WO2022004366A1

WO2022004366A1 - ノンフライ食品用バッター粉組成物およびバッター組成物

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Publication number: WO2022004366A1
Application number: PCT/JP2021/022771
Authority: WO
Inventors: 健太加藤; 結香源田; 和久水野; 三四郎齋藤
Original assignee: 株式会社Ｊ－オイルミルズ
Priority date: 2020-06-30
Filing date: 2021-06-16
Publication date: 2022-01-06
Also published as: TW202214119A; JPWO2022004366A1

Abstract

本発明は、具材に衣がしっかりと付着した揚げ物らしい外観と、喫食時に感じられる油感を有するノンフライ食品およびその製造方法に関する。　本発明によれば、ノンフライ食品用バッター粉組成物であって、（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉を含む前記バッター粉組成物を配合したバッター組成物を具材に付着させて、ノンフライで加熱調理することにより、揚げ物らしい外観と喫食時の油感を有するノンフライ食品を提供することができる。

Description

ノンフライ食品用バッター粉組成物およびバッター組成物

　本発明は、ノンフライ食品用バッター粉組成物およびバッター組成物、ならびにノンフライ食品の製造方法などに関する。

　近年、調理が簡単であり、調理後の油の後始末が不要で後片づけに手間がかからないことから、油で揚げないノンフライ食品に対するニーズが増加している。ノンフライ食品の製造方法としては、具材にブレッダーをまぶして加熱調理する方法と、具材を液状またはペースト状のバッターにくぐらせて加熱調理する方法が知られている。このうち、後者の方法は、具材に衣が厚く付き易く、満足感のあるノンフライ食品を提供する場合に適した方法である。その一方で、オーブンやフライパンで加熱調理した場合、オーブンやフライパンの表面に直接触れない箇所が多く、それらの部分では熱が通り難いために、衣が厚く付く分、衣が帽子状にだれてしまい、外観が劣るといった課題がある。
　また、健康志向の高まりを背景として、従来のノンフライ食品は、余分な油分をカットして調理することに着目したものが多く、パリパリとした食感やサクミ感は得られやすいものの、喫食時に感じられる揚げ物らしい油感が損なわれる傾向にある。
　例えば、引用文献１では、パン粉等の穀物由来の膨化食品粗粒物、粉末オリゴおよびアルファー化澱粉を配合することでサクミ感が得られることが記載されている。また、引用文献２では、澱粉または穀粉に対し、水溶性成分を所定の量比で用いることで、水溶性成分によって具材から水分を吸収し、その水分によって澱粉または穀粉をアルファー化して膜状化することで、パリパリとした食感が得られることが記載されている。しかし、これらはいずれも、揚げ物らしい外観や喫食時の油感を得ることに着目したものではない。
　また、引用文献３では、揚げ物と同様の外観および食感を得ることを課題としており、衣材として穀粉類に対し、所定の変性澱粉を５～３０重量％含有させることで、衣が硬くならずに、衣の剥がれ易さやべたつき易さを改善することができ、ショートな食感と揚げ物らしい外観が得られることが記載されている。しかし、この方法も、喫食時の油感を得ることに着目したものではない。

特開２０１６－１６５２５０号公報特開平８－２０３号公報特開昭５８－２２４６５５号公報

　このような状況下、具材に衣がしっかりと付着した揚げ物らしい外観と、喫食時に感じられる油感を有するノンフライ食品を提供できることが望ましい。

　本発明は、以下に示すノンフライ食品用バッター粉組成物、ノンフライ食品用バッター組成物およびその製造方法、ノンフライ食品の製造方法、ならびにノンフライ食品の油感、作業性または外観を向上させる方法などに関するものである。
［１］ノンフライ食品用バッター粉組成物であって、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含む、前記バッター粉組成物。
［２］前記成分（ａ）が、加工または未加工の馬鈴薯澱粉である、前記［１］に記載のバッター粉組成物。
［３］前記バッター粉組成物が、
　（ｃ）酸化澱粉
をさらに含む、前記［１］または［２］に記載のバッター粉組成物。
［４］前記バッター粉組成物が、
　（ｄ）アルファー化穀粉；パン粉；米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；およびクラッカー粉からなる群から選択される１種以上の食感付与材
をさらに含む、前記［１］乃至［３］のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
［５］前記バッター粉組成物中の前記成分（ａ）、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計が４５質量％以上である、前記［３］または［４］に記載のバッター粉組成物。
［６］前記バッター粉組成物中の前記成分（ｂ）の含有量が８～４０質量％である、前記［１］乃至［５］に記載のバッター粉組成物。
［７］前記バッター粉組成物中の前記成分（ｃ）の含有量が１５～４５質量％である、前記［３］乃至［６］のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
［８］食用油脂を１０～８５質量％含むバッター組成物に配合されるバッター粉組成物である、前記［１］乃至［７］のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
［９］ノンフライ食品用バッター組成物であって、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含むバッター粉組成物と、
　食用油脂と
を含む、バッター組成物。
［１０］前記成分（ａ）が、加工または未加工の馬鈴薯澱粉である、前記［９］に記載のバッター組成物。
［１１］前記バッター粉組成物が、
　（ｃ）酸化澱粉
をさらに含む、前記［９］または［１０］に記載のバッター組成物。
［１２］前記バッター粉組成物が、
　（ｄ）アルファー化穀粉；パン粉；米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；およびクラッカー粉からなる群から選択される１種以上の食感付与材
をさらに含む、前記［９］乃至［１１］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１３］前記バッター粉組成物中の前記成分(ａ)、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計が４５質量％以上である、前記［１１］または［１２］に記載のバッター組成物。
［１４］前記バッター組成物中の前記バッター粉組成物の含有量が１５～９０質量％である、前記［９］乃至［１３］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１５］前記バッター組成物中の前記食用油脂の含有量が１０～８５質量％である、前記［９］乃至［１４］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１６］前記食用油脂が液体油脂を含み、前記バッター組成物中の液体油脂の含有量が１０～８０質量％である、前記［９］乃至［１５］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１７］前記バッター粉組成物中の前記成分（ｂ）の含有量が８～４０質量％である、前記［９］乃至［１６］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１８］前記バッター粉組成物中の前記成分（ｃ）の含有量が１５～４５質量％である、前記［１１］乃至［１７］のいずれか一項に記載のバッター組成物。
［１９］前記［１］乃至［８］のいずれか一項に記載のバッター粉組成物と、食用油脂とを混合することを含む、ノンフライ食品用バッター組成物の製造方法。
［２０］前記［９］乃至［１８］のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の製造方法。
［２１］前記［９］乃至［１８］のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の油感を増強させる方法。
［２２］前記［９］乃至［１８］のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の作業性を向上させる方法。
［２３］前記［９］乃至［１８］のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の外観を向上させる方法。

