備える積層シートであれば、上述した薄膜シート側を肌に張り付け、支持体側から保湿や美白などのための美容液を散布し、透水させることで、肌へ十分な美容成分を長時間にわたって届けることができる。

　また、前記支持体の含水可能量は、支持体１ｇに対し４．４ｇ以上である。上限値は、特に限定はないが、薄膜シートおよび肌からの水分を奪うことを防ぐ観点から、支持体１ｇに対し１２ｇ以下であることが好ましい。ここで、含水可能量とは含水可能な量を意味し、支持体の含水前後の重量差を電子天秤等により秤量し、支持体１ｇに対する重量差に換算することによって測定できる値である。

　もしくは、含水可能量は、支持体の含水前後の重量差を支持体の断面積で除することによって測定できる値であってもよく、その場合、前記含水可能量は１０ｍｇ／ｃｍ^２以上１７ｍｇ／ｃｍ^２以下となる。

　含水可能量が前記範囲であることによって、本実施形態の支持体は、支持体上から水（液体美容成分）を散布・塗布した場合に、水をはじくことも、吸い過ぎることもなく、適度な量を肌へ届けることができる。

　前記含水可能量のより好ましい範囲は、支持体１ｇに対し１０ｇ以上、１２ｇ以下程度である。

　支持体の形状は薄膜シートの一方の面を覆うことが可能であれば特に制限されない。支持体の平面視形状は薄膜シートと同じであってもよく、薄膜シートより大きくてもよい。例えば、薄膜シートから剥離する際につかむためのつかみシロ等を有していてもよい。

　また、支持体の厚みは、５０～２０００μｍが好ましく、１００～１５００μｍがより好ましい。支持体の厚みが前記範囲であると、支持体を薄膜シートから剥離する際に、指やピンセット等で支持体を掴みやすく、また、支持体に適当な柔軟性が付与されるため、剥離しやすいという利点がある。

　本実施形態の支持体は、内部に水を保持可能な吸水性を有する材料から構成される。また、さらに親水性を有する材料によって、構成されていることが好ましい。ここで、親水性を有するとは、上述の薄膜シートで述べた親水性と同義である。

　支持体の材料としては、上述したような特性有する材料であれば特に限定なく使用することができるが、例えば、親水性ポリマー、紙（セルロース）、不織布などが挙げられる。より具体的には、親水性ポリマーとしては、ポリオレフィン（例えば、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等）、エチレン酢酸ビニル樹脂、合成ゴム、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、これらの合成樹脂等が挙げられ、不織布としては、ガラス繊維、セルロース、レーヨン、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリル繊維、ビニロン、アラミド繊維、これらの合成繊維等の不織布が挙げられる。前記以外にも、多孔質フィルム、ナノファイバーシート等も使用可能である。親水性、入手容易性、および取り扱い性の観点で、これらの中でもより好ましいのは、紙（セルロース）、親水ポリマーとしては、ポリオレフィン（ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン）、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、これらの合成樹脂等が挙げられ、不織布としては、セルロース、レーヨン、ポリエステル、これらの合成繊維等の不織布、ナノファイバーシート等が挙げられる。

　これらの中でも、前記可能含水量が支持体１ｇに対し４．４ｇ以上の材料としては、紙（セルロース）、ポリオレフィン（ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン）、共重合ポリアミド樹脂、共重合ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、これらの合成樹脂等の親水性ポリマーが好ましく用いられる。

　また、前記可能含水量が支持体１ｇに対し１０ｇ以上の材料としては、セルロース、レーヨン、ポリエステル、これらの合成繊維等の不織布、およびナノファイバーシート等の不織布が好ましく例示される。

　上述した材料の中でも、特に、紙（セルロース）、不織布を使用することが好ましい。これらは吸水性（含水量）および親水性に特に優れているためである。支持体が親水性に優れるということは、当該支持体が水（保湿液）を弾かず、保湿液が支持体上に広く均一に濡れ広がることを助け、さらに吸水性が高いものとなるということである。このような特性を有する支持体を用いることにより、本実施形態の美容用積層シートにおいて、薄膜シートと肌の間に投入する美容成分を含む液体（保湿剤等）を十分量で保持することができる。