　本発明にかかるノンフライ食品用バッター粉組成物を用いることにより、具材に衣がしっかりと付着した揚げ物らしい外観と喫食時の油感を有するノンフライ食品を提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、サクミ感などの食感にも優れている。また、本発明の好ましい態様によれば、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣を付着させるときの作業性を向上させることができる。

実施例１－１で得られたノンフライ食品であるから揚げの外観写真である。比較例１で得られたノンフライ食品であるから揚げの外観写真である。

　以下、本発明の各実施態様についてより具体的に説明する。

１．ノンフライ食品用バッター粉組成物
　本発明にかかるノンフライ食品用バッター粉組成物は、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含むことを特徴とする。

　本発明においては、上記のとおり、冷水膨潤度の異なる２種類の澱粉を用いる。冷水膨潤度の異なる２種類の澱粉を用いたノンフライ食品用バッター粉組成物を配合したバッターを用いることで、具材に衣をしっかりと付着させ易く、また、衣がしっかりと油を抱えてくれるため、ノンフライで加熱調理しても、揚げ物らしい外観と喫食時の油感を有するノンフライ食品を提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、具材に衣を付着させやすいため、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣を付着させるときの作業性を向上させることができる。

　ここで、本発明において「冷水膨潤度」とは、以下の方法により測定される数値をいう。
（１）試料を、１３０℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出する。
（２）この乾燥物質量換算で試料１ｇを２５℃の水５０ｍＬに分散した状態にし、３０分間２５℃で撹拌する。
（３）撹拌後、以下の式（Ｉ）から算出される相対遠心力が１６０９．９２（×ｇ）となる遠心分離法にて１０分間遠心分離し、沈殿層と上澄層に分ける。
　（Ｉ）相対遠心力（×ｇ）＝１１１８×遠心半径（ｃｍ）×（回転数（ｒｐｍ））^２×１０^－８
（４）上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをＢ（ｇ）とする。
（５）沈殿層を乾固（１０５℃、恒量）したときの質量をＣ（ｇ）とする。
（６）ＢをＣで割った値を冷水膨潤度とする。

＜（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉＞
　本発明にかかるバッター粉組成物は、成分（ａ）として、冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）を含む。
　成分（ａ）は、未加工澱粉であってもよく、加工澱粉であってもよい。
　なお、成分（ａ）から除かれる「酸化澱粉」については、後述する成分（ｃ）において述べるとおりである。

　前記未加工澱粉としては、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。前記未加工澱粉の由来となる植物の具体例として、レギュラートウモロコシ（デントコーン）、もちトウモロコシ（ワキシーコーン）、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、甘藷、馬鈴薯、キャッサバおよびサゴヤシ等が挙げられ、好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、さらに好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシおよび馬鈴薯が挙げられ、特に好ましくは馬鈴薯が挙げられる。これらは１種で、または２種以上を組み合わせて用いることができる。

　前記加工澱粉は、前記未加工澱粉に酸化以外の加工処理が施されたものであればよい。前記加工処理としては、例えば、アセチル化、リン酸モノエステル化等のモノエステル化；リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋；ヒドロキシプロピル化等のエーテル化；酸処理；アルカリ処理；酵素処理等の１種または２種以上が挙げられる。これらの中でも、モノエステル化、架橋、エーテル化および酸処理の１種または２種以上が好ましく、モノエステル化、架橋およびエーテル化の１種または２種以上がより好ましく、架橋であることがさらに好ましい。
　具体的に、成分（ａ）として用いられる加工澱粉としては、アセチル化澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉が好ましく、アセチル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉がより好ましく、リン酸架橋澱粉が特に好ましい。

　これらの中でも、成分（ａ）としては、加工または未加工の馬鈴薯澱粉が好ましい。馬鈴薯澱粉を用いることで、本発明にかかるバッター粉組成物を用いて得られる衣がべたつきにくく、サクミ感がより感じられ易くなる。

　バッター粉組成物中の成分（ａ）の含有量は１５～８５質量％であることが好ましく、より好ましくは１５～５５質量％、さらに好ましくは１５～３５質量％、さらにより好ましくは１５～２６質量％である。成分（ａ）の含有量が上記の範囲であると、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣をしっかりと付着させ易く、加熱調理したときに揚げ物らしい外観と油感が得られやすい。また、具材に衣を付けるときの作業性をより向上させることができる。

＜（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉＞
　本発明にかかるバッター粉組成物は、成分（ｂ）として、冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉を含む。成分（ｂ）は、冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉であれば特に限定されないが、原料澱粉にアルファー化処理されたものが好ましく用いられる。前記原料澱粉は、未加工澱粉であってもよく、加工澱粉であってもよい。
　成分（ｂ）の冷水膨潤度は４超４０以下であり、４超３５以下が好ましく、４超３０以下がより好ましく、５以上２８以下がさらに好ましく、５．５以上２６以下がさらにより好ましい。なお、本明細書では、数値範囲の上限値と下限値を適宜組み合わせて得られる数値範囲も開示されているものとする。

　前記未加工澱粉としては、成分（ａ）で例示したものと同じものが挙げられる。これらの中でも、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが好ましく、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられ、さらに好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシおよび馬鈴薯であり、特に好ましくは高アミローストウモロコシおよび馬鈴薯である。これらは１種で、または２種以上を組み合わせて用いることができる。

　前記加工澱粉としては、前記未加工澱粉にアルファー化以外の加工処理が施されたものであればよい。前記加工処理としては、例えば、アセチル化、リン酸モノエステル化等のモノエステル化；リン酸架橋、アジピン酸架橋等の架橋；ヒドロキシプロピル化等のエーテル化；酸処理；アルカリ処理；酸化；酵素処理等の１種または２種以上が挙げられる。これらの中でも、モノエステル化、架橋、エーテル化、酸処理および酸化の１種または２種以上が好ましく、モノエステル化、架橋、エーテル化および酸化の１種または２種以上がより好ましい。

　また、前記未加工澱粉および加工澱粉は、冷水膨潤度が４超４０以下を満たすようにアルファー化処理が施されていてもよい。
　ここで「アルファー化処理」とは、未加工澱粉および加工澱粉から選ばれる澱粉と水とを混合した澱粉スラリーを加熱糊化して、さらに乾燥させる処理をいう。必要に応じて、乾燥させる処理後に粉砕処理を行ってもよい。具体的には、上記アルファー化処理のうち加熱糊化は、オンレーター、ジェットクッカー、エクストルーダー等の機械を使用した方法を、乾燥はドラムドライヤー、スプレードライヤー、送風乾燥機等の機械を使用した方法を、それぞれ選択することが可能である。また、ドラムドライヤーを用いる場合は、澱粉スラリーを直接ドラムに塗布することで、加熱糊化と乾燥を一体で行うことも可能である。

　バッター粉組成物中の成分（ｂ）の含有量は８～４０質量％であることが好ましく、より好ましくは１０～４０質量％、さらに好ましくは１２～３５質量％、さらにより好ましくは１５～２５質量％であり、特に好ましくは１５～２２質量％である。成分（ｂ）の含有量が上記の範囲であると、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣をしっかりと付着させ易く、加熱調理したときに揚げ物らしい外観と油感が得られやすい。また、具材に衣を付けるときの作業性をより向上させることができる。

＜（ｃ）酸化澱粉＞
　本発明にかかるバッター粉組成物は、さらに成分（ｃ）として、酸化澱粉を含んでもよい。成分（ｃ）を配合することにより、ジャリ感（すなわち、じゃりっとした食感）を抑えながら油感とサクミ感を付与することができる。
　酸化澱粉の原料澱粉としては、例えば植物由来の澱粉が挙げられる。原料澱粉の由来となる植物の具体例として、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、うるち米、もち米、小麦、馬鈴薯およびキャッサバが好ましく、より好ましくは、レギュラートウモロコシ、もちトウモロコシ、高アミローストウモロコシ、もち米、馬鈴薯およびキャッサバが挙げられる。これらは１種で、または２種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、油感とサクミを向上させる観点から、タピオカ澱粉が好ましい。

　酸化澱粉としては、酸化処理以外の加工処理が施されていてもよい。例えば、酸化処理に加えてアセチル化等のエステル化が施されていてもよい。
　成分（ｃ）としては、ジャリ感を抑制する観点から、酸化処理以外の加工処理が施されていない酸化澱粉およびアセチル化酸化澱粉が好ましく、アセチル化酸化澱粉がより好ましい。

　バッター粉組成物中の成分（ｃ）の含有量は１５～４５質量％であることが好ましく、より好ましくは２０～４０質量％、さらに好ましくは２８～４０質量％である。成分（ｃ）の含有量が上記の範囲であると、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣を付着させ易く、作業性をより向上させ、また、外観を向上させることができる。

　本発明において、バッター粉組成物中の成分（ａ）、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計は４５質量％以上であることが好ましく、より好ましくは５５重量％以上、さらに好ましくは６５重量％以上、特に好ましくは６８重量％以上である。また、成分（ａ）、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計は１００重量％以下であることが好ましく、より好ましくは９２重量％以下、さらに好ましくは８５重量％以下である。成分（ａ）、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計が上記の範囲であると、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣をしっかりと付着させ易く、加熱調理したときに揚げ物らしい外観と油感が得られやすい。また、具材に衣を付けるときの作業性をより向上させることができる。

＜（ｄ）食感付与材＞
　本発明にかかるバッター粉組成物は、さらに成分（ｄ）として、ノンフライ食品において衣のサクミ感などの食感をより高める目的で食感付与材を配合してもよい。食感付与材としては、アルファー化穀粉；パン粉；あられ、柿の種、煎餅等の米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；クラッカー粉などの粒状物が好ましく挙げられ、これらの１種または２種以上を組み合わせて用いることができる。
　成分（ｄ）は、ノンフライ食品の種類に応じて望ましい食感を付与できるものを適宜選択すればよい。例えば、から揚げの場合は、アルファー化穀粉が好ましく用いられる。また、豚カツ、牛カツおよびチキンカツなどのカツの場合は、パン粉、あられなどが好ましく用いられる。