　前記支持体は、光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、着色されていてもよい。

　また、支持体は可撓性を有することが好ましく、その弾性率は、１００～１０００００ＭＰａが好ましく、１００～５０００ＭＰａがより好ましい。当該弾性率は、静的試験法、横振動法、超音波法のいずれかにより測定される値である。弾性率測定に関するＪＩＳ規格は、ＪＩＳ　Ｚ２２８０、ＪＩＳ　Ｒ１６０２、ＪＩＳ　Ｒ１６０５であり、弾性率は、これらのいずれかに準拠して測定した値である。より具体的には、本明細書における弾性率は、静的試験法(曲げ試験)、横振動法、片持ち共振法、超音波法(パルスエコーオーバーラップ法)に基づく弾性率測定装置によって測定した値とすることができる。支持体の弾性率が当該範囲であると、薄膜シートから剥離する際に破断等が生じ難く、また適度に変形可能となる。

　（美容用積層シートの製造方法）
　本実施形態の美容用積層シートの製造方法は、特に限定はされないが、上述の薄膜シートと、上述の支持体を準備し、当該支持体を、先に作製した薄膜シートに面するように積層することによって製造することができる。本実施形態の積層シートでは薄膜シートが非常に薄いため、支持体を単に積層するだけで分子間力によって薄膜シートに貼付することができ、接着剤などは不要である。

　（美容用積層シートの貼り付け方法）
　次に、美容用積層シートが備える薄膜シートを被貼付面に貼り付ける方法について、図１を参照しつつ説明する。なお、以降の説明において、各図面の符号はそれぞれ：１　薄膜シート、２　支持体、１０　美容用積層シートを示す。

　図１（Ａ）～図１（Ｃ）は、本実施形態の美容用積層シートの貼り付け方法の一例を示す断面図である。ただし、本実施形態の積層シートの使用方法は、以下の方法に限定されるわけではない。

　まず、図１（Ａ）に示すような、薄膜シート１と支持体２が積層された積層シート１０を、薄膜シート１が被貼付面（肌）と接するようにして、所望の被貼付面に乗せる。そして、支持体側から、化粧水、乳液、美白成分等の美容成分（液体）を全体に散布する。散布の方法には限定はなく、スプレー、霧吹き、直接塗布、直接滴下、スポイトやスポンジ等の機構を介した滴下等によって散布できる。

　あるいは、前記のように被貼付面に積層シートを載せてから美容成分を散布する以外にも、前記美容成分（液体）が入った容器などに積層シートを浸漬させてから、被貼付面に積層シートを載せてもよい。

　本実施形態の支持体２は、吸水性を有し、かつ、上述したような含水可能量を備えるため、美容成分は、図１（Ｂ）に示すように支持体２に浸透し、薄膜シート１にまで浸透する。

　その後、支持体２を薄膜シート１から剥離する。本実施形態の積層シート１０によれば、支持体２を除去した後でも、図１（Ｃ）に示すように、薄膜シート１の載っている箇所に、長時間にわたって、美容成分を浸透させることが可能となる。また、本実施形態の薄膜シート１は非常に薄膜であるため、シートの着用中のユーザの活動にも支障がないという優れた利点がある。

　本実施形態のシートを肌に付着させ、美容成分を浸透させることができる時間には特に限定はなく、美容成分の種類、量、ユーザの活動等に合わせて適宜設定できる。

　本実施形態の積層シートで使用できる美容成分は、液体状であれば特に限定はなく、保湿成分、美白成分等の美容成分については公知のものを特に限定なく使用することができる。

　例えば、保湿成分は、皮膚の角質層に潤いやバリア機能を持たせる機能を持つことが好ましい。また、皮膚から分泌される皮脂の機能を補助する役割を果たす成分であることがより好ましい。保湿液（保湿成分を含む液体）は、必要に応じて、保湿成分を分散させるための溶媒を含有していてもよい。