　本発明において、アルファー化穀粉は、主原料である穀物単独を、あるいは任意に油脂、澱粉、穀粉、糖類、多糖類、蛋白質、乳化剤等の１種以上の副原料を加えてアルファー化処理して得られる粒状物である。

　アルファー化穀粉の原料として使用できる穀粉は、餅種米、米、小麦、とうもろこしなどの穀粉砕物が使用でき、これらを単独または２種以上を組み合わせて使用することができる。

　前記穀物のアルファー化処理には、当業界において行われている方法、例えば、ドラムドライ、スプレードライ、ジェットクッカー、エクストルーダーなどいずれを用いてもよいが、粒状物を得るためにはエクストルーダー、特に副原料の混合が容易で安定して処理ができる２軸エクストルーダーを使用することが好ましい。

　アルファー化穀粉の副原料として使用できる油脂は食用油脂であれば特に限定されなく、１種単独または２種以上を組み合わせて使用してもよい。油脂の添加量は主原料である穀物１００重量部に対して０．１～２０重量部であり、そのうち０．１～１０重量部が望ましい。

　アルファー化穀粉の副原料として使用できる糖類は、食品に供し得るものであれば特に限定されなく、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、アラビノース、キシロース、リボース、ガラクトース、ガラクツロン酸、ウロン酸、ラムノース、フコース、マンノース、またはこれらを構成成分とする還元糖を有する物質や混合物である水あめ等がある。これらはいずれも１種単独でまたは２種以上を混合して使用できる。これら糖の添加量は主原料である穀物１００重量部に対して０.１～１００重量部、好ましくは０．５～２０重量部である。

　アルファー化穀粉の副原料として使用できる多糖類としては、食品に供するものであれば特に限定されなく、デキストリンや、キサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、ジェランガム、プルラン、キチン、キトサンなどのガム類、小麦、大麦、ライ麦、コーン、豆類等から得られる食物繊維、市販のセルロース類などがある。これらはいずれも１種単独でまたは２種以上を混合して使用できる。これら多糖類の添加量は主原料である穀物１００重量部に対して０．１～２０重量部、好ましくは０．１～１０重量部である。

　アルファー化穀粉の副原料として使用できる蛋白質としては、食品に供するものであれば特に限定されなく、卵白、卵黄、鶏卵（全卵）、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、全脂肪乳、脱脂粉乳、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白等である。これらはいずれも単独で又は２種以上を混合して使用できる。これら蛋白質の添加量は主原料である穀物１００重量部に対して１～１００重量部、好ましくは１～２０重量部である。

　アルファー化穀粉の副原料として使用できる乳化剤としては、食品に供するものであれば特に限定されなく、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンが挙げられ、このうちで最も好ましいのはモノグリセリン脂肪酸エステルである。これらはいずれも１種単独でまたは２種以上を混合して使用できる。これら乳化剤の添加量は主原料である穀物１００重量部に対して０.０１～１０重量部、好ましくは０．０５～５重量部である。

　本発明にかかるバッター粉組成物は、アルファー化穀粉を含むことにより、加熱調理したときのサクミ感をより向上させることができる。この観点から、アルファー化穀粉は所要の粒度に粉砕・分級して用いることが好ましい。アルファー化穀粉の粒径は、たとえば目開き２８００μｍの篩の篩下画分の含有量が８０質量％以上であることが好ましく、より好ましくは９０質量％以上である。
　また、アルファー化穀粉の粒径の下限値は特に限定されないが、たとえば目開き１５０μｍの篩上画分の含有量が７５質量％以上であることが好ましく、より好ましくは８０質量％以上である。
　なお、本実施形態で使用する篩は、ＪＩＳ－Ｚ８８０１－１規格のものである。

　また、本発明にかかるバッター粉組成物は、パン粉；あられ、柿の種、煎餅等の米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；およびクラッカー粉などの粒状物の１種以上を含むことにより、加熱調理したときのサクミ感をより向上させることができる。

　本発明において、バッター粉組成物中の成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）および（ｄ）の含有量の合計は７５質量％以上であることが好ましく、より好ましくは８０質量％以上、さらに好ましくは８３質量％以上、特に好ましくは８５質量％以上である。また、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）および（ｄ）の含有量の合計は１００質量％以下であることが好ましく、９５質量％以下がより好ましい。成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）および（ｄ）の含有量の合計が上記の範囲であると、サクミのある食感と好ましい油感を有するノンフライ食品を得ることができる。

＜その他の粉末成分＞
　本発明にかかるバッター粉組成物は、上記成分のほか、必要に応じて、その他の粉末成分、例えば、キサンタンガム等の多糖類またはその他の粘度調整剤；小麦粉、米粉、コーンフラワー、大豆粉等の穀粉；大豆タンパク質、乳蛋白、卵白、卵黄等の蛋白質；みりん、しょうゆ、食塩、香辛料等の調味料；粉末油脂；レシチン、グリセリン脂肪酸エステル等の乳化剤；パプリカパウダー等の着色素材；およびベーキングパウダー等の膨張剤を含んでいてもよい。

　本発明にかかるバッター粉組成物は、前記成分（ａ）、（ｂ）、さらに必要に応じて（ｃ）、（ｄ）およびその他の粉末成分を混合して調製される。
　本発明にかかるバッター粉組成物は、食用油脂を含むバッター組成物に配合されるバッター粉組成物として用いられることが好ましく、より好ましくは、食用油脂を１０～８５質量％、さらに好ましくは１８～８２質量％、さらにより好ましくは２５～７５質量％、特に好ましくは３０～６５質量％含むバッター組成物に配合されるバッター粉組成物として用いられる。

２．ノンフライ食品用バッター組成物
　本発明にかかるノンフライ食品用バッター組成物は、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含むバッター粉組成物と、
　食用油脂と
を含むことを特徴とする。

　本発明にかかるノンフライ食品用バッター組成物は、上記のとおり、冷水膨潤度の異なる２種類の澱粉を含むバッター粉組成物と食用油脂とを含むことにより、ノンフライ食品用バッター粉組成物を用いたバッターを具材にしっかりと付着させ易く、ノンフライで加熱調理することで、揚げ物らしい外観と喫食時の油感を有するノンフライ食品を提供することができる。また、本発明の好ましい態様によれば、ノンフライ食品の製造方法において、具材に衣を付着させるときの作業性を向上させることができる。

　ノンフライ食品用バッター粉組成物については、前記「１．ノンフライ食品用バッター粉組成物」で述べたものと同じものを用いることができる。

　食用油脂は、食品に供するものであれば特に限定されない。原料油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、パーム核油、ヤシ油等の植物油脂；魚油、豚脂、牛脂、乳脂等の動物油脂；中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる１または２以上の加工がなされた加工油脂からなる群から選択される１種または２種以上が挙げられる。

　前記バッター組成物中の前記食用油脂の含有量は１０～８５質量％であることが好ましく、より好ましくは１８質量％～８２質量％、さらに好ましくは２５～７５質量％、特に好ましくは３０～６５質量％である。上記の範囲であると、具材を前記バッター組成物にくぐらせて、具材に衣を付着させるときの作業性をより向上させることができる。また、具材に衣を付着させた後、加熱調理したときに、衣が食用油脂を抱えて、喫食時の油感を向上させることができる。

　前記食用油脂は、液体油脂を含むことが作業性の観点から好ましく、前記バッター組成物中の液体油脂の含有量は１０～８０質量％であることが好ましく、より好ましくは１５～７０質量％、さらに好ましくは２５～６５質量％である。前記液体油脂は、使用時（例えば２５±５℃）にて液体であればよい。
　前記食用油脂の融点は、１０℃以下であることが好ましく、０℃未満であることがより好ましい。食用油脂の融点が上記の範囲であると、具材を前記バッター組成物にくぐらせて、具材に衣を付着させるときの作業性を向上させることができる。なお、融点（上昇融点）の測定は、基準油脂分析試験法２．２．４．２－１９９６に従って測定することができる。

　本発明にかかるバッター組成物は、その他の液体成分、例えば、水、卵液等の液状の食材；醤油、酒、みりん、だし汁等の液体調味料を含んでいてもよい。
　ただし、バッター組成物の粘度を適切な範囲にする観点から、前記バッター組成物中のその他の液体成分の含有量は、１５質量％以下が好ましく、より好ましくは１０質量％以下、さらに好ましくは８質量％以下、さらにより好ましくは５質量％以下とする。
　また、具材に衣を付着させて加熱調理した後、喫食時の油感を損なわないようにするため、バッター組成物中の水の含有量は、８質量％以下が好ましく、より好ましくは４質量％以下、さらに好ましくは０質量％とする。

　本発明にかかるノンフライ食品用バッター組成物は、バッター粉組成物と、食用油脂とを混合することで調製することができる。混合方法は特に限定されない。

３．ノンフライ食品の製造方法
　本発明にかかるノンフライ食品の製造方法は、前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む。
　本発明において、前記バッター組成物を具材の表面に付着させる方法は特に限定されない。ボウルまたは袋などの容器に入れたバッター組成物中に具材をくぐらせることにより、具材の表面にバッター組成物を付着させて衣を付けてもよいし、具材の表面にバッター組成物を直接塗布して付着させることで衣を付けてもよい。

　本発明においては、あらかじめ具材の表面に打ち粉をしてから具材の表面にバッターを付着させることもできるが、前記バッター組成物を用いることで具材に衣をしっかりと付着させることができ、加熱調理後も衣が剥がれにくく、具材との結着性が良好であることから、具材の表面に直接バッター組成物を付着させてもよい。このように本発明においては、より簡便な方法でノンフライ食品を製造することができる。
　なお、本発明において、前記バッター組成物は、具材の一部に付着していてもよいし、具材の全体に付着していてもよい。また、加熱調理後、衣は、具材の一部を被覆していてもよいし、具材の全体を被覆していてもよい。

　本発明において、ノンフライ食品としては、好ましくはから揚げ、カツ、およびフリッターなどが挙げられる。
　から揚げ、カツおよびフリッターの具材としては、それぞれ、本発明にかかるバッター組成物を用いて衣付けできるものであれば特に限定されない。例えば、鶏肉、豚肉等の肉類；エビ、イカ、ホタテ、白身魚等の魚介類；イモ類、ピーマン等の野菜類などが好ましく挙げられる。
　具材に対して適量のバッター組成物を付着させることで、ノンフライ食品の食感を良好にすることができる。例えば、具材１００質量部に対してバッター組成物を５～６０質量部、より好ましくは８～４５質量部、さらに好ましくは１２～２８質量部の量比で付着させることで、喫食したときのサクミ感がより向上する。

　加熱調理方法としては、ノンフライであればよく、特に限定されないが、オーブン（含むコンベクションオーブン）やフライパン等で乾熱調理、電子レンジ等でのマイクロ波加熱調理またはスチームコンベクションオーブン等による過熱水蒸気調理する方法などが挙げられる。例えば、前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、予熱したオーブン中で鉄板に乗せて乾熱調理する方法が好ましく挙げられる。
　加熱温度は、１００℃～３００℃が好ましく、より好ましくは１５０～２５０℃で熱することが好ましい。
　加熱時間は、加熱温度、加熱調理方法および具材の大きさなどによって適宜決定すればよいが、通常、５～３０分が好ましく、より好ましくは５～２０分である。