　保湿成分は、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、ＥＵ化粧品規制（Ｃｏｓｍｅｔｉｃｓ　Ｄｉｒｅｃｔｉｖｅ　７６／７６８／ＥＥＣ）に則った成分、米国ＣＴＦＡ（Ｃｏｓｍｅｔｉｃ，　Ｔｏｉｌｅｔｒｙ＆Ｆｒａｇｒａｎｃｅ　Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ，　Ｕ．Ｓ．）によるＩｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ　Ｃｏｓｍｅｔｉｃ　Ｉｎｇｒｅｄｉｅｎｔ　Ｄｉｃｔｉｏｎａｒｙ　ａｎｄ　Ｈａｎｄ　ｂｏｏｋ（２００２年１月１日、９ｔｈ　版）に記載されている成分等から選択されることが好ましい。その例には、脂肪酸（例えば、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、ラウリン酸等）、脂肪アルコール、コレステロール、スクアレン、パーム油、ヤシ油（ココナッツ油）、尿素、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、ヒアルロン酸、アルファヒドロキシ酸（ＡＨＡ）、ハチミツ、鉱油、石油原料、ワセリン、ミツロウ、シリコーン、酸化亜鉛、レシチン、植物油（例えば、オリーブ油、ヒマワリ油、グレープシードオイル、ヤシ油、ベニバナ種子油、アルガン油、大豆油、ピーナッツ油、ゴマ油、アボカド油、ルリジサ油、ホホバオイル、オートムギ油、ザクロ種子油、アーモンドオイル、ビターアプリコットオイル、ローズヒップオイル、ジャーマン・カモミールオイル、シアバター等）、Ｌ－オキシプロリン、Ｌ－リジン液、アスパラガス茎エキス、アルテアエキス、アンズ種子エキス、エイジツエキス、塩酸リジン、加水分解コンキオリン、加水分解シルク末、カッコンエキス、カニナバラ果実エキス、キイチゴエキス、キウイエキス、キョウニンエキス、クズ根エキス、クチナシエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、コメヌカエキス、セリシン、ダイズエキス、タイムエキス、チョウジエキス、ノイバラ果実エキス、ノバラエキス、ハイビスカス花エキス、ハトムギ種子エキス、ヒドロキシプロリン、プルーン酵素分解物、マグワ根皮エキス、マドンナリリー根エキス、マヨラナエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、リシン、リノレン酸、ワイルドタイムエキス等が含まれ、これらを一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。

　これらの中でも、脂肪酸（ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、ラウリン酸）、脂肪アルコール、コレステロール、スクアレン、パーム油、ヤシ油（ココナッツ油）が生体安全性の観点でより好ましい。なお、脂肪アルコールの例には、３価のアルコールであるグリセリンや、２価のアルコールであるジエチレングリコール、プロピレングリコール、１，３－プロパンジオール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール等、１価のアルコールであるプロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール等が含まれる。

　保湿液中（保湿成分を含む液体中）の保湿成分の量は、特に限定はされないが、保湿性とハンドリング性（薄膜シート１からの支持体２の剥離のし易さ）の両立といった観点から、１質量％以上が好ましく、１～１００質量％がより好ましく、１～５０質量％がさらに好ましい。なお、保湿剤層中の保湿成分の量が多くなると、薄膜シート１がべたつきやすくなることがある。そして、薄膜シート１から支持体２を剥離し難くなったりすることがある。

　一方、溶媒は、皮膚刺激性のないものであればよく、水、エタノール、多価アルコール（１，３－ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール等）が好ましく、これらの中でも水がより好ましい。液体中の溶媒の量は、液体の所望の粘度に応じて適宜選択されるが、９９質量％以下が好ましく、５０～９９質量％がより好ましい。