　本発明の方法によれば、具材に衣を付着させるときの作業性を向上させることができる。本発明の方法で得られたノンフライ食品は、具材に衣がしっかりと付着した揚げ物らしい外観と喫食時の油感を有しており、ノンフライでありながら、揚げ物らしい満足感が得られる。本発明の好ましい態様によれば、本発明の方法で得られたノンフライ食品は、サクミ感が良好であり、ジャリ感が少なく、良好な食感が得られる。

４．ノンフライ食品の油感を増強させる方法
　本発明は、前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の油感を増強させる方法をも提供するものである。
　本発明によれば、前記バッター組成物を具材に付着させて具材に衣付けをすることにより、具材に衣がしっかりと付着し、加熱調理したときに、衣が食用油脂を抱えて、喫食時の油感を向上させることができる。前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理する工程については、前記「３．ノンフライ食品の製造方法」で述べたとおりである。

５．ノンフライ食品の作業性を向上させる方法
　また本発明は、前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の作業性を向上させる方法をも提供するものである。
　本発明によれば、前記バッター組成物を用いることで具材にバッター組成物を付着させ易く、ノンフライ食品の作業性を向上させることができる。前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理する工程については、前記「３．ノンフライ食品の製造方法」で述べたとおりである。

６．ノンフライ食品の外観を向上させる方法
　さらに本発明は、前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の外観を向上させる方法をも提供するものである。
　本発明によれば、前記バッター組成物を具材に付着させて具材に衣付けをすることにより、具材に衣がしっかりと付着し、加熱調理後も衣が剥がれにくく、具材との結着性が良好であり、衣の部分が帽子状にだれ難いため、ノンフライ食品の外観を向上させることができる。一方、衣の部分が帽子状にだれてしまうと、だれた部分が焦げ、さらに好ましくない外観になる。本発明によれば、揚げ物らしい外観を有するノンフライ食品を提供することができる。前記バッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理する工程については、前記「３．ノンフライ食品の製造方法」で述べたとおりである。

　次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されない。なお、各種澱粉の冷水膨潤度は以下のようにして測定した。

＜冷水膨潤度＞
　以下のようにして各種澱粉の冷水膨潤度を測定した。
（１）試料を、１３０℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出する。
（２）この乾燥物質量換算で試料１ｇを２５℃の水５０ｍＬに分散した状態にし、３０分間２５℃で撹拌する。
（３）撹拌後、以下の式（Ｉ）から算出される相対遠心力が１６０９．９２（×ｇ）となる遠心分離法にて１０分間遠心分離し、沈殿層と上澄層に分ける。
　（Ｉ）相対遠心力（×ｇ）＝１１１８×遠心半径（ｃｍ）×（回転数（ｒｐｍ））^２×１０^－８
（４）上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをＢ（ｇ）とする。
（５）沈殿層を乾固（１０５℃、恒量）したときの質量をＣ（ｇ）とする。
（６）ＢをＣで割った値を冷水膨潤度とする。

　本願実施例および比較例では、以下の成分を用いた。
＜成分（ａ）＞
　ａ１：馬鈴薯澱粉、冷水膨潤度２．３、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ジェルコールＢＰ－２００」
　ａ２：リン酸架橋タピオカ澱粉、冷水膨潤度２．１、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ＴＰ－１」
　ａ３：トウモロコシ澱粉、冷水膨潤度２．６、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「コーンスターチＹ」
　ａ４：もちトウモロコシ澱粉、冷水膨潤度２．７、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ワキシーコーンスターチＹ」
　ａ５：ハイアミロースコーンスターチ、冷水膨潤度３．０、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ＨＳ－７」
　ａ６：リン酸架橋馬鈴薯澱粉、冷水膨潤度２．１、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ジェルコールＫＰＳ－２００」
＜成分（ｂ）＞
　ｂ１：アルファー化馬鈴薯澱粉、冷水膨潤度２３、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「Ｂ－α」
　ｂ２：アルファー化ハイアミロースコーンスターチ、冷水膨潤度６．５、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ＡＨ－Ｆ」
　ｂ３：製造例１で調製したもの、冷水膨潤度７．３、
＜成分（ｃ）＞
　ｃ１：アセチル化酸化澱粉、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ＳＰ－２」
　ｃ２：酸化澱粉、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ＳＰ－３」
＜成分（ｄ）＞
　ｄ１：アルファー化穀粉、株式会社Ｊ－オイルミルズ製「ソフトコートＥＬ」
　ｄ２：乾燥パン粉、フライスター株式会社製「フライスターセブン」
＜その他の粉末成分＞
　塩
　白コショウ：株式会社ギャバン製「ＧＡＢＡＮホワイトペッパーパウダー」
　薄力粉：日清フーズ株式会社製「フラワー」
　粉末醤油：キッコーマン食品株式会社製「粉末醤油調味料」
＜食用油脂＞
　食用油脂１：菜種油、株式会社Ｊ－オイルミルズ製：「ＡＪＩＮＯＭＯＴＯさらさらキャノーラ油」、上昇融点０℃未満
　食用油脂２：調味油、株式会社Ｊ－オイルミルズ製：「Ｊ－ＯＩＬＰＲＯ（商標）ガーリックオイル、上昇融点０℃未満

（製造例１）ｂ３：アルファー化澱粉の調製
　下記方法に従ってアルファー化澱粉を調製した。

　高アミローストウモロコシ澱粉を水に懸濁して３５．６％（ｗ／ｗ）スラリーを調製し、５０℃に加温した。そこへ、攪拌しながら４．２５Ｎに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で１／９倍量加え反応を開始した。１６時間反応後、３％ＮａＯＨで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理高アミローストウモロコシ澱粉を得た。
　レギュラートウモロコシ澱粉７９質量％、上述の方法で得られた酸処理高アミローストウモロコシ澱粉２０質量％、および、炭酸カルシウム１質量％を充分に均一になるまで袋内で混合した。２軸エクストルーダー（幸和工業社製ＫＥＩ－４５）を用いて、混合物を下記条件にて加圧加熱処理した。
原料供給：４５０ｇ／分加水：１７質量％バレル温度：原料入口から出口に向かって５０℃、７０℃および１００℃ 出口温度：１００～１１０℃ スクリューの回転数２５０ｒｐｍ
　このようにしてエクストルーダー処理により得られたアルファー化処理物を１１０℃にて乾燥し、水分含量を１０質量％に調整した。乾燥したアルファー化処理物を、卓上カッター粉砕機で粉砕し、ＪＩＳ－Ｚ８８０１－１規格の篩で篩分けした。篩分けしたアルファー化処理物を、以下の配合割合で混合し、アルファー化澱粉４を得た。
目開き０．２５ｍｍパス、目開き０．１５ｍｍオン：３６質量％
目開き０．１５ｍｍパス、目開き０．０７５ｍｍオン：４８質量％
目開き０．７５ｍｍパス：１６質量％

１．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その１）
　表１に記載の組成で、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）およびその他の粉末成分を混合し、バッター粉組成物を調製した。
　次に、得られたバッター粉組成物と食用油脂とを混合し、バッター組成物を調製した。
　続いて、容器中でバッター組成物に鶏もも肉をくぐらせ、鶏もも肉２５～３０ｇにバッター組成物５～６ｇを付着させた。
　衣付けした鶏もも肉を鉄板にそのまま乗せ、予熱した２００℃のスチームコンベクションオーブン（ＲＡＴＩＯＮＡＬ社製、型番：ＳＣＣ－ＷＥ－６１）中でホットエアーモード、２００℃で１０分調理し、ノンフライ食品を得た。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、下記の評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

（１）油感（から揚げらしい油感）
５点　非常にから揚げらしい油感がある
４点　かなりから揚げらしい油感がある
３点　ややから揚げらしい油感がある
２点　油感が物足りない、またはやや油っぽすぎる
１点　全く油感がない、または油っぽすぎる

（２）食感（サクミ感）
５点　非常にサクミが強い
４点　かなりサクミがある
３点　ややサクミがある
２点　少しサクミがある
１点　全くサクミがない

（３）外観
５点　非常にから揚げの外観になっている
４点　かなりから揚げの外観になっている
３点　ややから揚げの外観になっている
２点　かなりから揚げの外観に適さない
１点　全くから揚げの外観に適さない

（４）作業性（衣の付けやすさ）
５点　とても衣を付けやすい
４点　衣を付けやすい
３点　やや衣を付けにくいが、許容範囲である
２点　衣を付けにくい、またはやや余分に付けすぎてしまう
１点　かなり衣を付けにくい、または余分に付けすぎてしまう

　結果を表１に示す。

　表１に示したとおり、本願実施例のバッター粉組成物を配合したバッター組成物を用いることにより、成分（ａ）および（ｂ）を組み合わせて用いない場合（比較例１）と比較して、から揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性も良好であった（実施例１－１～１－８）。
　成分（ａ）としては異なるでん粉種でも好ましいから揚げが得られた。中でも、食感、外観の点でａ１の馬鈴薯澱粉が優れていた。
　成分（ｃ）としてはｃ２の酸化澱粉よりｃ１のアセチル化酸化澱粉の方が、食感および外観の点でより優れていた。
　図１は、実施例１－１で得られたから揚げの写真である。図１の写真から明らかなとおり、実施例１－１では、焼成中に衣は鶏もも肉から剥がれ落ちず、余分な油だけが鉄板に落ちており、衣がしっかりと付着した外観に優れたから揚げが得られた。
　一方、図２は、比較例１で得られたから揚げの写真であるが、図２の写真から明らかなとおり、比較例１では、焼成中に衣が鶏もも肉から剥がれ落ち、鉄板上で焦げてしまった。

２．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その２）
　表２に記載の組成で、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）およびその他の粉末成分を混合し、バッター粉組成物中の成分（ａ）および（ｂ）の混合比率を変えたことを除いて、前記「１．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その１）」と同様にしてノンフライ食品を得た。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、前記評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

　結果を表２に示す。

　表２に示したとおり、成分（ａ）および（ｂ）の混合比率を変えてもから揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性も良好であった（実施例２－１～２－６）。特に、成分（ａ）および（ｂ）の混合比率が、成分（ａ）：成分（ｂ）＝５０：５０～８０：２０の範囲であると、から揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性がさらに良好になった。

３．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その３）
　表３に記載の組成で、バッター粉組成物と食用油脂の混合比率を変えたことを除いて、前記「１．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その１）」と同様にしてノンフライ食品を得た。なお、バッター組成物の組成は、実施例１－１と同じである。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、前記評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

　結果を表３に示す。

　表３に示したとおり、バッター粉組成物と食用油脂の混合比率を変えてもから揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性も良好であった（実施例３－１～３－３）。特に、バッター粉組成物と食用油脂の混合比率が、バッター粉組成物：食用油脂＝４０：６０～６０：４０の範囲であると、から揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性がさらに良好になった。

４．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その４）
　表４に記載の組成で、具材（鶏もも肉）とバッター組成物の混合比率を変えたことを除いて、前記「１．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その１）」と同様にしてノンフライ食品を得た。なお、バッター組成物の組成は、実施例１－１と同じである。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、前記評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

　結果を表４に示す。

　表４に示したとおり、具材（鶏もも肉）とバッター組成物の混合比率を変えてもから揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性も良好であった（実施例４－１～４－４）。特に、具材とバッター組成物の混合比率が、具材：バッター組成物＝１０：１～１０：４の範囲であると、から揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性がさらに良好になった。