　また、美白成分としては、例えば、ビタミンＣ、ビタミンＥ、アルブチン、レチノール、ヒアルロン酸、コラーゲン、ハトムギエキス、海藻エキス、トラネキサム酸、エラスチン、プラセンタエキス、リン酸　Ｌ－アスコルビルマグネシウム、リン酸　Ｌ－アスコルビルナトリウム、コウジ酸、Ｌ－アスコルビン酸　２－グルコシド、エラグ酸、４－ｎ－ブチルレゾルシノール、カモミラＥＴ、リノール酸Ｓ、４－メトキシサリチル酸カリウム塩、３－Ｏ－エチルアスコルビン酸、アデノシン一リン酸二ナトリウム、５，５’－ジプロピル－ビフェニル－２，２’－ジオール、テトラ２－ヘキシルデカン酸アスコルビルＥＸ、ニコチン酸アミド、ＴＸＣ、デクスパンテノールＷ、３－Ｏ－エチルアスコルビン酸、Ｌ－オキシプロリン、Ｌ－リジン液、α－アルブチン、アーチチョーク葉エキス、アスタキサンチン、アスパラガス茎エキス、アデノシン一リン酸二ナトリウムＯＴ、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズ種子エキス、イソステアリルアスコルビルリン酸２ナトリウム、イタドリ根エキス、ウコンエキス、ウスバサイシン根エキス、ウワウルシ葉エキス、エイジツエキス、塩酸リジン、オウゴンエキス、加水分解コンキオリン、加水分解シルク末、カッコンエキス、カニナバラ果実エキス、カプリリル２－グリセリルアスコルビン酸、カワラヨモギエキス、カンゾウ根エキス、カンゾウフラボノイド、キイチゴエキス、キウイエキス、キョウニンエキス、クズ根エキス、クチナシエキス、クララエキス、クワエキス、ゲンチアナエキス、コメヌカエキス、ゴレンシ葉エキス、サイシンエキス、シコンエキス、シャクヤクエキス、ショウブ根エキス、スイカズラエキス、スターフルーツ葉エキス、セリシン、ダイズエキス、タイムエキス、チョウジエキス、テトラ２－ヘキシルデカン酸アスコルビル、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、トウキエキス、ナイアシンアミド、ナギイカダ根エキス、ニコチン酸アミド、ノイバラ果実エキス、ノバラエキス、ハイドロキノン、ハイビスカス花エキス、ハトムギ種子エキス、パルミチン酸アスコルビルリン酸３ナトリウム、ヒキオコシエキス、ヒドロキシプロリン、ビワ葉エキス、フェルラ酸、ブッチャーブルームエキス、ブドウ種子エキス、プルーン酵素分解物、ベニバナエキス、ヘマトコッカスプルビアリスエキス、ヘマトコッカスプルビアリス油、ボタンエキス、マグワ根皮エキス、マドンナリリー根エキス、マヨラナエキス、ムラサキ根エキス、メマツヨイグサ種子エキス、メリッサエキス、ユキノシタエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、リシン、リノレン酸、ルイボスエキス、ローズマリーエキス、ワイルドタイムエキス、ワレモコウエキス等が挙げられる。美白液中（美白成分を含む液体中）の美白成分の量、並びに、美白液が含み得る溶媒としては、上述の保湿成分と同様の量や溶媒が挙げられる。

　さらに、本実施形態の美容成分としては、その他、例えば、アンチエージング用成分等を使用することもできる。

　なお、上述した美容成分は１種単独でも、２種以上の組み合わせ（例えば、保湿成分と美白成分の組み合わせ等）でも使用することが可能である。

　また、美容成分を含む液体は、上述した美容成分および溶媒以外に、界面活性剤やその他、美容液が含み得る成分を含んでいてもよい。界面活性剤の例には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が含まれ、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、ＥＵ化粧品規制（Ｃｏｓｍｅｔｉｃｓ　Ｄｉｒｅｃｔｉｖｅ　７６／７６８／ＥＥＣ）に則った成分、米国ＣＴＦＡ（Ｃｏｓｍｅｔｉｃ，　Ｔｏｉｌｅｔｒｙ＆Ｆｒａｇｒａｎｃｅ　Ａｓｓｏｃｉａｔｉｏｎ，　Ｕ．Ｓ．）によるＩｎｔｅｒｎａｔｉｏｎａｌ　Ｃｏｓｍｅｔｉｃ　Ｉｎｇｒｅｄｉｅｎｔ　Ｄｉｃｔｉｏｎａｒｙ　ａｎｄ　Ｈａｎｄ　ｂｏｏｋ（２００２年１月１日、９ｔｈ　版）に記載されている成分等から選択されることが好ましい。

　その他の成分の量は、本開示の目的および効果を損なわない範囲であれば特に制限されないが、美容液中（美容成分を含む液体中）のその他の成分の量は５０質量％以下が好ましく、１０質量％以下がより好ましい。

　なお、特に限定はされないが、美容成分を含む液体の粘度は、コーンプレート型粘度計にて、剪断速度２０００ｓ^－１で測定される粘度は、１．１ｍＰａ・ｓ以上が好ましく、１．２ｍＰａ・ｓ以上がより好ましく、１．３～１５００ｍＰａ・ｓがさらに好ましい。液体の粘度が１．１ｍＰａ・ｓ以上であると、美容成分が薄膜シート１表面に留まりやすく、上述の効果が得られやすい。