５．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その５）
　表５に記載の組成で、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）およびその他の粉末成分を混合し、水または穀粉を適量配合したことを除いて、前記「１．ノンフライ食品（から揚げ）の調製（その１）」と同様にしてノンフライ食品を得た。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、前記評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

　結果を表５に示す。

　表５に示したとおり、水および穀粉を適量配合してもから揚げらしい油感と外観が得られ、食感および作業性も良好であった（実施例５－１～５－３）。
　また、（ａ）としてリン酸架橋馬鈴薯澱粉を使用しても、良好なから揚げが得られた。

６．ノンフライ食品（チキンカツ）の調製（その６）
　表６に記載の組成で、成分（ａ）、（ｂ）、（ｃ）、（ｄ）およびその他の粉末成分を混合し、バッター粉組成物を調製した。
　次に、得られたバッター粉組成物と食用油脂とを混合し、バッター組成物を調製した。
　続いて、容器中でバッター組成物に鶏もも肉をくぐらせ、鶏もも肉２５～３０ｇにバッター組成物５～６ｇを付着させた。
　衣付けした鶏もも肉を鉄板にそのまま乗せ、予熱した２００℃のスチームコンベクションオーブン（ＲＡＴＩＯＮＡＬ社製、型番：ＳＣＣ－ＷＥ－６１）中でホットエアーモード、２００℃で１０分調理し、ノンフライ食品を得た。
　得られたノンフライ食品の喫食時の油感、食感および外観、ならびに鶏もも肉にバッター組成物を付着させて衣付けしたときの作業性の各項目について、専門パネラー２人により、下記の評価基準に従って５段階評価を行い、合議で評価値を決定した。

（１）油感（チキンカツらしい油感）
５点　非常にチキンカツらしい油感がある
４点　かなりチキンカツらしい油感がある
３点　ややチキンカツらしい油感がある
２点　油感が物足りない、またはやや油っぽすぎる
１点　全く油感がない、または油っぽすぎる

（３）外観
５点　非常にチキンカツの外観になっている
４点　かなりチキンカツの外観になっている
３点　ややチキンカツの外観になっている
２点　かなりチキンカツの外観に適さない
１点　全くチキンカツの外観に適さない

　結果を表６に示す。

　成分ｄとして乾燥パン粉を用いたところ、表６に示したとおり、チキンカツらしい油感と外観が得られ、食感も良好であり、かつ作業性に優れており、好ましいノンフライのチキンカツが得られた。

Claims

　ノンフライ食品用バッター粉組成物であって、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含む、前記バッター粉組成物。
　前記成分（ａ）が、加工または未加工の馬鈴薯澱粉である、請求項１に記載のバッター粉組成物。
　前記バッター粉組成物が、
　（ｃ）酸化澱粉
をさらに含む、請求項１または２に記載のバッター粉組成物。
　前記バッター粉組成物が、
　（ｄ）アルファー化穀粉；パン粉；米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；およびクラッカー粉からなる群から選択される１種以上の食感付与材
をさらに含む、請求項１乃至３のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分（ａ）、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計が４５質量％以上である、請求項３または４に記載のバッター粉組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分（ｂ）の含有量が８～４０質量％である、請求項１乃至５に記載のバッター粉組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分（ｃ）の含有量が１５～４５質量％である、請求項３乃至６のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
　食用油脂を１０～８５質量％含むバッター組成物に配合されるバッター粉組成物である、請求項１乃至７のいずれか一項に記載のバッター粉組成物。
　ノンフライ食品用バッター組成物であって、
　（ａ）冷水膨潤度が１超４以下の澱粉（ただし、酸化澱粉を除く）、および
　（ｂ）冷水膨潤度が４超４０以下の澱粉
を含むバッター粉組成物と、
　食用油脂と
を含む、バッター組成物。
　前記成分（ａ）が、加工または未加工の馬鈴薯澱粉である、請求項９に記載のバッター組成物。
　前記バッター粉組成物が、
　（ｃ）酸化澱粉
をさらに含む、請求項９または１０に記載のバッター組成物。
　前記バッター粉組成物が、
　（ｄ）アルファー化穀粉；パン粉；米菓およびこれらの粉砕物；スナック粉砕物；シリアル粉；およびクラッカー粉からなる群から選択される１種以上の食感付与材
をさらに含む、請求項９乃至１１のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分(ａ)、（ｂ）および（ｃ）の含有量の合計が４５質量％以上である、請求項１１または１２に記載のバッター組成物。
　前記バッター組成物中の前記バッター粉組成物の含有量が１５～９０質量％である、請求項９乃至１３のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　前記バッター組成物中の前記食用油脂の含有量が１０～８５質量％である、請求項９乃至１４のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　前記食用油脂が液体油脂を含み、前記バッター組成物中の液体油脂の含有量が１０～８０質量％である、請求項９乃至１５のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分（ｂ）の含有量が８～４０質量％である、請求項９乃至１６のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　前記バッター粉組成物中の前記成分（ｃ）の含有量が１５～４５質量％である、請求項１１乃至１７のいずれか一項に記載のバッター組成物。
　請求項１乃至８のいずれか一項に記載のバッター粉組成物と、食用油脂とを混合することを含む、ノンフライ食品用バッター組成物の製造方法。
　請求項９乃至１８のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の製造方法。
　請求項９乃至１８のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の油感を増強させる方法。
　請求項９乃至１８のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の作業性を向上させる方法。
　請求項９乃至１８のいずれか一項に記載のバッター組成物を具材の表面に付着させ、ノンフライで加熱調理することを含む、ノンフライ食品の外観を向上させる方法。