　上述したような美容成分を含む液体の調製方法は特に制限されず、公知の美容成分を含む化粧料の調製方法と同様とすることができる。

　以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。

　（積層シートの作製）
　本実施例では、厚み２００ｎｍのポリ乳酸シートを薄膜シートとして用いた。前記薄膜シートの最大孔径は１００ｎｍ、最小孔径は１０ｎｍであった。

　前記薄膜シートの上に、平面視形状が前記薄膜シートより大きい、セルロースからなる支持体を積層し、積層シートを得た。積層方法は、薄膜シートと支持体をそれぞれ水で濡らした後、薄膜シートと支持体とを付着させて貼りつけ、１２時間以上乾燥させたものである。前記支持体の含水可能量は支持体１ｇに対し１１ｇ（支持体面積で計算する場合は１６ｍｇ／ｃｍ^２）である。

　（試験例１：保湿持続効果の確認）
　上記で得られた積層シートの３ｃｍ角片を、被試験者の肌に貼り付けた後、保湿成分を含む液体として、市販の保湿化粧水を１５０ｍＬ、支持体の上から霧吹きによって散布した。それから、支持体全体に化粧水が十分に浸透するまで１０秒間待機した後、支持体を剥離した。

　そして、貼り付けてから５分経過後に薄膜シートを剥がした場合と、貼り付けてから１時間経過後に薄膜シートを剥がした場合と、貼り付けてから２時間経過後に薄膜シートを剥がした場合と、薄膜シートを使用せずに直接肌に化粧水を散布した場合（薄膜シート貼り付けなし）とで、それぞれ、薄膜シートを剥がしてから（貼り付けなしの場合は、散布直後から）０分、３０分、６０分経過した時の皮膚インピーダンスを測定した。測定には、皮膚インピーダンス測定装置である「ＳＫＩＮＣＯＮ－２００ＥＸ」（株式会社ヤヨイ製、皮表角層水分量測定装置）を使用した。

　結果を図２に示す。この図２のグラフから明らかなように、肌に直接化粧水をつけるより、本発明の薄膜シートを用いる方が、高い保湿性が得られることがわかる。また、特に、薄膜シートを１時間以上貼り付けた場合では、薄膜シートを剥がしてから６０分経過した場合であっても、高い保湿効果を持続していることが示された。

　よって、本発明の積層シートを用いることにより、高い保湿性とその持続効果が得られることが確認できた。

　（試験例２：局所保湿効果の確認）
　被試験者の肌に上記で得られた積層シートを貼り付け、そのシート保湿部（１）と、図３に示す、その貼付周辺部（２）～（５）とに、それぞれ等量の市販保湿化粧水を散布した。その直後に、積層シートの支持体を剥離し、そのまま薄膜シートを１時間貼り付けたままにしておいた。１時間経過後、薄膜シートを剥離した。

　そして、前記シートの剥離から１時間経過した時点における、シート保湿部（１）と、その貼付周辺部（２）～（５）の皮膚インピーダンスを、試験例１と同じ測定装置で測定した。

　その結果を表１に示す。

　表１の結果から、本発明のシートを貼り付けた箇所では、シート剥離後１時間経過した後でも保湿効果が持続していることがわかった。一方、シート貼付周辺部ではいずれも保湿化粧水を散布していない場合と同程度の保湿効果しかなかった。以上より、本発明の積層シートを使用することによって、局所的に美容効果を得た箇所に美容成分を浸透させることが可能であることが確認できた。

　この出願は、２０２０年１２月１８日に出願された日本国特許出願特願２０２０－２１０１２０を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。

　本発明を表現するために、前述において具体例や図面等を参照しながら実施形態を通して本発明を適切かつ十分に説明したが、当業者であれば前述の実施形態を変更及び／又は改良することは容易になし得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。

　本発明は、化粧品や美容に関する技術分野において、広範な産業上の利用可能性を有する。

Claims

　厚みが１０ｎｍ以上１０μｍ以下であり、且つ、透水性を有する、薄膜シートと、
　前記薄膜シートに積層され、吸水性を有する支持体とを備え、
　前記支持体の含水可能量は、支持体１ｇに対し４．４ｇ以上である、
　美容用積層シート。
　前記支持体の含水可能量は、１０ｍｇ／ｃｍ^２以上１７ｍｇ／ｃｍ^２以下である、請求項１に記載の美容用積層シート。
　前記薄膜シートが細孔を有する、請求項１または２に記載の美容用積層シート。
　前記細孔の孔径が１ｎｍ以上１００μｍ以下である、請求項３に記載の美容用積層シート。
　前記薄膜シートは親水性である、請求項１から４のいずれかに記載の美容用積層シート。